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決算短信は投資やビジネスで有効?決算短信の見方や活用の方法をご紹介

決算短信について株式投資等を行う投資家以外は知らない方も多いでしょう。もちろん投資家でも決算短信の名前は聞いたことはあるが、内容は知らない、利用したことがない、という方も少なくないかもしれません。

 

しかし、株式投資等において、この決算短信の情報は非常に重要な投資判断となりファンドマネージャーなどの運用のプロだけでなく個人投資家でも活用している方は多いです。また、投資以外のビジネス分野で取引等の判断材料、学生等の就活情報としても利用できます。

 

今回は決算短信を取り上げ、その内容を説明するとともに効果的な見方を説明します。決算短信の内容や構成を示し、どのようなポイントを見れば投資やビジネスなどに活用できるのか、その具体的な活用法や活用ツールを紹介しましょう。

 

 

1 決算短信を活用することの意義や影響

決算短信は企業が公式に発する最も早い経営情報(業績結果と財政状況)であることからその企業の現状を計ることが可能な情報です。そのため投資においては今後の投資の判断材料として不可欠な情報であり、ビジネスでの取引等においても同様のことが言えるでしょう。

 

 

 

1-1 決算短信がもたらす投資への影響

決算短信の発表後に株式市場が大きく動くケースも少なからず見られるため、決算短信が投資の判断に一定の影響を与えるといっても過言ではないはずです。ここではそれがどのような影響を与えるのかを紹介します。

 

①決算短信の開示により株価が高騰するケース

決算短信は四半期ごとに発表されるものですが、年次決算だけでなく四半期の決算短信でも発表後に株価が大きく上昇するケースも少なくありません。

 

・ソフトバンクグループ株式会社

ソフトバンクは2019年8月6日に2019年3月期第1四半期決算発表を行いました。翌日の株価は、発表日の終値9,433円より約500円高い9,930円で始まり高値は10,105円、終値では10,050円となっています。つまり、前日よりも 約6.5%も大幅な上昇となったのです。

 

この高騰の理由は同1四半期の決算短信の内容から理解できるでしょう。その内容は、売上高が対前年同期比4%増、営業利益が同49.2%増、税引前利益が同637.8%増、親会社の所有者に帰属する四半期純利益が前年度期の56.8倍という結果です。

 

同社の株価の高騰は、良好な業績を素直に株式市場が好感した結果といえるもので、ソフトバンクの株価が日経平均株価の当日の上昇分である155円のうち70円近くを押し上げています。

 

このように決算短信の内容がその企業の株価はもとより株式市場全体に大きく影響することもあるわけです。

 

②決算短信の開示により株価が急落するケース

決算短信の内容が株価を急落させるというケースも少なからず見られます。急落する原因は当該年度の業績の落ち込み、停滞だけでなく次期(開示時期には当期)における業績予想での落ち込みなどにも強く反応する例が少なくありません。

 

・ファナック株式会社

ファナックは2018年4月26日の大引け後に決算発表を行いました。翌日の株価は、発表日の終値25,985円より約3,500円低い22,485円で始まり安値は22,390円、終値で23,560円となっています。つまり、前日よりも約9.3%も大幅な下落となったのです。

 

18年3月期の決算短信によると、売上高は35.3%増、営業利益は49.9%増、当期純利益は42.5%と大幅な上昇でした。一方、2019年3月期の連結業績予想では売上高が△12.7%、営業利益が△33.9%、経常利益が△34.4% と大幅なマイナス予想となっています。

 

決算短信の発表と同時に、従来未定としていた前期の期末配当の発表(期末配当297.75円)がありましたが、今期の年間配当は未定とされています。

 

2018年3月期は好業績でそれに対応する増配も決定されましたが、決算短信後の株価の急落は19年3月期の業績予想の低下や配当の未定などに対する不安が大きくなった結果といえるでしょう。

 

・GMB株式会社

独立系自動車部品メーカーであるGMBは2018年3月期の決算発表を5月10日に予定していましたが、5月7日の大引け後に延期すると発表しました。

 

翌日の株価は、発表日の終値1,735円より240円低い1,495円で始まり安値は1,489円、終値で1,535円となっています。つまり、前日よりも約11.5%も大幅な下落となったのです。

 

決算発表及び決算短信の開示の延期の理由は、自社製品の一部でデータの書き換えという不適切行為が判明したこととされています。同社では原因の究明や再発防止を講じるとともに関連する費用などを明らかにするとのことですが、決算発表については未定とされていました。

 

このような決算短信の開示の延期は少ないながらも年間を通じて見られますが、上記のように株価が急落するケースも少なくありません。

 

③決算短信の発表が株価に影響しないケース

株価の動きは様々ですが、好業績となっている決算短信の発表があってもあまり変化しない、反応しないケースも見られます。

 

・小松ウオール工業株式会社

内装仕上工事業や建具工事業を営む小松ウオール工業は2018年4月24日に決算発表を行いました。翌日の株価は、発表日の終値2,367円より50円高い2,417円で始まり高値は2,491円、終値で2,420円となっています。つまり、前日よりも約2.23%の小幅の上昇となったのです。

 

また、翌日から1週間ほどの終値は約2,350円~2,430円で推移しており、決算短信発表後の株価の動きは大きなものとは言えないでしょう。

 

同社の18年3月期の決算短信によると、売上高は前年同期比7.3%増(17年度は0.8%増)、営業利益は11.8%増(17年度△29.0%)、経常利益は9.6%増(17年度△25.9%)と業績の回復が見られました。また、19年3月期の業績予想は18年と同等以上の内容が見込まれています。

 

このように株価にプラスの影響を与える好業績の内容となっている決算短信の発表があっても株価に大きな変化が見られないことも少なくないのです。

 

 

1-2 決算短信がもたらすビジネスでの取引等への影響

決算短信の内容によっては株価や株式市場に大きな影響を与えることがありますが、ビジネス分野においても影響が生じるケースも少なくないでしょう。

 

①企業の資金調達

企業が金融機関から融資を求める際、金融機関から決算書の提出が求められ決算短信の内容が融資に影響することもあるのです。

 

上場企業の場合は、決算書として有価証券報告書の提出が法的に義務付けられていますが、年次の報告書は決算短信の開示よりも遅くなります。そのため融資時期や融資の内容によっては決算短信が融資の評価に大きな影響を及ぼすこともあるのです。

 

決算短信は公認会計士や監査法人の法的な監査の対象外ですが、投資家保護の観点から証券取引所が上場企業に要請している開示書類です。しかし、一般的には会計士等の管理下で作成されるケースが多く、また、取引所からの求められる書類であるため信頼性は決して低くありません。

 

つまり、有価証券報告書のような法的な信頼性はないですが、決算短信の内容は投資家への影響が高いことから決算書としての信頼性は高いといえるでしょう。

 

そのため、最新の有価証券報告書が時期的に間に合わない場合などでは決算短信がその役割を担ってくれるのです。

 

融資の判断は各金融機関で多少異なりますが、収益性(業績等)、安全性(負債等)や担保となる資産などが融資の判断材料となるでしょう。特に直近の利益面の評価は重視されることが多いため、最新の決算短信の内容は重要となるのです。

 

②企業間の取引

企業が他社との方法取引を行うにあたり取引相手を探し取引の開始を判断するためにはその判断材料が欠かせませんが、それに決算短信が利用できます。

 

企業が取引相手を探し取引を決意するためには、その企業が自社にとって儲かる相手であるのか、取引してリスクを負うことにならないのかといった収益性や安全性の判断が不可欠です。

 

その点について決算短信は、直近の業績や財政状態のほか次期の業績予想も示されているため、取引相手としての収益性、成長性や安全性が大まかに掴めます。また、経営目標、経営戦略や経営課題などもコンパクトに記載されているため、その企業の今後の動向や成長の可能性などを垣間見ること

ができるのです。

 

有価証券報告書の内容をじっくり分析・評価することは重要ですが、分析する内容や量が多いため、評価するまでに相当な時間を要するケースも少なくないでしょう。そうした分析の時間に余裕がない場合などには決算短信がその役割の一部を果たしてくれるのです。

 

③M&A

企業が他の企業を買収したり、合併したりする場合、その対象相手が適しているかどうかの分析・評価が必要となり、その際に決算短信が利用されることもあるでしょう。

 

一般的にM&Aが実施される場合、デューデリジェンスとして財務、税務やビジネスの面から分析・評価が実施されます。その際には有価証券報告書のような法的に信頼性のある資料など利用されますが、ケースによっては決算短信が利用されることもあるでしょう。

 

有価証券報告書の提出まで待てないなどの時間的制約のある場合や、M&Aの規模が小さい、重要度が低い場合などでは決算短信も判断材料の一つになることも十分あり得るのです。

 

 

1-3 決算短信がもたらす就活への影響

学生の就活や社会人の転職などの際に、決算短信は彼らが企業を選定するための判断材料として役立つでしょう。

 

就職先を評価するポイントは、希望の業種・職種、年収や休日数などの待遇面のほかに、企業としての成長性・発展性や倒産リスクが低いという安全性などがあります。

 

これらの要素のうち決算短信では成長性や安全性をある程度計ることが可能です。特に決算短信は、最初のページに業績や財政状態がサマリー的に示されているため、会計知識が少ない学生などの方にも比較的理解しやすいでしょう。

 

就活者が自分で対象企業の成長性や安全性を評価したい場合には決算短信は有力な判断材料の一つになり得ます。

 

 

2 決算短信の構成・内容

ここでは決算短信を有効活用するために、その基本的な内容や構成を確認していきましょう。

 

 

 

2-1 決算短信とは

決算短信とは、証券取引所の要請により企業が開示しなければならない決算情報です。証券取引所に上場している企業等に要請される開示資料であるものの、投資家保護の観点から重要視されており対象企業は理由がない限り提出しています。
投資家保護の目的では法的に提出義務のある有価証券報告書がありますが、年次の有価証券報告書の提出期限は決算期日後3カ月以内と決して早いとは言えません。

 

一方、決算短信は決算期日後45日以内の開示が適当で30日以内が望ましいとされており、大半の企業はそれらを遵守しています。つまり、年次ベースの決算短信は有価証券報告書よりも2分の1程度の期間で開示されるという速報性があり、投資家や企業等にとっては重要な情報となっているのです。

 

決算短信の内容は財務諸表のほか業績、財政状況や経営戦略などの情報をコンパクトにまとめたものがあり、有価証券報告書のサマリー的な役割を果たすものといえるでしょう。

 

速報性や要約的なイメージから業績等の数値に不安を抱く方がいるかもしれませんが、会計士等の会計の専門家の目を通して作成されるケースがほとんどであり信頼性は決して低くありません。ただし、業績値等については後日若干の修正が入ることもあります。

 

決算短信の開示は一般的に年4回で四半期ごとの開示となっていますが、第4四半期は年次ベース(本決算)の決算短信となります。

 

 

 

2-2 決算短信の構成

ここでは決算短信の構成がどのようになっているかを簡単に説明しましょう。

 

決算短信の構成内容を掲載項目で示した場合、一般的には以下のようになっています。

 

  • 表示ページ:開示企業名及び住所等、業績及び財政状況のサマリー
  • 経営成績

 

(1) 当期の経営成績の概況
(2) 当期の財政状態の概況
(3) 今後の見通し
(4) 利益配分に関する基本方針及び当期・次期の配当
・ 会計基準の選択に関する基本的な考え方
・ 連結財務諸表及び主な注記
(1) 連結貸借対照表
(2) 連結損益計算書及び連結包括利益計算書
(3) 連結株主資本等変動計算書
(4) 連結キャッシュフロー計算書
(5) 連結財務諸表に関する注記事項

 

 

 

2-3 決算短信の主要な項目の内容

決算短信の主要な項目の内容を紹介します。

 

①表紙ページ

決算短信の表紙ともいえる最初のページ(表紙ページ)には、開示企業名及びその住所等、業績及び財政状況のサマリー情報が掲載されています。たとえば、東京エレクトロン株式会社の2018年3月期の決算短信(連結)では次のように表示されているのです。

 

・開示企業名及び住所等

上場会社名 東京エレクトロン株式会社
コード番号 8035  URL http://www.tel.co.jp
代表者 (役職名) 代表取締役社長 (氏名) 河合 利樹
問合せ先責任者 (役職名) 経理部長 (氏名) 笹川 謙 
など

 

・業績及び財政状況

「1. 2018年3月期の連結業績(2017年4月1日~2018年3月31日) 」
(1) 連結経営成績               (百万円未満切捨て)

 

  売上高 営業利益 経常利益 親会社株主に帰属する当期純利益
2018年3月期 百万円
1,130,728 

41.4
百万円
281,172

80.6
百万円
280,737

78.2
百万円
204,371

77.4
2017年3月期 799,719 20.4 155,697 33.3 157,549 32.0 115,208 47.9

 

業績に関しては、まず売上高、営業利益、経常利益と当期純利益が掲載され、上段に当該年の業績、下段に前年の実績が示されます。%表示は前年同期比での増減率で、△で示される場合は減少率となるのです。

 

次に1株当たり当期純利益や自己資本当期純利益率等の利益率の指標が示されます。

 

  1株当たり当期純利益 潜在株式調整後1株当たり当期純利益 自己資本当期純利益率 総資産経常利益率 売上高営業利益率
2018年3月期
2017年3月期
  円 銭
1,245.48
702.26
  円 銭
1,241.22
 700.35
   %
29.0
19.1
   %
25.9
18.0
   %
24.9
19.5

 

以上の内容から業績の善し悪し、収益性の程度などがある程度把握できるはずです。

 

(2) 連結財政状態

次に貸借対照表(B/S)の大まかな構成の状況が示されます。

  総資産 純資産 自己資本比率 1株当たり純資産
2018年3月期
2017年3月期
  百万円
1,208,705
957,447
  百万円
771,509
645,999
    %
63.5
67.2
円 銭
4,674.49
3,919.50

 

自己資本比率が示されているため、負債の依存度が容易に掴めます。そのため企業の安全性を計る参考になるでしょう。

 

(3) 連結キャッシュフローの状況

次はキャッシュフロー(CF)計算書の結果が示されます。

  営業活動によるキャッシュフロー 投資活動によるキャッシュフロー 財務活動によるキャッシュフロー 現金及び現金同等物期末残高
2018年3月期
2017年3月期
  百万円
186,582
136,948
  百万円
△11,833
△28,893
   百万円
△82,549
△39,380
百万円
257,877
164,366

 

企業におけるキャッシュの状況が把握できるため、資金繰り等での安全性、資金管理の程度、投資意欲などがある程度評価できます。

 

「2. 配当の状況」

  年間配当金 配当金額 (合計) 配当性向(連結) 純資産配当率(連結)
第1四半期末 第2四半期末 第3四半期末 期末 合計
2017年3月期
2018年3月期
円 銭

円 銭
128.00

277.00

円 銭

円 銭
224.00

347.00

円 銭
352.00

624.00

百万円
57,752

102,398


50.1

50.1


9.6

14.5

2019年3月期(予想)   390.00   433.00 823.00   50.0  

 

「 (注) 2018年3月期の期末配当額については予想額であります。本予想につきましては、本日公表の「2018年3月期配当予想の修正に関するお知らせ」をご参照 ください。」

 

配当に関しては以上のような情報が記載されています。上記のとおり、配当に関する発表は別紙で行われたり、別の日に発表されたりするケースが少なくありません。

 

「3. 2019年 3月期の連結業績予想(2018年 4月 1日~2019年 3月31日)」
(%表示は、通期は対前期、四半期は対前年同四半期増減率)

 

  売上高 営業利益 経常利益 親会社株主に帰属する当期純利益 1株当たり当期純利益

第2四半期(累計)

通期

百万円
690,000

1,400,000


33.5

23.8

百万円
173,000

366,000


40.3

30.2

百万円
173,000

366,000


40.6

30.4

百万円
128,000

270,000


41.2

32.1

円 銭
779.95

1,645.20

 

ここでは当期(2019年3月期)の業績予想が示されますが、予想内容によって株価が大きく影響するケースが少なくありません。また、予想が示されない場合で先行きが不透明であると投資家に判断されると不安から株価が大きく下がるケースもあります。

 

以上のほかには、注記事項の説明があり、期中における重要な子会社の異動、会計方針の変更・会計上の見積りの変更・修正再表示、発行済株式数(普通株式)が記載されます。また、個別業績の概要も見られるでしょう。

 

②経営成績

経営成績の内容は、「当期の経営成績の概況」、「当期の財政状態の概況」、「今後の見通し」、「利益配分に関する基本方針及び当期・次期の配当」で構成されます。

 

・当期の経営成績の概況

ここでは、当該会計年度の事業環境、損益の状況、セグメント別営業概況、などが示されます。

 

事業環境については、事業に関わる重要なマクロ環境やタスク環境が端的に説明されます。たとえば、上記の東京エレクトロンの決算短信では以下のように記述されているのです。

 

「当連結会計年度につきましては、米国や欧州の景気回復が着実に進むなか、中国をはじめアジア地域においても景気は底堅く、世界経済は総じて堅調に推移しました。当社グループの参画しておりますエレクトロニクス産業におきましては、動画配信など、各種クラウドサービスを通じた大容量データ通信が増大するなか、データセンター向けの投資が引き続き活発に行われ、メモリの需要が大幅に拡大しました。加えて、自動車や産業機器向けの需要も拡大するなど、旺盛な半導体需要を背景に、半導体・電子部品の市況は好調に推移いたしました。」

 

上記の事業環境が当該会計年度の業績にどう影響したかが想像できるでしょう。

 

また、損益の状況では、売上高、営業利益、経常利益や当期純利益の内容の説明があり、どのような点が利益に貢献したのか、問題になったのかなどが確認できるのです。

 

海外での売上の比重が大きい企業の場合では、国内売上高と海外売上高に分けた説明が加えられることもあります。

 

複数の事業を展開する企業の場合ではセグメント別営業概況が示されるでしょう。東京エレクトロンの場合は、大きく分けると半導体製造装置とFPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置の2つの事業となり、決算短信では各々の概要が示されています。

 

また、セグメント別の損益計算が示されることもあるでしょう。

 

・当期の財政状態の概況

ここでは当該期の財政状態とキャッシュフローの内容が簡潔に示されます。

 

財政状態として、資産、負債と純資産の内容が個別に示される、つまりB/Sの内容を掻い摘んで説明してくれるわけです。たとえば、資産は流動資産、固定資産に分けられ、各々重要な科目が数値とともに示されます。

 

負債も同様に説明され、純資産では配当に関する説明のほか自己資本比率などの説明もあります。

 

キャッシュフロー(CF)については、業績サマリーの内容を補足する形で説明され、営業CF、投資CF及び財務CFの結果に至った主な要因が示されるのです。

 

・今後の見通し

今後の見通しでは、その企業の主要事業に関する需要の動向等とともに当期の業績予想が説明されます。たとえば、東京エレクトロンの場合では、半導体製造装置やFPD製造装置に関わる設備投資の需要動向などが示されるのです。

 

また、表紙ページのサマリー部分で業績予想が示されますが、この箇所でその内容をもう少し詳しく説明されることになります。具体的には、主要なセグメントに分けた簡易な予想損益計算書として掲載されたりするのです。

 

また、M&Aや特定の問題等による業績への影響について言及されることもあるでしょう。

 

・利益配分に関する基本方針及び当期・次期の配当

この箇所で配当政策に関しての説明があり、表紙ページのサマリー部分での配当情報の内容がもう少し詳しく伝えられます。

 

配当性向に関する考え方、年間配当金の最低限度、予定の配当金の見直しに関する条件等が示されるため、投資家にとっては重要な情報となるはずです。加えて自己株式の取得などに言及されるケースもあるでしょう。

 

③会計基準の選択に関する基本的な考え方

「会計基準の選択に関する基本的な考え方」については、以下のような内容が示されるだけです。

 

「当社グループは、日本基準により連結財務諸表を作成しております。IFRSの適用につきましては、国内外の導入動向等に注視しつつ、適切に対応してまいります。」(東京エレクトロン)

 

④連結財務諸表及び主な注記

ここではその企業の財務諸表とその主な注記が示されます。当該年度と前年度を対象として、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書が掲載され、株主資本等変動計算書は当該年度分が掲載されるのです。

 

そして、財務諸表に関する主な注記の説明となり、以下のような項目内容が示されます。

 

  • 継続企業の前提に関する注記
  • 当連結会計年度における重要な子会社の異動
  • 会計方針の変更・会計上の見積りの変更・修正再表示
  • 連結損益計算書関係
  • セグメント情報
  • 1 株当たり情報
  • 重要な後発事象

 

 

3 決算短信の見方・見るポイント

投資やビジネス等で決算短信を活用するためには、どのように決算短信を見ればよいか、そのポイントを説明しましょう。

 

 

 

3-1 決算短信における業績・収益性の見方

投資やビジネスで対象企業を評価するためには、その企業の業績動向や収益性の確認は不可欠です。ここではその点を決算短信のどの部分で確認するかを説明します。

 

①業績動向

まず、表紙ページのサマリー部分が確認のポイントとなりますが、特に最初の連結経営成績が極めて重要です。

 

ここでは対象年度のほか前年度の売上高、営業利益、経常利益と当期純利益が示されるとともに増減率も表示されているため、業績動向が一目瞭然となります。

 

たとえば、東京エレクトロンの2018年3月期決算短信の内容では、売上高は対前年同期比41.4%増と大幅な上昇で、17年3月期の20.4%をはるかに上回る高い伸びが確認できます。

 

17年の20.4%増も高い伸び率ですが、18年の伸びはその2倍となるもので、いかに売上が好調であるか判断できるでしょう。

 

また、利益面については売上以上の好結果となっています。本業の儲けを示す営業利益は80.6%増、経常利益は78.2%増、当期純利益は77.4%増と売上高以上の高い伸び率が実現されているのです。17年におけるこれらの利益群の伸び率も30%~50%の高い伸び率でしたが、18年はそれを上回る好結果となりました。

 

このように現状までの業績動向を瞬時に概観することが可能で、さらにもう1期前の決算短信の内容を確認すればより正確な動向が把握しやすくなるでしょう。

 

ただし、今後の動向がより重要となるため、連結業績予想、当期の経営成績の概況、今後の見通しの情報を加えて評価することも必要です。

 

東京エレクトロンの2019年3月期の予想では、売下高は23.8%増、各利益は約30%増を見込んでいます。19年の業績は、18年ほど伸び率は高くないですが、決して低い伸びではなく事業は比較的好調と判断しても間違いではないでしょう。また、当期の経営成績の概況は当期の業績結果、今後の見通しは当期以降の業績予想の根拠となる情報であることから確認しておく必要があります。

 

東京エレクトロンの決算短信の内容から判断すると、同社と取引のある事業者は18年を上回る仕事量が予想され、業績アップが期待できるはずです。また、取引のない事業者にとっては、同社での需要増を背景とした原材料等の新たなサプライヤーやサービス提供者の出現を求める機会が生じるかもしれません。つまり、取引を求める事業者にとっては、新規取引のチャンスが期待できるのです。

 

株価への影響については、業績アップを背景とした上昇がみられる可能性があるでしょう。ただし、株価の変動にはさまざまな要因が絡むため、業績アップが上昇に繋がるとは限りません。特に今までに上昇しすぎたり、買われ過ぎたりしていると、逆に下降したり低迷したりすることもあるため注意が必要です。

 

②収益性

収益性については売上高に対する営業利益の割合などを見ることで評価できます。

 

決算短信では、1株当たり当期純利益、自己資本当期純利益率、総資産経常利益率、売上高営業利益率が表示ページの連結経営成績に掲載されており参考になるでしょう。

 

たとえば、東京エレクトロンの場合、18年3月期の売上高営業利益率は24.9%で17年の19.5%を大きく上回る結果となりました。一見高そうな値ですが、これだけでは判断できないため、業界平均値やライバル会社の値との比較が必要です。

 

ライバル会社の1社である株式会社SCREENホールディングスの2018年3月期の売上高営業利益率は12.6%、17年は11.2%となっています。SCREENホールディングスの場合、半導体製造装置やFPD以外の事業もあるため、単純な比較はできないですが、それでも東京エレクトロンの方が倍以上の値となっているのです。

 

つまり、本業での儲ける力は現状では東京エレクトロンに軍配が挙げられることになり、高く評価されるでしょう。

 

また、自己資本当期純利益率は自己資本でどれだけ利益を稼げたかを示す指標、総資産経常利益率は総資産でどれだけ経常利益を稼げたかを示す指標であるため、収益性とともに効率性を計ることができます。

 

これらも絶対値では評価しにくいのでライバル会社との比較が重要です。18年3月期のSCREENホールディングスの自己資本当期純利益率は18.2%、東京エレクトロンは29.0%となっています。SCREENホールディングスの総資産経常利益率は12.4%、東京エレクトロンは25.9%です。

 

以上の簡単な比較ですが、両者の収益性と効率性には大きな差があり、東京エレクトロンの方が現状では資産を効率的に活用して利益を稼ぐ力が高いと考えてもよいでしょう。

 

 

 

3-2 決算短信における安全性の見方

簡単な安全性の確認は決算短信の表示ページの連結財政状態、連結キャッシュフローの状況、当期の財政状態の概況と今後の見通しから可能です。

 

まず、連結財政状態の自己資本比率を確認する必要があります。自己資本比率は総資産に対する自己資産の割合であることから、負債の依存がどれだけ少ないか多いかを確認できるわけです。

 

先の東京エレクトロンの決算短信(2018年)の値は63.5%となっており、一般的に多いといわれる25%~40%を大きく上回っています。自己資本比率も業種や業態でその平均値に大きな差があるため、それらやライバル会社との比較が必要です。

 

同社と先のSCREENホールディングスを比較すると、前者は63.5%、後者は46.7%と両者ともに高い数値ですが、東京エレクトロンの方が高く自己資金の割合の面での安全性は高いと評価されます。

 

次にチェックすべきポイントはキャッシュフローの状況です。18年の東京エレクトロンのキャッシュフローの状況(単位は百万円)は、営業CFが+186,582、投資CFが△11,833、財務CFが82,549で、期末の現金及び現金同等物期末残高257,877となっています。

 

まず、営業CFが前年よりも約50,000増加し、投資CFのマイナス額を一桁上回る内容となっており、資金繰りの面では良好といえるでしょう。財務CFは営業CFの大きさを背景に減少となっており、また期末の現金及び現金同等物期末残高も前期より約93,500も増加しているため、安全面では健全と判断できます。

 

ただし、投資CFが2期連続で営業CFより1桁少ない額となっており、積極的な投資があったとは言えません。設備や研究等に対する投資は将来のキャッシュを生み出す源泉となり得るため、控えめの投資は経営上好ましいとは言えず経営戦略との整合性の確認が必要です。

 

なお、「今後の見通し」などで今後の需要動向を確認して安全性への影響を計っておくことも重要になるでしょう。

 

 

3-3 配当・自己株式の取得の見方

配当や自己株式の取得に関する情報は株価への影響も大きいため、投資家にとっては重要です。また、配当の内容は企業の業績や財政状況を反映している面が大きいこともあり、企業の収益性や安全性を間接的に計る指標にもなるほか、株主への利益還元といった考えが見えます。

 

配当の内容は、決算短信の表示ページの「配当の状況」と経営成績の「利益配分に関する基本方針及び当期・次期の配当」で確認できます。

 

配当の状況では、当該年と前年の配当内容として、年間配当金や配当性向(純利益に対する配当額の割合)の内容が示されるのです。たとえば、18年3月期の東京エレクトロンの配当は、第2四半期末に1株当たり277.00円、同期末に347.00円で、年間では624.00円となっています。17年は年間で352.00円となっていたため、年間では約1.8倍の大幅な増配となっているのです。

 

配当性向については前年と同じく50.1%ですが、利益が大幅に増加したためそれに伴い増配となっています。一方、先のSCREENホールディングスの場合は、年間配当金は110.00円、配当性向は18.1%です。株価の違いがあるため、配当金額を単純に比較できないですが、配当性向では東京エレクトロンの方が約2.8倍以上大きく株主への利益還元の意識が高いといえるでしょう。

 

Yahoo Japanファイナンスで表示(2018年8月10現在)されている会社予想の配当利回り(購入した株価に対する配当金額)は、東京エレクトロンが4.39%、SCREENホールディングスが1.91%です。このように東京エレクトロンの場合は配当額だけでなく、配当利回りも投資家にとって魅力的なものになっています。

 

なお、配当についての情報は、決算短信以外で「剰余金の配当(平成30年3月期中間配当)に関するお知らせ」などとして発表されるのが通例で、その修正なども随時発表されます。

 

 

4 決算短信の活用と注意点

決算短信は企業の業績や財政状況を迅速に知らせる貴重な資料ですが、株価への影響の判断が難しい、読み解く能力が必要、解析するのに一定の時間がかかる、などの注意すべき点もあります。

 

 

4-1 投資での活用と注意点

決算短信は投資家保護のためにいち早く決算情報が開示されるものであり、投資家にとっては活用すべき資料といえるでしょう。しかし、株価の変動や株式市場の動向は複雑なので、決算短信の情報が直接的に株価等へ影響したり、影響しなかったりすることもあるので注意が必要です。

 

①好業績でも株価の上昇に繋がらない、逆に下落するケースもある

決算短信の業績内容が良好であっても株価があまり上昇しないケースや逆に下落するケースもあります。

 

1-1の③で説明した小松ウオール工業のような例は少なくありません。こうした状況の理由はいくつか考えられますが、その1つは市場予想であるコンセンサス予想(複数のアナリストによる予想)や会社予想とのギャップの有無やその程度が挙げられます。

 

簡単に言うと、決算短信の業績内容がコンセンサスや会社予想を大きく上回ると株価は大きく上昇するケースが少なくないのです。逆に大きく下回ると大幅な下落に繋がるケースが多くみられます。また、業績結果がコンセンサスと近ければ、株価はあまり大きく動かないこともあるわけです。そのためコンセンサスや会社予想と業績結果とのギャップ内容が投資の判断材料として活用されるケースが少なくありません。

 

しかし、上記のような傾向がすべての銘柄で起こるわけではなく、またコンセンサス予想が行われる銘柄は上場銘柄の20%もないといわれるほど限られています。そのため、あくまでそうした可能性があるという点を認識して他の要因も踏まえ、株価の動向を見ながら投資の判断を行う必要があるでしょう。

 

また、コンセンサス予想以外にも既に好決算を見越して買いが先行しているケースでは、前年度よりもやや上昇する程度の内容なら逆に下落することもあるのです。つまり、現在の株価が決算発表での「上昇した業績内容」を既に織り込んでいると、投資家の期待を上回らない業績では株価は下落しやすくなります。

 

そのため短期の株式チャートだけでなく、月単位、年単位のチャートで株価の動向を確認し、今まで業績の割に買われ過ぎていないかというような点もチェックする必要があるでしょう。

 

②業績が不調でも株価が上昇するケースもある

企業によっては過去2~3年が赤字であるなど業績が不調で、株価も低迷しているケースも見られます。しかし、そんな企業の決算短信で当該期の業績が赤字として示されているにもかかわらず、開示後に株価が上昇することがあるのです。

 

そうした場合の上昇する理由として、赤字幅が大幅に減少している、事業環境が有利な状況に変わっている、今期の業績がプラス予想となっている、といった点が挙げられます。

 

たとえば、3事業年度で比較した営業利益率が△20%⇒△5%⇒+6% というような回復がみられるケースです。また、次期の業績予想ではプラス転換する内容に加え、今後の見通しで事業環境が好転し需要の拡大が進むというような内容を含む場合などでは、当期の結果が悪くても株価が上昇しやすくなります。

 

③決算短信発表後の翌日の寄り天もある

好業績の結果、決算短信発表後の翌日の寄付きから上昇していく銘柄も少なくないですが、寄り天(1日の高値が寄付きとなるケース)となりその後株価が下落するケースも少なくありません。

 

好業績を反映して買いが膨らみ寄付きで高値となるケースが多いです。しかし、既に好業績を予想して買いを入れていた投資家が今後の上昇材料がないと判断すると株価が寄付きの高値の後ズルズルと下落する、というケースもよく見られます。

 

業績の予想とのギャップや今後の業績に対する期待の程度でこうした現象が出現するわけです。今後の大幅な業績の拡大が期待できなければ、一定のリターンを手にした投資家による売りが大きくなり株価が下落していくことは少なくありません。

 

④決算短信発表前の購入にはリスクが伴う

決算短信の開示で好業績が明らかになって株価が高騰するケースもありますが、あまり変動しない、逆に下落するケースもあるため、決算短信の開示前の投資にはリスクが伴います。

 

コンセンサス予想を上回る好決算を予想できれば、株価の上昇を見込み投資できるわけですが、それは簡単ではないためリスクが伴うのです。つまり、予想が外れれば、株価は下落し含み損を抱えることになりかねません。

 

そのため一般的には決算短信発表前の投資は回避される傾向が見られます。ただし、目当ての銘柄の業績が当期だけでなく次期以降でも好調が期待できる事実があれば短期的な株価の変動を考慮せず投資するという考え方も悪くないでしょう。

 

 

4-2 AIによる決算短信の解析

決算短信を有効利用するためには、既に説明してきました決算短信の見方や分析方法などを理解し使える必要がありますが、それには一定の時間や手間がかかります。しかし、AIによる決算短信の解析サービスを利用すれば、ある程度の内容をごく短時間で把握することができるのです。

 

たとえば、以下のようなサービスが提供されています。

 

・カブドットコム証券株式会社

同社は、企業の決算発表後極めて短時間で決算発表内容の定性情報を含む内容をまとめる自動決算分析レポート「xenoFlash(ゼノ・フラッシュ) for kabu.com」を提供しています。

 

「適時開示情報に掲載された決算短信のメタデータ(XRBL)を所定のロジックで直観的にわかりやすい円グラフ・棒グラフ等の形式にシステム処理によりインフォグラフィックス化しています。」という説明があるように、決算情報のまとめの文章だけでなく、図表を活用した理解しやすいレポートとなっているのが特徴です。

 

・日経テレコン(株式会社日本経済新聞社)

日経テレコンからAIを利用した決算の要旨を完全自動で文章配信する「決算サマリーVisual」がリリースされています。

 

このサービスは、決算短信のほか日経の経済データベース「NEEDS」に蓄積された膨大な情報をもとに投資に必要な情報をAIが抽出し、開示後約3分で図解形式のレポートを提供するというものです。

 

前回発表からの変化や業績の達成率が一目瞭然となるほか、過去からの業績推移や売上の変動要因などを追求した財務情報の一覧も可能です。

 

このような決算短信等の情報の要点をまとめたり、投資情報として解析したりできるAIを活用した解析サービスは、自分自身の解析能力の補完や手間を省くツールとして利用できるでしょう。

 

 


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