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決算期を変更するときに気をつける3つのポイント

決算期は会社設立時に必ず決めなければならない事項の一つですが、1度決めたら、2度と変更できないものなのでしょうか?実は何度でも決算期を変更することは可能です。
今回の記事では決算期の変更手続きに関して詳しく説明します。
まず、決算とは何か、決算期とは何かということから見ていき、決算期を変更するときに気をつける3つのポイントである、①決算期の決め方、②決算期を変更する手続き、③決算期を変更するメリット・デメリットなどを解説します。

 

 

1 決算とは

決算とは、決められた期間(通常は1年ですが、1年以下の期間にすることも可能です。会計期間と言います)の収益と費用を集計し、損益をまとめることを言います。
例えば12月決算とは「平成29年12月1日から平成29年12月31日までを会計期間とし、損益の集計を12月末日で行うこと」です。
決算には大きく分けて月次決算、年次決算の2つがありますので、この2つを紹介します。

 

 

1-1 月次決算

月次決算とはその名の通り、1か月ごとの決算になります。後で紹介する年次決算よりも簡易なものになります。月次決算の目的は、適時の業績把握とその結果の会社の経営判断への役立てにあります。

 

月次決算を進めるときには以下のことに留意が必要です。

 

 

売上の締めと仕入の締めが重要 営業部に月末締めの請求書をなるべく早くあげてもらう
仕入先には月末締め請求書の送付期限を連絡する 仕入先から郵送では間に合わない旨の連絡をもらったとしても、先にファックスやメールで送付してもらう
社内には立替経費精算書の提出期限を連絡する とくに営業部は外出が多く、提出が遅れがちなので、月次決算の重要性を理解してもらい、提出期限を守ってもらうようにする
月次会議までには月次決算を確定し、試算表を完成させる 経理部リーダーはスケジュール表を作成して進捗状況の管理をする

 

月次決算では最初に述べましたように、経営の意思決定に役立つ月次資料を作成する必要があります。具体的にどんな資料が考えられるかを以下に記載します。

 

部門別損益計算書 テレビとパソコンとエアコンを製造販売している会社があったとします。どの事業に力を入れ、どの事業を縮小するかを判断するためには、テレビ部門、パソコン部門、エアコン部門の部門別収支を把握する必要があります
月次損益推移表 科目別、部門別数値の推移を把握します。そして、異常値がないかを確認します。例えば、工場の稼働率が他の月と比較して低いのに、労務費が他の月よりも高ければ「異常」といえます
予算実績管理表 予算の達成度を費目別に把握します。未達成なら原因を追究し、対策を立てます。例えば、労務費が予算よりも膨らんでおり、未達成だったとします。原因を追究した結果、従業員の残業が想定よりも多かったということであれば、仕事の効率化に資する設備を導入して、残業時間を削減するということが考えられます
資金繰り表 数か月先までの資金の過不足を把握します。必要なら借入を行うことも検討します
売掛金残高一覧表 売掛金の残高を把握します。回収遅延先と金額を確認します

 

 

1-2 年次決算

年次決算とは、1年間の全ての収益と費用を集計し、損益をまとめ、最終的に決算書を作成する手続きのことをいいます。
決算書は、株主や取引銀行などの外部の利害関係者に対して、期末の財政状況や年間の経営成績を報告する資料のことを言います。期末の財政状況を表したものが貸借対照表であり、年間の経営成績を表したものが損益計算書になります。

 

年次決算を進めるときには以下のことに留意が必要です。

 

  • 決算では、決算日の2~3か月前から期末損益を予測することに留意する ・・・ 決算の2~3か月前に多額の利益が出ることが予測できていえば、経営者が全額損金にできる保険に入るなどの節税対策を行うことができます。また早い段階から税金がいくら発生するかが予測できていれば、納税資金を別口座にプールしたり、借り入れを行ったりすることができます。
  • 余裕をもった決算スケジュールを立てる ・・・ 決算書については株主総会に提出し、承認を得る必要があります(会社法438条2項)。つまり、株主総会前に決算書ができている必要があるので、株主総会の日程から逆算して決算スケジュールを立てる必要があります。
  • 通常の月次決算処理を終えてから年次決算の処理を始める ・・・ 年次決算は月次決算12回を終えた後の13回目の決算作業になります。年次決算では決算整理作業をします。決算整理作業を進めるにあたっては以下のことに留意が必要です。
  • 貸借対照表の資産・負債の残高を確認 ・・・ 取引先などの計上残高と一致しているか事実確認を行うことが必要です。
  • 前払費用、未払費用、未収収益、前受収益の計上額を確定 ・・・ 契約書や請求書などで期間を確認し、適正な期間損益処理を行う必要があります。
  • 固定資産、繰延資産は当期に負担する償却費を確定 ・・・ 固定資産台帳に基づき償却費を計上する必要があります。

 

 

2 決算期とは

決算期とは、決められた期間の単位で収益と費用を集計する、最終の月のことを言います。
個人事業主の会計期間は暦年(1月~12月)と決められていますので、12月31日が決算期にあたります。
法人の場合は自由に決算期を設定することができます。決算期後のしかるべき時期までに税務申告をしたり、株主総会を開催したりしなければならないため、決算期~2、3か月は決算に携わる方々は忙しい日々を過ごすことになります。

 

 

3 決算期の決め方

法人は自由に決算期を設定することができると書きました。
ここでは法人が決算期を決める6つの理由を見ていきましょう。

 

伝統や慣習から3月末が決算期になっている 上場企業に3月決算が多いという印象をお持ちの方が多いと思います。これは、日本の官公庁が4月~3月を年度としていること(法律で決まる制度変更も4月からとなる場合が多いです。)、学校も3月に卒業するので4月が人事面でも区切りにしやすいことなど、伝統的、慣習的に3月末が区切りになってきたという要因が大きいです
欧米諸国と足並みを揃えるために12月決算にする 欧米諸国で12月決算が一般的なことから、グローバルな事業展開を行う企業などで採用する例が増えています。とくに、海外売上比率が高く、生産・販売拠点を有する在外子会社を多数持つような会社において、決算日を12月末に変更することがあります。また、先に説明しましたように、個人事業主は暦年決算ですので、法人化する際にもそのまま踏襲するケースもあります
親子会社の決算期が統一されるように決算期を決める 親子会社の決算期を統一することにより、以下のメリットを享受することができます。
①投資家等に対して、より透明性の高い財務諸表を開示することができる。逆に親会社と子会社の決算期が異なると、外部環境の変化や内部環境の変化が連結財務諸表に反映されなくなってしまいます。
②企業グループの業績管理・経営計画策定をタイムリーに行うことができる。
お金がたくさんあるときに、税金を支払うことになるように決算期を決める 決算期から2か月後の月末が法人税等の納税期日となるため、手元に現金預金が十分にある時期を決算期としておくと資金繰りの不安を抑えることができます。税金の支払いのために金融機関に借入をする会社もありますが、借り入れをすると、当然、利息を支払う必要があり、なるべくこういったことは避けるべきだと考えます。
繁忙期にはたくさん売上があがり、売掛金が計上されますが、その売掛金が回収されるのは、繁忙期の少し後になるケースが多いです。繁忙期の少し後、現金預金が潤沢になる時期に合わせて決算期を決めるというのもいいかもしれません
税理士が忙しい時期を避けて決算期を決める 税理士は1年の前半、1月~5月までは忙しいです。1月は年末調整・給与所得の源泉徴収票等の法定調書の提出・償却資産の申告、2月~3月中旬は個人の所得税の確定申告・贈与税の申告、4月~5月は3月決算法人の確定申告に追われます。このような時期に税理士に仕事をお願いせざるを得ない決算期にしてしまうと、多忙のため、対応が遅く、ミスも起こりやすくなります。ミスをされてしまうと、そのミスの対応に多くの時間やお金を費やすことになりかねません。なるべく避けることが望ましいです
業務が忙しい時期を避けて決算期を決める 会社の経理担当者にとって決算業務は大変神経を使う業務です。日次、月次などの定例業務に上乗せになります。そのため、通常業務が忙しい時期に決算期を設定すると決算担当者の負担が大変重くなってしまいます。
例えば、商品の製造を行う製造業や商品の販売を行う小売業の場合、決算時に棚卸を行う必要があります。棚卸とは商品や製品の現物確認及び帳簿との照合作業のことを言います。物の動きが多い時期に棚卸を行うのは大変で、間違いも起こりやすくなってしまいます。また、業務が忙しい時期は業績が変動しやすい時期であるということも言えます。そのため、予想外の利益や損失が出てしまう可能性が高くなります

 

 

4 決算期を変更する手続き

通常、定款においてその営業年度を決めるケースが一般的です。決算期変更を行う場合、
定款の営業年度に係る部分を変更する必要がありますが、定款を変更するには株主総会の特別決議が必要です(会社法466条、309条2項11号)。株主総会の特別決議とは、発行済株式総数の過半数にあたる株式を有する株主が出席して臨時株主総会を開催し、その議決権の3分の2以上の賛成による決議のことになります。

 

 

4-1 株主総会の決議後、議事録を作成

なお、会社が特例有限会社(会社法施行により廃止された有限会社の商号を引き続き用いている有限会社をいう)の場合には、株主総会において総株主の半数以上の株主が出席し、かつ当該株主の議決権の4分の3以上の承認を得る必要があります。定款変更案は当然自社で作成することが可能ですが、何年も定款を変更していない場合は現在の会社法実務に即していない定款となっている可能性があるため、司法書士に作成を依頼して、その辺りも見てもらうことが望ましいです。

 

また、株主総会において定款変更案を付議するに際して、通常は、事前に取締役会において、当該付議に関する決議を行うこととなる点にもご留意ください。そして、決議が終わった後に、内容を記載した株主総会の議事録を作成します。

 

 

4-2 税務署等への届出

所轄税務署、都道府県税事務所、市役所などへ異動届を提出します。その際に、作成した株主総会議事録のコピーも添付します。異動届については、国税庁のホームページをご参照ください。なお、この異動届に限らず、税務署に提出する書類は2部用意し、返信用封筒を添えて提出することをお勧めします。このようにしておけば、税務署の収受印が押された書類が後日返送されてきますので、手続きが完了したことが確認できます。

 

 

4-3 決算期変更について、会社法上開示を行う

決算期を変更した場合、会社法上はその旨の開示義務はありません。しかし、連結財務諸表規則第3条第3項に「連結決算日を変更した場合には、その旨、変更の理由及び当該変更に伴う連結会計年度の期間を連結財務諸表に注記しなければならない。」と定められていることから、上場会社等ではこれを準用し、会社法計算書類等において、連結・個別ともに同様の注記を行っている会社が多いです。

 

 

5 決算期を変更するメリット・デメリット

決算期を変更することに伴い、様々なメリットとデメリットが発生します。以下ではこれらについて解説します。まずは、メリットについて解説します。

 

 

5-1 メリット

会社の利益が出すぎてしまう場合の節税策として、また会社の利益の改善策として、役員報酬を改定することが挙げられます。ただ、税務上損をしないためには、役員報酬は同じ決算期で増減できず、毎月「同額」であることが必要です。

 

・役員報酬の変更が早くできる

例えば、毎月100万円支給していた役員報酬を、突然来月から150万円に増額してしまうと、差額の50万円は税務上の費用とすることはできません。変更した月のみではなく、決算月が終わるまでずっと差額分は税務上の費用とすることができません。変更してから決算月まで6か月あったとすると、50万円×6か月=300万円を税務上の費用とすることができなくなります。

 

逆に、毎月100万円支給していた役員報酬を、突然50万円に減額してしまうことも税務上問題があります。この場合、変更した時点で役員報酬の同額の基準が100万円から50万円に変更されてしまいます。つまり、期首から変更月まで6か月あったとすると、50万円×6か月=300万円を税務上の費用とすることができなくなります。

 

役員報酬の変更のためには、決算期末日から3か月以内に株主総会を開催し、そこで役員報酬の支給額変更の決議を取る必要があります。すぐに役員報酬を変更したいのであれば、決算期を変更すればよいです。

 

・月別の利益に大きな変動が見られるのであれば節税になる

 

以下の設例で説明します。
平成30年12月決算の法人を前提として、以下のような利益を出しているものとします。

 

平成30年10月までの利益 300万円
平成30年11月の利益 300万円
平成30年12月の予想利益 2,000万円
平成31年の1年分の予想利益 -1,000万円

 

法人税の税率は所得が800万円までは15%、800万円を超える部分は23.4%で計算します
(平成30年7月時点の税率です。)

 

  決算期が12月の場合 決算期を11月に変更した場合
2年間の利益合計 1,600万円 1,600万円
平成30年の法人税 541万円 90万円
平成31年の法人税 0万円 166万円
2年間の法人税合計 541万円 256万円

 

上記の通り2年間の利益合計は1,600万円とどちらの場合も同じですが、決算期を11月にした場合は541万円―256万円=285万円も節税となりました。これは12月の予想利益の分が翌期に繰り越され、法人税の税率が800万円の所得までは15%であるため、所得が平均化されることから、2年間合計の法人税が減る結果となりました。

 

消費税の課税方針の変更を早めることができる
消費税の税額計算方法には「本則課税」と「簡易課税」という2種類の計算方法があります。
本則課税では以下の計算式で消費税の納税額を決定します。

・消費税納税額 = 預かった消費税 - 自分が仕入れなどで負担した消費税

簡易課税では以下の計算式で消費税の納税額を決定します。

・消費税納税額 = 売上×税率(8%)×業種ごとのみなし仕入率

業種ごとのみなし仕入率は以下のように定められています。

 

第一種事業(卸売業) 90%
第二種事業(小売業) 80%
第三種事業(製造業等) 70%
第四種事業(その他の事業) 60%
第五種事業(サービス業等) 50%
第六種事業(不動産業) 40%

 

簡易課税は厳密な消費税の精算をしないで、売上の種類ごとに決められたみなし仕入率をかけることで納税額を計算するものになります。
そのため、本則課税と簡易課税では有利不利が発生します。
本則課税を選択する場合には何の届出もする必要はありません。しかし、簡易課税制度を選択する場合には事業年度の開始の日の前日までに税務署への届出が必要になります。
明らかに簡易課税が有利なのに、税務署への届出を出し忘れてしまっている場合には決算期を変更することで簡易課税制度を早期に開始することができます。

 

・減税の恩恵をなるべく早く受けることができる

過去の話になりますが、平成27年4月1日以後開始の事業年度から、従来と比べて法人税を減税しました。ここで、2月決算法人を考えてみます。2月決算法人が法人税減税の恩恵を受けるのは、平成28年3月1日~平成29年2月28日の事業年度からになります。
ここで、4月決算に決算期を変更したとすると、事業年度は以下のようになります。

 

  • 平成27年3月1日~平成27年4月30日
  • 平成27年5月1日~平成28年4月30日
  • 平成28年5月1日~平成29年4月30日

 

つまり、平成27年5月1日~平成28年4月30日の事業年度から法人税減税を受けることができるようになり、従来よりも早く法人税減税の恩恵を受けることができたことになります。

 

・消費税の免税期間を延ばすことが可能

会社が消費税の免税事業者だった場合を想定しましょう。1事業年度で売上が1,000万円を超えた場合は翌々事業年度から消費税の課税事業者になります。現時点では売上が1,000万円を超えていないが、事業年度後半に特需の売上が入ることが確実で、この売上の影響により、事業年度全体で売上が1,000万円を超えてしまう場合は決算期変更を行うことにより、消費税の免税期間を延ばすことが可能です。

 

以下の例で具体的に説明します。

  1. 会社は平成30年6月時点で免税事業者である。
  2. 6月決算を12月決算に変更し、変更直後の事業年度を平成30年7月から平成30年12月の6か月とした。
  3. 平成30年7月~平成31年12月にかけての売上高は以下のとおりである。

 

平成30年7月~12月の売上高 400万円
平成31年1月~6月の売上高 650万円
平成31年7月~12月の売上高 400万円

 

決算期を変更しなかった場合は、平成30年7月~平成31年6月が一つの事業年度になり、
この事業年度での売上高は 400万円+650万円 = 1,050万円 > 1,000万円 となります。そのため、平成32年7月~平成33年6月の期で課税事業者となり、消費税を納める必要があります。

 

逆にこの例のように決算期を変更した場合は、平成30年7月~12月の売上高を年換算して1,000万円を超えるかを検討します。すなわち、400万円× 12か月 / 6か月 = 800万円 < 1,000万円となり、この期では1,000万円を超えません。しかし、次の期である平成31年1月~12月の期での売上高は 650万円+400万円 = 1,050万円 > 1,000万円となり、1,000万円を超えます。そのため、平成33年1月~平成33年12月の期で課税事業者となります。決算期を変更しなかった場合と比べると、6か月遅く課税事業者になることができました。

 

 

5-2 デメリット

決算期を変更すればいいことばかり発生するわけではありません。あまり好ましくないことも発生します。以下に紹介するデメリットの影響が重大であれば、決算期変更はしない方がよいと考えられます。

 

・変更した年とその次の年は損益計算書の比較が困難

例えば、あなたの会社が12月決算だったとします。2019年2月に決算期変更に係る手続をして、8月決算に変更したとします。そして、2019年8月期の決算が終わり、損益計算書ができあがってきました。当期(2019年8月期)の損益計算書が会社にとって望ましい数字だったのかをどうかを検討するのに、前期(この場合は2018年12月期)の損益計算書と比較することが有用です。しかし、前期は12か月間累計の損益計算書、当期は8か月間累計の損益計算書になり、単純に比較しても何もわかりません。このような場合は簡便的に前期の損益計算書の各項目の数値を2/3倍して比較するということをしますが、売上や費用の発生について、月ごとのバラつきがある場合は比較してもよくわからないことになります。

 

・決算期を変更した事業年度では以前の事業年度よりも納税が前倒しになる

決算期延長の届出をしていなければ、決算期末の2か月後が法人税・地方税・消費税の納付期限になります。決算期を変更した事業年度は1年未満の事業年度となりますが、決算期末の2か月後が納税の期限というのは変わりませんので、決算期変更をしなかった場合と比較して納税が前倒しになります。そのため、資金繰りに影響が出てしまうことになります。

 

・決算期変更をした事業年度では減価償却資産の償却限度額の計算に調整が必要

法人税法における減価償却資産の償却限度額の計算は、原則として事業年度が1年であることを前提としているため、決算期変更をした事業年度では、償却率の使用に関して事業年度の月数に応じた調整が必要となります。

 

以下の例で具体的に説明をします。

  1. 6月決算を12月決算に変更し、変更直後の事業年度(第10期)を7月から12月の6か月とした。
  2. 200%定率法により償却している減価償却資産Aは、第10期期首において帳簿価額10,000千円、耐用年数8年である(200%定率法償却率 耐用年数8年:0.250)。

10期における減価償却資産Aの償却限度額は以下のようになります。
改定償却率 0.250×6か月÷12 = 0.125
償却限度額 10,000千円×0.125 = 1,250千円

 

・決算期変更をした事業年度では中小法人等の軽減税率適用に調整が必要

中小法人等においては、年800万円までの所得に対して軽減税率が適用されますが、変則事業年度の場合、当該800万円をその事業年度の月数に応じた額に調整計算する必要があります。

 

以下の例で具体的に説明します。

  1. 当社は中小法人である。
  2. 6月決算を12月決算に変更し、変更直後の事業年度(第10期)を7月から12月の6か月とした。
  3. 第10期における法人税の課税所得金額は10,700,250円である。
  4. 適用する軽減税率は15%とする。
  5. 適用する通常税率は23.4%とする。

10期における法人税額は以下のようになります。
所得金額 ・・・ 10,700,250円→10,700,000円(千円未満切り捨て)
法人税額の計算 変則事業年度における年800万円の調整

8,000,000円÷12×6か月 = 4,000,000円
A. 軽減税率部分 4,000,000円×15%=600,000円
B. 通常税率部分 (10,700,000-4,000,000)×23.4% = 1,567,800円
C. 法人税額 (A)+(B)=2,167,800円

 

消費税計算については、決算期変更をした場合には決算期変更をした事業年度のみならず、それ以降も留意が必要

 

基準期間(前々事業年度)が1年未満の場合は、その事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間が基準期間となります。また、前事業年度が7か月以下の場合は、前々事業年度が特定期間となります。なお、基準期間は納税義務免除・仕入税額控除の計算方式・簡易課税の適用要件の判定に用いられます。また、特定期間は納税義務免除の判定に用いられます。基準期間が1年未満の場合は、納税義務免除・仕入税額控除の計算方式・簡易課税制度の適用要件の判定基準金額をその事業年度の月数に応じた額に調整計算する必要があります。一方、特定期間の判定基準金額については、この調整計算は不要です。

 

納税義務の判定について、以下の例で具体的に説明します。
6月決算を12月決算に変更し、変更直後の事業年度(第10期)を7月から12月の6か月とした。
事業年度と各課税売上高の金額は以下のとおりである。

第10期 5,500千円(6か月決算) 第11期 11,000千円 第12期 12,000千円

 

1:基準期間の判定 第12期の前々事業年度 → 第10期(1年未満)
第12期開始の日(×12年1月1日)の2年前の日(×10年1月2日)の前日(×10年1月1日)以後1年を経過する日(×10年12月31日)までの間に開始した各事業年度 → 第10期のみ
2:課税事業者・免税事業者の判定 5,500千円÷6か月×12= 11,000千円 > 10,000千円 
10,000千円を超えるため、課税事業者になります。

 

・決算期変更をした事業年度においては、地方税計算に関しても留意が必要

事業年度が1年に満たない場合、住民税均等割の計算、事業税の軽減税率の適用および地方自治体ごとの超過税率適用に際して、それぞれの基準金額が年額で定められている場合は、当該金額に関して事業年度の月数に応じた調整計算が必要となります。また、これらの計算や住民税・事業税の分割基準(従業者の数)の計算に際して、1か月に満たない端数が生じた場合は切り捨てをすることに留意が必要です。

 

以下の例で、決算期を変更した事業年度における住民税均等割の計算について、具体的に説明します。

 

  • 6月決算を12月決算に変更し、変更直後の事業年度(第10期)を7月から12月の6か月とした。
  • 法人の道府県民税均等割の年額は600千円である。

第10期における道府県民税均等割額は以下のようになります。

600千円×6か月÷12 = 300千円

 

以下の例で、決算期を変更した事業年度における事業税(所得割)の計算について、具体的に説明します。

 

  • 6月決算を12月決算に変更し、変更直後の事業年度(第10期)を7月から12月の6か月とした。
  • 法人の適用すべき事業税(所得割)の税率は以下のとおりである。

 

各事業年度の所得のうち年400万円以下の金額 3.4%
各事業年度の所得のうち年400万円を超え年800万円以下の金額 5.1%
各事業年度の所得のうち年800万円を超える金額 6.7%

 

・第10期における所得金額は11,000千円である。

第10期における事業税(所得割)の額は以下のようになります。

1. 軽減税率適用区分の調整

4,000千円×6か月÷12=2,000千円 8,000千円×6か月÷12=4,000千円

変更直後の事業年度における事業税(所得割)の税率は以下のように読み替える必要があります。

各事業年度の所得のうち年200万円以下の金額 ・・・ 3.4% 各事業年度の所得のうち年200万円を超え年400万円以下の金額 ・・・ 5.1% 各事業年度の所得のうち年400万円を超える金額 ・・・ 6.7%

2. 事業税(所得割)の額

2,000千円×3.4% = 68千円
(4,000千円-2,000千円)×5.1% = 102千円
(11,000千円 – 4,000千円)×6.7% = 469千円
68千円+102千円+469千円 = 639千円

 

 

6まとめ

決算期を変更するときに気をつける3つのポイントである、①決算期の決め方、②決算期を変更する手続き、③決算期を変更するメリット・デメリットについて説明してきました。
お読みくださった皆様の決算期変更に関する理解や意思決定を少しでも助ける記事でありましたら、幸いです。

 

 


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