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決算業務の効率化 決算早期化のメリットやBPRについて紹介!

決算に関連する業務には様々ありますが、全てを含めると、おそらく会社全体の中でも、かなりの時間と労力を要するものとなっていることでしょう。納税のために利益を正しく計算することも必要ですし、金融機関からの融資を円滑に進めるために、決算関係書類の提出を求められることもあります。何よりも、決算業務を確実に行うことは、経営管理のために大きく役立つものとなります。そこで、決算業務はできる限り効率化することを検討すべきでしょう。
決算業務の中には、細かい作業の部分も多いので、これらを効率化できれば時間や労力の削減につながり、人材をより付加価値の高い業務に集中させることも可能となるなど、様々なメリットがあります。
今回は、決算業務の効率化について、その意義やメリットを確認した上で、実際の進め方について、業務フローの見直しとアウトソーシング、IT導入という観点から具体的に説明します。会社経営者の方などは是非参考にしてみてください。

 

 

1 決算業務とは?

「決算」とは、一般的には、納税や株主への報告などのために、損益計算書や貸借対照表といった決算書を作成することだと理解されています。

 

しかしながら、これら決算書を作成するためには、1年に一度だけ集計作業をすれば事足りるわけではなく、普段からの膨大な作業の積み重ねが前提となってきます。

 

決算業務の効率化について考えていくにあたり、まずは決算業務とはどのようなものかについて確認しておく必要があります。

 

決算業務とは、日々の取引の記録とその確認、決算にあたっての調整作業や決算書の作成という一連の業務のことを指します。つまり、一般的には「経理業務」と呼ばれる業務を含んでいます。経理業務と決算業務はつながっていますから、全体を総合して考える必要があるのです。

 

それでは、具体的にそれぞれの業務の内容について、日々行っていく必要がある日次業務、毎月の単位で行う月次業務、年に一度行う年次業務に分けて見ていきましょう。

 

 

 

1-1 日次業務

日次業務とは、日々の伝票処理や会計処理のことを指します。会社が事業を行っていく過程の中では、日々様々な取引が発生します。例えばとてもシンプルな例としては、商品の仕入れや売り上げ、また消耗品の購入や保険料の支払いなどがあるでしょう。

 

これらの取引は全て記録を行う必要があります。そこではいわゆる複式簿記と呼ばれる記帳技術を用いて、一つ一つの取引を帳簿に記録していくことになります。

 

複式簿記の仕組みでは、「仕訳」と呼ばれる記帳形式で記録を行っていくことになりますが、これを使いこなすにはある程度の専門知識が必要です。いわゆる簿記検定のような資格試験で測られるような知識です。

 

こうした記録を、全て経理や財務といった本社部門で行う場合であれば、専門知識や人材を結集することは可能です。しかしながら、実際の取引は営業所など現場で発生することが多く、ここで働くスタッフ全員に複式簿記を習得させるというのは非現実的でしょう。

 

そこで、「伝票」と呼ばれる仕組みを活用します。「伝票」とは、一つ一つの取引記録を簡便的に行うことができるように工夫された仕組みであり、定形のフォーマットに最低限必要な事項を記入するだけで、「仕訳」をするのと同じ情報が蓄積できるというものです。

 

この「伝票」の仕組みは、決算業務の効率化を考える上で大変重要なキーワードになります。その点については後述します。

 

 

 

1-2 月次業務

月次業務とは、一ヶ月ごとに行う必要がある作業です。ただし月次業務では、日次業務とは異なり、経理部門のみで対応が可能となることがほとんどでしょう。

 

月次業務の具体的内容は、日次業務で蓄積された情報の集約です。例えば4月1日から4月30日の一ヶ月間で、日次業務を通じて取引に関する様々な記録が「仕訳」あるいは「伝票」によって蓄積されています。

 

そこで、これらを集約し、「試算表」を作成します。「試算表」とは、文字通り「試しに」「計算する」ための表です。例えば、一ヶ月間トータルで売り上げがどれだけ上がっているのか、月末時点で現金の残高がどれだけあるのか、などを把握し確認するものです。

 

このように、試算表を作成することで日々の記録が正しく行われているかどうかをチェックすることができます。また、その時点での経営状況や資金繰りの状況を把握することができますから、課題を早期に発見し、迅速に対応することが可能となります。

 

そのため、一般的な取扱いとして月次業務に分類しましたが、多いところでは週ごとに作成する場合もあるようです。そのほうがより迅速な対応が可能になるからです。

 

なお、そこからさらに1ヶ月後の月次業務で作成する5月末の試算表は、5月1日から5月31日の集計ではなく、4月1日から5月31日の累計になります。類型しなければトータルの数字が把握できないからです。それ以降も同様です。

 

 

 

1-2 年次業務

1年間が終了し、1年分の情報蓄積が完了すると、いよいよ決算書の作成に向けての作業となります。

 

3月31日までの情報蓄積が必要となりますので、実際には次の年度が始まる4月以降の作業となります。ですから、年次業務の実施時期は翌年度の日次業務と並行することとなります。

 

年次業務では、まず月次業務と同様に試算表を作成し、数字の最終チェックを行います。そして、最終チェックが終わればいよいよ決算書の作成に移っていきますが、その前に、「決算整理」と呼ばれる、決算時特有の会計処理を行う必要があります。

 

決算整理とは、日々の会計処理では把握できない費用や収益を一年分まとめて計上するための業務です。具体的な内容としては、例えば、機械や設備を使用し、劣化した事実を反映するための減価償却という手続きや、売掛金などの売上債権が将来回収できない可能性に備えるための貸倒引当金の処理などがあります。

 

決算整理は、適正な決算を行うためには絶対に必要な手続きです。しかしながら、日常的な取引とは直接関連しないことから、忘れがちになるという面もあります。そこで、忘れないように決算整理で処理すべきことを事前にリストアップしておくことも有用です。

 

年次業務ではやはり、会計の専門知識が要求されます。ですから、実際に処理を行うのは経理部門等になるでしょう。しかし、経理部門で機械や設備の保有状況、使用状況や、債権が回収できる可能性などを全て判断するのは困難でしょう。そこで、このような情報を現場から吸い上げるための工夫が必要となります。

 

つまり、固定資産台帳の整備や、得意先の信用情報を管理し、それらを決算時に資料として経理に提供する、というような仕組みが必要となります。

 

 

2 決算業務の効率化とは?

前述のとおり、決算業務には相当膨大な時間と労力が必要となることがわかりました。
しかしながら、決算業務を全くしないという選択肢はありません。それには税法や会社法で求められている、という消極的な理由もありますが、何よりも、会社の課題を把握して、経営を改善していくために絶対に必要なものだからです。

 

そこで、どうせやらなければいけないことであれば、できる限り効率的に行うことを検討すべきです。つまり、決算業務の効率化とは、無駄を省く、コストを下げる、質を高めるという、一見矛盾するような課題を追求することであると言えます。

 

 

 

2-1 決算業務の早期化

また、決算業務の効率化は、「早期化」というキーワードと深く関わってきます。

 

決算業務の早期化には、決算書の作成をより早いタイミングで実施する、という意図もありますが、とりわけ試算表の作成を迅速に行い経営管理に役立てることに重点が置かれています。

 

もちろん、決算業務の効率化と早期化はセットで考えることができます。つまり、効率化を追求することによって、業務の無駄が削減され、プロセスが最適化されることによって、成果物が早く出来上がることにつながるからです。

 

 

 

2-2 効率化のメリット

前述の決算業務の早期化は、効率化によって達成されるメリットの一つであると考えることができます。そしてその効果は多岐にわたります。

 

まず、日常的に試算表の作成が迅速化することで、課題の把握が迅速になります。問題に対処するのは早ければ早いほど良いと言えますから、一日でも、一時間でも早いほうがメリットがあると言えます。

 

次に、予算と実行額の差異分析を迅速に行うことが可能となります。年度開始前に、事業計画にもとづき売上や経費の予算を策定している場合、策定された予算に対して、実際にいくら売上や経費が発生したかを確認することができます。この予算差異分析もリアルタイムで行わなければあまり意味がありませんので、早期化の効果が表れてくるでしょう。

 

また、金融機関から試算表の提出を求められた際に常に最新の状況を報告できます。経営状況ももちろんですが、資金繰りの状況も把握できますから、金融機関との関係構築という意味で、試算表作成の迅速化にはメリットがあります。

 

早期に試算表を作成し、経営状況や資金繰りの状況についてしっかりと把握していることは、金融機関からの信頼を得ることにつながります。このような信用強化も早期化のメリットと考えることができるのです。

 

最後に、会計処理エラーの早期発見です。試算表の目的の一つに、会計処理のエラーを発見する、というものがありますが、この点に関しても早ければ早いほど対処することが容易になります。エラーを発見するのが遅くなればなるほど、その原因を特定することが難しくなるからです。一年前のエラーが見つかっても、記憶は薄れていますので、当時何が問題であったのかを思い出すことさえ簡単ではないでしょう。

 

それでは、早期化以外にどのようなメリットが考えられるかについても整理しておきましょう。

 

やはり大きなメリットとして考えられるのが、コストの削減です。業務を効率化するということは、無駄が省かれ余計な作業をしなくても良くなるということです。これは人件費の削減に直結する効果です。

 

また、無駄な業務が削減されることは、従業員の精神的な負担軽減にもつながります。機械的な作業をひたすら続けることは、集中力の低下を招きミスを増やすことにもなりかねません。

 

そして、そのような作業を続けていると、従業員は精神的に疲弊してしまうことでしょう。効率化によって、このような負担を軽減し、従業員のモチベーション向上につながっていくことも期待できるのです。

 

 

3 業務フローの見直しとアウトソーシング

決算の効率化には多くのメリットがあることがわかりましが、具体的にどのように効率化を進めていけば良いのかについて説明していきます。

 

効率化を検討していくにあたって、まずは、業務フローを可視化することが基本となります。そして、現状の業務フローを見直したうえで、アウトソーシングやITの導入を検討していくことになるでしょう。

 

 

 

3-1 決算業務のフローを把握する

まずは、決算業務全体のフローを把握することが必要です。日次、月次、年次と続いていく決算業務の具体的な内容については既述のとおりですが、その大まかな流れに沿って、「いつ」、「誰が」、「何を」、「どのように」処理していくのか、ということを細かく可視化していきます。

 

日次業務のところで挙げた、伝票処理に関して例示します。営業所で、ある商品を一つ現金で売り上げた場合、営業所担当者は、「売上伝票」に、金額とそれが商品売上によるものである旨を記載します。これは簿記の知識が無くてもできます。

 

しかし、実はこの一つの取引で、現金の増加、売上収益の発生、商品在庫の減少、という3つの会計事実が発生しています。これを伝票から解釈して記帳する人が必要になります。実態として、これを担うのは経理担当者になるでしょう。そこで、起票した伝票を経理担当に送付して、経理担当で処理します。

 

さらに言えば、商品売買では、いつも現金決済しているわけではありません。掛取引もあるでしょうし、最近ではクレジットなどキャッシュレス決済もすでに浸透しています。そうすると、売上債権の増加という事実も発生します。債権があれば、債権者ごとに回収まで管理する必要があります。そうなると、また異なる部署が関わってくることも考えられます。

 

このように、細かな業務の一つ一つについて、どの部署でどのような作業が発生するのか、ということをフローチャートのように図式化していきます。

 

そして、それと同時に、業務の全体量も把握しておくと良いでしょう。伝票であれば年間の発生枚数と1枚あたりの処理に必要な時間がわかれば年間の業務量が把握できます。

 

これが業務フローの把握です。例示したのは日次業務のうちの、「売上」というたった一つの業務です。これだけでも大変な作業ですが、他の業務も全て可視化することで、日次業務から月次業務、年次業務へと、一つ一つの作業がどのようにつながっていくのかが手に取るようにわかるようになるでしょう。

 

 

 

3-2 業務フローを改善する

業務フローを作成する中で、必ずその中に存在している「無駄」に気づきます。例えば、特に重要では無いような承認プロセスが存在していたり、類似の業務であるにも関わらず報告書や承認伺い書の様式が異なっていたりすることが判明します。

 

また、異常に業務量が集中している部分には、必ず何らかの改善点が見えてくるものです。

 

そこで、把握した業務フローを見直しましょう。不要な意思決定は省く、社内書類のフォーマットは定型化する、そもそも書類自体が必要なのかどうかを再検討する、など見直すポイントはいくらでもあります。

 

ここまでのことを実行するだけでも、決算業務の効率化には十分な効果が出てくることが想定できます。

 

さらに理想を言えば、ここで合わせて実施しておきたいのが、業務の標準化です。書類のフォーマットの定型化、というのもその代表例ですが、社内の中での類似の業務は、同様のフローにしておくことが一つです。そして、可能であれば、外部のコンサルティング会社等の知恵を借りて、「多くの企業で一般に用いられるフロー」に変更しておくことで、その後で効果を発揮していきます。

 

標準化の事例として、これまでの例で何度も用いた「伝票制」は、実は、業務フロー改善の一つの形です。

 

冒頭の日次業務の節でも述べましたが、日々の取引記録は、本来複式簿記による「仕訳」という形で行う必要があります。

 

そうすると、現場の人間では対応できないことが多いです。複式簿記の知識を持っていないからです。

 

そうなると、伝票制を採用していなければ、売り上げが発生するたびに、報告書を作成して経理部門に報告し、報告を受け取った経理部門が仕訳として記録する、という手順を踏むことになります。このように、プロセスが多いと、業務の重複が発生するだけでなく、それだけミスが起こる確率も高くなります。

 

それが、伝票を導入することによって、売り上げ発生の会計記録が現場で完結します。つまりこれは、会計知識が無くても記録が可能になるように、記録のための帳票を標準化している、ということを意味しています。

 

 

 

3-3 一部の業務をアウトソーシングする

業務フローの改善や標準化がある程度達成できると、次の改善策が見えてきます。それは、一部の業務をアウトソーシングする、という選択肢です。

 

現在では、経理部門などのバックオフィス業務について、社外で請け負うサービスがあります。

 

このサービスは、複数の会社のバックオフィス業務を請け負うことでスケールメリットを発揮し、低コスト化を実現しているものです。いわゆる「経理代行」や「秘書代行」といった広告で見られる会社が、このようなサービスを提供しています。そのうち、「経理代行」というのが、決算業務を請け負ってもらえるサービスです。

 

ということで、このような経理代行サービスを活用することを検討するのも有用です。もちろん、コストと品質の問題がありますので、十分に効果が出るのかどうか、ということを分析する必要があります。

 

その際に、前節で説明した業務の標準化がどれだけできているのか、がコストに影響します。

 

既述のとおり、経理代行サービスは、複数企業の業務を請け負うことで低コスト化を実現しています。もし仮に、請け負ったA社とB社の業務フローが全く異なったものであれば、スケールメリットが出せないので、強みを発揮できないことになります。

 

そのため経理代行サービスは、標準の業務フローを定めており、標準業務フローの中でスケールメリットを発揮しています。

 

つまり、この標準業務フローとクライアント企業の業務フローが異なる部分に関しては、カスタマイズして対応する必要があります。このカスタマイズ部分には別途経営資源を投入する必要がありますから、当然、追加コストが発生します。

 

つまり、発注側から考えると、カスタマイズコストをできるだけ抑えるために、標準化を徹底しておくことが重要であると言えるのです。

 

 

4 ITの導入

さて、前節では業務フローの改善からアウトソーシングの検討までを確認しました。決算業務の中には、やはり人間の判断が必要な部分も多くあるため、その部分は会社の内部であれ外部であれ、人間が担わなければなりません。その意味で前節でのアウトソーシングの検討は、誰が担うのが効率的なのか、という議論に過ぎません。

 

しかしながら、決算業務は、単純に言えば情報の処理です。仕訳も試算表も決算書も情報の塊であることは間違いありません。そういう意味では、単なる情報処理に関しては、人間よりもコンピュータの方が、迅速で確実なところも多くあります。

 

近年では、AIの技術が徐々に社会実装されつつあります。AI技術の中には、今まで人間が判断するほかなかった事柄にも、コンピュータが代替できる可能性を秘めているようです。その意味では、つい先ほど述べた人間の判斷、という前提すら、将来的にはAIによって崩される可能性もあります。

 

とても魅力的な話ではありますが、このような最新技術の導入には、莫大なコストが必要で、かつ重要なリスクが存在しており、現状では大企業しかそれらを負担できないのが現実です。いまだ普及段階に入っているとは到底言えませんので、中小企業への導入はまだまだ先でしょう。

 

しかしながら、上述のとおり、判断が不得意な既存のIT技術であっても、決算業務には十分に活用することができます。そのため、本稿では基本的に、AIではなく、汎用的な既存技術を用いたITシステムを想定して説明します。

 

 

 

4-1 業務フローから定型的業務を把握する

ここまでの検討の中で既に、業務フローの改善と標準化が完了しています。今度はそれをもとに、ITシステムが得意とする、定型的業務を抽出します。

 

定型的業務とは、例えば伝票処理や試算表作成です。伝票の入力までは基本的に人の手で行う必要がありますが、そのデータをコンピュータに蓄積しておけば、データを集計して帳票出力する、という作業に関しては、コンピュータは人間よりも何倍も早く、確実に実行することが可能です。

 

このようなIT活用は積極的に進めるべきですが、やはり大なり小なりコストがかかります。あまり身の丈に合わない大それたシステムを導入しても、費用対効果が表れなければ意味がありません。

 

そこで、次節から、大規模なシステムソリューションであるERPと、どちらかといえばアドホックなソリューションであるRPAについて紹介しますので、自社にマッチするIT導入のコンセプトを検討してみてください。

 

 

 

4-2 ERP

ERPとはEnterprise Resources Planningの略で、本来は企業経営の基本となる資源要素(ヒト・モノ・カネ・情報)を適切に分配し、有効活用する計画のことを指します。

 

つまり、ERPは計画策定のための思想のことなのですが、現在ではこのような考え方にもとづいて統合された、基幹業務システムのことを一般に意味するようになりました。そのため、以降本稿ではERPをシステムとして説明します。

 

ERPの設計思想の根幹は、あらゆるデータベースを一元化することです。あらゆるデータベース、というのは経営に関するあらゆる情報のことです。

 

経営に関する情報とは、何も会計情報だけではありません。前述の例で見たように、在庫管理の情報は、「仕訳」とは直接結びついていません。その意味で会計情報からは独立して存在しています。また、債権管理の情報も然りです。他にも固定資産の保有状況や、物流の情報も経営情報としてきわめて重要なものですが、何もしなければ会計情報と連携してはいないでしょう。

 

そこで、このような様々な情報を、会計情報を中心としながら全て連携させるようにシステムを構築する、というのがERPの特徴です。そのことによって、経営意思決定に有用な情報を正確かつ迅速に把握でき、かつ、業務の効率化に役立つと考えられています。

 

上記の例でシステム導入を行う場合、通常であれば、求められる機能の違いから、財務会計システム、在庫管理システム、債権管理システム、と別個のシステムとならざるを得ません。しかし、ERPではこれらのデータを全て連携させる、あるいは完全に統合した一つのシステムとして作り上げることとなります。

 

ですから、かなり大規模なシステム構築が必要となり、コストに関しては相当大きくなると考えたほうが良いでしょう。しかしながら、うまくマッチすれば劇的な効果を生むことになるでしょう。

 

主要なERPパッケージとしては、世界的に有名なドイツSAP社の「SAP R/3」があります。国内企業としては、株式会社オービックの「ORBIC7」などが有名です。

 

 

 

4-3 RPA

ERPが大規模改修工事だとすると、RPAは壁紙の張替えのようなものです。とても地味ですが、比較的低コストで細やかなニーズに対応できるソリューションです。

 

RPAとは、「Robotic Process Automation」の略です。簡単に言えば、パソコンでの事務作業を自動化するロボットだと考えると、イメージしやすいと思います。ロボットと言っても、ペッパーやAIBOのように、目に見える形のあるロボットではなく、あくまでパソコンの中で動くロボットです。

 

実際のRPAの動きを見ていると、あたかもAIのように動きます。ですから、AIの最先端技術が搭載されているようにも見えますが、RPAはAIのように自ら学習するわけではありません。ただ単に、教えられたとおりに動いているだけです。つまり、RPAの技術はエクセルマクロの延長線上にあるようなものです。

 

例えば、決算業務の中で、ワードで書かれた報告書の内容をエクセルに転記入力して集計計算する、そしてまた別のエクセルファイルに計算結果を入力する、といった作業があるとします。この一連の作業をロボットが自動で代行してくれます。

 

このような複数アプリケーション間をつなぐ作業は、単純作業でありながらも、これまでは人間が対応せざるを得なかったところでしょう。しかし、このような一連の作業をフロー化して、RPAツールに記憶させれば、それだけでもう実装完了となるのです。

 

決算業務は、このようなパソコンでの事務作業がかなり大きなウェイトを占めています。その意味で、RPAの導入は効果が期待できます。そしてここでも、業務フローがきちんと整理されてさえいれば、RPAに教え込む内容もシンプルになっているため、導入のコストはさらに低く抑えられるでしょう。

 

RPAは、ERPほどの劇的な効果を生みはしないでしょうが、着実に一つ一つの業務を改善し、決算業務の効率化に役立つと考えられます。このような小さな積み重ねが決算の早期化、効率化につながっていくのです。

 

 

5 業務改善をあらわすBPRとは?

「BPR」という言葉を近年よく耳にすることがあるかも知れません。長引く厳しい経済環境の中で、企業経営を取り巻く環境も厳しい状態が続いていることと無関係ではありません。経営者は、このような環境の中で企業を維持・発展させていくためには、様々な経営努力を求められていることでしょう。

 

その中でも、事業の無駄を徹底的に省いて、コストを可能な限り低減するという検討視点はきわめて重要です。そしてその際、売上を急に伸ばすということはやはり難しいので、コストを削減することのほうが、利益を増加させるためには現実的な手段となります。

 

そこで有効な手段として機能するのが「BPR」です。本稿では「BPR」とは何かについて説明し、それが従来の業務改善とどのように異なりどのようなメリットがあるのか、そして具体的な進め方について解説します。

 

BPRとは「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(Business Process Reengineering)」の略称です。つまり、その名のとおりビジネス・プロセスを見直し、抜本的に設計しなおすことです。

 

正確な定義によると、「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネス·プロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」とされています。

 

まずはBPRの意義を確認し、基礎となる概念である「業務フロー」について理解を深めましょう。

 

 

 

5-1 BPRの意義

上述のBPRの定義の中でも「抜本的に」というところが重要なポイントです。企業の業務は、総務、人事、経理、営業など様々なセクションが存在しており、それぞれのセクションがそれぞれの役割を果たすことによって遂行されていきます。

 

しかしながら、ここで注意すべき点として、各セクションの業務は相互に関連性を持っているということが挙げられます。たとえ一部の機能を改善したとしても、それが企業全体のパフォーマンス向上につながるかどうかはわかりません。

 

そこで、一部だけではなく企業「全体」の業務フローを可視化して、「抜本的に」改革することによって、大幅なコスト削減やパフォーマンス向上が期待できることにBPRの意義があると言えるのです。

 

 

 

5-2 業務フローとは?

ここでいう業務フローとは、業務の流れ、さらに言えば情報の流れのことを指します。例えば、商品の売上に関連していえば、お客さんに商品を渡して代金を受け取る、という一つの業務の中で、様々な情報が伝達されていきます。

 

まずは、販売によってどの商品がいくつ払い出されたという在庫情報や、代金を回収することで現金残高がいくら増えた、という財務情報が生成されます。これらの情報は、在庫を管理するセクションや、経理セクションに伝達されることになるでしょう。

 

また、出張経費の精算業務では、社員が出張して発生した経費を立て替えている場合には、出張後に精算報告をすることになります。この報告は、総務や人事、経理セクションに伝達され、適正かどうかを判断した上で承認、口座への振込みあるいは現金支給、という流れになります。

 

この場合には、費用と支払債務の発生ののち、出金という財務情報が伝達されていきます。また、人事では勤務状況に関する情報も処理されるでしょう。

 

このように、細かい業務の一つ一つをとらえても、様々なセクションが関わり、情報が伝達され処理されていることがわかります。その中では、情報伝達の流れと、さらにそこに「承認」という意思決定過程が存在します。

 

そこで、情報伝達と処理にどれだけの時間や手間がかかっているのか、ということが、業務フローを作成することによって可視化されるのです。

 

 

6 BPRが導入された背景

日本経済はバブル崩壊以降、低空飛行を続けています。そのことが、個々の企業経営にも深刻な影響を及ぼしているのは周知の事実です。

 

実は、日本でBPRが注目された時期は、ちょうどこの1980年代からです。時期の一致は偶然ではなく、経済環境の悪化を受けて経営改善に向けての有効な打開策として期待されてきたことが明らかです。

 

しかしながら、それよりも以前からコストを削減するために業務を見直す、という発想が全くなかったわけではありません。それ以前は「業務改善」という考え方が一般的に用いられており、企業経営の世界において、この点で日本は世界をリードしていました。

 

 

 

6-1 業務改善とは?

「業務改善」とは、既存の業務に生じているムリ、ムダ、ムラを少しでも減らすように見直しを行っていくことを指します。その対象は品質やコスト、業務フローなど多岐にわたります。

 

日本企業の業務改善という点では、トヨタ生産方式があまりにも有名です。これは戦後間もない頃から続くトヨタの経営哲学ですが、現在でもなお、世界中から研究対象として関心を引いています。

 

トヨタ生産方式とは、注文された車を少しでも早く顧客に届けるために、最も短い時間で効率的に製造する、という考え方であり、「リーン生産方式」や「ジャスト・イン・タイム(JIT)方式」とも呼ばれています。

 

トヨタ生産方式では、なるべく早く生産ラインの先頭に生産指示を出すことや、組立ラインは全ての種類の部品を少しずつそろえておくこと、使用した分だけ前工程に取りに行く、といった業務フローを徹底しています。

 

このような一つ一つの小さなことの積み重ねによって、少しずつ無駄を省き、品質を上げていくというのが業務改善の考え方です。

 

 

 

6-2 BPRと業務改善の違い

業務改善では、会社業務の一部分を切り出し分析することによって、不断の見直しを実施、継続していく取り組みです。その改善活動が社内全体に波及効果を生み、大きなうねりを起こしていくことは、特に珍しい事例ではありません。

 

最近では地方自治体などでも改善運動が盛んに行われています。地方自治体の改善運動に見られる特徴として、自社(自治体)内にとどまらず、他の地域、自治体に対しても波及効果を生む点があります。

 

行政機関には、組織間の競争がありません。そのことについては、悪い面が指摘されることも多いのですが、競争が無いことによって、ある自治体で起こった良いことを、他の自治体にも広めていこう、という意識が生まれるというメリットがあります。

 

競争が無いということは、企業秘密が無いということと同義なのです。おおよそ全国どの自治体も同じような業務を行っていることが多いため、プラクティスを共有することの意義は非常に大きいと言えるでしょう。

 

そのような発想から、改善運動の全国的なネットワークも存在しています。全国の自治体が集まり、事例を発表し合うことを目的とした全国大会も開催されています。

 

しかしながら、業務改善が捉える業務はあくまで「一部分」です。既に述べたとおり、社内での情報の生成と伝達はセクションを横断することが多いです。つまり、一つのセクションだけで努力して、無駄を徹底的に省いたとしても、後の工程で情報の滞留を起こしてしまうと、あまり意味がありません。

 

そこで、会社全体の業務を俯瞰する必要が生じてきます。BPRでは、会社「全体」を見ることによって、業務改善では成し得ない水準での「改革」が可能になることになります。これがBPRと業務改善の大きな違いです。

 

 

7 BPRのメリット

BPRを導入することは会社全体の業務を再構築することにつながることがわかりました。

 

それでは、BPRを導入することによって具体的にどのようなメリットがもたらされるのかについて、もう少し詳しく見てみましょう。

 

 

 

7-1 縦割りが生む非効率からの脱却

既に述べたとおり、BPRはセクションを横断する情報の流れを検討対象とします。このことによって、全社的観点からセクション間のコミュニケーションが活性化されます。

 

縦割りの弊害として、どうしても自セクション内のことばかりを考え、他セクションへの影響にまで意識が及ばなくなることが挙げられます。このことが非効率を生んでいるわけです。

 

BPRを導入することによって、自セクションだけでなく、影響を及ぼす他セクションのことも考慮に入れざるを得なくなります。これによって、縦割りの弊害が解消し、そこから生じていた非効率を取り除くことができると考えられます。

 

 

 

7-2 無駄な労働時間の削減

業務フローを見直すことによって、情報の処理と伝達を妨げるようなプロセスに潜んでいた無駄が発見できます。

 

無駄なプロセスというのは、結局は、無駄な労働時間を生じさせています。このことは最終的に人件費というコストにも跳ね返ってきます。無駄なプロセスを省くことによって、人件費を削減することができます。また、従業員にとっても、無駄なことから解放され、より生産的な意識を持つことにもつながるでしょう。

 

もちろん、無駄な業務を省くことに伴って、人員を解雇して削減するかどうかはまた別の問題です。解雇には様々なハードルが存在するため難しいですが、仮に解雇できなかったとしても効果はあります。

 

すなわち、空いた時間は別の付加価値の高い業務に従事させることによって、今までできなかったことができるようになる可能性があります。つまりこの場合、コストは削減できなくても新たな収益の獲得につながる可能性があります。

 

このような効果は、BPRを導入せずとも、業務改善でも得られるでしょうが、やはり、BPRの導入の方が、より大きなメリットをもたらすことは間違いありません。

 

 

 

7-3 意思決定プロセスの効率化

前述の達成に伴って副次的に得られるメリットとも言えるのが、承認や決裁という意思決定プロセスの効率化です。

 

意思決定プロセスというものは、業務の質を高めるためにも要所要所で絶対に必要なものです。全ての意思決定を社長が行うわけにはいきませんので、しかるべき役職者が責任範囲に応じて意思決定していくことになります。

 

しかしながら、意思決定は確実に情報の滞留を引き起こします。特定の責任者の承認が無ければその次の工程に進めないことを意味していますから、当該人物のスケジュールに合わせざるを得ないからです。

 

しかも、この意思決定プロセスがセクションをまたいで行われることがあります。そうなると、より一層滞留の程度は大きくなってしまいます。

 

これが、BPRを導入することによって、全社的な観点から、本当に必要な意思決定なのか、また、権限の重複は無いか、より下位の管理者の承認で良いのではないか、セクションをまたぐことが必要なのか、といった見直しがなされることになります。

 

このことを通じて、意思決定プロセスが簡素化、迅速化され、よりスピーディな経営が可能になるというメリットが考えられるのです。

 

 

8 BPRの進め方

BPRのメリットがわかったところで、具体的に、どのように導入していけば良いのか、について説明します。

 

BPRのステップは、一般に検討、分析、設計、実施、モニタリング・評価という手順で進めていきます。この手順に沿って、ポイントを説明します。

 

このようなBPRのステップは、自社だけで進めることも可能ですが、必要に応じてコンサルティング会社など外部の知見を導入することにより、より一層効果の高いものになることも考えられます。また、客観的な視点を得るという意味でも、メリットがあると言えるでしょう。

 

また、前提として、BPRの導入に際しては、ITやシェアードサービスの活用を検討することが有効です。その意味で、導入コストも必要になってきますから、それも踏まえて、効果をイメージしてみると良いでしょう。

 

 

 

8-1 検討

検討段階では、まず目的や目標を設定します。これはBPRを導入することでどのような状態を目指すのか、をまずは明確化して共有することを意味します。

 

業務プロセスを簡素化して何を得たいのか、例えば、生産効率を〇%向上させる、人件費を〇%削減する、などのように数値化しておくことが重要です。そして、それを社内の全てのセクションで合意しておくことも忘れてはなりません。

 

目的や目標が社内で統一されていなければ、各セクションが全社的な観点で動くことは不可能です。

 

目的や目標が定まれば、次は対象となる業務範囲を定義します。全業務を対象とするのが理想的ですが、個々の企業の事情も異なるため、特定の機能だけは除くということも場合によっては必要となるからです。

 

 

 

8-2 分析

分析段階では業務フローを可視化して、課題を把握します。検討段階で設定した目的や目標に沿って、業務フローに内在する無駄な作業や意思決定による情報の滞留地点などを特定します。

 

可視化する際のポイントとしては、流れを図式化することに加えて、一つ一つの工程において発生している業務量や情報が滞留している時間を定量的に把握することです。

 

 

 

8-3 設計

次に、抽出された課題を解消するため、業務プロセスを再構築していきます。この時点で、再構築に向けての戦略を策定し、実施方法を検討します。

 

具体的には、新たな業務フローの設計やルール、組織構造の見直しを行います。

 

つまりこの段階で、解決するための具体的な手法を検討することになるわけですが、その手法として、アウトソーシングやIT化、シェアードサービスの活用などが選択肢に挙がってくるでしょう。

 

シェアードサービスとは、企業内に重複して存在する人事や経理といった間接部門を共通化することを言います。大きな規模の会社であればあるほど、このような重複が多く見られる傾向にあります。

 

本社と支社、日本法人と在外法人、支店と営業所など、それぞれにおいて人事や経理などの機能を配置している場合に、顕著に見られます。

 

全社レベルで業務フローを可視化することによって、このような業務の重複が確認できるはずです。これを解消するために、それぞれのセクションを一つにまとめることによって効率化する、という発想です。

 

さらに発展させると、まとめた上でアウトソーシングする、という手段も考えられます。このような間接部門の業務内容は、異なる企業間で見てもそれほど大きな差異がありません。そこで、複数の会社のシェアードサービスを請け負うことでスケールメリットを出していくビジネスがあります。このような会社にアウトソーシングすることによってコストを削減しよう、という考え方です。

 

また、業務フロー全体を再構築することで、フローそのものが簡素化されるため、ITの導入が容易になります。IT技術の発達はBPRの導入に良い効果をもたらしています。本社と支社など、物理的な距離があるセクション間でシェアードサービスを導入する場合など、IT技術が無ければ到底不可能であったことだと言えるでしょう。

 

また、別の観点ですが、業務フローを大きく変更することで、既存のITシステムの設計自体を見直す必要も出てくるでしょう。

 

いずれにしても、具体的な実行計画に落とし込んでいく中で、発生するコストと、それによるコスト削減効果を慎重にシミュレーションする必要があるでしょう。

 

検討段階で策定した目的や目標に照らして、十分に効果が出るのかを確認しておくことが重要です。

 

 

 

8-4 実施

設計した新たなビジネス・プロセスへの変更を実施します。この段階では、会社の全セクションが目的・目標、ならびに実行計画を十分に共有しているかどうかが問われます。

 

共有が十分でない場合は、改革による混乱が生じ、パフォーマンスを大きく落としてしまうおそれがあります。この時点になってようやくそのことに気付いても、もう手遅れです。改革そのものの成否を分ける要因ともなりますので、ここまでの段階で十分なコミュニケーションを取っておくことが何よりも重要であると言えるでしょう。

 

 

 

8-5 モニタリング・評価

変更を完遂すると達成感があります。しかしながら、それで終わりではありません。変更直後、そしてその後も継続的にモニタリングや評価を行っていく必要があります。

 

つまり、当初設定した目的や目標と整合しているかどうか、そして、設計段階で期待した効果が出ているかどうか、さらに、予測していなかった問題が発生していないかどうか、について確認することが必要でしょう。

 

これらの活動を丁寧に実施しておかなければ、また非効率のリスクが潜むことになります。そうなってはせっかく時間とコストをかけて行ったBPRが全て無駄になってしまいます。

 

分析段階で、現状の業務量や滞留時間を定量的に把握していれば、効果の測定も定量的に行うことができます。労働時間の短縮や人件費などの削減効果を数字で把握することができるでしょう。

 

このような評価・モニタリングの結果を検証し、また必要に応じて、検討段階に戻り、再度BPRを実施することもあり得ます。改革そのもののPDCAサイクルを回していくことも大変重要なことなのです。

 

 


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