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【決算書の読み方】経営に役立たせる10の経営指標

ビジネスパーソンにとって必要な教養の一つが決算書に関する知識です。経営者はもちろん自社の経営状況を把握するために必須ですし、サラリーマンやOLであっても自分が働いている会社の経営状況を把握したり、転職先として良い企業がないかを分析するときに会計の知識は必要になります。しかし、一から参考書を読んで勉強するのには手間がかかります。本記事では要点を絞って、決算書の読み方とこれだけは覚えておきたいという10の経営指標について解説します。

 

 

1 決算書とは何か?

まず、決算書とは何かについて説明します。決算書はよく会社の「通信簿」だと言われます。企業は通常の場合1年に1回決算月の月末を基準にその1年間の収益や資産や負債の状況をまとめて決算書という書類を作成します。

 

決算書は税務署に申告する納税額を算出する際にも使用しますが、経営管理や投資家などへの情報公開のためにも使われます。一年だけでは少ないので、よりリアルタイムで経営状態を把握するために四半期や月単位で決算書を作成している企業もあります。

 

 

1-1 決算書からわかること

決算書にはその会社の経営方針が如実に表れます。同じような業種で同じような事業規模の会社であっても、会社によって決算書の内容がまったく異なるというケースもありえます。例えば、余剰資産を持たずに積極的に事業投資を行っている会社もあれば、現金を手厚く用意してトラブルに備えている会社も存在します。

 

決算書からはこのような企業の経営方針と実際の経営状態を如実に読み取ることができます。

 

 

1-2 なぜ決算書が読めなければならないのか

決算書からは企業の経営方針や実際の経営状態を読み取ることができますが、決算書から客観的に会社の方針や状態を読み取ることは重要です。

 

例えば株式投資を行っている人は、今後株価が上がりそうな企業や堅実に株価を維持して、配当をしっかり払ってくれそうな会社に投資をしたいと思うはずです。そして、株式投資は何となくの企業イメージをもとに投資すると、往々にして失敗してしまいます。

 

私たちが企業に抱いているイメージは往々にして実態とかけ離れていることがあります。例えば、テレビCMなどをしている昔からある有名メーカーが毎年赤字を積み重ねていて倒産寸前であったり、まったく無名の企業が財務的には非常に優良な企業であるということは少なくありません。

 

決算書を読むことによって、色々な企業を客観的な基準によって評価することが可能になりました。

 

また、経営者は決算書を見て会社の経営状態を把握して、対策を考えます。

 

例えば、数か月後に資金が足りなくなりそうな場合は、早めに察知して銀行に融資交渉をしなければなりません。また、事業が赤字となっている場合は、一過性の赤字なのでそのまま事業を続けるか、それとも黒字化させるために売上や利益率を増やしたりする対策をおこなうか、コストカットを行うのかなど決算書をもとにどのような経営をするか方針を決定します。

 

よって経営者にとって決算書を読む能力はもはや必須のスキルと言えます。

 

 

2 財務三表について

今まで「決算書」と説明してきましたが、決算書という1枚のペーパーが存在するわけではありません。

 

決算書と呼ばれる書類は3つの情報によって成立しています。「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」です。(株主資本等変動計算書も決算書に含めることもありますが、本筋の決算書の分析とはほとんど関係ないのでここでは除外します。)

 

これらの3つの情報を指して、財務三表と呼びます。財務三表のそれぞれについてどのような内容が記載されているのかについて説明します。

 

 

2-1 貸借対照表(B/S)

貸借対照表とは会社の財産の中身を表したデータです。一般家庭に置き換えると、車や家や銀行預金などどのような資産を持っているか、住宅ローンなどの借金はあるかなどについて記載しています。別名バランスシートと呼んだり、B/Sと表記することもあります。

 

貸借対照表は3つの部分によって構成されています。どのような財産を持っているかを示した「資産の部」とその資産の元手は何かを示す「負債の部」「純資産の部」です。

 

1 資産の部

資産の部にはその会社が保有している資産の中身が示されています。例えば、商品の在庫や銀行の預金、所有している土地や有価証券の金額などが記載されています。

 

資産の原則として1年以内に回収できたり、すぐに支払いに使える資産のことを流動資産、土地や建物などのようにすぐに現金化できない資産のことを固定資産と呼びます。

 

また特許のように物理的な財産を伴わないものも資産として扱われます。

 

2 負債の部

負債の部は会社がどのような借金を抱えているのかを示しています。

 

資本の部と同じく1年以内に支払わなければならない借金を流動負債、支払いまで1年以上猶予がある負債を固定負債と呼びます。

 

負債の部には銀行やビジネスローンから融資を受けた借入金はもちろんのこと、商品を仕入れるときの買掛金や支払いのときに振り出した支払手形なども含まれています。

 

3 資本の部

負債の部は他人から借りて来たお金なので他人資本と呼ばれます。一方で資本の部は自分のお金なので自己資本とも呼びます。

 

資本の部は資産から負債を差し引いてその企業が持っている純粋な財産の金額を表しています。株式会社の場合は資本に発行している株式や事業によって会社に蓄積される利益(利益剰余金)などが記載されています。

 

ちなみに赤字を繰り返していけば資本が減少していき、資本の部がマイナスになる事も起こりえます。資本の部がマイナスになった状態のことを債務超過と呼び、会社を解散しても借金だけが残る状態になっています。

 

債務超過になっても支払いを続けられる限り会社は倒産しませんが、会社が危険な状態であることに変わりはありません。

 

 

2-2 損益計算書(P/L)

損益計算書とは会社の収益とそれを生み出すのにかかった費用、差し引きの利益を示すデータです。家計に置き換えると、年収から家賃や食費、水道光熱費などを差し引いてどのくらい貯金に回せたのかということが損益計算書には書かれています。損益計算書はP/L(Profit and Loss Statement)とも呼ばれています。

 

1 売上総利益(損失)

売上から売上原価を差し引いた値です。粗利とも呼ばれています。売上は商品やサービスを販売して生み出したお金、売上原価は仕入れ代やメーカーであれば製造費など売り上げを作るためにかかったコストのことを指します。

 

基本的には売上は売上原価よりも大きいはずですが、稀に売上より売上原価が大きくなり売上総損失が発生するケースもあります。

 

2 営業利益(損失)

営業利益とは売上総利益から販売費及び一般管理費(販管費)を差し引いた金額のことを指します。プラスなら営業利益、マイナスなら営業損失と呼びます。

 

販管費とは人件費や水道光熱費、広告費など事業のために使った諸々の費用のことを指します。

 

3 経常利益(損失)

経常利益とは営業利益に営業外の損失や利益を加えた金額のことを指します。プラスならば経常利益、マイナスなら経常損失と呼びます。

 

営業外損失や利益とは、メインの事業の営業活動から発生した利益や損失以外の利益や損失のことを指します。例えば、銀行から借りている資金に対する利息などはメインの事業の営業活動とは関係ありませんが営業外損失や利益として会社の利益に影響を与えます。

 

4 税引前当期純利益(損失)

税引前当期純利益とは経常利益に特別利益や特別損失を加えた金額のことを指します。プラスなら税引前当期純利益、マイナスなら税引前当期純損失と呼びます。

 

特別利益や特別損失は、例えば火事などで工場や商品が燃えてしまった場合は、固定資産や投資のために買っていた有価証券を売却したときなど、その期しか発生しないであろうイレギュラーな利益や損失のことを指します。

 

5 当期純利益(損失)

当期純利益とは税引前当期純利益から法人税などの税金を引いて最終的に会社の手元に残る金額のことを指します。プラスなら当期純利益、マイナスなら当期純損失です。

 

よく赤字なら税金を支払わなくても良いと言われることがありますが、実は赤字でも法人住民税の均等割りなどは赤字でも発生します。また、実際に企業が使った経費のすべてが税金を計算するときに経費扱いされるわけではありません。例えば、接待費は何万円までしか計上できない、費用のうち何割までしか損金として認められないというようなルールが設けられています。よって、赤字の会社でも税金の計算ルール上、支払わなければならない税金は発生するわけです。

 

 

2-3 キャッシュフロー計算書(C/F)

最後に紹介するのがキャッシュフロー計算書です。キャッシュフロー計算書は会社のお金の流れを表したデータです。C/F(cash flow statement)と書くこともあります。

 

会社のお金の流れは損益計算書に書かれているのではないかと思うかもしれませんが、実は損益計算書はお金の流れを表していません。企業は売掛金や買掛金などの掛取引を使いますが、掛取引を使うと、損益の発生と入出金が発生するタイミングはズレてしまいます。例えば8月に約束した商品を納品して、相手から受領証を受け取れば8月の売上になりますが、売掛金として10月に銀行に代金が振り込まれる約束ならば、実際に入金があるのは10月になります。このように損益計算書はお金の流れを正確には表さないのでキャッシュフロー計算書が必要になります。

 

ちなみに、貸借対照表や損益計算書は株主総会や税務署への提出で使用するので、どこの会社も作成していますが、キャッシュフロー計算書を提出したり公開する必要があるのは上場企業だけなので、そもそも作っていない企業もたくさんあります。

 

1 営業活動によるキャッシュフロー

営業活動によるキャッシュフローとは事業から発生したお金の流れのことを指します。例えば、損益計算書の中には減価償却費という項目がありますが、これは持っている資産の価値が「このくらい減るだろう」という計算上の経費なので、本当にどこかにお金を支払っているわけではありません。売掛金や買掛金などを事業による本当のお金の出入りを現したのが営業活動によるキャッシュフローです。

 

2 投資活動によるキャッシュフロー

投資活動によるキャッシュフローとは有価証券や固定資産の売買によって発生したお金の出入りのことを指します。設備投資や企業買収を積極的に行っている会社は、ここの部分がマイナスになりやすい傾向があります。

 

3 財務活動によるキャッシュフロー

財務活動によるキャッシュフローはいわゆる資金調達によって発生したお金の流れを指します。銀行やビジネスローンからの融資、社債の発行、株式の発行等によって出し入れしたキャッシュの流れがここに記載されます。特にベンチャーキャピタルなどから投資を集めて、事業を急拡大しているベンチャー企業は、営業活動や投資活動によるキャッシュフローは大幅なマイナスでも財務活動によるキャッシュフローが大幅なプラスになっているので結果として会社のキャッシュはプラスになっているという会社も多いです。

 

 

3 企業分析で見るべき経営指標と活用方法

ここまでで財務三表について説明しました。この会社はこの位の現金を持っているのか、この位儲かっているのかということは、ここまでの説明をもとに決算書を読めばわかると考えられます。

 

しかし、これだけでは企業分析はできません。企業分析をするためには、決算の数値を経営指標に変換して評価する必要があるからです。ここでは、企業分析でチェックしておくべき経営指標を10個に絞って算出方法と活用方法について説明します。

 

 

3-1 自己資本比率:事業の安全性を測る①

まず紹介するのが「自己資本比率」という経営指標です。自己資本比率は事業の安全性を測る目安となる指標です。

 

1 算出方法

自己資本比率=資本の部(貸借対照表)÷資産の部(貸借対照表)

 

2 活用方法

自己資本比率とは、会社が持っている財産のうち何割位が自前で用意した資本かということを指します。自己資本比率が少ない会社は銀行などの他人資本に頼っているということなので、銀行などの他人資本が融資を引き揚げてしまえば事業を継続できなくなってしまいます。

 

かといって、自己資本比率が低いから良いというわけではありません。自己資本比率が高いということは他人資本からの資金調達を積極的におこなっていないということの裏返しでもあります。

 

オーナー企業で会社を成長させる気もないのならば、自己資本比率が高い方が事業としては安全ですが、積極的にリスクをとって事業を拡大しようとしている会社は自己資本比率が低くなることが多いです。

 

自分が会社を経営するのか、会社に投資をするのか、あるいはお金を貸すのかによっても自己資本比率に対する評価は分かれるでしょう。

 

 

3-2 流動比率:事業の安全性を測る②

流動比率は企業の支払い能力を表す指標です。ひいて言えば、流動比率から企業の安全性を分析することができます。

 

1 算出方法

流動比率=流動資産(貸借対照表)÷流動負債(貸借対照表)

 

2 活用方法

流動資産は貸借対照表の部分で説明したように1年以内に入ってくるお金、流動負債は1年以内に支払わなければならないお金のことを指します。

 

基本的にこの値が100%を切ると今後1年以内に会社の現金が足りなくなってしまう可能性があり、現金が足りなくなれば倒産してしまいます。この値が150%を上回っていれば東西の資金繰りは安心な企業だと言えます。

 

もちろん、自己資本比率と同様に高すぎると、積極的に他人資本を集めていない可能性もあります。

 

 

3-3 フリーキャッシュフロー:事業の安全性を測る③

フリーキャッシュフローは会社が稼いだお金のうち自由に使える金額について示したものです。フリーキャッシュフローが多いということは突発的なトラブルや緊急の出費に対しても対応しやすい、安全性の高い企業だと考えられます。また収益性などにもつながる重要指標です。

 

1 算出方法

フリーキャッシュフロー=営業によるキャッシュフロー(キャッシュフロー計算書)+財務活動による

 

2 活用方法

フリーキャッシュフローがプラスの会社はそれだけお金に余裕があるということなので、そのお金を使って株主に還元したり、事業投資をして更に売上を増やすための取り組みが行えます。一方でフリーキャッシュフローがマイナスの会社は手持ちのお金が減っているということなので事業縮小などが今後考えられます。基本的にはフリーキャッシュフローのマイナスが続いている会社には注意したほうが良いでしょう。

 

 

3-4 営業利益率:事業の収益性を測る①

営業利益率は売上のうちどのくらいが利益となったかという指標です。事業の収益性を測るときに使います。

 

1 算出方法

営業利益率=営業利益(損益計算書)÷売上高(損益計算書)

 

2 活用方法

営業利益率は売上のうちどのくらい営業利益が残ったかということを示しています。営業利益率の高い会社の方が少ない経費で多くの営業利益を挙げられる収益性の高い会社ということになります。

 

ただし、営業利益率はビジネスモデルによっても大きく異なるので、全ての業種共通の指標にはなりません。

 

ちなみに、営業利益率の他に売上総利益率、経常利益率などで収益性を測定することも可能ですが、売上総利益率は販管費が含まれていないのであまり最終的な利益との結びつきはありませんし、経常利益率は本業以外の利益や損失も含まれた値です。事業としてきちんと収益を上げられているかを考えるなら営業利益率をベースに評価したほうが良いでしょう。

 

 

3-5 自己資本利益率:事業の収益性を測る②

自己資本利益率とは自己資本を使ってどのくらい効率的に収益を生み出せているのかという企業の収益性を測る指標です。ROEとも呼ばれます。

 

1 算出方法

自己資本利益率=当期純利益(損益計算書)÷自己資本(貸借対照表)

 

※自己資本とは資本の部から少数株主の持ち分や新株予約権を差し引いた金額を指します。

 

2 活用方法

自己資本利益率は限られた資本でどれだけ効率的に利益を生み出せているかということを表しています。特に株式投資を行う際にはどれだけ自己資本利益率が高い会社かということは非常に重要になります。

 

一方で非上場の会社経営をしている場合は、それほど重要な項目にはなりません。経営者の立場としては自己資本か他人資本か資金元に関係なく、大きな利益をあげられればそれで良いからです。

 

 

3-6 交差比率:事業の収益性を測る③

交差比率は少ない在庫資金でどれだけ利益が生み出せているかという企業の収益性を測る指標となります。

 

1 算出方法

交差比率=売上総利益率(※1)×商品回転率(※2)

 

※1:売上総利益率=売上総利益(損益計算書)÷売上高(損益計算書)
※2:商品回転率=売上高(損益計算書)÷平均在庫高(※3) ※3:平均在庫高=(期首在庫高+期末在庫高)÷2

 

2 活用方法

交差比率は特に小売業では重要な指標となります。交差比率が高い企業ほど少ない在庫資金で効率的に収益を生み出せていることがわかります。ビジネスモデルによって、目安となる交差比率は違いますが、同業者と比較して交差比率の高い企業の方が有力な投資対象になるでしょうし、経営者としても交差比率を上げる努力が必要です。

 

 

3-7 売上高伸び率:事業の成長性を測る①

売上高伸び率は、売上がどのくらい伸びているかを示す指標です。事業の成長性を測るときの指標です。

 

1 算出方法

売上高伸び率=今期の売上高(損益計算書)÷前期の売上高(損益計算書)

 

2 活用方法

売上高伸び率は事業がどのくらい成長しているかを測る指標となります。ただし、成長していることが必ずしも収益が増えていることにはなりません。例えば、成長市場で優位なポジションを築きたい企業はまず事業投資を積極的に行って、大量の赤字を出してでも売り上げを伸ばして市場内でシェア十分に獲得してから収益を生み出します。

 

 

3-8 売上高研究開発比率:事業の成長性を測る②

売上高研究開発比率はどのくらい研究に力をいれているのかという企業の成長性を測るための指標です。

 

1 算出方法

売上高研究開発費率=研究開発費(※1)÷売上高(損益計算書)

 

※1:研究開発費に厳密に対応する勘定科目は存在しません。販管費のどこかに含まれているはずですがどのように表記しているかは企業毎に異なっています。上場メーカーの場合は有価証券報告書のどこかに書かれていることが多いのでチェックしてください。

 

2 活用方法

特にメーカーのように常に新しい商品を生み出していかなければならない業種の場合、どのくらい研究開発に費用をかけているのかがその企業の今後を占う先行指標となります。業種平均と比較して研究開発費用が少ないメーカーはその後、競争力が落ちる可能性がありますし、研究開発にしっかりとお金をかけているメーカーは成長する可能性があります。

 

 

3-9 1人あたり付加価値額:事業の生産性を測る①

1人あたり付加価値額は事業の生産性を測る上で重要な指標です。

 

1 算出方法

1人あたり付加価値額=総付加価値額(※1)÷従業員数(※2)

 

※1:付加価値とはその企業が生み出した価値のことを指します。色々な算出方法がありますが、売上総利益(粗利)を総付加価値額と見なすのが簡単な方法です。
※2:従業員数は決算書には掲載されていませんが、コーポレートサイトや求人サイトで多くの企業が公表しているのでそれほど調査が難しいデータではありません。

 

2 活用方法

1人あたり付加価値額が高い企業ほど、生産性の高い仕事をしているということになります。企業経営には色々な考え方がありますが、社員1人あたりの付加価値の高い事業を行っている企業ほど事業は安定しやすいし、社員の待遇も良くしやすいでしょう。

 

 

3-10 労働分配率:事業の生産性を測る②

労働分配率とは人件費にどのくらいお金をかけているかという事業の生産性を測る上での重要指標です。

 

1 算出方法

労働分配率=人件費(損益計算書)÷付加価値総額(※1)

 

※1:付加価値総額については、上で説明した通り様々な算出方法がありますが、売上総利益を付加価値と見なすのが簡単です。

 

2 活用方法

労働分配率は付加価値を生み出すのにどのくらいの人件費をかけているのかという指標です。投資家や経営者の目線でみたときに収益をあげるために労働分配率は抑える必要があります。一方でサラリーマンの目線で見たときに同業他社より労働分配率が低いということは社員に利益を還元していないブラック企業である可能性が高くなります。

 

 

3-11 数値に対する考え方

10個のチェックするべき経営指標について説明しましたが、数値を評価する際には相対評価と絶対評価を区別することを心がけてください。

 

相対評価とは同業他社と比較してその企業の良し悪しを評価するべき指標、絶対評価とは他社と比べるのではなくその会社単体として評価するべき指標のことを指します。

 

例えば、営業利益率や労働分配率は相対評価するべき項目です。営業利益率は業種によってことなります。例えばスマホゲームなどを提供している会社は営業利益率50%近い会社も珍しくはありません。一方で建設機械の卸売のような業種は金額が大きい割に乗せられるマージンが少ないので業績が良くても営業利益率1~2%というケースもあります。業種によってどのくらいの数値が適正化という目安は変化するので、どの業種も一概にこの位の方が良いという目安を設定するのは困難です。

 

一方で絶対評価をした方が良い項目は、フリーキャッシュフロー、売上高伸び率などです。たとえ周りのほとんどの会社のフリーキャッシュフローがマイナスだからといって、自社もフリーキャッシュフローがマイナスで良いということはありません。事業を継続するためにはキャッシュフローをプラスにする必要があるからです。売上高伸び率も同様で同業他社が軒並み売り上げを低下させているからといって自社も売上が低下しても良いことにはなりません。このような指標を絶対的にどのような値になっているか、過去の自社よりもどのくらい成長しているかという視点から分析を行うべきです。

 

 

4 決算書からは読み取れない企業の重要な情報

以上のように、決算書の読み方について説明してきましたが、決算書を読めば企業のすべてがわかるわけではありません。決算書から読み取れない企業の重要な情報について説明します。

 

 

4-1 決算書に反映されない財務上の重大リスク

まず、決算書に反映されない重大な財務的リスクが存在します。

 

例えば、決算書の中身で注意しなければならないのは売掛金です。売掛金は貸借対照表上で資産に計上されます。売掛金が多いということはそれだけ売上が大きく、会社として大きな収益をあげていることが予想できます。

 

しかし、売掛金の中身は注意して確認する必要があります。その売掛金の中には実質的に回収が不可能になっている売掛金が混じっているケースが少なくありません。売掛金が同業他社と比較して過剰に大きい場合は売掛金の中に重大なリスクが含まれている可能性があります。商品在庫にも同様のことが言えます。不良在庫で帳簿に記載されているほどの価値が無いというケースもあります。

 

他にもバブルのときに高値で掴んだ美術品の価値が急激に下がって売るに売れないので社内で塩漬けになっていたり、営業利益はマイナス経常利益でプラスになっているけれども営業外収益の内容がまぐれ当たりの有価証券の売却益などで時期以降には発生が期待できない場合なども考えられます。

 

このように、決算書の数値が良くてもその中身をよく評価しないと正しい実態を把握することはできません。もちろん、実際の資産の中身のような細かい情報は一般的に開示されていませんし、そこまで見る必要もありませんがM&Aなどを行う際にはデューデリジェンスと呼ばれる企業評価の段階で詳しくチェックされます。

 

ビジネスパーソンとしても決算書は企業の状態を客観的に反映するけれども、決算書に掲載されない財務リスクも存在することを覚えておいた方が良いでしょう。

 

 

4-2 決算書だけで会社の価値は決まらない

また、決算書外に重大な財務リスクが隠れているだけではなく、財務状態以外も企業の価値を決める重要な要素があります。

 

よく企業の経営資源は「ヒト」「モノ」「カネ」に分類することができます。このうち本記事で説明したのは「カネ」の部分だけですが、「ヒト」「モノ」も企業価値に対して重要な影響を与えます。

 

例えば「ヒト」とはその事業に関わっている人材のことを指します。直近の決算書が良くても第一線で活躍している人材が大量離職してしまえば、すぐにその次の決算はガタガタになってしまうことが予想されます。逆もまた然りで財務的に良くない企業であっても、人材の成長やヘッドハンティングによってマネジメント層が変わることによって見違えるのほどの成長を遂げることもあります。「会社は社長で決まる」という言葉があるとおり誰が経営やマネジメントに参加しているかということは非常に重要です。

 

また、「モノ」についても同様です。モノとは商品やサービス、それを生み出す機械やシステムのことを指します。例えば流行しているSNSのインスタグラムですが2010年10月に会社が設立されてから2012年4月にフェイスブックに買収される直前は売上ゼロ、社員13人という会社でした。その当時の決算書は公表されていませんが、かなり酷い状態だったことが予想できます。

 

しかし、フェイスブックはこの会社に対して10億ドルという巨額の買収を行いました。インスタグラムが今後急成長することを予想したからです。決算書は会社の過去のデータであって、その未来の可能性を示すものではありません。特に成長期の企業は現在決算書の内容が酷くても、開発している商品やサービスによっては一気に優良企業となる可能性を秘めているのです。

 

決算書は会社の経営情報の中でも比較的入手しやすい情報です。しかし、本当にその企業の価値を見定めようとすれば「ヒト」「モノ」の中身についても精査する必要があります。

 

 


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