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難しい決算短信の読み方と連結決算をカンタン解説!

毎年4月の下旬ごろから、新聞誌上には企業の決算に関するニュースが続々と出てきます。今年は黒字であるとか赤字であるとか、2期連続で2桁成長といったような見出しが踊るのを見かけたことがあるかも知れません。

 

実は、これらのニュースは「決算短信」にもとづいて報道されていることが通例です。「決算」といえば「決算書」のイメージがありますが、「決算短信」はそれとは少し異なるものです。

 

実は、「決算短信」はニュースでしか知ることができないものではなく、私達も直接読むことができます。株式投資をしている人にとっては読むことでメリットがあります。というよりもむしろ、読まないことのデメリットがあまりにも大きいと言えます。

 

本稿では、この「決算短信」を題材として、「決算書」とは何がどう違うのかを整理した上で、株式投資の意思決定に活用するために「決算短信」をどのように読むのか、そして、連結決算」の意味と特徴、メリットやデメリットを説明します。

 

 

1 決算短信とは?

決算短信とは、読んで字のごとく、決算の情報を短く、簡潔にお知らせするものです。ですが、ただ単にこれだけを聞いても、いろいろな疑問が湧いてくるでしょう。

 

一体誰が何のためにお知らせするのでしょうか。また、誰に対してお知らせするのでしょうか。そして、通常の決算書と何が違うのでしょうか。

 

まずは、このあたりの疑問を紐解きながら、基本的なことについて説明します。

 

 

1-1 決算書に関する2つの法律

企業の決算は、通常は1年間を単位として集計され、決算書にまとめられます。そして、これを株主や世の中に対して広く情報公開することで、社会的な責任を果たしつつ、外部との信頼関係を構築・維持していくことになります。

 

そこで、このようにして公表されている決算書について少し詳しく見ていきましょう。

 

決算書は、法律によって作成が求められています。決算書に関する法律には、「会社法」と「金融商品取引法」があり、これらの規定によって、企業は決算情報を株主や投資家に説明するため、決算書を作成し、公表することになるのです。

 

この2つの法律は、両者ともに企業に対して決算書の作成を求めています。同じようなことを別々の法律で規制するのは一見無駄のように思えます。しかしながら、この2つの法律においては、決算書を作成させる趣旨・目的が明らかに異なります。

 

会社法は、会社という存在そのものを法人としてとらえることで、会社が持つ権利や義務について明確化します。つまり、会社が関わる外部の様々な人や組織、つまり株主や債権者などに対して、どのような責任を負っているのかについて規定するものです。

 

ですから、決算書の作成は、あくまで既存の株主に対して説明責任を全うするために必要なこと、という位置づけが強く出ているのです。株主との関係構築のために、1年間で何をやってきて、どれだけの成果を挙げたのか、を説明するのが主な目的です。

 

それに対して、金融商品取引法の趣旨は、もっと大きな視点から、企業情報を広く世の中に対し積極的に開示することによって、誰もが情報にアクセスできるようにして、投資家が安全に取引できる証券市場を実現することです。

 

また、そのことを通じて、日本経済全体の活性化につなげよう、という目的があるのです。

 

そのため、決算情報の開示は、既存株主だけではなく、市場全体、つまり全ての投資家のため、という位置づけになります。

 

このように2つの法律は目的が明確に異なります。そのため、規制の対象も、会社法は全ての会社であるのに対して、金融商品取引法は証券市場で資金調達をする、いわゆる上場企業が中心となります。上場企業は事業規模も大きく、市場に与える影響も強いことから、社会的な責任が大きくなるからです。

 

実は、決算短信も上場企業を対象とした規制です。その趣旨は、広く世の中に対して決算情報を開示しようという点で、金融商品取引法と通じます。

 

そこで、今度は金融商品取引法で作成される決算書である「有価証券報告書」と決算短信を比較することによって、その違いを確認していきましょう。

 

 

1-2 有価証券報告書とは?

有価証券報告書は、金融商品取引法の定めによって、企業が財務諸表およびその他の決算に関する情報を開示するための書類です。

 

作成される決算書は主に損益計算書と貸借対照表です。企業の規模などによっては、さらに詳細な書類や、細やかな情報開示が求められる場合がありますが、基本的には損益計算書と貸借対照表を見れば、企業の財政状態や経営成績は読み取ることができます。

 

ただし、有価証券報告書に必要な記載事項は決算書類だけではありません。ほかにも経営指標の推移や事業リスク、主要な設備や株主の状況など、企業内容に関する情報がかなり幅広く求められています。

 

金融商品取引法が適用されるのは、主に上場企業ですが、これらの会社は、会計期間の終了した日から3ヶ月以内に、内閣総理大臣あてに有価証券報告書を提出しなければなりません。

 

内閣総理大臣あて、とありますが実際は、所管官庁である金融庁です。金融庁は、提出を受けた有価証券報告書をインターネット上の開示システム(EDINET)を用いて開示します。これによって、広く世の中の投資家が企業の決算情報に容易にアクセスすることが可能となっています。

 

このように、有価証券報告書は企業決算に関する情報をかなり多く、かつ丁寧に開示するものですが、現代の経済環境を考慮したとき、決算日から3ヶ月後という時期は、必ずしも早いとは言えません。

 

国際的な競争環境にある日本の企業が、市場から資金を調達するためには、さらに迅速な情報開示が求められることになります。

 

そこで、より一層早い情報開示を目的とした、別のルールが必要になります。それが決算短信なのです。

 

 

1-3 決算短信とは?

決算短信は、実は、法律ではなく証券取引所が自主規制ルールとして、上場企業に対して求めているものなのです。目的は、前述のとおり、より早く、広く世の中に企業決算の情報を開示し、社会的責任を果たすことです。
そのため、有価証券報告書ほどの情報量は求めず、むしろ迅速性を最優先した開示を要求するのです。

 

東京証券取引所では、決算日から遅くとも45日以内に、できれば30日以内に決算の内容を開示するように要請しています。従わない場合は、上場廃止も含めたペナルティが課されます。

 

上場企業にとって上場廃止は死活問題ですから、証券取引所の要請はかなり拘束力を持ちます。法律上の規制よりも、圧倒的に厳しいルールですが、上場企業は従わざるを得ません。

 

このようにして決算短信は、事実上、決算情報が最も早く公表されるタイミングとなります。ですから、企業は決算短信と同時に記者会見を開催することが多いです。このため、この時期に決算関係のニュースが増えることになるのです。

 

この決算短信の情報は、東京証券取引所が運営する適時開示情報伝達システム(TDnet)に登録され、誰でも閲覧できるようになっています。こうしたことからも、迅速性を最優先するという思想が感じられるところです。

 

 

2 決算短信を読んで投資に活かす

決算短信で企業の決算情報を把握することで、銘柄選びなど投資の意思決定に活用できます。というよりもむしろ、その時点で判断しなければ乗り遅れてしまいます。

 

世界中の投資家が、決算情報に注目しています。情報が開示された瞬間に、他の投資家が動きますから、乗り遅れるわけにはいかないのです。

 

当然、有価証券報告書を読んでからでは遅すぎます。決算情報は決算短信で既に出ているわけですから、市場はその時点から動きます。

 

決算短信では、企業決算の情報の中でも特に重要なものに特化して開示しています。もちろん、それは投資家の目線で考えられているものですから、投資家にとって重要な情報が厳選されつつ網羅されているわけです。

 

投資家は、決算短信の情報をしっかりと読み取って銘柄選びを考えていかなければなりません。

 

次節では、決算短信の記載内容に沿って具体的な読み方を解説します。

 

 

3 決算短信の読み方

決算短信は、証券取引所がルール化して上場企業に要請していることは前述のとおりです。例えば最大の証券取引所である東京証券取引所は、決算短信の作成方法やフォーマットについて定め、公表しています。

 

東証に上場している企業は、基本的にはこのフォーマットに沿って決算短信を作成すれば良い、ということになります。ただし、適用する会計基準によって、開示すべき項目が異なります。わが国の上場企業は、日本基準を始めとして、米国基準など複数の会計基準によって決算書を作成することが許容されているからです。

 

そこで本稿では、適用企業が最も多い日本基準を適用している場合を前提として、以下のとおり決算短信の内容を確認します。

 

決算短信に記載される内容は、大きく分けて「業績」に関する内容と、「配当」に関する内容、およびその他補足情報です。補足情報では、今後の業績の見通しなどを記載する企業が多く、これが度々ニュースになります。

 

「業績」というのは、まさに決算書の財務内容を要約したものとなります。「配当」関係では、過去2カ年の配当実績と、当期の配当予想額や配当性向などの情報が記載されます。

 

 

 

3-1 連結経営成績の読み方

まずは、決算短信の「業績」部分の最初に掲載されている連結経営成績について確認します。経営成績とは、損益計算書において示されるものです。損益計算書のデータをもとにして、当期および前期分の売上高、営業利益、経常利益、当期純利益が記載されます。

 

また、分析指標として、1株当たり当期純利益、自己資本当期純利益率、総資産経常利益率、売上高営業利益率が記載されます。

 

有価証券報告書に掲載される損益計算書では、より詳細な情報が掲載されますが、決算短信では、このように重要な部分のみを抜粋しています。

 

それは、投資家が企業の経営成績を判断する上で重要な情報に限定している、と言い換えることができます。

 

なので、これらのデータは十分に検討する必要があります。売上高はどれだけ収益を稼ぎ出したか、ということを示しています。前期の金額が併記されますので、前期と比較して増えたのか減ったのか、という点から経営の状況を読み取ることができます。

 

営業利益は、企業が本業で稼いだ利益です。売上高から、仕入高など売上を獲得するために直接的に必要となった原価と、販売や管理のためにかかった経費を除いた金額です。

 

本業以外で儲けた利益や、臨時的に発生した損益が含まれていませんので、企業の実力がそのまま表れている数字として、大変参考になります。

 

経常利益は、本業以外で儲けた利益や、かかった費用を営業利益に加減して求めた数字です。ここでいう「本業以外」とは主に、余剰資金を運用することによって利息や配当などを得る金融活動などが挙げられます。

 

当期純利益は、経常利益に臨時的に発生した損益も全て含めて、最終的にどれだけもうけたのか、という金額です。

 

決算関係のニュースで「増益」や「減益」とされている場合には、当期純利益を話題にしていることが多いでしょう。

 

しかしながら、当期純利益がプラスだからといって、営業利益も経常利益もプラスとは限りません。本業では赤字なのに、保有していた株式がたまたま高値で売れて当期純利益だけ大きくプラスに出ることもあり得ます。

 

そのような場合は、当期は良いとしても、次期以降も継続的に利益を出して成長していくとは考えにくいでしょう。このように、利益を多角的に見ることができるよう、段階的に計算する仕組みになっているのです。

 

分析指標に目を移すと、まずは1株あたり当期純利益があります。これは当期純利益を発行済株式数で割ったものですから、株主が保有する1株につきどれだけ利益を稼ぎ出したかを表します。

 

これによって投資家は、投資額に対してどれだけリターンが得られたかを端的に知ることができるのです。

 

自己資本当期純利益率もこれと類似した観点ですが、こちらは会社全体での話になります。自己資本は、株主から受けた出資の総額を表します。これに対してどれだけ利益を稼いだか、という稼ぐ力を指標化するものです。

 

売上高営業利益率は、経営効率を表す指標です。計算式をまず確認しましょう。

 

売上高営業利益率=営業利益÷売上高

 

ここで、営業利益とは前述のとおり、売上高から売上原価と販売費および一般管理費を控除したものでした。つまり、この指標は売上高1に対して、それを稼ぎ出すために必要なコストを除くとどれだけ残るか、を表しているわけです。

 

この指標が過去に比較して増加していれば、経営効率が向上していると読み解くことができるでしょう。逆もまた然りです。

 

 

 

3-2 連結財政状態の読み方

財政状態とは、貸借対照表に表示される情報です。決算短信に示されるのは、総資産、純資産、自己資本比率、1株当たり純資産です。

 

総資産とは、企業が保有している資産の総額を表します。多ければ多いほど良いように思えますが、それほど単純ではありません。

 

例えば、資産として現金を1億円持っていたとします。それ以外に何も資産がなければ総資産額は1億円です。これだけを見ると裕福な企業のように思えます。しかし、一方で銀行からの借入金残高が1億2千万円あったとしたらどうでしょうか。

 

全ての資産を手放しても負債を完済することができません。そう考えると全く裕福な企業ではありません。つまり正味の財産を測るには、資産から負債を除いて考える必要がありそうです。そこで、純資産の額を確認します。純資産とは、総資産から負債額を除いた金額なので、正味の財産の額を表しています。

 

純資産が前期から増加していれば、正味の財産が前期よりも増えていることがわかります。つまり、それだけ成長していると考えて良いでしょう。

 

自己資本比率とは、総資産のうちどれだけ自前の資金でまかなっているのかを表します。総資産の額は、調達した資金の合計額と一致します。資金調達は、借入金のように返済義務のある負債として用立てるか、株式を発行して返済義務のない株主資本として準備することになります。

 

返済義務のある負債を他人資本、返済義務のない株主資本を自己資本と言い、自己資本が全体のうちどれだけあるのかを示すのが自己資本比率となります。計算式は以下のとおりです。

 

自己資本比率=自己資本÷総資産(総資本)

 

自己資本比率が大きいということは、返済義務のある負債が少ないということ、それと同時に利息負担が少ないことを意味します。それだけ財務基盤の強さを端的に表すものと言えます。

 

自己資本比率の過去からの増減や、同業他社との比較などによって、財務基盤の強固さに関する分析が可能です。

 

1株あたり純資産の額は、厳密には複雑な計算を要しますが、簡潔に言えば、純資産の額を発行済株式数で割ったものです。つまり、株主が保有する1株当たりの持ち分がどれだけあるのかを示します。

 

一株当たり純資産の額も先ほどと同様に財務基盤を表す数値ですが、一株当たりに加工されているため、他社と比較するのに有用です。

 

 

 

3-3 その他の指標も必ず確認しよう

以上は決算短信に掲載されている情報であり、言わば誰もが利用可能なものです。投資家として、さらに一歩踏み込んだ情報を得るためには、一歩踏み込んだ分析が必要になるでしょう。

 

ほとんどの投資家が知る情報を知らないことは、武器を持たずに戦うのと同じく無謀なことです。決算短信の情報を加工して求めることができる以下の指標は必ず確認する必要があります。

 

中でも重要な指標の一つとして、投資家が好んで利用するものがあります。それは、株価収益率(PER:Price Earnings Ratio)と呼ばれる指標です。

 

計算式は、株価を一株当たり当期純利益で割って求めます。

 

この指標は、現在の株価が当期純利益の何倍まで買われているか、を表すものであり、株価が割安か割高かを見ることができるものです。PERが低いほど割安で、高いほど割高であると判断されます。

 

割安か割高を判別する基準は、経験的に30倍~40倍と言われていますが、必ずしも絶対的な基準ではなく、同業他社と比較するなどして客観的に判断することが必要でしょう。

 

また、同種の指標として株価純資産倍率(PBR:Price Book-Value Ratio)と呼ばれるものもあります。

 

こちらは、株価を1株当たり純資産額で割って求めるもので、株価収益率と同様に、株価の割安割高を判定する指標です。株価収益率が、フロー情報である1期間の利益に着目しているのに対して、株価純資産倍率はストック情報である決算時点の純資産残高に着目している点が異なります。

 

いずれの観点からも確認して、多角的に情報を分析することが重要です。

 

このように、決算短信はきわめて簡潔な文書ですが、投資家にとっては有用な情報の宝庫です。株式投資をするのであれば、定期的にTDnetをチェックして、決算短信の分析をしておくことが必須であると言えるでしょう。

 

 

4 「連結決算」とは

連結決算とは、親子関係にある複数の会社をまとめて、一つの会社のように見なして行う決算のことです。連結決算に対して、単一会社が個別に行う決算のことを個別決算と呼びます。

 

 

 

4-1 連結決算の概要

連結決算は、個別決算に比べてより正確な連結グループの財務状況を表すことができるため、近年重視されている決算方式です。連結決算を行う会社が作成する財務諸表のことを「連結財務諸表」と呼び、そのうちには連結貸借対照表や連結損益計算書などがあります。

 

連結決算は、親子関係にある全ての会社に義務付けられている訳ではなく、会社法上の連結財務諸表にあたる「有価証券報告書」を提出する会社を対象とした決算方式となります。

 

有価証券報告書を提出する会社は、株式を上場しているなどの非上場会社に比べて社会に与える影響の大きい会社です。そして、連結対象となる子会社は、持ち株基準となる株式の50%超を親会社が保有する会社となります。この形態のことを持ち株支配といいます。

 

また、親会社保有の株式が50%以下であっても、子会社の経営上の意思決定を事実上親会社が支配している場合には、連結対象の子会社とみなされます。このことを支配力基準といいます。

 

親会社が支配力を所持している子会社を連結対象とせず、子会社に押し付けた赤字を意図的に連結決算から外す「連結外し」と呼ばれる「粉飾決算」を行ったと認められた場合には、刑事責任や民事責任を問われることになります。

 

 

 

4-2 連結決算の具体例

連結決算は複数の会社の会計上の数字を一つにまとめる作業の結果ですが、ただ合算すれば良いというものではなく、相殺などの処理を行う必要があります。
連結決算に特有の処理の一例を挙げてみましょう。仮に、P社が9億円で開発した商品IをC社に10億円で売却したとします。

 

P社は9億円の原価に対して10億円の売上ですので、通常であれば(P社とC社が第三者同士の会社であれば)P社の利益は1億円です。しかしP社が親会社、C社が子会社という関係で、かつC社が商品Iを販売目的で保有する場合は、P社の利益は連結決算においてはゼロとなります。

 

これは、親子間で発生した売買取引であることから、連結グループという単位で考えた場合には利益は発生していないとするものです。

 

もし、連結決算の対象子会社を会社の裁量での選択することができるとすれば、上記においてP社が売上と利益を上げたい場合にはC社を連結対象から外せば良いことになります。

 

連結決算には、上記のような会社による恣意的な売上や利益操作を防ぐ目的があります。

 

また、会社の形態や規模は会社ごとに異なります。ある会社が商品の開発から販売まで一連の流れの全てを事業内容としている場合もあれば、同業他社の中には開発や販売をグループの別会社の事業としている場合もあるでしょう。

 

この場合、後者のグループが個別決算を採る場合には、同業である前者と異なる基準となるため、売上や利益が同じ価値を持たなくなってしまいます。連結決算の場合は同じ条件から数字を出すことができますので、同業他社との比較もより正確です。

 

連結決算は、株式を上場するなど社会的影響の大きい企業グループに対して定める、同じ条件の下で売上や利益を弾き出す決算方式となります。

 

 

 

4-3 連結決算の手順

連結決算は、個別決算とは異なり、一定の基準や定められた指針の下に処理を行います。以下に処理の概要を記します。

 

● 連結対象子会社を決定
● 親会社の財務諸表と連結対象子会社の財務諸表を合算
● (新規に連結する子会社の場合)子会社の全資産、全負債を時価評価
● 親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本を相殺消去
● 子会社の資本から親会社の持分ではない部分を少数株主持分とする
● 親子会社間の債権債務を相殺消去
● 債権債務の相殺消去に基づき貸倒引当金の調整
● 親子会社間の商品の売買および取引によって生じた収益と費用を相殺消去
● 親子会社間の取引により発生した棚卸資産中の未実現損益を消去
● 親子会社間の取引により取得した固定資産のうちの未実現損益を消去

 

 

5 「連結決算」と「連結納税」は何が違う?

連結決算と連結納税の違いを見ていきましょう。「連結納税」を文字通りに受け止めると、連結決算の延長上にある(=連結決算書に基づいた)納税と捉えることができそうですが、実際にはそうではありません。

 

連結納税による法人税等の納税額は、個別決算による各社ごとの当期利益を出発点として各種調整を行った後に決定するものです。

 

したがって、連結納税と連結決算との間に関連性はなく、連結決算と連結納税は「連結」という言葉が共通するだけの別個の存在ということになります。

 

また、連結決算を行わない会社でも連結納税を行うことはできます。次章にて連結納税に関して詳しく説明しましょう。

 

 

6 「連結納税」とは

連結納税は個別決算をベースとした納税方式です。この章では、その特徴やメリットとデメリットを詳しく見ていきます。まずは、一般的な(連結納税ではない)法人税等の納税額算出手順を見ていきましょう。

 

 

 

6-1 法人税等の納税額算出までの流れ

会社では、投資家や株主などの外部の利害関係者に公表することを目的として、日々の仕訳や試算表の作成を「財務会計」に依って行います。そして、法人税等の納税額を「税務会計」に依って算出します。

 

財務会計と税務会計とでは「収入」と「支出」のことを、財務会計上では「収益」と「費用」と呼び、税務会計においては「益金」と「損金」と呼びます。呼び方だけではなく捉え方にも違いがあり、一方では収入(支出)と捉えるものを、もう一方では同じように捉えない場合があります。

 

例えば、収入のうちの「圧縮積立金取崩額」などは益金の算入項目(「益金算入項目」)となり、財務会計上は収益とはなりませんが、税務会計上は益金となります。また、収入の一つである「法人税還付金」は「益金不算入項目」となって、財務会計上は収益となりますが税務会計においては益金とはなりません。

 

支出に関しても同様であり、交際費や寄附金の限度超過額は「損金不算入項目」となって、財務会計上は費用となりますが税務会計上は損金とはなりません。これらの参入・不算入項目のうちでは、損金不算入項目が最も多い区分となります。

 

これは、財務会計上の損益計算書の当期利益額と、税務会計上の当期利益額に該当する「課税所得額」との間では金額が異なることを意味します。

 

課税所得額を算出するためには、まず財務会計処理による損益計算書の作成(当期利益額の算出)行います。

 

その後、算入・不算入項目の調整を行う税務会計の書類である「法人税申告書別表四」上にて、損益計算書の当期純利益を基準に、益金算入項目と損金不算入項目を加算し、益金不算入項目と損金算入項目を減算して、課税所得額を算出します。

 

この課税所得額を元に、法人税等の納税額を導きます。

 

 

 

6-2 連結納税の流れ

以上が通常の法人税等の納税額の算出方法となります。続いて、連結納税の手順を見ていきましょう。

 

連結納税では、通常の法人税等の納税額を算出する場合の課税所得に対応する「連結所得」をゴールとして進めることになります。

 

最初に各会社の損益計算書を作成し、当期純利益を算出します。次に、会社ごとに通常の算入・不算入の調整処理を行います。

 

続いて、連結グループの算入・不算入の調整を行います。この算入・不算入項目には、例えば交際費の損金不算入額があります。中小企業の交際費の損金不算入額は通常会社ごとに800万円と定められていますが、連結納税の場合は連結対象の全会社の交際費を合算して800万円までとなります。

 

次に、連結納税特有の調整を算入・不算入の調整を行います。この調整には子会社の譲渡損益の調整などがあります。

 

連結納税を選択すると、税務会計における子会社の課税後の利益剰余金が変動するため、親会社の保有する子会社株式の税務会計上の価額も変動します。しかし、親会社の財務会計上の決算書において子会社の株式価額を修正することは通常ありません。

 

もし、子会社株式の売却により譲渡損益が生じる場合には、税務上の譲渡損益となるように財務会計上の譲渡損益を修正するため過去の変動額を調整します。

 

連結納税特有の算入・不算入の調整処理後に各社の課税所得が求まります。そして各社の課税所得を合算することで連結所得に辿り着くことができます。

 

連結所得に所定の税率を乗じることで連結納税額を求めることができます。連結納税の納付は親会社が一括して(子会社と分割納付することなく)行いますが、各社の納税負担額を求めることもできます。

 

 

 

6-3 連結納税の対象会社

連結納税を行う場合の対象会社は、親会社と完全支配関係となる全ての子会社となります。すなわち、連結納税を選択した時点で親会社の完全支配下にある子会社は強制的に連結納税の対象となります。連結納税対象の任意的な選択はできません。

 

また、対象会社は内国法人であることが条件となるため、外国法人の場合は連結納税対象外となります。ただし、外国法人のある子会社が内国法人であり、当該子会社と当該子会社を親会社とする当該子会社の完全支配下にある内国子会社のグループは、連結納税方式を採ることができます。

 

内国法人のみが連結納税の対象である理由は、連結納税制度が優遇措置であるためです。外国法人は国内の優遇措置を受けることができません。

 

 

 

6-4 連結納税のメリット

優遇措置であるからには連結納税にはメリットがあります。代表的なメリットを紹介しましょう。

 

一つは「損益通算」ができることです。連結会社のうちに赤字(欠損)の会社がある場合は、他の会社の黒字(所得)からその赤字分をマイナスすることができます。法人税は所得額を元に算出されますので、所得額が低いほど法人税額も少なくなります。

 

ただし、連結納税制度が適用されるのは法人税のみです。住民税や事業税は適用対象外となりますので注意してください。

 

続いてのメリットは、親会社の持つ繰越欠損金に対しての扱いです。連結納税を選択すると、親会社の繰越欠損金を連結納税グループに持ち込み、連結納税グループ内の所得に対して利用することができます。

 

紹介する最後のメリットは、試験研究費に関する扱いです。連結納税グループ内で試験研究費が発生する場合には、試験研究費にかかる税額控除の計算を、連結納税グループ一括りとして行うことができます。

 

法人税額が少なくなる単体納税においては、控除限度額も少なくなるため税額控除対象額の全てを控除しきれない場合があります。

 

連結納税では連結納税グループ全体で計算することになりますので、法人税額が単体納税に比べてより増加したというときには、控除限度額の枠も増加し税額控除額も増加するというメリットが生まれます。

 

しかし、単体納税よりも連結納税とした方が法人税額の減少に繋がるというケースにおいては、控除限度額が減少することになります。外国税額控除に対しても同様の扱いとなり、控除限度額が増加するケースと減少するケースの両方が生じることになります。

 

 

 

6-5 連結納税のデメリット

次に連結納税のデメリットを見ていきましょう。

 

1つ目は、連結納税は一旦選択をすると原則として継続適用することになる、ということです。メリットが多い年だけ適用してデメリットが多くなる年には適用しないということはできません。

 

2つ目は繰越欠損金に関するデメリットです。連結納税を開始する時点で、子会社の有する繰越欠損金は切り捨てられることになります(子会社が時価評価資産の時価評価の規定の適用を受ける場合)。ただし、地方税は連結納税の影響を受けませんので、通常通り会社ごとの納税額となります。

 

また、親会社の資本金が1億円を超える場合は子会社へ中小法人税制が適用されなくなります。

 

連結納税グループ内の債権は一括・個別両方の貸倒引当金の繰り入れ対象外となり、交際費の損金不算入の調整時の中小法人の特例は適用されません。また、資本金1億円以下の子会社の所得に対しても軽減税率が適用されなくなります。

 

以上見てきたように、連結決算と連結納税は別物となります。また、連結納税にはメリットとデメリットの両方があります。自社の特徴や中長期的な計画と合わせて連結納税の適用を考えるのが良いでしょう。

 

 


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