2016年末、日本の労働生産性が主要7カ国の中で最下位というショッキングなニュースが公共財団法人「日本生産性本部」より発表されました。
既存の大企業の力が弱まってきている中、新規ベンチャー企業や若手起業家の活躍に期待が寄せられています。
ところが、少子高齢化の影響もあり日本の起業家は減少傾向。日本は、安倍政権が目指す起業大国から遠ざかっている状況です。
果たして世界と競争できる起業家は日本で誕生するのでしょうか。
目次
- 1 なぜ日本の労働生産性は低いのか
- 1-1 サービス産業分野が苦手な日本
- 1-2 日本の起業率は欧州・米国の半分以下
- 2 新しい産業を生み出す起業家が求められている
- 3 企業内起業家が日本の未来を救う!?
1 なぜ日本の労働生産性は低いのか
得意な科学分野や機械分野ではアメリカを上回っている日本。労働生産性※1を引き下げているのはサービス産業分野でした。
電車内はまるでジャングルのような光景になり、居合わせた市民たちは物珍しそうにカメラで写真に収めていたそうです。
1-1 サービス産業分野が苦手な日本
小売り・飲食などのサービス産業分野ではアメリカとは大きく差を広げられ、半分以下にまで落ち込んでいます。
この結果、OECD(経済協力開発機構)に加盟する35ヵ国で日本は20位、G主要7か国の中では最下位となってしまいました。
・アメリカと比較した日本の労働生産性
(参照:マイナビニュース)
このニュースに対して、インターネット上では、
「日本のサービスは質は高いが効率は悪い」
「無駄な仕事が多すぎる」
「そのうち韓国にも抜かれそう」
など、批判的な意見が相次ぎました。
※1 労働生産性とは、労働者1人の1時間あたりの生産額で、1人あたりの国内総生産。労働生産性が高ければ賃金の上昇にもつながるとされる。
1-2 日本の起業率は欧州・米国の半分以下
日本の起業率・廃業率は、欧米の半分又はそれ以下となっており、産業の新陳代謝が進んでいないと中小企業白書は指摘します。
・欧米と比較した日本の起業率
(参照:中小企業庁)
日本の起業率が低い要因として白書は、欧米諸国に比べて周囲の起業家との接点が少なく、事業機会や知識・能力・経験も乏しいことを指摘。さらに、起業家の地位や職業選択に対する世間的な評価も低いと分析しました。
日本は起業する面において世間的な評価や周囲の環境も合わせて、さまざまな課題を抱えており、欧米と遜色ないレベルに引き上げるためにも、官民一体となって取り組む必要がありそうです。
2 新しい産業を生み出す起業家が求められている
(参照:THE JAPAN TIMES)
「日本では今後、ベンチャー企業や中小企業への志向が強まるでしょう。大企業は、世界市場でのシェア低迷を軽視し、アベノミクスによる相場変動に一喜一憂。長期的には苦しいのに、短期的に見て楽観視して安心している。」
(引用:WEDGE)
こう話すのは、大学生で起業し、史上最年少の25歳1ヶ月で東証マザーズへ株式上場したベンチャー起業のリブセンス創設者の村上太一氏。
中学校から早稲田の付属高校に進学後、すでに起業の準備を始め、大学1年の時に高校からの同級生と起業。2年目には7000万円の売り上げを出し、さらに3年後にはマザーズへ最年少で上場させたことから注目を集めました。
祖父が経営者だったことが影響し、子どもの頃から将来の夢は社長になることだった村上氏。世界と競争できる起業家を育てるには、自ら行動し、死ぬ気になって取り組むことだと言います。
「世の中には形になってはいないが、必要とされているサービスがまだまだある。若い世代にできることはとにかく動くこと」
グーグルやユーチューブ、アマゾンなどのIT系の超有名企業はいずれもアメリカ発。世界をリードするIT起業家が日本で誕生するのはいつになるのでしょうか。
3 企業内起業家が日本の未来を救う!?
(参照:関東経済産業局電子広報誌)
社内でイノベーションを起こすことができる人材を企業内起業家といいます。組織の中で割り当てられた仕事をこなすだけでなく、新規産業を生み出すことができる社員が、今、必要とされています。
企業内起業家を育てるには何が必要か−−インターウォーズ株式会社 代表取締役社長の吉井信隆氏はこう答えました。
「日本の企業では企業内起業家は育たないと言われているが、そんなことはない。日本には100年続く企業が2万6000社あり、企業内起業家を育て続けてきた歴史がある。たとえ大企業だとしても、社員に対してベンチャー企業経営者と同じ環境を提供して挑戦させることができれば、企業内起業家を育てることができる。」
起業家が良い会社を立ち上げ、成長すれば、そこに新たな雇用が生まれます。
会社が1社でも多く増えていけば、地域も日本も良くなると吉井氏は指摘します。
「もっとも必要なのは経営者の覚悟。リスクを取って新しい事業に挑戦する覚悟、事業の全責任を取る覚悟、事業が立ち行かなくなったとき、担当者にその事業を中断させる覚悟。経営者にこの覚悟がなければ、経営者についてくる企業内起業家は育たない。」(参照:DODA)
経営者の高齢化の進展に伴い、中小企業の数は年々減少を続けています。これまで地域経済を支えてきた中小企業などが市場から退出すれば、地域の活力が失われ、高い労働生産性は望めなくなるでしょう。
一人でも多くの起業家が誕生することがこれからの日本には不可欠です。そして、社員と起業家の双方に新規産業を生み出す発想力や行動力が求められていく時代となるでしょう。