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個人事業主が初めて確定申告するときのポイントと注意点〜経理・会計で役立つ資格も紹介〜

税金は、個人・法人を問わず誰もが納めなければならない国民の義務です。サラリーマンの場合は、基本的に勤務先の企業が給与から源泉徴収して、代わりに行ってくれるので、本人があまり意識することはありません。

 

しかしながら、自営業やフリーランスとして仕事をしている場合、あるいは、サラリーマンをしつつ副業である程度稼いでいる場合は、代わりに納税をしてくれる人はいませんので、自分自身で行う必要があります。そのためフリーランスとして起業した直後や、副業が波に乗ってきたときに、はじめて納税の壁に当たります。最初のうちは「どうやって納税額を計算したら良いのか」「申告の方法はどうなっているのか」など多くの場面で戸惑うことが多いでしょう。

 

そこで今回は個人事業主が初めて確定申告をすることとなった状況を想定し、税金の仕組みから具体的な手続き、節税のポイントや経理・会計に役立つおすすめの資格を一挙にご紹介します。是非参考にしてはじめての確定申告に臨んでください。

 

 

1 個人事業主とは?

「個人事業主」という呼び名は、事業を行っている主体のうち、「法人」つまり会社などに対して、「個人」で事業を行っている場合に、便宜的に与えられる呼び方です。何か事業を始めようとしたときに、どの形態で事業を行うのか、という点で、私たちには2つの選択肢がある、ということになります。まずはその選択を迫られるわけですが、この2つはどう違うのかについて、確認しておきましょう。

 

 

 

1-1 法人とは?

法人とは、法令によって「人」とみなされる存在です。法令によって、特別に「人」とみなすことによって、はじめて、契約を締結したり、取引をしたり、銀行口座を開設したり、責任を取らされたりすることができるわけです。

 

わかりやすい例を挙げると、「株式会社」や「合同会社」と呼ばれる「会社」は法人です。「会社」は、「会社法」という法令を根拠に設立されます。そこで会社法によって法人格が与えられ、「人」とみなされることになります。

 

もちろん、世の中にある法人は会社だけではありません。そのほかの法人を挙げると、財団法人や社会福祉法人、医療法人やNPO法人などの法人があります。これらはそれぞれ異なる法律を根拠として設立されています。つまり、根拠となる法令がある限り、様々な形態の法人を設立することができます。

 

最近のスタートアップ企業の中には、利益追求よりも、先進技術を用いることで社会課題を解決することを目的としたものも増えていて、このような公益目的の起業の場合は、NPO法人を選択することが多いようです。

 

 

 

1-2 「個人事業主」と「法人」の違い

さて、法人の意味がわかったところで、それと対照させることによって、メリット・デメリットも含めて、個人事業主のことを理解していきましょう。

 

法人の設立には、非常に手間とコストがかかります。それぞれの法令の詳細な規定にのっとって設立の手続きを行わないといけないからです。株式会社であれば定款の認証、創立総会、設立時株式の募集と払込など、いくつもの手続きが必要で、費用もかなりかかります。

 

その点、個人事業主の場合は法律を根拠としていませんから、いつでもどこでも、自分自身がただ名乗りを上げさえすれば、その日から個人事業主になれます。

 

つまり、個人事業主は法人と異なり、あくまで「個人」ですから、自分自身の名前で契約や取引などを行うことになります。そのため、設立という行為がありませんから、手間やコストは生じません。ただし、税務署に開業届を提出しなければならない場合もあるため、この点は注意が必要です。開業届については後述します。

 

そのかわり、社会的な信用は法人のほうが高いと言えます。設立根拠となる法令によって求められている様々なハードルをクリアした、「ちゃんとした法人」という印象を与えることができるからです。社会的信用は資金調達のしやすさに直結します。個人の場合には、社会的信用を保証する仕組みがありません。

 

仮に、どんどん事業が波に乗ってきて、たくさんの人を雇ったり、設備投資が必要になったりすると、どうしても社会的な信用が必要になってきます。その場合には、法人であるメリットが様々な場面で効いてきます。

 

もちろん最初は個人事業主で始めて、事業規模が大きくなってきてから法人化する、ということもできます。小規模自営業やフリーランサーの場合は、大規模な設備投資も必要ありませんし、基本的にこの流れでスタートアップを考えていくことが妥当でしょう。

 

 

2 個人事業主にかかる税金とは?

さて、個人事業主は法人とは異なり、あくまで「個人」である、ということがわかりました。それでは、次に「個人」にかかる税金のことについて考えていきます。

 

 

 

2-1 「個人」にかかる税金とは?

「個人」にかかる税金には、例えば所得税、住民税などがあります。これはサラリーマンでも個人事業主でも同じです。さらに、一定規模以上の個人事業主が納める義務を負うものとしては、個人事業税、消費税などがあります。

 

これらのうち所得税とは、個人が得た所得に対して課せられる税金です。1年間で得た収入の額から、必要な経費を控除した額が課税の対象となります。つまりもうければもうけるほど、税金は高くなります。

 

この構造は法人でも基本的に同じです。法人の場合は、「法人税」という名称の税金になりますが、趣旨としては同じものです。

 

全ての個人に課せられる住民税も、基本的には所得税と同様に、所得を基準に税額が決定しますので、以降、所得税を中心にとらえて解説します。

 

 

 

2-2 所得税の仕組み

所得税の仕組みはとても複雑です。個人の所得を性質ごとに分類して、それぞれごとに計算をする必要があります。所得の分類には、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類があります。

 

事業所得、給与所得、雑所得については後ほど詳細に説明するとして、利子および配当所得とは、預金や貸付、株式等への出資によって得られる所得です。不動産所得とは、不動産の貸付によって得られる所得で、売却の場合は含まれません。

 

退職所得は退職金をイメージしてもらえるとわかりやすいでしょう。山林所得は山林を伐採して譲渡するなどして得られる所得、譲渡所得は、土地や建物などを譲渡して得られる所得で、山林が含まれません。一時所得は、宝くじの当選金や競馬の払戻金などが該当します。

 

それぞれの性質によって、収入の定義や、必要経費として認められる範囲などが異なるため、個別に計算する必要があるのです。もちろん、10種類全ての所得がある個人はほとんどいないでしょう。所得があるものだけを計算すれば良いということです。

 

このように本来は複雑な計算を要する所得税ですが、サラリーマンの場合は、通常は給与所得のみなので、簡便的に計算できます。給与所得は必要経費とみなされる額が決まっており、個々のケースで判断が介入する余地が無いからです。そのため、勤務先の会社が代わりに計算をして、本人の代わりに納税することになっています。

 

会社から毎年12月以降に、その年の給与所得がいくらで、いくらの所得税額を源泉徴収した、という金額を明らかにする「源泉徴収票」が交付されるはずです。源泉徴収票は税務署にも送付されていますので、大半のサラリーマンは、納税に関してそれ以上何もすることはありません。

 

しかしながら、サラリーマンが副業で事業を行っている場合は、会社の源泉徴収に副業での所得が反映されていませんので、税務署は所得全体を把握できていません。そこで別途、確定申告を行うことが必要になります。給与所得と副業での所得のいずれにも所得税がかかるからです。

 

会社に所属していない専業の個人事業主の場合は、クライアントが源泉徴収をする場合もありますが、その場合でも、やはり所得全体を税務署は把握していませんから、必ず確定申告が必要となります。では確定申告とはどのようなものなのか、その手続きについて次節で説明します。

 

 

3 確定申告の手続きとは?

確定申告とは、1年間(1月から12月)の所得にもとづいて計算された税金を、毎年翌年の3月中旬ごろまでに自身で計算し、税務署に申告し、納税する行為です。もちろん、税理士に代行してもらうことはできます。個人事業主の場合は、主に所得税について申告することになるでしょう。

 

 

 

3-1 事業所得?雑所得?

個人事業主が確定申告を行う際には、前節で列挙した所得の種別を考慮する必要があります。つまり、事業から得られた収入を、事業所得として申告するのか、雑所得として申告するのかを、判断する必要があります。それ以外の種別には明らかに該当しません。

 

事業所得とは、文字通り、事業活動から得られる所得のことを指します。雑所得とは、いずれの分類にも当てはまらない所得のことで、原稿料や印税、講演料などが例示されています。そう考えると、判断の余地なく事業所得になりそうですが、実は、事業所得として認められるには、厳しい条件があります。

 

事業所得として認められるためには、反復・継続・独立して行っている、ということが要件になります。つまり、商品を仕入れて販売する、といった事業活動を日常的に何度も繰り返し続けていること、および、そのことについて自分自身がリスクを取っていることです。専業の自営業者やフリーランサーの場合であれば、基本的にこの要件を満たすことができるでしょう。

 

他方、サラリーマンの副業の場合、その仕事内容はネットオークションで転売して利益を得たり、アフィリエイトで収入を得たりといったところが多いでしょう。この場合は、単発の取引であることが一般的であり、反復性や継続性の面から事業所得と認められにくい傾向にあります。また、「事業」と呼べる規模かどうか、という観点でも、副業ということであれば、当たらないケースがほとんどでしょう。

 

事業所得のほうが、雑所得よりも税制面で有利な点が多いため、事業所得にした方が良いのですが、サラリーマンの副業では現実的には難しいと言えます。

 

専業の場合は事業所得、副業の場合は雑所得、と考えておくほうが無難でしょう。

 

 

 

3-2 白色申告と青色申告

所得税の計算過程において、事業所得の計算方法は、簡単に言えば事業収入の金額から、事業に必要となった経費の額を控除して課税所得を算出し、課税所得にあらかじめ決められた税率を乗じて算出します。

 

税率は、課税所得が195万円以下の場合は5%、195万円を超えて330万円以下は10%、330万円を超えて695万円以下は20%と上がっていき、最高税率は課税所得4000万円超の場合で45%です。

 

このような基本的な計算方法のもと、所得税の申告手続きに関して、個人事業主の場合は、2通りの申告方法があります。それが、「白色申告」と「青色申告」という2つの制度です。

 

税額を算定する過程の中では、税金を安くするための様々な仕組みがあるのですが、実は、これら2通りの方法のうちどちらを採用するかによって、その内容が大きく変わってきます。

 

青色、白色、というのは申告書用紙の色のことを指しています。現在では申告も電子化が進んでおり、紙の色にあまり意味は無いのですが、法律用語としてそのように呼ばれていますので、現在でもこの言葉で制度が分けられているのです。

 

青色申告は、管轄の税務署に対して、あらかじめ「青色申告承認申請書」を提出しておくことで適用することができます。これをしなければ、自動的に白色申告となります。また、前述の開業届も、提出しておく必要があります。

 

開業届は、申告書の色に限らず、本来は全ての個人事業主に提出義務があります。しかし、提出していなくても罰則がありませんので、提出していない個人事業主も多いのですが、青色申告を適用するためには必須となります。

 

青色申告が適用されると、帳簿の作成などが求められることになりますが、大いに節税につながります。日常的な取引の記録を帳簿に残すということと引き換えに、様々な税制上の優遇措置が適用されると考えて良いでしょう。

 

白色申告の場合は、このような措置は一切ありません。その代わり、手続きなどは簡便です。では、具体的に、青色申告にどのようなメリットがあるのかについて、次節で確認しましょう。

 

 

 

3-3 青色申告のメリット

青色申告に対する優遇措置の内容として、代表的なものは、青色申告特別控除です。これは、事業所得の計算過程で、収入から経費の額を引いた後に、さらに課税所得を控除できる、というものです。

 

青色申告特別控除には2段階あり、10万円控除と65万円控除があります。控除額の違いは、どれだけ厳密な帳簿を作成するか、によって異なってきます。

 

そもそも記帳方法には、大きく分けて、簡便的な単式簿記と厳密な複式簿記があります。単式簿記は、現金の出入りだけを記録するもので、家計簿やお小遣い帳をイメージしてもらうと良いでしょう。それに対して複式簿記は、企業会計と同じ記帳方式で、固定資産や貸付金といったように、現金だけでなくあらゆる資産や負債の増減が記録の対象となります。

 

また、記帳方法が異なることで、申告時に提出する決算書類にも違いが出てきます。決算書類には、1年間に獲得した利益額と、その発生原因である収益・費用の内訳を明らかにすることを目的とした損益計算書と、期末時点での資産と負債の保有状況を表す貸借対照表があります。

 

単式簿記を採用している場合は、損益計算書は工夫すれば作成できるのですが、資産や負債の動きを帳簿に記録していませんので、貸借対照表が作成できません。複式簿記からは、もちろんどちらも作成できます。

 

そこで、単式簿記を採用し、損益計算書を作成している場合は10万円控除となり、複式簿記を採用し、損益計算書および貸借対照表を作成している場合は65万円控除、ということになっています。

 

10万円と65万円ではかなり大きな差があります。厳密な会計処理をするほうが、税制上、優遇されるということになります。

 

そのほかの優遇措置として、損失の繰り越し、親族への給与を経費にできる、少額の固定資産を一括して経費にできる、などがあります。

 

損失の繰り越しとは、もし仮に1年間のトータルで利益が出ず、赤字になってしまった場合に、その損失額を翌年度以降に(最長3年まで)繰り越すことができる、というものです。

 

赤字が出た、ということは課税所得が存在しませんから、その年の所得税はかかりません。ここまでは当たり前の話ですが、損失額を繰り越す、ということは翌年度に利益が出た時に、過去の損失分を控除できる、ということになります。

 

例えば、今年は100万円の赤字だったとしましょう。今年の所得税は当然ゼロです。翌年度は250万円の利益を獲得できたとすると、何もしなければ、あるいは白色申告であれば、250万円を課税所得として税額が計算されます(その他の控除は無視しています)。

 

この場合に、100万円の繰越損失額があると、250万円から100万円を差し引いて150万円が課税所得となるのです。所得税率が20%だとすると、それだけで20万円もの節税になります。

 

しかも、繰越損失額の方が大きく、控除しきれなかった場合は最長3年まで同じことができる、ということです。

 

厳密な会計処理と決算書が作成され、数値の信頼性が高いからこそ、このような措置が認められるわけです。

 

次に、親族への給与を経費に算入できる、という点です。親族、例えば配偶者に対して給与を支給した場合、青色申告の場合はこれを経費として算定することができます。つまり、その金額だけ課税所得を減額することができるのです。

 

ただし、これには条件があり、申告者と同一生計であること、15歳以上であることに加えて、専従者であることが求められます。専従者というのは、他に仕事を持っていない、ということです。

 

配偶者の場合、同一生計、15歳以上という条件はクリアできるでしょうが、会社勤めなどをしている場合には認定されない、ということになりますので注意が必要です。

 

最後に、少額の固定資産取得に関しての制度です。固定資産は、複数年度にわたって使用することが前提の資産であり、通常の場合、経費として算定できるのは、その年度に消費したと認められる金額です。

 

複式簿記を採用している場合は、減価償却という手続きを取ることによって、固定資産をいくら消費したか、という金額を各年度に配分します。そうすると、資産を取得した年度には、支払った金額の一部分しか経費とならないことになります。

 

つまり、20万円のパソコンを購入して、耐用年数が5年だとすると、1年分は4万円しか経費にできません。

 

それがこの制度を適用することによって、1件30万円未満、合計で300万円という限度額はありますが、取得した年度に一括して経費として算定できるということになります。

 

もちろん、長期的に見れば、費用の合計額は同じなのですが、適用した年度の納税額を抑えることで、資金の流出を減らすことができますから、資金繰りの面からも積極的に活用すべき制度であると言えます。

 

 

 

3-4 青色申告のデメリットと対応方法とは?

以上のように、青色申告の適用について、相当大きな税制上のメリットがあることがわかりました。他方で、デメリットとしては、白色申告に比べて、帳簿の作成と決算書の提出が求められているため、その負担があることくらいです。

 

もっとも、白色申告者についても、帳簿の作成と記録の保存に関しては、2014年から義務付けされています。その意味では、10万円控除の青色申告の場合と比べても、それほど負担感は変わらないとも考えられます。

 

また、近年では、簿記の知識が無くても簡単に取り扱うことができる会計ソフトが多くリリースされています。中には、決算書のみならず申告書の作成まで自動化できるものもあり、クラウド型のサービスであれば、導入にそれほど多くの費用もかかりません。

 

昭和の時代であれば、帳簿付けは手書きするしか選択肢が無く、専門の知識やある程度の時間が必要であったため、白色申告という選択肢には十分な意味がありましたが、現代では、青色申告へのハードルはかなり下がっていると言えます。

 

もちろん、会計帳簿をきちんと作成するということは、納税だけに役立つものではありません。経営状況を数値化できるため、経営課題を早期に発見して、将来に活かすことができます。その意味でも積極的に、会計帳簿と決算書類の整備を検討するべきでしょう。

 

とは言え、最初から青色申告を適用して、厳密な会計処理をすることには不安も伴いますから、まずは白色申告から始めて、仕組みに慣れてきたら青色に移行する、という方法も考えられるでしょう。

 

 

4 節税のポイントとは?

さて、前節まで個人事業主にかかる税金や、確定申告の方法について説明しました。青色申告を適用することが、節税面ではかなり有用であることがおわかりいだだけたでしょう。

 

青色申告の適用は当然検討するものとして、本節では、青色・白色申告に関わらず個人事業主が実践できる、その他の節税のポイントについて解説します。

 

 

 

4-1 個人的な支出の経費算入を検討する

個人事業主が節税を考えるにあたって、まず初めに取り掛かりたいのは、個人的な支出だと思い込んでいるものが、本当に経費にできないのか、という検討です。というのも、個人事業主の特徴として、仕事とプライベートがきわめて近接している、ということが挙げられます。

 

例えば、もともと保有していたパソコンを、プライベートな用途だけでなく、事業のためにも使っている場合などは多くあるでしょう。このような場合、もともとは個人的な支出であったとしても、事業に使用していると認められる部分に限り経費として認められます。

 

同じ観点で、自動車や携帯電話もそうでしょうし、もっと言えば、自宅で仕事をしている場合には、家賃や水道光熱費も経費にできる可能性があります。

 

もちろん、これらのケースでは100%事業のために使用しているわけではありませんから、全額を経費にすることはできません。私用部分と、事業用部分に分ける必要があります。分け方は、特に決められていませんから、何らかの合理的な基準によって案分することになります。例えば使用時間や走行距離、家賃であれば面積といった、客観的に測定できる基準を用います。

 

また、情報収集のために購読している新聞や雑誌、書籍や、打ち合わせ時の飲食費などは、事業目的にさえ合致していれば、案分の必要もなく、全額を経費とすることができます。

 

このような支出は、探してみると意外と多く見つかるでしょう。しかも積み上げてみるとかなり高額になる場合が多いですから、節税効果は高いものです。事業のために支出しているものが無いかを改めて検討してみてください。

 

 

 

4-2 各種保険制度を活用する

また、個人事業主や中小企業を対象とした保険を活用する節税手法も利用しやすいため、一般に多く採用されています。節税に使える保険制度として、まず一つ目に、小規模企業共済があります。

 

小規模企業共済とは、経営者の退職金制度とも呼ばれるもので、中小企業の経営者や役員は当然ながら、個人事業主も利用できる積立型の退職金制度です。個人事業主が廃業や退職に陥った場合に、その事業再建や生活安定のための保障を目的として昭和40年に設立されました。

 

このような退職金の制度は、従業員などの被雇用者を対象としたものでは一般的に充実していますが、経営者向けのものとしてはあまり整備されていなかったため、この小規模企業共済が、経営者のための退職金制度として、現在でも非常に重要な存在になっています。

 

この小規模企業共済に加入するのはあくまで経営者個人ですから、個人が支払う掛け金を所得税の計算で経費処理できるということになります。

 

将来退職金として返ってくることが期待できるにもかかわらず、その掛け金部分が課税所得の圧縮効果を持つため、長期的に考えると大きな節税につながると言えるでしょう。退職所得は控除額がかなり大きいので、返ってきた時に回収される、ということもほとんどありません。

 

使える保険制度の2つ目は、中小企業倒産防止共済です。中小企業倒産防止共済とは、経営セーフティ共済とも呼ばれるもので、個人事業主が取引先の倒産による経営難に陥ってしまった場合に、必要な事業資金を速やかに借り入れることができるようにする制度です。

 

取引先が倒産することによって、健全であったはずの中小企業まで巻き込まれてしまうという事態、いわゆる連鎖倒産を防ぐために昭和53年に設立されました。

 

この中小企業倒産防止共済に加入すると、取引先が倒産した直後に、無担保・無保証人で、当該取引先に対する債権額と、掛け金の10倍の額との少ない方の金額を上限として、借り入れすることができます。

 

そしてその掛け金は月額5,000円から20万円の間で選ぶことができ、全額を経費とすることができますので、もしもの事態に備えながら節税効果を得ることができる制度になっています。

 

ただし、資金が必要となった場合に解約すると、返戻金が所得に加算されてしまいます。その場合は、契約者貸付制度を利用して、借り入れを起こせば、多少利息負担はありますが、課税対象とはなりません。

 

以上、個人事業主の税金と確定申告に関して、仕組みや節税のポイントについて説明しましたが、基本的な節税対策は白色申告の時点からでも取り組み始めることができます。それを継続しつつ、できる限り早く青色申告に移行して、優遇措置の恩恵を受けることを目指すのがベストな選択肢といえるでしょう。

 

 

5 日商簿記検定

では経理・会計分野で役に立つお勧めの資格として11種類を紹介します。

 

まず日商簿記検定は、全国の商工会議所(市など一定地域の商工業者によって構成される公益団体)が母体となる、1954年から始まった国内において最も歴史のある簿記の資格です。数ある会計関係の資格の中でも抜群の知名度を持つことから、就職や転職時に有効な資格とされています。会計に関する資格は複数ありますが、一般的に断り無く簿記◯級という場合にはこの日商簿記検定のことを指します。

 

日商簿記検定資格は難易度に応じて等級が定められており、最高難易度の1級から初級までの4区分と、そして2018年に新設された原価計算初級の5つの級に分かれています。

 

初級は、2017年の4級の廃止に際して新設された、ネット上で受験できるものです。2018年には原価計算初級という新たな区分も新設されました。どの級も100点満点中70点が最低合格ラインとなっています。

 

 

 

5-1 日商簿記1級

【難易度】大学等の経理・会計専門レベル 【受験会場】全国の商工会議所 【試験時期】6月、11月 【受験料】7,710円

 

日商簿記の中でも最も難しい検定試験です。合格のための学習時間の目安は簿記2級の資格を持ち資格学校に通った上で500時間前後、独学の場合は1000時間程度かかるとされています。

 

試験内容は極めて高度の商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算分野となり、合格者はこれら分野の習得者ということになり、企業でも経営管理や経営分析業務を担当できる専門性を証明する資格と言えます。また、税理士試験の受験資格にこの日商簿記1級の合格があります。

 

 

 

5-2 日商簿記2級

【難易度】商業高校レベル
【受験会場】全国の商工会議所
【試験時期】2月、6月、11月
【受験料】4,630円

 

企業が経理担当者に最も望む資格と言われます。試験内容は高度な商業簿記、原価計算を含む工業簿記となり、このため合格者は、企業の経理担当者として十分な経理・会計知識を持っているものと見なされます。

 

合格学習目安時間は150時間から250時間程度とされていますが、簿記初学者が独学で挑む場合には倍程度かかると言われます。合格率も10~30%と高くなく、また試験ごとに難易度の上下があるため、しっかり学習しておかないと何回も受験をすることになります。

 

 

 

5-3 日商簿記3級

【難易度】基本的な商業簿記レベル
【受験会場】全国の商工会議所
【試験時期】2月、6月、11月
【受験料】2,800円

 

簿記の基本的な知識を有すると見なされる資格で、この資格所有者はビジネスパーソンとして求められる簿記知識を持っているという評価を得ることができます。合格標準学習時間は、独学で初学者の場合は70時間から100時間前後とされています。

 

近年難易度の上昇を指摘されています。かつては「簿記の入門資格」というイメージがあり、難易度と知名度は同2級と比して明らかに格下のものでしたが、そのイメージは次に紹介する簿記初級に譲って、近年では評価が高まっています。企業が経理・会計担当者に求める資格もこの3級からとなります。

 

 

 

5-4 日商簿記初級

【難易度】簿記入門
【受験会場】商工会議所ネット試験施行機関(パソコン教室等)
【試験時期】試験施行機関が定める日時
【受験料】2,160円

 

商工会議所が指定するパソコン教室等によって、インターネットを介して行われる簿記の入門資格です。内容や受験しやすさによって簿記の分野の入門的な資格となっています。

 

学習時間は20時間から30時間程度です。1日1時間、一ヶ月程度の学習時間が目安となりますので、簿記初学者が複式簿記の概念を身につけるためにうってつけの資格と言えます。

 

 

 

5-5 原価計算初級

【難易度】日商簿記2級の工業簿記の原価計算分野の基本編
【受験会場】商工会議所ネット試験施行機関(パソコン教室等)
【試験時期】試験施行機関が定める日時
【受験料】2,160円

 

初級と同じくパソコン教室等にて、その会場が定める日時にインターネットを介して受けることができます。2018年に、企業の生産性向上に取り組むことができる人材を養うことを目的に、生産性向上のための原価計算の入門資格として用意されたものとなります。

 

原価計算に特化した特殊な資格であるため、簿記の全般的な入門知識を扱う初級や、続くより高度の3級を取得した後に、当資格を取得することで一通りの基本的な簿記の知識を揃えることになります。

 

 

6 電子会計実務検定

電子会計実務検定は、日商簿記と同じく商工会議所を母体として2005年から始まりました。時代の流れに即した日商簿記よりもパソコン上の会計業務に焦点を合わせた検定試験です。
パソコンの操作と言っても、単に会計ソフトを使用するだけに留まらずに、会計ソフトの出力データーからを元にして経営に役立たせることを目標としています。

 

また、今後ますます重要性・必要性が高まる電子上の申告や、納付システムである「e-tax」、各種会計上の書類である帳簿や証憑の電子上の保存を定める「e文書法」に適応する人材を育成することを目標としています。

 

当検定試験の対象となる会計ソフトには、弥生会計、勘定奉行、会計王、PCA会計、ClearWorks会計ワークスがあり、この5つのソフトのうちどれか一つを選んで試験を受けることとなります。

 

日商簿記と同じく等級があり、1級から3級までの3区分に分かれています。合格基準点はこちらも日商簿記と同じく70点以上となります。

 

 

 

6-1 電子会計実務1級

【難易度】日商簿記1級と同程度~やや易しい
【受験会場】日商ネット試験施行機関
【試験時期】2月、10月
【受験料】10,290円

 

難易度は高く、税理士への登竜門となる日商簿記1級と同程度か、やや易しい程度となります。電子会計データーを用いて経営に活かすことのできるレベルを求められています。

 

試験内容は次の5つの項目からなっています。

  • 電子会計情報の活用(電子帳簿やキャッシュ・フロー計算書に基づいた資金計画や予算管理等)
  • 会計ソフトの導入・運用(会計ソフトの活用やインターネットバンキングの仕組み等)
  • 会計データーの電子保存と公開(電子帳簿保存法(※)について、インターネットへの財務情報の公開 等)
  • 電子申告・納税システムの理解(e-taxの活用 等)
  • 企業会計以外の会計システムの理解(NPO、公益法人等の会計制度について)

 

(※)電子帳簿保存法とは、1988年に施行された会計帳簿を電子化するにあたっての規定をまとめた法律です。電子帳簿の法律は他にも「e文書法」があり、こちらは2005年に施行された会計帳簿の電子保管を規定するための法律となります。

 

試験会場は「日商ネット試験施行機関」となります。同検定試験の2級・3級、また日商簿記4級・原価計算初級の試験会場である「商工会議所ネット試験施行機関」よりも限定された場所となっています。

 

 

 

6-2 電子会計実務2級

【難易度】日商簿記2級と同程度
【受験会場】商工会議所ネット試験施行機関の内、対応会計ソフトが導入されている会場
【試験時期】試験施行機関が定める日時
【受験料】7,200円

 

企業の経理・会計分野に留まらず、特殊な会計方式となる公益法人の会計・財務の責任者としての資質を問われる検定試験となります。
試験内容は次の3項目からなります。

  • 関連業務等からの業務データー等の活用(購買・販売・在庫管理・給与計算等の関連業務データーや、支店・営業所等ごとの会計データーの活用)
  • 電子会計情報の活用(電子会計データーを用いての売上・原価や資金繰りへの活用)
  • 電子会計データーの保管・管理

 

 

 

6-3 電子会計実務3級

【難易度】日商簿記3級と同程度
【受験会場】商工会議所ネット試験施行機関の内、対応会計ソフトが導入されている会場
【試験時期】試験施行機関が定める日時
【受験料】4,120円

 

企業やNPO、公益法人などの経理・会計分野の担当者として適しているかを問うための検定試験です。

 

試験内容は次の2項目からなります。

  • 電子会計データーの流れ(各種証憑の基礎、会計データーの入出力や管理方法等)
  • 電子会計情報の活用(電子上の帳簿の取り扱い方法等)

 

 

7 簿記能力検定(全経簿記)

前述の日商簿記検定と電子会計実務検定は商工会議所主催の公的資格でした。ここで紹介する簿記能力検定も公益社団法人全国経理教育協会が主催する公的資格となります。この簿記能力検定は「全経簿記」と呼ばれています。

 

歴史は古く、1956年に第一回目の試験が開催されており、簿記の検定試験の歴史において日商簿記と双璧をなす存在です。

 

日商簿記と同じく等級があり、上級、1級、2級、3級、基礎の全部で5つに分かれます。更に1級と2級は特殊な形態となり、2種類に分かれています(後述)。

 

簿記の試験で最も知名度のあるのは日商簿記となりますが、この全経簿記は日商簿記に次いで知名度のある、就職や実務において有用な資格となります。

 

全経簿記と日商簿記の違いは難易度にあり、全経簿記の方が易しい傾向にあります。日商簿記の合格率は1級で10%前後、3級でも40%台であるのに対して、全経簿記の合格率は上級で20%前後、3級では70%程になります。

 

合格基準点は日商簿記と同じく70%以上の得点率となりますが、上級は4つの受験科目の内1つだけでも40%未満の科目がある場合は不合格となります。

 

日商簿記に比すると知名度では劣るものの、難易度は易しく、受験料も安価であるため、敷居が低く、日商簿記を受験するにあたっての腕試しという意味合いで受験する向きもあります。

 

 

 

7-1 簿記能力検定(全経簿記)上級

【難易度】日商簿記1級よりも易しく、日商簿記2級よりもかなり難しい
【受験会場】主催協会加盟校(専門学校等)
【試験時期】2月、7月
【受験料】7,500円

 

全経簿記上級の合格者には、日商簿記1級の合格者と同じく、税理士試験への受験資格が与えられます。日商簿記1級と同2級の中間程度の難易度のため、日商簿記1級の前哨戦とする受験用途もあります。合格目安の学習時間は300時間から400時間前後です。

 

同資格を取得することは上場企業の経理・財務部門の責任者レベルとしての資質があることになります。また、将来において税理士や会計士を目指すための第一歩を進めたことになります。

 

受験科目は商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算の4つに分かれており、試験は試験日午前中に商業簿記と会計学の科目を行い、同日午後に工業簿記と原価計算を行うことになります。

 

 

 

7-2 簿記能力検定(全経簿記)1級

【難易度】日商簿記2級と同程度
【受験会場】主催協会加盟校(専門学校等)
【試験時期】2月、5月、7月、11月
【受験料】商業簿記・会計学2,200円、原価計算・工業簿記2,200円

 

試験は商業簿記・会計学と原価計算・工業簿記の2グループに分かれて行われます。前者は試験日の午前中に、後者は試験日の午後に行われます。試験料の納付もグループごとに必要です。合格証書の授与は1年以内に両方の試験に合格することが条件となります。

 

試験難易度は、日商簿記2級と同程度となる、大規模会社での経理・財務担当者レベルです。決算書を作成でき、また他業種でも通用する財務管理能力を求められるものとなります。

 

 

 

7-3 簿記能力検定(全経簿記)2級

【難易度】日商簿記3級と同程度
【受験会場】主催協会加盟校(専門学校等)
【試験時期】2月、5月、7月、11月
【受験料】商業簿記1,700円、工業簿記1,700円

 

試験と受験料の納付は同1級と同じく2グループに分かれて行われます。商業簿記は午前中に、工業簿記は午後に行われます。

 

試験難易度は日商簿記3級と同程度の、複式簿記の概念を深く理解し、損益計算書・貸借対照表を作成でき、中規模企業の経理担当者において求められるものとなります。

 

 

 

7-4 簿記能力検定(全経簿記)3級

【難易度】日商簿記初級と同程度
【受験会場】主催協会加盟校(専門学校等)
【試験時期】2月、5月、7月、11月
【受験料】商業簿記1,400円

 

試験範囲は商業簿記のみとなり、小規模企業での経理担当者レベルとなります。複式簿記の理解や家計会計との違い、基本的な仕訳と試算表の作成を問われます。

 

 

 

7-5 簿記能力検定(全経簿記)基礎簿記会計

【難易度】簿記入門編(易しい)
【受験会場】主催協会加盟校(専門学校等)
【試験時期】2月、5月、7月、11月
【受験料】1,200円

 

簿記会計の入門者のための試験です。基本的な複式簿記を理解し、サークル活動や自治会等の管理組合における会計担当者に求められるレベルとなります。

 

 

8 簿記実務検定試験

前述の日商簿記・全経簿記と比すると、知名度及び就職有利度において低い資格となりますが、前述の2種類の簿記資格とよく並び称されて、かつ混同して扱われることがあり、また前述2種の簿記資格と合わせて3大簿記試験とされることもあるため、簡潔に紹介しておきましょう。

 

簿記実務検定は公益財団法人全国商業高等学校協会が主催する検定試験です。主催協会が示すように、商業高校で使用する教科書に基づいた内容となり、そのため受験者もその多くは商業高校生となります。

 

日商簿記、全経簿記と同様に等級に分かれており、1級から3級までの3種類があります。1級は更に「会計」と「原価計算」の2種類に分かれており、1級の取得は大学や短大への推薦資格となることもあります。

 

難易度は1級で日商簿記2級よりも易しく、2級で日商簿記3級よりもやや易しいレベルです。1級と日商簿記2級とでは同程度の試験範囲となりますが、全商簿記の方が毎回似通った出題傾向となるため、過去問をしっかり学習していれば合格率が高まる傾向にあります。

 

合格率は1級で40%前後、2級・3級は50%台です。試験料はどの等級も1,300円ですが、1級は2種類に分かれているため合計すると2,600円となります。

 

この簿記実務検定試験は「全商簿記」と略されることから、前述の日商簿記・全経簿記と合わせて簿記の代表的な試験として挙げられる一因となっています。

 

 

9 ビジネス会計検定試験

ビジネス会計検定試験は大阪商工会議所が主催する検定試験です。平成19年に2級と3級の第一回試験が開催され、1級の第一回試験が平成22年に開催された、比較的新しい簿記の試験となります。

 

前述の日商簿記等の検定試験が、簿記の仕組みや理解の試験であるのに対して、このビジネス会計検定試験は、損益計算書や貸借対照表等の財務諸表(決算書)を読み解く力を判定するための試験となります。

 

日商簿記や全経簿記と比べた場合には低い知名度となりますが、このビジネス会計検定試験は財務諸表の読み方や活かし方を扱うという特徴を持っているため、前述2種とは異なり企業の財務分析や評価を行う担当者のための資格となります。

 

他の試験と同様に等級が分かれており、1級から3級までの3つがあります。受験会場は、札幌、仙台、さいたま、東京、横浜、新潟、金沢、静岡、名古屋、京都、大阪、神戸、岡山、広島、山口、松山、福岡の中から主催者が指定する会場となります。

 

 

 

9-1 ビジネス会計検定1級

【難易度】日商簿記2級より難しい
【試験時期】3月
【受験料】10,800円
ディスクロージャー(情報開示)や計算書類を含む財務諸表等の各種会計情報の高度な分析を行い、企業の評価を行うことができるレベルを問われるものです。

 

試験はマークシート方式と論述形式の両方で行われ、それぞれ100点満点となり、論述形式を50点以上かつ200点満点の内140点以上で合格となります。

 

 

 

9-2 ビジネス会計検定2級

【難易度】日商簿記2級よりやや易しい
【試験時期】3月、9月
【受験料】6,480円

 

問われるのは財務諸表の仕組みの理解や読み方、財務諸表に関する法令知識、財務諸表を用いての安全性や収益性、そしてキャッシュ・フローについての分析力です。

 

試験はマークシート方式となり、100点満点中70点以上で合格となります。

 

 

 

9-3 ビジネス会計検定3級

【難易度】入門編(易しい)
【試験時期】3月、9月
【受験料】4,320円

 

試験内容は、基本的な財務諸表の理解や構造、財務諸表から読み取ることができる基本的な分析となります。

 

試験はマークシート方式となり、同2級と同様に100点満点中70点以上で合格となります。

 

 

10 経理・財務スキル検定(FASS)

経済産業省は2004年に経理・財務部門人材の育成を目指す「経理・財務サービス・スキルスタンダード」プロジェクトを発足させました。当検定試験は、同プロジェクトの普及と促進のために経済産業省が日本CFO協会に委託をした事業となります。

 

【受験会場】主催協会が指定する会場(全国のパソコン教室やテストセンター)
【試験時期】2期制(上期5/1~7/31、下期11/1~1/31)
【受験料】10,000円(税抜)(ただし日本CFO協会法人会員は税抜き8,000円)

 

これまで紹介してきた検定試験とは異なり等級が無く、得点数に応じて5段階のレベルに分かれた下記のスキル評価が与えられるものとなります。

 

A(689点以上):経理・財務分野全体の正確な理解と責任者としての資質を持っている。
B(641点以上688点以下):経理・財務分野のほぼ全ての業務理解と、業務内容によっては知識に偏りがあるものの経理・財務担当者としての充分な資質を持っている。
C(561点以上640点以下):経理・財務分野の日常的な業務理解と対応力を持っているが、事故の経験業務以外には偏りが見られる。
D(560点以上441点以下):経理・財務の知識に正確さと不正確さが混在している。不十分な部分が多いが指導を受けつつ最低限の業務を行うことができる。
E(440点以下):経理・財務分野の知識・理解が不十分である。

 

試験は以下の4分野に分かれています。また、オプションとして試験問題の中から選出された30問を英語で受験することができます(オプションは無料)。

 

資産=債権債務、在庫、固定資産等
決算=試算表、単体・連結決算、ディスクロージャー
税務=税効果計算、消費税申告、法人税申告、連携納税申告、税務調査対応
資金=現金出納、手形、有価証券、貸付金、借入金等

 

上記4分野ごとに得点を確認できるため、自分の得意・不得意分野が確認でき、テスト受験時の自分の学習度合、スキルを確認できます。近年、企業の財務部門から注目を集めている検定試験です。

 

 

11 ディスクロージャー経理実務検定

ディスクロージャー経理実務検定はディスクロージャー業務に携わることのできる人材を育成することを目的とした、NPO法人であるディスクロージャー実務検定協会が主催する検定試験です。

 

ディスクロージャー(企業の財務情報の公開)は上場企業を対象としているため、上場企業の経理担当者に求められる分野です。当検定試験はそのディスクロージャースキルを測るための試験となります。

 

試験は基礎編と発展編に分かれており、基礎編に合格すると「ディスクロージャー実務士」の資格を、基礎編と発展編ともに合格すると「ディスクロージャー上級実務士」の資格を取得することができます。

 

 

 

11-1 ディスクロージャー経理実務検定 基礎編

【難易度】日商簿記2級よりやや易しい
【受験会場】Web上(自宅可)
【試験時期】2019年2月、3月、4月、6月、7月の平日の指定時間帯(好きな日時を選択可)
【受験料】1,500円(1科目につき)

 

受験科目には、必須の「連結財務諸表関連の表示」と「税効果」の2種類と、選択科目となる「有価証券関係」または「1株当たり情報」があります。選択科目の内どちらかを選択し、計3科目とも7割以上の正解率で基礎編の合格です。

 

 

 

11-2 ディスクロージャー経理実務検定 発展編

【難易度】日商簿記2級よりやや難しい
【受験会場】Web上(自宅可)
【試験時期】2019年1月、5月の平日の指定時間帯(好きな日時を選択可)
【受験料】5,500円

 

受験科目には「退職給付」、「減損」、「ストックオプション」、「デリバティブ」、「資産除去債務」、「企業結合」、「金融商品」があります。科目ごとの受験はできません。正答率7割以上で合格となります。

 

発展編のみの受験もできますが、基礎編を合格していないと「ディスクロージャー上級実務士」の資格は付与されないことになっています。

 

 

12 IFRS検定(国際会計基準検定)試験

IFRS=国際財務報告基準とは、ドイツやイギリスなどの欧州各国、インドや韓国などのアジア各国が採り入れている会計基準のことを指します。
アメリカの会計基準を基礎としている日本国内の企業においてもIFRSの適用は認められており、現在はその強制適用時期について模索されています。

 

国内企業では、三菱商事や伊藤忠商事、楽天やソフトバンクなどが既にIFRSへの適用を開始しています。

 

IFRS検定は、広範に及ぶIFRSの知識と理解力を測定するための試験となり、今後増々重要となる国際的な会計基準の検定試験を日本語で受験できるとあって、近年注目と需要が高まっています。正答率6割以上で合格となります。

 

【難易度】日商簿記2級と同程度
【受験会場】東京会場(株式会社アビタス 新宿校内)、大阪会場(株式会社アビタス 大阪校内)
【試験時期】2月、6月、10月
【受験料】46,440円(先着30名で早期割引価格39,960円)

 

IFRSと日本の会計基準との大きな違いは、日本の会計基準がアメリカ式の「条文主義」に基づいていることに対して、IFRSでは「原理原則主義」に基づいていることにあります。
そのためIFRSを適用する場合は、原則に則っている限り、会社ごとに細かい会計処理が異なっても許さることになります。その特色を学ぶことが当試験の学習の第一歩です。

 

 

13 国際会計検定BATIC

国際会計検定BATICは、会計分野の現場においてグローバルに活躍できるスキルを測るための試験です。

 

東京商工会議所が主催しており、国際的な会計能力を問うことから先述のIFRSに関わる問題が出題されることもありますが、IFRS検定試験との最も大きな違いは、全て英語による出題となることです。

 

【難易度】日商簿記1級と同程度
【受験会場】全国の指定の商工会議所(全ての商工会議所が会場地ではない)
【試験時期】7月、12月
【受験料】10,150円(Subject1のみは5,400円、Subject2のみは7,990円)

 

難易度は日商簿記1級程度と高く、英語での出題となりますので、簿記と英語両方の能力を問うものとなります。

 

試験は2区分に分かれており、必須で英文簿記を試験内容とするSubject 1(400点満点)と、任意で国際会計理論を試験範囲とするSubject 2(600点満点)があります。

 

Subject 1、2ともマークシート・論述形式にて行われ、合否は無く、取得した得点によって能力を判定するものとなります。

 

グローバル化、ボーダーレス化が進む現代において、ますます需要が高まっていく試験と言えるでしょう。

 

 

14 公認会計士

公認会計士は経理・会計分野のトップクラスを税理士と2分する資格です。

 

公認会計士と税理士の主な違いのイメージは、公認会計士が企業の会計処理を監査する業務を受け持つことに対して、税理士では会計処理の結果に基づいて税務申告業務を担うことにあります。

 

公認会計士は、監査業務としては大企業を顧客に持つことになりますが、監査業務に留まらずに中小企業に対しては会計処理全般を担うなど、その役割は広範囲でどの企業からも求められる人気の高い、かつ難易度の高い資格となります。

 

【難易度】非常に高い
【受験会場】東京都、大阪府、北海道、宮城県、愛知県、石川県、広島県、香川県、熊本県、福岡県、沖縄県の指定会場(合同庁舎や大学等)
【試験時期】短答式12月、論文式8月
【受験料】19,500円

 

公認会計士の合格目安学習時間は3000時間から5000時間と言われています。また、公認会計士として仕事を行うためには、公認会計士試験に合格することと、更に2年間以上の業務補助、実務補修の一定期間の受講、そして修了考査に合格する必要があります。

 

 

15 税理士

税理士は経理・会計分野の最高峰の資格です。

 

税理士は、納税者を代理しての税務の届出書の作成・申告業務や、税務相談業務等の独占資格を与えられています。そのため、法制が変わらない限りは、今後も地域を選ばずに一定の需要が約束された資格と言えるでしょう。

 

税理士は税務業務を取り扱うことから、その前段の企業や個人の会計業務全般も担い、業務は広範囲に及びます。

 

【難易度】非常に高い
【受験会場】北海道、宮城県、埼玉県、東京都、石川県、愛知県、大阪府、京都府、広島県、香川県、福岡県、熊本県、沖縄県の大学等
【試験時期】8月
【受験料】1科目4,000円、2科目5,500円、3科目7,000円、4科目8,500円、5科目10,000円

 

税理士試験を受験するためには日商簿記1級の合格などの資格が必要となります。税理士試験の合格には、必修科目2科目を含んだ全11種類の科目の内から5科目を合格することが条件となります。

 

税理士としての業務を行うためには、税理士試験に合格し、更に関連分野で2年間以上の実務経験を積む必要があります。

 

税理士の合格目安学習時間は、少ない場合で3000時間前後、社会人が仕事を続けながらだと6000時間を超える場合もあると言われています。

 

いかがでしたでしょうか。経理・会計分野で役に立つ資格を紹介しました。経理・会計分野で活躍するためには、現場での経験を積むことが重要ですが、専門の検定試験を受け資格を得ることも役に立ちます。現場での経験は、会社ごとの業務内容の違いによって自己他者とも判別しにくく見誤ることも起こり得ますが、資格や試験の点数は客観的な判断基準となるため、企業側もスキル判別材料として有用です。ご自身に合った勉強方法と目標に応じた資格内容を分析しご参考ください。

 

 


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