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節税に社内ルールは必要?決算対策や経営管理で不可欠な社内規定とは

税務調査を受けた際に社内規定がないことで決算時の節税対策の損金処理が否認されたことはないでしょうか。また、各社員が経費の扱いや処理の仕方を経理部門等に問い合わせることで担当者がその対応に追われ業務が非効率になっていると感じたことはないでしょうか。
こうした問題は決して珍しいことではなく多くの企業でよく見られますが、適切な社内規定が整備されていれば解決できるケースも少なくありません。
そこで今回は決算対策、業務の効率化や社員のモチベーションアップに繋がる社内規定について説明します。何故、社内規定が整っていれば節税や税務調査で有効となるのか、業務や社員にとってどのようなメリットがあるのかを確認していきましょう。

 

 

1 社内規定の不備による決算や経営管理への影響

社内の共通ルールである社内規定を整備しないことで、どのように決算や業務等への影響があるのかを説明します。

 

 

1-1 社内規程とは

社内規定とはその企業が事業を行い存続していくための社内ルールで、社員が企業内でとるべき行動基準や判断基準となるものです。

 

社内規定は就業規則の一部となるもののほか任意で設定できるものなどがあるため、中小企業などでは十分な社内規定が整備されていないケースも少なくありません。しかし、必要な社内の共通ルールが定められていないと、各社員が勝手な行動や処理をしたり、その都度関係部署に問い合わせたりして業務に支障が出ることもあるのです。

 

起業して間もない時期の少人数の規模で企業が運営されている間は、経営者と社員は毎日顔を突き合わせたコミュニケーションができるため、わからないことは直ぐに確認できます。しかし、企業の規模が大きくなり経営者と各社員とが毎日会話をしない状態になれば、そうした確認行為は困難になるでしょう。

 

そのような状態になった場合に、社内規定があればいちいち上司や関係部署に確認しなくても適切な行動や処理ができるわけです。逆にない場合は、関係部署等に問い合わせて確認する、独自の判断で処理するということになりかねません。

 

社内規定が整備されていない、あるいは内容が不適切である場合には企業にとって不利益が生じることもあり、放置するわけにはいかないのです。これらからどのようなマイナス効果が生じるのかを簡単に説明していきましょう。

 

 

 

1-2 決算への影響

決算にあたり節税対策が実施されるケースが多いですが、社内規定がない、あるいは社内規定の内容に不備があることで特定の節税対策の効果が得られないこともあります。

 

節税対策の方法はいくつもあり期末ぎりぎりで急遽生命保険に加入したり決算賞与を実施したりする事例が少なからず見られますが、社内規定の関係でそれらが税務調査で否認されることもあるのです。

 

税務署が企業の費用計上を評価する際、税金逃れを目的とした突発的な損金算入でないかを確認するために計上の根拠説明を企業に求めてきます。具体的にはその費用計上の根拠となる社内規定とその内容などがチェックされるのです。

 

社内規定がなく根拠が曖昧な費用計上や同業他社等の平均的な処理基準を超える計上などは損金不算入とされる可能性が高くなります。損金不算入となれば、利益が増え納税額が増えるため資金繰りに影響がでないとも限りません。

 

しかし、逆に必要な社内規定が整備され、その処理基準の内容も他社と同レベルのものであれば、その費用計上は是認され課税されることはなく、資金繰りを心配しなくても済むでしょう。

 

 

1-3 業務の非効率化への影響

必要な社内規定が整備されていない場合、社員は処理の仕方に迷いその解決策を上司や関係部署の担当者などに問い合わせることになり、業務を非効率にさせる恐れがあります。

 

業務処理の手順や方法などについてわからず迷うとその適正な方法を検討するために時間をかけたり、関係部署等に問い合わせたりすることになるでしょう。

 

たとえば、営業担当者が交通費や出張旅費の処理をする場合、これ自体は本来の自分の直接的な業務ではないですが、付随する仕事であり適切に処理する必要があります。しかし、処理方法が社内規定などでルールかされ明文化・周知化されていなければ経理部門等へその都度確認するしかありません。

 

つまり、営業担当者は本来の自分の業務を止め関係部署に確認するという手間が生じることになり、結果として業務は非効率になってしまうのです。

 

また、問い合わせを受ける側も他の社員から同様の確認等を受ければ、自分の業務は中断され業務の非効率化を招くことになりかねません。

 

加えて社内規定がないことで社員が独自に判断して行った処理や行為が不適切であれば、それが後で問題となることもあります。その場合、その解決のために無駄な時間や費用を費やすことになるでしょう。

 

しかし、適切な社内規定が整備されていれば、そうした問い合わせや返答の行為を減少させ業務の非効率化を防止してくれるとともに余計な問題の回避にも役立つはずです。

 

 

 

1-4 社員のモチベーションへの影響

また、社内規定は業務に関することだけでなく、社員の処遇に関することも含まれるため、その社内規定の存在や内容により社員のモチベーションの状態も変わります。

 

報酬や福利厚生など社員にとって有益な社内制度が完備されていてもそれに関する社内規定がない場合、それらの情報は社員に上手く伝わらず社員のモチベーションアップに繋がらないケースも少なくありません。

 

様々な処遇に関する社内規定を作り、それを各社員が利用するように通知すれば、新しい制度の内容を見落とし活用しない社員も減るでしょう。そして、新たな制度の内容が満足できるものであれば、社員のモチベーションが高まり業績への反映も期待できます。

 

しかし、魅力的な処遇制度などがあっても社内規定などにより明示されていなければ、社員に把握されずモチベーションアップには繋がらないこともあるのです。

 

また、福利厚生などに関する社内規定で制度から生ずる権利関係を明確にすることで余計なトラブルを回避できます。しかし、社内規定がない場合、特定の者だけが特別な福利厚生の施策が受けられる、自分だけがある権利を受けられない、といった誤解を生みいらぬ不満や不安を抱かせることもあるのです。

 

つまり、制度の運用が不明瞭であれば、社員は不公平感を抱きモチベーションが下がる可能性が高まります。しかし、社内規定で各施策の運用を明確に規定して周知しておけば、無用な不満や不安を回避しモチベーションダウンの防止が図れるのです。

 

社内規定はこうした問題を未然に防ぎ、企業の活動を円滑に進め社員のモチベーションを高めるツールとしての役割も果たせるため、有効活用しない手はないでしょう。

 

 

2 節税対策に必要な社内規定の種類と作成のポイント

ここから業務を効率的に遂行するために整備しておきたい具体的な社内規定の種類とその作成上の重要ポイントを紹介します。まず、決算対策・税務調査対策に欠かせない社内規定から説明していきましょう。

 

 

 

2-1 決算賞与規定

期末に決算賞与の費用を計上する場合、支給の仕方や手続において誤れば損金算入が認められないケースもあるため、適正な社内規定を作成し適切に運用することが求められます。

 

決算時に節税対策として様々な方法が取られますが、中でも節税効果の高い決算賞与の支給が良く検討されます。決算賞与は一定の要件を満たせば決算月に費用計上し翌月に支給できますが、一連の手続や社内規定に不備があれば税務署から否認されることもあるため注意が必要です。

 

①賞与規定の主な内容

賞与に関する規定は就業規則の賃金規定の中で盛り込まれますが、決算賞与の支給が考えられる場合は事前にその内容を記載しておきましょう。まず、賞与そのものについて、その主な規定内容を紹介します。

 

一般的に盛り込まれる内容は以下の通りです。

 

A 賞与規定

・適用範囲

誰に適用するかという内容

 

・受給資格賞与算定期間の在籍など

 

・賞与の支給

企業の業績、個人の成果・態度等の考慮、支給の回数・時期、企業の業績や経営状況等により支給しないこと、支給時期の変更の可能性、賞与の支給基準や条件に関する協議等

 

・賞与算定期間

夏季や冬季などの賞与算定期間の明示

・支給額

支給額の算定式の明示など

・中途入社者の取扱い中途入社者に対する在籍期間等での要件

・退職者の取扱い

賞与算定期間中満期在籍し支給日前に退職した者に対する賞与の支給など

 

・賞与の減額等懲戒処分を受けた者に対する支給の減額など

 

B 決算賞与規定の例

 

(決算賞与)
第○条 当社は業績に応じて決算賞与を支給することがある。
2 支給する場合には、毎年□月末までに支給額を決定し、翌月△日までに支給する。
3 支給日に在籍しない者は支給対象としない。ただし、決算賞与については、この限りではない。

 

②決算賞与を未払計上する場合の税務上の要件

決算賞与を決算月に未払計上し翌月に支給すれば、未払計上した年度の損金算入が可能となりますが、そのためには税務上の以下の3つの要件を満たさなければなりません。

 

A 支給額を各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知をしている(各人別に通知する)

 

B Aの通知した金額をすべての使用人に対しその通知した日の属する事業年度終了の日の翌日から1カ月以内に支払う(決算期日後1カ月以内に支払う)

 

C その支給額につき、Aの通知した日の属する事業年度において損金経理をしている(未来計上する)

 

③未払計上する決算賞与の注意点

・通知者に対する支給

上記のAで通知した者にはすべて支給しなければなりません。

 

賞与規定および運用上で注意すべき点は、「支給日に在籍する社員を対象として賞与を支給する」としている場合です。その理由は、このケースが上記Aの通知要件に該当しないと税法では考えられています。

 

税法では「法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は」、Aでの「通知」には該当しないとされているのです。賞与規定で上記のように規定すると、通知を受けた人で支給日に在職しない者が支給されないという事態が想定されてしまいます。

 

未払計上する上ではその債務が確定されることが税務上要求されるため、上記のように支給されていないケースがあるのは債務が確定されない処理と判断され決算賞与全体の未払計上が否認されてしまうのです。つまり、支給した年度の損金算入となってしまいます。

 

従って、決算賞与について通知した者には支給日の在籍とは関係なく支払わないと未払計上ができなくなるという点を理解しておかねばなりません。

 

上記以外に注意しておきたい点を2つ紹介しておきましょう。

 

・通知は書面で行うようにする

税務調査では社員に対して決算賞与の通知が本当に行われたかが問われることがあるため、その証拠として決算賞与の通知を書面で行うべきです。具体的には、支給額を明記した通知書を対象者へ配布します。

 

できれば支給額を確認した旨の自筆・押印の受領書を取っておくとよいでしょう。

 

・支払いは1カ月以内の銀行振込で行う

税務調査では実際にいつ支給されたかを確認することがあるため、その支払いの証拠を提示でいるように準備しておくべきです。最も有効な方法は銀行振込による支払いですが、現金で手渡す場合は自筆・押印の受領書を受け取る必要があります。

 

 

 

2-2 出張旅費規程

出張旅費規程とは企業における遠距離移動に伴う交通費、宿泊費、出張手当等に関する取扱いを決めるルールです。

 

事業活動に伴う交通費は実費で精算するのが一般的ですが、遠距離の移動や宿泊となる場合実費精算せず、出張旅費規程に基づき処理されるケースが少なくありません。

 

この旅費は所得税法上個人の所得として課税されることはなく企業も経費として処理できます。しかし、一般的に妥当と見られる範囲を超える場合は課税対象になり得るため、その点を踏まえて旅費規程を作成するようにしましょう。

 

なお、実費以上の支給は出張の多い役員や担当者には長距離の移動や宿泊に伴う負担への軽減になるほか、企業にとっては利益額の削減による節税にも繋がります。期末ぎりぎりで行う節税対策にはならないですが、出張の多い企業の場合期初から実施すれば少なからぬ節税効果も期待できるはずです。

 

①出張旅費規程の主な内容

一般的に盛り込まれる内容は以下の通りです。

 

・適用範囲

役員や正社員などの対象者

 

・出張の経路

経路の取り方やその経路による旅費の計算

 

・出張の種類

宿泊出張と日帰り出張など

 

・旅費の種類

交通費、宿泊費、出張手当(日当)など

 

・交通費の内容

利用する交通機関の等級と出張者の資格等級との関係

 

②出張旅費規程の作成上のポイント

出張旅費規程を作成する場合、企業は自社の状況に基づいて適切な内容を決める必要がありますが、特に以下の4つの点が税務上の観点からも重要になります。

 

A 片道・往復の移動距離

まず、出張の定義が必要ですが、一般的には勤務場所から出張先までの距離が一定以上ある移動は出張扱いとされるケースが多いです。

 

その移動距離は各企業で異なりますが、利用する交通ルートの最短距離で片道150㎞程度が目安とされています。もちろん交通手段や出張の回数などを考慮して決定するとよいでしょう。

 

ただし、100㎞未満や500㎞以上などの距離の設定は特殊な事情がなければ通常採用されない距離であるため、税務上の問題になる可能性があるため注意が必要です。

 

B 各交通機関の等級と出張者の資格等級との関係

各交通機関には利用できるクラスがいくつかあり、それによって料金が異なるため、旅費規程では事前に出張者の資格等級と各交通機関の利用できるクラスが決められています。

 

たとえば、下表のような区分が設定されるケースが少なくありません。

 

出張者の区分 鉄道 航空機 船舶
社長・役員 グリーン ファースト 1等
部長・次長 グリーン ビジネス 1等
課長 指定席 エコノミー 2等
一般社員 普通車 エコノミー 2等

 

C 日帰り日当・宿泊日当

出張の場合、出張者に日当を支給するのが一般的ですが、その支給額を社会通念上認められる範囲に設定しておくことが重要です。

 

参考として、出張者の区分と常識的な範囲の日当の関係を示しておきましょう。

 

出張者の区分 日帰りの場合の日当 宿泊となった場合の日当
社長・役員 4,000円~5,000円 4,000円~6,000円
部長・次長 2,000円~3,000円 2,500円~3,500円
課長 2,000円~3,000円 2,000円~3,500円
一般社員 1,500円~2,500円 1,500円~3,000円

 

D 宿泊料金

出張の場合の宿泊料金は実費ではなく出張者の区分ごとに設定されるケースが多いです。なお、宿泊先地域の宿泊料の相場を考慮の上平均的な相場か、ややそれを上回る金額で設定されるケースがよく見かけられます。

 

参考として、一般的な宿泊料金の目安を示しておきましょう。

 

出張者の区分 宿泊料金
社長・役員 13,000円~16,000円
部長・次長 9,000円~11,000円
課長 8,000円~10,000円
一般社員 7,000円~9,00円

 

③出張旅費規程の作成・運用上の注意点

税務上の観点からは「各交通機関の等級と出張者の資格等級との関係」、日当および宿泊料金の妥当性が重要となります。

 

各社の業種・業態などにより設定する内容は参考の表通りにする必要はないですが、業界水準や同業他社と比べて著しく高い設定などにならないように注意すべきです。

 

また、運用にあたっては出張旅費精算書および出張報告書の提出を従業員に求める必要があります。これは役員等も同様で、実際に出張した事実を証明する資料として作成しておかなくてはならないのです。

 

そのため出張旅費規程には、出張旅費計算書および出張報告書の作成期限を明記しておいたほうがよいでしょう。ただし、出張報告書はあまり負担にならない程度の必要最低限の内容を求めるといった配慮も必要です。

 

 

 

2-3 社員旅行規定

社員旅行を一定の条件に基づき実施すれば、その旅行費用にかかる一定の部分は福利厚生費として処理できるため、節税効果が期待できます。福利厚生規程の中で社員旅行が制度として規定しておけば、税務調査の折にいらぬ疑いをかけられることも回避しやすくなるでしょう。

 

①社員旅行制度の税法上の注意点

企業が社員旅行を実施する場合、その旅行にかかった一定の費用を企業の経費で負担するためには以下の要件を満たす必要があります。

 

A 旅行の期間が4泊5日以内である

海外旅行の場合、外国での滞在日数が4泊5日以内であること

 

B 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上である

工場や支店など事業所単位で行う旅行は、各職場の人数の50%以上が参加すること

 

注1:A、Bいずれでも自己の都合で旅行に参加しなかった人に金銭支給する場合、参加者と不参加者の全員にその不参加者に支給する金額分の給与支給があったものとされます。

 

注2:以下のものは、ここでの社員旅行には該当しないため、その旅行に係る費用は給与や交際費などにより処理されます。

 

  • 役員だけで行う旅行
  • 取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行
  • 実質的に私的旅行と認められる旅行
  • 金銭との選択が可能な旅行

 

なお、実際に社員旅行の費用が福利厚生費として認められるかは、旅行期間・参加割合の要件および少額不追及の趣旨、また社会通念上一般に実施されている旅行といった点から判断されます。

 

そのため上記のAとBに加えて、旅行費用は社会通念上妥当と認められる範囲でなくてはなりません。そして、企業の費用負担は10万円以下程度が1つの目安とされている点も考慮しておくべきです。
*参考情報:国税庁HP タックスアンサー「 No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」

 

②社員旅行制度に関する規定例

社員旅行に関する規定としては以下のような内容が想定されます。

 

(社員旅行制度)
第○条 当社は、社員旅行を実施することができる。ただし、以下の要件を満たさなければならない。
(1)旅行期間が4泊5日以内であること
(2)旅行に参加する社員は全員を対象として、参加者は全社員の50%以上であること
*パートやアルバイト等の取り扱いも明記しておくほうが良いでしょう。
(3)実施は適用事業年度中に○回以内とすること
(4)旅行に係る費用のうち当社が負担する金額は10万円以下であること

 

2 前項の実施にあたり、事前に社長の承認を受ける必要がある。

 

③社員旅行制度の運用に関する注意点

社員旅行を実施した場合、税務調査対策としてそれが社員旅行であることを証明できる証拠を揃えておきましょう。

 

たとえば、旅行代理店等からの旅行費用請求書や領収書は当然必要ですが、実際の旅行の日程表、参加者名簿、記念写真や訪問先のパンフレットなどを整えておくべきです。

 

社員旅行を実施する場合、その従業員の家族も招待すると福利厚生費ではなく給与として課税される可能性が高くなるため注意しましょう。日本においては税務上家族同伴の社員旅行は社会通念上一般的なものと認識されていないため、家族同伴となった従業員の場合企業が負担する従業員と家族の費用は給与扱いにされる可能性が高いのです。

 

また、旅行の行程の中でゴルフが取り入れられるケースもありますが、工程の大部分がゴルフと認識されるような旅行ではゴルフツアーと判断され税務上社員旅行として認められなくなります。

 

そのため旅程にゴルフを取り入れる場合は慎重な検討が必要です。

 

 

2-4 役員賞与規定

役員の報酬、退職金および賞与は定款や株主総会で定められるものであり、その手続に従わない決定による支給は損金不算入となります。企業がその役員への賞与を損金にしたい場合は上記の手続を経る必要があり、そのための手順を示すために役員賞与規定を整備しておくのが望ましいでしょう。

 

その規定により適切な手続で賞与の支給を行えば、損金算入が可能となり節税に繋がります。期末になってからの節税対策として使えないですが、期首から準備を進めていくことで7月といった時期からの導入も可能です。

 

①役員賞与規定の主な内容

一般的な役員賞与規定では以下のような内容が盛り込まれます。

 

(役員賞与)

・目的

株式会社○○の取締役および監査役の賞与その他の事項について定める。

 

・役員の定義と適用範囲

役員とは、株主総会で選任された取締役および監査役のうち常勤の者は…非常勤役員については…

 

・役員賞与の決定基準

会社の業績に基づき利益処分として株主総会の承認を得て支給を決定する‥・

 

・役員賞与の配分

役員賞与の配分は、各役員の業務執行の結果に対する評価に基づき取締役会において決定する。

 

・役員賞与の配分基準

役員賞与の配分基準は、以下の程度で実施する。
社長  1.0
副社長 0.8程度
専務取締役 0.7程度

 

・使用人兼務役員の賞与

使用人兼務役員の賞与については、その使用人分の賞与が支給されている場合、役員報酬に対応した金額を役員賞与として支給する。

 

その他の項目として、役員賞与の減額措置、長期休職者への対応、役員賞与の支払日、などが含まれます。

 

②役員賞与に関わる税法上の要件

役員への賞与を損金扱いとするには、以下の3つの給与として処理しなくてはなりません。

 

・事前確定届出給与

 

・定期同額給与

 

・利益連動給与

 

ただし、利益連動給与は同族会社以外の法人が対象となっていることもあり、ここでの説明は省略しておきます。

 

*以下の情報は、国税庁HP タックスアンサー「No.5209 役員に対する給与(平成19年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度分)」を引用元としています。

 

・事前確定届出給与

事前確定届出給与は、「その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与(定期同額給与および利益連動給与を除く)」です。

 

つまり、事前に所定の届出書を提出しておけば、役員への賞与も損金算入となります。

 

事前の届出には支給および支給額を決定する必要があり、株主総会での決議を経なければなりません。なお、届出期限の原則は次のイ、ロのうちいずれか早いほうになります

 

イ:株主総会等で決議した日から1カ月を経過する日
ロ:その会計期間開始の日から4カ月を経過する日
*新設法人がその役員のその設立時に開始する職務について上記の定めをした場合、その設立の日以後2カ月を経過する日が届出期限になります。

 

つまり、遅くとも期首から4カ月以内の届け出が必要ですが、期首から3カ月以内に株主総会等で支給額等を決議しその時点から1カ月以内に税務署に提出しなくてはなりません。なお、「臨時改定事由により定めをした場合」は若干異なります。

 

・定期同額給与

定期同額給与は、「その支給時期が1カ月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの」のことです。

 

従って、定期同額給与とは役員への毎月の同額給与を意味しますが、これは損金算入が認められています。

 

決算時での賞与として支給できないですが、役員へもその対価を支給したい場合に役員への賞与分を見積り、それを12等分した金額で毎月支給するという方法が取れます。たとえば、役員への決算賞与を240万円とする場合、その12等分の20万円を定期同額給与として上乗せするわけです。

 

役員への賞与分を定期同額給与でできるだけ早く支給したい場合、期首から3カ月以内の株主総会で給与改定の決議により改定しなくてはなりません。

 

具体的には、3月決算企業の役員の給与が毎月100万円である場合、20万円を決算賞与として加算するなら6月の株主総会で120万円に改定する必要があります。もしそのように実行すれば役員の給与は株主総会後の7月から毎月120万円にできるのです。

 

③役員賞与規定のその他の注意点

役員賞与を損金算入させるためには上記で確認してきた「定期同額給与」か「事前確定届出給与」で実現していく必要があります。

 

これらを適切に実行しなくてはいけませんが、加えて支給する額が過大にならないことです。税法では過大な役員への報酬は損金不算入となる可能性が高くなるため、税務署で不当に高額と認識されない程度に抑えることが重要です。

 

どの程度の額が高額と見られ損金不算入とされるかは容易に判断できないため、税理士等と相談の上決定したほうがよいでしょう。

 

3 社員のモチベーション対策に有効な社内規定の種類と利用方法

社員のモチベーションアップに関わる要因は様々ですが、企業の人事処遇制度のうち報酬面や福利厚生面の要因も影響が大きいといえるでしょう。これらの規定を整備し利用することで社員のモチベーションアップが期待できます。

 

 

 

3-1 福利厚生規程

福利厚生制度のメニュー内容は各企業によって異なりますが、主な内容としては以下のような制度が挙げられます。

 

社員旅行制度
忘年会・新年会制度
健康診断受診制度
人間ドック利用制度
借上社宅制度
従業員貸付制度
社員住宅資金貸付制度
慶弔金・見舞金支給制度
育児・介護休業制度
昼食費用補助制度・残業食事代補助制度
スポーツクラブ利用制度

 

以上のほかにも多くの福利厚生メニューは存在しますが、その種類とその内容が社員のモチベーションに大きく影響することもあるでしょう。そのため経営者は自社の経営資源を考慮しつつ社員の満足度の高いメニューを選び整備に努める必要があります。

 

なお、福利厚生制度の運用で発生する費用は損金算入(福利厚生費等)できるケースが多いものの、内容によっては損金不算入となり社員の給与として課税されることも少なくありません。そのため導入するメニューに関しては社内規定を作成し適切に運用することが求められます。

 

 

3-2 福利厚生費の税務上の注意点

特定の福利厚生制度が従業員への給与ではなく税法上の福利厚生費として認められやすくするためのポイントを説明しましょう。

 

①特定の社員だけを対象としない

福利厚生制度であっても役員や特定の社員だけを対象とするような施策についてはそれを利用する者の給与となるため、対象者は全社員としなければなりません。

 

たとえば、あるスポーツクラブの利用対象者を課長以上とするような場合、その利用にかかった費用を企業が負担すれば、税務上その費用は利用者の給与として扱われるのです。

 

しかし、利用対象者を全社員として規定し運用すれば社会通念上認められる範囲の費用負担は福利厚生費として損金算入できるようになるでしょう。

 

なお、健康診断受診制度や人間ドック利用制度なども全社員を対象としますが、後者の場合利用に関して年齢の条件を付けることは可能です。たとえば、対象者は全員でも利用は「40歳以上」といった設定は不可能ではありません。

 

②福利厚生費として妥当な水準である

福利厚生費の金額として妥当な水準でない施策にかかる企業負担は税法上費用として認められず給与として課税されやすくなるため注意が必要です。

 

先に紹介した社員旅行制度のように社会通念上一般に認められる社員旅行の範疇を超えるような金額の旅行は福利厚生費として認められなくなります。どの程度なら福利厚生費として認められるかという線引きは困難ですが、国税庁等が示す参考例*などをもとに設定すべきです。
*国税庁HP/タックスアンサー「No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」

 

社内規定を作成する際には税理士や税務署等に相談の上適切な金額を設定できるように努めましょう。

 

なお、親睦会制度や社員旅行制度などの場合、費用の大きさとともに回数・頻度の多さについても世間一般程度にする必要があります。あまり頻繁に行うと社員への給与や交際費などとして認識されかねないため、事前に適切な回数を設定し社内規定に盛り込んでおきましょう。

 

③福利厚生施策を制度して運用することを社内規定で示す

福利厚生施策を社員への単なる経済的利益として付与していない点を示すため、福利厚生制度としての運用をアピールするため、制度内容を社内規定で明文化しておくべきです。

 

福利厚生規程があるからと言ってその福利厚生制度への費用負担が福利厚生費に必ずしもなるわけではないですが、社内規定がない場合は制度の運用に余計な疑問を抱かれかねません。

 

税務調査では、福利厚生施策として認められるものか、特定の者だけの経済的利益になっていないか、その経済的利益が大き過ぎないか、などの点で調査が進められます。

 

こうした調査の中で税務署から余計な疑念を持たれないためには適切な福利厚生規程を作成しそれに基づいて運用していることを説明することが重要です。適正なルールに従って運用し経理処理しているだけという点をアピールできるようにしましょう。

 

 

 

3-3 退職金規定 

ここでは社員のモチベーションや人材確保に少なからぬ影響がある退職金制度と退職金規定について簡単に説明します。

 

①退職金制度の社員への影響

企業に従事する者にとってその企業に退職金制度があるかないかで、その企業への帰属意識や貢献意欲などで影響が出ることも少なくありません。

 

定年退職者にとっての退職金は、年金と同様老後の生活を支える重要な資金であるとともに、大金となるケースも多いことから家などの重要資産の購入などに充てる資金としても利用されます。

 

また、定年を待たずに退職する者にとっては、起業の資金にしたり転職までの生活資金に充てたりできるため退職金は貴重なお金になるのです。

 

そのため企業に退職金制度がない場合、就職希望者は応募先からその企業を外したり、その企業に勤務している者は転職を考えたりするケースが多くなってしまいます。

 

退職金制度を導入しない企業も少なくないですが、給与や賞与に退職金を含めて前払いするような報酬制度を採用しないと人材確保は困難になる可能性が低くありません。

 

②退職金制度と退職金規定

退職金を支払うかどうかは企業の判断に委ねられていますが、退職金制度を導入する場合労働基準法により要求される就業規則でその内容を規定しなければなりません。

 

つまり、退職金制度を採用する場合、適用範囲、退職金の決定方法、計算方法、支払方法、支払時期などを決めた退職金規定を作成する必要があるのです。もちろん退職金制度を採用しなければ、退職金規定は作る必要はありません。

 

しかし、先に説明した社員のモチベーションや帰属意識などを考慮すると退職金制度を設けるほうが経営管理上のメリットを期待できるでしょう。

 

退職金規定はないが、社員が退職する際には企業が退職金の支給や支給額をその都度決定して実施するケースも少なくないですが、これでは退職金制度とは呼べず、社員からの評価も得にくいです。

 

なお、退職金規定を作成し社員に周知させた場合、その規定の効力が発生することになります。従って、規定以外の内容の処置を行うと問題になるため、変更が必要となる場合は社員の同意を得らなければならい点を留意しておきましょう。

 

③退職金規定と財源準備

退職金制度を適正に運用するためには適切な退職金規定を作り、必要な退職金の資金を準備していくことになります。

 

・退職金規程のポイント

先に示した規定内容のうち最も重要な1つが退職金の計算方式です。代表的な計算方式は以下の通りです。

 

A 基本給・勤続年数連動タイプ

退職時の基本給×勤務年数×係数といった計算式で算定されます。

 

B テーブルタイプ

勤務年数といった固定要因によって退職金額が決まる方式です。

 

C ポイント方式

役職、貢献度や勤続年数などをポイント化して、「算出されたポイント数×ポイント単価×係数」などにより算定されます。

 

近年ではポイント方式を採用する企業が多いですが、制度設計や運用の手間・負担を考慮するとともに社員の意見なども取り入れ反映・納得させることも重要です。

 

・財源準備の方法

退職金規定を設けた場合、その規定に従った退職金の支給は不可決であるため、その財源を準備する方法も決めて実施しなければなりません。

 

なお、主な財源準備の方法は、以下の通りです。

 

社内積立
確定給付企業年金
確定拠出型年金(401K)
中小企業退職金共済制度
生命保険

 

各々の方法には特徴があり、メリット・デメリットが存在するため、各企業の状況に合わせた選定が求められます。なお、社内積立を除けば、退職金の準備に充てる掛金は損金処理が可能となるため節税効果が期待できるでしょう。

 

また、生命保険を利用する場合、社員の同意を得る必要性も生じ得るためその内容を退職金規定に明記しておくべきです。たとえば、以下のような内容が考えられます。

 

「生命保険契約の締結」
第○条 当社は退職金の資金を確保するため、社員本人の同意を得て社員を被保険者とする生命保険契約を生命保険会社と締結することがある。
2.生命保険契約に伴う保険料は、全額当社の負担とする。
3.生命保険契約により払われる保険金、給付金および解約返戻金等は当社に帰属するものとし、当規程に定められた方法により算定される退職金額を支払う資金の全額または一部とする。

 

生命保険を利用する退職金の保険料を損金として税務署に認めてもらうためにはこうした退職金規定の存在が有効になるでしょう。

 

4 社内規定を導入・活用する際の注意点

最後にまとめとして、社内規定を作成し運用するための注意点を3つ説明します。

 

 

 

4-1 労務上の影響を考慮し社内規定の制定・改善を怠らない

ルールを明文化すると、それによる好影響と悪影響が出ることが多いため、良い点は伸ばし悪い点は改善するといった社内規定の見直しを適宜実施しなければなりません。

 

社内規定の種類や内容にもよりますが、作成・運用されることで社員に反発が起きたりモチベーションがダウンしたりすることがよく見られます。また、内容が十分伝わらない場合、その社内規定の施策があまり利用されず未活用の制度として存在しているだけといったことになりかねません。

 

特に「会社が社員にとって不利益となり得るルールを勝手に決めた」というような印象を持たれる社内規定の制定は社員の企業に対する忠誠心を大幅に減少させます。

 

企業側としては社員のためにと考えた施策でも社員の満足を得られなかったり、逆に反発を買ったりすることもあるため、社員の考え・意見を事前に確認しておくことが重要です。

 

そのためには施策やその社内規定を検討する際には社員からアンケートをとったり、検討会に参画させたりすることも考えてみましょう。

 

ルールは社員が守るべきものですがそれによって社員のやる気や帰属意識が影響されるため、社内規定の制定・改善は社員の関与も不可欠となるはずです。社内規定の雛形をまるまるコピーして運用すると悪影響が全面的に出る可能性が高くなるため注意しましょう。

 

 

 

4-2 税務や労務の法律上の影響を考慮して社内規定を制定する

社内規定は就業規則の一部として作成されるものが多いため労働基準法等で保障される労働者の権利を低下させる内容は避けねばなりません。また、社内規定の内容が税法上不適切であれば、損金処理が認められなくなるため税法に則した規定が必要です。

 

労働基準法は労働条件としての最低基準を確保するための法律であり、就業規則の一部となる社内規定はこれに従う必要があります。つまり、労働基準法で決まっている労働条件を下回るような内容を社内規定とすることはできません。

 

今までに何度か適当に運用してきた内容であっても労働基準法その他の法令に抵触していないかという点を十分確認する必要があります。

 

また、就業規則の一部として社内規定を作成する場合、常時10人以上の労働者を使用する企業では作成・変更後遅滞なく労働基準監督署に届出しなければなりません。届出しない場合には30万円以下の罰金が科せられる恐れがあるため注意しましょう。

 

なお、労働基準監督署への届出は、社内規定の作成・変更の内容だけでなく、労働者の意見書の提出も求められています。労働組合や労働者の過半数の代表者の意見を聴取する義務があり、その結果の報告が要求されているのです。

 

先に説明したモチベーション管理のために行うケースとは異なり、この労働者意見聴取は法的な義務であることを認識しておきましょう。

 

 

 

4-3 決算での節税対策に合わせ社内規定も制定する

決算前に節税対策を行うにあたりそれに関連する社内規定を制定することも検討するべきです。

 

税務調査を受けた場合節税に係る経理処理について、税法に基づく範囲内での処理、使途の公私混同の有無、施策の実施の証明(請求書、写真等)、会計処理についての社内規定の有無などがチェックされます。

 

つまり、社内規定は節税対策の根拠になり得るため、実施する際には準備しておくべきものになるのです。

 

しかし、期末に節税施策と合わせ慌てて必要となる社内規定を作成すると、社員の誤解を招き不安を抱かせるような不十分な内容の規定を作ってしまいかねかねません。そして、その結果、社員のモチベーションが大幅にダウンしてしまうこともあるでしょう。

 

また、そのような状況になれば再度社内規定を変更することになり、労働基準監督署へ再提出することになる恐れも出てきます。

 

こうした事態を避けるためには、できるだけ早くから節税対策の内容を検討するとともにそれに合わせた社内規定の作成に余裕をもって取り組むべきです。できれば税理士と社会保険労務士の両方に相談し税務上および労務上の問題を回避しより多くのメリットが得られるように節税と社内規定の検討に努めましょう。

 

 

5 会計業務の効率化

中小企業や個人事業主の方を悩ませるのは「会計業務をもっと効率良くしたい」「日々の経理作業を楽にしたい」「毎年税理士や会計士に任せるのではなく、もっとコスパを安くしたい…」など様々です。
近年では中小企業が抱える人材不足による雇用問題や、個人事業主でやられている方の仕事の多様化で、いろんな業務を一人で完結させないといけないことが多いのも課題です。
また会計については、これまで会計士や税理士の方の力を借りないと出来ない作業と思われてきました。ただ新たに仕事を興された方にとっては、頼む資金や知識も無いため、泣く泣く年末に重労働を強いられる方が多かったのが現状でした。
しかし「クラウド会計ソフト」の登場により日々の経理・会計業務は著しく改善しました。クラウド会計ソフトの概要と市場規模、将来の展望を見てみましょう。

 

 

6 クラウド会計ソフト

「クラウド会計ソフト」とは『インターネット環境さえあれば、いつ・どこでも経理、会計作業を行うことが出来る会計システム』のことを指しています。

 

 

 

6-1 クラウド会計ソフトとは?

これまでの会計システムと言えば、パソコンにパッケージ型のシステムをインストールして、そのシステム内に数字等を打ち込み、パソコン内にデータを保存するやり方が主流でした。これ「インストール型」といいます。価格も数万円台から、高いもので数十万円するものが主流で、一度買ってしまえば(別途でランニングコストがかかる場合もありますが)、トータルコストで見ればクラウド型よりお得と言える内容でした。

 

しかし、クラウド型と異なりパッケージ型は、先程説明した”いつ・どこでも”という作業は出来ず、あくまでシステムをインストールしたパソコンやサーバーからでしか作業できません。そういった点を加味すると、クラウド型の方が今の仕事環境に適応しているサービスと言えるでしょう。

 

また従来のシステム内容だと初心者には扱う事が難しく、経理や財務関係の仕事に従事している人向けのものが一般的でした。クラウド型会計ソフトは慣れてしまえば一般の方で扱いやすく、作業の効率化がはかりやすく使いやすいシステム内容に変更されたのも近年圧倒的にシェアを獲得されている大きな要因と言えます。

 

また「クラウド会計ソフト」は“財務会計システム”と”管理会計システム”に分かれます。

 

財務会計システムは、伝票入力や決算に関わる書類の作成、帳票出力など、財務データに関する入力、出力することが出来ます。
一方、管理会計システムは、財務会計のデータを元に、事業・部門別などに分けてデータ分析を行うことが可能になります。更には基幹システムと併せて活用することで、より詳細で正確なシミュレーションを行うことができ、意思決定をする際の大きな指針にすることで容易となります。
2つのシステムを上手く活用することで業務の効率化、延いては経営の改善、売上の拡大に繋がります。

 

 

 

 

 

6-2 クラウド会計ソフトを使うメリット・デメリットとは?

ではなぜクラウド型会計ソフトのサービスが各社で拡充しているのでしょうか。そのメリットとデメリットは次の通りです。

 

○メリット

・ニーズに合わせてサービスが選べる

会社のサービスによっては、会計や経理業務の範囲だけではなく、経費精算や給与計算、人事労務などのバックオフィスに関わるデータも一括で任せることができます。
全てのデータを有効に経営に活かすことで、生産性はより一層向上し、売上に繋げていくことが可能です。

 

・業務上のミスを最少限に抑えることが可能

どうしても繁忙期や月末など、業務が立て込んでいるときに起こるのが人為的ミスです。
今まではしょうがないとされてきた部分もあり、防止策として人力によるダブルチェックや、作業のやり直しが推奨されてきました。
しかしクラウド会計ソフトになるとこの作業も自動化できるようになります。

 

・銀行口座やクレジットカードとのデータと自動連携が可能

銀行口座(オンラインバンキング)やクレジットカードの利用明細、ネットショッピングの具体的な履歴といったデータを、クラウド会計システムと同期させる事が可能です。この作業を行う事で、登録以降の取引履歴は自動的に更新されて、入力ミスや作業に関わらす煩雑な業務を一切行う必要がありません(自動取り込みにはAIの技術が組み込まれており、作業をこなすほど利便性や正確性が増すシステムになっている)。

 

・法改正への対応が簡単

毎年見直しが行われている税制や税率、国際会計への対応による問題です。
都度改正や変更があるごとに内容を覚え、システムを変更していては時間とコストがかかってしまいます。しかし、クラウド型であれば、システムのアップロードや設定変更だけで対応することが可能になります。

 

・経理初心者でも扱いやすい

業務効率化を推奨する上では、利用者側にとって最大のメリットです。経理に関わる業務は毎日発生し、それを打ち込む作業となると莫大な時間を必要とします。これを会計ソフトの導入にのより、データの取り込みによる簡略化を実現出来ます。
また通常だと専門家や専任の社員が必要になりますが、これも不要になります。
他の要因にも言える事ですが、大幅な業務の省力化に繋がります。

 

・リアルタイムな経営状況を把握できる

これまで経営者や責任者の経験値や感を頼りに判断してきた会社も多く、むしろそれが一般的な手法でした。しかし、これからはタイムリーな数値判断やシュミレーションに基づいた

 

・人件費の削減

これまでのシステムでは、経理などに精通した人材を配置するなり、複数人員を割かないといけない部署であったと思います。しかしクラウド型を使用することで、必ずしも専門知識を有する社員でなくても扱うことが可能になり、業務能率が一層向上します。
クラウド会計ソフトを使うことで経理にかかる業務が約5分の1に短縮された成果もあるくらい効率化されています。

 

○デメリット

・維持費が発生する

先述したインストール型と比較するとランニングコストの発生も見極める点と言えるでしょう。インストール型は初期費用として数万円支払うことになりますが、クラウド型は年間で数万円の支払いを必要とします。メリットの欄で記述した内容を踏まえると、負担が少し増えるとしてもメリット方が圧倒的に享受出来ると思いますが、これまでの作業を当たり前としていた人からすると高い負担になるのかなと考え、記述させていただきました。

 

・慣れる事が必要

これまで使用していたシステムや方法から変更せざるを得ないため、慣れるまでには時間が必要です。経理や会計業務は、毎日仕事があると言ってもいいくらいたくさんの作業がおこなわれています。そのためシステムの変更時期や、システムを扱うための社員教育、税理士との打ち合わせなど、大幅なシステム変更に伴う時間を必要とすることは経営していくうえでのリスクとなりかねません。

 

・セキュリティ不安

最大の不安はセキュリティ問題です。
近年では、ハッキングによる情報漏洩リスクが後を絶ちません。
各社、セキュリティレベルは金融機関と同等で、データのバックアップを何重にも取る事で有事の際の対策はしております。今現在会社のパソコン内やUSBによるバックアップ、金庫などでデータを保管されている会社と比較しますと、クラウド会計ソフトの方がセキュリティ管理の面では断然安心と言えます。

 

・データ改ざんの恐れアリ?

パッケージ型とは異なり、利便性が高いクラウド型は特性上、誰でも閲覧・入力がしやすくなっています。そのため紙ベースの書類とは違い、容易に改ざんや捏造が出来ることから不正行為のリスクは高まります。
各社で担当者によって権限を設ける事や、セキュリティの設定をすることで不正を未然に防ぎましょう。

 

・完全に会計士や税理士を無くすことは不可能?

システムを導入することで、士業の方(会計士、税理士)との契約が打ち切れると思われる方も多いと思いますが、実際のところはそんな事はありません。
誰でも入力出来るからといっても、その人に会計に関わる知識が備わっているわけではありません。そのためやはり会計士や税理士の方にアドバイスをもらうことは大切です。

 

 

 

6-3 クラウド会計ソフトを導入すべき人・会社とは?

「人材不足に嘆く会社」「業務の効率化を図りたい会社」「売上を増やしたい会社」はクラウド会計ソフトを導入する余地があると言えるでしょう。
また重要な事業、プロジェクトに人員が割けないといった問題も起きてくることでしょう。
その課題に直面した時に力を発揮するのが、クラウド会計ソフトの魅力と言えます。
メリットに書かせていただきましたが、かなりの削減効果が期待できます。
またシステムの自動更新や、人工知能による更なる効率改善が見込めるので、より一層の作業効率が捗ります。

 

 

7 クラウド会計ソフトの市場規模

近年シェアを伸ばしている「クラウド会計ソフト」の市場規模や各社のシェアを見ていきましょう。

 

 

 

7-1 クラウド会計ソフトの市場規模

2018年3月末時点では、確定申告を実施した個人事業主を対象としたアンケート*によりますと、会計ソフトを利用している個人事業主28.4%内、クラウド会計ソフトを利用されている方は14.7%となっており、年々増加傾向にありま(参照データ:MM総研)。

 

また市場規模の試算として法人向け会計ソフトウェアの市場は、アウトソーシングまで含むと国内では約1兆円市場とも言われています。*1
国内の中小企業の数は380万社(全体の99.7%)*2、個人事業主(自営業)の方は約220万人とクラウド会計ソフト企業がターゲットとしている購買層は多く存在します。毎年国内だけで、約20万の事業所が誕生していることも魅力的な数値と言えます(参照:東洋経済、経済産業省 中小企業庁)

 

 

 

7-2 クラウド会計ソフト各社のシェアはどうなっている?

2018年3月末時点での各社のシェアは以下の通りです。*
1 弥生…55.4%
2 マネーフォワード…21.1%
3 freee…16.5%
4 全国商工会連合会…3.7%
5 その他…3.3%
*参照データ:株式会社 MM総研

 

上位3社で90%以上のシェアを獲得しており、他の追随を許しません。
その中でも弥生だけで過半数のシェアを獲得しています。

 

 

8 クラウド会計ソフトの課題と展望

急成長を遂げる「クラウド会計ソフト」ですが、やはりまだまだ課題もたくさんあります。

 

 

 

8-1 まだまだ課題山積?

 

○セキュリティ

これは現場だけでなく、今後もずっと付き合っていく課題となるでしょう。クラウド会計ソフトは先述しました通り、基本的にはSSL暗号化通信を金融機関なみのセキュリティ対策を誇っております。

 

しかしユーザー側である企業や個人事業主の方にはそのようなセキュリティは備わっていないことが多数です。簡単に扱えてしまうからこそ、情報漏洩も簡単に起こってしまいます。
この課題は全ての会社の業務に支障をきたします。
使われるユーザーの方々もパスワードを工夫をすることや、セキュリティの強化については各自の対策をお願います。

 

○インターネットの環境次第

インストール型と違い、クラウド型はインターネット経由でのサービスの為、インターネット環境がものをいいます。快適な環境でなければ、操作性は格段に落ちます。

 

 

 

8-2 今後のクラウド会計ソフトの展望

「今後はどうなっていくのか?本当にこの技術が主流になっていくのか?」
近年では、会計事務所なども積極的にクラウド会計ソフトを業務に活用しています。
それにより、主軸となる業務が「経営者に毎月の収支の報告に伴う、過去の数字の確認」から「具体的な手段、経営アドバイス」にシフトした例も見受けられます。
またサービス自体のオーダメイト化も出来ます。メリットの欄にも書きましたが、今後より一層様々なサービスと紐付けを行い、会社のデータを全て可視化させることが可能になるでしょう。

 

このようにクラウドシステムはより仕事をする上でのインフラになりつつあります。

 

 

9 まとめ

いかがでしたでしょうか。
これまで述べた通り、初期的に作業に慣れるまでに時間を要しますが、その後は以前の経理や会計の業務に費やしていた時間と比較したときに、格段に業務効率を高めてくれます。また企業の人材不足の問題の顕在化や、個人事業主の膨大な作業からの解放など使う人の立場にあったメリットがそれぞれ存在します。ここではデメリットについても述べましたが、これから導入を検討される方にとっては、一長一短な部分もあるでしょう

 

しかしながら、これからの経営環境は、より一層効率化を求める事が可能になり、更にはオートマチック、ロボット技術の発達で人員を適材適所に配置することも可能になります。
このような転換期に受動的にかまえるのではなく、ぜひ積極的に作業の効率化を検討してみてください。

 

 


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