会社設立 会社設立費用全額カード決済可能!!
TEL.03-3586-1520/info@sin-kaisha.jp
会社設立
お問合せ

農業で起業・会社設立!農業ビジネスの準備から成功するためのポイントを徹底解説

img-farmer

新型コロナの影響による外出自粛等により家庭菜園などに興味を持った方も多いでしょうが、その中には将来農業で副業や独立を考えている方もおられるのではないでしょうか。

 

そこで今回の記事では、農業で副業・週末農家、専業農家等で起業したい方、合理的な経営を農業で実践したい方、法人化して農業ビジネスを拡大させたい方のために、「農業で起業・会社設立して成功するための手順や方法」をご紹介します。

 

日本の農業の現状・課題、就農のタイプ、コロナ禍の農業への影響などのほか、農業ビジネスの始め方・取り組み方、農業法人化のメリット・デメリット、取組事例や成功ポイントについて解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

1 農業での起業の現状と将来性

農業での起業の現状と将来性

 

農業で起業して生活できるか、発展できるか、などに関してその現状や将来性を確認しましょう。

 

 

1-1 就農に関する状況

まず、日本の就農人口などの状況を説明します。

 

①農家戸数

農林水産省のweb siteの「農家に関する統計」によると、令和2年(概数値)の農家戸数は、総農家が174.7万戸でそのうち販売農家が102.8万戸、自給的農家が72.0万戸です。

 

平成22年のデータでは、総農家が252.5万戸、販売農家が163.1万戸、自給的農家が89.7万戸となっており、農家の減少が顕著になっています。

 

*用語の定義
「農家」:経営耕地面積が10a以上または農産物販売金額が15万円以上の世帯
「販売農家」:経営耕地面積が30a以上または農産物販売金額が50万円以上の農家
「自給的農家」:経営耕地面積30a未満かつ農産物販売金額が50万円未満の農家

 

②農業経営体数

平成31年農業構造動態調査の結果によると、全国の農業経営体数は118万8,800で、前年比2.6%の減少となっています。このうち組織経営体数は3万6,000で前年比1.4%増加しました。農産物の生産を行う法人組織経営体数は2万3,400で、前年比3.1%の増加です。

 

*農業経営体には家族(世帯)で農業経営を行う「農家」と、農家以外(法人等)で農業経営を行う「組織経営体」があり、経営目的別にみると「農業生産を行う組織経営体」と「農作業受託のみを行う組織経営体」が含まれる

 

家族経営体は115万2800で前年比2.7%の減少となっています。平成27年からの5年間をみると、農業経営体数および家族経営体数は減少傾向、法人組織経営体数は増加傾向が見られます。

 

以上のように日本の農業は家族経営体が圧倒的多数を占めていますが減少傾向にあり、一方少数派の法人組織経営体は少しずつながら増加している状況です。つまり、法人化には一定のメリットがあると考えられます。

 

③新規就農者数

新しく農業に従事する者の状況については、農林水産統計の「平成30年新規就農者調査」などで確認できます。

 

平成30年の新規就農者は5万5,810人と前年並みであり、このうち49歳以下は1万9,290人で7.1%の減少となりました。就農形態別では、新規自営農業就農者は4万2,750人、新規雇用就農者は9,820人、新規参入者は3,240人です。

 

*新規就農者は、上記の新規自営農業就農者、新規雇用就農者および新規参入者の3者を指し、内容は以下の通り

 

・新規自営農業就農者

 

家族経営体の世帯員で、調査期日前1年間の生活の主な状態が、 「学生」から「自営農業への従事が主」になった者および「他に雇われて勤務が主」から「自営農業への従事が主」になった者

 

・新規雇用就農者

 

調査期日前1年間に新たに法人等に常雇い(年間7カ月以上)として雇用されて農業に従事することとなった者(外国人研修生および外国人技能実習生等の場合を除く)

 

・新規参入者

 

土地や資金を独自に調達(相続・贈与等による農地の譲り受けを除く)し、調査期日前1年間に新たに農業経営を開始した経営の責任者および共同経営者

 

以上の通り、新規就農者は年間5万人以上存在しますが、その大半は家族が農業従事者である人や既存の農業従事者に雇用されていた者です。それら以外の新規参入者は3千人超と少ない状況になっています。

 

なお、新規就農者数の推移を49歳以下で見た場合、全体の55,810人のうち49歳以下は19,290人で約34.6%です。これを就業形態別で示すと、新規自営農業就農者の49歳以下は9,870人で約23.1%、新規雇用就農者は7,060人で約71.9%、新規参入者は2,360人で約72.8%となっています。

 

このように49歳以下の新規参入者は数が少ないながらも割合的には多い状況です。つまり、他の産業から参入する比較的な若い方の就農が少しずつ増えています

 

 

1-2 農業ビジネスの現状と問題

現在の農業ビジネスは、従来からの農産物を栽培等・出荷する1次産業と、農産物を加工・販売・サービス化する6次産業に大別できます。

 

①1次産業としての農業事業

この事業は、田畑で稲や野菜などを育て刈り取り出荷するというオーソドックスな農業です。作物等を育てる土地等を確保して苗や種を植えて成長させて農産物を出荷・販売するという業務が事業の内容になります。

 

事業部門としては、稲作、畑作、露地野菜作、施設野菜作、果樹作、花き作、その他作物、酪農、肉用牛、養豚、養鶏、その他、で分類されます。つまり、植物関係の事業と動物関係の事業(酪農)になるわけです。

 

どちらの事業にしてもある程度の収入を確保するためには一定の土地や施設などを確保しなければならず、まとまった初期投資が必要になります。なお、平成30年の新規参入者3,240人の部門別の割合は以下の通りです。

 

稲作:13.0%
畑作(麦類、雑穀、いも類、豆類、工芸農作物):6.2%
露地野菜作:32.7%
施設野菜作:20.7%
果樹作:15.7%
花き作(露地花き、施設花き、花木):3.7%
その他作物:3.4%
酪農:1.2%
肉用牛(繁殖牛、肥育牛):2.5%
養豚:0.0%
養鶏(ブロイラー、採卵鶏):0.6%
その他(養蚕、その他の畜産):0.3%

 

以上の通り野菜作が圧倒的に多くなっています。

 

②これまでの農業の問題

太平洋戦後の国内の農業は、食糧管理制度、農地制度、農業協同組合制度、農業基本法などの国の農業政策により発展してきました。何百万もの農家が米や野菜を栽培し農協を通じて国民へ安定的に提供するという仕組みが実施されてきたのです。

 

戦後の混乱期における食料の確保や高経済成長期での人口の急増などに対して上記の農業政策で作られた農業システムは貢献したと言えるでしょう。しかし、現代では国内人口は停滞から減少へと変わりつつあり、肉類を含む様々な農産物が海外から大量に輸入されるようになってきました。

 

こうした変化の中では国の政策に守られてきた農業システムでは国民のニーズ(価格や種類等)に対応するのが困難になってきています。つまり、今までのように育成して出荷するだけで成り立っていたシンプルな形態では事業を継続するのが難しくなっているのです。

 

これまでの農業システムは、競争に対する意識が希薄で生産効率が低い方法で事業を行っていても国の施策に守られて事業として成り立っているケースも見られます。しかし、海外からの安価で良質な農産物が流入しはじめた現代では、これまでの形態が通用しにくくなっているのです。

 

従って、今後の国内農業では他の産業と同様の経営システムを取り入れた産業化が求められます。つまり、農業も製造業と同じように顧客ニーズや競争の概念を前提とした経営方式を採用しなければならない状況になっているのです。

 

自身が生産する農産物を提供する消費者や事業者などのターゲットを明確にして、競争相手よりも優位に立てる作物を生産し、提供者がより満足してくれる方法で提供する、といった経営が求められます。

 

そのため農産物を生産して出荷するだけに留まらず、その加工や流通の仕方などにも自身が加わる必要性も高まっているのです。

 

③今後の農業事業

上記のような状況の中、農業ビジネスで発展するためにはターゲットを設定して競争で勝てる農業を展開することが求められます。

 

具体的には、国内・海外を問わず市場に適した場所で適した農産物を、コスト競争力を活かして提供していく方法、付加価値の高い農産物を提供する方法、農産物を加工して付加価値の高い商品を提供する方法、観光業やサービス業などを含める方法などです。

 

たとえば、マーケットに近い場所で広大な土地を利用し、効率的な生産方法を取り入れて低コストの農産物を作る方法、かつてないほどの糖度の高い果物やその地域では入手できない珍しい農産物を提供する方法、農園とホテルを運営し農業体験なども提供する事業などになります。

 

日本の農業技術の水準は決して低いことはなく、これまで農家などが培ってきたノウハウにITやその他の科学技術等を活用してより効率的な生産を実現することも可能です。また、品種改良などにより付加価値の高い農産物も開発して海外にも輸出されるケースも増えています。

 

植物工場も進化して、安価で導入できるケースも増えており海外への輸出も期待されています。また、最近では国策として農業の6次産業化が推進されているのです。

 

1次産業の農業従事者が自身の農産物の加工・流通・サービスに関与してターゲットに合わせた付加価値の高い商品・サービスの提供が実施できれば、事業の幅が格段に拡大できるでしょう。

 

 

1-3 新型コロナの農業への影響

新型コロナの農業への影響

 

ここでは新型コロナの農業に対する影響を確認してみましょう。

 

①新型コロナによる社会への影響

令和2年になってから日本でも新型コロナウイルス感染症の影響が次第に見られ始め健康・生命への脅威を回避するために、人の移動や接触などが制限されて国民の暮らしが大きく変わる事態となりました。

 

緊急事態宣言により会食やイベント等への参加や不要不急の外出の自粛だけでなく、学校や会社への通勤・通学なども停止する事態に追い込まれています。こうした状況は海外でも同様で、人や物の移動、モノや食料等の生産・流通が世界的に大きな影響を受けたのです。

 

こうした状況の中で令和2年の前半では食料調達に対する不安や食料の家庭需要の拡大等により米、パスタ、バター等について一部地域の店頭で品切れが発生するといった事態も一時的に見られました。

 

こうした事態は短期間で収まりましたが、他方飲食業での需要が大幅に低下したためそれが農業事業者の経営を圧迫することになったのです。

 

全国農業青年クラブ連絡協議会の4Hクラブが令和2年4月に実施した会員への影響調査によると、「影響を受けた農業者の中で、緊急事態宣言発令直後から出荷数減となったケースが60%以上」あるとのことです。

 

②新型コロナの農業への影響

参議院常任委員会特別調査室が令和2年10月に公表している「新型コロナウイルス感染拡大と食料供給・農業―令和2年上半期における影響と対策―」によると、以下のような影響が確認できます。

 

1)「コロナ禍がもたらした食料需要の変化への対応」

ア 「学校給食向け食材の需要消失」
新型コロナウイルス感染症への対応措置として、政府は令和2年3月2日からの全国の小学校、中学校等に対して休校を要請したため、学校給食向けに計画的に生産されてきた食材が宙に浮くことになりました。

 

イ 「外食・イベント向け高級食材・花きの需要消失」
「宴会や花見、贈答などで春に需要が増える高級食材(和牛肉やクロマグロ、メロンなど)は、インバウンド(訪日外国人)を含めた外食・観光需要の減少等を受けて、在庫が増え、価格が大きく下がり、生産・流通等関係者は苦境に立たされた」と指摘されています。

 

株式会社東京商工リサーチがweb site公表している情報によると、令和2年の全国企業倒産は7,773件でそのうち「新型コロナウイルス」関連倒産は、累計で792件に達したと報じています。産業別では、飲食業や宿泊業を含むサービス業他が2,596件(前年比1.0%増)と最多です。

 

このように飲食関連業が厳しい状況に追い込まれており、農業における既存の販売ルートや販売方法にその影響が生じていると推察されます。

 

ウ 「巣ごもり需要、応援消費、オンライン取引の増加」
外出の自粛、休校、テレワークの導入などにより家族が自宅で過ごす時間が長期化することになり、外食や中食から内食(自宅で調理)の回数が増加し、家庭での食材の需要が高まりました。

 

また、3密を避けるために食材をオンライン取引で購入する消費者が増え、その対応のためにインターネット通販サイトに登録する生産者も増えています。

 

巣ごもり需要は一過性の可能性もありますが、アフタコロナ下でも一定の需要は期待でき、ネット上で新たに繋がった消費者等との関係性を活かすという方法は今後も重要になるでしょう。

 

2)「生産現場における労働力不足対策」

 

新型コロナウイルス感染症対策の入国制限措置等によって、農業分野で来日が困難になった新規の外国人技能実習生や春節等での一時帰国した技能実習生等により農業での労働力不足が問題になりました。

 

加えて学校等の休校等により主婦などのパート労働者等の労力も利用しにくくなり、収穫・作付けの作業などに影響が出ています。農業分野の人手不足も深刻で外国人技能実習生やパート労働者の確保は重要ですが、安易に依存しないための対応策は必要です。

 

3)「農林水産物・食品輸出の動向と今後の戦略」

 

新型コロナ対策のために展示会・商談会が中止や延期となるケースが増え、令和2年上半期(1~6月)の農林水産物・食品の輸出額は、前年同期比8.2%減の4,120億円となりました。

 

その内容を見ると、牛肉は欧米の外食産業などの不調により輸出額が23%減の102億円、日本酒も25%減の91億円です。一方、輸出増となった品目は「巣ごもり需要」品目の米で3割増の27億円と伸びました。

 

特におにぎりやのり巻きなどテイクアウト販売が好調で、鶏卵も2倍の20億円、牛乳・乳製品は2割増の114億円となっており、アジア向けが輸出をけん引しています。

 

こうした状況を背景に、政府は海外の内食需要を狙う輸出拡大対策を打ち出しました。小売やデリバリー(宅配)、ECサイトでの販売に対応した商品開発や、パックご飯などの製造ライン整備の支援等に注力する見通しです。

 

また、人の移動による販路開拓が困難であるため、オンライン商談会の取組等を促進し、農林水産物・食品輸出に取り組む事業者や農協が非対面や遠隔で商談を行える環境整備が強化されていきます。

 

農業ビジネスでも海外展開は重要であり、こうしたコロナの影響や政府の支援策なども考慮した事業も検討すべきです。

 

 

2 就農への道・就農のタイプ

就農への道・就農のタイプ

 

ここでは就農や農業で起業・会社設立するための方法などを説明します。

 

 

2-1 就農する方法

農業に従事する方法は、大別すると農業で起業する方法と農家・農業法人等の職員として勤務(パート等を含む)する方法に分けられるでしょう。

 

どちらにするかは就農の目的によって異なってきます。農業に関する一定の知識・経験がある方なら独立して農業ビジネスを直ぐに目指すという選択も有効です。他方、経験・知識がない方なら研修後や、農家等で勤務して知識などを蓄えてから起業するという選択も妥当と言えるでしょう。

 

また、将来の独立まで考えていない方などでは週末等に農家等でアルバイトするという方法があります。独立する意志を持って計画的に農業に取り組むことは重要ですが、その意思がなくてもアルバイト等で農業に従事し技術・ノウハウなどを習得することは将来の決意に繋がるはずです。

 

なお、具体的な就農まで考えていない方は、まずは農業体験から始めるのがよいでしょう。実際に農産物を育てるという作業を体験したり、学校等で勉強したりして農業を実感するという方法です。就農の前段階として農業を肌で感じることは就農を決意する上で有効になります。

 

農業の体験や学習の機会は各地域で提供されており、体験についてはJAや日本農業法人協会などに問い合わせてみるとよいでしょう。日本農業法人協会では「農業インターンシップ制度」を提供しており、学生・社会人などが全国の約200ある農業法人等で2日以上6週間以内といった期間の就業体験が可能です。

 

 

2-2 農業経営までの過程

農業初心者等が農業を始めるには、農地、施設・機械等の「資産の取得」や農業に必要な「技術や知識の習得」が求められます。これらには多くの資金や時間がかかるため、十分な準備のほか計画的な進め方が必要です。以下に農業経営を始めるための手順を説明しましょう。

 

①農業への心構え

農業への心構え

 

1)農業に取り組む強い意志

 

農家の後継者であれば、土地・家や機械などの資産を受け継ぎ農業技術を習得するのも容易ですが、そうした農業資産や技術等がない農業未経験者の場合はその確保の負担が大きく営農は容易ではありません。

 

そのため初心者等が営農を始める場合、厳しい状況に直面する可能性も高いことから農業事業への強い意志が求められます。「どんな困難でも乗り切って見せる!」という意志や、「必ず成功する!」といった情熱を持ち続けることが重要です。

 

2)家族の理解と協力

他の産業と同様に起業する場合家族の理解と協力が欠かせません。特に農業の場合、居住地を農作地などへ移すことになれば家族の同意も必要になるはずです。また、配偶者など家族に農作業等を手伝ってもらうケースも考えられるため、彼らの協力が重要になります。

 

特に住居の移転は子供には大きな負担になるため、その影響を十分に考慮した上での決断が必要です。農業経営者として農村等の地域社会に溶け込み良好な事業と暮らしを確保するにはまず家族の理解を得なければなりません。

 

なお、独身者の場合は独立資金を親に融通してもらう、親に金融機関の保証人になってもらうケースもあるため、両親には自分の事業を十分に説明しておきましょう。

 

3)農村社会への対応

農村等での就農で農業を開始する場合、その地域社会に溶け込むことが不可欠です。都会と違って農村等では他者との協力による事業運営も少なくないことから地域との繋がりが重要視される傾向があります。

 

他者との協調等で負担になることもありますが、逆に作業を協力してもらったり、ノウハウを教えてもらったりするといったメリットも多いです。なお、農村社会への対応として以下の点などは留意しておきましょう。

 

  • ・地域の会合や行事、共同作業などに参加する
  • ・地域の行事などに関するルールなどを事前に把握し守る
  • ・地域内での相談相手や頼れる相手を作る

 

②窓口相談の利用

農業初心者等がスムーズに就農・営農するには農業経営に必要な知識や情報などの入手は不可欠であるため、専門家への相談は欠かせません。就農や農業経営などについて相談できる公的機関等を活用しましょう。

 

就農に関する相談場所としては「就農相談センター」が代表的です。就農相談センターには「全国新規就農相談センター」と「都道府県毎の新規就農相談センター」があり、そこの相談員に無料で相談できます。また、都道府県やJAをはじめ、民間企業においても就農相談できるケースも多いです。

 

また、農業ビジネスの開始後は、国の「農業経営者サポート事業」による農業経営相談所が利用できます。本事業は平成30年度から開始されており、農業経営の法人化、円滑な経営継承、事業計画の作成、規模拡大など、担い手が抱える経営上の課題に対して、経営相談・経営診断や専門家の派遣・巡回指導等の伴走型支援を行う「農業経営相談所」の整備などが進められているのです。

 

③情報収集・事前準備

情報収集・事前準備

 

農業経営の円滑なスタートには事前の周到な準備が不可欠であり、その事前準備としては特に以下の点を留意しましょう。

 

1)事業の明確化

どの作物等を誰に対してどのように提供していくのか、という経営内容の骨子を固める必要があります。つまり、農業経営でのビジネスモデルを作るわけです。

 

消費者ニーズの多様化、海外農産物の流入やコロナ禍という農業分野を取り巻く環境で生き残るには、顧客と競争の視点も取り入れた農業ビジネスの展開が求められます。

 

もちろん経営の根幹は自分のやりたい農業(経営)であることは当然ですが、販売する相手のニーズに応える視点、競争相手に勝てる(あるいは競争を回避する)視点などを経営に組み込んで事業システムに仕上げる必要があるのです。

 

当然、知識・経験・技術、資金、土地や施設などの経営資源の量や質による制約を受けることになりますが、専門家に相談してそうした点を考慮の上作物の種類、栽培規模、栽培方法(露地栽培や施設栽培、有機肥料栽培・無農薬栽培等)、共同生産・共同出荷などを検討しましょう。

 

2)就農候補地の選定

どこで農業ビジネスを行うかを決めることも重要です。経営者自身が農作業にも従事する場合は当然、居住地と農作地が近隣である必要があります。農作地が現在の住まいから離れている場合は引っ越すことになるため、独身者以外は家族の理解を得なければなりません。

 

就農地の選定は重要であり、以下のような点を考慮して検討するようにしましょう。

 

・農産物や希望する農業経営の方法などとマッチする地域を候補として検討
⇒対象の農産物に適した地域、対象とするマーケット・顧客に近い地域などにマッチする地域を候補にします。

 

・事業環境が整備された地域を検討
⇒生産技術の指導や生産物の出荷への支援が受けられるなど営農しやすい環境が整備されている地域(予定の作目の生産が多い主産地等)を検討するとよいでしょう。

 

・生活条件に合う地域を検討
⇒就農で家族を帯同する場合、生活条件とも適合する地域を検討しなければなりません。学校や医療機関のほか、商業施設、役場、農協、金融機関などが近隣に存在するか、不便でないかなどを確認するべきです。

 

3)農業経営に必要な知識・ノウハウ等の習得

農業経営を行う場合、就農者には農業に関する一定の知識やノウハウ等が不可欠です。対象作物に関する技術等の習得は必須となるため、事業を始めるまでに身につけておかねばなりません。

 

対象とする作物の種類などによっては、学校や農家などで年単位の研修などが必要となるケースもあるため、早めに確認して開始するべきです。

 

4)資金等の準備

ある程度の規模を対象とする農業経営を行う場合、開業にはまとまった資金が必要になってきます。そのため事業内容を早めに固め必要資金の概算を計算し準備に取り組まねばなりません。

 

自己資金だけでは対応できなることも多いため、資金調達の方法を調べて利用できるようにする必要があります。なお、新規就農で事業を開始する場合の初期投資や運転資金の主な内容は以下の通りです。

 

  • ・農地:購入するならその土地代、貸借するなら賃貸料や保証金等
  • ・施設:新規の建設ならその建築費用等、賃貸なら賃貸料や保証金等
  • ・農機具および設備等:購入費用やリース料等
  • ・種苗代や肥料・農薬等の費用
  • ・施設や機械の燃料代や水道光熱費等
  • ・毎月の生活費等

 

農業経営の場合、作付け等から農産物を収穫・出荷して現金化できるまでに相当程度の時間を要することもあるため、その間の営農費用と生活費を賄えるだけの資金を確保できるように資金調達しなければなりません。

 

資金調達としては、自己資金、融資(民間および公的機関等)、会社設立に伴う第三者からの出資などになりますが、実現可能性の高い手段としては、自己資金(親等からの借入を含む)と公的機関等からの融資に絞られるでしょう。

 

政府系金融機関である株式会社日本政策金融公庫では一般的な創業者に対する融資などを積極的に実施しているほか、就農希望者への融資も行っています。たとえば、「青年等就農資金」(国の支援事業)があり、新たに農業経営を開始する人を応援するための無利子の融資が提供されているのです。

 

また、「農業次世代人材投資事業」の施策があり、就農準備段階や経営開始時の経営確立を支援するなどの用途で資金が提供されています(研修費用や営農後の資金等に最長5年間、年間最大150万円の交付等)。

 

④就農計画・営農計画の作成

創業する場合、創業(事業)計画を作成して、それを羅針盤や航路図のように使って見直し・修正しながら事業を進めるのが望ましいです。農業ビジネスでも同様で何らかの計画を作ってそれを基本として営農するほうが成功に繋がります。

 

また、先の「青年等就農資金」の制度を活用する前提で計画を作れば、同施策で認定され無利息融資などの特典が享受できます。計画の作成では公益財団法人福岡県農業振興推進機構がweb siteなどが参考になるでしょう。

 

●新規就農者のため営農計画表の例
<農業経営モデルの設定情報>

 

経営類型 野菜専作(施設野菜)
作目・規模 いちご(2,000平方メートル)
5年目所得目標 341万円
資本装備 ビニールハウス、潅水・電照設備、暖房機・予冷庫、倉庫・作業場、トラクター、軽トラック等
必要資金 1,280万円(施設1,080万円、機械200万円)

 

*下表は3年間の営農計画です(青年等就農資金の認定申請書では、初年度と概ね5年後の見込み)。

 

<農業経営モデルの営農計画表1>
・営業収入と支出(主に運転資金)

 

年度 就農1年目 就農2年目 就農3年目 積算根拠
収入 収量(kg) ?kg/10アール
農業粗収入 ?円/kg
資金借入
収入合計(1)
支出 農業経営費
内訳 種苗費
肥料費
農薬費
光熱水費
小農具費
諸材料費
修繕費 償却費の?%
借地料 (?円/10アール)
雇用労費
支払利子
荷造出荷費 ?円/kg
運賃 ?円/kg
販売手数料 ?円/kg
減価償却費

 

<収入合計-農業経営費の表>

 

就農1年目 就農2年目 就農3年目 平均
農業所得

 

<農業経営モデルの営農計画表2>
・初期投資を含む各種投資額と生活費による支出

 

年度 就農1年目 就農2年目 就農3年目 積算根拠
支出 農地 農地購入費
ほ場整備費
施設 パイプハウス
潅水施設等
倉庫・作業場
機械 軽トラック
トラクタ
生活費 ?千円×?人
(農業経営費)
支出合計(2)
差し引き合計 (1)-(2)
自己資金額

 

●作成のポイント

 

1)必要資金の算定

 

農業ビジネスを開始するにあたり、どれくらいの土地や設備等の投資額が必要で、種苗費・肥料・燃料・生活費等の運転資金がいくらかかるのかを把握しなければなりません。

 

運転資金に関しては上記の表の農業経営費と生活費で、投資額については支出合計(2)(生活費を除く)のような形で把握することが重要です。他方、収入に関しては上記表の収入合計(1)のような形で算定します。

 

収入の算定はではその積算根拠(客観性のある情報)をもとに合理的に求めなければなりません。収穫量・販売量や販売価格などについて実績や相場などを基に計算するようにしましょう。

 

また、投資額や経営費の算定についても業者からの見積り、実績や市場価格などを根拠として設定することが重要です。

 

2)販売の確度や実現可能性

 

営業収入が大きく狂うと事業を継続することに支障が生ずるため、計画する販売量の確度や実現可能性を高める必要があります。収穫物をどのような方法で市場に届け販売すればどれだけの利益が確保できるのかという点の精度を高めましょう。

 

たとえば、農協を通じた販売、地域の事業者と共同の販売、自社独自ルートの販売、インターネット通販、イベント販売など様々な販売手段が利用できます。

 

こうした各販売方法の中で自社が利用する主要な方法での販売量や販売単価を可能な限り正確に見積りそれを計画に反映させることが重要です。

 

3)計画はビジネスモデルの内容が前提

 

計画はビジネスのあり方を反映するものであるため、農業ビジネスでもそのビジネスモデルの内容を前提として計画を立て実施していくことが求められます。

 

得意な作物を作って農協を通じて販売するというモデルも有用ですが、環境変化が激しい現代においてこのモデルがいつまでも通用できるとは限りません。厳しい状況の中で事業を成長させていくには独自のビジネスモデルで勝負していくことも必要です。

 

国内・海外を含めてどの消費者や事業者をターゲットとするのか、どのようなニーズを捉えるのか、という点を起点として事業を組み立てるようにしましょう。農協を通じた市場へのアクセスも行いつつ、新たなターゲットに向けたアクセス方法を少しずつ確立・拡大させるといった方法も有効です。

 

ただし、売る相手や売り方が違えば、作るものや作り方、流通させる手段や販売方法などが自ずと異なってくるため、その違い踏まえて事業を展開できるモデルを作りましょう。なお、計画作成や完成後には専門家に確認してもらうことも重要です。

 

⑤営農に必要な経営資源の確保

就農計画等の完成後、農業ビジネスを開始するには、金、土地、施設・機械等、人や種・苗等の材料などの必要な経営資源を用意しなければなりません。

 

②の事前準備で調べておいた情報をもとに事業の開始時期に合わせて確保できるように関係先へ連絡・交渉していく必要があります。特に資金調達は全ての前提となるため早めの確保が不可欠です。また、農地なども簡単に確保できるとは限らないためこれも同様に早めに取りかかりましょう。

 

農地は、農地法により農地の所有者と連署で農地法第3条の許可申請書をその土地の農業員会へ提出の上許可を受けるといった手続も必要になります。また、住居の選定も家族と相談の上適切な物件を選択するようにしましょう。機械や車などは中古品やリースなどの利用で初期費用を抑えることも重要です。

 

 

3 農業法人という選択

農業法人という選択

 

現在では農業経営を法人形態で行うことも可能です。もちろん個人経営の農家として営農しても構いませんが、農業ビジネスを将来的に大きく拡大させていく場合などでは法人の方が有利になるケースも少なくありません。そのため、農業法人のメリット・デメリットなどを確認しておきましょう。

 

 

3-1 農業法人の形態

農業法人とは、稲作のような土地利用型農業のほか、施設園芸や畜産などの農業を営む法人の総称です。農業法人の形態は「会社法人」と「農事組合法人」に大別され、前者は会社法に基づく株式会社、有限会社、合資会社、合名会社が該当し、後者は農業協同組合法に基づく農事組合法人が当てはまります。

 

なお、会社法人の設立については、一般的な株式会社などの設立と同じ手続です。農事組合法人は農業生産の協業を図る法人で、その性質から組合員は原則として農民が対象になります。なお、農事組合法人では以下の事業が対象です。

 

ア)農業に係る共同利用施設の設置(当該施設を利用して行う組合員の生産する物資の運搬、加工または貯蔵の事業を含む)または農作業の共同化に関する事業

 

イ)農業の経営(その行う農業に関連する事業であって農畜産物を原料または材料として使用する製造または加工その他農林水産省令で定めるもの(農作業の受託などおよび農業と併せ行う林業の経営を含む)

 

ウ)(ア)および(イ)に付帯する事業

 

また、農業法人のなかで、農地法第2条第3項の要件に適合し、「農業経営を行うために農地を取得できる」農業法人は「農地所有適格法人」(法人形態要件、事業要件、議決権要件、役員要件の要件あり)とされます。なお、法人が農業を事業として農地を所有(売買)しようとする場合は、農地所有適格法人にならなければなりません。

 

もちろん農地を利用しない農業事業や、農地を借りて農業事業を行う法人は農地所有適格法人でなくても可能です。法人の形態により事業の有利さ、制限などが生ずることもあるため、将来も含めて個人事業か法人か、どの法人形態にするかを検討しましょう。

 

 

3-2 農業法人のメリット・デメリット

①メリット

農業法人のメリット

 

●経営管理能力の向上

 

A 個人事業以上に組織や事業の規模が大きくなり、事業の運営責任も重くなるため、経営責任者としての自覚が促され経営管理の知識・スキル等が自ずと磨かれやすくなります。

 

B 法人経営では家計と事業経営が分離され、透明性の高い会計業務が期待できます。その結果、財務管理が向上し健全な企業財政の維持が促進されやすくなるでしょう。

 

●信用力の向上

 

C 法人に課せられる財務諸表の作成および提出により、金融機関や取引先などへの対外的な信用度の向上に繋がります。また、そのことにより融資や取引の面での有利さや不利の回避等が期待できるはずです。

 

●発展の促進

 

D 個人事業よりも資金や人材などを確保しやすくなるため、事業を拡大させ新たな事業展開も行いやすくなります。農事組合法人の認定農業者は制度融資(公的施策に伴う融資)を利用できる可能性が拡大します。また、農地所有適格法人は農地の取得などで有利です。

 

●従業員の福利厚生の充実

 

E 法人化により社会保険、労働保険の適用事業者となれば、従業員の福利厚生が改善されます。社会保険料の一部を法人が負担することになるため、従業員は比較的軽い保険料の負担でより大きな補償を受けることが可能です。

 

F 労働時間等の就業規則が整備され、給与などの処遇や就業条件が明確化されるため、従業員は曖昧で低水準の労務管理を受ける可能性が低くなります。

 

●事業継承の円滑化

 

個人事業の農家の場合、後継者がいないと事業継承が難しくなりますが、法人化すればその構成員や従業員の中から後継者を選び承継させることが可能です。

 

●節税効果

 

法人のほうが税率は低くなるケースもあり、また法人の役員は給与所得控除が利用できるため個人事業主以上に節税が期待できます。

 

ほかにも使用人兼務役員賞与の損金算入、退職金の損金算入、欠損金の10年間繰越控除(青色申告の法人のみ)などのメリットもあります。なお、農地所有適格法人の場合は事業税や設立時の登録免許税が非課税です。

 

②デメリット

農業法人のデメリット

 

●赤字でも税金負担

 

個人事業では赤字なら税金の支払いは生じないですが、法人の場合都道府県民税・市町村民税(住民税)の「均等割り」については赤字でも資本金や従業者数に応じて課税され納税しなくてはなりません。

 

●社会保険料の負担

 

法人化すれば従業員の社会保険の保険料を法人として負担することになります。従業員の福利の向上には重要ですが、決して軽い負担とも言えません。

 

●株主総会等の組織運営の負担

 

法人化すれば株主総会等の定められた組織会合を開催することが義務付けられるため、一定の手間とコストがかかります。

 

 

4 農業ビジネスの取組事例

農業ビジネスの取組事例

 

ここではこれから起業や会社設立する方の参考となるような農業ビジネスの取組事例を紹介しましょう。

 

①「元甲子園球児、故郷で新規就農」

*日本政策金融公庫ニュースリリースより

 

●企業概要

 

・代表者:川端優希 氏
・所在地:群馬県沼田市
・事業内容:リンゴ栽培

 


 

●起業の動機等

 

・高校卒業時には就農を決意
⇒高校時代には甲子園の出場経験のある川端氏ですが、「自分は農業の道で沼田を代表するリンゴ農家になり、地域の農業を盛り上げたい」と決意され、卒業後に親戚の露地野菜農家のもとで農作業の手伝いからスタートしています。

 

・JA等に相談し新規就農へ
⇒農作業の手伝いの中で、農業の面白さに魅了され自身の圃場で農業を行いたいという意欲が沸き上がり地域の行政やJAに新規就農について相談されました。その際に沼田の名産のリンゴ栽培を勧められ、地元のリンゴ農園で新規就農に向けた研修につかれています。

 


 

●起業の方法や内容

 

・研修先からリンゴ農家の紹介
⇒川端氏は研修先から後継者を探していたリンゴ農家を紹介され、その樹園を承継することになりました。

 

・栽培方法や技術の習得と規模の拡大
⇒川端氏は研修先で栽培方法や技術を学びながら、自身の樹園での出荷に向けての作業に取り組むほか、他の樹園も借りてリンゴの新植を行い規模の拡大にも努めています。

 

・地域からの協力
⇒川端氏は地域農業の将来の担い手である「認定新規就農者」として認定され、周囲の農家から栽培の助言や資材等の譲り受けなど様々なサポートを受けています。

 

・公的支援策の活用
⇒リンゴ栽培を行う農機等の購入に必要な資金として、「青年等就農資金」を活用できました。また、新たなリンゴ苗の購入にかかる費用は、行政からの補助金も利用されています。

 

・多様な事業展開へ
⇒現在、栽培したりんごはJA等の直売所での販売ですが、将来的には栽培品目の拡充、直売所の建設、バーベキューやキャンプが可能な複合的な観光農園の創設などを検討されています。

 


 

●成功のポイント

 

・就農への意欲
⇒生き物相手の農業は他の産業と勝手が異なる面も多く、根気よく技術の習得などに取り組み続ける必要があるため、就農して成功するという強い思いを持つことが重要です。また、実際に農業に従事する、学校等で知識を得て体験するといった取り組みも欠かせません。

 

・公的機関等への相談
⇒就農や営農については自治体やJA等に相談するべきです。就農に必要な知識や情報を提供してもらえるため活用しましょう。

 

・就農に必要な知識・ノウハウを習得
⇒就農して成功するためには、作物の栽培や販売などの営農の知識・経験を得ることが不可欠です。そのため関連する農家や農業法人等で働いたり研修を受けたりすることも必要になります。

 

・公的支援策の活用
⇒農業ビジネスは初期投資を含めて多額の資金が必要となるケースも多いため、「青年等就農資金」などの公的支援策の活用が重要です。

 

②「資金をしっかり準備。余裕を持って事業立ち上げ」

*日本政策金融公庫 「ご融資先の事例」および企業HPより

 

●企業概要

 

・企業名:株式会社伯耆のきのこ
・代表者:三鴨真樹 氏
・所在地:鳥取県西伯郡
・事業内容:きのこ(しいたけ・キクラゲ)の生産・販売

 


 

●起業の動機等

 

・Uターン後の転職で農業ビジネスの立ち上げにかかわり就農を決意
⇒三鴨氏は大学卒業後、通産省、機械メーカーに勤務され、その後に鳥取にUターンして廃棄物処理企業に転職されました。

 

同企業では製造部長としてLED植物工場やマッシュルーム生産など農業分野の事業立ち上げを模索することとなり、その件で国内農業の将来性を感じて就農を決意されました。

 


 

●起業の方法や内容

 

・対象作物の選定
⇒様々な品目を検討した結果、単位面積あたりの収益性や労働生産性が高く、県内では生産者が少ない菌床シイタケを対象にされました。

 

・生産農家のもとで研修後に就農
⇒大手きのこメーカーに仲介してもらい、島根県の生産者の元で3カ月の研修を受け、その後に就農されています。

 

・制度融資の活用
⇒就農2・3年目にハウス取得のために青年等就農資金20百万円、就農4年目に菌床製造施設、ハウス取得のためスーパーL資金162百万円を活用されました。

 

・営農の方針
⇒自ら生産し自ら販売する、加工し付加価値を付ける、生産管理を行い品質の向上や生産効率を上げる、といった「製造業では当たり前のことを農業でも当たり前に行う事で、雇用を創出できる産業」となれるように努められています。

 

また、同社は、きのこの製造販売以外に将来的には農業全般に携わり、地域に必要とされる企業を目指しているのです。

 

・今後の予定
⇒新たな品種の生産や加工品の強化に加え、ASIAGAP認証の取得を目指し中国などへの輸出や観光農園への参入も検討されています。

 


 

●成功のポイント

 

・事前の的確な準備
資金の確保、生産技術の習得、作物の販売先の確保などを就農前にできる限りの準備をしてスタートすることが重要です。同社の場合、就農前に地元の金融機関から融資を受け、地元スーパーとの取引もできるようにしています。

 

予想外の出費で十分な利益が確保できない時期もあったようですが、事前の的確な準備により運転資金と生活費は確保され創業期の困難な状態を乗り切られました。

 

・農業経営のデザイン
⇒農業経営を合理的にデザインして事業化することが重要です。三鴨氏は就農する際の対象作物として収益性、労働生産性が高く、県内では生産者が少ない菌床シイタケを選定されました。

 

収益性や労働生産性が高いという商品の価値評価に加え、県内ではライバルが少ないという競争の視点も含めてビジネスを組み立てたのです。きのこの健康増進性や完全無農薬栽培などはターゲットのニーズにマッチし、その付加価値の高さで他社との差別化も期待できます。

 

販売先は地元の消費者を中心に、スーパー、店頭販売や地元イベントでの販売のほかインターネット通販も対応するなど多様です。商品開発も積極的でクラウドファンディングを活用してキクラゲ化粧品や加工品を開発し、販路開拓のために公庫の商談会も利用されています。

 

・融資にも成功する計画作成
⇒念願の菌床から一貫して生産できる体制づくりの実現に向けた計画を作成し高額の融資に成功されました。制度融資を受けるには審査に通らなければならないですが、その計画が行政や金融機関などが納得してくれる内容であったことが窺えます。

 

③「徹底した市場調査に基づく販路拡大」

*日本政策金融公庫 「ご融資先の事例」および企業HPより

 

●企業概要

 

・企業名:岡忠農園
・代表者:岡田早苗 氏
・所在地:長野県飯山市
・事業内容:露地野菜(ケールほか)の栽培

 


 

●起業の動機等

 

・夫の実家への移住を機に就農を決意
⇒岡田氏は夫の実家(長野県飯山市)に移住することになり、この地域ならではの仕事に就きたいという思いから農業を選択し、夫とともに就農を開始されました。

 


 

●起業の方法や内容

 

・市場性や収益性を考慮した農産物の選定
⇒同氏は就農にあたり、市場に出回っておらず、かつ短期間で売上が立つ農産物を調査して、ケールを選び平成26年に試験栽培を始めています。

 

・独自の方法で栽培技術を向上
⇒栽培等の研修を受けずに、同氏は普及センター等のアドバイスを受けながら自分たちの試行錯誤による取り組みで、少しずつ規模を拡大させ栽培技術の習得にも努められました。

 

・市場やニーズを反映した経営
⇒東京や海外などへ実際に足を運び、流行する農産物や需要が見込まれる時期などの市場調査を徹底して行われています。また、調査に基づいて、ターゲットを定めて取引先を開拓するほか、価格競争を回避するため市場出荷はしないという方針も決定されました。

 

岡忠農園では、ニーズに基づいて用途(調理用等)に適した品種、栽培方法、収穫適期などを考慮した営農が行われています。化学農薬や化学肥料を極力おさえた環境にやさしい農法で、長野県エコファーマーの認定も取得されました。

 


 

●成功のポイント

 

・マーケティング重視の経営
⇒マーケティング戦略に基づいた経営が展開されています。マーケティングの考えを根拠として、農産物やターゲットを調査に基づいて選びビジネスが組み立てられています。

 

・売りたいものを売れるようにする取り組み
⇒自分達が売りたいものを売れるようにするビジネスが展開されています(これもマーケティング戦略)。価格競争に巻き込まれないため付加価値の高い作物づくりをニーズに基づいて選定・栽培し、価値を高めるために品質にこだわりエコな農法も実践して強みとしているのです。

 

・経験を積みつつ徐々にステップアップ
⇒岡忠農園では最初の年は全て手作業で行い、栽培や機械・設備など営農を学びながら事業を開始しています。翌年は前年の経験をもとに公庫を活用した資金でトラクターや作業所などの生産体制を整え30aのケール栽培が可能となりました。

 

その後、ビーツ生産については3年間の試行錯誤の末量産体制を整え、水稲の規模は60aから120aへと拡大し売上は目標の9百万円を実現されています。

 

④「フランスで食べて感動したジャムを目指して!瀬戸内海の島の手作りジャム工房」

*農林水産省 「6次産業化の取組事例集」および企業HPより

 

●企業概要

 

・企業名:株式会社瀬戸内ジャムズガーデン
・代表者:松嶋匡史 氏
・所在地:山口県大島郡周防大島町
・事業内容:ジャムの製造販売・観光農園・ギャラリーカフェの運営

 


 

●起業および6次化の動機等

 

・新婚旅行先のパリで出会ったジャムに魅了されて
⇒松嶋匡史氏は2001年10月に新婚旅行先のパリで魅力的なジャム屋に遭遇し、日本でのジャム専門店の営業を決意されました。

 

・この土地ならではのジャム作りで地域に貢献
⇒周防の土地でできた農作物を使い、地域の人の手で作り上げていくことで地域を復興させ、お年寄りを元気づけ、若者を呼び戻すことに繋がる、と考え自身や地域の農家で栽培した果実等でジャムづくりするという事業が始められています。

 


 

●6次化の方法や内容

 

・農業部門の整備
⇒耕作放棄地を借り受けて自社農業部門を作り、約1haの自家農園でいちご・ブルーベリー・いちじく・金時いも・希少かんきつ類やハイビスカスなどを生産されています。

 

・地域の農家との連携
⇒地域の農家との連携により必要な果実等を入手できるほか、農家へは価格や買取等の面で貢献できるwin-winの関係が作られました。この仕組みにより欲しい果実を必要な時期に確保できる体制が整備できたのです。

 

・カフェギャラリーの運営
⇒店舗に自家製ジャムを活用したスイーツを味わえるカフェギャラリーも設置され、果実等の栽培、加工品の生産、カフェ・インターネット通販・果実の摘み取り体験等のイベント開催などのサービス提供、という6次産業化が実現されました。

 


 

●成功のポイント

 

・6次産業化の経営への取り組み
⇒変化が激しい現代において1つの産業形態の事業だけでは環境変化に対応することは困難です。栽培・加工・流通・サービス等を組み合わせた事業の複合化がコロナ禍などの過酷な状況下でも希望を見い出すことが可能です。

 

・「総合化事業計画」の活用
総合化事業計画は、農林漁業者等が主体となって農林水産物等の生産およびその加工または販売を一体的に行う事業活動の計画のことです。この計画を作成して農林水産大臣の認定を受けると以下のような特典が得られますが、同社もこの制度を活用されました。

 

特典:
融資制度上の優遇
農地法の特例
補助事業の活用

 

同社は平成25年に同計画が認定され6次化に取り組み事業を以下のように拡大されました。
売上高:6,000万円(H24)→1億800万円(H28)
雇用者数(パート含む):22名(H24)→29名(H28)
主な原材料生産面積(ブルーベリー等):26a(H24)→80a(H28)

 

 

5 農業で起業して成功するためのポイントと注意点

農業で起業して成功するためのポイントと注意点

 

最後にまとめとして、農業ビジネスを始めて成功するための特に重要なポイントと注意すべき点を説明しておきましょう。

 

 

5-1 経営資源の準備・確保

事業を開始して成長させていくには初期の経営資源の確保が不可欠です。とりわけ農業ビジネスでは多額の初期投資が必要となるケースも多いことから計画に合わせた準備が求められます。経営に必要な金、土地・機械・設備等、労働者、栽培の知識・技術のほか各種情報などの経営資源の用意が欠かせません。

 

葉物野菜等を数反単位で栽培するには500万円以上の資金が必要となるケースも多く、他の作物等によっては何千万円、何億円といった資金もかかります。そうした多額の資金を自身で用意するのは困難であるため、公的制度を利用した資金調達も必要になります。

 

また、栽培や販売等の知識やノウハウが不十分なまま大きな投資を行うと栽培の失敗や災害による被災等などにより事業の継続が困難になる可能性が高まるため、自分の実力にあった投資や事業展開が重要です。

 

農業初心者などは副業、週末農業や兼業から栽培技術等を習得しつつ、資金を貯め金融機関からの融資が得やすい状況を作り出すことが優先されるでしょう。資源を蓄えつつ事業計画を立てそれらを少しずつ実現できるように取り組みましょう。

 

 

5-2 経営の視点

経営資源を揃えて作物等を栽培するという農業経営だけでは不十分であり、農業ビジネスも経営の視点が欠かせません。特にマーケティング戦略を意識した経営が求められます。

 

農業分野では生産者が栽培した作物は農協等を通じて販売する形態が多いですが、生産者の経営は農協等に大きく依存するため事業の成長に限りが生じ発展の阻害要因になりかねません。

 

生産者自身が考えた販売対象に対して、それらが望む作物を求める価格で必要な時期に必要な分を提供するといった顧客目線の経営を取り入れることも重要です。もちろん農協等は一定の良好な関係を維持することも必要ですが、新規参入者などの場合は、独自の販売網を築くことも考えるべきでしょう。

 

こうした対応をしていくためには、対象とする作物とその関係する市場・顧客などについて調査し、その結果に基づいて事業モデルを作り上げることが必要です。

 

どの作物等なら競争に勝てるのか、どう栽培したら顧客が満足して対価を支払ってくれるのか、どの販売ルート(農協、流通業者、店頭販売、ネット通販等)が最も顧客にアクセスできるのか、どのサービスを提供すれば顧客は喜んでくれるのか、などを元にモデルとしてまとめてみましょう。

 

 

5-3 ITなど科学技術の導入・活用

広大な農場の作業には非効率な点も多いためITなど科学技術の導入・活用を積極的に検討すべきです。

 

これまでの農業は生産者の長年の経験等に基づくノウハウによって支えられていますが、機械化や自動化などのほか生産管理面でも遅れているケースが少なくありません。

 

ドローンを使った農作物の栽培・育成状況の確認(圃場センシング)や農薬散布、農機械の遠隔操作、スマホでの田んぼの水管理、自動収穫ロボットや作業アシストスーツ、などの導入が進められつつあります。

 

農作業は決して楽な作業ではなく高齢者にとっては負担が大きいため、作業の自動化・機械化は有効です。また、労働者の確保が難しい状況の中、IT等の活用により生産性を上げれば人手不足対策にも貢献し、儲かる農業ビジネスへと繋がるでしょう。

 

 

5-4 6次産業化

農産物等を作って販売するだけの一次産業だけでなく、それらを加工し多様なサービスに結び付けて事業を複合化するという6次産業化も検討すべきです。

 

海外の安くて品質の良い農産物が流入しやすい状況となってきたため、国内で良い農産物を作るだけでは経営が厳しくなり成長が見込みにくくなっています。

 

そのため農産物の生産・販売だけでなく、それを加工する(食品製造等)二次産業化や、それらを活用したサービスなどを提供する三次産業化の要素などを事業に組み入れることも重要です。

 

栽培した農産物等を使用してこだわりの食品を製造し、それをネット通販や道の駅などで販売する、また、レストランやカフェなどを設置して農産物や加工品を利用した料理等を提供する、ほかにも農園で栽培や収穫の体験サービスを実施する、などの取り組みが考えられます。

 

ものが溢れる時代において、人々はモノの消費だけでなく体験を重視するライフスタイルを取り入れつつあるため、農業に体験サービスを組み込んだビジネスなどを模索する必要もあるでしょう。


▲トップにもどる
© WOOROM All Rights Reserved 新会社設立