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会社設立の成功ポイントは何?起業に成功する人・失敗する人の特徴から考えよう!

独立・起業して自分で会社を経営してみたいと思ったことのある方は少なくないでしょう。しかし、実際に会社を辞めて独立する方は日本では多いとは言えません。起業を思い止まらせる理由は人様々ですが事業の失敗による生活不安などを理由に挙げる方が少なくないです。

 

実際、起業してわずかな間に廃業に追い込まれるケースがよく見かけられますが、他方成功する方も少なからず存在します。この失敗する人成功する人の特徴を把握して、その内容に基づく起業の準備や経営を行っていけば廃業に至らず事業を成長させることも可能なのではないでしょうか。

 

今回は起業に成功する人・失敗する人の考え方や行動などを紹介しながら経営の重要ポイントを明らかにし、そうした方々の特徴から起業の成功ポイントを浮き彫りにしていきます。

 

独立して会社設立などを考えている方や迷っている方などは是非この記事を起業前後の準備などにお役立てください。

 

 

1 起業後や会社設立後の現状

起業後や会社設立後の現状

 

ここでは起業後の企業の状態について説明します。起業や会社設立がどれくらい行われ、逆に廃業・倒産がどの程度の数になっているかなどの状況を紹介していきましょう。

 

 

1-1 開業率・廃業率からみた日本の起業状況

厚生労働省「雇用保険事業年報(第25表(1)都道府県労働局別適用状況 〔事業所関係〕)によると、2018年度の保険関係新規成立事業所数は98,508所、保険関係消滅事業所数は77,539所で適用事業所数は2,246,619所となっています。

 

*労働者を雇用する事業は、業種・規模などに関係なく原則的に雇用保険適用事業所となります(労働者を雇う個人企業も含む)。

 

従って、2018年度の保険関係新規成立事業所数が保険関係消滅事業所数を上回っており、雇用を伴う起業による開業件数が廃業件数を上回っているわけです。しかし、この結果を見ても多いのか、少ないのか判断しにくいですが、こうした数値を使用した開業率・廃業率についての解説が中小企業白書に記載されています。

 

2019年度版の中小企業白書(第1-5-1図)によると、日本の企業の開業率は、1988年をピークとして減少傾向へと転換しましたが、2000年代に入ってから緩やかな上昇傾向で推移するようになり、2017年には5.6%まで回復しています。

 

他方、廃業率については、1996年以降増加傾向が継続してきたものの、2010年に減少傾向へ転換し2017年には3.5%と低い水準になっているのです。2002~04年あたりは廃業率が開業率を上回る逆転現象が見られましたが、2010年以降は開業率が上回るようになりその差は年々拡大する傾向にあります。

 

*開業率及び廃業率の定義:

  • ・「雇用保険事業年報による開業率は、当該年度に雇用関係が新規に成立した事業所数/前年度末の適用事業所数である」
  • ・「雇用保険事業年報による廃業業率は、当該年度に雇用関係が消滅した事業所数/前年度末の適用事業所数である」

 

日本の企業の開業率

(引用:2019年度版の中小企業白書)

 

以上のように直近では開業率が上昇傾向にありますが、世界的にみると5%台という値は決して大きなものではありません。下図の第1-5-2図で示されているように国際比較すると最も高いフランスは13.2%、イギリス13.1%、アメリカ9.3%(2011年)、ドイツ6.7%(2016年)、日本5.6%となっており、日本の開業率はこれらの先進国の中では最低です。

 

また、廃業率についても他の国々のほうが開業率のように高い値を示しています。つまり、開廃業率は他の先進国のほうが高いということであり、それだけ企業の参入・退出が活発である、産業の新陳代謝がよいと言えるでしょう。

 

ほかにも2014年度版中小企業白書の第3部第2章第1節3で開廃業に関する国際比較が示されています。第3-2-10図「起業環境の国際比較」によると起業環境を国際的に比較した順位では日本は120位と大きく低迷しており、いかに起業環境が充実していないかが理解できるはずです。

 

会社登記という手続についても手数が多くかかりそのための日数も長くなっており、開業コストも国際的には高いと言えます。このように日本の起業環境は起業家にとって優しくないと言えるでしょう。

 

起業環境の国際比較

(引用:2014年度版中小企業白書)

 

従って、日本での起業や会社設立の状況は海外と比べて良好とはいえず、新しい企業やビジネスが誕生し成長できる確率は低くなりやすいと考えられます。アメリカなどではUber、Airbnb、WeWorkなど急成長を遂げたベンチャー企業が数多く存在していますが、日本の場合はメルカリやラクスルなど数も規模的にも見劣りします。

 

こうした海外との開廃業率の差が生じる理由としては、日本において「起業家精神が低い」「国による起業に対するサポートの不足」「起業リスクの高さ」「再チャレンジが困難な状況」などが挙げられるでしょう。

 

理由は様々ですが、日本における起業に対する環境は優しいとは言えない状況であることは間違いありません。結果的に起業や会社設立に対する起業家の負担は重く気軽に事業を起こせるという状況とは言えないのです。

 

しかしながらこうした状況を理由にして日本政府は起業を後押しする施策を少しずつ投入してきました。施策の投入量は十分とは言えませんが、今後とも起業に対する国の支援は強化されるでしょう。

 

何故なら新規開業を促進し圧倒的に多い中小企業等を成長させることが国の経済力を向上させるからです。そのため開業率を高い水準へと導き廃業率を常に上回る状態にするような施策が国として実施せざるを得ません。

 

以上のように日本の場合、起業や会社設立を果たし事業を成長させていくのは容易とは言えないですが、今後も国のサポートなどが強化される方向にあることから起業環境の改善が期待されます。

 

開廃業率の国際比較

(引用:2019年度版の中小企業白書)

 

 

1-2 起業の成功確率・失敗確率

起業した場合、どの程度の確率で成功するのか、失敗するのか気になるところですが、2011年度版中小企業白書「第3-1-11図」では、「起業した後、10年後には約3割の企業が、20年後には約5割の企業が退出しており、起業後の淘汰もまた厳しい」と指摘しています。

 

この値は「1980~2009年に創設された企業の創設後経過年数ごとの生存率の平均値を示したもの」ですが、5年後には82%、10年後は70%、20年後は52%の生存率となっているのです。

 

つまり、起業後5年では約2割の企業が退出し、10年後には3割、20年後には約半分が退出していることが示されています。非常に厳しい現実のようにも見えますが逆にみると、起業後10年では7割の企業が事業を継続できているとも言えるでしょう。

 

生存率の7割と退出率3割を見た場合、どちらの数字が大きいと感じるかは各個人次第ですが、こうした生存率を高め退出率を下げるための取り組み方はあるはずです。

 

生存率7割や退出率3割に該当する方の起業や会社設立に対する準備や取り組み方、開業後の経営の仕方などを考察することで、生存率を高め、退出率を下げることも不可能ではないでしょう。

 

「第3-1-11図 企業の生存率」

企業の生存率

(引用:2011年度版中小企業白書)

 

 

1-3 会社設立後・開業後の状況

起業して事業を始めてから予定した業績が残せるかどうかが心配になるところですが、日本政策金融公庫(公的金融機関)が行った調査「2019年度新規開業実態調査」でその点が確認できます。

 

この調査は同行が国民生活事業として2018年4月から同年9月にかけて融資した企業のうち、融資時点で開業後1年以内の企業8,260社(不動産賃貸業を除く)を対象として実施されたものです。

 

同調査の報告書の11ページに「5 開業後の状況と開業にかかる課題」が掲載されており、12ページに「半数以上の企業が予想月商を達成」として開業の実態が示されています。その内容は以下の通りです。

 

・現在の月商が「100万円未満」である割合は40.3%で、2018年度と比べて減少している。予想月商達成率*は「100~125%未満」25.6%、「125%以上」31.1%%で半数以上(56.7%)の企業が予想を上回る月商をあげている

 

*予想月商達成率:(調査時点の平均月商÷開業前に予想していた月商)×100%

 

・現在の売り上げ状況が「増加傾向」である割合は57.1%となった。現在の採算状況が「黒字基調」である割合は63.5%となった

 

上記調査の結果では、月商100万円以上ある割合は約6割、予想月商達成率は半数以上あり、売上状況や黒字基調の企業が約6割となっています。こうした月商100万円や予想月商達成率などの大きさをどう評価するかは困難ですが、頑張れば5割以上の確率で予定の売上を上げることが可能なのです。

 

また、業績を増加傾向にしたり黒字にしたりすることもそれほど困難ではないように見えます。しかし、その反面ちょっとした理由で予想月商に達しなかったり、赤字になったりすることも珍しいことではないでしょう。

 

どのようなポイントが目標の月商を実現させるのか、黒字にさせるのか、逆に何が目標月商の未達や赤字をもたらすのか、を把握しその対応を進めることが起業前から起業後において求められます。

 

 

1-4 起業の成功・失敗の実感

1-2で起業の成功確率などについて概観しましたが、ここでは開業してからの起業家の満足度を確認してみましょう。

 

①日本政策金融公庫の新規開業実態調査から

先の日本政策金融公庫の「2019年度新規開業実態調査」の14ページに「6 現在の満足度と今後の方針」が記載されています。この調査結果では「約7割が開業に満足している」という内容です。

 

  • ・開業の総合的な満足度をみると、「かなり満足」が25.7%、「やや満足」が45.0%となっており、約7割が開業に満足している。項目別に「かなり満足」と「やや満足」を合計した「満足」の割合をみると、仕事のやりがい(自分の能力の発揮)79.6%、働く時間の長さは40.9%、ワークライフバランスは44.6%、事業からの収入は26.5%となっている
  • ・今後の方針については、売上高を「拡大したい」が90.3%、商圏を「拡大したい」が57.0%となっている

 

以上の通り、開業の満足度は高い割合となっており、表面的には開業が成功しているように感じる傾向が窺えます。しかし、仕事にやりがいが感じられるものの、労働時間が長くなり仕事と家庭生活との両立が難しくなっているようです。

 

また、収入面で満足していない人の割合が7割以上ある点は軽視できない状況と言えます。調査対象が開業後1年以内の企業であるため、開業後の収入不足は予想の範疇であるケースも多く結果的に満足度には大きな影響を与えていないかもしれません。

 

しかし、今後の方針で示されている通り、売上や商圏を拡大して業績を伸ばさないと事業の継続が難しくなり開業に満足を感じることもなくなるはずです。

 

②東京都港区の「港区における新規開業実態調査報告書」から

東京都港区では平成30年(2018年)3月に同区の新規開業に関する調査報告書として「港区における新規開業実態調査報告書」を発表しています。

 

この報告書の39~40ページで「現在の事業の状況」が記載されており、図表3-3-1は「採算状況」、図表3-3-2は「最近1~2年の売上げ」についての考察です。

 

「採算状況」の結果は、「2011年~2017年」の期間において約半数以上の割合で黒字傾向であると示されています。各期間ともに黒字傾向は40%以上あり赤字傾向を上回っているのです。

 

採算状況

(引用:2011年度版中小企業白書)

 

「最近1~2年の売上げ」の状況については、2000年代の期間では増加傾向が5割、6割といった割合となっており減少傾向の割合を大きく上回っています。

 

黒字化や売上増などは当然その時の経済環境等に左右されるものですが、起業した直後の期間は必ずしも厳しいだけでなく業績を伸ばせるチャンスも十分にあると言えるでしょう。

 

最近1~2年の売上げ

(引用:2011年度版中小企業白書)

 

 

2 起業・会社設立の失敗の原因、成功の要因

起業・会社設立の失敗の原因、成功の要因

 

起業した方が、どのような点を重視して起業の準備や経営を行ったのか、どのように取り組みで成功し何で失敗したのか、という点を確認してみましょう。

 

 

2-1 起業の目的や動機

まず、起業家がどのような目的で起業したのか、どのようなきっかけで起業したのかという点について説明します。

 

この点については2011年度版中小企業白書の第3部第1節「3 起業の促進に向けた課題と取組」の第3-1-31図「起業の動機・目的」が参考になるでしょう。下図は2010年に行われた「起業に関する実態調査」で起業の動機についてまとめた結果です。

 

動機の傾向としては、「自己実現、裁量労働、社会貢献、専門技術・知識等活用、アイディアの事業化といった動機・目的が多い」という結果になっています。ざっくり表現すると、「会社員では実現しにくい自分のやりたい仕事に取り組みたい」というような方が多いと言えるかもしれません。

 

動機の傾向

(引用:2011年度版中小企業白書)

 

起業のきっかけは第3-1-32図「起業に踏み切ったきっかけ」で示されており、結果としては「起業を考え始めた段階」では、「事業化できるアイディアを思いついた」や「以前の勤務先ではやりたいことができなかった」が最も多いです。

 

また、「起業を決心した後の段階」では、「資金面のめどが立った」や「事業内容のめどが立った」を動機として多く挙げられています。

 

両段階の主な理由をまとめると、ビジネスモデルがある程度形になり、それを実現するための経営資源や協力者(取引先等)などの確保の目途がついたことを契機に起業したケースが多いと言えそうです。

 

起業に踏み切ったきっかけ

(引用:2011年度版中小企業白書)

 

 

2-2 事業分野の選択と起業時及び起業後の課題

起業する際にどのような事業分野を選択しているかという点と課題について確認してみましょう。どのような事業分野を選択しているかの理由や、起業に関する課題について、先ほどの2011年度版中小企業白書に示されています。

 

①事業分野の選択理由

下図の第3-1-35図は「事業分野の選択理由」です。起業家がどの事業分野を選んだかの理由がグラフ化されています。多い回答としては、「専門的な技術・知識等を活かせる」、「以前の勤務先と同じ業種」、「起業前までの人脈が活かせる」で、起業する前に培ってきた専門技術、知識、経験、人脈などを活用できる事業分野を選ぶ傾向が見られます。

 

つまり、起業家自身の強みを活かせる分野で勝負する方が多いと言えそうです。

 

事業分野の選択理由

(引用:2011年度版中小企業白書)

 

②起業時及び起業後の課題

起業時・起業後で直面した課題について2011年度版中小企業白書の第3-1-36図で示されています。

 

起業時の課題は、「資金調達」「質の高い人材の確保」「販売先の確保」の順で多いですが、起業後でも同じ課題が上位を占めます。ところが、両者を比較すると、起業後では「資金調達」よりも「質の高い人材の確保」が最も多く逆転している点が特徴と言えるでしょう。

 

経営を維持するにも拡大するにも必要人材が確保できなくては始まらないですが、人手不足が叫ばれる今日では人材確保は深刻な問題になりかねません。

 

その他起業後に多い課題としては、「対象とするマーケットの選定/競争激化」「経営知識の習得」「製品・サービスの高付加価値化や価格競争力の強化」「企業理念の設定/従業員への浸透」「量的な労働力の確保」「専門知識・技術の習得」などが挙げられています。

 

起業後は経営資源の確保に加えてマーケティングや経営管理の面で苦労しているケースが多く、これらの課題の克服も起業の成功に影響すると考えてよいでしょう。

 

事業分野の選択理由

(引用:2011年度版中小企業白書)

 

 

2-3 起業の成功要因

ここでは起業した事業を成功させる要因について説明します。

 

①起業した事業の成果が得られている要因

2011年度版中小企業白書の第3-1-44図「起業した事業の成果が得られている要因」の内容が起業の成功要因を理解する上で参考になるでしょう。

 

この図では事業の成果が得られていると考える起業家に対して、その要因が何であるかを質問した回答をまとめたものです。結果としては、「過去の経験や人脈」が最も多く、この要因が特に起業での重要な成功要因になるケースが多いのでしょう。

 

また、起業時・起業後に直面した課題の資金調達や人材確保も多く挙げられており、これらも重要な成功要因になりそうです。ほかには販売先の確保、事業内容の選定、専門知識・技能の習得と資金調達などが挙げられています。

 

起業した事業の成果が得られている要因

(引用:2011年度版中小企業白書)

 

また、先の日本政策金融効果の調査では「顧客・販路の開拓」や「資金繰り、信金調達」が起業前後での課題として指摘されています。同報告書の13ページでは、「開業時に苦労したこと」「現在苦労していること」についての質問の回答がまとめられています。

 

開業時に苦労したこととしては、「顧客・販路の開拓」の点が47.0%、「資金繰り、信金調達」が46.9%と多いです。ほかには「税務・財務・法務に関する知識の不足」が30.2%、「従業員の確保」が18.4%、「仕入先・外注先の確保」が14.1%となっています。

 

現在苦労していることとしては、「顧客・販路の開拓」の点が45.8%、「資金繰り、信金調達」が37.8%、「従業員の確保」が28.0%、「税務・財務・法務に関する知識の不足」が24.1%、「従業員教育、人材教育」が17.4%です。

 

両時点を比較すると、「顧客・販路の開拓」や「資金繰り、信金調達」がどちらも重要な課題として挙げられており、これらの課題解決がやはり重要な成功要因になると推察されます。

 

なお、現在の最大の特徴は、人材面で苦労している点です。人材の確保や教育など事業を維持拡大させるための人的資源の確保の重大性が現れており、その対応が起業後の成功を大きく左右する可能性は低くないでしょう。

 

②起業に際しての経営上の工夫

起業に際して経営上で何か特別なことをして事業を始めたのか、行ったのかという点を確認してみましょう。たとえば、既存の製品・サービスとは異なる価値を提供するような方法で起業したかどうかについての確認です。

 

この点については2011年度版中小企業白書の第3-1-12図「起業に際しての経営上の工夫」で把握できます。この図は、起業に当たり新技術・新生産方式の導入や新商品・新サービスの開発などを行ったかどうかの質問に対する回答をまとめたものです。

 

結果としては、新技術や新生産方式の導入を行って起業したケースは多いとは言えないですが、新商品・新サービスの開発を行って参入したケースは多いといっても過言ではないでしょう。

 

他社とは異なる新商品・新サービスを開発することも簡単ではないですが、他社との差別化や競争優位性を確保するために取り組んでいるケースが多いのではないでしょうか。つまり、他社が行っているような既存の商品・サービスで市場参入しても勝機を見い出すのは容易ではないと考えている方が少なくないと推察されます。

 

起業に際しての経営上の工夫

(引用:2011年度版中小企業白書)

 

③起業家の属性による影響

2011年度版中小企業白書の第3-1-45図「起業家の属性が起業後の成果に与える影響」の項目で、起業家の属性が起業の成功に大きく影響する点を指摘しています。

 

日本の起業家の多くは、勤めていた企業を退職してから起業する「スピンオフ型」や「のれん分け型」に属するため、起業においてその特徴が良くも悪くも出現すると考えているのです。

 

第3-1-33図 起業の経緯

起業家の属性が起業後の成果に与える影響

(引用:2011年度版中小企業白書)

 

彼らの起業における特徴として、「既存企業に勤めている被雇用者は、業務の中から起業のもととなるアイディア及びやりたい仕事を発見する機会並びに起業のパートナーと出会ったり、起業家や取引先と交渉する中で起業に興味を抱いたりとトリガーイベントに遭遇する機会に恵まれている」点を指摘しています。

 

つまり、企業に勤務しているうちに起業に結びつく資源を確保したり、起業を誘発する出会い・発見する機会などを得たりするケースが多く、それらが起業の成功をもたらしているというわけです。

 

起業の成功要因については、「『事業に必要な専門知識・技能の習得』も多く挙げられており、回帰分析によると起業家の大卒以上の学歴や経営上の工夫(新技術、新生産方式、新商品・新サービスの導入等)を有して参入することが、起業後の成功に有意に影響を与えていることから、大学や過去の職業等で得た専門知識や技能を活かして、新技術等を市場に持ち込むイノベーティブな起業家ほど、成功する確率が高い」と分析しています。

 

簡単にまとめると、勤務で得た専門知識等を活用した新技術・革新性のある技術で起業した人ほど成功しやすい、ということになるのでしょう。また、こうした勤務経験のある起業家は、人脈をある程度確保できており資金調達の課題をもクリアしやすいと指摘しているのです。

 

従って、上記の内容に当てはまる起業家は起業前後の課題となりやすい販路開拓や資金調達等の難題でつまずく可能性が低くなり成功確率が高まると予想されます。

 

そして、白書では最後に「教育や職歴によって経験や人脈、専門知識や技能を有する者が、若くして起業に挑戦するほど、成功しやすいといえる。」とまとめています。

 

 

3 起業・会社設立で成功する人の特徴

起業・会社設立で成功する人の特徴

 

先に取り上げた起業の成功要因などを参考に起業で成功する人の特徴を考えてみましょう。どのような人が起業に成功しやすいのか、どのような考えや行動をとれば成功に繋がるのか、といった点を事例なども取り上げながら確認していきます。

 

 

3-1 中小企業白書等の起業の事例

中小企業白書などにみられる起業の事例を取り上げながら起業に成功する人の特徴を探ってみましょう。

 

①2015年度版中小企業白書の事例

第2部第2章第1節で「起業・創業に成功した事例」として、「独創的な発想に基づくサービスや地域の特産品を活用した商品によって起業・創業した小規模事業者」の4事例が紹介されています。

 

A 事例2-2-1 合同会社西谷/たびすけ(青森県弘前市) 業務執行社員 西谷雷佐 氏 〈旅行業〉

 

・事業内容

 

「たびすけ」の事業の特徴は、日本の旅行会社では少数派の着地型観光(パッケージ型でない観光)で大手旅行会社と差別化し、単に既存の名所旧跡のみならず独特な体験型観光を提供している点です。観光客が興味を抱く地元の「当たり前」を観光資源として提案しています。

 

現在は、観光業や人材育成に関するセミナーやコンサルティングなども事業として拡げています。

 

・起業の動機

 

独立前に旅行会社に勤務していた西谷氏がオーストラリアツアーに添乗した際に、寝たきりの夫を残して参加していた女性旅行者の「背負ってでも連れてきて、この素晴らしい景色を主人にも見せたかった」という言葉に心が動いたそうです。

 

アメリカなどでは車いすを必要とする方でも充実した生活が送りやすいですが、日本ではそのような方々が旅行するのは容易ではありません。その時に西谷氏は「日本には体が不自由だという理由で、したいことをしたいと言えない人がいる。それなら僕が背負えばいいじゃないか。」と思い、勤務先の旅行会社ではチャレンジできないことを実現させるために起業へと向かったそうです。

 

また、起業への具体的な契機となったのは「日本商工会議所青年部主催のYEGビジネスプランコンテスト」への参加でした。平成22年度第8回のコンテストに参加して、「地元愛を具現化する着地型観光とバリアフリーを組み合わせた『安心して旅行できる街、命に寄り添う街、弘前』というプランを発表し、見事にグランプリを獲得」して起業を決意しています。

 

・事業の成功ポイント

 

成功のポイントは、第1に大手旅行会社など同業他社と横並びの観光を提案するのではなく、他社では取りあげられない地元の日常的な魅力を観光資源として利用した差別性や、バリアフリー旅行といった独自性でしょう。

 

また、様々な体験型や参加型の観光を提供して、旅行者と地元との交流を深め、地域の活性化に貢献している点も同社の強みになっています。ほかにも「コンサルティングやワークショップによる周辺市町村の観光資源開発、地元の大学での講演を通した観光人材の育成」なども行っており、従来の旅行会社の事業の枠を超えた活動も魅力です。

 

・起業家の特徴

 

既存の会社ではできないことを実現したいというチャレンジ精神がある、前職での知識・経験を活かし、既存の事業と差別化できる競争優位性を見出す力を有している地元を活性化したい、障害者などに旅行を提案したいなど社会貢献の重いが強いビジネスプランコンテストに参加してグランプリを獲得するなど起業前にビジネスの内容を固め経営についての知識を確保している、といった特徴があります。

 

B 事例2-2-2 株式会社ウエルシーライフラボ(栃木県宇都宮市) 代表取締役 佐藤香苗 氏 〈化粧品製造業、化粧品販売業〉

 

・事業内容

 

同社は「肌が弱いか、敏感肌などで悩んでいる」方向けの防腐剤未使用の化粧品の製造販売の会社で、敏感肌用で防腐剤未使用の化粧品という大手化粧品会社のほかどの会社も手を出しにくいニッチな化粧品事業で成長しています。

 

また、現在は化粧品事業のほか、ODM/コンサルタント事業、360°パノラマ事業(360度パノラマバーチャル機能を付与したホームページの作成)も展開しています。
*OMD:委託者のブランドで製品を設計・生産すること

 

・起業の動機

 

佐藤氏が出産後に敏感肌になってしまったが、自分の肌に合う化粧品が見つけられなかったことが直接的な動機と言えるでしょう。敏感肌には防腐剤や界面活性剤などの添加物が問題となりますが、「防腐剤不使用」のものは多いとは言えません。また、「防腐剤不使用」記載のものでも微量の防腐剤が使用されているケースもあります。

 

このように自分が必要とする化粧品がない状況の中、存在しないなら「自分で作ってみよう」という気持ちが強くなり起業に至ったそうです。

 

・事業の成功ポイント

 

成功ポイントの1つは、防腐剤無添加の化粧品が化粧品会社にとってリスクの高い分野、参入しにくい分野であり、そこへ敏感肌に悩む方の支持が得られる商品を開発し提供できたことと言えるでしょう。

 

佐藤氏は地元の特産品の納豆に含まれる成分が肌に良いことに着目し、その有効成分を利用して5年以上の試行錯誤を経て自分の肌に合った化粧水を完成させています。また、使用方法も「化粧水を濃縮液と水に分けてパッケージし、その二つをユーザーが使う直前に一つにブレンドする手法」を考案し、商品としての完成度を高めたのです。

 

販路についてはネット販売に限定して中間マージンを省き、製造からユーザーが入手するまでの納期の短縮も実現するなど、経営上問題になりがちな品質・価格・納期の課題をクリアしています。

 

また、商品開発後から起業までに、起業家セミナーへの参加、中小企業診断士からの起業ノウハウの習得、薬事法上の許可などの許認可の申請、初期投資を削減するための自社による会社登記、薬事法上の許可申請、ホームページの作成、商品デザインなどの実施、地域需要創造型企業・創業補足事業の採択、地元の地銀や日本政策金融公庫からの融資 など起業に向けて必要な事項を的確に把握し、活用できる各種資源や施策等を実際に利用した点が挙げられるでしょう。

 

・起業家の特徴

世の中にないなら自分で作ろうというチャレンジ精神や勇気がある、関連知識や専門知識がなくても何年もかけてやり遂げた根気や熱意がある、敏感肌用の化粧品に対するニーズを的確に分析している(分析できる能力がある)、起業や経営に関する知識や情報等を積極的に入手しようと努力している(経営について勉強した)、起業に向けた手続や経営資源の確保等を的確に進めている、化粧品事業以外の事業も展開しており、事業の拡大に取り組んでいる、といった特徴があります。

 

C 事例2-2-3 萬金堂(東京都青梅市)代表 今野宏江 氏〈タイカレーの移動販売業〉

 

・事業内容

事業は移動販売車によるタイカレー屋さんで、場所は借りている街道沿いの土地、営業は11時から12時ごろまでの限定となっています。メニューは日替わりカレーのみで、1日の供給数は30食~50食程度で売り切れにより営業が終了するスタイルです。

 

エスニック料理が流行しそうな土地柄でもないようですが、友人のタイ人から教わって日本人好みに調整したタイカレーがいまだに人気が落ちていません。

 

・起業の動機

子供を保育所に預けながら仕事を継続していたが、子供と一緒にいる時間の少なさに不安を覚え時間づくりのためにランチ限定の飲食店を始めようと思ったそうです。

 

ランチに限定した移動販売にしたのは、ランチ時間が終われば子供をすぐに向かいに行けるためであり、預ける時間を短くするためでした。店舗を構えて事業を始めれば店に自分の時間が縛られ多額の資金も必要となるため、移動販売を選択しています。

 

・事業の成功ポイント

 

タイ人から教わった本場のタイカレーを日本人好みの味付けにした点が人気の源泉です。

 

リーマンショックやその後の円安推移で食材が値上がりして厳しい状況になったが、味の品質は落とすどころか、さらに向上させ舌の肥えた常連客をしっかり捕まえた点が大きいでしょう。

 

飲食・サービス業で重要な「接客」を丁寧に行っている点も魅力です。「気をつけて帰ってね」という言葉がけ、自転車のお客には二重包装で対応するなどの対応が常連客を繋ぎとめています。

 

・起業家の特徴

起業の動機が明確でその目的に合わせた行動を確実に遂行している(目的がぶれない)、事業の規模や形態を目的に合わせ身の丈に合う方法で実現した(過度な目標を立てず無理し過ぎない冷静さがある)、事業でのこだわりを大切にしている(味のこだわり等)、丁寧な「接客」など経営上の重要ポイントを理解し実施している(経営の重要点を勉強している)といった特徴があります。

 

D 事例2-2-4 南一栄税理士事務所(石川県小松市)税理士 南一栄 氏〈税理士事務所〉

 

・事業内容

 

同事務所は税理士業務のほか、商工会議所の創業塾での経理と税務の講師の担当や、商工会議所の専門家派遣の専門家、税理士会が派遣する無料相談窓口での相談員の仕事なども行っています。

 

・起業の動機

 

税理士になったのは前職がきっかけで、建設会社の総務部で経理の仕事をしていて毎日数字と向き合う中で会計の面白さにひかれ、徐々に税理士資格の取得に興味がわくようになったそうです。

 

28歳で建築会社を退職し、税理士事務所に勤務して顧客の帳簿のチェック、確定申告の書き方の指導など実務経験を積み10年後の資格取得を機に独立開業されました。

 

・事業の成功ポイント

 

税理士事務所時代に付き合いのあった経営者2名ほどが顧客として確保できたことは士業を始める上での基盤となったようです。また、商工会議所が主催する創業塾に参加し、経営全般の勉強を行うことで経営支援する能力の幅を広げています。

 

加えて同じ参加者(起業検討者や起業に二代目等)者との交流を持ち現在も維持している点は今後の顧客拡大に役立つはずです。

 

創業塾で経理と税務の講師も務め、商工会議所の専門家派遣の仕事、税理士会が派遣する無料相談窓口で相談員の仕事などを受け、見込客との接点を直接持つ機会を得た点も事業を安定拡大させているでしょう。

 

・起業家の特徴

 

税理士資格に興味を持ち税理士事務所に勤めながら10年で資格を取得した堅実性が見られる、顧客も独立後すぐに2名確保できるという魅力が感じられる(仕事での誠実性など)、創業塾に参加するという勉強の熱心さに加え、参加を通じた交流を活かそうとする前向きさがある(事業をよくする取り組みに熱心である)、見込み顧客の発見や増大につながる多様な仕事を積極的に取り組む営業姿勢が感じられる(事業の成功要因を認識し、実現に向けた行動が起こせる)、といった特徴があります。

 

②2012年度版中小企業白書の事例

E 事例2-2-15 特定非営利活動法人キーパーソン21(神奈川県川崎市)朝山あつこ代表理事〈キャリア教育プログラム開発〉

 

・事業内容

 

同法人は、キャリア教育プログラム「夢発見プログラム」を開発し、子ども向けのキャリア教育を行っているほか、個別対応の進路サポートプログラム、教員研修、教育CSR、教育コンテンツ開発へのアドバイザリー連携、学習支援・居場所づくりの運営 などの事業を展開しています。

 

・起業の動機

 

同法人の朝山あつこ代表理事が自分の長男の「高校に進学しない」との発言をきっかけに「現代の子ども達は、地域や家庭における明確な役割がなく、大人と接する機会も少ない。そのため、自分達が何のために勉強をするのかが分からなくなっている。」と思うようになり、「子ども達には、働く大人と出会い、夢や職業意識を持ってもらいたい。」と考え2000年に同法人を設立しました。

 

・事業の成功ポイント

 

社会人に仕事内容等を取材するという形態のワークショップ等を通じて、子ども達が、通常接することが困難な大人の仕事に接して生き方や職業観を学べる教育プログラムを開発し提供できた点が挙げられます。

 

学校の知識教育とは異なる気づかれにくい社会学習の必要性を発見し、それを埋もれさせないために自ら提供できるように行動した点が成功をもたらした大きな要因といえるでしょう。

 

また、行政・自治体、企業、教育機関や個人などの協力者を巻き込み確保できた点も成功に繋がったはずです。

 

・起業家の特徴

 

子供の将来を本気で考え、子供に必要な社会教育を開発し提供していこうという熱意や行動力が見られる、こんな教育やサービスがあったらよいのに!と子供を持つ親や教育機関等が感じるニーズを発見できる洞察力や分析力がある、ニーズから様々なプロブラムやサービスを開発できる(開発させる)能力がある、様々な協力者や支援者を確保し取り込んでいけるコミュニケーション能力や組織運営能力がみられる、といった特徴があります。

 

F 事例2-2-17 特定非営利活動法人素材広場(福島県会津若松市)横田純子理事長 〈まちづくり推進活動等〉

 

・事業内容

 

同法人は、福島県の宿泊施設に対して、福島県内の安心・安全な素材や福島特産の素材による地産地消の推進事業を行い、宿泊施設が地産地消を活用した集客魅力向上に寄与する活動を行っています。

 

具体的には、まちづくり推進のため、地元の宿泊施設と生産者を繋ぐための「福島県宿泊施設地産地消推進事業」「宿泊施設商品企画事業」「旅行事業」が運営されています。

 

たとえば、同法人は「県内の旅館・ホテル等の宿泊施設と農作物・工芸品等の生産者を交流会やインターネットを介して」繋ぎ、県内の地産地消を推進させているのです。

 

・起業の動機

 

県外からきたホテル等のシェフが「福島にはとてもいいものがあるのに、使いきれていない!」と感じている現状を目の当たりにしていた横田純子理事長が、「福島のものでお客様をおもてなししたい」という気持ちから「素材の情報収集・生産現場見学・お客様への情報提供」をするために同法人を発足させました。

 

すべては福島に訪れてくれるお客と地元の発展のためですが、料理長と生産者を繋ぐ取り組みとして、交流会を運営する「福島県宿泊施設地産地消推進委員会」を立ち上げ、この委員会をもとに同法人が設立されたのです。

 

・事業の成功ポイント

 

地元観光の問題をこれまでの旅館等のコンサルティング業務の知識・経験から捉え、その解決手段を講じることができた点が大きいでしょう。

 

また、料理長と生産者を繋ぐために組織を立ち上げた点、生産者の情報を吸い上げIT化で広く消費者や観光客等へ伝達している点、地域特産品の商品開発、地産地消のイベント、売店のリニューアルなど幅広い支援策を提供している点も成功要因と考えられます。

 

・起業家の特徴

 

地元愛が強く、地域を活性化したいという地域社会への貢献意欲が強い(起業の目的が明確でやりたいことを的確に実行している)、地域観光の問題点を捉える洞察力があり、それを解決するための組織化を行うなどの行動力がある、問題解決のための具体的なアイデアを事業化する構想力があり、具現化する能力がある、関係者や支援者を巻き込み課題解決へと導く組織運営力がある、といった特徴があります。

 

③2011年度版中小企業白書の事例

G 事例3-1-8 株式会社ファーストソリューション(福岡県福岡市)高田将文社長〈汚泥・濁水処理装置の製造、販売〉

 

・事業内容

 

同社は、汚泥の凝集沈殿・脱水・輸送までの一連の工程を一貫して対応できる独自の汚泥処理技術「MC(メッシュカット)工法」を利用した小型の汚泥処理装置を製造販売しています。

 

また、環境技術におけるコンサルティング業務のほか、システムの保守管理業務も行い事業の幅を広げています。

 

・起業の動機

 

高田社長は、大学卒業後地元の総合設備工事業者に就職して水処理関連の業務を担当していたが、管理職に昇進するよりも現場のエンジニアでありたいとの希望から起業を決心して環境ベンチャーを立ち上げました。

 

・事業の成功ポイント

 

汚泥・濁水処理の現場を熟知した技術者により低コストで環境にも優しい独自の汚泥処理技術「MC(メッシュカット)工法」を開発した点が大きいです。

 

起業や事業化のための知識や情報等を中小企業基盤整備機構などから入手したり、インキュベーション施設を利用したりするなど公的支援機関を積極的に活用した点も事業の安定・拡大に貢献しています。

 

加えて国・県・市から自社の独自技術とビジネスモデルの認定*を受け、それらを活用した販路拡大を行っている点も成長に繋がっているでしょう。

 

*経済産業省の新連携事業及び福岡県の経営革新計画の認定、福岡市ステップアップ助成事業の最優秀賞、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)への登録)

 

・起業家の特徴

 

現場のエンジニアでありたいという起業の目的を達成しようとする強い意志が見られる、会社勤め時代で培ってきた知識・技術を活かし新たな工法を開発した能力とそれを最大限活用するという取り組み姿勢が見られる、経営に関する知識や創業のスペースなど公的機関を利用するといった柔軟な思考を有している、国や自治体等の支援施策を利用して資金や販路の課題を克服する思考力や行動力が見られる、といった特徴があります。

 

 

3-2 起業で成功する人の特徴まとめ

ここでは起業に成功する要因や事例の内容などを参考に起業で成功する人の特徴をまとめていきます。

 

①各種成功要因から浮き上がる成功する人の特徴

各種成功要因から浮き上がる成功する人の特徴

 

既に確認してきた中小企業白書等で見られる起業家の成功要因などから成功者の特徴を挙げてみましょう。

 

・起業前の仕事での知識・経験・人脈を活用している

 

起業する前に培ってきた専門技術、知識、経験、人脈などを活用できる分野を事業として選ぶ傾向が見られ、その選択・活用が事業の成功に繋がるケースが多いと考えられます。

 

起業家がこうした行動を意識しているか否かは判断できないです。しかし、起業や会社設立後の経営を有利な状況にもっていくために、起業前までに培ってきた要素を活用して起業の困難さを乗り越えようするのは当然と言えるでしょう。

 

・「資金調達」「質の高い人材の確保」「販売先の確保」の課題をクリアしている

 

起業時や起業後の経営上の課題は上記の3つが代表的であり、成功する方はこれらをクリアしています。クリアするための手段としては、先に挙げた起業までに獲得してきた人脈等を活用するケースが多いです。

 

製品・サービスの開発、販売先や販路の確保、必要資金の調達、事業を推進してくれる従業員や協力者の確保などが起業の成否を左右するわけですが、会社員時代に築いた人脈がないとこれらの対応は容易ではありません。

 

逆にこれらの経営資源を人脈等で確保できれば起業での成功確率は高まるわけです。

 

・起業後の課題である「質の高い人材の確保」「人材教育」など人的資源管理ができている

 

起業後の経営では必要人材の確保が重要な課題になるケースが多いため、いかに適切な人的資源管理ができるかが成功には不可欠な要素となるでしょう。

 

起業してから間のない小規模・中小企業等での人材採用は容易ではなく、また離職率も低いものではありません。こうした中経営者は適切な人材の確保に努めなければ事業が回らず成長が停滞や鈍化してしまう恐れも生じます。

 

そのため起業を成功させる方には、人的資源管理を丁寧に行う、人材を確保できる魅力(コミュニケーション能力等)があるといった特徴も必要です。

 

・マーケティングや経営管理を適切に行っている

 

マーケティングや経営管理も重要な課題であり、これらを適切に対応できることも起業の成功に結びつくでしょう。

 

これらの課題の項目は、ビジネスモデルの策定・実行や事業・組織の運営など経営の根幹となる要素であるため、これらを的確に実行できない場合は業績の低迷や組織運営の停滞を招く恐れが生じます。

 

従って、マーケティングや経営管理を重要点として認識しその過不足・問題を把握して必要な部分を補える方が成功に近づけるのです。

 

・起業後に経営に関する知識を補完している

 

起業前では「税務・財務・法務に関する知識の不足」を課題としてあげる方が多いですが、起業後には減少傾向が見られるため、経営に関する知識を何らかの形で補っているケースが少なくないようです。

 

一般的には起業前に創業塾への参加や経営支援機関等への相談などにより経営の知識を吸収する方が多く見られます。つまり、経営に関する役立つ知識を吸収し仕事に活かしていくという姿勢が成功者に求められる特徴の一つになるのではないでしょうか。

 

・新商品・新サービスの開発を行って参入している

 

他社との差別化や競争優位性を確保するために新商品・新サービスを開発して起業しているケースが多く見られます。既存の市場で既存の商品・サービスと同種・同レベルのものを提供しても新規参入者の勝ち目は薄いと考え、新商品・新サービスで勝負に出る方が少なくありません。

 

どのような要素なら差別化したり、顧客のニーズを掴めたりできるかを分析して市場参入しようとする姿勢が窺えます。つまり、市場を分析し勝因を見極める能力が備わっていること、それを実行できることも成功者の特徴と言えるでしょう。

 

②中小企業白書の事例等からみられる起業成功者の特徴

中小企業白書の事例等からみられる起業成功者の特徴

 

・チャレンジ精神が強い

 

現状の勤務先では実現できない仕事や業務は多くありますが、それを行う、担当するには会社を退職し自分で起業してやるしかありません。起業して成功できるとは限らないというリスクに負けない、不安に負けないで挑戦する意識の高さや意欲の強さが目立ちます。

 

・前職等の知識・経験・人脈等を活用している

 

今まで勤めていた仕事の知識・経験等から新たな問題点やニーズを発見し、それを事業機会と把握できる能力を起業成功者は持っています。また、事業機会を捉えるためのビジネスモデルを考案し、具体化できる構想力と行動力を持っているのも大きな特徴です。

 

ビジネスの具体化には当然な様々な手続、経営資源や情報等が必要になってきますが、自分で準備できない部分を過去の人脈で確保したり、新たなネットワークの構築で補ったりするケースも多く見られます。

 

・世の中に役立ちたいという意識が高い

 

地元の活性化や障害者支援などの社会貢献のほか、商品・サービスの提供により世の中の人々の役に立ちたいという意識を持っている方が少なくありません。社会貢献に限らず、明確な目的をもって起業する方が多いです。

 

・経営の知識の習得や情報収集に熱心である

 

起業前後に創業塾やビジネスコンテストなどに参加して経営の勉強やビジネスプランの作成など経営に役立つ能力の獲得や向上に努める方が少なくありません。

 

起業する分野の知識や経験があっても企業を経営する知識を持ち合わせていない方も多いですが、成功者は経営に関する知識等を起業前後に積極的に入手しようとしたり補完したりするケースが多く見られます

 

企業におけるマーケティングや組織運営などは、事業を成長軌道に乗せるための重要な要素であるため、これらに関する知識やスキルの習得を後回しにすると成長が阻害されかねません。

 

・目的達成のための努力を惜しまず、粘り強さがある

 

世の中にないもの、他社と差別化できるものなどの開発は容易でないため、開発などの目的を達成するためには多くの時間や労力が必要です。起業成功者にはこうした困難に立ち向かい諦めずに成し遂げようとする粘り強さが見られます。

 

・起業した事業のほか、関連分野などで事業を拡大させている

 

起業した事業だけで自分の生活を支えることができてもそれだけでは多くの従業員を雇えるだけの企業規模にできず、企業としての発展も難しくなるため、成功者は関連分野での事業を拡大させています。

 

少しでも事業を拡大させたいという意識があり、関連分野での商品・サービスの開発と提供に注力する方が少なくないです。

 

・自分の目的や経営資源の状況等に適した起業を行っている

 

起業の目的に合わせて身の丈に合った事業から始めてその後事業を拡大させるという慎重な経営をとる方が見られます。つまり、起業は小さくはじめて経営資源や顧客の増加などに合わせて事業拡大のチャンスが窺うといった姿勢が成功確率を高めているのです。

 

・そのビジネスの成功のポイントを認識し確実に遂行している

 

起業成功者はそのビジネスのキーとなる重要な要素を認識し経営環境が厳しい状況であっても安易に変更せず確実にその重要ポイントを守った経営を行っています。

 

カレー屋さんの事例がありましたが、飲食店では食品の味が何といっても勝負ポイントであるため、材料等が値上がりしても安易に変更して味を落とすような愚策を成功者は取りません。また、飲食・サービス業で最も重要な接客を疎かにせず良好な人間関係の構築に努めています。

 

・起業前から潜在顧客や協力者・支援者を作るための交流に積極的である

 

起業する前に販路、販売先・顧客に繋がる潜在顧客や、資金や技術などを提供してくれそうな協力者・支援者を発掘するために、異業種交流会、創業塾や特定の問題解決のための委員会などに成功者は積極的に参加しています。

 

経営資源が脆弱な起業家にとっては、少しずつでも顧客や協力者を増やしていくことが事業を安定・拡大させることに繋がるため多様なネットワークへ参加し人脈を広げているのです。

 

・国や自治体等の支援施策を上手く活用している

 

起業成功者は、利用可能な国や自治体等の支援施策に応募しそれを資金調達や販路の拡大などに積極的に活用しています。

 

経営の勉強や取引の情報から資金、技術や販路の確保に役立つ支援策が国等から提供されるケースが少なくありません。そうした施策の存在を知らない経営者や利用に関心のない経営者も少なくないですが、起業成功者の中には積極的に活用しようという方が多く見られます。

 

 

4 起業で失敗する人の特徴

起業で失敗する人の特徴

 

最後に上記の起業で成功する人の特徴を参考に失敗しやすい人の特徴を考えてみます。

 

 

4-1 起業で失敗しやすい性質や行動とは

起業で失敗しやすい性質や行動とは

 

・起業の目的が曖昧で他者に合わせる

 

なんとなく流行りだから起業を考える、今の仕事が嫌になったから起業する、友人の起業がかっこよく見えたから同じ事業をやってみる、など起業家自身の「やってみたいこと」や目的がないままに起業するケースでは失敗する可能性が高まります。

 

目的を明確にしない起業では顧客のニーズの把握、それに基づくビジネスの組み立てなどができず失敗になる可能性が低くないです。

 

・知識やスキルのない分野を事業として選択する

 

起業前までに身に着けた知識や経験等を活かせる事業分野を選択することが成功の条件になり得るため、万全の準備なしに未経験の事業分野に進出しようする方は失敗しやすくなるでしょう。

 

流行りの事業などでもそこには成功するための知識・スキルなどが必要であり、それを用意しないままの起業では成功は難しいです。

 

・必要な準備なしに起業する

 

すべてに十分な資源を用意して起業するのは困難ですが、最低限必要な人、モノ、金の確保をしない方は失敗の可能性を高めます。また、事業を始めながら必要な資源等を少しずつでも確保しようと努力しない方は成功しないでしょう。

 

・ニーズの把握やビジネスモデルの構築が上手くできない

 

これまでの知識や技術を活かして他社が認識していないニーズを発見しそれをビジネスモデルに仕上げる知識やスキルがない方は事業を上手く進められず、失敗の可能性を高めます。

 

既存市場に潜在していたニーズを見つけて差別化できる商品・サービスを提供していかないと事業の安定化や成長は期待できません。マーケティングに関する知識が少ない方、知識を得ようとしない方などは失敗しやすくなるでしょう。

 

・ビジネスプランを作らない、ビジネスプランを実行しない

 

適正なビジネスプランを作らなかったり、作っても実行しなかったりする方は成功しにくいです。ビジネスプランを作ることは経営で必要な知識を学んだり適正な事業運営を行ったりすることに役立ちますが、作らない方は経営の知識が不足して危うい経営を招きかねません。

 

また、ビジネスプランを作っても実行しない方は経営状況の把握を怠り問題の発見と対策が遅れ経営リスクを招く可能性を高めてしまいます。

 

・起業に有効な協力者・支援者や公的機関の支援策などを積極的に活用しない

 

多くの起業家は十分な経営資源や顧客などを確保しないまま起業するケースが多いことから利用できるものは何でも活用しようとする意識が見られます。そうした活用に興味のない方は失敗しやすくなるでしょう。

 

会社員の場合、上司、同僚や他の部署の社員をはじめ、関係会社や顧客に至るまで自分の仕事を助けてくれるケースもありますが、起業した場合自分でそうした支援者・協力者を作るしかありません。上手く利用すれば確保できる協力者等を作らないのは愚策です。

 

経営資源等が脆弱な起業家だからこそ自ら動いて協力者を確保し、利用可能な支援策などを活用できるように行動しなければなりません。自分で何とかするという意識も重要ですが、他者を活用して自分の味方にすることは起業前後では特に重要です。

 

 

5 まとめ

まとめ

 

日本における起業や会社設立は決して多くはなく、開廃業率も他の先進諸国などと比べ低い状況であり、起業環境としては優しいとは言えません。実際に、起業に失敗する人の経験談などはネットで見かけることもあるでしょう。

 

しかし、その起業の状況をみると、起業から10年後でも70%の企業が生存しており、成功できる可能性は決して低くないのです。起業の成功には様々な理由がありますが、成功者や失敗者の考えや行動などからその理由を掴めることもあります。

 

この記事で取り上げた成功者や失敗者の特徴を参考に自分が成功するための起業を是非検討してみてください。


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