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個人事業主が決算書を作成するとき気をつけるポイントと関係する税金

個人事業主が確定申告をするときは、税金の控除額をはじめとするさまざまな税制上のメリットがある青色申告が有利と言われています。しかし青色申告をする場合には、あらかじめ税務署に届け出て、申告の際に「決算書」を提出しなければなりません。決算書なんて大企業だけが作成するものだと思っていたあなたも、決して無関係ではないのです。そこで、その決算書を作成する際に気を付けたい10のポイントについて解説していきます。

 

 

1 そもそも、決算書とは何か?

決算書は、会社の1年間の経営の成果をまとめた書類のことです。会社の1年は暦の上での1年と違い、1事業年度もしくは1会計年度などと言います。

 

多くの会社では4月1日から3月31日までを事業年度にしており、その場合は3月31日が決算日となります。そのため、3月には「年度末なので忙しい」というビジネスマンが多いですね。さらに経理・財務の担当者は、決算書作成のため、年度末以降もしばらく忙しい日々が続きます。

 

一方、個人事業主の場合は、事業年度は4月からでなく、1月1日から12月31日までと税法で定められています。したがって個人事業の決算日は、12月31日になります。決算書は、事実上、会社の経営上の数字が出そろう、この決算日から作成が始まります。

 

決算書は、「財務諸表」とも言います。厳密にいうと、有価証券報告書を提出する会社が作成するものを「財務諸表」、それ以外の会社が作成するものを「計算書類」として分けています。

 

財務諸表には「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」「株主資本等変動計算書」などが含まれます。計算書類には「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」「個別注記表」が含まれます。これらに「事業報告」と「附属明細書」を加えて、「計算書類等」という言い方をします。

 

今回は基本的に個人事業主の決算書作成の方法を解説しますので、この中で覚えておくのは「貸借対照表」「損益計算書」の2つで十分です。

 

 

2 なぜ決算書を作成しなければいけないのか?

さて、この決算書ですが、なぜこのようなものを作成しなければならないのでしょうか。その理由には、以下のようなものがあります。

 

 

2-1 会社が決算書を作成する理由

・株主に対する経営内容の報告

会社(株式会社)は、株主のものです。経営者は、その会社の経営を株主から任されています。そのため、経営者は毎年の株主総会の場などで、1年間の経営の状況を株主に報告しなければなりません。決算書は、その報告用の資料として使われます。

 

・税金の申告

会社は、事業年度の終了から2か月以内に法人税の確定申告を行わなければなりません。その申告の際には、法人税申告書と合わせて、決算書を税務署に提出しなければなりません。法人税は、会社など法人の所得に対して課税されるため、所得の内訳を示す決算書が必要になります。

 

・銀行の与信管理など

会社が金融機関から融資を受けるときなど、銀行はその会社に融資しても大丈夫か(倒産して、貸し倒れになるようなことはないか)という審査を行います。その際、会社の経営状況が把握できる決算書が必要になります。銀行以外でも、取引先の会社などは、会社の経営状況を把握するために決算書を参照します。

 

 

2-2 個人事業主が決算書を作成する理由

これらは一般的な会社の例ですが、個人事業主の場合も決算書を作成する理由は基本的には同じです。ただ、個人事業主の場合は、株式会社でない場合もありますし、株式会社であっても少数の株主のみの場合もありますので、決算書を作成する主な理由は「確定申告を行うため」ということになります。

 

もっとも、確定申告で白色申告を行っている個人事業主は、決算書を作成する必要はありません。決算書が必要なのは青色申告の場合のみで、そのため確定申告B表と一緒に提出する決算書は、「青色申告決算書」とも言われます。決算書の作成には、定期的な帳簿記入など手間暇もかかりますが、その分、最大65万円の税額控除などの特典があります。

 

決算書の提出には期限があり、原則として決算日の翌日から2カ月以内に管轄の税務署等に提出しなければなりません。もしその期限までに決算書を提出しなかった場合は、「無申告」扱いとなり、青色申告の取り消しなどの処罰を受ける可能性があります。

 

青色申告が取り消しになるのは、2年続けて期限までに決算書を提出しなかった場合です。そうなると当然、最大65万円の税額控除や、赤字の繰り越しといった、青色申告のメリットを受けることができなくなります。また、そのほか、無申告加算税などの罰則が課せられることがありますので、決算書や申告書類は期限に遅れることのないよう、注意しましょう。

 

 

3 決算書作成にあたり準備するもの

まず、次の決算書の作成にあたり、準備するものを挙げておきます。

 

① 損益計算書の作成(記入)に必要なもの

  • 総勘定元帳…帳簿類を集計して作成します。損益計算書に記入する際に使用します。
  • 賃貸契約書…損益計算書に貸主の名称や住所を記入する際に使用します。
  • 賃金台帳…年間の給料がわかる書類です。
  • 請求書…損益計算書の売上金額及び仕入金額の記入に使います。

 

 

② 貸借対照表の作成(記入)に必要なもの

  • 預金通帳…事業年度末(12月31日)の残高が貸借対照表の残高と同じかどうか確認します。
  • 在庫表…事業年度末に棚卸を行い作成した在庫表です。棚卸については後述します。
  • 返済予定表…借入金などの返済予定表です。事業年度末(12月31日)の借入金の残高と、貸借対照表の「借入金」の残高が一致していなければなりません。

 

 

③ 前年の決算書

決算書を作成する際、前年と今年で数字が大きく違う場合は、計上漏れなどの可能性がありますので、その確認のために前年の青色申告決算書を参照するといいでしょう。これは減価償却費を計算する際の前年の計算方法や、償却していない金額を確認するのにも役立ちます。

 

④ 消費税の計算結果

消費税の納税がある場合です

 

⑤ 領収書

経費などの領収書です。日付順にバインダーなどに綴じて整理しておきます。その際、領収書のない交通費などの出金伝票も、一緒に綴じておきます。この領収書の綴りは、7年間の保管義務があります。領収書そのものは通常使うことはありませんが、税務調査のときなどに必要になります。

 

 

4 決算書はどのような手順で作成するのか

事業年度の末日(決算日)を迎えたら、決算書の作成に向け、会社の資産と負債の状況を把握するために、以下のような作業を行います。

 

  • ① 帳簿類の作成
  • ② 試算表の作成
  • ③ 棚卸
  • ④ 現金残高や預金残高の照合

 

それぞれについて説明していきます。

 

① 帳簿類の内容整理

「仕訳帳」「総勘定元帳」などの「主用簿」を作成します。これについては、以下に詳述します。

 

② 試算表の作成

仕訳帳から総勘定元帳への転記は日付や相手勘定、金額などを書き写す単純作業ですが、手作業で行うと記入ミスを生じることもあります。そこで、仕訳帳から総勘定元帳正しく内容が転記されたかどうか確認するため、試算表を作成します。具体的には、仕訳においては、必ず借方と貸方の金額が一致しますので、借方と貸方の金額が一致しているかどうかを、試算表によって確認するのです。会社によっては、毎月の月末に試算表を作成しているところもありますが、その場合は合計残高試算表を作成します。もっとも、会計ソフトなどを使っている場合は自動的に帳簿類が作成されるため、試算表は事実上、必要ありません。

 

③ 棚卸し

会社にある在庫などの「棚卸資産」の数を確認し、金額を計算する作業です。これについては、以下で詳述します。

 

④ 現金残高や預金残高の照合

会社にある現金や預金の残高が帳簿の内容と一致しているかどうかを確認します。現金は現金出納帳、預金は通帳や残高証明書と帳簿を照らしあわせてチェックします。

 

 

5 勘定科目を整理する

決算書類作成の手続きに際して、複雑な内容のものについてもう少し詳しく解説します。まずは「帳簿類の内容整理」についてです。

 

 

5-1 帳簿類の内容整理

決算書の作成にさいし、まず「仕訳帳」「総勘定元帳」などの「主用簿」を作成します。経理では、会社の取引と経理処理を補助簿(現金出納帳や預金出納帳など)に記帳し、それを日付順に「仕訳帳」に集計しますが、総勘定元帳は仕訳帳上でバラバラに散っている勘定科目を資産、負債、収益、費用などの集計単位ごとにまとめたものです。これが決算書類の「損益計算書」「貸借対照表」の元になります。

 

個人事業主などがよく悩むのが、この勘定科目の振り分け方です。そこで、個人事業主などがよく悩みがちな勘定科目の例を以下に挙げておきます。

 

 

5-2 個人事業主が振り分けに悩む勘定科目

① 「自宅兼事務所」の家賃を費用として計上する場合

個人事業主の中には、自宅を事務所や店舗兼用で使用している人も少なくないでしょう。その場合、家賃の一部を経費として計上することができます。例えば賃貸住宅に住んでいて、そのうち20%を事業用に使用している場合は、年間の家賃の20%を経費にできます。勘定科目の中では、「地代家賃」という科目で計上します。

 

※家賃×事業用に使用している面積の割合=地代家賃

 

一方、持ち家の場合はやや複雑で、家屋の減価償却費や住宅ローン金利、火災保険料、固定資産税の合計額に、事業用に使用している面積の割合をかけたものが地代家賃となります。

 

② 水道光熱費や電話料金などを費用として計上する場合

家賃と同じく、自宅で仕事をしている個人事業主の場合は、電気、水道、ガス、電話やインターネットの料金も、基本的には地代家賃のケースと同様、仕事で使った割合が水道光熱費、通信費などの科目で、経費として計上できます。

 

③ マイカー兼業務用車両に関する経費計上

これも①②のケース同様、「仕事で使っている割合」が基準になります。車両関連費用として、ガソリン代、高速料金、車検費用、自動車税、保険料などの経費計上も認められます。

 

④ ホームページやチラシを制作した費用の経費計上

チラシや新聞・雑誌への広告、社名の入ったカレンダーやタオル、取引先へのあいさつ品、名刺などは、すべて「広告宣伝費」という勘定科目で経費計上できます。また、ホームページの制作、運営も広告宣伝費になりますが、ホームページの場合、固定資産扱いにはならないため、外注費が30万円を超えた場合も減価償却の必要がなく、その年に一括して経費計上できます。

 

⑤ 通勤や仕事中の移動、出張で交通機関を利用した場合の経費計上

仕事で電車、バス、タクシーや飛行機、船舶などを利用した場合などはその運賃を「旅費交通費」として計上します。領収書がなくても、交通費精算所があれば経費として認められます。ただし、高額な旅費交通費に関しては領収書をもらっておくのが望ましいでしょう。

 

⑥ 得意先との飲み代や食事代の経費計上

得意先とのお付き合いでお酒を飲んだり食事をしたりした場合の費用は、「接待交通費」として計上できます。この場合、会社では経費計上できる接待交際費には限度がありますが、個人事業主の場合は全額費用計上できます。その点は、個人事業主ならではのメリットと言えます。ただし、その場合、接待の相手が本当に取引先であることが証明できなければいけませんので、帳簿には取引先の名前や接待で打ち合わせた内容などを記録しておくといいでしょう。

 

⑦ 事業で支払った税金の経費計上

個人事業主の場合は、事業のために払った税金(事業税、消費税など)は、全額費用として計上できます。また、自宅やマイカーを事業用に使っている場合は、事業用に使っている割合だけ経費として計上できます。固定資産税、自動車税などです。これらは「租税公課」という勘定科目で計上します。一方、所得税、相続税、贈与税、住民税などは経費計上できません。

 

 

6 間違えやすい勘定科目に注意する

帳簿類を整理する際、収入や経費の中には、科目名が似ていて分かりにくいもの、また、その年の収入・経費になるものとならないものがありますので、それらを振り分けす必要があります。そうした分かりにくいものの例をいくつか挙げておきましょう。

 

 

6-1 売掛金、未収入金と前受金

「売掛金」と「未収入金」は、共に相手に対して請求ができる債権ですが、両者の違いは、営業活動による債権か、営業活動以外の債権か、ということです。

 

例えば売掛金は、商品を販売したり、サービスを提供したりした場合などに生じる債権です。一方の未収入金は、営業活動以外の取引で生じた債権のことで、株や債券など有価証券の売却や、土地・建物など固定資産の売却、自社の敷地など不動産を他者に貸している場合、などが当てはまります。

 

このほか、まだ商品やサービスなどを売り上げていないのに、代金を先に受け取っている「前受金」というものがあります。年内に入金だけあり、商品の引き渡しやサービスを実際に行うのが翌年になる場合などです。売掛金や未収入金と、この前受金の大きな違いは、前受け金はその年分の収入金額にならないということです。そこで、「前受金」という勘定科目に入れて、今年の売上に含めない処理をします。

 

 

6-2 未払金・未払費用と前払費用

経費として混同しやすい科目が未払い金、未払経費と前払経費です。

 

未払金と未払費用はよく似た勘定科目ですが、未払金は債務が確定した未払い、未払費用は債務が確定していない未払いです。わかりやすく言うと、請求書が届いているのにお金を払っていないのが「未払金」、まだ請求書が届いていないが費用が発生しているものが「未払い費用」です。

 

たとえば、電話やインターネットなどの利用料金の計算期間が付き始めからでなく、前月の15日から翌月の15日だったとします。その場合、決算日の12月31日にも、料金は発生しています。請求書が届くのは、1月15日以降になりますから、これは前述の「まだ請求書が届いていないが費用は発生している」というケースに当たりますので、「未払費用」ということになります。

 

また、似たような名前の項目に「前払費用」があります。例えば、支払家賃、支払利息、保険料など、一定の契約期間にわたってサービスなどの提供を受けている場合、その期間の代金を先払いすることがあります。2年分まとめ払う火災保険などが、これに当たります。「前払費用」とは、このように、期間に対して支払われる経費のうちの、未経過期間分を処理する勘定科目です。

 

例えば12月決算の会社がその年の10月に2年分の火災保険料4万円を支払った場合、翌年分以後の期間に対応する部分が含まれているので、その年分の必要経費にはなりません。未払金、未払費用がその年の経費として計上できるのに対し、前払費用はその年に経費計上できないという点が、大きな違いとなります。

 

このように、決算期をまたいで先払いした費用は、次期分を除く必要がありますが、その際に次期分を繰り越す勘定科目が前払費用です。そして、次期の費用に計上するものを除外することを「費用の繰り延べ」といいます。

 

帳簿類の内容整理に関して気を付けるべきポイントは以上のようなところですが、次に、決算書類作成に当たってもう一つ大変な作業である固定資産の計算について解説します。

 

 

7 棚卸資産を計算する

決算書の作成に当たってもう一つ重要であり、かつ大変な作業が、「棚卸資産」の数や状態を確認する「棚卸(たなおろし)」です。棚卸資産というのは、翌年以降も売れる見込みのある資産のことで、いわゆる「在庫」などはここに含まれます。貸借対照表の中では「流動資産」に分類されます。流動資産とは、比較的すぐに現金化できる資産のことです。

 

棚卸資産を計算するには、棚卸しを行い、棚卸資産を評価しなければなりません。会社の棚卸というのは、決算期の末日(個人授業主の場合は年末)の時点で残っている棚卸資産の数量と品質の調査を行い、在庫の金額がどのくらいあるのかを計算することです。

 

 

7-1 なぜ棚卸しが必要か

なぜ、棚卸が必要なのでしょうか? それには以下のような、いくつかの理由があります。

 

① 決算書を作成する際に、利益を正確に計算する

これは後に「損益計算書」のところで詳しく述べますが、売上から原材料や仕入れなどの売上原価を引いた利益を売上総利益(粗利)と呼びます。この売上原価を計算するために棚卸を行います。売上原価は、期首(年度の初め)棚卸高から当期仕入高(今年の仕入れに使った金額)と期末の棚卸高を引いて求めます。

 

※売上総利益=売上-売上原価 
※売上原価=期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高

 

棚卸は、この「期末棚卸高」を調べる作業です。

 

② 帳簿上の在庫と実際の在庫が合っているかを確認する

在庫表などで在庫管理を行う場合、記入漏れがあったり、商品の盗難があったりすると、帳簿を作成したときに、帳簿上の在庫と実際の在庫に差が出てしまいます。そこで、期末に棚卸を行い、帳簿上の在庫と実際の在庫が合っているか確認し、違っていたら修正すします。

 

③ 売れずに残っている滞留在庫などの数を調べる

売れずに残っていたり、購入しても全く使っていなかったりする消耗品などを滞留在庫といいますが、この滞留在庫の数を調べます。基本的に、在庫は回転率がよく、少ない状態が望ましいので、棚卸でチェックしたら、売れそうな物は安く売り、売れない物は早めに処分するなりして、滞留在庫を減らす必要があります。

 

 

7-2 棚卸しを実際にやってみよう

それでは、実際に棚卸の作業を進めていきましょう。棚卸には「実地棚卸」と「帳簿棚卸」の2つの方法があります。その名前で想像はつくと思いますが、実地棚卸では、オフィスやお店、倉庫などにある商品、製品、原材料などの在庫を手作業で数え、チェックしていきます。

 

一報の帳簿棚卸では、在庫管理表などで、日々の入・出庫を記録して在庫の数量と金額を帳簿上で管理します。在庫管理システムを使用して管理している会社もあります。そういう会社でも、基本的には実施棚卸を行い、帳簿と照らし合わせて正確な在庫数を確認します。

 

では、実地在庫はどのようなやり方で実施していくのでしょうか。具体的には、まず棚卸の前に「棚卸票」を用意します。棚卸票は、「2枚セット」のものを使うと便利です。そして、商品や原材料など在庫の種類ごとに数え、各在庫の数量と状態を棚卸票に書き込んでいきます。そして、数え終わった在庫は、二重にチェックしないよう、棚卸票のうちの1枚を貼っておきます。

 

このようにしてすべての在庫を数え、棚卸票の1片を回収したら実地棚卸は終了です。ただし、棚卸資産の中には、自分の会社だけでなく、委託販売して他社においてある商品や、輸送中の商品、仕入れ先の工場にある商品など、外部においてあるものもあります。このあたりはつい忘れがちなので、棚卸の際にはチェック漏れのないよう、気を付けましょう。

 

 

7-3 帳簿と合っているか確認

実地棚卸が終わったら、棚卸の数字と帳簿の数字が合っているか確認します。もし数字が合っていなかったら、実地棚卸の結果に帳簿の数字を合わせます。そして最後に、棚卸票に合わせて「棚卸表」に品名、数量、単価、金額などを記入していきます。

 

その際、破損して正規の値段では売れない商品が見つかることもありますが、これは期末時点での「処分可能額(売却見込額)」ということで計上できます。

 

実際のところ、実地棚卸はすべての在庫を数えるため、時間も手間暇もかかる大変な作業になりますが、これをしなければ正しい利益を把握することができません。そこで棚卸作業を行う年度末などは、社員が大わらわの状態になりますが、それだけやっても帳簿上の在庫と実際の在庫の数が合わないこともあります。

 

そのため、本来は、毎月定期的に棚卸を行えば在庫を正確に把握できるのですが、在庫の多い会社などが毎月、実地棚卸をやったら、その度に大変な手間暇がかかってしまいます。

 

そこで、日々の棚卸管理は帳簿棚卸で行い、実地棚卸は年度末や半期、四半期、場合によっては毎月一度くらいのタイミングで定期的に行って、帳簿上の在庫と実際の在庫とを常に調整していく方法が現実的でしょう。帳簿上の在庫と実際の在庫の差異が少なくなってきたら、棚卸を行う回数を減らしていいでしょう。

 

最後に棚卸に際して、一つ注意したい点があります。それは「仕掛品」です。これは製造途中の加工品や、まだ完成していない工事(仕掛工事)、作業は今年だが売上が立つのは来年になる仕事……などです。売上が来年になってもすでに今年、外注費などの人件費がかかっていたら、これは「仕掛品」として計上します。

 

 

7-4 棚卸資産を計算する

実地棚卸で在庫の数量と状態を把握したら、それらの在庫を金額に換算します。それにより、今年の利益が把握できます。そこでもう一度、売上原価と利益の関係式を見てみましょう。

 

※売上総利益=売上-売上原価 
※売上原価=期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高

 

実地棚卸で調べたのは、上の式の「期末棚卸残高」です。したがって、棚卸の金額が低いほど売上原価が高くなり、そのぶん利益(売上総利益)が少なくなります。利益は会社の所得ですから、それが少なくなれば収める税金も少なくなります。

 

在庫の評価方法には、主に「原価法」と「低価法」の2種類があります。原価法は、商品を仕入れた原価に基づき評価する方法で「個別法/先入先出法/総平均法/移動平均法/売価還元法/最終仕入原価法」の6種類の計算法があります。

 

低価法は、原価法で評価した金額と決算日の時価を比べて、低いほうの評価額を採用する方法です。これは青色申告だけに認められた評価法で、節税には有利な評価法です。低価法を用いる場合は、原価法の中のどの計算方法と比較するかを事前に税務署に届け出ます。

 

これらの評価法の中で計算が比較的簡単なのが、原価法の中の「最終仕入原価法」です。これは棚卸資産を最後に仕入れた単価で評価する方法です。また、評価額を少しでも低く抑えたい(利益を減らして税金を安くしたい)場合は、低価法が有効です。

 

 

8 固定資産を計算する

流動資産に対し、固定資産というのは、比較的すぐには現金化できない資産のことです。固定資産については、その金額を評価するうえで注意しなければならない点がありますので、それを解説します。

 

 

8-1 減価償却の計算

固定資産の計算で難しいと思われがちなのが「減価償却」の計算です。会社で使っている30万円以上の機械や備品は、青色申告の場合でも購入した年に全額を経費として計上することはできません。その代わり、経費は何年かに分けて計上していきます。これが減価償却です。

 

減価償却が必要な資産は、法定耐用年数によって償却期間が決められています。例えば社用車やパソコンは4年、事務机は15年、冷暖房器具は6年、といった感じです。そのほか、建物や機械装置、工具、器具装備、特許権、営業権なども減価償却の対象になります。これら減価償却が必要なものに関しては、あらかじめ固定資産台帳に記録しておきます。

 

一方、土地、借地権や、建設中の建物、販売目的の建物や機械、使用可能期間が1年未満または取得価額が10万円未満の少額減価償却資産などは減価償却の対象になりません。

 

減価償却の計算法には、定額法と定率法の2種類があります。定額法とは、毎年同額ずつ償却していく方法です。定率法は、初年度に大きく償却し、その後年々償却費用を減らしていく方法です。どちらの方法がいいということはありませんが、計算が比較的楽なのは定額法です。ただ、最近は会計ソフトが計算してくれますので、どちらの方法を採用してもいいでしょう。

 

注意したいのは、建物や、無形固定資産である特許権などは、定額法で減価償却を行うことが定められているということです。また、同じ種類の資産を別の計算法で償却することはできません。例えばパソコンとコピー機は同じ「機械装置」という種類になるので、同じ計算方法で償却しなければなりません。

 

また、資産が償却期間中に壊れてしまった場合は、その資産をきちんと処分すれば、帳簿上から削除することができます。その時点でまだ焼却されていない分も、「除償却」という形で経費計上できます。ただし壊れても処分せずに放置してあるような場合は、資産と見なされることもあります。

 

 

8-2 固定資産の計算

固定資産ではこのほか、災害などにより社屋や店舗など事業用の固定資産が損壊した場合は、損失を生じた年の必要経費になりますので、その損失額を計算します。

 

また、売掛金や未収入金、受取手形、貸付金、前渡金などの債権が回収不能となった場合には、回収不能となった年の「貸倒金」として、必要経費になります。

 

 

9 決算書作成のためのその他の実務

棚卸や固定資産の計算と固定資産台帳への記入のほかにも、決算書作成のために整理しておかなければならない事項があります。

 

 

9-1 個人事業主の貸倒引当金

例えば、帳簿上の残高より現金が多い(少ない)のに、その発生原因がわからないときなどです。その場合は、帳簿残高より現金が多いときは「雑収入」に、少ない場合は「雑損失」に振り替えるとよいでしょう。

 

また、売掛金のような売掛債権、貸付金などの金銭債権に対して、5.5%の額を貸倒引当金繰入として必要経費に計上することができます。これは青色申告をしている個人事業主対象の特例です。

 

この貸倒引当金について少し説明しておきます。ビジネスでは、取引先に商品やサービスを提供しても、その場では売上代金を受け取らないケースがよくあります。これを「掛売(かけうり)」と言って、とりあえず請求書を取引先に渡し、後日その売上代金を支払ってもらうという方法を採ります。そこで発生した債権を売掛金(売掛債権)と言います。

 

後日、この売掛金が回収できれば良いのですが、取引先の会社が倒産してしまい、売掛金が回収できなくなる場合もあります。これを「貸倒れ」と言います。「貸倒引当金」とは、このような貸倒れリスクに備えて、売掛債権や金銭債権の残高の一定額を引当金(費用や損失)として計上することをいいます。

 

 

9-2 決算に要した書類は捨てない

以上が決算書作成に向けた大まかな準備の概要です。これらの流れや注意点を踏まえ、数字を集計して決算書を作成します。

 

注意したいのは、決算が終わっても帳簿や棚卸表、納品書、請求書、領収書などの書類を捨てないことです。これらの書類は税務調査があったときなどに必要になりますので、7年間保存する義務があります。

 

 

10 確定申告の準備

さて、それでは個人事業主などが青色申告用に決算書を作成して提出する手順ですが、実は青色申告決算書は、フォーマットが決まっています。もし使っている会計ソフトが青色申告対応のものであれば、プリントアウトした決算書をそのまま税務署に提出できます。しかし、青色申告決算書のフォーマットでプリントアウトができない場合は、作成した決算書を元に、手書きで青色申告決算書に転記していかなければなりません。

 

 

10-1 青色申告の必要書類

青色申告決算書は、損益計算書とその明細書が3ページ、貸借対照表が1ページで、計4ページで構成されています。それぞれに記入する内容は次のようなものです。

 

  • 1ページ目(損益計算書)…1年間の売上や経費の内訳、所得金額などを記入します。
  • 2ページ目(損益計算書の明細書/月別売上・仕入)…月ごとの売上、仕入や給料賃金(従業員がいる場合)などを記入します。
  • 3ページ目(損益計算書の明細書/減価償却費・地代家賃)…パソコン、ファクシミリなどの事業用品で、10万円を超える固定資産を購入し、減価償却する場合などに記入します。
  • 4ページ目(貸借対照表)…期初(その事業年度の最初)にあった資産・負債などを「借方」に、期末(事業年度末)に残った資産・負債などを「貸方」に、それぞれ記入します。
  • なお、同じ青色申告でも、書類提出の方法は、簡易簿記(10万円控除)、現金式簡易簿記(10万円控除)、複式簿記(65万円控除)の3種類となっています。

 

簡易簿記の場合には、4ページ目の貸借対照表は必要ありませんので、空欄で構いません。また現金式簡易簿記は、「所得税の青色申告決算書(現金主義用)」の用紙を使って申告します。この場合、決算書は計2ページのみとなります。ちなみに現金式簡易簿記での申告は、前々年度分の所得が300万円以下で、かつ現金主義による所得計算の申請があらかじめ行われていることが条件になります。

 

このほか、農業や不動産業を営んでいる場合にはそれぞれ専用の決算書が用意されています。

 

 

10-2 提出先と提出期間

確定申告の際には、この青色申告決算書と確定申告書B表を税務署に提出します。確定申告の提出期間は、通常2月16日から3月15日までです。ちなみに申告書を提出しても、税務署から納税通知などが送られてくるわけではありませんので、納税額が確定したら、自分で税務署や金融機関で納税します。

 

現在は税務署に足を運んで書類の授受を行わなくても、インターネットで申請手続きができるe-Taxもありますので、こちらを利用するのも便利でしょう。e-Taxは国税庁のホームページから利用することができます。

 

 

11 個人事業主の税金

 

個人事業主が支払う税金には、所得税のほか、個人住民税と個人事業税があります。

 

 

11-1 個人住民税とは?

 個人の1年間の所得に対する税金

で、都道府県と区市町村に納めるものです。
 個人住民税には、①所得割、②均等割、③利子割、④配当割、⑤株式等譲渡所得割があり、①と②については、1月1日現在において日本国内に住所を有する人が対象になります。したがって、海外に勤務することになった場合など、1月1日現在において日本国内に住所を有しない場合は課税の対象外になります。

 

 

 

 

11-2 個人事業税とは?

 

個人の1年間の事業で得た所得に対する税金で、都道府県に納めるものです。
 地方税法における法定業種に該当する事業を行っている場合に、業種ごとに定められた税率により課税されます。

 

 

12 個人事業税の計算

 

ここでは個人事業税の計算方法について見ていきましょう。

 

 

12-1 法定業種と税率

事業税を規定している地方税においては、主に下記の法定業種と税率が定められております。

 

【法定業種と税率】

  • 第1種事業:税率5%…物品販売業、運送取扱業、飲食店業、不動産売買・貸付業、駐車場業、製造業、印刷業、問屋業、広告業、物品貸付業など
  • 第2種事業:税率4%…畜産業、水産業、薪炭製造業など
  • 第3種事業:5%…医業、弁護士業、公認会計士業、不動産鑑定業、司法書士業、社会保険労務士業、美容業、コンサルタント業、デザイン業など(3%…あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復、その他の医業に類する事業など)

 

 

政策的な配慮から、林業や鉱物の採掘事業などの特定の事業と国際間を移動するような国際運輸業については、個人事業税が非課税となっております。

 

 

12-2 不動産貸付業と駐車場業の認定基準

原則として、事業と認定されなければ、個人事業税の対象とはなりません。
 不動産貸付事業と駐車場業に関しては、規模等に基づく具体的な事業認定基準がありますので確認していきましょう。

 

【不動産貸付業と駐車場業の事業認定基準】

種類・用途 貸付規模(空室も含みます。)
不動産貸付業 建物 一戸建て住宅 10棟以上
住宅以外の独立家屋 5棟以上
上記以外 10室以上
土地 住宅用 10契約以上又は貸付面積2,000㎡以上
上記以外 10契約以上
上記不動産を複数種類保有している場合 上記総合計が10以上
上記以外 貸付面積が600㎡以上、かつ、賃料収入が年間1,000万円以上
劇場、映画館、ゴルフ練習場など
一定規模の旅館、ホテル、病院など
駐車場業 寄託を受けて保管行為を行う駐車場 駐車可能台数が1台以上
建築物・機械式等である駐車場
上記以外 駐車可能台数が10台以上

 

共有物件であっても、共有物件全体によって認定します。

 

個人事業税においては、1,000万円という金額基準があることから、所得税において、事業的規模とされない場合であっても、個人事業税では、事業と認定されることも想定されます。

 

 

12-3 所得税における所得計算との違い

下記項目については、所得税と事業税の取り扱いが異なるため、所得税において計算した所得に対して、一定の調整を行う必要があります。

 

【調整が必要な項目】

①不動産業者の土地譲渡益の分離課税に伴う調整

→個人事業税では、分離課税が適用できないため、分離以前の事業所得により算定します。

 

②社会保険診療等に係る所得の課税除外

→個人事業税では、自由診療部分のみが対象となります。

 

③青色事業専従者控除等

→所得税において、青色専従者控除等を適用しなかった場合でも、個人事業税では、適用できる場合があります。

 

④外国税額の必要経費算入の調整

→個人事業税では、税額控除ができないため、必要経費に算入します。

 

⑤青色申告特別控除(10万円or65万円)の不適用

→個人事業税では適用できないため、加算する必要があります。

 

 

12-4 各種控除項目

 

個人事業税には、事業所得又は不動産所得の金額から差し引くことができる控除項目が設定されております。

 

【各種控除項目】

①損失の繰越控除

→青色申告者で、事業の所得が赤字(損失)になった場合、翌年以降3年間、損失の繰越控除ができます。

 

②被災事業用資産の損失の繰越控除

→白色申告者で、震災・風水害・火災などによって生じた事業用資産の損失の金額がある場合、翌年以降3年間、損失の繰越控除ができます。
たな卸資産・固定資産などが対象となります。

 

③事業用資産の譲渡損失の控除と繰越控除

→事業の用に供する資産(土地、家屋等を除く。)を譲渡したことにより生じた損失については、事業の所得の計算上、控除することができます。さらに、青色申告者の場合は、翌年以降3年間、損失の繰越控除ができます。

 

④事業主控除

→年間290万円控除することができます。事業を行った月数が1年未満の場合には、月割額を控除できます。

 

 

12-5 青色専従者等の範囲

青色専従者とは、事業を行う個人と生計を一にする親族(年齢が15歳未満である者を除きます。)でその事業に専ら従事する者をいいます。なお、専ら従事するとは、その年を通じて、6ヶ月を超える期間従事することをいいます。
ただし、次の者は事業に従事していても、その該当する期間は、事業に専ら従事する期間には該当しないため注意が必要となります。

 

【専ら従事する者に該当しない場合】

 

  • 学校の学生又は生徒の場合(ただし、次の場合を除きます。①夜間に授業を受ける者で昼間をその事業に従事する者又はその逆の者、②一定の学校の生徒で常時修学しない者、③その他事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者)
  • 他に職業を有する場合(ただし、次の場合を除きます。①その職業に従事する期間が短い者、②その他事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者)
  • 老衰その他心身の障害により事業に従事する能力が著しく阻害されている場合

 

 

12-6 損益の合算又は通算

 

不動産事業とその他事業を合わせて行っている場合には、不動産所得の計算上生じた所得又は損失と事業所所得の計算上生じた所得又は損失とを合算又は通算して算定します。

 

12-7 以上の事業を行っている場合の取り扱い

 

第1種事業、第2種事業又は第3種事業のうち2種類以上の事業を合わせて行っている場合には、各種控除後の所得をそれぞれの事業に係る各種控除前損益に基づいて按分します。実際の税額計算は按分された所得にそれぞれの事業について定められた税率を乗じて計算します。

 

12-8 税額の算出

 

地方税法においては、個人事業税の標準税率と制限税率が定められており、各都道府県は標準税率×1.1を超えない率で課税することができます。
東京都においては、2-1法定業種と税率に記載の標準税率が用いられております。
実際の税額の計算は下記のようになります。

 

 

〔計算式〕

 

(事業所得又は不動産所得+所得税の青色事業専従者等給与額-個人事業税の青色事業専従者等給与額+青色申告特別控除額-各種控除額)×税率

 

〔具体例〕

 

不動産賃貸業の所得  755万円(確定申告における所得金額)
青色事業専従者給与   0万円(30万円支払ったが、扶養控除とした。)
青色申告特別控除    65万円
年間を通して事業を行っていた。

 

(755万円+0円-30万円+65万円-290万円)×5%=25万円

 

 

13 個人住民税と個人事業税の納付

確定申告又は年末調整された金額に基づき、原則として6月・8月・10月1月の年4回、それぞれ月末までに納付しなければなりません。なお、特別徴収の場合には、6月から5月までの給与から天引きされ、会社から各区市町村に対して納付が行われます。

 

 

13-1 個人住民税

また、個人住民税は賦課課税方式となり、区市町村が賦課決定することになっております。しがたって、区市町村から個人住民税額が記載された賦課通知書が送付されてくることになります。

 

 

13-2 個人事業税

確定申告された金額に基づき、原則として8月・11月の年2回、それぞれ月末までに納付しなければなりません。
また、個人事業税は賦課課税方式となり、区市町村が賦課決定することになっております。しがたって、区市町村から個人事業税額が記載された賦課通知書が送付されてくることになります。

 

 


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