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ベトナム女性初のビリオネア、グエン・ティ・フオン・タオとは

(出典:Người giữ lửa khát vọng bay xa cho Vietjet)
(出典:Người giữ lửa khát vọng bay xa cho Vietjet)

3月に発表されたフォーブス世界長者番付で、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツやアマゾン創業者ジェフ・ベソスと並んで一人のベトナム人女性が名を連ねました。グエン・ティ・フオン・タオ(Nguyen Thi Phuong Thao)です。タオ氏は格安航空会社ベトジェットエアの社長兼CEOで、東南アジアの女性として自力で成功した初のビリオネア(=総資産10億ドル以上)となりました。彼女はいかにして大富豪の地位に登りつめたのでしょうか。

 

 

目次

  1. 1 グエン氏の略歴
  2. 2 ベトナム初の民間航空会社を設立
  3. 2-1 国営企業が独占していたベトナム航空業界
  4. 2-2 ビキニCAで一躍話題に
  5. 2-3 株式公開で総資産10億ドル超え
  6. 3 女性の活躍が進むベトナム
  7. 3-1 「アジアで影響力のある女性起業家」にベトナムから3人
  8. 3-2 ベトナム女性は働き者?

 

1 タオ氏の略歴

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(出典:Viet Today)

 

1970年生まれのタオ氏は、18歳の時にペレストロイカ運動※の真っ只中にあったソビエト連邦(現ロシア)に留学。モスクワにあるメンデレーエフ記念化学工科大学とプレハーノフ経済大学で金融学と経済学を専攻しつつ、食料不足や貧困を目の当たりにしたタオ氏は輸入ビジネスを始めるようになります。

 

日本、香港、韓国などアジア諸国から衣料品、オフィス機器、肥料などをモスクワで販売し、3年間で100万ドル以上を稼ぎ出します。

 

大学卒業後はベトナムに帰国し、輸入ビジネスで得た資金を元手にベトナム初の民間銀行であるテックコムバンク(Techcombank)とベトナム国際銀行(VIB)に出資。その後、ハノイに民間航空会社ベトジェットエアを設立しました。

 

※ペレストロイカ運動とは、ソ連のゴルバチョフ政権が掲げ、1985年から始まった改革。当初は社会主義経済の停滞を打破するための市場経済導入を柱とした経済改革を意味し、「上からの改革」として始まったが、すぐに複数候補者選挙制などの政治改革にまで広がり、さらにグラスノスチ(情報公開)や歴史の見直しなど全面的な改革を開始。スターリン体制から続くソ連の硬直した政治と社会の脱却をめざしたが、社会主義体制そのものを否定するものではなく、その生き残りを図ろうとしたものだった。(参照:世界史の窓

 

 

2 ベトナム初の民間航空会社の設立

1990年代、工業化が進むマレーシアと比べてベトナム経済は遅れていました。しかし1986年にベトナム政府がドイモイ政策※により市場経済を開放後、中国との国交正常化やIMFによる融資が再開するなど着実に経済成長路線を歩み始めました。

 

 

2-1 国営企業が独占していたベトナム航空業界

タオ氏は当時国営航空会社が業界を独占していたことに着目し、業界の競争を活発化させるために民間航空会社の設立を考えます。政府と交渉して規制緩和を進め、政府が業界を開放することを期待して、航空会社運営に必要な申請書を提出。2007年に会社設立をすることが認められ、2011年にようやく運行が開始されました。

 

 

2-2 ビキニCAで一躍話題に

タオ氏は従来のベトナム人とは一線を画す自由な発想でベトジェットエアを成長させました。

 

2012年、ベトジェットエアは顧客を引き付けるために、ビキニを着たモデルを広告に採用しました。さらにビキニ姿の客室乗務員が機内でダンスをするサービスも開始。これがたちまち話題となり、これがショーの動画や画像がSNSを通じて世界中に拡散され、国内メディアのみならず海外メディアからも大きく注目されました。

 

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(▲ビキニ姿で踊るベトナム人の客室乗務員 (出典:Thị Trường Tài Chính Online))

 

しかしベトナム当局は、機内の保安要員として適切でないと問題視。ベトジェットエアに対して最終的に地方航空規制違反による880ドル(約10万円)の罰金を科しましたが、タオ氏はインタビューで

 

「人は誰でも自分の好きなものを着る権利を持っているのです。ビキニだっていいし、伝統的なアオザイだっていいし。世間がうちのエアラインを“ビキニ嬢のイメージ”と言っているとしても私たちはまったく気にしません。常に保守的だと言われてきたベトナムにおいて、女性たちがやっとその殻を破って力強く立ち上がった。ビキニ嬢たちはその象徴だと考えています。皆さんがハッピーなら私たちもハッピーなのです」とコメント。

 

タオ氏は「会社の女性の扱い」についてベトナムもっと進歩的になるべきだとし、「ベトナムは、女性がより簡単に働き、より大きな役割を果たすことができる国になることを望んでいる」と語りました。

 

ベトジェットエアでは現在、1日に300便を運航、またアメリカ行き便の40%以上を占めています。

 

 

2-3 株式公開で総資産10億ドル超え

ベトジェットエアが新規株式公開(IPO)※実施後、タオ氏の総資産は12億ドル(1336億円)を突破し、ビリオネアとなりました。情報分析会社ブルームバーグによればタオ氏は同社株式の95%を所有しており、今後30%の株式を売却する可能性があるとしています。

 

現在ベトジェットエアはサオ、バンコク、シンガポールなどアジア全域で47カ所に運航しています。彼女は約150の目的地までの飛行を持つ世界最大の長距離航空会社であるドバイに拠点を置く航空会社の成功をモデルにして、同社を「アジアのエミレーツ航空」にしたいと考えています。

 

※ドイモイ政策とは現代のベトナムで1986年から採用された改革路線のこと。トイ=モイとはベトナム語で「刷新」の意味で、ベトナム社会主義共和国政府が掲げた社会主義一党独裁の下での市場経済導入を中心とした経済再建政策のこと。 ベトナム戦争後、親ソ連路線をとってカンボジア内戦では親中国のポル=ポト政権を倒すため、1979年にカンボジアに侵攻し、反発した中国との間で同年2月、中越戦争がおきるなど、戦時態勢が続き、国民生活を圧迫した。また南北統一後、全土の社会主義化を進めようとしたが、生産は停滞し、経済成長が止まり、政策の転換を余儀なくされた。(参照:世界史の窓

 

 

3 女性の活躍が進むベトナム

タオ氏は、ベトジェットエアを運営するかたわら、都市開発や証券会社の会長を兼任するなど多彩な実業家としても知られています。

 

建設関連会社ソビコ・ホールディングス(Sovico Holdings)の会長を務め、株式の90%を保有。ソビコ社は、ホーチミン市に建設中の、商業センターを含む総面積65ヘクタールにおよぶコンドミニアム開発プロジェクト「ドラゴン・シティ」へ90%を出資しています。

 

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(▲ドラゴン・シティ事業の建設予定図 (出典:ARCHISCENE))

 

さらに、国内最大規模のリゾート地3か所(フラマ・リゾート・ダナン=Furama Resort Danang、エバソン・アナ・マンダラ・ニャチャン=Evason Ana MandaraNhaTrang、アンラム・ニンバンベイ・ヴィラズ=An Lam Ninh Van Bay Villas)の株式を保有しているほか、ホーチミン市開発銀行(HD Bank)の株式20%を保有しています。(参照:VIETJO

 

マレーシア商業国際貿易商銀行(CIMB)のアナリストNguyen氏によれば、タオ氏はベトナムにおける市場シェアの30%以上をこの数年間で確保しているとしながら、その人柄については「他の裕福な人たちとは違い、実際にはベトナムでは非常に静かです」と語ります。

 

3-1 「アジアで影響力のある女性起業家」にも選出

タオ氏は2016年のフォーブスが選ぶ「アジアで影響力のある女性起業家トップ50」にも選出されました。

 

またタオ氏のほか、ベトナムからはティー・エイチ・ミルク(TH Milk)のタイ・ティ・フオン会長、フーニュアン・ジュエリー(PhuNhuan Jewelry)のカオ・ティ・ゴック・ズン会長の2人が選ばれました。

 

タイ・ティ・フオン氏は2009年に乳製品製造のTHミルクを設立。粉ミルクに代わる飲用牛乳の開発に注力。2015年には5億ドルの酪農場から始まって、ロシアの農業に最大27億ドルを投資。

 

フオン氏は1年に35万頭の牛から180万リットルの牛乳を生産することを目標に掲げています。

 

同社の2015年の売上高は2億1500万ドル、利益は4500万USD(約49億5000万円)です。フオン氏は、1994年、総資産約30億ドルの株式を保有する商業銀行であるBac A銀行を設立。THグループの投資および財務コンサルタントとして機能しています。また両方の企業の過半数の株主です。

 

カオ・ティ・ゴック・ズン氏は1998年にフーニュアン・ジュエリーを設立しました。創業時は1店舗でしたが、現在3000人以上の従業員と200店舗を持つベトナム最大のジュエリーブランドに成長。2015年のPNJの売上高は3億5,000万ドル、利益は2300ドルでした。ズン氏はPHJのCEO兼会長で、同社株式の17%を保有しています。

 

同社は自社製品を製造・販売しているためベトナムのティファニーと呼ばれることもあります。

 

 

3-2 ベトナム女性は働き者?

ベトナムでは企業の取締役に就く女性の割合は30%ほどで、北欧諸国よりは低いものの、欧米を上回っています。なお、女性の上級管理職の割合は、G7諸国よりもベトナムを含むASEAN諸国の方が高いのです(一番高いのは東欧。国別ではロシアに続きフィリピン。)また、ベトナムは女性のCEOの割合が25%とアジア太平洋地域では最高です。(Daijob.com

 

タオ氏をはじめ、次々と頭角を現してきたベトナム企業。今後は東南アジア企業に注目が集まりそうです。

 

※新規株式公開(IPO)とはIPOとは、「Initial(最初の)Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、未上場企業が、新規に株式を証券取引所に上場し、投資家に株式を取得させることを言う。株式上場に際し、通常は新たに株式が公募されたり、上場前に株主が保有している株式が売り出される。これら株式を証券会社を通じて投資家へ配分することをIPOという。企業にとっては上場することにより、直接金融市場から広く資金調達することが可能となり、また上場することで知名度が上がり、社会的な信用を高めることができるといったメリットがある。(参照:カブドットコム証券

 

 


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