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株式会社の増資・減資

会社の事業規模の拡大に伴い、資本金の額を増やす「増資」の必要性が生じることがあります。また、これとは逆に、資本金の額を減少させる「減資」が必要とされる場合もあります。

 

増資には積極的な意味が感じられますが、減資には消極的なイメージが伴います。

 

ただ、減資と一口にいっても、ただ単に企業規模の縮小といったマイナス面があるだけでなく、税制面や欠損の補填といった、事業の戦略的観点から減資を行う事こともあります。

 

何れにしても、株式会社の増資・減資は、会社法上の法令に基続いた厳格な手続きが求められるので、会社経営の戦略的増資・減資も含めた知識と経験を有する専門家との相談のもとに行う必要があります。

 

 

目次

  1. 株式会社の増資・減資とは
  2. 増資で得た資金は返済の必要がない
  3. 増資の「株主割当増資」と第三者割当増資」の方法
  4. 増資手続きの概要
  5. 増資では、発行可能株式数に注意
  6. 増資に必要な手続き書類
  7. 減資の効果
  8. 実質上の減資、名目上の減資とは
  9. 減資手続きの概要
  10. 資本金減少に際する債権者保護手続き

 

株式会社の増資・減資とは

株式会社の資金需要に応える方法には、金融機関からに融資や借金等が考えられますが、その他に、株式を新たに発行して株式募集による既存株主や第三者引き受けによる出資を受けて、株式会社の資本金の額を増加させる資金調達方法がり、これを「増資」と言います。

 

またこれとは反対に、会社の資本を減少させることを「減資」と言います。

 

増資で得た資金は返済の必要がない

株式会社の増資・減資

会社に資金需要が生ずる場合は様々ですが、資金需要を外部から調達する場合には、融資や借入(社債発行等)の他に、既存の株式の第三者割当による会社の資本を増加させたり、既存株主に株を引き受けを求める「増資」と言う方法があります。

 

増資の特徴は、増資で得た資金は、融資や借り入れで調達した資金と異なり、返済する必要がないことです。会社経営者は、この資金を使い、事業経営を拡大・充実させ、出資者(株主)にインカムゲインである配当金を分配します。

 

ただ、日本の大多数の株式会社は、株主と経営者が同じで人物であるいわゆるオーナー会社であるため、増資による実質的なメリットは、対外的な信用力の強化やオーナーサイドの経営権の基盤強化等が主なものと考えられます。

 

増資の「株主割当増資」と第三者割当増資」の方法

株式会社が増資を行う方法として、既存株主に対して、株主の保有株式数に応じた割合で新しき発行する株式を均等に引き受けてもらう「株主割当増資」と出資者から資金の払込を受けて新たに株式を発行し、会社の資本金額を増加させる有償増資である「第三者割当増資」の二つの方法があります。

 

ただ、新たに第三者割当増資を行う場合、既存株主の株式保有割合が変化し、これにより株主の会社経営に関する影響力が低下することも考えられるので注意が必要です。

 

尚、増資に際しては、現金により出資が原則ですが、会社設立の際に定款に変態設立事項に定めた「現物出資」ように、現金でなくても、ある一定の要件をクリアすれば増資として認められます。

 

増資手続きの概要

株式会社と言っても超巨大会社から零細中小会社までその規模や組織は様々ですが、ここでは、日本における株式会社の大半を占める中小零細企業の譲渡制限会社における増資手続きの概要を記載します。

 

①株主総会決議において、募集株式の発行を決定します。

 

②株主に対して、募集株式発行(増資)決定を通知します。

 

③株主からの株式取得の申込みを受けつけ、出資金の払い込みを受けます。現物出資の場合は、物の引き渡しを受けます。

 

④株式会社の本店を管轄する法務局で資本金額と発行株式数の変更登記を行います。

 

増資に関する登記手続きにかかる登録免許税は、申請一件につき増加した資本金額に対して1000分の7で、これによって算出した額が、3万円に満たない場合は、一律3万円になります。

 

法務省:商号登記・法人登記申請

 

http://www.moj.go.jp/ONLINE/COMMERCE/11-1.html

 

国税庁登録免許税

 

https://www.nta.go.jp/taxanswer/inshi/7191.htm

 

増資では、発行可能株式数に注意

増資は、新たに株式を発行し、資本金の額を増加させ、会社の経済的基盤を強くすることと言えますが、増資の場合、「発行可能株式数」に注意する必要があります。

 

発行可能株式数とは、その名の如く、株式会社が発行できる株式数の総数のことですが、この数は登記事項です。

 

この結果、株式会社は、発行可能株式数を超えて株式を発行すること(増資する)はできません。増資する前には、必ず定款に記載された発行可能株式数を確認し、その総数を超える増資を行うためには、発行可能株式総数の変更登記を行う必要があります。

 

増資に必要な手続き書類

株式会社の増資・減資_03

増資手続きに必要な書類は、①増資を決議した株式総会議事録②取締役会又は、取締役決議書③株式申込書④払込証明書=株式引受人の名前、払込金額が分かる金融機関の通帳のページのコピー、通帳の支店名、口座番号のページのコピー、資本金額の計上に関する証明書、変更登記申請書です。

 

尚、会社設立時の資本金の払い込みは、発起人の個人口座への払込でしたが、増資の場合は、既に会社が出来上がっていて、当然会社名義の口座が存在するので、出資金は会社の口座に払い込みます。

 

減資の効果

減資とは、資本金の額を減少させることです。例えば、資本金額100万円の株式会社を資本金800万円の会社にすることを言います。

 

何故このような減資を行うかについて、最も減資の有効性として挙げられ、しかも基本的な事例となるのが、赤字解消への効果です。

 

例えば、資本人額が1000万円の会社で赤字が300万円あった場合、資本金のうちの300万円を赤字と相殺して、資本金額を700万円に減資すれば、赤字経営ではなくなります。

 

実質上の減資、名目上の減資とは

減資には、実質上の減資と名目上(形式上)の減資があります。

 

実質上の減資は、株主に会社資本を払い戻す減資の方法で、実質上の減資によって、会社財産が縮小し、会社の規模が縮小されます。

 

これに対して名目上(形式上)の減資とは、会社財産を株主に払い戻すことはなく、計算上の会社資本の金額を減少させることです。

 

名目上の減資は、計算上の減資なので、会社の帳簿上の資本金の額は減少しますが、会社財産そのもの減少はありません。

 

例えば、会社の経営不振が続き、会社の財務状況が、会社が保有する会社財産が減少して純資産額が資本金額を満たさない状態の資本欠損状況にある場合に、会社の資本金額を減少させ、純資産額以下にする場合等が考えられます。

 

減資手続きの概要

株式会社の増資・減資_04

①原則として、株主総会における特別決議を行います。

 

この決議に際しては、株主総会の特別決議により、1.減少する資本金の額、2.減少する資本金の額の全部または一部を準備金とする時は、その旨及び準備金とする額の提示、3.資本金の額が減少する効力発生日を決定します。

 

尚、特別決議を要せず、普通決議で足りる場合もあります。「資本金の額減少を定時株主総会で決議する場合において、減少する資本金の額が、定時株主総会の日(会計監査人設置会社においては、取締役会による計算書類の承認日)における欠損額を超えない時」の減資決議は、普通決議で足ります。

 

また、株式の発行と同時に資本金の額の減資を行うための要件は、当該資本金の額の減少の効力発生日後の資本金の額が当該日前の資本金の額を下回らないときは、取締役の決定(取締役会設置会社の場合は、取締役会の決議)で足りるとされています。

 

②債権者に対して、1か月以上の期間をおいて、減資公告及び催告を行います。

 

③資本金の減少額等の変更登記を行う

 

管轄法務局において、資本金減額に伴う変更登記を行います。登記手続きにかかる登録免許税は、申請1件につき3万円です。

 

資本金減少に際する債権者保護手続き

株式会社が減資を行うためには、会社債権者を保護するために、会社債権者に対する一定の期間(1ヶ月以上)を置いての減資公告、催告を行い、この間に債権者から意見を求める必要があります。これを債権者保護手続き」と言います。

 

債権者保護手続きの方法は、官報に公告し、かつ、知れている債権者に対し、格別に催告する債権者保護手続きが必要です。公告、催告の内容は、1.当該資本金額減少の内容、2.最終年度に係る貸借対照表またはその要旨が公告されている場合における官報の日付け及びページ等の会社の計算書類に関する事項、3.会社債権者が一定の期間内において意義を述べることができる旨を表示する必要があります。

 


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