電子定款認証の特徴は、従来の紙媒体で作成した定款に署名・押印することに代わり、電子文書に電子署名をなすことと、法務省の登記供託オンラインシステムの申請用総合ソフトを利用してワード等の文章作成ソフトで作成した定款の文書をPDF化し送信することにあります。
これは、2002年1月から定款の認証機関である公証人役場で電子公証サービスが開始されたことを受けて可能になりました。
電子定款の認証手続きは、それまでの紙媒体の定款とメリットやデメリットについて異なる特徴を有しているので、その概要を説明します。
目次
- 電子定款は、紙の定款作成より4万円安くなるが
- 自分で電子定款を作成するための手順
- 自分で電子定款を作成するための手順
- 電子定款認証に為に必要な証明書、ソフトウエアとその費用
- 指定公証人でなければ電子定款の認証は行えない
- 電子定款でも、紙媒体の謄本は必要
電子定款は、紙の定款作成より4万円安くなるが
電子定款の認証では、従来の紙媒体の定款認証と比較して、4万円安くなります。何故なら、電子定款の認証では、紙媒体を使用しないので、印紙税の4万円が不要になるからです。ただ、電子定款認証のための様々な業務に手間がかかり、準備しなければならない各種ソフトウエア、機器があるので、紙の定款より結果的には、費用が多くかかる場合もあることに注意して下さい。
税金の申告に関して現在では、E-TAXシステムで電子申告が盛んに行われています。ただ、これらの電子申告に十分な経験がなく、電子申告に必要な機器やソフトウエアが揃っていない方や全くの未経験者や電子申告に関する知識の乏しい方は、会社設立の専門家である行政書士等に依頼する方が、かえって費用が安く済み、電子定款の認証も迅速に行うことが出来ると言えます。
電子定款と紙媒体の定款作成費用の比較
電子定款による定款作成認証 | 紙媒体の定款作成認証 | |
公証人役場での定款認証費用 | 50、000円 | 50、000円 |
定款にはる印紙代 | 0円 | 40,000円 |
定款の謄本取得費 | 1,900円 | 1,900円 |
登録免許税 | 150,000円 | 150,000円 |
合計金額 | 201,900円 | 241,900円 |
尚、定款謄本取得費に関しては、定款の1頁当たりの謄本取得が250円なので250円×定款の頁数で算出します。電子定款の場合は、全て電子定款にすればこの費用は不要です。
また、紙の定款では、印鑑証明費の1通200円から400円ほどが発起人の数だけ発生しますが、これを全て電子署名で行えば費用は発生しません。また、登録免許税は、電子定款、紙媒体の定款認証に関わらず、資本金額に1000分の7をかけた金額で、その金額が150,000円に達しない場合は、一律150,000円になります。
以上から、電子定款の認証には、紙媒体の定款で必要な印紙代が不要であるため、4万円得すると考えられますが、先述のように、電子定款を作成するには様々な複雑な手順を踏む必要があり、経験の乏しい一般の方が電子定款を作成するには、かなりにハードルの高い手続きと言えます。
自分で電子定款を作成するための手順
電子定款の認証を受けるためには、様々な複雑な手順を踏むことが必要で、これも1つの電子定款認証の特徴と言えますが、それでも電子定款の認証を自分で行いたい方のために、ここで電子定款の認証手順の一連の流れを記載します。
①まず、個人情報が証明書が電磁的に情報化された住民基本台帳カード(住基カード)を市役所で取得します。
②住基カードには電磁的記録が格納されているので、その個人証明書情報を読み取るカードリーダライタを購入する必要があります。
③ワード等の文章作成ソフトで作成した定款をPDF化するための変換ソフトを購入する必要があります。
④定款をPDF化し、PDFに変換した定款に電子署名を施すためのプラグインソフトを用意します。
⑤法務局の登記供託オンライン申請システムを利用するために、ユーザー登録を行います。
法務省の登記供託オンラインシステムの利用には、各種ソフトウエアが必要なので、それらのソフトウエアをダウンロードしてパソコンにインストールします。
⑥電子定款を作成し、公証人役場と連絡を取り、定款に誤りや不都合な個所がないかのチェックを受けます。
⑦公証人が定款に誤りや不都合箇所がないことを認めれば、法務省の登記供託オンライン申請システムを利用して、電子定款をアップロードします。
⑧電子定款を公証人役場に行き、電子定款の認証を受け、認証済みの電子定款と定款の謄本を請求し受領します。
以上が電子定款認証のために手続きの概要です。
このように一連の電子定款認証手続きは煩雑で、しかも電子定款認証に必要な有料ソフトウエアや機器が必要なので、電子定款認証手続きを自分で行う際には、費用対効果対効果を考慮して行う必要があります。
電子定款認証に為に必要な証明書、ソフトウエアとその費用
電子定款の認証には、当然ですが、まず、電子定款を作成する必要があります。電子定款作成に必要な証明書やソフトウエアの取得も、紙媒体の定款認証にはない電子定款の認証に係わる特徴と言えます。
ここでは、電子定款認証の前提になる電子定款作成に必要なソフトウエア等とその費用について記載します。
①電子定款の作成には、まず、住民基本台帳カード(住基カード)を入手する必要がります。住基カードの取得費は、公的個人認証サービスを利用する場合は、1通500円です。
②ICカードリーダライタを用意する。ここ機器は、電磁化された個人情報をカードから読み取るための機器で、最低2000円位から6000位するものまで各種あります。
③電子定款では、ワード等の文章作成ソフトで作成した定款をPDFに変換し、電子署名を行う必要があります。一般に使用されているパソコンでは、無料のAdobeReaderをダウンロードすれば文章をPDFに変換できますが、電子定款の場合は、電子署名することが必要なので、Adobe Acrobat 9.0 Standard等の有料ソフトが必要になります。
この購入金額は、36、000程になります。電子署名のためのPDF変換ソフトは他のメーカーも揃えていますが、今のところAdobe社のソフトが独占状態と言えます。
電子定款にはPDFに変換したファイルに、電子署名を付することが必要ですが、この時「プラグインソフト」が必要です。プラグインソフトも各ソフトウエアメーカーから販売されていますが、法務省が提供しているソフトは無料でダウンロードすることができます。
先述の電子定款認証に対する面倒な手続きや各種ソフトウエアの購入、入手業務を考慮すれば、必ずしも個人が専門家に依頼することなく、電子定款の認証を行う事にメリットが感じられないと言わざるを得ません。また、これらの機器やソフトウエアは、会社や法人を今後作らなければ、無用の長物となることが十分考えられます。これも、電子定款認証のマイナスの特徴と言えます。
指定公証人でなければ電子定款の認証は行えない
電子定款の認証は、どの公証人でも行なえるわけではなく、法務大臣から指定公証人として指定されたものに限定されます。最近は殆どの公証人役場に指定公証人がいると思いますが、念のために、依頼する公証人役場に指定公証人がいる確認して下さい。またこの際に、電子定款の認証手続きであることを公証人に伝え、申請用総合ソフトを利用して電子定款を送信する日時を伝えておけば、その後の定款の事前チェック等の手続きがスムーズに進行します。
電子定款でも、紙媒体の謄本は必要
電子定款では、指定公証人による定款認証が必要ですが、これが完了すれば、公証人役場に出向いて定款を受け取る必要があります。この定款受け取り業務は電子定款認証でも紙媒体の定款認証でも異なりません。ただ、電子定款の特徴として、定款は電子情報で渡されるので、受け取りに際して、フロッピーディスクやCD-R、USBメモリ等の電子記録媒体を持参する必要があります(公証人役場で用意する場合もあります)。
また、電子定款の特徴として紙媒体の定款の原本は存在しませんが、電子定款受け取り時には、電子定款と同一の情報の提供とする、紙媒体の定款の謄本を取得することができます。この紙媒体の定款の謄本は、会社保存用と登記手続き用に2通取得しておくとよいでしょう。
なお、電子定款の受け取りには、発起人全員の印鑑証明書を準備し、電子署名を行った発起人以外の発起人の委任状も忘れずに持参して下さい。