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はじめて起業する方向け 会社設立の手引き

人生の中で起業する機会はそう多くありません。誰もが最初は起業初心者で、起業して大きな成功を収めるケースはまれでしょう。日本は欧米と比べれば起業率は低いですが、最近は働き方改革が追い風となり、ダブルワークや副業などを認める企業も増え、独立して会社を設立する気運も高まっています。
しかしながら法的な手続きはマニュアル化されているものの、実際のビジネスの作り方について誰も教えてくれません。そこで本記事では、はじめて起業する方向けに、ビジネスとはどのように作れば良いのかということから、実際の会社設立の手続きまで、起業の前提となる知識について説明します。会社設立を検討している方は是非参考にしてみてください。

 

 

1 会社設立の際のチェックポイント

まずは、漠然と起業したいと考えている方に向けて起業すると仕事や人生がどのように変わるのかについて見ていきましょう。

 

 

 

1-1 サラリーマンと働き方はどのように違うのか

まずは、サラリーマンの働き方と起業した場合の働き方の違いについて説明します。サラリーマンと経営者の働き方の違いは、経営者には労働規則が存在しないことです。サラリーマンの場合は会社と労働契約を結び、その契約は各種労働法によって保護されています。

 

一方で経営者は会社との間で経営者として働く委任契約を結びます。この委任契約には労働法の規制はありません。経営者には最低賃金も、労働時間も有給休暇の概念も無いのです。よって、会社が儲かっていなければ最低賃金を割って働かなければならないこともありますし、逆にほとんど仕事をせずに給料をもらうこともできます。

 

また、ビジネスの歯車を回すことが従業員の仕事ですが、経営者の仕事はビジネスの歯車がきちんと回るように仕組みを整えることです。よって、働き方も経営者と従業員では少し異なります。従業員の場合は与えられた仕事を自分の裁量でこなさなければなりませんが、経営者の場合は人に仕事を任せるのが仕事になります。

 

以上のように、自由な反面、儲かっていないときの不自由さを抱えているのが経営者です。

 

 

 

1-2 人生設計についてどのように考えるべきか

人生設計の仕方についても考える必要があります。従業員として働いていると、定年退職まで、転職を込みで待遇の良い会社に勤めて、定年退職後は年金で生活するというのが1つのオーソドックスな人生プランになります。今では終身雇用の会社は減りましたが、それでも定年まで勤めあげれば老後の心配はしなくても良いという会社は今も存在します。

 

一方で経営者には定年退職という概念はありません。自分で仕事を辞めると決めたときが退職の時期なので、70歳になっても80歳になっても続けることができます。いつまでも働き続けたいというなら、経営者というのはとても良い仕事だと言えます。また、会社がある程度大きくなって買い手がつけば、若くして巨万の富を築いてセミリタイアするという選択肢もあります。

 

経営者になると、自分のキャリアパスや老後の設計は自分自身で行わなければなりませんし、計画を間違えると本当は働きたくないのに死ぬまで働き続けなければならないということも起こり得るので注意してください。

 

 

 

1-3 起業におけるリスクとリターン

以上のように経営者になると、働き方や人生はどのように変わるのかについて説明してきました。経営者は自由度の高い働き方です。収益を生み出す仕組みさえできていればまったく働くことなく高収入を得ることができますし、自分の好きな事業や好きな取引先と仕事をすることができます。

 

ただし、自由度の高さは同時にリスクの高さでもあります。事業に失敗して、会社への融資に対して経営者個人で連帯保証人になっていれば、個人的に多額の負債を背負うことになるかもしれません。また、各種労働法が適用されないので仕事の仕方を間違えると、つらい働き方を強いられることになります。

 

以上が、経営者のリスクとリターンですが、サラリーマンとして働くリスクとリターンについても考慮するべきです。

 

まず、サラリーマンとして働くリスクは、働き方を決める主導権が従業員側にないことです。いくら成果を出していても決められた労働時間は働かなければなりませんし、年収にも限界があります。また、自分にとって嫌でも会社の人事や業務命令には従わなければなりません。一方で最低限の労働環境は保証されています。労働法によって最低限の待遇は保証されていますし、会社の都合で勝手に辞めさせられることはまずありません。

 

経営者として働くリスクとリターン、サラリーマンとして働くリスクとリターンを加味した上で、自分にとってどちらの働き方、人生が良いのかを考えてください。

 

 

2 会社設立で重要なビジネスモデルの探し方

1章でサラリーマンと経営者の働き方、人生の違いについて説明してきました。上記の違いを考慮した上で、なお起業したいという方が次のステップとして自分が起業するビジネスモデルをイメージする必要があります。本章ではビジネスモデルとはどのように探せば良いのかについて説明します。

 

 

 

2-1 ビジネスモデルをどのように探すのか?

ビジネスモデルと言われると、何かユニークなビジネスをしなければならないと思われるかもしれませんが、それほど難しいことではありません。自分がどのような業種、業態で起業したいかを決めるということで、その事業が特段ユニークでなければならないということはありません。むしろユニークすぎるビジネスは顧客を獲得するのが困難で売上をなかなか作ることができず、資金繰りを工面できずに失敗する可能性が大いにあります。

 

自分が仕事にしたいこと、自分が得意なこと、顧客が喜びそうなことの3点から、自分にどのようなビジネスができるか考えた方が良いでしょう。

 

  

2-1-1 自分が仕事にしたいこと

まず1つ目のポイントは自分が仕事にしたいことという観点からビジネスモデルを探すことです。一度起業すると仕事をしている時以外にも24時間常に仕事のことを頭の片隅に入れて生活することになります。よって、自分にとって興味が無いことや、好きでもないことを仕事にするのは非常に苦痛ですし、事業に対するコミットメントが低下して、失敗する確率が高くなります。自分が仕事にしたいことを起業のネタにする方が良いでしょう。

 

  

2-1-2 自分が得意なこと

2つ目のポイントになるのが、自分が得意なことをビジネスにした方が良いということです。今まで大工をしていた人がいきなり寿司屋として起業するのが困難なように、顧客の一定以上の品質のサービスを提供するためには、自分が得意なことをビジネスにする必要があります。

 

もちろん、経営者と実務の担当者には求められるスキルが異なるので、上の例で言えば、大工さんでも何百軒もの寿司屋を回っていて、売れる寿司屋と売れない寿司屋の違いが分かっているのであれば経営はできるかもしれません。ただし、寿司屋として寿司を握ったり、仕込みをしたりするのは寿司職人を雇うべきでしょう。多くの起業の場合は、経営者が実務を兼任します。

 

  

2-1-3 顧客が喜びそうなこと

3つ目にポイントになるのが、顧客が喜びそうなことをするということです。起業をしたい人はどうしても自分がしたいことはニーズがあるだろうと考えて事業化してしまいがちです。サービス作りには、自社ができる技術や世界観からサービスを作るプロダクトイン、消費者の二―ズから類推して流行しそうなサービスを作るマーケットアウトの2つの考え方がありますが、どちらの視点が欠けても良いサービスは作れません。

 

  

2-1-4 初期案に拘りすぎない

4つ目のポイントとして、初期案に拘りすぎないということが大切です。自分が頭の中で考えたビジネスモデルが成功するかどうかは実際に市場に出してみないとわかりません。はじめとは想定していたターゲットと違ったユーザー層にサービスが受けたり、サービス自体を変えてしまったりする場合もあります。そういった事も考慮して、初期案にこだわり過ぎず、後で方針転換ができるような余裕を持った計画をするべきです。

 

 

 

2-2 フランチャイズのメリット・デメリット

起業する際に、何もノウハウが無いという場合に有効なのがフランチャイズとして起業することです。フランチャイズとは、今ある店舗やブランドののれんを借りて始める商売のことを指します。代表的なのはセブンイレブンなどのコンビニやいきなりステーキなどの飲食店です。フランチャイズとして起業することによって、今までそのブランドや店舗経営のノウハウを教えてもらいながら経営することができます。

 

事業を安定的に立ち上げるという意味ではフランチャイズとして起業した方が良いですが、フランチャイズにはいくつかのデメリットがあります。まず、ロイヤリティーと言って、毎月の売上に対して何%かはフランチャイズの本部に対してお金を納めなければなりません。経営状態によってはギリギリ黒字でもロイヤリティーを支払うと赤字になってしまうという事態も考えられます。また、初期費用もフランチャイズへの加盟費用や研修費用が上乗せされるのでコストは高くなります。

 

また、経営自体も本部との契約に縛られてしまいます。営業時間や提供するサービス、接客の仕方など本部のマニュアル通りに経営しないと、フランチャイズ契約を解除されたり、違約金が発生する場合も考えられます。

 

事業を効率よく立ち上げるという意味でフランチャイズに加盟した方が良いですが、自由に経営するという意味では独自で事業を立ち上げた方が良いです。起業する際は、どのような経営がしたいのか、手持ちの資金と相談してフランチャイズに加盟するか否かを検討してください。

 

 

 

2-3 ヒト・モノ・カネを用意する

事業を立ち上げるときに意識しなければならないのが経営資源です。経営には「ヒト・モノ・カネ」という3つの要素があって、どれが欠けても企業は成り立たないと言われています。起業する際はヒト・モノ・カネともに十分ではない事が多いので、いかに最低限のヒト・モノ・カネを集めるのかということは非常に重要です。なお、ヒト・モノ・カネの何に気を付けなければならないのかは後で詳しく説明します。

 

 

 

2-4 最低限の死なない仕組みを作る

起業にあたって必要なのがリスクヘッジです。あえて、背水の陣をひいて事業に成功しないといけない状態を作り出す方が良いと思われるかもしれませんが、究極的に起業して成功するかどうかは確率の問題なので、いくら成功しそうなビジネスモデルを、成功しそうな組織で立ち上げたとしても、市場環境や競合の動向の外部環境が悪化したり、内部で不運な偶然が重なってしまえば簡単に失敗してしまいます。

 

アメリカの有名な起業家でもあり投資家でもある、ポール・グレアムはエッセイの中で「死なない」ことの重要性について説明しています。起業された会社は様々な理由で死ぬ(=廃業)するけれども、どのような理由が死ぬ原因になるのかはわからない。死なないようにすることが、起業の成功の秘訣だと説明しています(ポール・グレアム「死なないために」)

 

どうすれば、死なないようになるかは、各自にとって色々な受け止め方がありますが、1つ重要なことは安定した収入源と低い固定費です。企業が倒産する間接的な原因は、コア人材の退職、売上不振、予定外の費用の発生など色々な理由がありますが、直接的には事業資金がなくなったときが倒産するときです。逆に言えば、いくら事業が上手くいっていなかったとしても事業資金が存在する限り挑戦を続けることができます。

 

そして、そのためには安定した収入源と低い固定費が必要になります。安定した収入源とは売上をつくる活動を、ビジネスを始める前から行うということです。例えば、前職の取引先や友人達から先に注文を取っておいたり、クラウドファンディングで資金を集めたり(クラウドファンディングは、実質的に資金を集めているのではなく、予約注文を取るサービス)、創業当初から売上が発生するように前もって活動しておいた方が良いでしょう。

 

また、自分のやりたい事業と収益を確保する事業を意識することも重要です。例えば、IT起業して自社サービスを開発したいという場合でも、自社サービスの開発だけに拘らず、すぐにお金が入ってくるように受託開発なども並行して請け負った方が良いケースもあるでしょう。また、泥臭いと思われるかもしれませんが、事業が安定するまで営業時間外にアルバイトをすることなども検討した方が良いかもしれません。

 

低い固定費について、会社にかかる費用はもちろんのこと、重要なのは自分の生活費をいかに減らすのかということです。例えば、生活費で大きな割合を占めるのが家賃です。今の家賃から2万円低い物件に住むだけで年間24万円の節約になります。車についても手放すだけで、年間数十万円の費用を節約できるでしょう。また、外食を控えてお弁当を作ったり、飲み会などへの参加は必要最小限にしたりすることが重要です。

 

起業して、資金繰りが悪いときにまっさきにコストカットを検討するべきは自身の給料ですが、自身の給料をカットすることは実際には大変です。人は必要に迫られても急に自分の生活レベルを落とす事ができないからです。

 

起業のタイミングを一つのきっかけとして、はじめから生活にかかる固定費は落としておいた方が良いでしょう。

 

 

3 会社設立に必要な「ヒト」とは?

先ほど、起業するにはヒト・モノ・カネが必要になると説明しました。ここからは起業にあたって、ヒト・モノ・カネをそれぞれどのように集めれば良いのか具体的に説明します。まずは「ヒト」です。

 

 

 

3-1 創業は少数精鋭で行う

起業する際に注意するべき点として、創業は少数精鋭のメンバーで行った方が良いです。これにはいくつかの理由があります。まず、一つは単純に人件費の問題です。創業当初のビジネスは営業が1人から2人に増えから、売上が倍になるというわけではありません。むしろ人を雇ったけど、ほとんど売り上げは増えないということは往々にしてありえます。創業したての頃は見込み案件が少なかったり、営業の難易度が高かったりするのでただ人を集めれば良いというわけではありません。

 

また、船頭多くして船山を登るという言葉があるように、組織と意思決定に関わる人が多くなればなるほど、組織としてスピーディーな活動ができなくなります。創業したての会社で意思決定が遅いというのが事業の成長スピードと資金繰りを考えれば致命傷になりかねないので、少数精鋭での活動が望ましいです。

 

 

 

3-2 どのような人材を集めるべきか

では、創業の際に必要な人材はどのような人なのでしょうか。一般的に営業やマーケティングをして売上を作る担当をフロントオフィス、総務や経理、法務などの会社の事務作業に関わる担当をバックオフィスと言います。創業の際に集めなければならないのはフロントオフィスメンバーです。バックオフィスメンバーは会社の事業規模とともに大きくなるので、創業初期はほとんど仕事がありませんし、バックオフィスを効率化・外注できるサービスはたくさん存在します。よって、きちんと売上をつくれる人材を揃えた方が良いでしょう。

 

 

 

3-3 外注を効率的に使う

3つ目に外注を効率的に使うことも重要です。人を雇うということは、創業初期の企業にとって非常に大きなリスクです。一度社員として人を採用するとなかなか会社の都合で辞めさせることはできません。しかし、実際に人を雇ってみると、思った通りの仕事をしてくれない、能力が想定よりも低かった、給料に対する生産性が低いなどの自体は往々として発生します。

 

このようなリスクを回避するためには外注を効率的に使用することが重要です。ちょっとしたデザイナーやプログラマーならフリーランスでも様々な人材がいますし、クラウドソーシングを使えば雑用仕事を主婦などに発注することもできます。外注ならば正社員と違い、仕事単位で契約を解除することができますし、コスパが見合わないと思えば仕事を切ることができます。

 

外注を効率的に使うことによって、少数精鋭で効率的な組織運営が可能となります。

 

 

 

3-4 会社の意思決定方法を明確にする

学生時代の友人や前職の同僚など、何らかの友好関係がある人と起業するという人もたくさん存在するでしょう。起業をした場合、いくら仲の良い友達でも会社のことを巡ってケンカをすることもあります。そのときに会社の意思決定ができなくなると、人間関係だけではなく経営にも大きな支障をきたすことになります。創業メンバーのそれぞれを平等にするのではなく、最終的な意思決定は誰が行うのか、誰にどのような権限が与えられているのか明確にした上で組織作りを行うべきです。

 

 

4 会社設立に必要な「モノ」とは?

続いて、「モノ」について説明します。モノとは販売する商品やサービスをどうするのかということです。事業を運営するためには、売上を作る必要がありますが、売上を作るためにはモノにこだわることが非常に重要です。

 

 

 

4-1 モノとは何か?

まず、モノとは何かということについて詳しく説明します。モノとはサービスや商品のことだと説明しました。ビジネスモデルにも密接に関係しますが、売る「モノ」によって事業の成否は別れます。例えば、オリジナルの商品を製造できて、その商品に非常にニーズがあり、売れる可能性が高い商品なら起業が成功する公算も高くなるでしょう。しかし、実際にはこのように上手くいくことがありません。家電のような型番製品を販売するなら、仕入れの規模が大きい大手企業の方が仕入れ価格は安いので、ユーザーに安く販売できます。また、サービスなどを販売する場合も、スタッフの訓練度の高い大手企業の方が高品質のサービスを提供している場合も多いです。

 

このように、大企業や長年活動してきた企業の方が良い商品やサービスを持っていることが多いです。よって、これから起業する場合はその隙間をぬって、商品やサービスを開発する必要があります。

 

 

 

4-2 激安店になるか高級店になるか

以上のような理由から、起業の際に悩みの1つになるのが、激安店になるか高級店になるのかということです。激安店になるというのは競合店と比較して値段が安いことを売りにしてビジネスをするパターンです。高級店になるというのは競合店と比較してサービスの品質が高い、かゆい所に手が届くサービスであることを売りにして高い料金をもらいパターンです。

 

どちらを目指すかは経営者の嗜好によって異なりますが、会社を大きくしたいのならば高級店としての戦略をとった方が良いでしょう。なぜなら激安店として売上を作っていると特殊な安くできるポイントが存在しない限り、利益率が低くなり会社が儲かりにくい体質になってしまいます。その結果、労働環境が劣悪になって、経営者としても収益が上げられなかったり、従業員がどんどん退職してしまったりすることが考えられます。大企業が価格を下げて自社の価格帯に近づいてくると、コストメリットをたくさん持っている大企業にはどうしても勝てません。

 

よって、激安商品・サービスを目指すよりも普通以上の商品・サービスを目指した方が良いでしょう。

 

 

 

4-3 フランチャイズで「モノ」を手に入れる

普通のサービスを目指す際に有効なのがフランチャイズに加盟することです。フランチャイズの良い所は商品を作ったり、ブランディングしたりするのはフランチャイズ本部が行ってくれることです。モノをどう作るのかを考えなくてもフランチャイズが作ったモノを販売して事業を軌道に乗せることができます。

 

例えば、同じようにラーメン屋で起業する場合でも、自分で一からラーメン作りをするのか、既存のラーメン屋のフランチャイズになるかで難易度は大きく異なります。フランチャイズのラーメン屋ならラーメンの作り方は本部が教えてくれますし、そのフランチャイズのファンが創業当初からお客様になってくれることが期待できます。

 

 

5 会社設立に必要な「カネ」とは?

ヒト・モノ・カネの最後に、起業におけるカネについてどのように考えれば良いのかについて説明します。先ほども説明した通り、企業が倒産する直接的な理由は運転資金が無くなることが原因です。特に創業段階は何かとお金が必要となりますので、カネがきちんと用意できているかについて注意すべきです。

 

 

 

5-1 どの位の資金があれば良いのか?

カネについてまず気になるのが、どの位の資金を用意すれば良いのかということです。もちろん、あればあるほど良いのですが、起業段階で用意できる資金はおそらく限られているでしょう。また、起業の際には自己資金だけではなく銀行から融資を受けることが一般的です。よって必ずしも自己資金で賄う必要はありません。

 

必要なカネは事業のために必要なお金と生活のために必要なお金で分けて考えるべきです。事業のために必要な総資金の3分の1程度は少なくとも自己資金で用意しておいた方が良いでしょう。もちろん、資金調達が上手くいけばこれ以下の自己資本比率で起業することは可能です、ただし、自己資本が少なすぎると、銀行も前向きに融資してくれませんし、月々の返済が負担になります。また、運転資金については余裕を持って半年から1年程度は余分に用意しておいた方が良いでしょう。もちろん、はじめから安定した売上が見込める場合は初めの運転資金を少し減らしても大丈夫です。

 

生活のために必要なお金も、運転資金と同じく半年分位は用意しておいた方が良いでしょう。ただし、もし資金の総額が足りなければ生活のための資金が少なくても大丈夫です。法人から自分に対して毎月一定の給料が支払われますし、お金がなければ給料を返上して営業時間外にアルバイトをすれば良いだけです。

 

逆に会社のお金が足りない場合に、自分の生活を削って会社に貸し付けるということが意外にできません。先ほども説明した通り、いきなり生活レベルを下げるのに人は抵抗を感じてしまうからです。

 

 

 

5-2 会社設立に必要な「カネ」の集め方

お金はどのように集めれば良いのでしょうか。お金には会社の元となる自己資本と他人から借りて来た負債の2つがあります。よく株式会社が1円から設立できるようになったと言われていますが、実際には1円で会社は設立できません。会社を設立する際に手数料が掛かりますし、1円で設立した会社ははじめから債務超過の状態になります。100万円程度は資本金を用意しておいた方が良いでしょう。

 

そして足りないお金はどこからか調達する必要がありますが、一般的にほとんどの銀行は創業直後の会社に対して融資はしてくれません。創業直後の会社には実績がなく、決算書の分析もできないので、融資をするリスクが非常に高いからです。

 

よって政策金融公庫や市町村が行っている制度融資の仕組みを使って創業者に特化した融資を狙いにいくことになります。このときに重要なのが事業計画をきちんと作成するということです。創業直後の企業には決算書という実績が無いので、融資する側は事業計画の妥当性と自己資金をどの位用意しているのか、経営者の経歴や人柄を見て融資の可否を判断するしかありません。きちんとした事業計画が無いと融資を1円も受けられないということはよくあります。

 

また、ベンチャー企業ブームなので、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの投資を期待して事業を立ち上げる人もいるかもしれません。しかし、こちらは銀行融資を受けるよりも更に難しいです。まず、行おうとしているビジネスがその投資家の投資したい事業領域である必要がありますし、自分が成功すると思っているビジネスに対して投資家が必ずしも成功すると思っているわけではありません。

 

 

 

5-3 お金が出るタイミングと入るタイミング

カネについて会計の知識を少しかじった人が陥りがちになるのが損益計算書や試算表を見て会社の経営状態を判断することです。もちろん、これらのデータも大切ですが、さらに大切なのがお金の出るタイミングと入るタイミングをきちんと管理することです。

 

例えば帳簿上では3月の売上が1000万円、売上原価600万円となっていたとしても、2月に原価の支払い、4月に売上が入金されるなら、2月から4月まで原価の600万円を自分で負担して400万円分現金が増えるのは4月になってからです。そして、この600万円が支払えなければ会社は倒産してしまいます。このように黒字なのに資金繰りをまわせなくて倒産するパターンを黒字倒産と言います。

 

とくに創業直後は運転資金に余裕が無いことが多いので、いつお金が出ていくか、お金が入ってくるのかについては非常に気を使わなければなりません。

 

 

6 会社の設立方法

以上のように、起業する際の心構えについて説明した上で、会社をどのように設立するべきなのかについて説明します。

 

 

 

6-1 覚悟を決める

株式会社の資本金の額で見ると、会社法施行前は最低1,000万円必要であったものが、施行後は下限の定めがなくなり、会社設立のハードルは格段に下がりました。これにより、やる気さえあれば誰もが夢を描いて容易に起業できるようになりましたが、会社は夢や希望だけで経営できるものではありません。会社を作ると、そこには従業員や取引先及び利用者といったステークホルダーが生まれ、様々な責任を負うことになります。起業家には、この社会的責任を果たす覚悟が求められることになります。その覚悟があるのか、自分の意思を確認することから始めましょう。

 

 

 

6-2 会社の種類と仕組みを決める

まず、起業したいビジネスが決まって、会社を設立する際に決めなければならないのは、会社をどのような形態にするのかということです。会社として有名な「株式会社」の他に、「個人事業主」として事業を行うことも可能です。平成18年5月の会社法施行を機に有限会社法が廃止され、会社は、「株式会社」、「合同会社」、「合名会社」、「合資会社」の4種類となりました。

 

株式会社は、株式を発行し、これを取得した株主が議決権を持って会社を支配するというのが基本的な仕組みです。実際の業務執行は、株主が選任した取締役が担うことになります。他の3つの会社(合同、合名、合資)は持ち株会社と呼ばれ、社員が出資するとともに業務執行を担う形式です。

 

出資者の責任で見ると、株式会社と合同会社は、出資額(株式持分)を上限とする有限責任です。
合名会社は無限責任社員だけで組織され、社員1名でも設立することができます。
合資会社は有限責任社員と無限責任社員で組織され、双方1名の最低2名で設立できます。有限責任とは、会社倒産時に自身の出資額を上限として会社に責任を持つことを言います。仮に会社が倒産して資本金を超える負債が残ったとき、自身の出資金は返ってきませんが、それ以上の責任追及は受けません。

 

一方、無限責任は、自身の株式や出資金の額にかかわらず、会社の債務全額に責任を持たなければならないというシビアな制度のため、合名会社・合資会社が選択されるのは稀です。

 

ではそれぞれさらに詳しく見て行きましょう。

 

  

6-1-1 株式会社とは

会社と聞いてまず思い浮かべやすいのが株式会社です。社長1人で事業をしている零細企業から世界を股にかけて活動している上場企業までさまざまな事業規模、業種の企業が株式会社として経営されています。

 

株式会社として会社を設立することのメリットは大きく分けて3つあります。1つは法人としての信用性、2つ目に資金調達のしやすさ、3つ目に有限責任であるということです。

 

1つ目の法人としての信用性ということについて、合同会社や合資会社などは知らなくても株式会社について知らないという人はいないでしょう。個人事業主は事業規模が小さく、個人と事業のお金が厳密に区別されていませんし、合同会社はできたばかりの制度なので認知度が低いです。顧客開拓という点で考えると株式会社にしておく方が良いです。

 

2つ目に資金調達のしやすさということについて、株式会社は他人から資本を入れることができます。経営者とは別にお金だけを出す株主がいても良いというのが株式会社のメリットです。合同会社や個人事業主は経営者と出資者が同一でなければならないので、他人資本を活用することができません。

 

3つ目に有限責任であるということについて、会社がもし倒産してしまった場合、銀行などに借りていたお金を返済することができなくなる可能性があります。このような場合に個人事業主なら個人的にその借金を負担しなければなりません。しかし、株式会社なら失敗してしまっても、そのときに負担しなければならないのは経営者個人が会社に出資していた資本金だけです。

 

一方で株式会社のデメリットも存在します。会社法による制約を受けやすいことと、手続きが面倒なことです。

 

1つ目の会社法の制約を受けやすいということについて、株式会社は決算を公告しなければならなかったり、一定以上の規模になると会社の組織体制にルールが課せられたりと会社法による様々な規制が発生します。

 

2つ目の手続きが面倒なことについて、合同会社や個人事業主よりも設立費用が高いですし、個人事業主と比べて税務申告も面倒です。

 

  

6-1-2 個人事業主とは

続いて個人事業主として会社を設立することについて説明します。株式会社や合同会社を「法人」と呼ぶのに対して個人事業主は法人とは呼びません。つまり、株式会社や合同会社は会社と経営者が制度上別人格として存在しているのに対して、個人事業主は経営者=会社として存在しています。この違いにより、株式会社や合同会社とのさまざまな違いが発生します。

 

まず、個人事業主として事業を行うメリットとして挙げられるのが、設立に手間もお金もかからない、税務申告も比較的簡単できることです。

 

1つ目の設立に手間もお金もかからないということですが、個人事業の設立には出資金も必要なければ提出書類もごくわずかです、株式会社や合同会社の設立になると多少手続きが複雑になるので、自分で手続きをするのは難しいと感じるかも知れませんが、おそらく個人事業主の開業手続きは誰でもできます。

 

2つ目の税務申告が比較的簡単ということですが、個人事業主の場合は確定申告により事業から得た所得を報告します。ノーマルの白色申告か控除額や赤字の繰越の面で特典がついている青色申告の2つのパターンがありますが、方法さえ分かっていれば十分に自分だけで確定申告することが可能です。

 

一方で個人事業主にはデメリットもあります。信用面で法人に劣ること、無限責任であること、補助金や節税策などが使いにくいことです。

 

1つ目に個人事業主は法人と比較して事業規模が小さく、経営者個人のお金と事業のお金が制度上分離していないので、個人事業主とは取引しないという企業は存在します。またこのような理由から資金調達でも不利になりがちです。

 

2つ目に無限責任であるということについて、個人事業主の場合は事業の借金と個人の借金が一体化していますので、事業に失敗した際には個人でその借金を返済しなければなりません。

 

3つ目に補助金や節税策が使いにくいということについて、国や地方自治体の補助金や助成金の中には、個人事業主は利用できないものもあります、また、赤字の繰越や個別の節税対策についても個人事業主では使用できないスキームがあります。

 

  

6-1-3 合同会社とは

最後に合同会社について説明します。合同会社は2006年の会社法改正によって新たに設立できるようになった法人形態です。ちなみに、このタイミングでそれまで設立できていた有限会社は以降設立できなくなりました。合同会社はアメリカのLLCという法人形態を参考にして作られており、日本版LLCとも呼ばれています。知名度は低いですが、グーグルやアップルなどの日本法人も合同会社として活動しています。

 

合同会社のメリットは、会社法上の制約をあまり受けない、株式会社と同じように節税、補助金対策ができる、有限責任であることが挙げられます。

 

1つ目の会社法上の制約をあまり受けないということについて、株式会社は決算を公告したり、一定以上の規模になると監査が必要になったり、一定のテーマには株主総会の議決が必要になります。よって経営にはお金も手間もかかりますし、スピーディーな意思決定が困難になります。合同会社の場合はこのような制約が株式会社と比較してほとんどないのでスピーディーでコストのかからない経営が可能です。

 

また、2つ目の株式会社と同じように節税、補助金対策ができるということについて、1つ目にあるように株式会社よりもスピーディーでコストのかからない経営ができますが、節税や補助金は株式会社と同じように使用することができます。

 

3つ目について合同会社は有限責任です。よって会社が倒産した場合でも経営者個人が負担するのは出資金だけで済みます。

 

一方で合同会社にはデメリットも存在します。知名度の低さと資金調達が制限されていることです。

 

1つ目の知名度の低さということについて、合同会社が設立できるようになったのは、ここ10年程度の出来事なので有限会社は知っているけれども、合同会社については知らないという人がたくさんいます。よって、営業する際に合同会社はきちんとした会社ではないのではないかと偏見を持たれることもあります。

 

2つ目の資金調達が制限されるということについて、合同会社は株式会社のように他人から資本を得ることをできません。よって、合同会社は投資家から出資を受けるということもできなければ上場することもできません。

 

  

6-1-4 どのように会社を選べば良いか

以上のように起業の際に選択される典型的な3パターンの会社について説明しました。では、実際に起業する際にどのように会社を選べば良いのでしょうか。

 

まず、第一に極力お金をかけたくないという場合は個人事業主を選択するべきです。個人事業の設立にお金はほぼかかりませんし、税務申告も自分でしてしまえば税理士に頼む必要がありません。

 

ただし、本格的に事業をしようと思うなら、合同会社位は設立した方が良いでしょう。合同会社にすることによって、銀行から融資を受けやすくなったり、節税や補助金が利用できたりと会社経営に対する選択肢の幅は広がります。

 

最後にはじめからある程度の利益を見込んでいる、投資家から資金調達する計画がある場合は株式会社として設立した方が良いでしょう。個人事業主や合同会社だと投資家から資本を受け取ることはできませんし、信用面でも株式会社に劣っています。

 

ただし、会社の形態は後から変更することが可能です。個人事業があとから法人成して株式会社や合同会社になったり、合同会社を株式会社にすることは可能なので、短期的な視点で自分にあった会社形態を選択すると良いでしょう。

 

 

 

6-3 会社の機関設計

会社は組織として運営されます。組織運営においては、会社法で定められた基本ルールのもと、必要な機関を設置しなければなりません。株式会社の主な機関として、株主総会、取締役、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人等が挙げられます(委員会等は除きます)。株主総会は必置機関ですが、その他は、会社規模などの実態に応じて次のようなパターンを選択することができます。

 

《機関設計のパターン》

  設置機関
(ア) 取締役のみ設置
(イ) 取締役と監査役を設置
(ウ) 取締役と会計参与を設置
(エ) 取締役、監査役、会計参与を設置
(オ) 取締役会と監査役を設置
(カ) 取締役会と会計参与を設置
(キ) 取締役会、監査役、会計参与を設置

 

《参考:会社法の条項》

会社法第295条(株主総会の権限)

第1項 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
第2項 ~第3項 -略-

会社法第326条(株主総会以外の機関の設置)

第1項 株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。
第2項 株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、監査等委員会又は指名委員会等を置くことができる。

 

《用語説明》

公開会社とは、定款に株式の譲渡制限を規定していない会社を言い、非公開会社とは、定款に「株式の譲渡による取得については、取締役の承認を受けなければならない。」といった譲渡制限を規定した会社をいいます。株式の上場・非上場ではありませんので注意。

 

会社法の規定では、公開会社には「取締役会」の設置義務があり、取締役会設置会社には「監査役」の設置義務があります(会社法第327条第1項及び第2項)。このため、公開会社にすると、組織が重くなるため、小規模な会社のほとんどが非公開会社としています。機関設計にあたっては、このような法令上の制限を理解したうえで入念に検討してください。

 

また、会社の種類とともに設立方法を決めなければなりません。株式会社の設立には「発起設立」と「募集設立」があり、いずれも発起人が必要です。募集設立は手続きが煩雑なこともあり、特殊な事情のある場合を除いて発起設立の方法を採るのが一般的となっています。

 

 

 

6-4 事業計画を作る

次に、会社経営上最も重要な「事業計画」、とりわけ「損益計画」と「資金調達計画」を作ります。設立から2年分の資金繰りを視野に入れた、3~5年の中期計画策定が理想です。運営上、商品の仕入れや人件費等コストの支払いが先行し、売上代金などの入金は後になるのが一般的です。代金決済でみると、通常、月末締めの翌月〇日払いなどのような締め切り方式が多いため、約定によっては、最大で60日程度(手形決済の場合はそれ以上の期間)、取引先から代金を回収できないことがあります。この間、給与支払が複数回発生することを考えれば、あとは推して知るべきでしょう。

 

また、期中で運転資金が足りなくなっても、設立前に何の対策も講じていなければ、即倒産の憂き目をみることになります。資金ショートを融資で対応しようとしても、最低でも1事業年度が終了し、決算内容と今後の事業見通しが判明しないと金融機関は融資の審査すら受け付けません。また、事業年度末から決算終了までは2カ月程度を要する為、融資審査までには相当の日数がかかってしまいます(赤字は論外)。このような実情に鑑み、2年分程度の資金繰りが必要となるのですが、ここで注目すべきは「資本金」です。2年分の資金繰りを念頭に、損益計画と整合させ、設立時の資本金額を決定することが重要です。

 

損益計画は、結論から詰めます。当年度の利益と納税予定額、そのために必要な粗利益と固定費、粗利益を生み出すための売上高、売上高を確保するための事業推進方策という流れです。代金決済についても支出と入金のミスマッチをできるだけ小さくするような工夫が必要です(仕入・供給双方の決済約定)。利益が出るだけでなく、インとアウトがバランスしたキャッシュフローを確保できなければ資本金や売上高がいくらあっても足りません。将来へ向けて事業規模拡大を図るためにも、中期計画(3~5年)で根拠の明確な損益計画とキャッシュフロー計画を作成しましょう。

 

 

 

6-5 雇用計画

会社の設立に必要な事項は、理屈はわかっていても自分で全てをやれるわけではありません。いかに他の人(又は機関)に任せることができるかも起業家として重要な才能の一つと言えます。

 

定款の作成、損益計画や資金繰りなどの分野は、司法書士や公認会計士などの専門家に相談するのが合理的です。法令や会計制度への対応は設立後もついて回るものですから、設立前からこれらの専門家を確保することが会社経営を成功させるポイントの一つとなります。自身の苦手分野に積極的に人材を登用することは、結果として企業価値向上にもつながるのです。

 

これら専門家とともに重要なのが社員です。近年の人手不足は深刻で、起業時点で優秀な人材を採用するのは容易ではありません。規模によって対応は変わりますが、事業計画策定時に、どのような属性の人材をどのように組み合わせるかという雇用ポートフォリオの考え方が必要となります。人件費計画内で、新卒採用、キャリア採用、外国人雇用、非正規雇用等のベストミックスを検討しておきましょう。

 

 

 

6-6 設立手続きをする

では、自分が起業する法人の形態を選んだ後にどのように手続きをすれば良いのかについて説明します。

 

  

6-6-1 個人事業の場合

個人事業の場合は、開業するタイミングで税務署に開業届を提出するだけで大丈夫です。開業届のフォーマットは以下のリンク先にありますので確認してください。開業にあたっての資本金や手数料などは特に必要ありません。(参考:開業届)

 

また、セットで青色申告の承認申請手続きもすると良いでしょう。青色申告とは事業の帳簿を複式簿記で記帳する代わりに、基礎控除が増えたり、赤字が繰り越せたりするようになる申告方法です。個人事業をするのならぜひ利用した方が良いでしょう。以下のリンク先にフォーマットがありますし、申請に手数料はかかりません。(参考:青色申告申請書)

 

  

6-6-2 法人の場合

続いて法人の設立方法です。

 

   
6-6-2-1 出資金と定款を用意する

会社の設立にあたっては「定款」を作成しなければなりません。定款は会社の憲法ともいえる不可欠な規程で、業務執行に当たる取締役には法令とともに定款遵守が義務付けられます。設立の際の定款は原始定款と言われ、発起人が署名又は記名押印し、公証人が認証して効力を持ちます。また、定款には会社の種類等を含めた組織の基本事項を定めますが、「絶対的記載事項」、「相対的記載事項」、「任意的記載事項」があります。以下、各記載事項について示しますが、実際の作成に当たっては、日本公証人連合会の定款記載例が参考になります。

 

絶対的記載事項
(必ず記載しなければならない事項)
相対的記載事項
(記載しなければ効力が認められない事項)
①目的

「商取引」といった抽象的な記載でも許されますが、許認可が必要な事業を行う場合は、具体的な業務名を記載しなければなりません。会社としての信用を得るためにも、事業内容を具体的に記載したほうが良いでしょう。

③本店の所在地

④設立に際して出資される財産の価額又はその最低額

⑤発起人の氏名又は名称及び住所

(1)《会社法第28条関係:変態的設立事項》

①現物出資関係
・現物出資する者の氏名(又は法人の名称)
・その内容及び価額
・現物出資者に割り当てる設立時発行株式数
② 財産引受関係
会社設立後に財産を譲り受ける約束がある場合、その種類、価額、譲渡人氏名(又は法人の名称)
③ 発起人の特別利益 発起人が受ける報酬、特別利益、発起人の氏名(又は法人の名称)
④設立費用

(2)会社の機関に関する事項

①取締役の任期伸長(限:株式譲渡制限会社)
②監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定すること(限:株式譲渡制限会社)
③公告の方法を官報以外とするとき
④株主権行使の基準日を特定の日に設定するとき

(3)その他

①設立時に発行する株式の種類、数、割り当てに関する事項
②会社が発行する株式の総数
③発起設立の場合の設立時の取締役 規定がない場合は、出資後、引き受けた株式の議決権の過半数を以て取締役を決める。
④株式の内容(株式譲渡制限、種類株式等)
⑤株券の発行

 

任意的記載事項(公序良俗に反しない限り自由に定めることができる事項)
《例》
・事業年度 ・役付取締役の名称(社長、専務など)
・役員(取締役及び監査役等)の員数
・役員報酬の決め方
・定時株主総会の召集時期  等

 

定款作成にあたっては弁護士や司法書士などにお願いしても良いですし、自分で作成することも可能です。特に近年は会社設立freeeのように必要項目を入力すれば、簡単に定款を作成してくれるサービスもあります。

 

また、法人設立にあたって出資金とは会社の資本金のことを指し、金額はいくらでも大丈夫です。ただし、少なすぎるとはじめから債務超過の会社になってしまいますので100万円程度は用意し方が良いでしょう。定款とは会社の運営に関する基本的なルールを定めた書類です。資本金や本社の場所、会計年度などが定められています。

 

ちなみに、株式会社の場合は作成した定款をさらに認証する作業が必要です。公証人役場に定款や出資者全員の印鑑証明、収入印紙、手数料などを持っていき、認証手続きを行います。なお、合同会社の場合は定款の認証は必要ありません。

 

   
6-6-2-2 法務局に法人設立の届け出をする

出資金、定款が用意できれば起業しようと考えている場所を管轄している法務局に、法人設立の届け出を行います。必要な書類は以下のとおりです。

 

  • 設立登記申請書(+登録免許税分の収入印紙)(必須)
  • 登記用紙と同一の用紙(必須)
  • 定款2部(1部は会社保存、1部は法務局提出)(必須)
  • 出資金の払込証明書(必須)
  • 代表の印鑑証明書(必須)
  • 本店所在地、資本金決定書(場合によって)
  • 代表の就任承諾書(場合によって)
  • 財産引継書・資本金の額の計上に関する証明書(現物出資をする場合)

 

書類に不備がなければ即日で会社設立が可能です。ちなみに、法務局に登記申請した日が会社の設立日となりますので、設立日にこだわりがある方は日にちを計算して設立手続きをしてください。

 

   
6-6-2-3 設立後の各種申請

会社を設立する手続きは上記までですが、実際には会社を設立したあとにも様々な手続きがあります。

 

まず、税務署に対して、法人設立届出書や青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納金の特例の承認に関する申請書、棚卸資産の評価方法の届出書、減価償却資産の償却方法の届出書が必要になります。(起業の仕方によって必要ない書類もあります)

 

また、都道府県、市町村に対して法人設立届出書を提出しなければなりません。さらに従業員を雇う場合は労働基準監督署やハローワークに対して、労働保険関係成立届、労働保険概算保険料申告書、雇用保険適用事業所設置届、雇用保険被保険者資格取得届などを提出しなければなりません。

 

会社を設立したあとの方がむしろ、書類の申請作業が面倒だとも言えます。

 

 

7 まとめ

以上のようにはじめて起業する方に向けて会社設立の方法について解説しました。前半は起業するビジネスの決め方、ヒト・モノ・カネにおいて注意すべきポイント、後半は会社の形態の選び方や設立方法について説明しました。これから起業するにあたって経営者本人が真剣に考えなければならないのはどちらかと言えば前半のテーマです。

 

後半の会社形態の選び方や設立は失敗したと思ったら後から変更できますし、手続きはプロに任せることができます。

 

しかし、起業にあたってのビジネスモデル選びや組織作り、お金集めに失敗してしまうとあとから挽回するのは非常に困難です。2~5章にはこれらにおいて失敗しがちなことや気を付けたいポイントについて説明しているのでよくご確認いただいた方が良いでしょう。

 

最後に1章において、起業の際のチェックポイントについて説明しましたが、サラリーマンと起業家、どちらは一概に良いとは言えませんが、両者の仕事や人生設計において求められるスタンスはあまりにも異なります。

 

サラリーマン的なスタンスでリスクを回避して安定した事業を求めるとかえって泥沼にはまってしまい、忙しいわりに儲からないということも起こりえます。サラリーマンは働いてお金を貰う仕事で、経営者はお金を使ってお金を増やすのが仕事です。両者の働き方の違いは意識した方が良いでしょう。

 

会社の設立は以前に比べて容易になったと言われますが、会社経営を取り巻く環境は混迷を極めています。会社設立にあたり、事務的な手続きは専門家に任せることで円滑に進みますが、起業家としては資金繰りと社員の採用が最も大きな課題となるでしょう。会社をどのように成長させていくのかという長期構想とともに、経営を軌道に乗せるための当初3年間をどう乗り切るのかという現実的な課題をクリアするため、入念な準備が求められます。

 

 


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