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会社設立と節税メリット〜個人事業主との違いを徹底解説!

新たに事業をはじめようとした場合に、会社を設立するか、会社形態ではなく個人事業主としてやっていくのか、という2つの選択肢があります。最初は個人事業主からはじめて、あるタイミングで会社形態に移行する、という方法もあります。いずれの場合も個人か会社か、どちらの形態が良いのかという見極めが必要となるでしょう。もちろん、それぞれの選択肢にはメリットとデメリットがあります。コスト面や対外的な信用力、そして節税の効果も個人と会社では大きく異なります。
今回は個人と会社の制度上の違いを確認した上で、様々な角度から両者を比較していきます。コスト面、信用力、税制面からメリットとデメリットを整理します。ただし最初から会社設立をする場合と、個人から立ち上げて、途中で会社に移行する場合では若干事情が異なる場合があります。このような相違点を踏まえたうえで、個人から会社へと移行する際のタイミングについて整理します。

 

 

1 「個人」と「会社」の違いとは?

何か事業をはじめようと思い立った時、個人として行うのか、会社を設立して法人として行っていくのかを決めなければなりません。事業の実施は、契約行為の積み重ねですが、取引相手や社会全体から見ると、「誰が」契約主体なのかは重要です。
その意味で、個人か会社かという選択は、「日々繰り返される契約が誰の名義で行われるのか」という違いであると考えることができます。

 

 

 

1-1 法的な位置づけ

個人事業とは、「個人名で契約行為を行う」ということです。つまり、普段の生活の中でコンビニやスーパーで食料品を買う、といった行動の延長線上に、「仕入先から商品を仕入れる」「取引先に商品を販売する」などの契約行為があることになります。契約行為には、基本的には民法が適用されます。コンビニの買い物でも同じです。一方、事業として行う場合には商法が適用されます。

 

税制面においては、事業から生じる所得であっても、あくまで個人の所得ですから、サラリーマンと同じように所得税法が適用されます。所得税法では、所得の種類に応じて給与所得、不動産所得、利子所得など10種類に分類して計算するのですが、その中の一つである事業所得として位置づけられるのです。

 

ただし、サラリーマンの給与所得とは異なり、事業所得として認められると、経費を実際に発生した額で所得から控除できるなど、様々な税制上のメリットが得られます。そのためには、個人事業主として税務署に開業届を提出しておく必要があります。これが「個人が商行為を行う」ということの法的な意味合いです。

 

それに対して、会社が契約行為を行う場合は、会社が契約の主体となります。正確に言えば、経営者(取締役)が会社を代表して、会社名義で契約を締結します。会社はもちろん自然人ではありませんので、そのままでは契約行為はできませんが、法律によって特別に人格が与えられています。会社が「法人」と呼ばれるゆえんです。

 

会社に対して法人格を与えている法律が、会社法です。会社法が定める様々な手続きを経て会社を設立すれば、法人格を取得することができます。さらに、会社法は会社設立後の運営においても、手続きを要求しています。会社に対しても、個人と同様に民法や商法が適用されますが、より厳格な規制が、会社法に基づき求められています。これは、個人と比べて会社の行為が社会全体に与える影響の大きさを考慮してのものです。

 

会社として事業を行うことで得た所得に対して、所得税法ではなく法人税法が適用されます。個人事業主とは法律自体が異なりますから、その計算方法にもかなり違いがあります。これが会社に関する法的な位置づけです。

 

 

 

1-2 会社設立のメリット・デメリットとは?

個人事業主と会社では、適用される法律が大きく異なり、税制も違うということがわかりました。「会社設立と個人事業主ではどちらが有利か」という疑問については、個々の状況やケースによって、判断基準が異なるため、一概にどちらが有利なのかを断じることはできません。後述するように様々な角度から、両者のメリット・デメリットを整理し、検討して判断していく必要があります。

 

 

2 コスト面での違いとは?

会社を設立、運営していくためには様々なコストがかかります。個人事業主の場合、これらのコストは必要ないため、個人と比べて会社設立することのデメリットとして捉えられます。

 

 

 

2-1 会社設立のコストとは?

会社を設立する際には、会社法に規定される設立手続きを経る必要があります。必要な手続きとは、設立する会社の種類や規模にもよりますが、概ね定款の作成と認証、株式の募集と発行、資本金の払い込み、設立登記などがあります。

 

定款とは会社の事業目的や所在地など、基本的な事項を定める書面で、会社の憲法とも呼ばれます。定款に定めなければならない具体的な記載事項は、目的、商号(社名)、本店の所在地、会社の設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称および住所、発行可能株式総数です。これらは絶対的記載事項と呼ばれ、必ず定めなければなりません。

 

定款の作成自体は司法書士等の専門職に依頼することが可能ですが、それほど難しいものでもないので、経営者自身で作成することもできます。しかし、定款は作成するだけでは効力を持たず、それが適切に作成されていることの認証を得る必要があります。いわゆる「公証人による認証」であり、公証役場に定款を提出して、認証手数料を支払って認証してもらうこととなります。認証手数料は、原則として9万円です。もし、定款の作成を外部に依頼する場合はその分のコストが追加で必要となるでしょう。

 

株式会社の場合は株式募集や発行を行い、資本金を払い込みます。株式募集や発行のコストは、会社規模によって大きく変わります。経営者が一人株主である会社であれば、それほど重要なコストではないので、ここでは無視して良いでしょう。

 

そして定款を作成し資本金を払い込んだ後に、設立登記を行うこととなります。法務局に必要書類を提出して、登記申請を行います。登記申請手数料が15万円程度必要となります。登記の際に必要な書類は、設立登記申請書に加えて、定款、取締役の就任承諾書、取締役の印鑑証明書、資本金の払い込み証明書など多くのものを準備する必要があります。登記手続きも司法書士などに代行してもらうことも可能ですが、それはそれでコストがかかります。

 

このように会社設立だけで、最低でも24万円程度のコストがかかるということになります。外部に依頼すると、その分が上乗せされます。

 

 

 

2-2 会社維持のコストとは?

無事に会社が設立できたとして、あとは個人事業主と同じかというと、そうではありません。会社設立後も、個人事業主なら不要であったコストが必要となります。

 

まずは法人住民税の均等割という税金です。税務面での詳細な比較は後述しますが、そこでは基本的に「所得」にかかる所得税と法人税を話題としています。それとは別に、どれだけ所得が少なくとも、さらに言えば赤字であってもかかる税金が、法人住民税の均等割です。この税金は、年間で最低でも7万円が必要です。

 

さらに、社会保険の加入が必須となります。個人事業主の場合は国民健康保険と国民年金に個人で加入すれば良いのですが、会社が加入を義務付けられる社会保険の保険料はこれに比べて高額になることが一般的です。保険料は所得に応じて異なりますので、金額的に比較することは困難ですが、負担が大きくなることは間違いありません。

 

そして、会社になると義務付けられることとなる、厳密な会計処理や財務諸表を作成するためのコストです。個人事業主の場合は、お金に関する記録は税務申告の際に求められるのみで、しかも、簡便的な記録で問題ありません。

 

会社の場合は、会社法によって貸借対照表および損益計算書といった財務諸表の作成が求められることとなります。貸借対照表は新聞やウェブサイトで公表する必要があります。そして、税務申告の際にも、これらの財務諸表の提出が必要となります。財務諸表を作成するためには、個人事業主のように簡便的な会計処理では対応できないため、複式簿記という厳密な会計処理を採用することが必要となります。

 

複式簿記で会計記録を行い、財務諸表を作成するためには相当の事務負担が生じます。これをお金で解決しようと思えば、税理士に依頼して作成してもらう、あるいは、会計ソフトを導入して負担軽減を図ることが考えられます。いずれもコストがかかります。このようなコストも会社の場合は必要となってきます。

 

一方で、会計を厳密にするということは、自社の経営を分析し、将来に活用するために役立ちます。その意味では、会計の厳密化はデメリットだけではなく、メリットとなる一面も有しているというのは、重要なことです。

 

 

3 信用力の違いとは?

会社法上の様々な手続きや会計処理を導入することで、個人事業主と比較すると多くのコストがかかる、という会社設立のデメリット面を強調しましが、信用力を獲得することの裏返しとも言えます。信用力は事業を運営していくにあたって、きわめて重要な要素です。それが獲得できることは、会社設立の大きなメリットとしても捉えることができます。

 

 

 

3-1 金融機関との関係

事業を行っていくためにはどうしてもお金が必要です。商品を仕入れるための原資や設備投資資金など、思っている以上に意外とお金はかかるものです。

 

自己資金のみでまかなえる限りであれば問題ありませんが、事業が拡大していくに従って、必要な資金の額も大きくなるため、金融機関からの融資を受ける必要が生じてきます。

 

しかし、いざお金が必要だとなっても金融機関は誰にでも融資してくれるわけではありません。金融機関は融資を通じて利息を得ることがビジネスですから、滞りなく元本と利息の返済ができると判断する相手にしか融資できません。そこで、重要になってくるのが「信用力」です。この時、個人事業主に比べて会社のほうが信用力は高く、融資を受けやすい、あるいはより有利な条件で借入れができるというのが一般的な理解です。

 

理由としては、前節で確認したように、会社設立や維持のためには厳しい要件が法令によって求められており、それをクリアしているということが一つです。また、もう一つは、財務諸表を作成していることで、経営状況が明確に把握できるため、金融機関は客観的な基準にもとづき、財務的な能力を測定できる、ということが挙げられます。

 

このようなことから、会社を設立することで、金融機関との信頼関係の構築や維持・向上が期待できるというのが、メリットとして考えられます。

 

 

 

3-2 取引先との関係

金融機関と同様に、取引先との関係においても信用力はものを言います。取引相手として信用できるかどうかが重要であることは、逆に自身の立場で考えてみれば、当然のことだと理解できるでしょう。特に初めて取引する相手であれば「本当に仕事をこなしてくれるのか」「お金のやり取りはちゃんとできるのか」ということを心配するのが自然でしょう。

 

この点でも、個人事業主よりも会社形態のほうが信用力は高くなります。個人事業主とは契約しない、という企業もあるくらいです。多くの新規顧客の獲得が必要になるような場面を想定すると、信用力を高めるための会社設立、というのは十分に考えられる選択肢です。

 

 

 

3-3 優秀な人材の確保

従業員を雇用する場合にも、信用力が高いほうが優秀な人材を集めやすくなります。無名で、いつ倒産するかがわからないような会社で働こう、とは誰も思わないでしょう。

 

また、会社になると社会保険に加入することになるので、この点も求職者にとっては魅力的な要素になります。

 

 

4 税制面の違いとは?

個人と会社では税制面でかなり違いがある、ということは既に述べたとおりです。そして、その多くは会社側のメリットが大きいものとなっています。ただし、会社形態とした場合、会社にかかる税金と経営者個人にかかる税金は別です。会社の所得に対しては法人税が課税され、かつ経営者である個人の所得には所得税が課税されます。

 

個人か会社かという選択を考える上では、会社の場合、個人にかかる税金も合算してトータルで比較しなければならないことに留意してください。

 

 

 

4-1 役員報酬と給与所得控除

最もわかりやすく、効果が表れやすい税制面での違いが、役員報酬と給与所得控除です。例えば、事業によって得た収入から経費を控除したあとの、いわゆる「儲け」が100万円だったとしましょう。仮に個人事業主だった場合、100万円がそのまま課税対象となります。しかし、会社の場合には、経営者への報酬を役員報酬として支払うことができ、これを経費として所得から控除することができます。

 

例えば極端な話として、100万円の報酬を経営者に支払っていれば、会社としての「儲け」はゼロとなり、課税対象となる所得が存在しません。ただし代わりに、役員報酬は経営者個人の所得となりますので、こちらも併せて考える必要があります。その際に、ここに適用されるのが給与所得控除です。

 

給与所得控除とは、給与所得者も収入を得るためには様々な経費が必要となることから、それを一定額控除して課税対象から外すという仕組みです。サラリーマンを例に挙げると、仕事をして給与を得るためには、スーツやカバン、靴といった装備が一通り必要になります。これらは収入を得るための経費であると考えられますが、一つひとつ実績額を積み上げるのではなく、ある一定額をかかった経費の総額としてみなそうというものです。

 

役員報酬にも、この給与所得控除が適用できるのです。そのため、100万円から所得控除した残額が課税対象となりますので、課税対象はそのぶん小さくなります。

 

このように、トータルで考えると、同じ儲けの額であっても、会社形態のほうが節税につながります。さらに、家族を役員とすることで役員報酬を分散することもできます。家族にもそれぞれ給与所得控除が適用できますから、その分節税効果が期待できます。

 

ただし、役員報酬が法人税法上の経費として認められるには条件があり、金額は事前に確定しておくことが基本です。今確認した例のように、儲けの額がわかってから、それを全額報酬とする、という手法は認められません。事前に所得がどれくらいになりそうで、報酬額をいくらに設定するかというシミュレーションをして税務署に届出を行う必要がありますので注意してください。

 

 

 

4-2 損失繰越

所得税も法人税も、「儲け」に対する課税ですから、「儲け」が無い場合、つまり赤字の場合は課税されません。これは当然のことです。

 

そして、会社の場合は、さらにそれに加えて、この損失額を以降9年間にも渡って繰り越すことができます。これが、損失繰越という仕組みです。つまり、ある年度は赤字だったとして、その翌年度以降に利益が出た際に、過去の損失額と利益を相殺することによって、所得を減額することができるのです。

 

実は個人事業主の場合でも、条件によっては、この損失繰越を適用できるのですが、それでも期間は3年間です。その3倍もの期間に渡って適用できるという点が、会社形態の大きなメリットと言えるでしょう。

 

 

 

4-3 退職金・生命保険料の経費計上

会社では、役員や従業員に対する退職金を支払った場合、経費として計上することができます。退職金は、金額にもよりますが、受け取った側でも所得税の課税対象となることはほとんどありません。役員報酬と同様に戦略的に設定することで、かなり節税効果が見込めるものとなるでしょう。

 

同様に役員、従業員に対する生命保険料も経費に計上できます。これに関しては、個人事業主の場合であれば経費計上の限度額が設定されているのに対して、会社の場合は無制限に計上することができます。

 

 

 

4-4 消費税の免税

税制面の最後に、消費税の免税について説明します。ただし、これは当初から会社設立する場合よりも、個人事業主として活動した後に、ある一定のタイミングで会社形態に移行する場合に、大きな効果が期待できるものです。

 

消費税とは、課税対象となる商品やサービスの「消費」にかかる税金であり、その「取引」には課税されません。しかし、実際に「消費」する消費者から徴税することは現実的に困難であることから、「取引」の過程で事業者が消費者から預かっておいて、代わりに納税する、という仕組みになっています。

 

事業者は、個人事業主でも会社でも、お客さんから預かった消費税を税務署に納める義務を負っているということになりますが、免除される条件があります。それが、「会社設立時の特例」です。消費税は、課税対象となる商品やサービスの取引高、すなわち課税売上高が1,000万円以下の場合は納める必要がありません。また、この課税売上高は、前々年度の期間を見て判断されます。

 

そのため、会社を新規に設立した場合は、課税売上高を参照する期間が存在しませんので、納税義務が免除されます。他にも条件はありますが、最長で2年間は免税となるのです。

 

 

5 法人化を見極めるポイントとは?

個人事業主と会社で税制上どのような制度的な優遇措置があるかについて整理しましたが、実際の金額ベースでどちらの税金が安くなるのかを見極めるには、もう少し詳細な検討が必要です。なぜなら、そもそも所得税と法人税では適用される税率が異なるからです。

 

同じ100万円の所得でも、税率が異なれば納税額は変わります。会社形態による優遇措置を考慮した上で、結局どちらが安くなるのか、については綿密にシミュレーションをしなければわからないのです。

 

 

 

5-1 損益分岐点とは?

所得税も法人税も、所得が大きくなるにつれて税率も上がっていきます。これは累進課税という考え方が反映されているからです。つまり所得が多い、すなわち負担する能力が高いほど、多額の税金を負担するべきである、という考え方に基づいています。しかしながら、所得税と法人税の所得ごとの税率を比較すると、全く同じではありません。例えば所得が100万円の場合、所得税率は5%ですが、法人税率は15%です。

 

このような特徴から、会社が成長し、所得が大きくなっていく過程の中で、ある一定のタイミングで、個人事業主よりも会社のほうが有利になる点があります。これを損益分岐点といいます。個人事業主としてビジネスを開始して、会社形態へ移行することを「法人成り」と言いますが、このタイミングの判断には、損益分岐点の把握がとても重要です。

 

具体的に確認します。個人事業主に課税される所得税の税率は、所得が195万円以下の時は5%、195万円を超え330万円以下は10%、330万円を超え695万円以下は20%となります。

 

法人税の場合、所得が800万円以下の場合は15%です。つまり、税率だけで見ると、所得が330万円を超えた時点で法人税率のほうが低くなります。そう考えると、330万円が損益分岐点であるように思えます。

 

しかしながら、所得税の場合は税額控除があります。330万円から695万円の所得帯での控除額は427,500円で、それを加味して計算すると、695万円での所得でも所得税の方が税額は小さくなります。このとき所得税は962,500円となり、法人税は1,042,500円となりますが、その差はわずかです。前述のとおり、会社形態にすることによって、役員報酬を経費にして給与所得控除を適用することができるなど、税制面で工夫の余地はたくさんあります。そのため、この制度をうまく活用すれば、このあたりの所得帯でも損益分岐点を超えることは十分にあり得ます。

 

他方で、さらに所得の金額が大きくなっていくと、明らかに会社形態のほうが税額が小さくなる所得帯に到達していきます。

 

例えば、所得が1000万円の場合を考えていきます。個人事業主の場合の所得税は、所得が900万円を超えて1,800万円以下の所得帯では、税率が33%になります。税額控除もありますので、1,000万円に33%を乗じた330万円から控除額の153万6千円を除き、所得税額は176万4千円となります。

 

それが法人税の場合、1,000万円のうち800万円以下の部分は15%ですから、120万円、800万円超の部分は23.2%となり200万円を乗じて46万4千円で、合計で166万4千円となります。わずかではありますが、会社形態の方が安くなっています。

 

さらにこれは、役員報酬と給与所得控除を全く考慮していない条件ですから、これらを適用することによって、さらなる節税効果が期待できるため、明らかに損益分岐点を超える領域になっていると言えます。

 

よって、損益分岐点に対する考え方は2つの所得帯前後で検討のタイミングがあると整理できます。

 

最初のタイミングは所得額が695万円前後に到達したタイミングです。この時点では、単純計算では個人事業主の方が税額が安くなりますが、法人税法での役員報酬・給与所得控除を活用することで、会社形態の方がトータルで安くなる可能性が出てくる領域です。

 

役員報酬をいくらに設定すればどれだけ節税効果が出るのかは、簡単に計算することができます。いくつかのパターンをシミュレーションして、法人税と所得税のバランスを最適にする金額を探してください。

 

次のタイミングは所得額が1000万円に到達したタイミングです。この所得帯では、役員報酬・給与所得控除を適用しなかったとしても、会社形態の方が税額が安くなる可能性が高くなります。もちろん、役員報酬・給与所得控除を有効活用することで、さらなる節税効果が期待できるのです。この時点ではもう明らかに損益分岐点を超えているものと考えて良いでしょう。

 

 

 

5-2 法人化のポイントとは?

このように損益分岐点を踏まえた上で、法人化のタイミングを検討します。ただし、損益分岐点はあくまで、税務上の比較しか行っていないことを忘れてはなりません。

 

既に述べたように、個人か会社か、という選択には税務面だけでなく、社会的信用力やコストの相違が伴いました。その意味では、損益分岐点前後の領域であってもそれ以外のメリットを期待して法人化するという判断もありますし、極端に言えば、明らかに税制面で不利であったとしても、今後の成長を確信して法人化するという経営判断もあるでしょう。
このように、できる限り様々な角度から会社設立のメリットとデメリットの比較検討を行い、最適なタイミングを図ることが最も重要であると言えるでしょう。

 

 

6 会社を設立する前にチェックした項目とは?

会社を設立するには定款の作成や法人口座の開設、法務局への届け出が必要です。法人化の流れは次のとおりです。

 

  • 公証役場にて作成した定款の認証手続きをする
  • 認証された定款を受理する
  • 定款記載通りの資本金を会社発起人名義の銀行口座に入金
  • 資本金が入金された会社の通帳のコピーを取る
  • 登記申請に必要になる設立登記書類の作成
  • 法務局で登記申請をする(登記申請日が会社の設立日になる)
  • 登記申請から1週間後に登記が完了
  • 履歴事項証明書と印鑑証明書を作成して会社名義の銀行口座を開設

 

 

 

6-1 定款を作る

定款を作ることは、会社を設立するために重要な準備となります。定款がなければ会社を法人登録することができないからです。定款は、会社の事業内容や事業目的、運営に向けての根本的な規則を記載した書類になります。定款で記載する規則については、会社法の基準に沿って記載していく必要があります。必ず明記する必要のある項目は、次の通りです。

 

  • 事業目的
  • 会社名(商号)
  • 本社所在地
  • 資本金(出資財産の金額または最低額)
  • 会社発起人(出資者)の住所氏名

 

上記の項目は、必ず記載しておく必要があります。また、場合によって次の項目が必要になります。

 

  • 株式の譲渡制限の有無
  • 取締役会設置の有無
  • 取締役員の任期の設定
  • 決算期の設置
  • 官報や日刊新聞、電子公告など公告する媒体

 

会社形態や規模によって、定款に記載する必要項目は違うでしょう。ちなみに合同会社や合名会社、合資会社については、持分会社のため定款の認証は必要ありません。
定款の認証が必要になる会社形態は、株式会社、一般社団法人、一般財団法人になります。

 

 

 

6-2 会社の印鑑を作る

会社の印鑑は、定款の作成時や事業所の賃貸契約時、許認可申請、税務署への事業所登録などに必要になります。登録申請や契約などに必要になるため、会社名(商号)を決定したら早めに作っておきましょう。

 

事業運営上、必要な印鑑は、会社の実印、角印、銀行印になります。それぞれの印鑑について役割を案内します。

 

1  会社の実印

会社の実印は、事業所所在地のある行政機関に印鑑登録を申請した印鑑です。会社設立とともに申請や契約時に必ず必要になる重要な役割があります。

 

2  会社の角印

角印は、領収書や請求書、見積書などが会社発行の書面であることを明示するために使用される印鑑です。四角い形状の中に会社の商号が記載されてあります。実印とは違い、認印のような役割になります。

 

3  会社の銀行印

会社の資本金を入金した口座開設の際に必要になる銀行印です。口座取引で必要になるため、実印と同じように重要な役割があります。また、ゴム印や住所印なども必要に応じて要しておきましょう。

 

 

 

6-3 銀行口座開設と経理の準備

会社の設立に必要な銀行口座と経理の準備について見ていきます。

 

1 銀行口座の開設

会社名義の銀行口座については、法人登録を終えるまでは作成できません。まず、資本金を出資する会社発起人名義の銀行口座に入金しておく必要がある点に注意しましょう。

 

また、起業したての事業所の場合、銀行によっては審査が厳しいことも考えられます。
さらに銀行の店舗が近くにない場合、利便性も悪くなるでしょう。

 

そのため、ネットバンクで新しく口座を開設することで手数料を安く抑えられます。さらに銀行に行って手続きをする手間も無くなることから、作業効率性も上がるでしょう。

 

2  経理の準備

会社経営をするにあたって、経理の知識は必要になります。その理由は、会社の収支を捉える知識を養えるからです。事業規模や事業内容にもよりますが、経理の準備について「税理士に依頼するか、自分で記帳していくか」を判断する必要があります。事業規模が大きい場合は、事業運営に専念するため税理士に任せてしまうことが得策になります。ただし小規模事業ならば、自分で経理を行うことで収支状況の把握ができます。

 

 


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