会社名・商号は、定款に必ず記載する必要のある「絶対的記載事項」であり、会社社の履歴事項全部証明書(登記簿謄本)に登記することが求められる登記事項です。
株式会社が会社名・商号を変更するには、株主総会における定款変更手続き(会社名・商号変更決議)が必要で、変更決議が完了すれば、当該株式会社の本店の所在地を管轄する法務局で、会社名・商号の変更登記申請を行います。
尚、登記申請までの期間は、会社名・商号変更決議がなされた翌日から2週間以内に申請する必要があります。
また、会社名・商号変更には、会社の内部変更手続きと外部手続きが必要なので、それら一連の手続きの概要を説明します。
目次
- 商号調査を行う
- 会社の実印も変更
- 会社名・商号変更の手続き
- 会社名・商号変更には様々な業務が伴う
- 社名変更に伴う外部的手続き
- 税務署に関する会社名・商号変更の手続き
- 都道府県税事務所に対する法人異動届
- 市町村への法人異動届
- 年金事務所への会社名・商号変更届
- 労働基準監督署への届出
- 公共職業安定所(ハローワーク)への届出
商号調査を行う
株主総会で会社名・商号の変更決議が承認されても、その会社名・商号が他の会社の類似商号に該当すれば、会社名・商号を使用することはできません。
会社法の施行により、従来の厳格な類似商号規制は撤廃されましたが、それでもなお、会社名・商号調査は十分に行う必要があります。会社設立時には商号調査の意識が強いのですが、会社名・商号の変更時には、十分調査しない場合が多いようです。
同一住所に同一の商号が存在すれば商号を登記することはできません。独立した一軒家に本店を置いている場合や自社が所有するビルであれば、同一住所に同一の商号が重複する危険は考えられませんが、大型ショッピングモール等の多くのテナントが一か所に入居する大型商号施設に店を構えるなら、十分に会社名・商号の類似調査を行ってください。
また、他社と完全に会社名・商号が同一でなくても、会社法の規定により、故意に同一若しくは類似の商号を使用した場合は、商号使用差し止め請求や不正競争防止法によって、類似商号を使用すれば、損害賠償請求されるリスクもあるので、類似商号調査は、法務局で十分調査しておく必要があります。
会社の実印も変更
会社名・商号の変更には、会社の実印の改印も必要になります。会社の実印は、法務局に届けていますが、この実印の改印届を行う必要があります。これに加え、法的規制はありませんが、会社名・商号のゴム印等も変更する必要もあります。
会社名・商号変更の手続き
会社名・商号の変更手続きは、会社法に規定されています。
商号(会社法上で会社名のことを商号と言います)は、会社の根本規則を規定した定款の絶対的記載事項であり、これを変更するためには、定款変更の必要が生じます。定款変更に際しては、株主総会における通常の決議要件に比べ厳格な「特別決議」(原則として、行使可能な議決権の過半数を保有する株主が株主総会に参加し、その議決権の3分の2をもって決議する)が必要で、この決議を行った株主総会の議事録を作成しておく必要があります。
ただ、一般的な株式会社であれば、定款変更に伴う定款自体を何処かに提出しなければなならいといった必要はありません。
会社名・商号の変更手続きの概略は、1.株主総会を招集、開催し、2.会社名・商号の変更決議を行い、3.会社の本店の所在地を管轄する法務局に会社名・商号の変更登記を申請を行います。
会社名・商号変更登記に必要な書類は、会社名・商号変更登記申請書、株主総会議事録、OCR用紙、代表者以外の者が登記変更申請に行く場合は「委任状」が必要です。
尚、登記変更手続きに係わる登録免許税は、3万円です。
会社名・商号変更には様々な業務が伴う
会社名・商号を変更した場合の各種変更手続きとその手続き先の機関は、会社設立時の届出、手続きとほぼ同様で、会社名・商号の変更手続きは、株主総会や法務局への変更登記といった会社内部に関する手続きの他に、様々な行政機関、役所等への変更手続きも必要になります。
また、銀行の法人口座の講座名書き換えや様々な法的手続き、更に、会社名・商号の変更を取引先等に知らせるための案内状の送付も、重要な会社名・商号の変更に際する業務と言えます。
社名変更に伴う外部的手続き
会社名・商号変更に関する定款変更の会社内部の変更手続きが完了した後は、官公庁や各行政機関への会社名・商号変更に伴う手続きや届出が必要です。この手続きは、税金に関する手続きと社会保険に関する手続きの2つに大きく分類されます。
税務署に関する会社名・商号変更の手続き
会社の商号又は名称の変更を行った場合は、納税地を管轄する税務署に対して、「異動事項に関する届出」を提出する必要があります。
異動事項に関する届出は、会社名・商号を変更した後、書面の場合は、「速やかに」書面の届出書を作成し、管轄税務署に持参または送付する必要があります。又は、e-Tax(国税電子申告・納税システムでソフトをデータ化し電子文書を作成)活用して、オンライン提出することもできます。
国税庁e-Tax
都道府県税事務所に対する法人異動届
会社名・商号変更に伴い、国税庁への法人異動届の他に、地方税に関連する各都道府県税事務所への法人異動届も必要です。この手続き、届出の詳細については、各会社の所在地の都道府県のホームページにアクセスして詳細を確かめてくださくい。
市町村への法人異動届
地方税との関連では、都道府県税事務所と同様に、市町村に対する法人異動届も提出する必要があります。こちらの方も、各市町村のホームページにアクセスして詳細を確認して下さい。
年金事務所への会社名・商号変更届
会社を経営する以上、年金等の社会保険料の納付を避けることはできません。社会保険料のとの関係では、会社名・商号変更に際して、年金事務所(旧社会保険事務所)に対する「健康保険・厚生年金保険適用事務所所在地名称・名称変更届」と呼ばれる一連の法人異動届が必要です。会社を管轄する詳細については、各年金事務所のホームページや窓口で確認して下さい。提出期間は、会社名・商号変更の事実発生の時から5日以内です。
尚、政府が進める電子政府の一翼を担う、電子申請システムであるe-Gov(イーガブ)を利用して申請することも可能です。
電子政府の総合窓口イーガブ
労働基準監督署への届出
労災保険は労働者にとって重要な社会保険制度ですが、この労災保険との関係でも、会社名・商号の変更届を行う必要があります。労働基準監督署に対して、「名称、所在地変更届」を提出する必要があります。
この届出提出に際しては、変更内容を確認することのできる会社履歴全部証明書(商業登記簿謄本等)の資料等の提示が求められることがあるので、労働基準局に事前に連絡して、確認資料として何が必要なのかを調査しておくと迅速に作業を進めることができます。
また、この届出にも期限が設けられており、「事実が発生した日の翌日から10日」以内に届出をなすことが求められています。
尚、先述のe-Gov(イーガブ)を利用して申請することも可能です。
公共職業安定所(ハローワーク)への届出
会社名・商号の変更の際には、雇用保険との関連で、公共職業安定所(ハローワーク)へ「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出する必要があります。届出の様式や書式は、公共職業安定所の窓口並びに、ハローワークのホームページからダウンロードすることができます。
公共職業安定所に対する申請期間は、「変更があった日の翌日から起算して10日以内」と規定されています。
また、ハローワークへの変更申請についてもe-Gov(イーガブ)を利用して申請することができます。