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会社設立で利用できる創業融資と消費税の免税期間

起業するときに最も重要なのが運転資金を含めた創業資金の確保です。創業費用は当初の思惑を超えることも多く、十分確保したはずの資本金も事業が動き出すと入金より支出のほうが早く発生するため、たちまち底をついてしまうケースもあります。
今回は資金繰りの第一歩となる創業資金の確保と、その有力な手段である「創業融資」についてまとめましたので、これから会社を設立する方はぜひご参考下さい。

 

 

1 創業融資とは

基本的に、銀行などの金融機関は、信用力のない会社や人に融資をしません。まして、実績のないこれから事業を立ち上げようという人に対して、何の保証もなく融資するような金融機関は皆無と言ってよいでしょう。では、起業家は潤沢な自己資金がないと、事業を始めることができないのでしょうか。
類まれな技術やアイデアを持つ人、ビジネス感覚の優れた人が、開業資金がないばかりに一生陽の目をみることができなければ、新たな産業やサービスは生まれず、技術革新も進まないことになり、日本の産業や経済は活性化せず、停滞を招くことにつながります。

 

民間ができないなら国の出番です。近年、国は産業力強化や雇用創出を目的に、創業を推進しており、この政策のもと、日本政策金融公庫が、創業にかかる融資を積極的に行っています。また、自治体と信用保証協会及び銀行が連携する「制度融資」も用意されており、創業資金はこれら公的な融資制度を利用することが可能なのです。各融資制度について見ていきましょう。

 

 

2 日本政策金融公庫の創業融資制度

日本政策金融公庫(以下、「公庫」という。)は、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行を統合して2008年10月に発足した財務省所管の政府系金融機関で、基本的には旧3公庫の業務を引き継いでいます。公庫が扱う創業資金は、利用者の属性に応じて用意されていますが、本稿では主なもの2種類をご紹介します。公庫のホームページより2資金の概要をお示しし、その違いと融資審査のポイントを解説します。

 

 

2-1 新規開業資金

項目 内容
ご利用いただける方 (注1) 「雇用の創出を伴う事業を始める方」、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」又は「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方」等の一定の要件に該当する方(注2) なお、本資金の貸付金残高が1,000万円以内(今回の融資分も含みます。)の方については、本要件を満たすものとします。
資金の使い道 新たに事業を始めるため、又は事業開始後に必要とする資金
融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
ご返済期間 設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>
運転資金 7年以内 <うち据置期間2年以内>
利率

※特利関係を含め、金利は公庫のホームページでご確認下さい。
【基準金利】
  • 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けて新たに事業を始める方(注3)の運転資金及び設備資金(土地取得資金を除きます。)
【特利A】
  • 地域創業促進支援事業又は潜在的創業者掘り起し事業の認定創業スクールによる支援を受けて新たに事業を始める方(注3)の運転資金及び設備資金(土地取得資金を除きます。)【特利A】
  • Uターン等により地方で新たに事業を始める方(注3)の運転資金及び設備資金(土地取得資金を除きます。)【特利A】
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資(転換社債、新株引受権付社債、新株予約権及び新株予約権付社債等を含む。)を受けた方(注3)の設備資金・運転資金【特利A】
  • 技術・ノウハウ等に新規性が見られる方(注3)の運転資金及び設備資金(土地取得資金を除きます。)【特利B】
保証人・担保 お客様のご希望を伺いながらご相談させていただきます。

 

2-1-1 次のいずれかの要件に該当することが必要です(雇用創出等の要件)。

  1. 現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方。
    1. 現在お勤めの企業に継続して6年以上お勤めの方
    2. 現在お勤めの企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
  2. 大学等で習得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
  3. 技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める方
  4. 雇用の創出を伴う事業を始める方
  5. 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業①を受けて事業を始める方
  6. 地域創業促進支援事業②又は潜在的創業者掘り起し事業の認定創業スクールによる支援を受けて事業を始める方
  7. 公庫が参加する地域の創業支援ネットワーク③支援を受けて事業を始める方
  8. 民間金融機関④と公庫による協調融資を受けて事業を始める方
  9. 前1~7までの要件に該当せず事業を始める方で事業開始後おおむね7年以内の方
  10. 1~9のいずれかを満たして事業を始めた方で事業開始後おおむね7年以内の方

 

2-1-2 事業を始める方には、事業を始めた方で事業開始後おおむね7年以内の方も含みます。

 

 

2-2 新創業融資制度

項目 内容
ご利用いただける方 次の1~3全ての要件に該当する方
  1. 創業の要件
    新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方
  2. 雇用創出等の要件(注1)
    「雇用の創出を伴う事業を始める方」、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」又は「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方」等の一定の要件に該当する方(既に事業を始めている場合は、事業開始時に一定の要件に該当した方) なお、本融資の貸付金残高が1,000万円以内(今回のご融資分も含みます。)の方については、本要件を満たすものとします。
  3. 自己資金要件
    新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方
    ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします(注2)
資金の使い道 事業開始時または事業開始後に必要となる事業資金
融資限度額 3,000万円(うち運転資金1,500万円)
ご返済期間 各種融資制度で定めるご返済期間以内
利率 基準金利:2.26~2.65(平成31年2月14日現在)※詳細は、公庫のホームページでご確認下さい。
担保・保証人 原則不要
※原則、無担保無保証の融資制度であり、代表者個人には責任が及ばないものとなっております。法人のお客様がご希望される場合は、代表者(注3)が連帯保証人となることも可能です。その場合は利率が0.1%低減されます。

(注1) 新規開業資金の(注1)と同様です。
(注2) 事業に使用される予定のない資金は、本要件における自己資金には含みません。
(注3) 実質的な経営者である方や共同経営者である方を含みます。

 

【自己資金要件を満たすものとする要件】

  1. (注1)の3~8に該当する方
  2. 新商品の開発・生産、新しいサービスの開発・提供等、新規性が認められる方
    1. 技術・ノウハウ等に新規性が見られる方
    2. 経営革新計画の承認、新連携計画、農商工等連携事業計画、地域産業資源活用事業計画、地域産業資源活用事業計画又は経営力向上計画の認定を受けている方
    3. 新商品・新役務の事業化に向けた研究・開発、試作販売を実施するため、商品の生産や役務の提供に6カ月以上を要し、かつ3事業年度以内に黒字化が見込める方
    4. 中小企業経営強化法に基づく中小企業の新たな事業活動の促進に関する基本方針に定める新たな取り組みを行い、2年間で4%以上の付加価値額の伸び率が見込まれる方
  3. 中小企業の会計に関する指針又は基本要領の適用予定の方

日本政策金融公庫より引用・加筆)

 

 

 

2-3 新規開業資金と新創業融資の違いと共通要件

《資金概要の比較》

項目 新規開業資金 新創業融資
利用対象者 ・新たに事業を始める方
・事業開始後おおむね7年以内の方
・新たに事業を始める方
・事業開始後税務申告を2期終えていない方
資金使途 新たに事業を始めるため、又は事業開始後に必要とする資金 事業開始時または事業開始後に必要となる事業資金
融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 3,000万円(うち運転資金1,500万円)
担保・保証人 不要

 

① 新規開業資金と新創業融資の違い

この比較表を見ると、最も大きな違いは、新創業融資が無担保・無保証だという点です。これは、融資限度額は新規開業資金の半分程度とは言え、仮に倒産しても借入金の返済が不要だということです。また、両方とも、「新たに事業を始める方」を対象とするものの、新規開業資金は「事業開始後概ね7年以内」までカバーするのに対し、新創業融資制度は「事業開始後税務申告を2期終えていない方」までとなっています。新創業融資制度は新規開業資金に包含される「特例措置」の位置づけとなっています。

② 共通要件

利用対象者について、新規開業資金の(注1)と新創業融資の「雇用創出等の要件」(注1)で記載されている10項目は、記載順は違うものの内容は同じです。中でも後述する審査の関係でいうと、事業の経験を問われるという意味で要件は同じです。

 

《二つの資金で共通する利用者要件》

新規開業資金(注1)の1、新創業融資の(注1)の3.で「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方」

(1) 現在の企業に継続して6年以上お勤めの方
(2) 現在お勤めの企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方

 

 

2-4 公庫の創業融資審査

融資を受けるためには審査に通る必要があります。審査のチェックポイントでウエイトが大きいのは、事業計画の内容と創業者の経歴です。特に事業計画は、取扱事業の業界の現況や将来性、競合状況と他社に対する優位性など、幅広い角度から検証されます。自治体の制度融資の体制と公庫の体制を比較しながら、審査ポイントを探っていきます。

 

① 公庫と制度融資の比較

創業融資には、次の二つの形態があります。

 

1)日本政策金融公庫の融資
2)信用保証協会、自治体、民間金融機関連携による制度融資

 

制度融資は、信用保証協会、自治体、民間金融機関の連携で成り立っています。信用保証協会というのは公的な機関で、借入者の債務を保証する役割を担います。借入者が返済できなくなったときに、かわって金融機関に返済する機関です。金融機関の回収不能リスクをなくすことで、創業者融資を可能としています。ただし、借入者の返済義務がなくなるわけではありません。保証協会が返済(代位弁済と言います)した場合は、借入者は銀行ではなく保証協会に返済することになります。

 

自治体の役割は、行政区域内の実態に応じて、創業者育成のための融資の仕組みを作り、借入者が負担する金利や保証協会の保証料等を補助することにより、創業を支援することにあります。
このように三者連携となる制度融資の場合は、信用保証協会の審査⇒金融機関審査⇒自治体審査の流れとなり、審査機関と融資機関を兼ねる公庫に比べて、審査期間が長くなってしまいます。公庫で約1か月、東京都の制度融資では2~3カ月かかるようです。

 

② 公庫の新創業融資審査のポイント

審査の大きなウエイトを占める「事業計画」についてみてみましょう。新創業融資制度の審査を前提に、公庫の「創業計画書」様式から記載項目と記載上のポイントを整理してみます。

 

  項目 記載上のポイント
1 創業の動機 最も大事な項目で、起業家のやる気が現れる部分です。特に、新創業融資の場合、無担保・無保証で貸し出すため、創業への本気度が審査のポイントになります。
2 経営者の略歴等 融資要項にもあるように、創業しようとする事業への関りを重視しています。基本的に、経営実績がない人を審査することになりますので、その事業に精通していれば、その人の強みであり、ビジネスチャンスを掴む可能性が高いと言えます。たとえ、始めようとする事業に精通していなくても、経歴から可能性を見いだせれば、それも審査の上では強みになります。自身のキャリアを詳細に記載し、創業に値する人間であることをアピールしましょう。
3 取扱商品・サービス 商品別に事業への貢献度を記載する欄とセールスポイントを記載する箇所があります。業界内で目指す位置を明確にすることも重要です。
4 取引先・取引関係等 販売先、仕入先、外注先等を記載する様式です。ターゲットを明確にしていれば、事業の具体性が見えます。販売先や仕入先を記載できれば、創業者の信用度の客観的な判断基準にもなります。
5 従業員 従業員の数や雇用見通しも重要です。人件費負担も審査上の要点です。
6 お借入れの状況 創業者の借入状況です。事業資金以外の借入状況を確認します。
7 必要な資金と調達方法 設備資金、運転資金の金額、自己資金の状況を記載します。特に自己資金は、自身が形成した貯蓄等であることを要します。融資要項の自己資金要件にあるとおり、創業資金総額の10分の1を確保しておかなければなりません。
8 事業の見通し 創業当初と軌道に乗った後の見通しを記載します。売上高、原価のほか人件費等の経費とともに利益計画を記載します。根拠も記載しなければなりませんので、業界の動向や経済環境等も勘案した明確な根拠を示す必要があります。

 

新創業融資は、無担保・無保証の特例措置が適用されるため、融資要件と審査は他の資金より厳しいものとなります。上表にも記載していますが、自己資金の要件(創業資金総額の10分の1)を満たさなければなりません。決して、安易な気持ちで審査に臨むことのないよう注意して下さい。

 

 

3 東京及び関東圏で利用できる創業融資

もう一つの創業資金調達手段である制度融資についてみてみましょう。制度融資は、前述の通り信用保証協会の保証付き融資ですが、自治体(都道府県)によって融資要項が異なるため、利用対象者要件も相違しますのでご注意下さい。東京ほか関東圏の自治体の内容を紹介します。

 

 

3-1 東京都

東京都は、23区共通の制度融資「創業」及び「女性・若者・シニア創業サポート事業」のほか、都内23区において創業支援資金が用意されています。このうち、東京都の「創業」資金の内容を見てみます。

 

東京都創業融資要項

項目 東京都
ご利用いただける方 融資対象1(創業前) 事業を営んでいない個人であって、1か月以内に新たに個人で又は2カ月以内に新たに会社を設立して東京都内で創業しようとする具体的計画を有し、融資対象の基本要件(注2)の(2)から(4)をすべて満たすもの。
融資対象2(創業後) 次の(1)から(3)までをすべて満たすもの。
(1)中小企業者又は組合であること
(2)創業した日から5年未満であること
(3)融資対象の基本要件(注2)を満たすこと
融資対象3(分社化) 東京都内で分社化しようとする具体的な計画を有する会社又は分社化により設立された日から5年未満の会社。 なお、会社は、融資対象の基本要件(注2)を満たす中小企業者であることを要する。
資金使途 運転資金、設備資金
融資限度額(注1) 3,500万円(ただし、融資対象1は自己資金に2,000万円を加えた額の範囲内)
融資期間 運転資金 7年以内(据置期間1年以内を含む)
設備資金10年以内(据置期間1年以内を含む)
融資利率 (年率) 固定金利と変動金利のうちから、借入申込者が選択できるものとする。
【固定金利】(融資期間により異なる。融資時の金利が完済まで適用される。) 融資期間 
3年以内     1.9%以内      
3年超 5年以内  2.1%以内      
5年超 7年以内  2.3%以内      
7年超      2.5%以内

【変動金利】(短プラ+0.7%以内)
- 以下、略 -
返済方法 返済方法、融資形式は -略-
信用保証料 保証協会の定めるところによる
なお、東京都が信用保証料の2分の1を補助する。
保証人・担保 (注3)のとおり。

(注1) 融資限度額の取扱い
融資対象1及び3は、「創業関連保証(2,000万円)」及び「創業等関連保証(1,500万円)」 の範囲内とする。   
融資対象2以降 -略-・・・内容は既往の創業関係融資残高を含めるという内容。

(注2)融資対象の基本要件   
(1)東京都内に事業所(個人事業者は事業所又は住居)を有し、保証協会の保証対象業種に 属する事業を営んでいること。ただし、一定の業歴要件が必要となる場合がある。
(2)当該事業を営むために許可、認可、登録、届出等を必要とする業種にあっては、当該許 可等を受けている(又は、受ける)こと。
(3)事業税その他租税の未申告・滞納や、社会保険料の滞納がないこと。ただし、完納の見 通しが立つ場合などはこの限りでない。
(4)現在かつ将来にわたって、暴力団員等に該当しないこと、暴力団員等が経営を支配して いると認められる関係等を有しないこと及び暴力的な要求行為等を行わないこと。

(注3)ここで記載する事項は、東京都の「平成30年度中小企業制度融資要項」の総則の4.融資条件に記載されている事項です。(注3)という表記は、融資要項ではなく本稿で独自に使用しているものですのでご留意下さい。

 

保証人 原則として法人代表者(実質的な経営権を持っている者等を含む。)を除き連帯保証人は不要とする。ただし、組合は、その実情に応じ、代表理事以外の理事を連帯保証人とする場合がある。 なお書き以降 -略-
物的担保 新規の保証の種別(一般保証又は特例保証のいずれか一方)における保証付融資の合計残高が8,000万円以下の場合は原則として無担保とし、8,000万円を超える場合は物的担保を必要とする。ただし、保証付融資の合計残高が8,000万円以下の場合でも物的担保が必要となる場合がある。

また書き以降、-略-

東京都産業労働局より一部抜粋引用・加筆)

※融資申込時に必要な書類等は、ホームページでご確認下さい。

 

 

 

3-2 神奈川県

創業支援融資要項(2018年12月現在)

項目 内容
ご利用いただける方 ア.現在、事業を行っていない開業前の個人で、次のいずれかに該当する創業者
  • 1か月以内に新たに個人事業を開業予定の方
  • 2カ月以内に法人事業(NPO法人、医療法人を除く)を新たに開業予定の方
イ.事業を行っていない個人による開業で、開業してから5年未満の中小企業者
NPO法人、医療法人を除く)
《創業特例(融資利率の優遇)》
上記ア又はイに該当する方のうち、

ウ.融資申込前に創業支援機関(KIP、商工会、商工会議所等)の経営指導を受け、かつ、融資実行後概ね2回以上の経営指導を受ける方

エ.*国が認定した市町村の特定創業支援等事業を利用した方(開業前の場合は、開業の6カ月前から利用可)
*神奈川県内では、平成29年12月25日現在で28市町が実施しています。詳細は神奈川県のホームページからご確認下さい。
資金使途 運転資金・設備資金
融資限度額 3,500万円(開業前の場合、2,000万円までは自己資金の制限がなく、2,000万円を超える分は自己資金と同額の範囲内となります。)
融資利率 (固定金利) 年2.0%以内 (創業特例の場合は、年1.6%以内)
融資期間 1年超10年以内
返済方法 分割返済(1年以内の据置き可)
担保 不要
保証人 原則として法人の代表者は連帯保証人となります
信用保証率 0.80%(創業特例の場合は0.60%)

(以上、神奈川県産業労働局中小企業部金融課より抜粋引用)

※融資申込時に必要な書類等は、ホームページでご確認下さい。

 

 

3-3 埼玉県

起業家育成資金(新事業創出貸付)*起業家育成資金には「独立開業資金」もあります。

 

項目 内容
対象者 1か月以内に個人で事業を開始もしくは2カ月以内に会社を設立し、事業を開始する具体的な計画を持つ創業者又は開業後5年未満の中小企業 (*廃業経験がある方は、再挑戦支援保証を利用できる場合があります。)
資金使途
融資限度額
融資期間
設備資金 限度額 :1,500万円以内(再挑戦支援保証利用の場合1,000万円以内)
融資期間:10年(据置1年)以内
運転資金 限度額 :1,500万円以内(再挑戦支援保証利用の場合1,000万円以内)
融資期間:7年(据置1年)以内
※開業前の場合は、融資額と同額以上の自己資金が必要となります。
保証料率 年0.80%以内
融資利率 平成30年10月1日~平成31年3月31日融資実行分
1年超 3年以内 0.7%以内
3年超 5年以内 0.8%以内
5年超 10年以内 0.9%以内
※ 利率の改定時期は4月1日と10月1日の年2回です。
担保 不要
保証人 原則として法人の代表者は連帯保証人となります
信用保証率 0.80%(創業特例の場合は0.60%)

(以上、ミラサポ施策マップ埼玉県産業労働部金融課チラシを参照)

※融資申込時に必要な書類等は、ホームページでご確認下さい。

 

 

3-4 千葉県

項目 内容
対象 1)一般枠 創業者又は創業後5年未満の中小企業者の方(※NPO法人はご利用になれません。)
2)経験・資格枠 一般枠のうち以下の要件に該当し、かつ3,500万円を超える資金を必要とする方(NPO法人はご利用になれません。)。
ア.同一企業に継続して3年以上、又は同一業種の企業に5年以上勤務し、独立して同一業種の事業を創業
イ.法律に基づく資格を取得した者で、その資格を活かして、新たな事業を創業
資金使途 1)一般枠:設備資金、運転資金 2)経験・資格枠:設備資金
融資限度額 1)一般枠 創業者又は1中小企業者3,500万円(運転資金2,500万円まで) なお、審査の結果、一定の自己資金が必要となる場合があります。
2)経験・資格枠 創業者又は1中小企業者
一般枠の限度額にプラス2,500万円
融資期間 1)一般枠:設備資金7年以内、運転資金5年以内
2)経験・資格枠:設備資金7年以内
融資利率 固定金利で、融資期間に応じて年1.0%~年1.7%で設定されています。
詳細は、ホームページでご確認ください。
償還方法 割賦償還(据置期間1年以内)
信用保証
※1
1)一般枠:創業又は創業等関連保証
2)経験・資格枠:協会保証
保証料率 1)一般枠:年0.8%※2  2)経験・資格枠:年0.45%~1.9%
保証人 法人代表者以外原則不要
担保 1)一般枠:無担保
2)経験・資格枠:金融機関又は信用保証協会所定

千葉県商工労働部経営支援課金融支援室より一部抜粋引用)

1※:信用保証は全て千葉県信用保証協会の保証です。
2※:認定経営革新等支援機関から創業計画の策定支援を受けた創業事業者(創業予定者又は事業を開始してから1年を経過していない中小企業者)については、保証料の割引があります。以上

 

 

4 制度融資の申込から実行

制度融資の申し込みは、信用保証協会に先に申し込む方法と金融機関に申し込む方法があります。信用保証協会経由の場合、最寄りの支店へ連絡して必要書類を持参し審査を受けます。協会審査が通れば金融機関へ持ち込んで審査を受け、融資実行という手順となります。協会審査が通れば、金融機関審査で拒絶されることはまずありません。金融機関申込みからの場合は、この反対の手順ですが、融資は、協会保証の可否にかかっていることにご留意ください。

 

 

5 消費税の免税期間も活用

法人にとって、「税金」と言えばやはり最も気になるのは法人税でしょう。しかしながら、法人税と並んで重要な税金として、消費税があります。消費税は、特別地方消費税をあわせると、税率は現在8%で、今後10%に引き上げられることが予定されています。
しかし消費税には条件を満たせば免税となる期間があり、特に、会社設立時には意識しておくことでこの条件を適用できる場合があります。そこで消費税の仕組みを紐解いた上で、免税となる条件を整理し、さらに、免税期間をできる限り伸ばすためのポイントについて解説します。特に、会社設立を考えている方は、十分に準備しておいてください。

 

法人にとって「法人税」と「消費税」は金額が大きいため重要な税金といえます。法人税は、その法人が稼いだ利益に対して課税されるものです。法人は、経済活動を営んでいく中で、様々な社会的サービスを受けています。そこで、このような社会的サービスを提供するための財源を、世の中で生み出されている経済的な付加価値に応じて負担しようというものです。そのため利益を基礎として計算されているのです。

 

他方、重要な税金である消費税は、「消費」活動に対して課税するものです。われわれ国民は、日々の生活の中で、様々な商品やサービスを消費しています。まずは、消費税とは何に対する課税なのか、誰が支払うのか、といった基本的な仕組みを確認しましょう。

 

 

 

5-1 消費税は誰が払う?

消費税の課税対象は衣食住など生きていくために最低限必要なものから、ぜいたく品や海外旅行、といった様々な商品・サービスとなります。すなわち企業などから供給される商品やサービスを「消費」する活動であり、消費活動は、所得が高い人ほど大きくなる性質がありますから、税を負担する力が大きい人ほど多くの税金を負担するべきである、という考え方に合致しています。

 

消費税を誰が負担しているのかという点で考えると、消費者になります。法人ではありません。もちろん、法人が消費者になることもありますが、ざっくりと役割を分けて考えると、商品やサービスを提供するのが法人で、消費するのは個人である消費者です。そのため消費税は消費者が納めるべき税金である、と言えます。

 

しかし、消費者が商品やサービスを購入するたびに、税務署に行って消費税を納めるのは大変な手間となるため消費税の納税に関しては、ある工夫された仕組みが採られています。簡単に言えば、商品やサービスを提供する法人が、消費者から預かった税金を、消費者に代わって、税務署に納めるのです。

 

その意味で、消費税は、税を負担する人(消費者)と納税する人(法人)が分かれている特殊な税制である、と言えます。

 

 

 

5-2 法人が支払う消費税

法人は消費者から消費税を預かって納税します。このことを、具体的な事例を挙げて確認していきます。

 

例えば、当店は野球のグローブを販売しているショップだとします。グローブ1つの価格は1000円です。お客さんにグローブを一つ売り上げた場合に、お客さんは1000円ではなく、消費税を含めた1080円を支払います。この80円の正体は、お客さんから預かった消費税です。ですから、これをお客さんに代わって税務署に納めにいかなければならないということになります。

 

しかし、当店もこのグローブを仕入先から仕入れる際に、消費税を払っているため不公平といえます。グローブの仕入れ値が400円だったとすると、432円を仕入先に支払っているのです。

 

つまり、当店は、お客さんから預かった消費税80円のうち、32円は仕入先に既に預けていると考えることができます。そのため、当店が税務署に支払うべき税金は、差額の48円ということになります。32円は仕入先が税務署に支払います。

 

その意味で、当店が支払うべき税金は、利益600円の8%分ということで考えることができます。もちろん、厳密に言えば他に様々な要素を計算に含める必要がありますが、ざっくりと考えれば利益の8%程度のインパクトがある数字になります。このボリューム感をイメージすることが重要です。

 

 

6 消費税が免除される条件

前述のとおり消費税が免除になってもならなくても、利益の8%分のキャッシュは手元にあります。免除にならなければそのまま税務署に納めるだけですが、免除になった場合、それはお客さんに返金するのではなく、そのまま法人の利益となります。つまり、利益が8%程度増加することになるため、免除される否かは企業にとって大きな影響があることがわかります。

 

それでは、消費税がどのような場合に免除されるかについて確認します。

 

 

 

6-1 課税売上

消費税は、基準期間の課税売上高が1000万円以下の事業者は、納税の義務が免除されます。ここで、「基準期間」と「課税売上高」という2つのキーワードが登場します。基準期間については後述しますので、まずは課税売上高から見ていきます。

 

課税売上高とは、端的に言えば消費税の対象となる売上の金額のことです。ここでいう売上とは、会計上の、いわゆる「売上」とは少し異なります。会計上の「売上」とは、商品やサービスを提供したときに得られる対価のことを指しますが、消費税の計算では、それに加え、機械や建物といった事業用資産の売却や貸付にともなう収入も含まれます。

 

しかし、土地の売却や貸付にともなう収入、預金や貸付金の利子、有価証券の売却については含まれません。このような課税売上高を計算して、1000万円以下であれば免税、ということになりますが、この課税売上高は概ね事業規模と比例して大きくなります。

 

消費税の免税だけを目的として、課税売上高をコントロールするのは難しく、そこに注力するよりも事業を拡大に専念したほうが良いでしょう。ですから、免税のためのポイントはここではなく、もう一つの基準期間のほうにあると言えます。

 

 

 

6-2 基準期間

基準期間とは、法人の場合、原則として課税期間の前々事業年度を指します。ただし、前々事業年度が1年に満たない場合は、その月数で割ってから12を乗じて1年分の金額をみなし計算します。会社設立時には、基準期間が存在しない課税期間がでてきます。そこがポイントです。

 

つまり、会社設立後2年目までは、前々事業年度は存在しません。ですから、基準期間の課税売上高はゼロであると考えられるため、基本的に2年目までは免税事業者として取り扱われることになりそうです。以前はこれだけの要件で2年間無条件で免税になる時期もありましたが、平成23年度の税制改正によって、さらに条件が付け加えられました。

 

 

 

6-3 その他の免税要件

そもそも基準期間における課税売上高が1000万円以下は免税、という制度は、小規模企業の税負担を軽減するための措置です。課税売上高が1000万円以下であったとしても、大会社の子会社や関連会社など、一見、事業規模は小さくても、実態は大規模企業の一部分として機能しているような会社を、対象に含めるのは不適切です。

 

そこで、まずは資本金の額によって、企業の規模が判定されます。基本的には資本金が1000万円未満であることが、その要件となります。ただし、大規模企業から50%以上の出資を受けているなどの場合には、資本金が1000万円未満であっても、上述の趣旨から対象となりません。大規模企業の判定は、基準期間の課税売上高が5億円以上であること、となっています。

 

そして、平成23年度の税制改正でもう一つの条件が付け加えられました。それが、特定期間の課税売上高に関するものです。従来は、基準期間の課税売上高を参照するのみでしたが、それに加えて、特定期間の課税売上高も参照しなければなりません。ここでいる特定期間とは、課税期間の前年度の開始日から6ヶ月の期間です。つまり、3月決算の会社であれば、4月から9月までの期間、ということになります。この期間の課税売上高が1000万円を超えている場合には、課税事業者となります。つまり、このことによって、2期目でも課税事業者となる場合が出てくるということになります。

 

また、この場合の課税売上高の計算は、給与等の支払額に代えることができます。つまり、2年目も免税事業者となる要件として、資本金が1000万円未満であることに加えて、1年目の特定期間の課税売上高、もしくは給与等の支払額が1000万円未満であること、となります。

 

なお、この特定期間の考え方は設立後2年度目までに限りません。例えば、1年度目の課税売上高が1000万円未満であれば、通常3年度目は免税事業者となりますが、2年度目の特定期間の規定に当てはまると、課税事業者となります。

 

 

7 どうすれば免税期間を伸ばせるのか

免税事業者となる最長期間は会社設立から2年間です。もちろん、課税売上高がずっと1000万円未満であれば、免税事業者であり続けられますが、こうなると本末転倒ですから、そのケースは想定していません。

 

あくまで、持続的に会社を成長させながら、できる限り最長の免税期間を享受することが目標です。そのためにできることは限られていますが、免税になることのメリットは非常に大きいので、できる限り準備をしておくべきでしょう。

 

免税期間を伸ばすための条件は、「資本金を1000万円未満とすること」「特定期間の課税売上高を1000万円以下とすること」「特定期間の給与等支払額を1000万円以下とすること」の3つとなります。

 

 

 

7-1 資本金は1000万円未満

資本金が1000万円未満であることは何よりも重要です。これを満たさなければ、1年目から免税事業者となることはできません。また、1年目は1000万円未満であったとして、その後増資をして2年目に1000万円を超えてしまった場合も同様に、免税事業者から外れてしまいます。そのため、2年目まで1000万円未満の状態を維持しておくことが、免税期間を伸ばすために必要なことであると言えます。

 

この規制に関して対象となるのはあくまで「資本金」であることが重要です。つまり、この規制において、資本準備金や借入金は対象となりません。会社設立時における資金調達の方法には、大きく分けると株主からの出資を受けることと、借り入れを起こすという2つの方法があります。

 

そこで、もし、1000万円では事業資金が十分でないということであれば、一部を資本準備金に組み入れることをまず考えましょう。会社法の規定では、株主からの払込資本のうち、二分の一を超えない金額までは資本金とせずに資本準備金とすることができるようになっています。つまり、資本金を999万円に抑えようとした場合に、同じく999万円を資本準備金とすることで、トータルで1998万円までの資本を用立てることができるのです。

 

さらに、それでも不足する場合、株主からの借入金として負債扱いにしておけば、これは制限なしにいくらでも用立てることができます。資本金1000万円未満の制限は、資金調達額とは切り離して、ある程度自由にコントロールしてクリアできると言えます。

 

ただし、借入金を活用して資金調達をする場合には、別の意味で問題が生じることを念頭に置いておく必要があります。総資本に対する自己資本の割合である自己資本比率が、借入金を増やせば増やすほど小さくなってしまうということです。自己資本比率は、例えば金融機関のような外部の関係者が、財務諸表から財務上の健全性を判断する重要な指標です。この数値があまりにも低ければ、それは会社の信用に関わってくる問題となりうることに注意が必要でしょう。

 

また、資本金の額そのものも、会社の信頼性に関わる情報と言えます。同じ2000万円規模の企業でも、資本金2000万円の企業と、資本金1000万円、資本準備金1000万円の企業では、前者のほうが信用力は高いと判断されます。このように、信用力はある程度犠牲になることを覚悟しておく必要があると言えるでしょう。

 

 

 

7-2 特定期間の課税売上高を1000万円以下

結論から言えば、意図的に課税売上高を1000万円以下にコントロールすることはきわめて困難でしょう。もちろん、事業規模を縮小して、挙げられるはずだった売上を圧縮するということは可能ではありますが、株式会社本来の性質として適切ではありません。多額の建物や機械等の売却の予定があったとして、それをできるかぎり下半期に順延することも可能ですが、会社設立1年目に出てくる案件であることはまれであるため現実的ではありません。

 

そこで、もう一つの選択肢である、「給与等支払額を1000万円以下とする」方向で検討するのが良いでしょう。

 

 

 

7-3 特定期間の給与等支払額を1000万円以下とする

特定期間の課税売上高の規定を適用する際に、課税売上高ではなく、給与等支払額に代えて、計算することができます。つまり、課税売上高が1000万円を超えていたとしても、給与等支払額が1000万円以下であれば、免税要件に当てはまるのです。

 

「給与等支払額を1000万円以下とする」ために、最も効果的な方法として挙げられるのは、「そもそも従業員を雇わない」、ということです。人手が必要な場合でも、業務委託を活用すれば、その経費は給与等の額に含まれません。現在では、クラウドソーシングなども一般的になっているため、アドホックな業務委託も活用して、常勤の従業員を雇わなくても済むようにしておくのが最も効果的であると言えます。ただし、給与等の額には役員報酬も含まれますので、経営者自身の報酬は計算に含めておくように注意してください。

 

どうしても従業員を雇わなければならない状況であったとしても、まだ工夫の余地は残されています。つまり、給与等の「発生額」ではなく、あくまで現金を支出する「支払額」である点に着目します。給与の支払い方法として、月末締めの翌月払いとすることによって特定期間6ヶ月のうち、開始月を除く5ヶ月分とすることができます。6分の1が圧縮されますから、これだけでかなり効果が期待できると考えられます。

 

次に、賞与の支払いを下半期に順延することです。賞与は慣習的に、夏と冬の年2回支払われることが一般的です。この慣例に従えば、特定期間中に一度は賞与の支給月が到来します。そこで、初回の賞与を下半期に順延することによって、特定期間中の給与等支払額の発生を抑えることができます。その分、下半期の賞与を1年分とし、少しだけ色を付けておけば、従業員にとっても悪い話ではないでしょう。

 

このような工夫をすることによって、給与等支払額を1000万円以下にコントロールすることが可能となります。できる限り、最大2年間となる免税期間のメリットを享受しつつ、その機会を得て事業規模を拡大し、3年目からはしっかりと消費税を納税していくのが正しいスタートアップ期における経営者のスタンスであると言えそうです。

 

 

8 まとめ

公庫と制度融資によって、創業の支援体制が整っていることがわかります。自治体の制度融資は地域に応じたきめ細やかな対応が期待できますが、保証協会の保証料負担があることや、審査に要する時間が公庫より長くなる傾向があることに留意して下さい。いずれにしても、創業者の本気度が伝わるような事業計画の作成とその達成意思を示すことが必要であり、これが創業融資獲得の可否を握っているといえます。ぜひこの記事を参考に一人でも会社設立時の必要資金を調達してみてください。

 

 


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