厚生労働省は6月、雇用情勢が厳しい地方でそれぞれの地域の特性を生かした雇用の創出に取り組む「実践型地域雇用創造事業」における採択地域を発表しました。
同事業の対象となったのは、北海道釧路市や茨城県桜川市、鹿児島県奄美市など計13都市。厚生省は、効果的に雇用を創出するため、2012年から雇用と経済の活性化につながると認められるものをコンテスト形式で選んで、実施を協議会に委託しています。
雇用創造事業は7月より開始する予定で、対象地域の第二次募集は6月下旬から始まる予定です。
目次
- 1 実践型地域雇用創造事業とは
- 1-1 有効求人倍率1未満が条件
- 1-2 対象となった13都市・地域
- 2 人口が多い宮崎県宮崎市と最も少ない佐賀県基山町
- 2-1 ICTとの融合で雇用創出を目指す
- 2-2 「食」の拠点づくりで雇用創造
1 実践型地域雇用創造事業とは
政府が推進する「実践型地域雇用創出事業」とは、雇用機会が不足している地域における雇用創出の取り組みを支援するものです。各地域が提案した雇用対策のアイデアのなかから、雇用創造効果が高いと認められるものを、毎年選定してきました。
(参照:厚生労働省「実践型地域雇用創造事業」)
1-1 有効求人倍率1未満が条件
対象地域になるためには、①最近3年間または最近1年間の地域の有効求人倍率が全国平均(1を超える場合には1。0.67未満である場合には0.67)以下であること、②最近3年間又は1年間の有効求人倍率が1未満であって、最近5年間で人口が全国平均以上に減少していることの2つの条件を満たす必要があります。
・事業対象となるための条件
1 | 平均して最近3年間又は最近1年間の地域の有効求人倍率が全国平均(1を超える場合には1。0.67未満である場合には0.67)以下である |
---|---|
2 | 平均して最近3年間または1年間の有効求人倍率が1未満であって、最近5年間で人口が全国平均以上に減少している |
(参照:厚生労働省プレスリリース 2017年6月16日付)
事業の対象となると3年度内を期限として、1地域あたり上限2億円の支援を受けることができます。
1-2 対象となった13都市・地域
厚労省が2017年度の第1次採択地域を募集を行った結果、今回は、北海道釧路市、北海道帯広市、北海道北見市、岩手県二戸地域、山形県南陽市、茨城県桜川市、埼玉県秩父市、愛媛県西予市、佐賀県基山町、熊本県天草地域、熊本県和水町、宮崎県宮崎市、鹿児島県奄美市の各都市が選定されました。
各地域の2019年までの雇用創出目標数とスローガンは次のようになります。
・2017年度 採択地域一覧
都市・地域 | 雇用創出 目標数 | スローガン |
---|---|---|
北海道釧路市 | 182人 | 世界の観光都市「くしろ」で未来を切り拓く!!~みんなが育てる観光のまち「釧路」実践プロジェクト~ |
北海道帯広市 | 170人 | 帯広・十勝の「ここしかない」を磨く雇用創造プロジェクト |
北海道北見市 | 187人 | ひと・まち・自然が調和した活力創造への挑戦!「にぎわいのあるまちづくり」へ |
岩手県二戸地域 | 204人 | にのへ地域の「ひと」「しごと」による自立的・持続的な「まち」づくり |
山形県南陽市 | 105人 | 「シャインマスカットだけじゃない!!南陽Shineプロジェクト」~かがやく文化、きらめく人材、ときめく出会い、そして3つのShineを融和して新たな戦略の構築と雇用創出へ~ |
茨城県桜川市 | 94人 | 「ヤマザクラの里と幸せに暮らす雇用創造プラン」 |
埼玉県秩父市 | 201人 | 守り育てた木で元気を呼び感動を体験できるまち ちちぶ~秩父の地域資源を活かした雇用創造プロジェクト~ |
愛媛県西予市 | 100人 | ジオから生まれる雇用の種を育て、効果的な活用で地域が潤う西予市雇用創造事業 |
佐賀県基山町 | 18人 | 町のハローワーク機能向上プロジェクト〜「食」の拠点づくりで雇用創造 |
熊本県天草地 | 151人 | 観光の裾野拡大で雇用創出!~天草の『宝』ブラッシュアップ事業~ |
熊本県和水町 | 103人 | 里山暮らしの知識や技能を再評価・リノベーションして地域活性化~温故知新なごみ実践プロジェクト~ |
宮崎県宮崎市 | 359人 | 宮崎の豊かな地域資源とICTとの融合による雇用創出-宮崎市『夢。創造』プロジェクト- |
鹿児島県奄美市 | 89人 | 「人の魅力・地域の魅力を世界へ発信!観光客受け入れ体制支援による雇用創出プロジェクト」~世界自然遺産登録を見据えて~ |
(参照:厚生労働省プレスリリース 2017年6月16日付)
2 人口が多い宮崎県宮崎市と最も少ない佐賀県基山町
採択された地域のなかで人口40万人近い宮崎県宮崎市と1万7000人の佐賀県基山町の取り組みを紹介します。両都市は39万人近い差があるものの、有効求人倍率はともに1を切ります。
2-1 ICTとの融合で雇用創出を目指す宮崎市
2017年度第一次採択地域のなかでも2番目に人口が多いのが、宮崎県宮崎市です。
同市は、人口39万9166人(平成29年5月時点)、観光資源を多く持ち、1998年から中核市に指定されているものの、有効求人倍率は1を切ります。
宮崎市では現在、新規高卒者の内定率が低く、また県外への転出が大幅に増加しているため人口減少率が高く、高齢化も進んでいます。こうした問題に対応するため、「ICT産業分野」、「地域資源分野」に重きを置き、高度なIT知識・スキルを習得する「ICTスペシャリスト養成講座」、新特産品や観光プログラムを開発する「地域資源開発実践事業」などを行い、機会の拡大を目指しています。
(▲宮崎市観光名所の青島)
※ 中核市とは、人口20万人以上が要件。政令指定都市が処理することができる事務のうち、都道府県がその区域にわたり一体的に処理することが中核市が処理することに比して効率的な事務を除き、中核市に対して移譲するものをいう。(参照:総務省)
※ 有効求人倍率とは、求職者に対する求人数の割合をいい、「月間有効求人数」を「月間有効求職者数」で割って求める「有効求人倍率」と、「新規求人数」を「新規求職申込件数」で割って求める「新規求人倍率」の2種類に分かれる。(参照:厚生労働省)
2-2 「食」の拠点づくりで雇用創造
佐賀県東部に位置する面積22キロ平方メートル、人口1.74万人の小さな町である基山町は、20年を超える歴史を持つ「きのくに祭り」や、つつじ寺として親しまれる大興善寺での「つつじ祭り」などが有名です。
製造業や流通業の従事者が多い町ですが、生産年齢人口の減少に伴い、地元企業の雇用確保が厳しさを増しています。
基山町はこうした問題に対応するため、食品産業に焦点を当て、地域が連携した「食」の拠点を構築するため、地域資源の掘り起こしや商品化を推進、人材育成を行う「地域資源活用セミナー」などを実施するとしています。雇用創出者予定人数は18人と、今回募集のなかでは最少ですが、町外のUIJターン就職希望者に対して就職情報を発信し、雇用機会の拡大を目指すとしました。
(▲基山町にある大興善寺)
※ UIJターンとは、都市部から地方に移住する動きの総称のこと。Uターンは自分の出身地に戻ること、Iターンは出身地とは別の地方に移住すること、Jターンとは出身地近くの地方都市に移り住むこと。
県外へと流出する若者や働き手をなんとかして呼び戻したい各地方自治体。果たして都心の一極集中は改善されるのでしょうか。今後の動きに注目です。