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エドテック市場の将来性とその起業・会社設立のポイント

情報通信技術の発展や新型コロナの感染拡大の影響などにより、教育分野で大きな変革が起こりつつあります。IT環境の整備が進み教育機関をはじめ、個人や企業などの学習・教育・研修等において、「エドテック(テクノロジーを教育に取入れ・支援するサービス)」を活用したイノベーションが進められているのです。

 

教育の質が個人の幸福や企業の発展のみならず、国家の繫栄に大きな影響を与える手段になることを考えると、エドテックが担う役割は重大と言えるでしょう。

 

今回はこのエドテックを取上げ、事業の内容・種類、エドテック市場の将来性やメリット、注目の参入企業(ベンチャー企業等)の例、当該分野での起業・会社設立の進め方のポイント及び注意点、などを説明します。

 

独自の学習・教育方法をエドテックで事業化したい方、学校等に効率的な学習システムを導入するサービスをしたい方、ITを活用した受験・資格取得対策等の支援サービスを始めたい方は参考にしてみてください。

 

 

1 エドテックとは

エドテックとは

 

まず、「エドテック」とは何か、教育分野でどのような事を行うことなのか、市場の状況や将来性を確認してみましょう。

 

 

1-1 エドテックの概要

「エドテック(EdTech)」とは、英語の「Education(教育)」と「Technology(技術)」の文字を組み合わせた造語で、一般的にテクノロジーを駆使して教育を支援するサービスや仕組みなどを意味します。

 

単にITを活用して教育システムを作り提供するというものではなく、ITを中心としたテクノロジーの利用により、これまでの教育方法や教育サービスにイノベーションを起こすサービスです。

 

Finテック(金融とテクノロジー)、不動産テック(不動産とテクノロジー)、MedTech(医療とテクノロジー)、AgriTech(農業とテクノロジー)などのように、デジタル技術やICT(情報通信技術)等を既存産業のイノベーションに繋がるように導入し活用して新しい価値を生み出す「X-Tech」の1つとして、今「エドテック」が注目されています。

 

ICTの発展により情報が時間や場所の制約なしに得られるようになった社会においては、教育分野でもエドテックにより従来の教育方法とは異なるより効果的な学習や効率的な管理・運営が実現されつつあるのです。

 

今までは学校など教育サービスを受ける施設に生徒等が通い、教師等がその場で授業を行うといったサービス形態でした。しかし、ICTの活用により授業をオンラインやリモートで実施できるようになり、生徒はPC等を通じて自宅で授業等が受けられるようになったのです。

 

通学の場合の授業でも端末(PC等)が生徒1人に1台が配布される環境が整い、必要な学習情報を的確に生徒に提供することができ理解を深められる授業が提供されています。

 

各学年の全生徒に共通した学習内容を提供するほか、個別の学習進度に合わせた内容をカスタマイズして提供するといった個別対応も可能です。その結果、「理解しないまま次に進む」といった理解不足の生徒を置き去りにするような従来教育の不備が解消されつつあります。

 

生徒の学習進度をシステムが把握し、その状況にあった適切な学習内容を自動的に提供できれば教師や学校側の負担は大きく軽減され、より重要な教育サービスに時間が割けるようになるのです。

 

エドテックのこうした可能性に文部科学省は着目し、「Society5.0におけるEdTechを活用した教育ビジョンの策定に向けた方向性」を2018年に発表しました。その中でエドテックは次のように捉えられています。

 

・EdTechを「教育におけるAI、ビッグデータ等の様々な新しいテクノロジーを活用したあらゆる取組」と位置付ける

 

・EdTechは、児童生徒と教師にとって使いやすく、教育の質の向上につながるものでなければならない

 

文部科学省はこうしたエドテックの位置づけのもとで、「児童生徒や教師の視点を大切にしながら、新しい技術の開発・活用を推進する」として取組もうとしているのです。

 

個人の幸福はもとより国家の隆盛はその教育に大きな影響を受けますが、エドテックが教育のあり方を抜本的に変革し、良い影響を与えようとしています。

 

 

1-2 エドテック事業の種類

ここではエドテックを活用した事業やサービスについて主なタイプを紹介しましょう。

 

①エドテックの種類

近年、IT関連企業がエドテック分野への参入を強めており、様々な種類のサービスが提供され始めました。

 

具体的には、デジタル・オンライン教材といった学習コンテンツ、学びの場となる学習プラットフォーム、学習者向けの学習支援ツール、学校・教員向けの管理ツール、などを提供するといったサービスです。

 

なお、エドテックの代表的な分野としては以下の3つが挙げられます。

 

エドテックとは

 

1)オンライン学習

 

オンライン学習は、インターネット経由でPC等の端末を利用して様々な授業や講義を受ける学習方法です。そのオンライン学習の分野では2012年にアメリカで開始された「MOOC(ムーク)」がEdTechの代表的なサービスと言えるでしょう。

 

日本でもJMOOC(日本オープンオンライン教育推進協議会)が設立され、「オンラインで公開される無料の講座を受講し、修了条件を満たすと修了証が取得できる」MOOC(MOOCs)という教育サービスが提供されています。こうしたサービスを通じて国内の大学の講義も配信されているのです。

 

ほかにも最近では様々なオンライン学習サービスが登場しています。例えば、英会話やプログラミングの学習のほか、ギターなどの楽器演奏といった趣味分野の講座などを提供するサービスも見られるようになってきました。

 

2)アダプティブラーニング

 

アダプティブラーニングは、各学習者の状況をもとに、各々に最適化した学習方法を提供するオーダーメイド的な学習方法(個々のレベル・進度等に合わせた個別対応の学習を実現する方法)です。

 

具体的には、学習者の過去の学習履歴やテストの結果・回答内容等をデータとして蓄積・分析し、その結果から各学習者の理解不足をカバーし理解を深める最適な学習方法を個別に提供するといった方法になります。

 

各学習者に合わせた学習方法を提供することの重要性は今までにも指摘されていますが、教師が1人で大人数の生徒に対して実施するのは現実的ではありませんでした(成績・能力別のクラス分けによる指導程度が精一杯)。

 

しかし、現代ではICT、ソーシャルメディアやAIなどの科学技術等を活用することで多人数相手でも双方向のやり取りがリアルタイムで可能となるほか、学習結果をシステムが吸収して蓄積・分析して各学習者に最適な学習内容を提供できるようになっているのです。

 

つまり、今まで理想とされていた個別最適の学習方法がアダプティブラーニングにより実現されようとしています。

 

3)疑似体験学習

 

エドテックの中には、VR等を利用して現実世界で行われているような学習を疑似体験として提供できるものもあります。VRは、Virtual Reality(バーチャルリアリティ)の略で、日本では仮想現実など呼ばれており、映像や音声の効果を利用して現実世界で実際に体験しているような感覚を提供する技術のことです。

 

VRで仮想空間を作り、様々な疑似的な学習体験をさせるわけですが、具体的には歴史的な建造物、海外の最先端技術を有する工場や国際機関などへバーチャルに訪問し知識を得たり体験したりできます。

 

その場所に行って学ばないと得られないような専門性が高い知識や特殊なスキル(火災現場の体験、医療・溶接等のスキルの取得、職業訓練等)なども疑似体験学習のシステムにより時・場所・コストといった制約を抑えてより効率的に学習することが可能です。

 

以上が主なエドテックによる学習方法ですが、「できること」という観点で捉えると以下のようにまとめられます。

 

●オンラインで学習内容を提供できる

⇒前述のオンライン学習の内容の通りです。

 

●教師・生徒・保護者のコミュニケーションを促進できる

⇒学校等の教育機関向けのSNSやプラットフォームなどが提供され利用されています。教師が生徒にメッセージを送信したり、クラスの教材を共有したり、生徒が教師やクラスへ簡単に質問できる環境などが提供されているのです。また、保護者が生徒やクラスの状況などを容易に把握できます。

 

●効率的な学習を運営・管理できる

⇒オンライン学習(e-ラーニング)を効率的・効果的に実施するためには、必要な教材の配信や成績・回答の評価・分析などを統合的に運営・管理するシステムが必要となりますが、それを実現するプラットフォーム(Learning Management System等)が提供されています。

 

主な機能としては、「生徒及び教材の管理」と「学習の進捗状況の管理」があり、教師は学習内容を各生徒に合わせて効率的に提供できるとともに業務負担を軽減することが可能です。

 

●多様な学習方法を提供できる

⇒「楽しくむ学ぶ」という「ゲーミフィケーション」の要素を多く取り入れた学習法が提供されています。遊び心を有する学習機会を教師が提供するのは容易ではないですが、システムにゲーム性をもたせた教材やコンテンツなどを組み込めばそれも困難ではありません。

 

ゲームのようにレベル分け、ミッションの設定やポイントの付与などの要素が学習内容に組み込まれていると、学習者に興味を持たせ理解を深めさせ挫折が防ぎやすくなります。

 

②エドテック事業のタイプ

エドテック事業を学習に関連した支援ツール・システムのタイプでカテゴライズすると以下のような事業が挙げられます。

 

1)主に教育機関・教師側向け

 

●授業・講義の支援ツール

以下のような機能を有するタイプが多いです。

 

・学習の実績を保存し振り返りをサポートする機能
⇒学習の一元管理から多面的・総合的な評価が可能になります。

 

・双方向のコミュニケーション機能
⇒先生・生徒・保護者の情報の共有化をサポートする機能です。

 

・各生徒に合わせた最適化学習をサポート
⇒アダプティブラーニングのサービスになります。

 

2)主に生徒側向け

 

●学習支援ツール

・ゲーム感覚で学習意欲を掻き立てる機能
⇒ゲームのように学習を進める、ネット上で対戦しながら学習を進める、などで生徒の学習意欲が高められます。

 

・学習プラットフォームの提供
⇒楽しく学び容易に質問できるような学習の場となる学習プラットフォームの提供です。

 

●キャリア支援ツール

・アウトスキリングのプラットフォームの提供
⇒社員のキャリア開発や教育訓練のサポートのほか、レイオフ等の可能性の高い者にITスキル等の教育を施し新しいキャリア形成を支援する等のサービスになります。

 

●学校経営支援ツール

・学校の運営・管理をサポート
⇒学校等の教育リソースの一元管理、教師のスケジュール作成、授業のコース・活動計画の作成等の支援サービスです。

 

 

1-3 エドテック市場の状況と拡大する背景

ここではエドテック市場の現状を確認し、必要とされる理由や将来性について説明しましょう。

 

①エドテック市場の規模と今後

野村総合研究所(NRI)によると、2016年度のエドテック市場の規模は推計で約1,700億円です。しかし、市場拡大の余地があり、公教育における情報端末の整備が進む2020年以降には、児童・生徒向けの教科学習コンテンツの市場投入が進み2023年にはエドテック市場全体で約3,000億円に達すると同所は見込んでいます。

 

上記の通り国内のエドテック市場の規模はまだ大きいとは言えず、黎明期を抜け出したと言えない状況です。これまで同市場では無料のサービスが主体であり、現在やっと十分な収益を確保できる企業が見え始めましたが、有料サービスのさらなる増加と利用者の増大がまだ課題であると言えるでしょう。

 

また、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)の資料によると、「第4次産業革命で教育現場でEdTechの導入が進んでおり2025年の世界市場規模は38兆円超の予測。日本のEdTech市場は2,403億円(教育市場は2.5兆円程度)」とのことです。

 

エドテックの世界市場の伸び率(2018-2025年)は約2倍で、金額にすると17兆円から38兆円へと大幅に増加することが見込まれています。また、本資料では以下の点が指摘されています。

 

・「世界の教育現場のデジタル化に伴い、Edtechを活用した教育産業の在り方が変化してきており、新市場がうまれつつある。日本国内の教育産業に関しては、少子化の影響で今後の市場は横ばいである一方、未来投資戦略にも記載があるとおり、我が国でも、AI教育の強化も進められつつあり、さまざまなEdtechが活躍をはじめている。」

 

・「かかる状況を踏まえ、日本で活躍をはじめたEdtech企業を、成長する世界市場をターゲットに、海外の官民教育関係者とつなぎ海外展開支援を行う。また、世界のICT教育に触れる機会を創出し、我が国民間教育産業振興を行う。」

 

以上の通りジェトロとしては、世界におけるエドテック市場の著しい成長を日本の教育関連サービス事業者が取り込めるように「海外の官民教育関係者とつなぎ海外展開支援を行う」という方針です。

 

②将来性及び拡大する背景

エドテックが拡大する理由、その導入が進む可能性については、以下のような教育課題の解消に迫られている点が挙げられます。

 

●教育格差の解消

家庭の所得、裕福さの違いなどの経済格差により、児童・学生における教育格差が問題となっており、その解決が社会課題として認識されています。裕福な家庭の子供は学習塾や習い事に通うことができ、裕福でない家庭の子供はそうした教育を受けることが容易ではありません。

 

また、そうした経済格差は受験対策や進学においても現れ、裕福でない家庭の子供は進学や希望の学校を断念するケースも少なくないです。こうした結果、教育格差が生じており、低コストで良質の高度な教育を誰にでも提供できる仕組みが求められています。

 

●教育機関の運営・管理の改革

公的な学校教育では1人の教師が30~40人といった生徒を担当する形態が長く続いてきました。そのため教師は生徒全体に対して一律的な学習内容を講義せざるを得ず、各生徒に最適化した学習方法を提供することができません。

 

その結果、授業の進度に追いつけず、理解できないまま進級していく生徒を生み出すという問題が放置されてきたのです。各生徒の理解レベルや得手不得手は異なるため、個人に合った学習方法を取らないと授業から脱落してしまう生徒が増えてしまいます。

 

このように従来の一律的な学習方法を改善し各生徒に対応した個別最適学習が今求められようとしているのです。

 

●教師の業務負担の軽減

多人数を担当する教師の業務負担は決して軽くありません。特に少しでも個別最適学習を取入れようとする場合は、その人数分の対応が必要となるため著しい業務量の増加に迫られるはずです。

 

各生徒の学習進度や理解の把握とそれに合わせた学習方法の実施などが求められますが、従来の学校の運営・管理のシステムでは対応が困難であり、そうした教師の業務負担を軽減する仕組みの導入が必要となっています。

 

●新科目への対応

現在では初等教育から英語やプログラミングの授業が組み込まれており、学校ではその対応が進められています。まだ、手探りで新しい科目の授業を提供している段階ですが、今後は明確なゴール設定のもとに設計された学習内容の提供が求められるはずです。

 

文科省の「小学校プログラミング教育の手引」などには、何をするかが多少決められていますが、基本的には学校任せの方針となっているため、学校側が適正なゴールを定め効率的かつ効果的に授業を進める取組が必要になっています。

 

●世界のデジタル教育市場の拡大への対応

株式会社グローバルインフォメーションのレポートによると、世界のデジタル教育市場規模は、2020年に108億9,000万米ドルに、2021年には132億4,000万米ドルに達したとのことです。また、同市場は、その後21.9%のCAGR(年平均成長率)で成長し、2026年までには357億7,000万米ドルに達するものと見込んでいます。

 

日本の市場は少子化や教育行政の遅れなどにより出遅れていますが、日本の教育関連事業者が海外市場の成長を見逃すのはもったいないのではないでしょうか。

 

以上のような背景のもと、国としても教育行政や教育産業を改革せざるを得ない状況となっており、次のような取組が始まっています。

 

●経済産業省「未来の教室」プロジェクト

経済産業省の「未来の教室」を簡単に表現すると、エドテック等を活用して新たな教育プログラムを開発するための実証事業及びそれによって目指される教育環境(学びの場)づくりのことです。

 

昨今の国内外の社会情勢の変化に対して従来の教育方法による人材育成では対応が困難になってきているため、「AIやデータの力を借りて社会や人間を丁寧に観察・分析し、世界中の多様な知を組み合わせ、有効な解決策を生み出す創造的・論理的な思考力と、それを実現する行動力」を養う教育が必要と考えられ、「未来の教室」ビジョンが提言されました。

 

具体的には、「学びのSTEAM化」「学びの自立化・個別最適化」「新しい学習基盤づくり」を3つの柱として施策を講じ展開しようとしているのです。この中でエドテックの活用が推奨されており、各種の実証事業で採択されています。

 

また、経済産業省では「未来の教室」のビジョンを実現するための施策として、EdTech導入補助金」を創設し、エドテックを活用した教育機関における教育イノベーションの実現を後押ししています。

 

GIGAスクール構想により、2021年4月には「1人1台端末」の環境が全国の小中学校のほとんどで整備され、エドテックによる教育支援の提供基盤が整ったこともあり、エドテック市場への参入者の増加が期待されるところです。

 

 

2 エドテックサービスで得られるメリット

エドテックサービスで得られるメリット

 

エドテック関連の事業者は、生徒や学校・教師のメリットを把握してビジネス展開することが重要です。そのためここでは、エドテックにより享受できるメリットを生徒・教師等の立場、サービス提供者の視点で説明しましょう。

 

 

2-1 生徒・ユーザー側の利点

エドテックサービスを利用して学習する生徒・ユーザーが享受できるメリットとして以下のような点が挙げられます。

 

生徒・ユーザー側の利点

 

●生徒は時間や場所の制約なく学習できる

エドテックにより学習コンテンツ等が時間や場所の制約なしに提供されるため、生徒は自分の好きな時間や場所で学習できます。また、生徒だけでなく、労働者や主婦なども空いた時間を有効活用して勉学に勤しむことが可能です。

 

●生徒は無料や低額な料金で高品質な学習ができる

塾や特定の学校に通わなくても無料や低料金で必要な学習を受けることができます。

 

●生徒は自分に最適化された学習が受けられる

自分の能力レベルや学習スタイル等に合った学習内容・方法が受けられ、わからないことが解決しやすくなるため、クラス等の学習レベルの水準から落ちこぼれる可能性が小さくなります。

 

●海外の教育機関等の教育を受けられる

留学しないと勉強できないような海外の大学等の講義を受けることが可能です。また、そうしたオンライン学習を通じて実際の留学などに繋がることや、そうした講義等を通じて海外の学生等と交流を持つこともできます。

 

●通学が困難な生徒も利用しやすい

不登校の状態の生徒もオンライン学習等なら気軽に授業が受けられます。他者との直接的な接触に抵抗のある方などにオンライン学習等は有効です。

 

 

2-2 教師・学校等側の利点

教師・学校等のメリットは、以下のような点が挙げられます。

 

教師・学校等側の利点

 

●効率的な学習(クラス)の運営・管理ができる

教材や問題集などの準備や配布が容易で、各生徒の学習進度の把握が簡単に行える上、データの分析・評価から個別最適な学習内容の準備まで円滑に行えます。

 

●双方なコミュニケーションがしやすい

端末経由が中心となりますが、教師から各生徒へメッセージが送りやすく、必要に応じたアドバイスも容易です(個別に生徒を呼び止めたり、面談したりしないで済む)。

 

●多様な学習が提供できる

例えば、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を活用した学習が提供できます。今まで実際の現場に行かないと体験できない学習もこれらの技術を駆使すれば、現実に近い実習や教育訓練などが可能です。

 

●クラス全体の能力の底上げができる

個別最適学習の提供によりクラスの能力レベルを向上させやすくなります。受験対策なども容易になる上、希望の進学を実現しやすくなり、結果的に学校等の評価の向上にも有効です。

 

 

2-3 教育サービス事業者側の利点

ここでの教育サービス事業者には、学習を支援するサービスを提供する者(塾、英会話教室等の教育サービス提供者)と、エドテックで学習・教育支援ツールや運営・管理支援ツールなどを提供する者が含まれます。

 

教育サービス事業者側の利点

 

●従来型の教育サービス業と差別化できる

エドテックによる個別最適学習を効率的・効果的に生徒等に提供することで従来の一方通行的な学習スタイルのサービス業者との差別化が図れます。また、エドテックを活用することでサービス内容に独自性(ゲーム性や双方向性等)をもたせ競争を有利していくことも可能です。

 

●新たな需要を取り込むことができる

通学が困難である、授業料が高い、仕事やクラブで塾などへ行く時間がない、などの理由で今まで通学型サービスを利用してこなかった人達をエドテックの活用により取込み利用者を増やせます。

 

●国の後押しがある

経済産業省の「未来の教室」プロジェクトなど、エドテック市場を拡大させる施策が展開されおり、同市場には成長の勢いがあります。教育イノベーションが国の目標となっており、多くの教育機関はエドテックを活用した新しい教育システムの導入に取組んでおり、エドテック事業者にとっては大きなビジネスチャンスが到来しているのです。

 

●新型コロナの影響でオンライン学習への抵抗が和らいだ

今までオンラインで買物や取引などをしたことがなかった人も新型コロナによりリモートワークが要請され、外出の制限や抑制などが求められたのを契機に始める方が急増しました。

 

そうしたことによりオンラインで何かすることへの抵抗感が薄らぎ、オンライン学習を始める方も増えています。

 

 

3 エドテック事業で活躍する企業

エドテック事業で活躍する企業

 

ここではエドテックサービスを提供する注目企業(大手やベンチャー企業)を取上げ、その事業内容や特徴などを紹介しましょう。

 

 

3-1 エドテック事業に取組む大手企業の例

エドテック事業に参入している大手企業を簡単に説明します。

 

①株式会社ベネッセコーポレーション

●企業概要

所在地:岡山県岡山市北区南方
創業・設立:1955年1月28日創業
事業内容:ベネッセグループの生活・教育事業を主に展開

 

●サービスの特徴

同社の教育サービスは、「進研ゼミ」の名称で有名ですが、「塾・教室」「通信講座」「検定」「辞典」「留学支援」「教育情報提供」など幅広い分野をカバーしています。

 

また、エドテックを活用したサービスが同社で多く採用されていますが、その代表格は以下の2つです。

 

●タブレット教材の「チャレンジタッチ

チャレンジタッチは同社が開発したタブレットを使用するデジタル教材です。ユーザーの各問題への取組み方(傾向)や正答率などのほか、各種のフィードバックデータをもとに問題の設定を簡単に修正することができ、個別最適な学習が提供できます。

 

●オンライン動画学習サービス「Udemy

同社は2015年春から、米国の社会人向けオンライン動画学習サービス「Udemy」の日本パートナーとして国内での事業を開始しています。UdemyではAIやプログラミングの講座のほか、アプリ開発やデータ分析のノウハウ、ビジネス向けの実践的なスキル習得を目指す講座が多いです。

 

なお、同社は経済産業省の「未来の教室」実証事業(2019年度)の「新しい『教職員向け研修サービス』の実証」で採択されています。実証内容はオンライン学習ツールの「Udemy for Business」を使用して、全国自治体のDX人材育成やDXの実用化を促す効果を検証するものです。

 

②株式会社リクルート

●企業概要

所在地:東京都千代田区丸の内
創業・設立:1960年3月31日創業
事業内容:人材採用、不動産、進学、自動車、ウェディング、旅行、グルメ、美容などの分野が主な事業

 

●サービスの特徴

同社のエドテック事業としては、オンライン学習サービス「スタディサプリ」があります。

 

スタディサプリは、「経済的、地理的な理由から発生する教育環境格差を解消するのに役立つ、インターネットを通じて学習コンテンツを低価格で提供するツール」です。

 

スタディサプリには様々なコースが用意されており、小中高の生徒向け受験対策、英語資格対策、英会話・ビジネス英語コースなど子供から社会人まで学習をサポートしてくれます。

 

また、スタディサプリは個人向けのほか、学校などの教育機関や塾などにも提供されており、全国の高校2000校以上で採用されているのです。「テクノロジーを用いた生徒一人ひとりの弱点把握と、個別最適された学習内容の提供」で生徒の能力向上を支援するほか、学校・教師側の教育・運営の負担軽減に貢献しています。

 

③株式会社ジャストシステム

●企業概要

所在地:東京都新宿区西新宿
創業・設立:1979年7月7日創立
事業内容:ソフトウェア及び関連サービスの企画と開発、提供

 

●サービスの特徴

同社は日本語ワープロソフト「一太郎」で有名ですが、様々な教育関連サービスを提供しています。具体的には、小中学校向けクラウド、小学生向け通信教育、日本語入力システム(カナ漢字変換ソフト)、小学生向け学習・授業支援ソフト、小学校向けドリル学習ソフト、などの提供です。

 

こうした分野でエドテックを活用した様々なサービスが生徒や学校・教師側に提供されています。例えば、同社の「スマイルネクスト」は「ドリル学習、協働学習、プログラミング教育などについて、1人1台のPC活用に適した学習環境を提供し、次世代を担う子どもたちの情報活用能力の育成をサポート」するサービスです。

 

一斉学習・個別学習・協働学習など、授業に合わせて学習内容を生徒に提供でき、個別対応も可能であるため、授業についていけない生徒を減少させ教師のクラス運営にかかる負担も軽減してくれます。

 

家庭学習向けのサービスもあり、幼児から中学生までに対応した通信教材も豊富で、中学生向けのコースではタブレット1台で全9科目の学習も可能です。個別指導の最適学習の提供も可能であるため、生徒のペースに合わせた能力アップが図れます。

 

 

3-2 エドテック事業に挑むベンチャー企業の例

ベンチャー企業の事例を紹介しましょう。

 

①スタディプラス株式会社

●企業概要

所在地:東京都千代田区神田駿河台
創業・設立:2010年5月創業
事業内容:学習管理SNSや教育機関向け学習管理サービス等の教育支援プロダクトの開発・提供

 

●サービスの特徴

同社エドテック事業のサービスは以下の通りです。

 

・「Studyplus」(学習管理プラットフォーム)
同サービスでは、学習記録をつけてグラフとして可視化することや、サービス内で学習仲間を作ってコミュニケーションをとる(激励しあう等)、などが可能で、学習する上での挫折を防ぎ勉強の習慣化に役立ちます。

 

・「Studyplus for School」(教育事業者向けサービス)
これは学校・教師に対するサービスで、在籍生徒の学習進捗等を定量データで把握・分析するため、授業などをより効果的に運営することが可能です。同サービスにより生徒の日々の努力を容易に確認することが出来る上、褒める機能なども用意されています。

 

・「Studyplus Ads」(広告サービス)
Studyplus Adsは、Studyplusが独自に保有している学年・興味・関心などのクラスターデータを活用して、ターゲットユーザーへダイレクトにアクセスが可能な広告です。

 

・「ポルト」(電子参考書サブスク)
参考書を読み放題できるアプリが「ポルト」というサービスになります。受験生に必要な参考書を月額980円(税別)でスマホで読み放題できるという、電子参考書のサブスクリプションサービス(定期購読)です。

 

●起業・事業のポイント

創業者の廣瀬高志代表取締役が大学受験時代に使用した「勉強記録ノート」が起業のきっかけになっています。勉強において、「やる気を引き出しモチベーションを継続する」ことが重要であると考え、勉強記録ノートが役立つはずと、それを参考に学習管理プラットフォーム「Studyplus」をリリースしたのです。

 

⇒自分が培った経験や知識が他の人にも役立つと認識してビジネスアイデアとして発想することが起業の第一歩に繋がります。

 

⇒アイデアを、ICTやデジタル技術等を活用してこれまでにない競争力を有するサービスに昇華させることが起業の成功や会社の成長を可能にします。

 

②株式会社レアジョブ

●企業概要

所在地:東京都渋谷区神宮前
創業・設立:2007年10月18日設立
事業内容:英語関連事業

 

●サービスの特徴

レアジョブは、「日本人1,000万人を英語が話せるようにする。」というサービスミッションを掲げ、日本とフィリピンで事業を展開しており、英会話事業を核に、グローバルリーダー育成事業やキャリア関連事業などにも進出しています。

 

ターゲットは、個人、法人と教育機関の3つが対象で、サービス内容は以下の通りです。

 

・個人向
「レアジョブ英会話」
「SMART Method®」(オンライン完結成果保証型英語コーチング)
「リップルキッズパーク」(子供用のオンライン英会話・個別最適学習)
「資格スクエア」(最短合格のための勉強法を適正価格で提供するサービス)

 

・法人向け
「レアジョブ英会話 ビジネス英会話コース」(ビジネス用のオンライン英会話)
「レアジョブ英会話 スマートメソッド®コース」(受講者のスピーキング力の診断に基づく個別最適化学習)
「グローバルリーダー育成研修サービス」(中級者~上級者向け英語による実務トレーニング)

 

・教育機関向け
「授業内オンラインレッスン」
「ALT派遣(外国語指導助手の労働者派遣事業)」

 

●起業・事業のポイント

同社は、加藤智久氏(2016年当時は代表取締役会長)と現在の代表取締役社長の中村岳氏が共同で創業した会社です。起業前に加藤氏が副業でオンライン英会話サービスの提供をはじめ、起業後は優秀なフィリピン講師の利用と月額5千円という価格によるサービスの提供が成功して事業の成長に繋がっています。

 

⇒加藤氏は学生時代にベンチャー企業で働いた経験があり、それが彼に起業家精神を芽生えさせ同社の起業に少なからぬ影響を及ぼしました。将来に起業や会社設立するにはベンチャー企業や起業家などとの関係を有することがその実現に役立ちます。

 

また、副業という形など、リスクの低い形態で事業を始めて知識・経験を積む、発展するためのノウハウを獲得する、といったことが起業後の失敗リスクを低減し成功するのに有効です。

 

③株式会社Schoo(スクー)

●企業概要

所在地:東京都渋谷区鶯谷町
創業・設立:2011年10月3日設立
事業内容:社会人向け学習コンテンツをオンラインで生放送する「Schoo(スクー)」の運営事業

 

●サービスの特徴

同社の事業の特徴は、大人がずっと学び続けられる生放送「Schoo(スクー)」を中心とした学びの場を提供するサービスです。授業内容はビジネススキル、ITスキル、働き方、マネー、ヘルス、経済ニュースまで幅広く扱っており、生放送が無料で受講できます。

 

また、講師の授業を視聴するだけでなく、チャット機能を使って講師と受講生がコミュニケーションを取りながら学習できる点が特長です。豊富な無料動画に加え有料も含めると7,000本以上の録画授業が受けられます。

 

そのSchooのサービス内容は主に以下の3つになります。

 

・生放送授業
Schooの生放送授業は熱意溢れる講師と受講生が集まり教え学び語り合う、白熱した学びの場です。チャット機能を利用して授業中に直接講師へ質問したり、気になることをオンライン上の受講生同士で確認しあったり、オンラインワークショップを行うことも可能で、単調で受け身の学習にならない、挫折しにくい学習が期待できます。

 

・企業や法人での研修支援
時間や場所の制約なく授業が受けられる特性を生かし、新卒研修やマネージャー育成、エンジニア・デザイナー育成などの多様な支援サービスが用意されています。

 

職種や研修内容に対応したパッケージの提供や、社員が受講した授業や時間などを管理できるツールも用意されており、企業側が研修の成果を把握・管理することも容易です。

 

・大学・専門学校・社会人教育事業者向けのDX支援
このサービスはアフターコロナ時代に必要とされる新しい「学び体験」を実現するDX化を支援します。例えば、「授業中はもちろん、授業前から授業後まで、オンライン教育フローの一元化を実現する高等教育機関DXプラットフォーム」などです。

 

対面授業とオンライン授業の両方への対応が必要で、データやツールの管理、授業の準備や運営の管理、オンライン授業での生徒への対応、などで教師側の業務負担が重くなっていますが、高等教育機関DXプラットフォームの活用でそれらが軽減できます。

 

●起業・事業のポイント

同社の代表取締役社長CEOである森健志郎が前職時代にeラーニングの授業を受けた経験が起業のきっかけとなりました。

 

その授業の際に、講師がカメラ目線でずっと話し続けるのを聞くのが辛く、「これだけテクノロジーやクリエイティブが進化している世の中なら、もっと良いものが作れるはずだ。」と感じ、森氏は起業を決心しています。

 

⇒起業にはリスクが伴うためその決意には勇気が必要となりますが、「こうしたことがやりたい」「こんなことがビジネスとして実現できる」といった強い思いをもつことが起業の後押しになることが多いです。

 

起業の決心に至るためには、職務、趣味、普段の生活などで様々な知識や経験をもつほか、社会の動きや技術トレンドなどに興味をもち、「こうした知識や技術を活用すれば○○ができるのでは?」といった思いを巡らすことが重要になります。

 

また、森氏は起業後に本格的な事業構想を固め以下のような取組を始めれました。

 

・友人のエンジニアからソフトの作成方法を教えてもらう
・生放送を利用した双方向のサービスを考案する(eラーニングを画期的に面白くするための根本的な違いを創出、普通の動画配信サービスと異なるコミュニケーションサービスの付加)
・授業の質を確保するために一流の講師を準備する

 

⇒アイデアをビジネスとして実現していくためには、それをコンセプトやモデルに仕上げて仕組みを実行するための方法と資源を整えていかなくてはなりません。森氏は起業後からそれを実行しビジネスモデルの具現化を進めて実現し、さらに事業の拡大にも取組まれています。

 

 

4 エドテック事業での起業・会社設立の進め方のポイント

エドテック事業での起業・会社設立の進め方のポイント

 

エドテック事業で起業・会社設立して成功するにはどのように進めたらよいか、そのポイントを説明しましょう。

 

エドテック事業での起業・会社設立の進め方のポイント

 

 

4-1 教育分野の現状及び課題やニーズを知る

エドテック事業で起業して成功するためには、現在の教育分野の現状及び課題やニーズを把握しなければなりません。

 

従来の学校教育は、教室に大勢の生徒が集まり、1人の教師が授業で一律の学習内容を教えるという形態でした。こうした一律の学習提供方式は表面的には効率的ですが、各生徒の能力・理解度・得手不得手といった特徴に対応できません。

 

その結果、科目ごと、あるいは全科目で授業についてこれない、能力を伸ばせない生徒を生み出すことも多く見られるようになりました。一方、学校・教師側では、授業についてこれない生徒をフォローするための取組も行われていますが、個別に合わせた学習を行うには負担が大きくなり過ぎ、抜本的な解決に至っていません。

 

また、家庭の経済格差等により学校以外での塾や予備校などで学習する者としない者が存在し、両者の間で大きな学力差が生じて進学の可能性等に関して大きな差が生じるケースも多いです。

 

例えば、塾等へ通えない生徒は効果的な受験対策ができず、また、自宅学習では挫折することもよくあり希望の進学が難しくなるケースが少なくありません。

 

また、社会人については、自己啓発のために何かを勉強したいと考える方は多いですが、勤務後に時間を作り通学して学習するのは簡単ではないです。そのためオンライン教室を利用する人が増加していますが、一方向的に進められる授業を粘り強く続けるのも容易ではありません

 

企業においては職遂行上や社員のキャリア開発上などで訓練や研修を施すケースが多いですが、従来の集合研修やオンライン研修などにおいて十分な実施効果が得られるケースは多いとは言えないようです。

 

このように教育分野では、教わる側(生徒や社会人等)、教える側(学校や塾等)、教育を施したい側(企業等)において様々な問題・課題を抱えています。

 

こうした現状を正確に捉え、どのようなエドテックでそうした問題を解決できるかを構想していくことがこの分野での起業のスタートになるはずです。

 

 

4-2 エドテックの意義や特徴を理解する

エドテックの意義や特徴を理解する

 

次は先に取り上げた問題やニーズを解決するためにどのようなエドテックでビジネスモデルを作り上げるかが重要になります。そのためエドテックを活用して教育産業で起業・会社設立するなら、エドテックの特徴等の理解は欠かせません。

 

具体的には、エドテックにはどのようなタイプがあり、どのようなことができるのか、どのように導入すれば教育効果が高められるか、などを把握しそれを教育サービスのコアとして組込むことです。

 

エドテックの機能を活用すれば、オンライン学習、アダプティブラーニングや疑似体験、などの学習方法が可能となり、時間・場所の制約なく双方向なコミュニケーションを取りながら個別最適な学習を提供できます。

 

教える側は各生徒・受講生に合わせた教材や学習方法を提供することができ、その準備負担も小さくできるほか、学習成果の把握・管理も容易になり授業運営を円滑に進めることが可能です。

 

企業などにおいても同様で、エドテックを活用した教育支援サービスを導入したり教育支援ツールを運用したりすれば、各社員に合わせた訓練や研修が提供できるほか、その成果を把握して今後の教育方法・研修内容等に反映できます。その結果、これまで以上の教育成果を得て企業の成長に繋げられるのです。

 

関心のある教育分野の問題や現状について、どのようなエドテックが解決手段になれるかを考え、エドテックの方法やタイプなどを研究してみましょう。

 

 

4-3 エドテック事業の確立に必要な資源を確保する

次はターゲットしたエドテック事業の実現に必要なリソースを確保していかねばなりません。もちろん創業者は起業して企業が機能するための人・モノ・金・情報といった基本的な資源を用意することは当然ですが、エドテック事業ならではのリソースの確保も不可欠です。

 

エドテック事業では特に、エドテックのシステムを作り上げるエンジニア、学習コンテンツ並びにその制作者、授業を行う講師等、などの確保が重要になります。

 

創業者はエドテック事業を立ち上げるプロジェクトのマネージャーとしての役割を果たす必要もありますが、資金的な余裕がなければ創業者がシステム制作、コンテンツ制作、講師などを担当することも必要です。

 

しかし、現実的には困難なケースも多いため、自分が果たせない役割については協力者を募り、事業に参画してもらえるような人脈づくりなども欠かせません。また、クラウドファンディングを利用して資金を確保して必要人材を揃えるといった取組も重要になります。

 

教育分野の改革やイノベーションが注目されている現代では、ビジネスモデルの内容次第では多額の資金調達も可能です。また、ベンチャーキャピタル(VC)などのビジネスコンテストに参加して支援を得るのも有効な手段になり得ます。

 

VCの中には教育産業に興味を抱くところも多く、彼らからの資金提供や支援の可能性は大きく、成功すれば起業後の成長の加速にも役立つでしょう。

 

 

4-4 事業スタート後から継続的な改善に取組む

次の重要ポイントは、そのエドテックによるビジネスモデルを事業として成長軌道へ乗せることです。そのためには会社設立当初などのビジネスシステムを随時確認しユーザー目線で修正・改善を施す必要があります。

 

学習コンテンツの内容、授業の提供の仕方、学習進度の把握による個別対応の方法、コミュニケーションの取り方、教材・問題の作成や配布の方法、学習を持続させるモチベーションアップ、などがターゲットに対して適切に機能して歓迎されているかのチェックと改善が不可欠です。

 

当初のビジネスシステムがすべて目論見通りの評価を得ることは難しく、サービス提供者はシステムに何か問題がないか、不足している点があるのではないか、他社に劣っている点はないか、といった考えて経営を進めて行かないと最初のビジネスモデルが破綻に至ることも珍しくありません。

 

ユーザーの利用者数、サービスの申込数といった数値だけを追うのではなく、ユーザー等にアンケートや面談などを通じて自社サービスの評価を確認することが重要です。また、自社の社員や関係会社等の担当者などの意見も吸収して定期的な改善ポイントを見つけ出し解決する取組をルーチン化しましょう。

 

 

4-5 更なる成長のために事業拡大に努める

教育産業の裾野は広大であるため、起業・会社設立した当初の事業分野以外で発展できる可能性は小さくありません。特に国を挙げての教育改革や新型コロナの感染拡大によるオンライン学習等の導入の流れ、などが見られる現代では様々な教育分野でビジネスチャンスが生じています。

 

当初の事業を固めて深化させることは重要ですが、会社としての経営基盤を固めるだけでは大きな飛躍は望めません。身の丈に合った取組は必要ですが、余力を作り出し目の前をゆっくりと通り過ぎようとする事業機会を少しでも取り込む努力も重要です。

 

例えば、英会話のオンラインによる個人レッスンの提供というサービスからスタートし、IT関連スキルのレッスンや各種資格取得の支援、といったサービスへ事業を広げるケースが見られます。

 

また、一般の個人を対象としたサービス提供から法人を対象とする、学校や塾などの教育機関を対象とするサービスを加えていくケースも少なくないです。そして、ユニコーン企業となれるように成長するには海外への事業展開にも取組んでいかねばなりません。

 

日本に興味を抱く外国人に対する日本語や日本文化のレッスン、日本の企業との取引の仕方、日本で快適に暮らすためのアイデアの提供、日本の観光地などを効率的に巡る方法の伝授、などのほか、優れた教育方法やシステムを海外に導入するといったサービスも考えられます。

 

現在の教育産業では日本国内以上に世界の動きが活発であるため、世界進出による発展が十分に期待できます。

 

 

5 エドテック事業を進める際の注意点

エドテック事業を進める際の注意点

 

エドテック事業の対象を、生徒や社会人等の個人と、企業や学校等の組織に分けて、エドテック事業を進める際に特に重要となる注意点を最後に確認しましょう。

 

 

5-1 個人をターゲットとする場合の注意点

生徒や社会人等を対象とする個人向のエドテックサービスを提供する場合に特に気を付けたいポイントを挙げておきます。

 

1)各ターゲットに合わせたサービス内容の提供とPRの実施

 

小学生から大学生までの学生を対象とする場合でも各個人の能力や学習意欲・姿勢などが異なるため、一律的なサービス内容の提供では支持が得られなくなる可能性が高いです。

 

同じ学年の小学生でも能力はまちまちで、学習に取組む態度も異なるため、その生徒に合った教材や問題の提供や、ゲーム感覚など遊びの要素を取り入れた指導なども必要です。つまり、従来型の教育サービスが困難だった個別最適の学習、挫折させない学習、やってて楽しい学習の提供が求められています。

 

より個別最適な学習サービスを提供するとともにそれが可能なことを生徒本人や保護者に具体的にアピールすることが重要です。

 

2)サービス利用が進む操作性や快適性の提供

 

様々な個人がエドテックサービスを受ける可能性がありますが、PCなどの端末の操作が得意でない方も少なくありません。提供するコンテンツやシステムが優れていてもサービスを利用する際の操作が複雑になるようではユーザーが離反してしまう恐れも生じます。

 

操作性の相性は利用対象者によって異なるため、幼児や低学年児童向け、高学年児童から中学生向け、高校生から大学生向け、一般的な社会人向け、高齢者向け、などで操作性、文字の大きさ、画像の多さ、などを適切に設定するといった工夫も必要です。

 

また、通学・通勤途上などの合間の時間に効率よく学習できるスタイルや、ゲーム性のある楽しい学習方法の提供も求められます。

 

 

5-2 企業や学校等をターゲットとする場合の注意点

企業や学校等の組織を相手にする場合、その組織での課題や購買意思決定プロセスなどの特徴を理解した事業展開が重要です。

 

①学校等の教育機関の授業運営等に関するケース

1)各学校の状況や希望に合わせた対応

 

学校と言っても小学校、中学校、高校と大学が存在し、各々公立学校と私立学校が運営されていますが、教育方針や学校運営には少なからぬ違いが見られます。特に進学や特定の分野に注力しているケースがあるなど、学校向けのエドテックサービスを一律に導入すると効果が得られにくいケースもあるでしょう。

 

そのため自社のエドテックサービスをクライアントとなった学校の状況や希望に適合させることが不可欠です。生徒の学力向上、生徒とのコミュニケーションの改善、クラス運営の円滑化、教師の業務負担の軽減、といった要望を十分に確認して、それを実現できるサービスの提供が必要となります。

 

導入するエドテックサービス全体をカスタマイズすることが困難である場合、中核サービスの内容は変えずに細かな部分等をオプション的なサービスで対応するといった方法も重要です。

 

2)有効なサービスを積極的に提案する

 

また、学校側の要望に対応するだけでなく、自社から有効なサービス内容を提案することは忘れてはなりません。他の学校で好評だったサービスや業界で注目されているサービスなどを自社から積極的に提案しましょう。

 

ゲーム感覚で学べる教材、生徒同士で協力して理解を深める授業運営など、得意なサービスなどをアピールすることは重要です。提案しながら学校や教師の反応を確認して気づいていないニーズを引出し、ビジネスを広げる取組が他社との差別化にも貢献します。

 

3)生徒や保護者の考えや声をサービスに活かす

 

学校側が自社の直接的なお客となりますが、エドテックサービスによる授業を受けるのは生徒です。そして、保護者は生徒からそのサービスの内容や評価を聞くことになるため、生徒や保護者からのサービスに対する評価が自社事業に間接的に影響します。

 

つまり、自社サービスを学校側が評価してくれても生徒や保護者が気に入ってくれなければ、サービスの提供は長続きせず、今後の利用の足かせになりかねません。

 

そのため導入前のクラス運営や授業の進め方などを確認して、その学校の生徒に適したサービスの導入を検討し、導入後は生徒や保護者の意見を聴収して修正や改善に取組む必要があります。「導入したらそれでサービスは完了」というのではなく、導入後のフォローを重視する対応が不可欠です。

 

②企業の人材開発や教育訓練に関するケース

企業において社員教育は重大な経営課題になりますが、実施した教育で十分な成果が得られないケースも多いです。そうした各企業の教育訓練に関する課題を正確に認識し適切な解決手段としてエドテックサービスを提供することが求められます。

 

なお、導入を進めるにあたり以下のような点に注意が必要です。

 

1)多様な能力開発に対応できる

 

企業では、各種業務の遂行能力、ビジネス英会話力、問題解決力、コミュニケーション力、リーダーシップ力・マネージメント力、経営能力(幹部育成等)、など多様な知識・スキルの向上を必要としていることが多いため、教育サービス事業の成長には各種の要望に対応しなくてはなりません。

 

もちろん特定分野に注力した事業展開も可能ですが、依頼する企業としては1つの事業者に複数の分野を任せるケースも多いです(コストや管理等の点で)。そのため英会話からIT関連スキルの教育など幅広い分野の対応も必要になってきます。

 

2)課題解決の手段として導入サービスの妥当性を訴求する

 

企業にとっては、導入した教育サービスが業績上や人材育成上の課題を解決してくれることが重要です。例えば、導入した英会話のサービスにより、海外取引が増える、社員のTOEICスコアが上がる、といった成果にサービスが結び付かねばなりません。

 

しかし、現実的には教育訓練を実施しても多くの企業において「あまり成果が見えてこない」、通信教育の受講を促しても「受講者が少ない」「受講を途中でやめてしまう」、などの問題が少なからず生じているのです。

 

こうした各企業の教育訓練上の課題を確認し、それを解決できる教育サービスを提供するとともに、それが可能である点を具体的な例などを示しながらアピールすることが求められます。

 

3)費用対効果の点を訴求する

 

教育訓練はコストがかかるため、そのコストに見合った成果が期待できないとその教育サービスは採用されにくいです。そのため提供事業者としては、サービスの費用対効果のメリットなどをアピールすることが重要になります。

 

例えば、「従来の教育サービスに比べ(他社に比べ)自社が導入するエドテックサービスなら離職率を○○%下げられ、社員の生産性を○○%向上できた」といった実績をアピールするのです。

 

そのほかにも提供するサービスで具体的なスキルアップの成果事例や、教育訓練にかかる管理コストの低減の実績などを費用対効果の点として訴求してみるのも良いでしょう。


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