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中小企業の決算書?中小会計要領とは

中小企業の経営者にとって、決算書は一体どれくらい大事な存在でしょうか。また、実際の決算書は誰が作成しているでしょうか。実はこの2つの問いの答えは、つながっています。決算書を大切にする経営者は、他社に作成を丸投げしたりしないからです。

 

中小企業の経営者にとって本当はとても大事な決算書ですが、改めて今からちゃんと作成しようと思ったとしてもすぐにはできません。作成するにあたって準拠すべきルールがあるからです。

 

実は、中小企業向けの決算書の作成ルールはつい最近までありませんでした。このことが中小企業経営者が決算書を重視してこなかった一つの原因でもあります。しかし、中小企業にとっても決算書が経営にとても有用であることは明らかなので、中小企業向けのルールを策定して活用してもらおうと2012年に中小企業庁から発表されたのが「中小企業の会計に関する基本要領」です。

 

本稿では、そもそも決算書の作成ルールとはどのようなものかというところから始めて、大企業向けのルールと比較しながら中小会計要領の特徴を説明します。そして最後に適用に向けたメリットやデメリットを整理します。

 

決算書の作成は法律によって義務付けられています。どちらにせよ作成しなければならないので、出来る限り活用しなければもったいないでしょう。そのためには、中小会計要領を理解して、導入することが必要条件になります。是非本稿を参考にして、検討してみてください。

 

 

1 中小会計要領とは?

本稿では、中小企業の中小企業による中小企業のための会計基準である「中小企業の会計に関する基本要領」(以下、「中小会計要領」という。)について、解説します。

 

まずは、そもそも会計のルールとは何なのか、何のためにあるのかを理解した上で、大企業と中小企業では求められるものが異なっていることを確認します。そして、その違いを踏まえた上で中小会計要領が策定された趣旨を説明します。

 

 

1-1 そもそも会計基準とは何か?

① 法人税法は会計基準か?

あなたの会社の決算書は、何にもとづいて作成されているか、明確に答えることができるでしょうか。もし仮に決算関係は税理士に全て任せっきりにしているようであれば、あまり意識をしたことすらないのかも知れません。

 

会計基準とは簡単に言えば決算書、つまり財務諸表を作成するための一連のルールです。

 

わが国では、あらゆる全ての会社に対して、財務諸表の作成が法律により義務付けられています。そのため、大企業、中小企業など規模に関わらず全ての会社が財務諸表を作成していることになります。

 

このように、作成するべしというルールは大変わかりやすいのですが、具体的に、どのように財務諸表を作成すれば良いのか、というルールについては、少々複雑な仕組みとなっています。ルールを定めている法律等が複数存在し、それぞれ趣旨や目的が異なっているからです。

 

もし決算関係を税理士に任せているのであれば、それは主に法人税の申告のためでしょう。税理士は法人税の申告を適切に行うために法人税法の規定に沿って財務諸表を作成してくれます。

 

ここからわかるように、ルールを定めるまず一つ目の法律として法人税法があります。法人税法は全ての会社に適用されますので、中小企業にとっても馴染みが深いものでしょう。それどころかむしろ法人税法が唯一無二のルールであるという誤解もあるかも知れません。

 

しかしながら、法人税法では、実はごくごく一部の決め事しか規定されていません。課税計算というのは、基本的にはきちんとした財務諸表がすでに作成されていることを前提としているからです。ですから、そもそも財務諸表を作成するための全般的なルールなどは法人税法には存在しないのです。

 

② なぜ会計基準が必要か?

そこで、このような全般的なルールというものは法人税法とは別に、会社法や金融商品取引法にもとづき、いわゆる会計基準として定められています。細かく言えば、会計基準は法律に規定されているのではなく、企業会計審議会や企業会計基準委員会といった組織によって策定されたものを、法律が容認するという形になっています。

 

それではなぜ、このような全般的なルールが必要なのでしょうか。

 

会社は、単独で成り立っているのではなく、さまざまな外部の関係者との信頼関係を構築することによって初めて、事業を行っていくことができます。代表的な関係者は株主や金融機関などの資金提供者であり、それ以外にも顧客や取引先、また従業員とも関係性を構築していかなければなりません。

 

しかしながら、関係者はあくまで外部の者ですから、会社の中が見えません。そのため会社は財務諸表を作成し情報提供することで、会社の中の状況を説明しようとします。しかしその際、財務諸表が何を根拠として作成されたのかが不明確であれば、財務諸表自体の信頼性が損なわれます。利益操作など意図的な改ざんを防げないからです。

 

そのため、財務諸表の内容に客観性を与え、信頼性を高めるために、統一的な尺度を定めることが必要となります。このことを通じて企業と関係者との信頼関係の構築に貢献します。これが会計基準の意義です。

 

しかし、ここで問題となるのは、このような会計基準は証券市場などを通じて資金調達をするような大規模な企業を主に想定しているということです。ですから、中小企業はこれに従う意味があまりないのです。

 

その結果、中小企業には適用すべき全般的なルールが無いことになりました。では、中小企業は好きなように会計処理をして、好きなように利益を操作することが認められるのでしょうか。そんなわけはありません。しかし、会計に限ったことではありませんが、このような不正行為によって影響を受ける人が多いか少ないかによって、現実的な問題の大小は変わってくるのです。

 

③ 大企業と中小企業を取り巻く背景

もし大企業、特に上場企業がこのような会計不正を行ったとしたらどうでしょう。

 

上場企業は金融市場を利用して不特定多数の投資家から資金を調達しています。この場合、利益の有無や大小は、投資家が投資判断をするにあたって非常に大きな判断材料です。もしその情報が虚偽であったとすれば、市場に参加している相当数の投資家に大きな損害を与える可能性があります。

 

実際にそのような不正会計によって、巨額の損害が生じた事例は、大きなニュースになり度々世の中を騒がせています。

 

そのようなことを防ぐためには、会計基準を厳しく適用することが求められるのです。

 

これに対して、例えば、経営者自身が出資した会社で他に株主はおらず、取引先や金融機関への支払いは滞りなくできており、税金の申告は適正に計算されているという中小企業があるとします。

 

この会社が例えば不正に利益を水増ししたとしても、もちろん絶対にやってはいけないことですが、現実として、損害を被る人は限られているのです。その意味で別の見方をすれば、経営者にとって利益を水増しする動機もありません。そのため、厳密な会計処理のルールが特に必要とされてこなかったわけです。

 

また昨今の大企業では、金融市場の世界的拡大や事業そのもののグローバル化などによって、会計基準の国際化ということも強く求められてきています。一方で中小企業では海外はおろか、国内の金融市場で資金調達を行うこともほとんどないでしょう。

 

こうした背景から大企業と中小企業では適用されるルールが異なってしかるべきです。大企業に適用されている会計基準が求めるものは、どんどん中小企業の実態との乖離が大きくなっています。

 

次節では、大企業と中小企業の事情の違いを整理してこの点について考えます。

 

 

1-2 大企業と中小企業の事情の違い

前節で確認したように大企業と中小企業では、利害関係者の規模が全く違うと言えます。大企業では、現在出資を受けている既存株主だけでなく、自社に対する投資を検討している、または検討する可能性のある市場参加者全てを意識しなければいけません。

 

それに対して、中小企業では通常は経営者自身と同族株主くらいしか出資に参加していません。顔の見える範囲の人間関係です。

 

これだけ利害関係者の規模が異なると、会計処理の厳密性をどこまで求めるべきかは、当然に変わってくるでしょう。

 

また、会計処理や財務諸表の作成に投入できる人員や時間も全く異なります。大企業では財務専門の部署が設置されて専門スタッフが常駐しています。場合によっては財務担当役員が専属で付いています。

 

それに対して中小企業では人員は限られているか、場合によっては専任スタッフなど一人もいないのが現実でしょう。そのような中で厳密な会計処理を求めても、中小企業では対応が難しい面もあるのです。

 

以上から、中小企業の会計では、大企業ほど厳密な会計処理の必要も無ければ、現実的に対応できないという事情が明らかになりました。

 

とは言うものの、中小企業を取り巻く環境そのものも近年では変わりつつあります。クラウドファンディングやソーシャルレンディングといったように、新しい技術を用いて、簡単に資金調達をすることができるようになりました。

 

そうなると、従来は上場企業特有の事情であったIR活動、説明責任といったことを、大企業ほどではないにしても、中小企業もある程度は考えていく必要が出てくるのです。広く世の中の人々と対話して、信頼関係を構築していくことが今後は必要になってくるでしょう。

 

 

 

1-3 中小会計要領の趣旨

このような中小企業の状況を踏まえたうえで、大企業とは異なる別の観点から、中小企業のための会計基準を作成することを目的として、2012年に中小会計要領は策定されました。

 

ここでは、利害関係者の数が少ないこと、国際的な動向を考慮する必要があまりないこと、会計処理や財務諸表作成に費やすことができる資源が限られていること、などが考慮されました。

 

実は、これより以前にも中小企業向けの会計基準として、「中小企業の会計に関する指針」がありました。しかし、これは基本的に上場企業の会計基準と同様に国際化を意識したものであったため、中小企業からはあまり積極的に支持されてこなかった経緯があります。

 

中小企業庁は、こうした反省点も踏まえ、今回の中小会計要領の作成にあたっての考え方を以下のように整理しています。

 

  • 経営者が活用しようと思えるよう、理解しやすく、自社の経営状況の把握に役立つ会計
  • 利害関係者(金融機関、取引先、株主等)への情報提供に資する会計
  • 実務における会計慣行を十分考慮し、会計と税制の調和を図ったうえで、会社計算規則に準拠した会計
  • 計算書類等の作成負担は最小限に留め、中小企業に過重な負担を課さない会計

(出所:中小企業庁)

 

ここからわかるように、中小会計要領は、「中小企業の会計に関する指針」よりも一層中小企業の実態に合わせたものであると言えます。中小企業庁の強い意思が感じられます。

 

 

2 中小会計要領を3つのポイントで理解しよう

ここでは、中小会計要領に定められるルールの内容について、主なポイントを3点に絞って説明します。やや専門的な内容も含みますが、前節で確認したように、大企業との違いもイメージしながら、あわせて理解しておくと良いでしょう。

 

 

 

2-1 資産の評価

① 取得原価評価

取得した資産の評価は、基本的に取得したさいの購入代価に引き取り費用などの付随費用を加えて計算します。これは取得原価主義と呼ばれる考え方です。

 

この考え方は、費用と収益を適切に対応させて利益を計算する、という考えが背景になっています。つまり、資産は取得した後、販売するか使用するかによって収益を実現します。となれば、ある一定の収益とその収益を上げるためにどれだけの犠牲をはらったのかを対応させる必要があるため、当該資産を取得するのにいくらかかったのかを把握しておくことが必要になるのです。

 

例えば、商品を100円で仕入れて120円で売り上げたとすれば、利益は20円です。当たり前の計算ですが、商品を仕入れた際に、取得原価である100円を記録していなければ20円という利益の額は計算できないでしょう。これが収益と犠牲との対応という考え方です。

 

これは日本において長年にわたり根付いてきた、当たり前の感覚なのですが、実は大企業の基準では、このような考え方から徐々に距離を置いていきつつあるのです。

 

すなわち、公正価値評価という時価評価に近い概念を徐々に採用していく方向にあります。つまり、いま売ったらいくらになるのかを全ての資産や負債に適応させるという考え方です。これはまさに国際化の影響です。

 

海外の投資家は、投資を通じて会社を育てるというよりも、価値が上がればすぐに転売することを好みます。そうすると、今売ったらいくらになるのか、とう情報が重要になります。これを追求していけば、ある意味、企業の鑑定書のような財務諸表ができあがります。

 

中小企業にとっては、そのような情報ニーズに対応する必要性は乏しいので、伝統的な日本の商慣習や考え方に従えば良い、ということです。

 

② 有価証券の評価

有価証券も資産の一つですが、その評価については取得原価と少し異なる部分があります。有価証券は、土地や建物、機械設備といった通常の固定資産とは異なり、事業のために使用したりすることを想定したものではないからです。

 

有価証券は保有目的に応じて会計処理が異なります。大企業では保有目的から有価証券を4つに区分します。1つは転売して利ざやを得るという、売買目的の有価証券です。2つ目は公社債など、満期まで保有して利息を得ることを目的とするものです。これら2つは余剰資金の運用という目的から保有されることが多いでしょう。

 

3つ目は子会社株式など、他社を支配し配当を受けることで利益を得る目的です。4つ目はその他いずれにもあてはまらないもので、例えば持ち合い株式などが該当します。

 

これらの目的に応じて、それぞれ時価評価をしたり取得原価に調整を加えたりと複雑な会計処理をすることになります。

 

例えば売買目的有価証券は時価で評価します。理由は、そもそも時価変動によって利益を得ることを目的として保有した有価証券だからです。さらに、その含み益は市場で売却してすぐに実現できます。以上から時価が変動した時点ですでに投資の成果は上がったと考えられているのです。
中小会計要領の場合は売買目的とそれ以外という2区分として、前者は時価評価、後者は取得原価評価とします。大変シンプルな会計処理です。

 

③ 棚卸資産の評価

棚卸資産、これは主に商品等の期末在庫のことを意味していますが、これらは期末時点でどれだけ在庫が残っているのか、という評価が必要です。

 

期末在庫の評価は在庫数量に単価を乗じて計算します。期末在庫の数量は数えればわかりますが、単価をどのように算出するかは工夫が必要です。

 

在庫は、例え同じ商品であっても仕入れをしたタイミングが異なる場合があります。そうすると、仕入れた金額が異なる場合も当然に想定されます。この場合に、どのように期末在庫の単価をとらえるのか、という問題が出てきます。この算出方法にはいくつかのパターンがあります。

 

代表的な考え方は「先入先出法」と呼ばれる方法です。これは、先に仕入れた商品から先に販売された、と仮定して期末商品の単価を推定する方法です。実際に、厳密にそのとおりに出荷されたかどうかは別として、基本的には現実の商品の流れに沿うため、合理的であるとされている方法です。

 

まずは、期末在庫数量のうち、最終仕入数量分を最終仕入単価で計算します。そしてそれを超える数量分は一つ前の仕入単価で計算、さらに一つ前とさかのぼって計算していくことになります。

 

他にも評価の算出方法がいくつかありますがその中で法人税法が認めている「最終仕入原価法」は中小企業では多く利用されてきた実態があります。最終仕入原価法とは、最後に仕入を行った際の仕入単価を期末在庫全体に一律に適用する考え方です。

 

最終仕入原価法は、厳密性を欠くため大企業では基本的に認められていませんが、法人税法との整合性や中小企業での実態を踏まえ中小会計要領では採用できることが明示されています。

 

 

 

2-2 債権は回収不能部分を見込む

日々の取引から生じる売上は、通常、全て現金払いではなく掛取引によって後日入金となることが一般的です。その場合にいつも全額回収できれば良いのですが、残念ながら一部分はどうしても回収できない債権が発生してしまいます。

 

このようなことを、事前に想定して債権の額から回収不能と見込まれる額を控除しておくのが貸倒引当金の会計処理です。

 

この回収不能見込額の計算方法に特徴があります。大企業の基準では、まず債務者の財政状況や経営成績を考慮して債権を3つの区分に分類します。特に問題のない一般債権、回収がやや危ぶまれる貸倒懸念債権、ほぼ回収不能な破産更生債権等の3つです。つまりこれらの区分は、回収の可能性を表しているので、可能性に応じて見込額を算出することになります。

 

一般債権は、過去の実績率等を用いて簡便的に算定します。貸倒懸念債権は債務者の経営状況等をしっかりと分析として、回収できる額を丹念に算定します。破産更生債権等はほぼ全額が回収不能と考えます。

 

このように大企業の会計基準では、貸倒引当金を算定する場合にも、相当の手間と時間をかける必要があることがわかります。

 

これに対して、中小会計要領では法人税法で課税所得の計算に用いられる簡便な法定繰入率を用いることが可能となっており、計算方法がかなり簡略化されています。

 

 

 

2-3 引当金

前述の貸倒引当金と名称が似ていますが、貸倒引当金が評価性引当金と呼ばれるのに対して、ここでは負債性引当金と呼ばれるものについて説明します。

 

例えば、従業員を雇用している場合、定期的に支払われる給与とは別に、その従業員が退職したさいには退職金を支払うことが一般的です。そこで、この退職金を支払う義務がいつ発生しているのか、という観点で考えてみましょう。それは、退職時に突然発生したわけではなく、長年の勤務に伴って少しずつ発生していると考える方が自然でしょう。

 

このような費用負担の発生を認識するために、この従業員が現在までに勤務した事実からすでに発生していると考えられる将来の退職金の負担義務を負債として計上します。これが退職給付引当金と呼ばれるものです。退職時に向けて少しずつ負債が増加していき、退職時にその全額を取り崩すというイメージです。

 

このように、将来に発生する負担でその原因がすでに発生しており、金額が合理的に算定できるものは負債性引当金として計上します。

 

大企業では、この退職給付引当金の債務についてかなり複雑かつ厳密な計算が要求されます。従業員の給与は、通常は勤務の継続や昇格とともに昇給をしていきます。このような将来の昇給も見込んだうえで退職時の支給見込額を算出しなければなりません。

 

そして、その見込額のうち当期に発生した部分はどれだけかを特定し、さらに、時間価値を考慮するために現在価値に割引計算をします。ここまで計算して1人分です。従業員全員分について、この計算をしなければなりません。

 

中小会計要領では、期末時点で従業員全員が自己都合退職したと仮定した場合に必要となる退職金の総額をもって引当金の額とします。大企業に比べると圧倒的に簡便的な計算によることが認められています。

 

 

3 導入するメリットとデメリットを検討しよう

ここまでの内容からわかるように、中小会計要領は上場企業の会計基準のように複雑な会計処理を要求していないにも関わらず、客観的で質の高い財務諸表を作成することができるようになる大変有用なツールです。

 

そして、これを導入するかしないかは、各企業の自由です。

 

最後に、導入することによるメリットやデメリットについて整理しておきます。これらを比較考量した上でメリットの方が大きいと判断できるならば導入することを検討してみてください。

 

 

 

3-1  何を目的にするか

まずは、会計基準の適用をどのような目的からとらえるのかという観点からメリットを整理していきます。

 

会計基準は、財務諸表の読み手にとって企業の財務内容を理解しやすくするためにあります。そのことが会社にとってメリットになるのかどうかという検討が必要となるでしょう。

 

① 経営者自身が理解する

まずは、経営者自身が自社の財務内容を理解するメリットです。客観的な基準によって作成されるデータですから、他社と比較することもできます。また、従来は年度決算期だけしか作成されていなかったのであれば、継続的に記録することになるため、月次などで経営状況をチェックすることが可能になります。このことにより、迅速な経営判断につなげることができます。

 

またそのことは同時に、税理士や公認会計士等の専門家からの助言や支援を受けやすくなることを意味します。彼らが共通して持っている尺度で、経営を分析することができるからです。

 

② 外部の関係者に理解してもらう

そして、企業外部の人々に財務内容を理解してもらうメリットです。中小企業にとって外部の利害関係者は、やはり一番に銀行等の資金提供者が挙がります。

 

銀行等は、融資の可否判断において財務諸表の内容をとても重視しています。その意味で、客観的な基準にもとづいて作成された財務諸表とそうではない財務諸表のどちらを信用しやすいかは想像に難くないでしょう。
また前述したとおり、将来の事業拡大を見据えてクラウドファンディングなど、金融機関に依存しない資金調達方法を確立していくためには、透明性の高い情報提供が求められるようになります。

 

③ 政府の支援を得る

さらに、中小会計要領の策定主体であり、所管官庁でもある中小企業庁は、これを普及させるためにさまざまな支援策を打ち出しています。

 

一つ目は、金融面での支援として日本政策金融公庫資金の貸付において、中小会計要領を適用している場合には利率を優遇したり今後適用を目指すための資金について貸付を行ったりしています。

 

二つ目は政策面での支援です。中小企業庁が所管しているさまざまな補助事業において、中小会計要領を適用していることによって審査時に加点されるものがあります。つまり中小会計要領を適用することで補助金を受けやすくなるというメリットも考えられます。

 

 

 

3-2  デメリットや適用時の注意点

前節では中小会計要領を導入することによる多くのメリットがあることを確認しました。その一方で、導入することの本質的なデメリットはありません。通常はどのようなことにもメリットとデメリットがありますが、これについては無いと断言できます。

 

ただ強いて課題を挙げるならば、現在の状況によっては日々の会計処理をより厳密に行うことや会計の理論や技術について学習することが必要になるため、そのことに時間やコストを要する可能性はあります。ただしそれも、将来に活きる投資であると考えることもできるでしょう。

 

さらに、現在ではクラウド上で会計処理を代行してもらえるサービス等も安価で提供されていますので上記のようなデメリットはほとんど問題にならないかも知れません。むしろ、統一的なルールがあるからこそこのようなサービスが利用可能になるという一面もあります。

 

このように、中小会計要領には圧倒的なメリットがあります。それは、これからの中小企業経営者にとって、重要なものばかりであったことでしょう。

 

一昔前とは異なり中小企業が事業拡大、成長していくための物理的な障壁は、ICT技術の発展によりどんどん低くなっています。その一例としてクラウドファンディングやソーシャルレンディングといった金融機関に依存しない資金調達方法を挙げました。

 

このようなプラットフォームを活用していくにあたっては、会社の器を広げる必要があるでしょう。つまり、世の中のさまざまな人とつながるための礼儀作法を身につけることが求められます。それはまさに、適切な会計基準にもとづいた財務諸表の作成に他ならないのです。

 

是非とも、世の中に通用するビジネスの共通言語である会計を身に付け、中小会計要領をツールとして活用しながら、会社の成長に役立ててください。

 

 


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