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【初めての法人決算】法人決算手続きの方法をどこよりも分かりやすく解説

株式会社などの法人であれば、法人税や消費税の確定申告に向けて、決算手続きを行わなくてはいけません。法人を設立したばかりの方にとっては、決算手続きをどのように行うのか不安に感じるかもしれません。
法人決算は非常に煩雑な手続きですが、慣れていない方も法律に則った決算手続きを実施する必要があります。そこでこの記事では、確定申告・納税までを含めた法人決算の手続きを分かりやすく解説します。法人決算手続きの方法を知りたい方や、確定申告に不安を抱えている方はぜひ参考にしてください。

 

 

1 法人決算の手続きとは

そもそも決算とは、ある会計年度期末における財務状況(資産や負債の金額)や、一年間の経営成績(収支)を計算する手続きです。非常に簡単にいうと、「会社の整理整頓やお掃除を行うこと」というイメージです。法人では、税金を正確に計算して納税する目的で決算を行います。また法人決算には、株主への活動報告や経営分析により今後の方針を決定する意味合いもあります。

 

つまり法人決算の手続きとは、納税や経営分析などを的確に行うために、収益状況や財務状況を明らかにする手続きです。個人事業主の場合は、決算手続きを行い、毎年2月15日から3月15日までに確定申告を済ませる必要があります。

 

一方で法人では、会社ごとに定めた「事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内」に確定申告を含めた法人決算の手続きを実施する必要があります。法人決算の手続きは、主に以下の流れで実施されます。法人決算手続きを実施する際には、以下のフローを意識すると円滑に行いやすくなるでしょう。

 

決算事項の確認・整理→決算整理仕訳→決算書の作成→各種確定申告書の作成→税金の納付

 

以上をまとめると、あらかじめ整理しておいた決算事項を基に決算整理仕訳を行い、決算書や各種確定申告書を作成し、税金を納付する流れとなります。

 

上記の法人決算の手続きを、期末日から2ヶ月以内に完了させる必要があります。日本企業の多くは、税法改正の適用時期や地方公共団体の予算編成などに合わせる意味合いで、3月決算(3月末日まで法人決算手続きを行うこと)を採用しています。ただし海外子会社を持っている法人では12月決算、小売業界の法人では2月決算を採用しているケースも少なくありません。

 

 

2 決算事項の確認・整理

法人決算の手続きでは、まず初めに決算事項の確認・整理を実施します。具体的には、以下三つの手続きに関して実行します。

 

 

2-1 書類等の整理

一年分の領収書や請求書を整理することから始まります。法人決算手続きでは、税金をいかに適正に圧縮するかが重要です。税金を合法的に削減する最たる手段が、「損金をもれなく計上すること」です。

 

法人決算を有利に進めるためにも、領収書や請求書を整理し、損金を可能な限り計上する手続きが必要になります。

 

 

2-2 資産の実査

法人決算を開始する前に、あらかじめ「資産の実査」を行なっておく必要があります。資産の実査とは、各資産の存在有無や帳簿価額とのズレなどを、経理担当の人や公認会計士などの監査人が実際に出向いて調査する行為です。

 

実査の対象となる資産としては、現金や銀行口座の残高などが最たる例でしょう。金庫やレジ、銀行残高などを実際に目で見て確認し、帳簿上の金額とズレがないかを確認します。

 

また、固定資産の実査も非常に重要な手続きです。固定資産は時間が経つにつれて、会計上の価値が減少していきます。そのため法人決算では、帳簿上の価値を実態としての固定資産の価値に合わせる必要があります。そこで固定資産の実査では、その手続きを行う為に不動産や機械設備などの状態を確認します。

 

資産の実査には他にも、売掛金や貸付金の残高確認、受取手形の実査、在庫の棚卸などがあります。

 

つまり資産の実査を一言で表すならば、帳簿上の資産価額が正しいかを調査する手続きです。正確な決算が求められる法人決算においては、非常に重要な手続きとなります。

 

 

2-3 負債の実査

資産の実査が必要であるのと同様に、負債の実査も法人決算では欠かせない手続きです。負債の実査とは、法人が抱えている負債の現状を確認する手続きです。

 

実査の対象となる負債には、買掛金や借入金、支払手形などが該当します。たとえば買掛金や借入金であれば、取引相手や銀行からの請求書などの書類を整理し、残高を確認していきます。また支払手形であれば、金額や支払期日がいつなのかについて確認を行います。

 

以上3つ(書類等の整理、資産の実査、負債の実査)の手続きを実施すれば、決算事項の整理・確認は完了となります。法人決算の手続きを正確に行う上で、上記の事前準備はとても大切です。法人決算手続きを実施する際は、いきなり決算整理仕訳から始めるのではなく、書類の確認や資産・負債の現状把握から開始するのをオススメします。

 

 

3 決算整理仕訳

資産・負債の実査や書類の確認を終えたら、次に「決算整理仕訳」を実施します。決算整理仕訳とは、年度をまたいで発生する金額を今期分と来期分に切り分ける際に行う仕訳です。

 

たとえば固定資産の減価償却費は、数年に渡って発生するので、決算整理仕分けの対象となります。他にも経過勘定や売上原価の確定、貸倒引当金の計上などが決算整理仕訳の対象に含まれます。

 

法人税などは発生主義(取引の発生時点を基準に、費用や売上高を計上する考え方)を基準に課税されるので、確定申告の際には発生主義に則って税金を計算・申告する必要があります。つまり法人決算の手続きでは、発生主義に則った確定申告を行う下準備として、決算整理仕訳を実施する訳です。

 

また決算整理仕訳は、法人にとって「年度末の大掃除」としての意味合いも持ち合わせています。資産の評価替えや経過勘定の計上を通じて、次期以降の資金繰りや財務戦略を考えることができます。

 

ここからは、決算整理仕訳の具体的な方法をご紹介していきます。

 

 

3-1 減価償却費の計上

機械設備や建物などの固定資産の購入費用は、購入年に一括で計上するのではなく、複数の年度に分けて計上します。この会計処理を「減価償却」と言い、この処理で発生する費用を「減価償却費」と言います。減価償却の対象となるものには、建物などの有形固定資産のみならず、ソフトウェアなどの無形固定資産も含まれます。

 

固定資産の種類によって、何年間で減価償却すべきか(耐用年数)が決まっています。また減価償却費の計算方法(定額法や定率法)についても、固定資産ごとに定められています。法人決算の際には、あらかじめ各資産の耐用年数や償却方法を調べた上で、決算整理仕訳を行う必要があります。各資産の耐用年数に関しては、国税庁のホームページに詳しく掲載されています。

 

定額法と呼ばれる方法を用いる場合、法人決算の際に計上すべき減価償却費(一年間)は次の計算式を用いて計算します。

・減価償却費(定額法)=取得価額(購入時の価格)×定額法償却率

 

定額法償却率は耐用年数に応じて、下記の通り決められています。

・定額法償却率=1÷耐用年数

 

たとえば耐用年数が5年間で取得価額が1000万円の固定資産であれば、一年間の減価償却費(定額法)は下記の通り計算されます。

・減価償却費=1000万円×(1÷5)=200万円

 

一方で定率法という方法では、未償却残高(取得価額から減価償却の累計額を差し引いた金額)に定率法償却率を掛け合わせることで、法人決算で計上すべき減価償却費を算出します。

・減価償却費(定率法)=期首未償却残高×定率法償却率

 

定率法償却率は、定額法償却率を二倍することで算出できます(200%定率法の場合)。

・定率法償却率=定額法償却率×2

 

先ほどの例(耐用年数5年・取得価額1000万円)を用いて、1年目と2年目の減価償却費を計算してみましょう。

・1年目の減価償却費(定率法)=1000万円×0.400=400万円
・2年目の減価償却費(定率法)=(1000万円−400万円)×0.400=240万円

 

以上の通り、定額法では毎年の減価償却費が変わらない一方で、定率法では年度によって減価償却費が変わります。

 

 

3-2 各種引当金の計算

法人決算手続きの際には、貸倒引当金や賞与引当金、退職給付引当金などを計上する必要があります。

 

貸倒引当金とは、売掛金や受取手形などが回収できなくなるリスクに備えて、発生し得る損失をあらかじめ金額として計上したものです。賞与引当金とは、来期に従業員に支給する賞与(ボーナス)をあらかじめ金額として計上したものです。そして退職給付引当金とは、将来支給する退職金をあらかじめ計上しておくものです。

 

つまり引当金とは、来期以降に発生し得る費用をあらかじめ計上しておくものです。下記の要件に該当する場合は、法人決算手続きの際に各種引当金を計上する必要があります。

 

  • 将来発生する特定の費用または損失である
  • 費用の発生が当期以前の事象に起因する
  • 費用が発生する可能性が高い
  • 費用額を合理的に見積もることができる

 

各種引当金の算出方法は複雑なので、今回の記事では割愛します。実際に引当金を計上すべきかどうかは、最寄りの税理士に相談することをおすすめします。

 

 

3-3 経過勘定の計上

経過勘定とは、契約に従って継続的にサービスを受ける(与える)場合に、発生主義に基づいて計上される勘定科目を指します。噛み砕いて言うと、年度をまたいで発生する費用や収益を、当期分と来期以降の分に分割する会計処理です。

 

法人決算手続きには、「前払費用」、「前受収益」、「未払費用」、「未収収益」の計4つの経過勘定があります。この中でも前から二つを「繰延処理」、残りの二つを「見越処理」と言います。

 

⑴繰延処理

繰延処理とは、来期分の費用を当期にまとめて支払うケースや、来期分の収益を当期に受け取るケースなどで行う会計処理を指します。

 

たとえば他社に提供しているサービスの代金(2年分)を、当期にまとめて受け取ったとします。この場合来期分に相当する収益を、前受収益として当期分の収益から差し引く(来期に繰越す)必要があります。

 

逆に他社から受けたサービスの代金(2年分)を当期に支払った場合、来期分に相当する費用は前払費用として当期分の費用から差し引いて、来期に繰越す処理を行います。

 

⑵見越処理

見越処理とは、当期には支払っていない(受け取っていない)ものの、当期分の費用(収益)として会計処理することです。

 

当期分として計上すべき費用は「未払費用」、当期分として計上すべき収益は「未払収益」として、それぞれ法人決算手続きの際に計上する必要があります。

 

 

3-4 売上原価の確定

売上原価とは、商品の仕入額や工場での製品製造に要した製造原価を指します。法人決算手続きでは、単純に当期分の仕入額などを計上するのではなく、所定の方法に則って売上原価を算出する必要があります。

 

法人決算手続きでは、下記の計算式を用いて売上原価を算出します。

・売上原価=期首商品棚卸高(製品棚卸高)+当期商品仕入高(製品製造原価)−期末商品棚卸高(製品棚卸高)

 

つまり売上原価は、期首時点で残っている在庫や製品の金額に、当期の仕入高や製品製造原価を足して、そこから期末に余った在庫や製品を差し引くことで算出します。

 

たとえば期首段階での在庫高が100万円、当期の仕入高が500万円、期末に余った在庫高が200万円の場合、売上原価は下記の通り算出されます。

・売上原価=100万円+500万円−200万円=400万円

 

以上の通り、売上原価を確定させるためには、期首と期末時点での在庫高が必要になります。法人決算手続きを行う際は、在庫高を正確に把握しておきましょう。

 

 

3-5 有価証券の評価替え

有価証券を保有している場合は、有価証券の評価替えの手続きも必要となります。有価証券とは、株式や債券などの財産的な価値を持つ資産であり、譲渡により有価証券の持つ権利を容易に移転できる点が特徴です。

 

法人決算の手続きでは、売買目的で保有している有価証券の簿価を時価に修正する仕訳が必要になります。この仕訳を「有価証券の評価替え」といい、時価と簿価の差額によって、行うべき仕訳が変わってきます。

 

たとえば簿価が時価を上回っている場合、以前と比べて株式の価値が下がっているため、簿価と時価の差額分を「有価証券評価損」として計上します。一方で簿価が時価を下回っている場合、以前と比べて株式の価値が上がっているため、差額を「有価証券評価益」として計上します。

 

以上の通り法人決算手続きでは、保有している株式の価値を適正な時価に正す必要があるため、あらかじめ簿価と時価の差額は把握しておくべきでしょう。

 

 

4 決算報告書の作成

決算整理仕訳が完了したら、各種法律に則って各種決算報告書を作成していきます。

 

決算報告書とは、法人決算手続きの結果をまとめた書類を意味します。決算報告書は、税務署への確定申告はもちろん、株主や金融機関への現状報告などを目的に作成します。

 

税務署への開示義務に加えて、上場企業・大企業に該当する場合や、特定の株主などから請求があった場合にも決算報告書の開示義務が発生します。以上の通り多様な場面で必要となるため、全ての法人は決算報告書を作成する必要があります。

 

決算報告書には、主に下記書類が該当します。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 個別注記表
  • 計算書類に関する付属明細書
  • 事業報告書
  • 事業報告に関する付属明細書

 

この項では、法人決算手続きで必要となる各書類について解説していきます。

 

 

4-1 貸借対照表

貸借対照表とは、ある時点(法人決算手続きを行う時点)の財務状態を示す決算書です。貸借対照表の左側(借方)には現金や固定資産などの「資産」項目を、右側(貸方)には借入金や買掛金などの「負債」と資本金などの「純資産」をそれぞれ記載します。

 

つまり貸借対照表は、ある時点で「どの程度資産を保有しているのか」、「どの程度返済すべき負債を背負っているのか」などを表しています。

 

また貸借対照表は、借方と貸方の合計が一致することから「バランスシート」とも呼ばれています。そのため法人決算手続きの際、純資産と負債の合計が資産と一致しなかった場合は、作成プロセスで何かしらのミスが生じたと考えられます。貸借対照表を作成したものの左右の金額が一致しない時は、どこかにミスがないか今一度確かめましょう。

 

なお「貸借対照表」は、法人税法と会社法で作成が義務付けられています。

 

 

4-2 損益計算書

損益計算書とは、ある一年間(事業年度)の経営成績を表す決算書です。損益計算書を作成する際は、一番上に売上高を置き、そこから各種費用や収益を加算・減算することで、当期純利益を計算します。

 

まず売上高から売上原価や販売管理費を差し引くことで、本業で得た利益である営業利益を計算します。その営業利益に営業外で得た収益(受取利息など)や営業外で支払った費用(支払利息など)を加算・減算することで、経常利益を算出します。そして経常利益に特別利益(固定資産売却益など)や特別損失(有価証券売却損など)、税金などを加減算することで、当期純利益を算出します。

 

つまり損益計算書では、一年間に「どのくらい収益(利益)を得られたか」、「どの程度の費用が発生したか」を表しています。

 

貸借対照表と同様に、損益計算書も会社法と法人税法で作成が義務付けられています。

 

 

4-3 株主資本等変動計算書

株主資本等変動計算書とは、ある一年間(事業年度)における純資産の変動を表す決算書です。純資産には、資本金や利益剰余金など、株主に関係する勘定科目が該当します。

 

そのため株主資本等変動計算書は、株主にとって特に重要な決算書という位置付けとなっています。またこの決算書では、前期以前の当期純利益を何に対してどのように活用したかも表します。ですので、この決算書を確認すれば、利益の使い道も突き止めることができます。たとえば内部留保の積立額が多い会社は、安全性を重視している会社と判断できるでしょう。

 

なお株主資本等変動計算書も、損益計算書や貸借対照表と同様に、会社法と法人税法で作成が義務付けられています。

 

 

4-4 個別注記表

個別注記表とは、貸借対照表や損益計算書などに関する補足情報を記載した決算書です。会社法で作成が義務付けられている書類であり、会社の種類(公開会社や会計監査人設置会社など)によって記載すべき項目が異なります。

 

具体的には、主に下記の内容が個別注記表の記載事項となります(下記以外にもあります)。

  • 貸借対照表に関する注記
  • 損益計算書に関する注記
  • 株主資本等変動計算書に関する注記
  • 会計方針の変更に関する注記
  • 重要な会計方針に係る事項に関する注記
  • 誤謬の訂正に関する注記
  • 税効果会計に関する注記
  • 継続企業の前提に関する注記
  • 表示方法の変更に関する注記
  • その他の注記

 

上記の中でも、以下の内容は原則全ての会社で注記が必要になります。

  • 会計方針の変更に関する注記
  • 重要な会計方針に係る事項に関する注記
  • 誤謬の訂正に関する注記
  • 表示方法の変更に関する注記
  • 株主資本等変動計算書に関する注記
  • その他の注記

 

個別注記表を作成する際は、必要な記載内容をあらかじめ確認しておきましょう。

 

 

4-5 計算書類に関する附属明細書

計算書類に関する附属明細書とは、会社法などによって、貸借対照表や損益計算書などの計算書類と併せて作成することが義務付けられている附属書類の一つです。

 

ちなみに「計算書類に関する附属明細書」は、他の計算書類とは異なり、本店・支店に備え置く目的で作成する決算書です。

 

「計算書類に関する附属明細書」は各種計算書類の補足を示す役割を果たすものであり、具体的には下記4項目に関して記載する必要があります。

 

  • 有形固定資産および無形固定資産の明細
  • 引当金の明細
  • 販売費および一般管理費の明細
  • その他の重要事項

 

⑴有形固定資産および無形固定資産の明細

この項目には、有形固定資産と無形固定資産のそれぞれについて、期首・期末の帳簿価額(取得原価)や当期の増減額、減価償却累計額などを記載します。

 

なお作成に際しては、「帳簿価額」または「取得原価」のいずれかの記載方法を選択します。

 

⑵引当金の明細

引当金の明細に関しては、期首もしくは期末のいずれかに引当金の残高がある場合に記載が必要となります。

 

期首・期末残高に加えて、当期の増加・減少額を記載します。なお目的外の理由により減少した部分に関しては、その理由を記載する必要があります。

 

⑶販売費および一般管理費の明細

販売費および一般管理費の明細に関しては、該当する科目と金額・摘要をそれぞれ記載していきます。

 

⑷その他の重要事項

計算書類(貸借対照表や損益計算書など)に関して、上記以外で補足すべき内容がある場合は、適宜工夫した上で記載しましょう。

 

以上が「計算書類に関する附属明細書」に記載すべき主な内容になります。この決算書を作成するに際しては、日本公認会計士協会が公開している「計算書類に係る附属明細書のひな型」が非常に参考になります。法人決算手続きの際には、ひな型を参考にすると良いでしょう。

 

 

4-6 事業報告書

事業報告書とは、事業内容・概況や財務状況、株主・従業員の状況などをまとめた決算書であり、事業年度ごとに作成するものです。作成した事業報告書は、基本的には株主や取引先の銀行などに配布します。

 

法人決算手続きを行う際は、ホームページ上にアップされている他社の事業報告書を参考にするのも一つの手でしょう。

 

 

4-7 事業報告に関する附属明細書

事業報告に関する附属明細書とは、計算書類に関する附属明細書と同様に会社法に基づいて作成する決算書です。

 

「事業報告に関する附属明細書」には、前述した事業報告書の内容を補足する重要事項を記載します。

 

具体的な事業報告に関する附属明細書の記載内容としては、下記を盛り込みます。

 

  • 会社役員に関する他の会社の業務執行取締役等との兼職状況の明細
  • 親会社等との取引に関する事項

 

「計算書類に関する附属明細書」と同様に、本店・支店に備え置く書類になります。

 

以上の7つが、法人決算手続きで必要となる主な決算書になります。決算書ごとに根拠となる法律や記載事項、会社の種類による必要の有無などが異なります。

 

法人決算手続きの際は、どの決算報告書が必要であるかを事前に確認した上で、手続きの実行に移りましょう。

 

 

5 各種確定申告書の作成・提出

法人決算手続き自体は、前項で述べた「決算報告書の作成」で完了となります。ですが決算報告書を作成した後は、確定申告や納税など、法人にとって重要な手続きが続きます。そこで今回の記事では、確定申告書の作成と税金の納付についても解説していきます。

 

まず初めに、各種確定申告書の作成・提出についてご説明します。法人決算手続きを終えたら、確定申告の手続きを行わなくてはいけません。確定申告とは、各種税金の金額を税法のルールに基づいて計算し、その結果をまとめた書類を提出する手続きです。最初の方にお伝えした通り、法人の場合は「会社ごとに定めた事業年度」に基づいて確定申告と納税を実施する決まりとなっています。

 

確定申告の必要がある税金には、「法人税」や「消費税」、「法人事業税」、「法人住民税」などがあります(他の税金に関する申告が生じるケースもあります)。

 

税金の種類によって、確定申告の期限や申告先・申告方法、提出書類の書き方などが異なるため、今回は税金の種類ごとに確定申告の手続きを解説していきます。

 

 

5-1 法人税

⑴法人税とは

法人税とは、法人が一事業年度で獲得した所得に対して生じる税金です。個人事業主の利益に課される所得税の法人バージョンというイメージで問題ありません。

 

ここでいう法人には、株式会社だけでなく社団法人や医療法人なども含まれています。つまり所得を得た法人であれば、基本的には法人税の申告手続きが必要になります。

 

法人税の課税対象となる「所得」は、税法のルールに基づいて計算します。そのため、会計上は赤字であっても税法上黒字であれば、法人税の納税義務が発生するので注意が必要です。

 

法人税の税率は、法人の規模や種類によって異なります。一般的な中小企業であれば、800万円以下の所得部分は19%、800万円超の部分には23.2%が適用されます(現行法上)。

 

法人決算で確定申告を実施する際は、あらかじめ自社に適用される法人税率を確認しておきましょう。法人税率については、国税庁のホームページに詳しく記載されているので参考にしましょう。

 

⑵提出書類

法人税の確定申告に際しては、全20種類ある「別表」と呼ばれる書類を提出しなくてはいけません。全ての提出書類をご紹介するのは困難なので、今回は特に重要な別表をご紹介します。

 

  • 別表一→会社情報や法人税額を記載する書類(法人税申告書そのもの)
  • 別表二→同族会社への該当有無を記載する書類
  • 別表四→税務上の所得金額を計算・記載する書類
  • 別表五→資本金等の計算結果や租税公課の納付状況などを記載する書類

 

上記でご紹介した別表以外にも、会社の状況によって他の別表が必要となる場合もあります。法人税申告の提出書類を揃えるのは手間がかかるので、法人決算手続きを開始する前に、必要な書類を把握しておくのがオススメです。

 

⑶申告期限・申告先

法人税の確定申告は、原則期末日(決算日)から2ヶ月以内に行う必要があります。たとえば3月決算の法人ならば、5月末日までに申告手続きを終えなくてはいけません。

 

ただし、「監査などの理由で年度終了日から2ヶ月以内に決算が確定しない」などの場合には、例外的に法人税の申告期限を延長することが認められています。確定申告を延長することはできても、法人税額には利子税が追加されるのでご注意ください。

 

法人税の確定申告は、「郵送」、「直接持参」、「e-Tax」のいずれかの手段を選ぶことができます。また申告先は、お近くの管轄税務署になります。

 

郵送で確定申告するのであれば、管轄税務署を送り先として指定すれば問題ありません。ただし「ゆうパック」や「宅急便」で送付することは認められていないのでご注意ください。

 

管轄税務署が近い場合には、直接出向いて提出するのも一つの手です。一方で税務署が遠い上に郵送するのが面倒という方は、「e-Tax」により申告するのも良いでしょう。ただしe-Taxを利用する場合は、事前の手続きが必要となるので時間に余裕を持っておきましょう。

 

 

5-2 消費税

⑴消費税とは

消費税とは、商品やサービスを購入する際に発生する税金です。国に支払う税金という点では法人税と同じですが、法人税とは異なり間接税(納税する人と税金を支払う人が異なる税金)となります。つまり法人は、商品やサービスを売った際に顧客から受け取った諸費税を、顧客の代わりに納税する必要があります。

 

基本的には全ての法人に消費税の納税義務がありますが、免税事業者に該当する場合は消費税の納税義務が免除されます。ざっくり言うと、「資本金が1,000万円未満」かつ「過去二年間の課税売上高が1,000万円未満」である法人は消費税の納税が免除されます。

 

また消費税の計算方法には、「原則課税」と「簡易課税」の二種類があり、あらかじめ好きな方式を選択することができます。原則課税では、売上高に消費税率を掛け合わせた金額から、仕入高に消費税率を掛け合わせた金額を差し引くことで、納税する消費税額を計算します。一方で簡易課税では、売上高に消費税率を掛け合わせた金額から、売上高に消費税率とみなし仕入率を掛け合わせた金額を消費税の納税額とみなします。

 

原則課税と簡易課税、どちらが良いかはケースバイケースなので、法人決算手続きの際には、納税額や手続き面を考慮した上で課税方式を選びましょう。

 

⑵提出書類

消費税の確定申告では、主に以下の書類を提出します。

 

  • 消費税の確定申告書
  • 付表2:課税売上割合・控除仕入税額等の計算書(原則課税)
  • 消費税の還付申告に関する明細書(還付がある場合)
  • 付表5:控除対象仕入税額の計算書

 

原則課税か簡易課税、いずれの課税方式を選択するかによって、確定申告の際に必要となる提出書類が異なってきます。後々間違いだったとならないように、必要となる書類をしっかり確認しておきましょう。

 

⑶申告期限・申告先

消費税の確定申告期限は、法人税と同様に期末日から二ヶ月以内とされています。時期が重なるので、法人税の申告と同時に実施するのがオススメです。

 

また確定申告先も法人税と同様に、お近くの管轄税務署になります。スムーズに申告できるように、法人決算手続きに本格的に取り掛かる前に、どこの税務署に提出すべきかを把握しておきましょう。なお確定申告方法も、法人税と同様に「郵送」、「直接持参」、「e=Tax」の中から好きな方法を選択することができます。

 

見てきた通り、消費税の申告方法や申告先・期限に関しては、法人税と基本的には同じとなります。

 

 

5-3 法人事業税

⑴法人事業税とは

確定申告に慣れていないと忘れがちなのが、「法人事業税」です。法人事業税とは、法人が事業を運営する上で使用している公共設備・サービスに要する費用を負担してもらう目的で設けられている税金です。

 

事業によって得た所得に対して課税される点では法人税と同じですが、納税先に決定的な違いがあります。法人税は国税であるため国に納税しますが、法人事業税は地方自治体(都道府県)に納税する地方税です。

 

売上高が290万円以下となった場合には、法人事業税の納税義務が免除されます。また納付した法人事業税は損金として扱うことができるため、一定程度の節税効果を見込めます。

 

法人事業税の金額は、所得に法人事業税率を掛け合わせることで算出できます。法人事業税率は都道府県ごとに異なる上に、所得金額や事業開始年度、法人の種類などによっても税率が変わってきます。

 

法人事業税の計算は複雑となるため、最寄りの税理士にサポートしてもらうのが最もオススメです。

 

⑵提出書類

法人税や消費税の申告に関しては提出書類が明確に決まっていましたが、法人事業税の申告に関しては、どんな書類が必要となるか一概には言えません。と言うのも都道府県ごとに法人事業税の申告に要する提出書類が異なるためです。

 

一般的には、事業税申告書(都道府県によって名称が異なります)に加えて、貸借対照表や損益計算書などが必要となります。事業税申告書に記載する事業税額については、法人税申告書(別表4)に記載した所得金額を用いて計算します。

 

都道府県ごとに異なるので、あらかじめ事業所が所在している都道府県のHPにて、必要となる提出書類を調べるのをオススメします。

 

⑶申告期限・申告先

法人事業税の申告期限は、法人税や消費税と同様に「期末日(決算日)から二ヶ月以内」とされています。申告方法も法人税や消費税と同様に、「郵送」や「直接持参」、「e-Tax」の中から選択することができます。

 

ここまでは他の税金と同様ですが、申告先については異なるので注意が必要です。法人税や消費税は税務署ですが、法人事業税については「都道府県の税務事務所」になります。

 

したがって、法人事業税の申告を実施する際は、都道府県の税務事務所の所在地を事前に調べておく必要があります。

 

 

5-4 法人住民税

⑴法人住民税とは

法人事業税と同様に地方税に含まれる法人住民税も、法人が申告すべき税金の一つです。「法人都道府県民税」と「法人市町村民税」の二つを合わせて、「法人住民税」と呼んでいます。

 

法人住民税の納税額は、法人税割と均等割の合計額となります。法人税割とは、法人税の金額を基準に算出されるものであり、法人税額に自治体ごとに異なる税率をかけることで算出できます。一方で均等割は、都道府県民税であれば資本金の額、市町村民税の場合は資本金と従業員数によってそれぞれ算出します。

 

つまり他の税金とは異なり、法人住民税に関してはたとえ赤字であっても納税義務が発生します。法人所得が赤字であっても、均等割の部分が発生する点には注意しておきましょう。

 

⑵提出書類

法人住民税を申告する際には、法人事業税と同様に地方自治体ごとに異なる書類を提出します。たとえばある市町村では、法人市民税の申告書に加えて、「法人税額の計算書」や「課税標準の分割に関する明細書」などが必要になります。

 

都道府県や市区町村ごとに異なるので、こちらについても必ず提出が必須となる書類をご確認ください。

 

⑶申告期限・申告先

法人住民税の申告ルールはほとんど法人事業税と同じですが、念のために再度ご説明します。

 

まず申告期限については、期末日(決算日)から二ヶ月以内になります。次に申告方法については「郵送」や「直接持参」、「e-Tax」の中からお好きな方法を選択できます。申告先については法人税や消費税と異なり、「都道府県の税務事務所」となります。

 

 

6 税金の納付

確定申告書の提出まで終えたら、法人決算手続きはほぼ終了です。最後に税金を納付すれば、法人決算手続きは完了となります。確定申告書を提出しても、税金を納付しなければ「追徴金」などのペナルティが課されるので忘れずに納税しましょう。

 

ここでは、「法人税」、「消費税」、「法人事業税」、「法人住民税」のそれぞれについて、税金の納付期限をご紹介します。

 

法人決算手続きの際には、今回ご紹介する税金の納付期限をぜひご参考ください。

 

 

6-1 法人税

法人税の納付期限は、原則「期末日から2ヶ月以内」とされています。先ほど解説した法人税申告の期限も「期末日から2ヶ月以内」に設定されています。

 

つまり、期末日から2ヶ月以内に「確定申告」と「法人税の納付」の双方を完了させる必要があると言えます。たとえば3月決算の会社の場合、5月末までに法人税申告と税金の納付を済ませなくてはいけません。法人決算手続きを終えたら、確定申告だけでなく納税についても忘れずに行いましょう。

 

また法人税については、「中間納税」というものを行うことができます。中間納税とは、前期の確定申告により発生した税金のうち、約半分を前払いする仕組みです。この制度を用いると、一度あたりの支出が減るため、資金繰りをしやすくなるメリットが得られます。前期の法人税額が20万円を超えている法人であれば、中間納税の制度を活用できます。

 

中間納税を行う場合は、通常の法人決算手続きとは納税期限が異なります。中間納税では、「事業年度の開始日から6ヶ月を経過した日から起算して、二ヶ月以内」が納税期限となります。たとえば3月決算の場合、11月末までに中間納税を実施する必要がある訳です。

 

中間納税を実施する予定の法人は、通常の確定申告とは異なる納付期限に十分注意しましょう。

 

 

6-2 消費税

次に、消費税の納付期限についてご紹介します。結論から言うと、消費税の納付期限は法人税と同様に、原則「期末日より2ヶ月以内」とされています。つまり消費税についても、期末日から2ヶ月以内に確定申告と納税を同時に終わらせなくてはいけません。

 

なお消費税にも「中間納税」の仕組みがありますが、法人税とは仕組みが全く異なるので注意が必要です。まず中間納税の対象は、前期の消費税納付額が48万円超の法人となります。

 

また前期の消費税額に応じて、中間納税の回数は異なってきます。消費税額が48万円超から400万円以下の場合は年1回、400万円超から4,800万円以下の場合は年3回、4,800万円を超える場合は年11回となります。

 

加えて、中間納税の回数によって、納付期限や納付税額にも違いが出てきます。たとえば年一回の場合には、納付期限は「中間対象期間末日の翌日から2ヶ月以内」、納付税額は「前期の消費税額の1/2」となります。ケースごとに納付税額や期限のパターンが異なるので、あらかじめ確認しておきましょう。

 

 

6-3 法人事業税

法人事業税の納付期限は、消費税や法人税と同様に「期末日から2ヶ月以内」とされています。消費税や法人税と納付先は異なるものの、納付期限は原則同じなので混同しないようにご注意ください。

 

また法人事業税にも中間納税の制度があり、納付期限は他の税金と同様に「事業年度開始日から6ヶ月経過した日から起算して2ヶ月以内」となります。

 

 

6-4 法人住民税

結論から言うと他の税金と同じ納付期限ですが。念のためご説明いたします。法人住民税は「期末日から2ヶ月以内」に納税を行う必要があります。また中間納税についても、他の税金と同じく「事業年度開始日から6ヶ月経過した日から起算して2ヶ月以内」に設定されています。

 

以上で各種税金の納付期限の説明は終わりです。基本的には納付期限に違いはありませんが、細かい部分(中間納税など)を見ていくと若干の違いがあるので注意が必要です。

 

 

7 まとめ

今回の記事では、法人決算手続きの方法について順を追って解説しました。法人決算手続きは、決算事項の確認から始まり、各種決算書の作成などを経て、税金を納付した段階で完全に終了となります。

 

決算事項の確認段階では、決算仕訳や決算書の作成に必要となる書類の整理などを行います。決算整理仕訳の手続きでは、減価償却費の計上や経過勘定の計上など、年度をまたいだ決算事項について適切な処理を施します。決算整理仕訳が終わったら、貸借対照表や損益計算書などの各種決算書を作成します。

 

決算書作成まで終えれば、基本的な法人決算手続きは完了となります。後は決算書の内容を基に法人税や消費税の確定申告を行い、税金を納付する流れとなります。法人を設立したばかりの人からすると、法人決算手続きは非常に複雑で、何から手をつければ良いか不安になるかと思います。法人決算手続きで分からないことが出てきた際には、この記事でご紹介している内容をぜひご確認ください。

 

ただし文章を読んだだけでは、法人決算手続きを進めていくのが困難という方もいるかもしれません。そのような方は、ぜひ最寄りの税理士さんにご相談することをオススメします。税金のスペシャリストである税理士に相談すれば、法人決算手続きで分からない部分について手厚いサポートを得られるでしょう。

 

 


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