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節税対策はそれで十分か?決算期などで行う節税方法を徹底解説

毎年、決算月に近づくと予算の達成に向けて熱心に取り組む企業の姿がよく見かけられますが、節税対策が疎かになっていないでしょうか。予想外に多くなった利益額を決算前に把握して事業の拡大等に役立つ施策を行えば、節税のみならず企業の成長にも繋がるはずです。

 

今回は決算対策として取り組むべき節税のあり方や方法を紹介します。即効性の高い節税方法から時間を十分とって取り組む方法のほか、事業承継や社員のモチベーションアップに役立つ節税対策などを説明していきましょう。

 

 

1 決算を迎える際の節税対策のメリット

ここでは決算を迎えるにあたり、なぜ節税対策を行うべきかという点に着目して、それに取り組むことによるメリットを説明します。

 

 

 

1-1 税金支出が減少し資金繰りが楽になる

決算時における節税対策のメリットは言うまでもなく多額の税金支出を少なくできることですが、そのことによって決算後の資金繰りが楽になるという効果が得られます。

 

たとえば、決算前に大量の商品を購入して売上を伸ばせば良好な業績結果となるでしょう。しかし、利益額の把握が遅れれば節税対策がとれず、結果として多額の利益を計上し多額の税金支出が余儀なくされるのです。

 

そのような状況で売上債権の回収が買入債務の決済よりも遅い企業などでは税金の支払い月等で資金繰りが悪化するケースが少なくありません。もし税金の支払いが遅れればペナルティーが科せられより多くのお金を支出することになるでしょう。

 

しかし、決算業務を早めにかつ適切に実施すれば、利益の把握もより早く正確にできるので節税対策ができます。決算前の大量仕入れを避け適切な節税対策を行えば適正な水準の利益額に抑えられ多額の税金支出が回避できるのです。

 

 

1-2 節税対策で経営の効率化が図れる

不要な資産を処分すれば節税効果が得られるほか、全体の資産の見直しで収益に貢献する資産の検討、未活用資産の効果的な活用、など経営の効率化を図る機会になります。

 

工場などの機械・設備等には稼働できるものの、生産性が低い、時代遅れの製品しか作れない、などの理由で廃棄されないまま保管されているものが少なくありません。確かに将来には何らかの点で再び使用できる可能性はあるでしょうが、そう思われてから長期間一度も使用されることなく保管されていることが少なくないのです。

 

機械・設備は工場内の一定のスペースを専有するため、未活用の機械等は工場のスペースを無駄にしているといえます。

 

しかし、節税対策の一環で資産の見直しを行い不要な資産を処分していけば、将来の収益に貢献する機械等を導入できるスペースも確保できるのです。また、逆に資産の見直しをすることで不足している工具・副資材等や、必要であるのに故障しがちな機械・機器等を再認識できることもあります。

 

節税対策で資産の見直しをすれば、生産性や競争力を上げるための最新の設備等の導入や、不足して困る工具・副資材の管理の向上が可能となり、経営の効率化が図れるのです。

 

 

1-3 節税対策が事業承継に役立つ

事業承継を円滑に進める手段として節税対策が有効です。会社を後継者に引き継がせるためには経営権を確保できるだけの株式の移転が不可欠ですが、企業の株式の評価が高いと資金の準備と税金の支払いで事業承継が難しくなります。

 

しかし、節税対策の方法の中には事業承継を円滑に進めるのに役立つオペレーティングリースなどがあるのです。節税を行いつつ企業の株式の評価額を下げていき、事業承継の時期に必要な資金を確保できるような方法がとれれば、スムーズな経営の引き継ぎが可能になります。

 

 

1-4 社員のモチベーションアップに役立つ

節税対策にはさまざまな方法がありますが、中には社員のやる気を引き出したり能力を伸ばしたりできる方法も少なくありません。

 

社員のモチベーションアップに貢献する要因は多くありますが、報酬のアップや特別報酬の拠出などが有効です。節税対策としては特別報酬の拠出が利用でき、具体的には決算賞与の支給が該当します。

 

また、社員の能力向上に向けた研修などの教育機会を設けたり、資格取得のための費用を負担したりすると社員のやる気が向上することがあります。そのため決算前にそうした教育機会等を提供すれば、節税とともに社員のモチベーションアップが期待できるのです。

 

 

1-5 経営品質の向上に繋がる

決算を迎える際に節税対策に積極的に取り組むことで節税のほかさまざまなメリットが得られるほか、それらの取り組みを通じて経営品質のレベルアップが可能となるのです。

 

節税は税金の支払いを少なくして資金繰りを楽にするという財務上の観点から重視されがちですが、その取組方法は多岐にわたりさまざまな効果が得られます。つまり、節税対策を熟知し実施できれば業績の向上や企業の成長に繋がる方法を習得できるわけです。

 

たとえば、先のモチベーションアップを期待した節税対策は、その実施によって社員にどの程度のやる気が上がり、それが業績にどう影響するかを計る機会にもなります。

 

決算賞与や教育機会の提供などが実際に社員のやる気にどう影響し、業績がどのように変わるかが確認でき、改善点も把握できるのです。節税対策を単なる税金支出の低減だけに利用せず、経営管理の一環として利用することで経営品質が向上できるでしょう。

 

 

2 決算を迎えるまでの重要な節税対策

ここでは決算時を含めて特に重要な節税対策を紹介します。

 

 

 

2-1 期末在庫の調整・適正化

期末在庫量・在庫高は売上原価の算定に直結し利益額および税額の決定に大きく影響することから期末在庫の調整や適正化は極めて重要な節税対策になります。

 

①期末在庫による節税対策とは

税金の大きさに直接影響する利益額は「売上高-売上原価」で求められるため、その売上原価の算定要素である期末在庫を適正に調整・管理することで節税も可能となるのです。

 

売上原価を求める式は「期首在庫高+当期仕入高-期末在庫高」となるため、期末在庫高が小さいほど売上原価は大きくなり、結果として利益額が小さくなります。

 

従って、期末在庫高を小さくしていく取り組みや管理が節税対策となるのです。

 

②期末在庫による節税対策の方法

期末在庫による節税対策の具体的な方法としては以下のような内容が挙げられます。

 

・期末に在庫量を増やさない

在庫管理が不十分な場合、期末に大量の在庫量を抱えて次期に繰り越すケースが多く見られますが、結果として売上原価の減少に繋がるため期末在庫量を増やさない管理が必要です。

 

適正在庫を維持するための管理ルールのない在庫管理の下では、企業の在庫量は全体的に増加する傾向が見られます。そうした管理を続けていると長期在庫が多くなりやがて不良在庫やデッドストックも増加し、単に在庫高が大きいだけの問題で済まない事態になりかねません。

 

収益に結び付かない長期在庫等が増えれば、買入債務に必要な資金の確保が困難になり、資金繰りの悪化から経営リスクを高めることもあるでしょう。

 

そのため、節税対策として期末在庫の調整や管理を行うというよりは、企業経営の重要なマネジメント対象として適正な在庫管理が求められるのです。在庫管理には発注の管理も必要となるため、発注管理や在庫管理の方式を各企業の状況に適したものを選び実施していくことが重要になります。

 

・不要在庫は早めに処分する

売れ行きが悪くなった長期在庫を安く売却したり、不良在庫などを処分したりして、不要な在庫を放置しない管理が必要です。

 

長期在庫は今後不良在庫等になる可能性が低くないことから一刻も早い売却が望まれますが、機能やデザインが陳腐化しているなどの理由から通常価格での販売は容易ではないでしょう。そのため時には思い切った値下げで売りさばくといった方法も必要になるのです。

 

長期在庫がデッドストックになれば、無価値なものになるだけでなく処分に費用がかかる厄介者になりかねません。そのため長期在庫が売れそうなうちに多少の赤字覚悟で売却することも必要になります。

 

また、実際に不良在庫等になった在庫は早めに処分しましょう。それらを保有することは税金支出を多くすることに繋がるため、多少費用がかかっても処分する意義があるのです。そして、それらが専有していたスペースに売れ筋商品を在庫すれば売上も伸ばせるでしょう。

 

・大量の期末仕入をしない

たとえ期末に資金の余裕がある、利益が多くなりそうなどの理由から期末に大量仕入することは避けるべきです。

 

期末に仕入れた分は当期仕入高を多くし売上原価を大きくしますが、期末在庫高を増やし売上原価を小さくしてしまうため節税効果は低いのです。

 

一方、大量発注による大量在庫は不良在庫を発生させる可能性を高めるというリスクを伴うため、在庫管理上は好ましくありません。

 

供給先の販売協力の依頼などで取引上断りにくい場合でも可能な限りで売れ筋商品などに限定し2カ月程度以内で消化できる量に抑えるべきでしょう。

 

・在庫の評価方法と適切な運用

在庫の評価方法の種類やその運用の仕方で売上原価が大きく変わることもあるため、適切な評価方法の選択と運用が求められます。

 

たとえば、中小企業などの場合最終仕入原価法を採用する企業が少なくありません。この方法は、各商品の期末に最も近い時期に購入した単価(最後の仕入単価)を評価額とするため、会計上の取り扱いが簡単で事務作業も比較的楽に済みます。

 

また、期中に高い単価で購入していた場合でも最後の購入単価が低いと売上原価はそれで計算され、利益額は小さくなり節税できるのです。

 

従って、最終仕入原価法を採用している場合、期の後半に購入する商品等の単価をできるだけ低くなるような取引が重要となり、それを意識した購入先との価格交渉が求められます。

 

 

 

2-2 減価償却費の適切な計上と活用

資産によっては高額の減価償却費が計上することもあり、減価償却費の適切な活用と計上は節税に大きな効果をもたらします。

 

①減価償却費による節税対策とは

高額な建物や機械・設備などは、年間の減価償却費も高額になり利益を大幅に縮小させるため節税効果も高いです。そのためそうした資産を決算期の前に導入しておけば大きな節税効果が得られるでしょう。

 

工場の建物、機械・設備、営業拠点の建物、事務機器や情報システムなどの資産は長期に渡って収益に貢献するものであり、それらの取得に要した費用は減価償却費として一定期間に配布されます。

 

減価償却費の計上が可能となる資産の取得価額は原則として10万円以上のものです。ただし、10万円以上20万円未満や10万円以上30万円未満のもののなかには対象資産の全部や1部の償却などが可能なものもあります。

 

なお、減価償却費の配賦期間(耐用年数)は対象資産の種類ごとに定められ、業種、機械・設備のタイプ、新品と中古品といった違いなどでも異なるのです。

 

減価償却費を計算する方法は主に定額法と定率法とに分かれます。定額法は毎年の減価償却費を一定額にする方法で取得費を耐用年数で割って求めるものです。

 

一方、定率法は毎年の償却率(耐用年数に応じた)を一定にして減価償却費を求めるもので、「未償却残高×償却率」で計算されます。そのため定率法の減価償却費は前半が多くなり後半が少なくなるという特徴があり、節税に有効となるケースが少なくありません。

 

償却方法は減価償却資産の種類ごとに選定することになりますが、償却方法の選定についての届出をしなければなりません。創業した場合などでは、減価償却の方法を選定の上翌年の3月15日までに所轄の税務署長へ届出でする必要があります。届出しない場合、法定の償却方法が採用されるため注意しましょう(法定の償却方法は一般的には定額法)。

 

なお、建物および建物の附属設備・構築物は定額法のみで、機械装置、運搬車両や器具・備品等は定額法と定率法からの選択と定められています。

 

減価償却費の計上には上記のような特徴があるため、それを上手く活用すれば効果的な節税が期待できるのです。

 

②減価償却費による節税対策の方法

減価償却費は節税対策として利用できますが、上記の特徴を踏まえた効果的な節税方法を行いましょう。

 

・定率法の選択

償却方法の選択が認められている機械装置や運搬車両等の場合、定率法を活用して効果的な節税を実現することも可能です。

 

定率法は対象資産の減価償却年数に応じた一定の償却率で減価償却が進められるため、償却費は初年度が最も多くなり徐々に減少していくという特徴があります。そのため今後の数年間の利益額が多い、法定耐用年数より実際の使用期間が短い機械などの場合には高い節税効果が期待できるのです。

 

A 今後の数年間の利益額が多いケース

定率法の例を示すと、たとえば取得価額100万円、耐用年数10年の資産の減価償却費は次のように計算されます。なお、この場合の償却率は20%です(耐用年数5年の場合の償却率は40%)。

 

・1年目の減価償却費の額

100万円×0.2=20万円

 

・2年目から6年目の償却費の額

(100万円-前年までの償却費の合計額)×0.2 例:2年目の償却費=(100万円-20万円)×0.2=16万円

*なお、定率法は減価償却期間が進んでいくと償却額が小さくなり過ぎ、そのままでは償却期間が長期化するため、償却保証額などが設定され調整されます。

 

もし上記資産を定額法で減価償却すると、毎年の減価償却費は100万円÷10年=10万円です。つまり、減価償却の方法を定率法にすることで20万円-10万円=10万円多く費用化できるため節税効果が大きくなります。

 

さらにその次の年は16万円-10万円=6万円多く計上できるなど、資産を導入した年からの何年かは定額法よりも多く費用計上できるのです。

 

従って、初年度から数年といった期間に利益が多く見込まれる場合に定率法で減価償却していけば大きな節税効果が得られるでしょう。

 

B 法定耐用年数より実際の使用期間が短い機械などの場合

技術の進歩や顧客ニーズの変化が激しく早い現代では法定耐用年数より短い期間で買い替えを余儀なくされる機械装置などがありますが、そうした資産の場合には定率法が有効です。

 

たとえば、法定耐用年数が5年の機器でも特定の業種では3年で買い替えが必要となるケースもあります。その機器を定額法で減価償却すると2年分の減価償却費が計上できなくなりその分多くの税金を支払うことになりますが、定率法を選択するとその税金支出を軽減できるのです。

 

例で示すと、法定耐用年数が5年の機器が1,200万円とした場合、定額法による毎年の減価償却費は1,200万円÷5年=240万円です。しかし、その機器が3年しか使用できず買い替えが必要なら240万円×3年=720万円しか減価償却できません。

 

一方、定率法を選択すると償却率は40%であるため、1年目の減価償却費は1,200万円×0.4=480万円、2年目は(1,200-480)×0.4=288万円、3年目は(1,200-480-288)×0.4=約173万円 となり3年間の合計は881万円です。

 

以上の結果から定率法を選択することで定額法よりも881万円-720万円=161万円も多く計上でき節税に繋がります。

 

C 中古資産は耐用年数が短く早い償却が可能

中古資産を取得して事業に使用する場合、その資産の耐用年数は法定耐用年数によらずその事業に使用した時以後の使用可能期間として算定できる年数とすることが可能です。

 

つまり、中古品はケースにより新品に比べ短い期間の償却が可能となり大きな節税も実現できるでしょう。

 

なお、使用可能期間の見積りが困難な場合、以下の簡便法で算定した年数とすることが可能です。

 

・法定耐用年数の全部を経過した資産

その法定耐用年数の20%に相当する年数

 

・法定耐用年数の一部を経過した資産

その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数

 

なお,計算で算出された年数に1年未満の端数がある場合、その端数は切り捨てられ、その年数が2年に満たない場合は2年とされます。

 

たとえば、法定耐用年数が6年の自動車を例にすると次のようになります。

・取得した自動車が7年落ちの場合

6年×0.2=1.2年 ⇒ 2年 です。

 

・取得した自動車が4年落ちの場合

(6年-4年)+4年×0.2=2.8年 ⇒ 2年です。

 

以上の特徴を利用して4年落ちの中古自動車を120万円で購入すれば、減価償却期間は2年となり年間60万円の減価償却費が計上できます。

 

一方、同タイプの新車を240万円で購入すれば、年間の減価償却費(定額法)は40万円となるため、中古車のほうが20万円多く計上でき高い節税効果が得られるのです。

 

ただし、中古品の状況によっては性能面の違いによる生産性の低下や修繕費用の増加などが問題となることもあるので注意しなければなりません。

 

なお、中古の建物の場合も自動車などと同様の考え方で耐用年数が決まってきます。ただし、減価償却費の計上ができる建物の部分と、できない土地の部分の値段が明確に見積もれない場合は相続税評価額や固定資産税評価額などから評価することになります。

 

そのため、この分野に強い税理士等や売主に相談の上できるだけ建物の評価が高くなるような設定を検討することも必要なのです。

 

また、中古建物に附属している設備等も減価償却資産ですが、建物と合理的に区分できない場合はそれらを建物に含めて減価償却されるケースがあります。その場合、附属設備等は本来の償却期間よりも長くなりかねないので注意しましょう。

 

附属設備等を建物と区分して減価償却する場合、定率法と定額法との選択が可能なので有利になる方を選ぶべきです。

 

 

 

2-3 即効性の高い節税対策

決算月に入ってからなど、あわてて節税対策が行いたいと考えた時に素早く実行できる節税方法を紹介します。

 

①少額資産の減価償却

少額資産の減価償却には法的な特例があり、利用すると軽視できないほどの節税効果が得られることもあるのです。

 

・「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」

この特例に該当する取得価額が30万円未満の少額資産は全額損金計上が可能で即効性の高い節税に利用できます。

 

この制度の内容は、中小企業等が平成32年3月31日までに取得した30万円未満の減価償却資産が全額損金算入できるというものです。

 

○中小企業者のみ⇒取得価額30万円未満の資産は全額損金算入可能(つまり、即時償却が可能で年間合計300万円まで)

 

上記の通りこの特例で適用を受ける少額減価償却資産の取得価額は年間で合計300万円までです。対象資産は、「器具および備品、機械・装置等の有形減価償却資産」に加え、「ソフトウェア、特許権、商標権等の無形減価償却資産」も含まれます。また、「所有権移転外リース取引に係る賃借人が取得したとされる資産や、中古資産」も対象です。

 

*すべての企業⇒
取得価額20万円未満の資産は3年間の均等償却が可能
取得価額10万円未満の資産は全額損金算入可能(即時償却可能)

 

対象資産が広範囲であり、年間で合計300万円まで即時償却できるため、想定外に利益額が多くなりそうな場合に効果の高い節税を実現してくれるでしょう。

 

②決算セール

決算月などに見られる「決算大売出し」「期末感謝セール」「期末特売会」といった名目で実施される決算セールは、利用の仕方によっては節税対策にも効果があります。

 

決算セールの目的は主にその年度の予算達成のために実施されるほか低価格やお買い得品の提供により顧客への感謝を示す利益還元のために行われるケースが多いです。

 

つまり、通常期とは異なった破格の低価格、赤字覚悟の値段で販売する商品を多く揃えて実施するため、セール期間での対象品の販売量が増えるほど赤字幅が拡大し利益が減少します。その結果、決算セールでの赤字により想定外の利益を削減し節税が可能となるわけです。

 

決算セールは節税が可能となるものの利益の削減は企業にとっては必ずしもプラスとは言えません。しかし、決算セールによる顧客の囲い込みや、長期在庫品、訳あり品や流行遅れ品などを一掃する機会などとなるため、活用次第では節税以上のメリットが得られます。

 

なお、決算セールを行き当たりばったりの方法で無計画に行うと予想以上の赤字になったり、効果が得られなかったりするため注意が必要です。できれば2~3カ月前から決算セールの準備に入り計画を立案の上実行するべきでしょう。

 

決算セールでの販売予定額や利益額(損失額)を設定し、それに対応するための商品・サービスを割り当て揃えるといった準備が欠かせません。また、決算セールを成功させるための一定のプロモーションも予算化し実行することが求められます。

 

③来期の業績に結び付ける広告宣伝

決算セールとは別に新製品の販売イベントやブランド価値の向上を狙った催しを開催することで、費用増による節税と来期以降の業績向上が狙えます。

 

今期の売上が予想以上に順調であっても経済環境や消費者ニーズの変化により既存の商品・サービスの売れ行きが停滞していくことも少なくありません。そのため既存商品の販売のテコ入れや新製品の拡販を適宜進める必要がありますが、期末にそのためのプロモーションを実施することも重要です。

 

実施すればその運用に関わるさまざまな費用が生じるため、利益を低減させ節税にも役立ちます。もちろん単なる節税で行うのではなく、明日の収益に繋がる手段としてこうしたプロモーションを推進していきましょう。

 

なお、決算セールと同様に無計画で実施しても効果は得られず、費用も予想以上に多くかかることもあるため、適切な計画立案などの準備が必要です。決算の業績次第で期末なるかどうかが決まりますが、期末でも迅速に対応できるように計画はある程度完成させておいた方がよいでしょう。

 

④固定資産の修繕

企業の固定資産の維持管理や原状回復のために不可欠な修理や改良等を実施した場合、それにかかる費用は修繕費として損金算入ができるため節税効果が得られます。

 

なお、修理・改良等による固定資産の使用可能期間の延長、価値の増大などが見られる場合、その延長や増大となる部分についての支出は修繕費とはならず、資本的支出(減価償却の対象)になります。

 

つまり、資本的支出の部分は減価償却費を計上して節税効果が得られますが、修繕費のように即時償却ができないため節税効果としてはやや低くなるといえるでしょう。

 

法令では以下のような支出が原則的には修繕費と認められず、資本的支出と判断されることになるため注意が必要です。

 

「建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額」
「用途変更のための模様替えなど、改造や改装に直接要した金額」
「機械の部分品を特に品質や性能の高いものに取り替えた場合で、その取替えの金額のうち通常の取替えの金額を超える部分の金額」

 

ただし、以上のケースでも1つの修理や改良等の金額が20万円未満の場合、約3年以内の期間を周期として行われる修理・改良等の場合などには、その費用が修繕費として認められることもあります。特に以下のようなポイントが見られると修繕費として期待できるでしょう。

 

  • 通常の維持管理に必要である
  • 破損した部分等の原状回復に必要である
  • 約3年以内に1回実施される
  • 耐久性や価値が向上しない

 

なお、多額の費用がかかる修理・改良等の場合、修繕費ではなく資本的支出とされるケースが少なくないですが、企業の担当者等だけで判断せず修繕費の扱いに詳しい税理士等に相談するべきです。

 

何百万円以上といった費用でも上記のような内容に該当すれば修繕費として損金算入でき高い節税効果が得られることもあるのです。

 

⑤経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)への加入等

経営セーフティ共済への掛け金は、損金あるいは必要経費として処理できるため節税に役立ちます。

 

経営セーフティ共済は取引事業者が倒産した場合に、中小企業がその影響により倒産とった経営危機に陥ることを防ぐために設けられた制度です。その特徴には以下の点が挙げられます。

 

  • 無担保、無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入できる
  • 毎月の掛金が5千円~20万円までで自由に選択でき増額や減額も可能で、損金算入できる
  • 取引先の事業者が倒産・売掛金などの回収が困難になれば、すぐに借入できる
  • 共済契約の解約により解約手当金が受け取れる(自己都合の解約の場合、12カ月以上の掛金納付で掛金総額の8割以上が返還、40カ月以上納付で掛金全額が返還される)

 

納付した掛金は税法上、法人が損金、個人事業者が必要経費として処理できます。また、1年以内の前納掛金は納付した期の損金あるいは必要経費に算入できるため、効果の高い節税が期待できるのです。
*前納期間が1年以内である前納掛金は、支払期の損金または必要経費として算入が可能です。

 

 

3 特定の目的で行う節税対策

節税対策の中には想定外の効果が得られることもあり、特定の目的で利用される節税方法少なくありません。

 

 

 

3-1  事業承継に役立つ節税方法

節税対策の中には事業承継を促進してくれる方法もあります。

 

後継者にその企業を引き継がせるためには自社の株式を後継者に保有させることが不可欠です。その場合、自社の株式の評価額が高いと資金や税金の面で株式の取得が困難となり事業承継に支障をきたすことから株価の評価を下げる工夫が求められます。

 

株価の評価を下げる方法はいくつかありますが、企業の利益額を下げる方法が有効であり結果として節税にも繋がるわけです。ここでは事業承継に役立つオペレーティングリースを紹介しましょう。

 

①オペレーティングリースとは

オペレーティングリースとは、リース会社が査定するリース期間満了時の残存価額を物件の元本部分から控除して、リース料を決めるリース取引のことです。このオペレーティングリースを事業として運営する匿名組合があり、それに企業が投資(出資)することが節税と事業承継に役立ちます。

 

②匿名組合型オペレーティングリース事業の仕組み

匿名組合が、投資家から出資を募り銀行などからの借入を含めた資金で航空機などのリース資産を購入します。そして、匿名組合はその航空機を航空会社等へ貸出しリース料を得て、それを投資家へ出資分に応じて分配するのです。

 

③匿名組合型オペレーティングリース事業がもたらす節税

匿名会社は航空機等を資産として保有することになるため、事業の開始から一定期間は減価償却費がリース料を上回り赤字になります。この赤字は投資家にも影響して出資した企業の節税に繋がるのです。

 

企業が行った匿名組合への出資は有価証券などの金融商品として認識されます。そのため匿名組合の損失はその出資分に応じて認識されることとなり、その評価損が生じた出資企業の利益は減少し節税効果が得られるわけです。

 

ただし、年を追うごとに減価償却が進みある時期から赤字は解消され節税効果がなくなります。また、リース期間満了時には売却益も発生しそれが分配金に反映され出資企業には大きな利益と税金が生じることになるのです。

 

④この投資による事業承継への利用方法

匿名組合への出資後の間もない期間では匿名組合の損失により、自社の利益の減少⇒株価の評価の低下となるため、それを利用した株式の移転が有効になります。

 

つまり、株価の評価が下がれば後継者への株式取得にかかる資金や税金の面で負担が軽減するため後継者の株式の取得が楽になるわけです。

 

なお、リース満了時には分配金を多く得ることになりますが、その分配金を現経営者に退職金として支給すれば、分配金は相殺され税金の増大を回避できます。

 

もちろんその時点で退職となる現経営者には退職金の税金がかかりますが、退職所得控除が受けられるなど有利な所得制度が適用されるため、通常の所得税より大幅な節税が可能です。

 

 

 

3-2 社員のモチベーションの向上に繋がる節税方法

社員のモチベーションを上げる要因はさまざまですが、報酬や自己実現に関わる施策には一定の効果が見られることから節税方法の中でそれらに関係する方法を取り入れれば一石二鳥の効果が期待できます。

 

①報酬面に関わる節税方法

報酬面に関わる節税方法としては決算賞与が代表的な施策になるといってよいでしょう。

 

・決算賞与の特徴

決算賞与は要件を満たせば期末において未払でもその期の損金算入が可能となるため、期末ぎりぎりでも活用できる有難い方法です。そのため期末の資金繰りが厳しい状況でも会計処理等を済ませば、経費として計上でき節税も実現できます。

 

なお、決算賞与の支払いは決算後1カ月以内で実施しなければならないので確実に行いましょう。

 

・決算賞与の効果と注意点

実際の節税効果を試算して実施することが望まれます。決算賞与は節税効果があるものの、節税分だけで決算賞与が支給できるわけではなく企業の手元に残るキャッシュを減少させるためその影響を把握しておかねばなりません。

 

例えば、2,000万円の利益が見込める場合に500万円の決算賞与を支給した場合、以下のような結果となります。

 

・決算賞与なしの場合

利益2,000万円×税率30%(仮定)=税金600万円

 

・決算賞与ありの場合

(利益2,000万円-決算賞与500万円)×税率30%(仮定)=税金450万円

 

以上の通り600万円-450万円=150万円の節税が実現できます。しかし、決算賞与を支給することで手元に残るキャッシュは1,400万円-1,050万円=350万円少なくなることに注意しましょう。

 

・決算賞与の税務調査に関する注意点

決算賞与は税務調査の対象となりやすいため、実施にあたっての適切な取り扱いが必要です。

 

A できれば決算前に賞与を支給する

決算賞与は未払いでも要件を満足できればその期の損金算入が可能ですが、手続に不備がある場合などは税務調査で否認されることも少なくありません。そのためできるだけ決算前に支給することが重要となります。

 

B 書面で通知する

税務調査が実施された場合、決算賞与を行った証拠として支給したことが分かる書面の発行が必要です。決算賞与を支給することについて社員を前に口頭で告げるケースが少なくないですが、できるだけ書面で通知するようにしましょう。

 

C 支給は銀行振込で行う

決算賞与の支給も証拠が残るようにできるだけ銀行振込で行うべきです。なお、現金で支給する際には領収書を受け取るようにしなければなりません。

 

②自己実現に関わる節税方法

希望する職種や職務につきたい、責任の重い役職につきたい、高度な知識やスキルを得たいといった自己実現はそれらに関する教育の機会を提供することで達成に近づけます。そのため費用をかけた適切な教育機会の提供は社員のモチベーションを上げるとともに節税対策になるのです。

 

具体的には以下のような方法があります。

 

  • 資格取得のための通信講座や通学講座の費用を企業が負担する
  • 特定分野の知識やスキルの取得のための研修やセミナーに社員を参加させる(あるいは講師を呼んで社内で研修を実施する)
  • 海外留学や海外での研修に派遣する

 

なお、社外の各種研修等は開催日が決定されており、期末ぎりぎりで申し込むことが難しいケースも多いため、事前に研修内容や開催日を調べておくことが必要です。また、どの人材にどのような教育を付与するかについても前もっての準備が欠かせません。

 

社員教育は人事制度における人事施策の一環として行うべきものであり、節税のために実施するものではないですが、単発に行う教育機会と位置づけどのように行うか事前に検討しておきましょう。

 

③福祉の向上に関わる節税方法

福祉の向上も社員のモチベーションアップに繋がりますが、その1つとして社員旅行が挙げられます。実施すれば1人当たり10万円以上の費用がかかることもあり大きな節税効果とやる気の向上が期待できます。

 

社員旅行は一定の要件を満足すれば、それにかかった費用は非課税となり節税に役立つわけです。ただし、要件を満足できなければ参加した社員に対する給与として課税されるため注意しましょう。

 

国税庁の「所得税基本通達36-30」によると、社員旅行が非課税となるには以下の要件を満足する必要があります。

 

A 旅行の期間が4泊5日以内であること

なお、目的地が海外の場合、目的地での滞在日数が4泊5日以内であること

 

B 旅行に参加する従業員等の数が全従業員等(工場、支店等で実施する場合は、各事業所の従業員等)の50%以上であること

 

なお、役員など特定の者だけを対象としたり、不参加者に現金や商品券を支給したりすることなどは課税されることになります。また、旅行が社会通念上一般に行われている旅行とは判断されない場合などもその旅行費用は非課税とはなりません。

 

 

4 決算での節税対策の注意点

節税対策により多くのメリットが得られますが、方法次第では無意味な節税に終わったり、事業上のリスクを招いたりすることもあるので注意が必要です。

 

 

 

4-1 単なる節税でだけでなく企業の発展のために行う

目先の税金支出を抑える行為というよりも、今後の企業の成長に結び付ける、社員のやる気を向上させる、後継者への事業承継を円滑に進める、など企業の発展に役立つように節税を利用するべきです。

 

たとえば、節税になるからといって30万円未満の少額資産を300万円まで限度いっぱいに購入したとしても、それらが事業の生産性を上げたり社員のやる気を起こしたりしないと意味がありません。それらは節税に利用できても企業の業績や発展に貢献しなければ、無駄な単なる支出で終わり企業の財政を悪化させるのです。

 

ほかにも交際費の無駄遣い、不要な中古車の購入や節税効果の低い保険加入などを頻繁に行っていけば、今後の企業の成長に必要な資金が不足することになりかねません。節税においてもそれを通じて経営の効率化を図り事業の拡大に繋げる方法が良策であり、無意味な節税は愚策として認識しなければなりません。

 

 

4-2 十分な期間を確保して節税対策を行う

決算月になってから実施できる節税対策もありますが、減価償却などで大きな節税を狙う場合などはそのための十分な期間を確保して実施できるように取り組む必要があります。

 

節税効果を得るためにはその期に損金算入する必要がありますが、節税の対象によっては計上するまでに相当な時間がかかることも少なくありません。たとえば、建物の取得の場合には対象物件を探して評価し、売主等と交渉するといった時間が必要であり、直ぐに購入して計上するのは困難です。

 

また、節税が可能となるようにあわてて契約すれば、事業に適さない物件や不良物件を購入することになりかねないというリスクを高めてしまいます。そのため対象資産を取得する上での時間を考慮した購入計画を立案して効果の高い節税方法を検討しなければなりません。

 

なお、購入や実施に多くの時間を必要としない節税対象でも決算月の2~3カ月前からできるだけ早めに検討していきましょう。

 

 

4-3 節税の効果とキャッシュフローを考える

税金支出を低減する節税効果は企業によって異なるため、費用の支出に見合う事業上等での効果や税金支出の低減効果の度合いを認識して行いましょう。

 

節税は何らかの資産を購入する、サービスを利用するなど費用化することで利益を減らして実現するものです。その費用化という犠牲によりキャッシュは減少するため、それに見合う事業上のメリットと税額の削減に繋がらないと企業の財政状況を悪化させるだけになってしまいます。

 

特に企業のキャッシュフローが悪くなっていけば、資金繰りの悪化を招き経営リスクをもたらしかねません。そのため節税行為が企業のキャッシュフローにどのように影響し、キャッシュの不足に繋がらないかを確認の上実施するべきです。

 

また、節税効果は企業に課さされる税率によって異なるため、それを理解しないと予想していたほどの効果が得られないこともあります。

 

たとえば、企業に課せられる法人税率等が20%と30%では節税効果が異なるのです。

 

・法人税率等が20%の場合の節税効果

益金が100万円、損金が0万円の場合の税金は
100万円×0.2=20万円

 

益金が100万円、損金が50万円(全額節税分とする)の場合の税金は
(100万円-50万円)×0.2=10万円
よって節税行為により20万円-10万円=10万円の税金支出が減少できたのです。

 

・法人税率等が30%の場合の節税効果

益金が100万円、損金が0万円の場合の税金は
100万円×0.3=30万円

 

益金が100万円、損金が50万円(全額節税分とする)の場合の税金は
(100万円-50万円)×0.3=15万円
よって節税行為により30-15=15万円の税金支出が減少できたのです。

 

以上の2つの例から、税率20%と30%では15万円-10万円=5万円の差が出ることがわかります。税法では中小法人と普通法人など企業の規模や法人格の違いなどにより税率が異なるため、自社の税率を把握して実際の節税効果がどれほど得られるか試算して検討することも必要でしょう。

 

 


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