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【王の帰還?】ソニーが世界のプレミアムテレビ市場で首位に返り咲き

(出展:SONY)
(出展:SONY)

日本を代表する家電メーカーの快進撃が始まりました。
韓国メディアは6月、世界のテレビ市場でソニーが、ながらく市場をリードしてきたサムスン、LGを抜いて首位に立ったと報じました。

 

英調査会社IHSによると、2017年第一四半期(1月〜3月)における1500ドル以上(約16万円)のテレビ市場でソニーが39.0%を占めました。サムスンは13.2%、LGは35.8%でした。

 

韓国メディアはソニーが首位に返り咲いたことについて「驚きだ」と報じ、サムスンおよびLGには緊張が走ったことだろうと付け加えました。

 

エレクトロニクス部門の好調で株価が上がりつづけているソニー。7年ぶりとなる有機ELテレビへの参入も決まっており、時価総額は9年ぶりに5兆円台に復帰したばかりです。テレビ市場首位奪還の背景には一体なにがあったのでしょうか。

 

 

目次

  1. 1 ソニー、世界で最も売れたテレビに
  2. 1-1 サムスンとLGを抑え首位奪還
  3. 1-2 約280万の超プレミアムテレビ市場でも追撃
  4. 1-3 方向転換が迫られる韓国勢
  5. 2 薄型テレビの国内生産は2010年時の25分の1
  6. 2-1 国内生産から海外生産へ
  7. 2-2 シャープが国内テレビ生産から撤退?

 

1 ソニー、世界で最も売れたテレビに

かつてはサムスン1社で日本の大手電機9社の2倍に相当する営業利益を叩き出すなど、世界のテレビ市場はサムスン電子、LGエレクトロニクスをはじめとする韓国勢の勢いは凄まじく、日本の電機メーカーは後塵を拝してきました。

 

2009年の世界金融危機のさい、世界のメーカーが不況にあえぐなか韓国勢はいち早く脱出。とくにパソコンに使用される半導体メモリでは韓国が世界シェア7割に迫るなど、それまで日本が得意としてきた電子機器部門は韓国に取って代わられた状況と言えました。

 

sumsung lg

(▲2012年の世界テレビ市場 / 出展:GIGA)

 

 

1-1 サムスンとLGを抑え首位奪還

近年、ゲームやカメラのイメージセンサー※部門で盛り返してきたソニーは、2016年第一四半期の1500ドル以上のプレミアムテレビ市場でLG(35.8%)、サムスン電子(17.7%)に次いで、17.5%と3位となっていました。

 

ところがソニーは今年1月〜3月期で、前年同期比でシェアを20%以上拡大した結果、韓国勢を抑えて1位となりました。

 

サムスン電子は「プレミアムテレビ市場におけるソニーの復活は、積極的なプロモーションなどのマーケティング効果が大きい」と話します。

 

市場関係者は、今後のテレビ市場について競争はより激しいものになると予想しており、サムスンとLGは対策に苦慮するのではないかとの見方が強まっています。

 

※ イメージセンサーとは、レンズから入った光を電気信号に変換する半導体のこと。人間の眼でいえば網膜に相当する部分で、その性能がデジタルカメラで撮る写真の画質を大きく左右する。

 

 

1-2 約280万の超プレミアムテレビ市場でも追撃

ソニーの追撃は、1台あたり約2500(約281万円)以上の70インチを超える大画面テレビの超プレミアムTV市場でも目立ちます。これまで70インチ以上の大型テレビ市場ではサムスン電子が首位を維持し、2015年までソニーとの差は20%以上でした。

 

ところが昨年第一四半期では、サムスン31.6%、ソニー26.6%と差は5ポイントほどに縮まりました。今年の超プレミアム市場ではLGエレクトロニクスが40.8%と首位に立ちましたが、ソニーが前年同期比で9.8ポイント上げ、34.4%と2位を維持。サムスン電子は12.4ポイント下落し、11%で3位となりました。

 

 

1-3 方向転換が迫られる韓国勢

テレビ名家としてのソニー復活する一方で、サムスンやLGには新たな戦略が求められいると韓国メディアは指摘します。

 

大手韓国ニュースサイトによると、サムスン電子は、今年中に82インチの超高精細(UHD※)テレビの発売を予定しており、また8月初めには88インチのQLEDテレビをリリースするなどの反撃に出る様子です。

 

QLEDとは「QD(量子ドット:Quantum Dot)」の技術を採用したテレビのことで、色彩感、コントラストや視野角を向上させるための技術として、かつては日本のテレビメーカーもシャープなどが取り組んでいたものですが、サムスンは近年のプレミアムクラスのテレビに、画質向上の決め手となるテクノロジーとして採用し続けてきました。(参照:マイナビニュース 2017年1月6日付

 

UHD

(▲サムスン電子のUHDテレビ / 出展:SAMSUNG)

 

また、LGエレクトロニクスはOLED(=有機EL)テレビのマーケティングを強化する方針です。2500ドル(約27万円)以上のプレミアムテレビ市場では、2015年に21.3%に過ぎなかったシェアは、2016年に40.8%に急増。以降は40%代を維持しています。

 

LG

(▲LGエレクトロニクスのOLEDテレビ / 出展:)

 

一方、ソニーは、2010年に撤退してから実に7年ぶりとなる有機ELテレビの新商品の発表を行いました。国内向けでは、A1シリーズである65インチと55インチの2種類を用意しており、6月以降に順次投入する予定です。77インチのモデルも秋以降に発売される予定です。

 

sony

(▲ソニーの有機ELテレビA1シリーズ 参照:ソニー

 

業界の専門家は、今後のテレビ市場について「サムスン電子の超プレミアム商品であるQLEDTVなどの販売実績が反映される、第2四半期からは状況が変わるだろう」と話します。

 

また韓国最大の金融グループ、KB投資証券のキム・ドンウォン研究員は「サムスン、LG、新大型テレビの新製品を販売を計画しており、今後、大画面パネル需要の促進が見込まれる」と分析しました

 

※ UHDとはUltra High Definitionの略。フルHD(1080p)を超える画素数・解像度のことで、4Kテレビ(2160p)や8Kテレビ(4320p)などのことを指す。
※ 有機EL(Electro Luminescence)テレビは、発光する仕組みが従来のバックライト方式の液晶テレビと異なり、+と-の電極にはさまれた有機化合物(発光層)が、電流により励起され、元の状態に戻るときのエネルギー差で光が発光する仕組みのものを言う。

 

 

2 薄型テレビの国内生産は2010年時の25分の1

世界市場で日本メーカーが首位奪還を果たしましたが、経済産業省は、国内の薄型テレビ生産量は2010年と比較すると約25分の1に落ち込んでいると警鐘を鳴らします。

 

 

2-1 国内生産から海外生産へ

かつてテレビは一般家庭の三種の神器と言われたほど、家庭における生活必需品として家電の中心に位置づけられてきました。しかし、その国内生産は、近年、激変しています。

 

薄型テレビは2010年第4四半期にピークを迎え、その後は右肩下がりに減少、2012年の第2四半期からは横ばい状態が続いています。
経産省は、2016年第4四半期では、2010年を基準の100とした場合、生産は4.1と約25分の1、また、出荷は13.6と約7分の1と、生産・出荷規模ともに著しく低下していると指摘しました。

 

・ 薄型テレビの生産と出荷指数の推移

経産省

(参照:経済産業省「薄型テレビの国内生産は、2010年の25分の1に。テレビ放送とテレビ受像器(中見と器)の動きは、対照的」)

 

国内生産数の減少の理由に、円安を背景として海外生産の増加が挙げられます。2010年第1四半期に約1.5割だった輸入浸透度※は、2016年第4四半期では約4.4割にまで増加しました。さらに、輸入も加味した総供給指数は、最も多かった2010年から10分の1に減少しており、テレビの国内市場自体が縮小していることがわかります。

 

・薄型テレビの総供給指数と輸入浸透度の推移

経産省2

 

※ 輸入浸透度とは、総供給に占める輸入の割合のこと。国内市場や国民生活にどのくらい輸入品が浸透しているかを示す指標となる。(参照:コトバンク

 

 

2-2 シャープが国内テレビ生産から撤退?

今年3月、シャープが採算悪化を理由に国内テレビ生産事業から撤退するとの報道がされました。しかし、シャープ広報はこれを否定し、80型、90型などの大型液晶テレビについては、亀山工場で生産する方針を明らかにしています。

 

世界のテレビ市場で日本メーカーが勢いを取り戻しているぶん、国内生産の規模縮小は悲しいニュースとなりました。日本の家電メーカーが元気を取り戻したあかつきには、生産工場が日本に戻って来ることが望まれています。

 

 


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