食べられるのに捨てられてしまう食品ロス問題。消費者庁は7月、「消費生活に関する意識調査」として食品ロスに関するアンケート調査を行ったところ、食品ロスの認知度について「知らない」と答えた人が34.6%だったことが明らかとなりました。
政府広報によれば、国内では毎年1人1日お茶碗1杯分に相当する約632トンの食品が廃棄されており、このうち約半数は家庭から発生するとされます。
政府は、消費者庁、農林水産省、環境省を中心に「食育」のテーマの一環として、食品ロス問題の周知活動および削減に向けて積極的に取り組んでいます。
国連サミットにおいても重要な議題として扱われる食品ロス。果たしてどの程度認知されているのでしょうか。
目次
- 1 「食品ロスの問題を知っている」、65.4%
- 1-1 「ニュースを通じて知った」が最多
- 1-2 国民の9割超、政府制作の「ろすのん」マークを知らない
- 2 食品ロスを発生させないために
- 2-1 食品ロス削減に取り組んでいる人62.4%
- 2-2 6割超の人が「残さず食べる」を実践
1 「食品ロスの問題を知っている」、65.4%
消費者庁は、全国の18歳以上の男女3000人を対象に、調査会社ネオマーケティング協力のもとインターネット調査を行いました。
「食品ロス」問題の認知度について、「よく知っている」「ある程度知っている」と回答した人は65.4%となり、「あまり知らない」「全く知らない」と回答した人は34.6%となりました。
・ 食品ロスの認知度
よく知っている | 15.5% |
---|---|
ある程度知っている | 50.0% |
あまり知らない | 20.5% |
全く知らない | 14.1% |
(「平成28年度消費生活に関する意識調査」より作成)
1-1 「ニュースを通じて知った」が最多
「食品ロス」をどのようにして知ったかの調査では、「ニュース(テレビ、ラジオ、インターネット、新聞)」が最多で78.6%、次いで「国や地方公共団体のウェブサイト・広報誌」9.6%、「学校」3.2%と続きました。
・ 食品ロス問題を知るきっかけとなった情報源
ニュース(テレビ、ラジオ、インターネット、新聞) | 78.6% |
---|---|
国や地方公共団体のウェブサイト・広報誌 | 9.6% |
学校 | 3.2% |
小売・外食店店頭 | 3.1% |
友人・知人 | 2.1% |
SNS | 1.3% |
啓発イベント | 1.2% |
その他 | 1.0% |
(「平成28年度消費生活に関する意識調査」より作成)
1-2 国民の9割超、政府制作の「ろすのん」マークを知らない
現在国内では、官民連携による食品ロス削減に向けた国民運動が展開されており、食品ロス削減に取り組む事業者および消費者に対して、農林水産省が「ろすのん」と呼ばれるロゴマークを配布しています。
(食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)のロゴマーク。愛称「ろすのん」)
「ろすのん」マークを知っているかの調査では、「知っている」と回答した人は5.7%にとどまり、「知らない」と回答したひとは94.3%にのぼりました。
(参照:消費者庁)
食品ロス問題の認知度が比較的に高かったわりに、ほとんどの人に「知らない」と回答されてしまった「ろすのん」マーク。政府には認知度上昇に向けた一層の周知活動が求められます。
2 食品ロスを発生させないために
農林水産省によれば、世界の栄養不足人口は減少傾向にあるものの、いまだ約8億人と高水準であり、このうちアジアは6割を占めています。発展途上国では栄養不良により年間500万人の5歳以下の子どもが命を落とすとされます。
2015年の国連サミットでは、食品ロスを重要な課題として位置付け、2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させるとの内容を盛り込んだ「持続可能な開発のための2030アジェンダ※」が採択されました。
(SDGs:持続可能な開発のための2030アジェンダ)
2-1 食品ロス削減に取り組んでいる人62.4%
「食品ロスを発生させないために、なんらかに取り組んでいる人」を調査したところ、「食品ロスを知っていて取り組んでいることがある人」は62.4%だったことがわかりました。また、「食品ロスを知っていて取り組んでいることがない人」は3.0%にとどまります。
一方、食品ロスについて「知らないが取り組んでいることがある人」は23.9%で、「食品ロスを知らないで取り組んでいることもない人」は10.7%となりました。
(参照:消費者庁)
2-2 6割超の人が「残さず食べる」を実践
食品を無駄にしないためにどのようなことに取り組んでいるかの調査では、「残さず食べる」が64.7%で最も多くなりました。
次いで、「冷凍保存を活用する」45.8%、「料理を作り過ぎない」44.9%、「賞味期限を過ぎてもすぐに捨てるのではなく、自分で食べられるか判断する」44.1%、「残った料理を別の料理に作り替える」34.5%、「日頃から冷蔵庫等の食材の種類・量・期限表示を確認する」32.0%、「小分け商品、少量パック商品、バラ売り等食べ切れる量を購入する」27.2%、「飲食店等で注文しすぎない」22.6%となりました。
一方、「取り組んでいることはない」とする人は13.7%でした。
残さず食べる | 64.7% |
---|---|
冷凍保存を活用する | 45.8% |
料理を作り過ぎない | 44.9% |
味期限を過ぎてもすぐに捨てるのではなく、自分で食べられるか判断する | 44.1% |
残った料理を別の料理に作り替える | 34.5% |
日頃から冷蔵庫等の食材の種類・量・期限表示を確認する | 32.0% |
小分け商品、少量パック商品、バラ売り等食べ切れる量を購入する | 27.2% |
飲食店等で注文しすぎない | 22.6% |
取り組んでいることはない | 13.7% |
(「平成28年度消費生活に関する意識調査」より作成)
現在、政府広報では、食品ロス削減の工夫として食材の「使い切り」や「食べきり」などに関する情報をホームページにて公開しています。このほか、外食時では、「ドギー・バッグ」と呼ばれる、残した食べ物を持ち帰るための箱や袋を使用した食べ残しの対処法などを紹介しています。
個人や家族、または事業場レベルで食べ物を無駄なく、大切に消費していくことが求められています。
※ 2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標のこと。(参照:外務省)