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注目度が増してきたハイレゾ音楽市場、今後も拡大は続くか

フルHDよりも高解像度な4K・8Kテレビが登場する以前から話題となっていた“音の高解像度”であるハイレゾ音源。国内ではソニーがハイレゾ音楽市場を牽引してきました。

 

調査会社のGFKジャパンは昨年12月、「ハイレゾ音源ダウンロード市場レポート」にて、ハイレゾ音源のダウンロード数は2014年の2倍超に伸び、オーディオ機器もハイレゾ対応製品が拡大したと発表しました。

 

最近は、現役を引退した団塊世代の男性がハイレゾ対応機器に興味を示し、アンプやプレーヤーなど高級オーディオ製品を購入するケースがよく見られます。

 

一方、若者の間では1万5000円〜2万円台のヘッドホンの売れ行きが好調のようです。

 

「CDの音質を超える」が売り文句のハイレゾ音源。今後も市場拡大は続くのでしょうか。

 

 

目次

  1. 1 ハイレゾ音楽市場はソフト、ハードの両面で拡大
  2. 1-1 市場を牽引してきたアニソン
  3. 1-2 対応機器の普及も大きな要因
  4. 2 そもそもハイレゾ音源って?
  5. 2-1 CDの6.5倍の情報量を持つ
  6. 2-2 オーディオファイルの種類を知る
  7. 3 国内オーディオ業界の今後
  8. 3-1 ターゲットは音楽に最も関心がある若年層
  9. 3-2 ポップス音楽に目を向ける

 

1 ハイレゾ音楽市場はソフト、ハードの両面で拡大

GFKジャパンによると、ハイレゾ音楽市場は楽曲などソフト面と対応機器のハード面の両方で拡大基調にあります。
ハイレゾ音源ダウンロード配信数は、2015年は前年比108%(2.08倍)増加しました。2016年も各月で前年比10%の伸びを記録しました。

 

・ハイレゾ音源のダウンロード配信数推移

GFK

(参照:GFKジャパン「ハイレゾ音源ダウンロード 市場レポート」より)

 

ハイレゾ音源のダウンロード数が伸びている理由について、GFKはアニメジャンルが市場を牽引しているとし、このほかJポップ分野でハイレゾ対応の楽曲が増えたことが、ユーザーのすそ野を広げたと分析しました。

 

 

1-1 市場を牽引してきたアニソン

ハイレゾ音源が市場に出はじめた頃、対応楽曲はジャズやクラシックに限られ、10〜20代の若者が聞く音楽は皆無と言っても差し支えない状況でした。しかし、音質にこだわるアニメファンの需要に応える形で徐々にハイレゾ対応のアニソンが増えたことをきっかけに、Jポップのハイレゾ化が進みました。

 

現在、ハイレゾ楽曲のダウンロード販売を行う「e-onkyo music」や「OTOTOY」では、アニソン・Jポップのハイレゾ音源を選ぶことができます。

 

e-onkyo

(▲e-onkyo musicで配信しているハイレゾ対応のアニソン)

 

おととい

(▲OTOTOYではアニソン関連で多くの人気タグが付けられている)

 

 

1-2 対応機器の普及も大きな要因

GFKは、ハイレゾ市場の拡大は対応機器の普及が大きく影響しているといいます。
2015年の家電量販店におけるハイレゾ対応オーディオ製品の販売数では、携帯音楽プレーヤーが前年比28%増加、ハイレゾ対応ヘッド本は148%増加し、2016年においても拡大が続いています。

 

このほかスマートフォンでもハイレゾ対応モデルの発売が相次ぎ、ハイレゾ音源を楽しむ環境が広がりました。レポートのなかでGFKは「業界を上げての普及活動や、ソフトとハードで連携した販促活動が活発化している」とコメント。今後は人気アーティストがどこまでファンを取り込めるかが注目されると付け加えました。

 

 

2 そもそもハイレゾ音源って?

ハイレゾ(High-Resolution Audio)は、その名の通り高解像度の音源のことで、CDが持つ音の情報量を超え、楽曲自体が持つ本来の表現力をそのまま再現することができます。

 

 

2-1 CDの6.5倍の情報量を持つ

たとえば、CDの情報量(サンプリングレート)が「44.1kHz/16bit」であるのに対し、ハイレゾは「192kHZ・24bit※」。データ量で比較すると、1曲4分あたりの楽曲の場合、CDは約40MB(メガバイト)であるのに対し、ハイレゾは約100MBほどになります。

 

ソニー公式はハイレゾについて、

 

「ハイレゾ音源は音の情報量がCDの約6.5倍にあります。音の量、つまり音の太さ・繊細さ・奥行き・圧力・表現力が段違いなんです。だからアーティストの息づかいやライブの空気感など、CDでは聴こえなかったディテールやニュアンスを感じ取れる、原音に近い音質でなんです」(参照:ソニー「ハイレゾとは?」

 

と説明します。

 

※ 「khz」はサンプリング周波数、「bit」は量子化ビット数のこと。

 

 

2-2 オーディオファイルの種類を知る

オーディオのデータファイル形式には、WAV、MP3、AAC、WMAなどさまざまなものあります。ここでは、ハイレゾ音源としてよく使用されるFLACほか、主要なファイル形式のものを紹介します。

 

・主なオーディオファイル一覧

ファイル名 拡張子 説明
WAV .wav CDで使われている音源。ウィンドウズでも使われているファイル形式。無圧縮のため、データ容量は大きい
MP3 .mp3 携帯音楽プレーヤーなどでよく使われるファイル形式。圧縮されているため(非可逆圧縮※)、データ容量は小さい。MPEG-1 Audio Layer 3の略。
AIFF .aiff アップルで使われる標準のファイル形式の一つ。無圧縮のため、データ容量は大きい。Audio Interchange File Formatの略
FLAC .flac ハイレゾ音源のファイル形式としてよく使われるファイル形式。WAVよりもファイル・サイズが小さく、かつ同じ音質のため、多くの配信サービスなどでハイレゾ音源の配信に使用されている。Free Lossless Audio Codecの略。
ALAC .alac アップルが開発した可逆圧縮方式のファイル形式。ハイレゾ音源にも対応しているが、普及は今ひとつ。Apple Lossless Audio Codecの略。
AAC .m4a アップルで使われる標準のファイル形式の一つで、非可逆圧縮ファイル。Advanced Audio Codingの略。
WMA .wma MP3同様、音楽ファイルとしてよく使用される、マイクロソフトが開発したファイル形式の一つ。非可逆圧縮形式。Windows Media Audioの略。

※ 非可逆圧縮とは、展開時にデータを元に戻すことができない方式で圧縮する方式。例えばCDからWAVファイルをMP3形式に変換したファイルは、WAVに戻すことができない。MP3、WMA、AACなどは代表的な非可逆圧縮ファイルである。

※ 可逆圧縮とは、展開時にデータをほぼ元通りに戻すことができる方式で圧縮する方式。例えば、可逆圧縮ファイルの一つであるFLACはWAV(PCM音源)に戻すこと(デコード)ができる。

 

 

3 国内オーディオ業界の今後

ヘッドホンやイヤホンが一大カテゴリーに成長した昨今の国内オーディオ業界。

 

日本オーディオ協会は、昨年の事業方針発表会のなかで、ハイレゾによる新たなオーディオシーンを創造することを基本戦略に掲げました。また今後の市場はさらなるパーソナルユース化が進むことが予想されるため、スマホによるハイレゾ試聴状況調査が必要であると指摘します。

 

・日本オーディオ協会の今後の事業方針

ハイレゾ新カテゴリー商品開発への啓発と訴求
現状カテゴリーのハイレゾ対応化による市場創造
アナログ、ピュアを含む試聴スタイル多様化による市場創造を図る

 

 

3-1 ターゲットは音楽に最も関心がある若年層

また、音楽に最も関心がある若年層を取り込むことが今後のオーディオ市場拡大のカギとされています。
下表のとおり、若年層ほど音楽に対する関心が高く、60代以上で、この半年間に音楽を聴くためにお金をつかった有料聴取層は2割を切ります。

 

  有料聴取層※ 無料聴取層 無料聴取層
(既知曲のみ)
無関心層
中学生 39.9% 27.7% 13.6% 18.8%
高校生 51.4% 26.1% 8.7% 13.7%
大学生 56.2% 19.8% 12.1% 11.8%
20代(社会人) 50.2% 13.9% 17.6% 18.2%
30代 36.4% 11.9% 20.1% 31.7%
40代 28.3% 13.3% 15.6% 42.8%
50代 25.9% 8.8% 22.5% 42.8%
60代 17.5% 9.2% 26.3% 46.9%

(参照:日本オーディオ協会より作成)

 

※ 有料聴取層は、半年間に音楽を聴くために音楽商品を購入したりお金をつかったりしたことがある層。
無料聴取層は、半年間では音楽にお金をつかっていないが、新たに知った楽曲を聴いている層。
無料聴取層(既知曲のみ)は、半年間では音楽にお金をつかっておらず、以前から知っていた楽曲しか聴いていない層。
無関心層は、半年間では音楽にお金を使っておらず、特に自分で音楽を聴こうとしていない層。

 

 

3-2 ポップス音楽に目を向ける

このほか、日本オーディオ協会は、国内外問わず、最も広く聞かれている音楽ジャンルである「ポップス系」に目を向けなければならないとしました。

 

年代別の普段よく聴くジャンルの調査では、「日本のポップス・ロック・ダンスミュージック」が、60代を除いた全ての世代で最も高い割合を占め、20代では85.5%に達しました。一方、60代以上が最もよく聴くジャンルはクラシックで47.9%となります。

 

このほか「アニメ・声優・ゲーム・ネット・ボカロ系音楽」では、中学生、高校生、大学生で半数を超えました。

 

ジャンル

(参照:日本オーディオ協会より)

 

若い世代を中心に次々と新しい文化が誕生する音楽業界。オーディオ市場を拡大しつづけるためには、最新の文化に対して常にアンテナを貼らなければならないのかもしれません。

 

 


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