会社を設立するには、定款の作成が必要になります。定款は会社の憲法ともいわれ、会社の組織や運営についての基本的なルールを定めています。株主は、基本的に定款に記載されている事項について守らなければなりません。
目次
定款とは
定款には記載することが義務付けられた絶対的記載事項、任意に決められる「相対的記載事項」、「任意的記載事項」があります。
◯定款の記載事項一覧
|
意味 |
記載を欠いた場合 |
例 |
絶対的記載事項 |
定款に記載しなければならない |
定款が無効 |
商号、目的、本店所在地、資本金など |
相対的記載事項 |
定款に記載しないと効力が生じない |
定款に影響なし |
現物出資、財産引受、変態設立事項など |
任意的記載事項 |
法律に反しないかぎり任意に定めることができる |
定款に影響なし |
事業年度に関する定め、株主総会の招集時期、会社の社訓など |
以下、それぞれを解説していきます。
定款に記載しなければならない事項
定款を作るとき、次の事項は必ず記載します。必ず記載する事項は絶対的記載事項といい、記載を欠いた場合、定款が無効になるので注意しましょう。
2-1 商号(会社名)
2-2 事業目的
2-3 本店所在地
2-4 会社設立時の出資額(資本金)
2-5 発起人の氏名と住所
2-6 発行可能な株式の数
商号
商号とは会社の名前のことです。会社名は自由に決めることができ、◯◯株式会社でも株式会社◯◯でも構いません。ただし「株式会社」という言葉は必ず入れてください。
商号には、漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字・符号を使うことができます。ただ符号は使用できる種類が限られているので、確認しておきましょう。
このほかの注意点として、他会社と見間違えるような会社名にすると、商号の使用差し止め請求をされることもあります。商号を考えるさいは、似た名前の会社がないかに気をつけましょう。
事業目的
何をする会社なのかを説明します。
株式会社は、一般的に出資者を募り、事業を通じて利益を上げ、出資者に配当する組織です。事業目的には営利性が求められ、どんな事業を行うのかを具体的に記載する必要があります。さらに目的が反社会的な内容でなく、法律に触れないなどの適法性も求められます。
本店所在地
会社の本拠地、つまり住所を記載する項目です。
住所の書き方には、市区町村までを記載する方法と、番地まで記載する方法があります。
市区町村まで記載する方法:(例)本店を東京都◯◯区に置く
番地まで記載する方法:(例)本店を東京都◯◯区△△町□番×号に置く
どちらの方法を選んでも構いませんが、番地まで記載する方法だと、同じ市区町村内で会社を移転することになった場合、定款変更手続きまで行わなければなりません。
定款変更手続きをするには、わざわざ取締役会や株主総会を開いて決議を行う必要があるので、面倒な作業になります。本店所在地にこだわりがなければ、市区町村までに留めるといいでしょう。
会社設立時の出資額(資本金)
定款を作成し、公証人による認証を受けたあと、発起人は出資金を払い込みます。これが会社設立時の出資金=資本金です。定款にはあらかじめいくら払い込むのかを記載しておきましょう。
発起人の氏名と住所
会社設立の手続きを進めてきた人を発起人といい、発起人の名前と住所を定款に記載します。
なお、絶対的記載事項ではありませんが、発起人が引き受けた株式の数を書くのが通例です。
発行可能株式総数
発行可能株式総数は正確には絶対的記載事項ではありません。というのは、定款の作成時に記載する必要はなく、設立登記申請までに定款に記載すれば問題ありません。(会社法37条)
相対的記載事項と任意的記載事項
定款に記載する必要はないですが、記載がないとその効力が生じない事項を相対的事項といいます。記載を欠いても定款自体に影響はありません。
相対的記載事項の例:現物出資、財産引受、変態設立事項、株式譲渡制限に関する規定、公告方法など
一方、法律に違反しない内容であれば、定款以外の諸規則として規定することができる事項を任意的記載事項といいます。
任意的記載事項であっても、会社設立後にこれを変更する場合は、株主総会の決議が必要になります。
任意的記載事項の例:事業年度に関する定め、株主総会の招集時期、会社の社訓など
定款のサンプル
一般的な定款のサンプルをお見せします。
なお、サンプルの定款では
・取締役は1名
・取締役会は非設置
・株式すべてに譲渡制限を設定した非公開会社
以上を想定した定款となっています。
現在、新規で設立する会社のほとんどが非公開会社です。非公開会社にするには、定款に「株式の譲渡制限」と記載すれば大丈夫です。
【表紙サンプル】
株式会社Sample Teikan
平成29年1月1日作成
年 月 日公証人認証
年 月 日会社成立
【中身サンプル】
株式会社Sample Teikan 定 款
第1章 総 則
(商 号)
第1条 当会社は、株式会社見本と称する
(目 的)
第2条 当会社は、次の事業を行うことを目的とする。
1. インターネット及び情報システムを利用した顧客サービス業務
2. インターネットのホームページの企画、制作、販売、運用及び保守に関する業務
3. インターネット広告に関するコンサルティング事業
4. 各種マーケティング業務
5. 上記各号に付随する一切の業務
(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を東京都渋谷区に置く。
(公告の方法)
第4条 当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。
第2章 株 式
(発行可能株式総数)
第5条 当会社の発行可能株式総数は、1000株とする。
(株券の不発行)
第6条 当会社の株式については、株券を発行しない。
(株式の譲渡制限)
第7条 当会社の発行する株式は、すべて譲渡制限株式とし、これを取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。
(相続人等に対する株式の売渡請求)
第8条 当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。
(名義書換)
第9条 株式取得者が株主名簿記載事項を株主名簿に記載又は記録することを請求するには、当会社所定の書式による請求書に、その取得した株式の株主として株主名簿に記載若しくは記録された者又はその相続人その他の一般承継人及び株式取得者が署名又は記名押印し、共同して請求しなければならない。ただし、法務省令で定める場合は、株式取得者が単独で上記請求をすることができる。
(質権の登録)
第10条 当会社の株式につき質権の登録を請求するには、当会社所定の書式による請求書に当事者が署名又は記名押印してしなければならない。その登録の変更、抹消についても同様とする。
(手数料)
第11条 前2条に定める請求をする場合には、当会社所定の手数料を支払わなければならない。
(基準日)
第12条 当会社は、毎年3月末日の最終の株主名簿に記載又は記録された議決権を有する株主をもって、その事業年度に関する定時株主総会において権利行使することのできる株主とする。
2 前項のほか、株主又は質権者として権利を行使することができる者を確定するために必要があるときは、臨時に基準日を定めることができる。ただし、この場合には、その日を2週間前までに公告するものとする。
第3章 株主総会
(招集及び招集権者)
第13条 当会社の定時株主総会は、毎事業年度の末日から3ヶ月以内に招集し、臨時株主総会は、随時必要に応じて招集する。
2 株主総会は、法令に別段の定めがある場合を除くほか、取締役社長がこれを招集する。
3 株主総会を招集するには、会日より3日前までに、議決権を有する各株主に対して招集通知を発するものとする。ただし、議決権を行使できる株主全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく株主総会を開催することができる。
4 前項の招集通知は、書面ですることを要しない。
(議長)
第14条 株主総会の議長は、取締役社長がこれに当たる。
2 取締役社長に事故若しくは支障があるときは、他の取締役が議長となり、取締役全員に事故又は支障があるときは、株主総会において出席株主のなかから議長を選出する。
(決議の方法)
第15条 株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合を除き、出席した議決権を行使できる株主の議決権の過半数をもって行う。
2 会社法第309条第2項の特別決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1を有する株主が出席し、その議決権の3分の2の以上をもって行う。
(株主総会議事録)
第16条 株主総会における議事の経過の要領及びその結果並びにその他法令に定める事項は、議事録に記載又は記録し、議長及び出席した取締役がこれに署名若しくは記名押印又は電子署名をし、10年間本店に備え置く。
第4章 取締役
(取締役の員数)
第17条 当会社には、取締役1名以上を置く。
(取締役の選任)
第18条 当会社の取締役は、株主総会において、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数の決議によって選任する。
2 前項の選任については、累積投票の方法によらない。
(取締役の任期)
第19条 取締役の任期は、選任後2年以内に終了する最終の事業年度に関する定時株主総会の終結時までとする。
(代表取締役及び社長)
第20条 当会社に取締役を2名以上置く場合、取締役の互選により代表取締役1名を選定する。
2 当会社を代表する取締役は社長とする。
第5章 計 算
(事業年度)
第21条 当会社の事業年度は年一期とし、毎年4月1日から翌年3月31日までとする。
(余剰金の配当)
第22条 余剰金の配当は、毎事業年度末日の最終の株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者に対して支払う。
(余剰金の配当等の除斥期間)
第23条 余剰金の配当が、支払いの提供をした日から3年を経過しても受領されないときは、当会社はその支払いの義務を免れるものとする。
第6章 附 則
(設立に際して発行する株式)
第24条 当会社の設立時発行株式の数は50株とし、その発行価格は1株につき金1万円とする。
(設立に際して出資される財産の価格等又はその最低額及び資本金)
第25条 当会社の設立に際して出資される財産の価格は、金300万円とする。
2 当会社の成立後の資本金の額は、金300万とする。
(最初の事業年度)
第26条 当会社の最初の事業年度は、当会社成立の日から平成30年3月末日までとする。
(設立時取締役等)
第27条 当会社の設立時取締役等は、次のとおりとする。
設立時取締役 佐藤帝完
(発起人の氏名、住所、割当てを受ける設立時発行株式数等)
第28条 発起人の氏名、住所、発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数及びこれと引き換えに払い込む金銭の額は、次のとおりである。
神奈川県川崎市北町十丁目10番10号
佐藤帝完 300株 金300万円
(法令の準拠)
第29条 この定款に規定の無い事項は、すべて会社法その他の法令に従う。
以上、株式会社Sample Teikanを設立するため、この定款を作成し、発起人が次に記名押印する。
平成29年1月1日
発起人
神奈川県川崎市北町十丁目10番10号
佐藤 帝完
【裏表紙サンプル】