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中小企業の後継者不足に効果的な8つの対策〜インバウンド事業で会社設立?〜

昨今、日本国内では、少子高齢社会の進行により人口減少が深刻化しています。人口の減少により、年金問題や人手不足、需要の冷え込みなど、私たちの身近でさまざまな弊害が生じています。そのような人口減少による弊害は、普段の生活のみならず、中小企業の経営にも悪影響を及ぼしています。その悪影響とは、ずばり「後継者不足(事業承継問題)」です。従来は中小企業の事業承継は問題なく行われていましたが、近年は後継者不足を理由に事業承継をスムーズに行えない企業が増加しています。中小企業は日本の企業の大部分を占めており、いわば日本経済を支える存在です。ですので、事業承継を実施できずに廃業に追い込まれる中小企業が増えてくると、日本経済全体にとっても大きな悪影響となります。
この記事では、中小企業の後継者不足の現状や問題が生じている要因、そして後継者不足にオススメの対策法を7つ厳選してご紹介します。中小企業の事業承継問題にお悩みの経営者や親族の方は必見です。

 

 

1 後継者不足・事業承継問題の状況

後継者問題の対策法を実践するには、そもそも事業承継を取り巻く現状を知っておく必要があります。現状を知った上で対策法を練れば、より的確なアプローチができるようになるためです。そこでこの章では、事業承継の意味や後継者不足の現状、後継者不足が生じている要因をお伝えします。

 

 

 

1-1 事業承継とは

そもそも「事業承継」という用語は普段聞き慣れないため、いまいち意味を理解していない方も多いと思います。そこで最初に、事業承継の意味合いについて軽くおさらいします。事業承継の意味をご存知の方は、飛ばしてもらっても問題ありません。

 

事業承継とは、会社の経営権を信頼のおける後継者に引き継がせる行為を意味します。日本の中小企業の場合、これまで事業が存続・成長してきたのは、経営者自身の功績が大きいケースが多いです。また、経営者の人望などにより、従業員の士気が保たれていた部分も大きいでしょう。よって、能力や人望がない人物が経営権を承継してしまうと、業績が急激に悪化するなどの事態に陥るリスクがあります。事業承継の際には、後継ぎの選定には慎重を期さなくてはいけないのです。

 

事業承継の種類は誰に経営権を承継するかによって、「親族内承継」、「親族外承継」、「M&A」の三種類に分類することができます。親族内承継とは、子供や配偶者などの親族に会社を継がせる方法です。親族内承継の最たる例と言えば、家業を継ぐ行為です。一昔前までは、親の営んでいる事業を子供が後継ぎとして受け継ぐことが一般的でした。しかし近年は、家業よりも自分がやりたいことを優先する風潮が強くなっているので、家業を子供が継ぐケースは少なくなりました。そこで近年は、「親族外承継」や「M&A」といった手法により、従業員や外部の第三者に会社を引き継ぐケースが増えています。後ほど詳しく説明しますが、後継者不足の問題を解決するには、「親族外承継」や「M&A」といった手法も検討することがポイントになります。

 

 

事業承継では、資産の引き継ぎも非常に重要となります。事業承継の手続き自体は、経営者が持っている株式を後継者に引き渡せば、経営権が移転するため完了となります(個人事業主には株式がないので不要)。しか事業承継後も事業をスムーズに運営するには、経営権の移転を重視するだけでは不十分です。

 

機械設備や土地、従業員との雇用契約、資金の引き継ぎなどはもちろん、ノウハウや経営ビジョンの引き継ぎも重要となります。契約や資産、ノウハウ等を全て引き継ぐのは、行うと決めてすぐに完了するものではなく、相応の時間がかかります。先代の経営者が体調を崩してから事業承継の準備を始めると、間に合わなくなるリスクがあります。事業承継を行うと決めたら、比較的早い時期から準備を進めなくてはいけません。

 

なお引き継ぐ資産の大きさによっては、相続税や贈与税といった税金が発生する場合もあります。相続税や贈与税は大きな負担となるので、「事業承継税制」という制度を活用し、少しでも負担を軽減するのが無難です。事業承継税制とは、中小企業に対して相続税や贈与税の納税義務を猶予または免除させる制度です。適用されれば大幅に負担を軽減できるものの、猶予や免除を受けるには「会社」や「後継者」、「先代」に関する要件をクリアしなくてはいけません。独力で条件を確認して満たすのは難しいので、税理士などの専門家に協力を仰ぐことがオススメです。

 

また事業承継の前後では、在庫処分費などの費用も発生します。このような費用負担を軽減する上では、「事業承継補助金」という制度の活用がオススメです。事業承継補助金に採択されると、数百万円程度の返済不要のお金を受け取ることができます。条件は厳しいものの、チャレンジする価値はあると言えます。

 

 

 

1-2 中小企業における後継者不足の現状

事業承継に関する基本的な概要を知ったところで、次は中小企業における後継者不足の現状についてお伝えします。中小企業における事業承継問題の現状については、「帝国データバンク」が2018年に公開した”全国「後継者不在企業」動向調査”を参考にお伝えします。

 

そもそも前提として、経済産業省の試算によると、今後10年間で70歳を超える中小企業経営者は全国で約245万人にのぼります。その影響もあり、2025年までにはおよそ650万人の雇用や20兆円を超える国内総生産が失われる可能性があるとも予測されています。このように雇用喪失や地方経済の衰退を招く恐れがあるために、事業承継問題に対して対策が必要だと言われているのです。

 

そんな経済産業省の試算を立証するかのようなデータが、帝国データバンクから公表されました。同社の調査結果によると、2018年における日本企業の後継者不在率は、全国で約66%にのぼっています。年代別に分けると、60代以上では後継者不足率が過去最低である一方で、30~40代では過去最高となっています。また、「内部からの昇格(従業員や役員が後継者となるケース)」や「外部からの招へい」により就任した社長の後継者不在率については、60代以下では全国平均を下回ったものの、60代以上では全国平均を上回って推移しています。

 

なお帝国データバンクでは、事業承継の種類別の統計も取っているので、こちらもご紹介します。全国およそ276,000社ある会社のうち、後継者が決まっている企業は約93,000社に留まっています。その93,000社の中で、もっとも後継者候補として多いのが「経営者の子供」であり、約4割を占めています。一方で全企業の代表就任経緯を見てみると、全体の約4割に当たる企業は「同族承継」により事業承継を行ったと判明しました。

 

昨今の中小企業では依然として「親族内承継」が一般的であることや、約6割強の中小企業が後継者不足の課題を抱えていることが分かります。後継者不足の課題を解決する上では、親族外承継などの「同族承継(親族内承継)」以外の手法を活用するといった、広い視野を持つことが求められると言えます。

 

 

 

1-3 なぜ中小企業では後継者不足が生じているのか

帝国データバンクのデータからは、中小企業では後継者不足が深刻化していることが判明しました。ではなぜ、多くの中小企業では後継者不足という問題が生じているのでしょうか?この項では、後継者不足が生じる要因として一般的に言われている要因を5つご紹介します。

 

1つ目は、少子化によりそもそも子供がいないケースです。中小企業の中には、そもそも子供がいないから親族内承継できない会社も少なくないでしょう。親族内承継にこだわっている経営者だと、身内に後継者がいない時点で事業承継を諦めざるを得なくなります。

 

2つ目の要因は、子供等の親族が事業承継を引き受けない場合が増えた点です。子供や兄弟がいても、必ずしも会社を引き継いでくれるとは限りません。近年は子供が自由に仕事を選ぶケースが増えており、子供に事業承継を引き受けてもらえずに、後継者不足に陥る中小企業が多くなっています。

 

3つ目の要因は、従業員や役員が会社の引き継ぎに消極的である場合です。子供や配偶者に事業承継できなくても、従業員や役員を後継者とする方法もあります。しかし現実的には、親族外承継が円滑にうまくいくとは限りません。会社内に経営者の資質がある従業員がいない場合もありますし、いたとしても本人に引き継ぐ意思がない可能性もあります。特に中小企業の場合は多額の負債を抱えている場合が多く、それがネックとなり従業員が事業承継に消極的となります。

 

4つ目の理由は、事業承継の対策や準備が遅いことです。事業承継を円滑に成功させるには、資産の引き継ぎや後継者教育などに時間がかかるため、5~10年程度の準備期間が必要と言われています。しかし多くの中小企業では、直前まで対策を行わないケースが多いです。対策を行わないと、経営者が体調を崩したり最悪の場合亡くなってしまい、後継者がいないまま会社を廃業せざるを得なくなります。

 

そして最後の理由は、事業の将来性が低いために、経営者自身が後継者探しに躊躇するケースが増えている点です。インターネットの発展や技術革新に伴い、現在多くの産業が衰退傾向にあります。そのような現状から、経営者自身が事業への将来性を感じずに、後継者探しを行わない事例が増えています。

 

 

2 後継者問題のおすすめ対策法7つ

中小企業自身のみならず日本経済にとって大きな課題である後継者問題。深刻な事業承継の課題を解決するには、一体どのような対策を講じれば良いのでしょうか?後継者不足問題への対策としては、様々なアプローチが考えられます。今回はその中でも、中小企業にとって効果の高い、後継者問題への対策法を厳選して7つご紹介します。

 

各対策法について、概要やメリット・デメリット、行う上でのポイントなどをご紹介します。どの対策方法が適しているかは、中小企業ごとの状況によって変わります。メリットやデメリットなどを踏まえて、自社に合った対策方法を考えてみてください。

 

 

 

2-1 従業員や役員に引き継ぐ

一つ目の対策法は、従業員や役員を後継者として事業承継を行う方法であり、親族外承継の一種です。子供や配偶者に引き継いでもらえない場合、真っ先に考えられる選択肢の一つであり、この方法により事業承継を行う中小企業も少なくありません。

 

従業員や役員に会社を引き継ぐ手法には、主に下記3つのメリットがあります。一つ目は、利害関係者や他の従業員からの理解を獲得しやすい点です。すでに知っている人物が経営者となるため、全くの第三者が経営者に就く場合と比べて、抵抗感を感じさせにくいです。抵抗感を持たれにくいので、事業承継後も全社一致団結して事業に取り組むことができます。

 

二つ目のメリットは、資質や経験がある経営者を選びやすい点です。親族内承継の場合、子供や配偶者などの限られた範囲で後継者を選ばなくてはいけません。経営者としての資質がなかったり経験に乏しい場合が多く、後継者教育に時間がかかってしまいます。一方で社内の従業員や役員であれば、最も優秀な人物を何人もいる中から選べます。また長年仕事を行なっているので、業務経験も豊富です。

 

三つ目のメリットは、経営者となった人物に高いモチベーションを持って働いてもらえる可能性がある点です。後継者となる従業員や役員からすれば、経営者になることは大出世です。そんな大役を任命してもらえることで、モチベーションを高く持って経営に取り組む可能性が高いです。

 

一方で従業員や役員への事業承継には、以下3つのデメリットもあります。一つ目のデメリットは、事業を引き継ぐだけの資金力が後継者にない場合がある点です。会社を引き継ぐには、一般的には後継者が株式を買い取る必要があります。ですが全ての株式を買い取るには、基本的に多額の費用がかかります。資金力がないために、思うように事業承継できないケースも少なくありません。

 

二つ目のデメリットは、普段の業務で優秀だからといって、経営者として優秀とは限らない点です。仕事が優秀な従業員を経営者にした結果、経営者としての思考力やマネジメント力がないために、業績が悪化する可能性もあります。業績が多少悪化するだけなら良いですが、他の従業員や取引先の銀行から反感を買う可能性もあり、そうなると事業の継続が難しくなる恐れもあります。

 

そして三つ目のデメリットは、そもそも従業員や役員には後継者への就任を引き受けてもらえない可能性が高い点です。多くの中小企業・個人事業では、代表者が個人保証を負った上で融資を受けています。個人保証が設定されている場合、後継者に対して連帯保証人になるのを求められるケースが多いです。従業員や役員からすると相当大きなリスクであり、このことを理由に事業承継を断る可能性が高いです。

 

従業員や役員への事業承継を成功させるには、「資金力の不足」と「個人保証のリスク」を上手く解消することがポイントとなります。資金力の不足問題に対しては、銀行からの資金調達を得た上で後継者に株式を買い取ってもらったり、無償で株式を譲渡するなどの対策が有効です。一方で個人保証のリスクについては、銀行と交渉して極力後継者の個人保証や連帯保証を減らすしかありません。

 

従業員や役員は親族ではなくてあくまで他人です。会社を引き継ぐ際に費用がかかったりリスクを負うとなると、中々後継者になってもらえません。後継者になってもらいたいのであれば、可能な限り引き継ぐ際の負担を軽減してあげることが大切です。

 

 

 

2-2 外部から優秀な経営者を招へいする

後継者問題を解決する二つ目の対策法は、外部から優秀な経営者を招き入れる(招聘する)方法です。取引先の社長などを後継者として、外部から優秀な経営者を呼ぶことで、事業承継の問題を解決するケースも少なくありません。

 

外部から優秀な経営者を招へいする形で事業承継を行うことには、主に次の2つのメリットがあります。一つ目のメリットは、優れた能力や実績を持った人を呼び寄せることができるため、事業承継後の経営が上手くいく可能性が高い点です。家族や従業員を後継者とする場合、必ずしも経営者としてのスキルや適性があるとは限りません。そのため、事業を引き継いだ後に業績が悪くなるリスクが考えられます。

 

一方で外部から呼び寄せる場合、すでに経営者としての実績や能力がある相手を的確に狙い撃ちできます。すでに経営者としての質が担保された人を呼び寄せるため、事業承継の後に業績が低下するリスクを低減することができます。むしろ、先代の経営者よりも優れた後継者を呼べれば、より業績を向上させることができるかもしれません。

 

二つ目のメリットは、会社の中に新しい価値観や空気を取り込める点です。家族経営の中小企業の場合、どうしても長年同じ価値観や社風で事業を続けているケースが多いです。団結しやすい点などメリットは多いものの、同じ価値観や社風が続いていると、外部環境の変化に対応しにくくなるリスクが高まります。実際に市場や顧客の変化に対応できずに、衰退する中小企業は少なくありません。家族や従業員が後継者になると、環境に適応できないリスクが小さくありません。

 

一方で外部から新しい経営者を連れてきた場合、自社とは全く異なる価値観を取り込めます。自社の従業員や家族とは大きく異なる考え方で物事を見れる人であれば、外部環境に適した事業を行えるようになります。そのため、自社の弱み改善や強みの補強につながり、より業績を伸ばすことができる可能性が高いです。この点も、外部から経営者を招へいする大きなメリットであると言えます。

 

一方で外部から経営者を招へいする方法には、下記2つのデメリットもあります。一つ目のデメリットは、そもそも魅力的な会社でなければ、後継者となる人物を招へいできない点です。家族や従業員であれば、これまでの関係もあるので、多少会社の業績や事業内容にキズがあっても、事業を引き継いでもらえる可能性があります。ですが外部から第三者を招く場合、事業内容や業績面が良くなければ、後継者になってもらえない恐れが高いです。

 

二つ目のデメリットは、会社内の良い面が変わってしまう恐れがある点です。先ほどメリットであげたように、外部から経営者を呼ぶと社風や価値観、果ては事業内容まで変わります。裏を返すと、自社の良い面までを変えられてしまうリスクがあります。たとえば従業員との関係を重視する社風が、業績を徹底的に重視する社風に変わってしまうとどうなるでしょうか?モチベーションが低下した従業員が離職する事態となるかもしれません。

 

上記のようなデメリットを踏まえ、外部から経営者を招へいする際には下記2点のポイントを踏まえる必要があります。一つ目は、魅力のある会社作りに努めることです。外部の優秀な人に経営者になってもらうには、業績や事業内容が優れている必要があります。そのため事業承継に先立って、不要な在庫を売却したり、利益をもたらさない事業を辞めるなどして、会社の価値を高めることが重要です。

 

二つ目のポイントは、自社の良い面を伸ばす(残す)後継者を探すということです。どれほど優秀な後継者であっても、自社の良い面や従業員をないがしろにする人物であるのは好ましくありません。後継者を探す際は、優秀さのみならず自社に対する尊重や理解度も重視すると良いでしょう。

 

 

 

2-3 事業引き継ぎ支援センターを利用する

後継者不足の問題を解消する三つ目の対策法は、事業引き継ぎ支援センターの利用です。

 

事業引き継ぎ支援センターとは、後継者不足の問題を抱えている中小企業や小規模事業者に対して、事業承継に関するアドバイスや情報提供、マッチング支援を行う機関です。なお事業引き継ぎ支援センターでは、後継者不足以外にも、M&Aの可能性や譲渡額の目安など、様々な課題の解決を行なっています。事業引き継ぎ支援センターは、全国47都道府県に設置されているため、地方の中小企業でも気軽に活用できるでしょう。

 

そんな事業引き継ぎ支援センターを利用すると、下記2つのメリットを得られます。一つ目のメリットは、安全に事業承継を行える点です。民間のM&Aアドバイザリーに事業承継の相談を行うと、その業者にとって利益が出るように対応を進められる可能性があります。自社にとって不利な条件でM&Aによる事業承継を進められて、莫大な手数料だけ取られてしまうリスクがあります。一方で事業引き継ぎ支援センターは、国が管轄している公的機関です。そのため、第三者の立場から自社の事業承継が円滑に進むようにサポートしてもらえます。

 

また事業引き継ぎ支援センターに相談する二つ目のメリットは、無料相談からマッチングまで、事業承継に関する幅広いニーズに対応してもらえる点です。簡単なアドバイスを無料でしてもらえたり、M&Aの相手探しや交渉や書類作成のサポートまで幅広く対応してもらえます。一貫して豊富なサポートを受けられるため、事業承継を円滑に進めることができます。

 

特にM&Aによる事業承継では、弁護士や税理士、司法書士などの幅広い分野の専門家から質の高いサポートを受けることができます。M&Aによる事業承継は難易度が高いと言われていますが、専門家が一丸となって事業承継の成立をサポートしてくれるため、トラブルなく成約しやすくなるでしょう。

 

一方で事業引き継ぎ支援センターを利用するデメリットは、マッチングの対象企業が少ない点です。事業引き継ぎ支援センターは平成23年度から運営され始めた比較的新しい組織であるため、知名度は低いです。知名度が低いがゆえに、この機関を通じて会社や事業を買いたい(引き継ぎたい)という買い手企業は多くありません。そのため、第三者とのM&Aにより事業承継する場合には、相手が見つからない可能性もあるので注意が必要です。

 

平成23年度に開始された制度ですが、事業引き継ぎ支援センターを介した事業承継の成約数は年々増加しています。平成30年度には900件を超え、今後ますますニーズは高まると予想されます。特にM&Aによる事業承継の件数が多いため、第三者への事業承継を行いたい方は、まずは当センターに無料でご相談してみるのをオススメします。

 

ただし前述通り、事業引き継ぎ支援センターを利用する場合、相手が見つからない可能性もあります。少しでも確実に事業承継を成約させるためにも、自社でも譲渡先の会社を見つけることに努めるのがベストです。

 

 

 

2-4 M&Aにより会社を売却する

後継者不足を解決する4つ目の対策法は、M&Aにより会社(事業)を売却する方法です。親族や会社内に後継者となる人物が存在せず、外部から経営者を呼ぶこともできない場合でも、M&Aにより会社や事業を売却するという選択肢が残されています。

 

M&Aとは合併と買収という意味であり、会社や事業を売買したり一つに統合させる手続きです。「会社を売る」というフレーズを聞くと、どうしてもネガティブな印象を持つかもしれません。ですが、信頼できる買い手に会社や事業を譲渡すれば、従業員の雇用や会社の資産を維持することができます。そのため、近年はM&Aにより事業や会社を売却する形で事業承継を果たす中小企業が増えてきました。

 

M&Aによる事業承継には、主に次の2つのメリットがあります。一つ目のメリットは、先ほどお伝えしたように従業員の雇用や会社の経営資源を存続できる点です。身近に会社を承継できる後継者がいない場合、通常は廃業する選択肢を取ると思います。ですが廃業してしまうと、これまで培ってきたノウハウやスキルを失いますし、従業員は職を失ってしまいます。一方でM&Aを活用すれば、経営権こそ失うものの、ノウハウや従業員の雇用関係は維持できるので幾分マシだと言えるでしょう。

 

二つ目のメリットは、経営者自身が売却により利益を得られる点です。廃業する場合、設備や在庫の処分などで多額の費用がかかってしまいます。一方でM&Aにより事業承継すれば、株式や事業の売却利益として数百万円~数億円ほどのお金を受け取ることができます。事業承継後の老後資金にしたり、新たな事業への投資資金にしたりと、その後の選択肢が広まる点は魅力的なメリットです。

 

一方でM&Aによる事業承継には、下記2つのデメリットがあります。一つ目のデメリットは、M&Aの実行では多額の費用がかかる恐れがある点です。多くの中小企業は、M&Aの相手先探しやサポートを依頼するために、M&Aの仲介業者を頼ります。豊富なサポートを受けられる一方で、多額の手数料が発生してしまいます。先ほどお伝えした通り、M&Aが成功すれば多額の利益を得られます。ですが仲介業者を頼ると、ある程度費用も発生してしまいます。最悪の場合、M&Aが白紙になっても最低手数料として数十万円~数百万円請求される恐れもあるので注意が必要です。

 

二つ目のデメリットは、そもそもM&Aが上手くいくとは限らない点です。M&Aが成立するには、買い手企業が売り手企業の買収にメリットを感じる必要があります。そのため、債務超過に陥っていたり事業内容に将来性がないと、事業承継を引き受けてくれる相手が見つからない恐れが高くなります。

 

以上のようなデメリットがあるため、M&Aによる事業承継では「仲介会社を慎重に選ぶこと」と「企業価値の向上」が大事なポイントとなります。まず仲介業者を選ぶ際には、複数の業者を比較し、手数料率がなるべく低いところを選ぶのがベストです。また仲介業者の中には、M&Aの成功か日に関係なく最低限の手数料を請求するところもあります。失敗した際のリスクを避けたいのであれば、最低手数料がない(もしくは低い)業者を選ぶと良いでしょう。

 

また企業価値の向上については、親族外への承継と同様です。不要な資産や事業を整理して、少しでも第三者にとって魅力のある会社にすることが大切です。また、自社の強みとなるノウハウや技術に磨きをかけて、企業価値を伸ばす施策も効果的です。いずれにせよ、事業承継を行う際には会社の価値を高めることが成功の重要な要因となるのであらかじめ対策を練っておきましょう。

 

 

 

2-5 M&Aのマッチングサイトを利用する

後継者不足に効果的な5つ目の対策法は、M&Aのマッチングサイトを利用して後継者となる人物や会社を探す方法です。

 

一般的にM&Aによる事業承継を行う際は、仲介会社に後継者を探してもらうケースが一般的です。ですが場合によっては、インターネット上のマッチングサイトで自ら後継者候補を探すことも可能です。

 

オンライン上でマッチングできるサービスは、主にWebサイトや小規模なM&A案件をメインに取り扱っていることが多いです。そのため、小規模にビジネスを行なっている方にはとても適している解決方法だと言えます。一方で大規模に事業を行なっている中小企業の場合は、サポートが豊富な仲介会社に依頼する方がオススメです。

 

M&Aのマッチングサイトを利用する最も大きなメリットは、自分で相手を探すことができる点です。仲介会社を利用する場合、ある程度は希望を汲んでもらえるものの、100%自分の意思では相手を探せません。そのため、経営陣の意向にそぐわない相手と交渉する必要が出てくる場合もあります。一方でマッチングサイトを利用すれば、所在地や事業内容などあらゆる要素を考慮した上で、自身が希望する相手と交渉を進めることができます。そのため、運よく希望の相手を見つけられれば、満足いく事業承継を実現できる可能性が高いです。

 

また、幅広く買い手企業を探せる点もマッチングサイトを利用するメリットの一つです。仲介会社に探してもらうと、人員が限られているためにアプローチする買い手企業の数に限りがあります。一方でマッチングサイトを利用すれば、買い手候補の一覧から幅広く相手にアプローチをかけることができます。そのため、相手の見つけやすさではマッチングサイトに分があると言えます。

 

一方でマッチングサイトを利用する際には、必ず考慮すべきデメリットもあります。一つ目は、交渉段階で不利になるリスクが高い点です。M&Aによる事業承継を行う場合、自社がM&Aについて知識や経験がない一方で、買い手側はM&Aに熟知しているケースが大半です。仲介業者やアドバイザリーを介していれば、サポートしてもらいながら交渉を進めていけますが、マッチングサイトを利用する場合は基本的にサポートを受けられません。

 

いわば経験不足の状態でM&Aに精通している相手と交渉する必要があるので、自然と不利な条件でM&Aを行わなくてはいけなくなる恐れがあります。なるべく自社に有利な条件で安全に事業承継を行いたい場合は、仲介会社にサポートしてもらった方が良いと思います。

 

二つ目のデメリットは、自社の情報が幅広く知られてしまう点です。マッチングサイトで相手を探す場合、サイトによっては自社の情報を掲載する必要が出てきます。誰でも閲覧できる状態だと、取引先や従業員にM&Aを検討していることを知られてしまい、不信感を持たれる恐れがあります。また、買い手との交渉段階では、自社の財務情報などの機密情報を伝える必要があります。交渉が白紙になった場合、伝えた情報が外部に漏洩するリスクがある点は大きなデメリットです。

 

マッチングサイトを利用して事業承継を行う際は、情報漏えいのリスクマネジメントがポイントとなります。マッチングサイトの中には、しっかりと契約書の作成をサポートしてくれるサービスもあります。少しでも安全に事業承継を遂行したい方は、サポートが豊富なマッチングサービスを利用すると良いでしょう。

 

また、案件の豊富さや質も重要です。買い手の数が少ないサービスを利用しても事業承継の相手は見つかりません。少しでも事業承継の相手が見つかる可能性を上げるためにも、買い手の数が多かったり成約実績が豊富なサービスを利用するのがオススメです。

 

 

2-6 会社の強みとなる部分を磨き上げる・アピールする

後継者不足の課題を解決する6つ目の対策法は、自社の強みとなる技術力やノウハウなどを磨き上げ、それを幅広い後継者候補にアピールするというものです。

 

親族(子供など)に承継するにせよ従業員や全くの第三者に事業承継するにせよ、自社に会社を引き継いでもらえるだけの魅力がある必要があります。言い換えると、事業を引き継いだ後十分な利益を得られることを、後継者の候補に認識してもらえなくてはいけません。

 

後継者が十分な利益を得るには、事業で大きな利益を生み出せる高度な技術力や独自のノウハウといった強みが必要です。よって後継者候補が見つかるに先立って、自社の強みとなる技術力やノウハウを強化しなくてはいけません。

 

技術力やノウハウといった強みを強化することで、企業価値(稼ぐ力)の向上・強化につながります。企業価値が向上すれば、後継者にとって引き継ぐ魅力のある会社に見えるようになります。その結果、後継者を無事確保し事業承継を完了させることができます。

 

ただし後継者を見つけて事業承継を終わらせるには、自社の強みをより伸ばすだけでは不十分です。自社の強みを積極的に後継者候補となる人物や会社にアピールする必要があります。ノウハウやスキルといった強みは、外部の第三者からは中々実情を掴みにくい部分があります。そのため、強みを適切にアピールできなければ、事業承継を引き受けてもらえない恐れがあります。

 

後継者に事業承継を承諾してもらえる可能性を少しでも高めるためにも、自社の強みは的確かつ分かりやすくアピールしましょう。また、承継後の将来性などを伝えると、より一層自社の魅力度が高まります。

 

以上のように、自社の強みを強化し、それを後継者候補にアピールすることには大きなメリットがあります。強みを強化することで後継者に事業承継を承諾してもらいやすくなる点はもちろん、自社の強みや事業内容、経営資源などを再確認する機会となる点もメリットです。自社の現状をあらかじめ確認することで、今後の事業展開について的確な展望を描きやすくなります。事業承継後の経営にとってもメリットがあるため、後継者候補の有無とは別に、自社の内部を再確認することは積極的に行うべきでしょう。

 

事業承継や今後の経営にとって効果的な強みの強化ですが、実施するにあたっては時間とコストを要する点に注意しなくてはいけません。想像に難くないですが、ノウハウや技術力は一朝一夕で強化できるものではありません。経営者が体調を崩してから強みを強化し始めると、事業承継に間に合わなくなる恐れがあります。特に中小企業の場合、事業の遂行が忙しくて中々ノウハウなどの強化に時間を割けない傾向があります。ですが、事業承継を控えているのであれば、少しでも早い時期から強みの磨き上げに労力を割くのがベストです。

 

 

 

2-7 廃業する

身内や外部に後継者が見つからず、かつM&Aによる事業承継も難しい場合は、止むを得ず廃業するしかありません。実際に後継者候補が見つからず、廃業を選ぶ、もしくは廃業を検討している中小企業の経営者は少なくありません。

 

中小企業の経営者にとって、事業承継を諦めて廃業することは極力避けたいと思います。ですが考え方次第では、廃業することにもメリットはあります。

 

廃業する大きなメリットは、後継者となる候補に経営する上で起こり得るリスクを負わせずに済む点です。会社を経営すると、景気悪化や競合他社との競争により、業績が悪化するリスクが常につきまといます。また製品の欠陥などにより、会社が総バッシングを受ける可能性も考えられます。事業承継を果たすと、後継者は上記に挙げたようなリスクをいくつも背負うことになります。一方で廃業すれば、後継者に経営上生じるリスクを背負わせずに済みます。

 

また、M&Aによる事業承継を行う際には、情報漏洩のリスクが生じます。情報漏洩が発生してしまうと、買い手との交渉が白紙になって費用だけが生じたり、取引先から不信感を買う恐れがあります。廃業してしまえば、このような事態に陥るリスクも回避できます。

 

以上のように、廃業すると様々なリスクを回避できます。経営環境の変化が激しい昨今は、リスクを考慮してあえて廃業という選択する中小企業も少なくありません。とはいえ、廃業することには当然デメリットもあります。

 

廃業する最たるデメリットは、会社がこれまで培ってきたノウハウやスキルなどを失ってしまう点です。長年育ててきた事業が消滅してしまう点は、経営者にとっては寂しいことに思えるでしょう。どれほど黒字の優良企業を経営していても、廃業してしまえば何も残りません。

 

また、従業員が職を失う点も大きなデメリットです。M&Aにしろ親族内承継にしろ、事業承継を行えば従業員は引き続き仕事に就けます。しかし廃業してしまうと従業員は職を失い、就職先を探す必要が出てきます。これまで事業の成長に貢献してきた従業員に対して、廃業により路頭に迷わせるリスクがある点はデメリットと言えるでしょう。

 

M&Aによる事業承継と比べた場合にも、廃業にはデメリットがあります。M&Aによる事業承継を行う場合、会社(事業)を売却すると経営者は株式や資産の売却代金を得られます。ですが廃業してしまうと、会社の売却で得られる利益は得られません。それどころか、資産の処分などにより支出が発生します。経営者自身の老後の生活を考えると、廃業はデメリットの大きい選択肢と言えます。

 

以上が廃業におけるメリットとデメリットです。後継者に経営上のリスクを負わせずに済む点は大きなメリットであるものの、これまで育んできた経営資源が水の泡となる点など、デメリットも少なくありません。最悪の場合の選択肢として廃業も悪くはありませんが、極力は後継者を見つけて事業承継を果たす方が良いでしょう。

 

 

3 インバウンド事業で会社設立!訪日客を呼び込み起業を成功させる方法

訪日客の増加でインバウンド事業に熱い視線が集まっており、この分野で会社設立しようかと考えている方も多いのではないでしょうか。今後もさらに拡大が期待されるインバウンド需要は大きなビジネスチャンスであり、それをどう的確に取り込んでいけるかが事業の成否をわけます。そこで、インバウンドの意味から訪日客数やその消費額、事業の内容・種類などインバウンド事業の状況のほか、事業の進め方や成功するための方法・重要点などを見ていきます。インバウンド事業の成功事や事業上の注意点などを交えて紹介しますので、会社設立時や経営アドバイスとしてお役立て下さい。

 

 

4 インバウンド事業の現状

昨今、注目を集めているインバウンド、それを対象とした事業の内容や現状を確認していきましょう。

 

 

 

4-1 インバウンドとは

インバウンドとは主に「内側に入ってくる」という意味で、外国人が日本を訪れる旅行等を指すケースが多いです。つまり、外国人の訪日旅行や旅行者などを指します。

 

ここではこの訪日旅行に関わる様々なビジネス、すなわちインバウンド事業で会社を設立して成功するための方法や重要ポイントなどを紹介する予定です。

 

なお、経営学・マーケティング分野では「インバウンドマーケティング」という用語ありますが、これは顧客側からの接近や注文を促す手法を意味します。つまり、売手が買手に注文を直接的に取りに行く方法等ではなく買手から注文をするように仕向ける方法等を指すものです。

 

外国人が訪日するように促し、実際にお客になってもらうための対策がインバウンド対策ということになります。たとえば、外国語のWEBサイト、海外旅行関係者へのPR、SNSでの英語等による情報発信、海外の旅行情報サイトの利用、魅力的なコンテンツ作り、買物・サービス消費の環境整備(免税、決済の利便性、外国語案内、WiFi環境)などです。

 

上記のように観光関連産業を中心にインバウンド客を取り組むために既存事業の見直しや新たなビジネスの開発などが盛んに進められています。

 

 

 

4-2 インバウンド事業の現状と今後

それではインバウンド産業のこれまでの動きと現状をここで確認しておきましょう。

 

①ビジット・ジャパン事業の開始から今日までの歩み

2000年代に入るまでの訪日旅行者数は500万人に満たないものでした。しかし、小泉政権下の2003年に「ビジット・ジャパン事業」という「訪日外国人旅行者の増加を目的とした訪日プロモーション事業」が開始され訪日客数が伸び始めたのです。

 

事業の開始時には「訪日旅行者 年間1,000万人」の目標が立てられ各種の訪日プロモーション事業が推進されました。その後、2007年には「観光立国推進基本法」が施行され700万人超えに繋がっています。

 

観光立国推進基本法は観光立国についての基本理念、国や地方公共団体の責務、施策の基本事項などを定めた法律です。強い国際競争力を有し魅力溢れる観光地の形成、観光産業の国際競争力の強化および観光振興に貢献する人材育成、国際観光振興、観光旅行の促進のための環境整備に必要な施策を立案し、総合的かつ計画的な推進を図るために「観光立国推進基本計画」が定められました。

 

こうした取り組みの結果2013年には念願の1,000万人を突破し、旅行消費額は1兆円超に至っています。観光庁および日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2018年の訪日外国人旅行者数は31,191,856人、旅行消費額(総額)は4兆5,189億円です。

 

国籍・地域別で見ると、中国の8,380,034人、消費額が1兆5,450億円と両方ともトップを占めています。なお、一般客1人当たり旅行支出は153,029円/人です。

 

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*出典:JNTO 日本の観光統計データ 「訪日外客数の推移」より

 

②今後の観光政策

2016年3月30日、「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議(議長:内閣総理大臣))において、「明日の日本を支える観光ビジョン」が決定され、 訪日外国人旅行者数2020年4,000万人、旅行消費額8兆円、2030年6,000万人、旅行消費額 15兆円の新たな目標が設定されました。その目標の達成に向け政府は毎年、観光立国推進閣僚会議において行動計画として「観光ビジョン実現プログラム」を策定し実施することになっています。

 

「観光ビジョン実現プログラム2019」の概要は下記の通りです。

 

1.外国人が真の意味で楽しめる仕様に変えるための環境整備
  • 多言語対応、WiFi環境等のスピーディな整備
  • MaaS(鉄道・バスなどを一体的に検索・予約・決済できるシステム)、観光地までのアクセスの充実
  • 「稼ぐ」旅館・ホテルに向けた生産性向上、外国人人材活用等
  • 昨年9月の「非常時の外国人旅行者の安全・安心確保のための緊急対策」の確実な実現 等

 

2.地域の新しい観光コンテンツの開発
  • 「日本博」を全国各地で開催し、国宝・重要文化財の展示・活用などを実施
  • 国立公園の滞在環境の向上、自然体験コンテンツの充実
  • 公的施設の公開時間延長、民間活用(新宿御苑の民間カフェの導入など)
  • 三の丸尚蔵館の展示スペースの拡大
  • 東京国立博物館改革とその横展開、国等が有する地方ゆかりの名品の地方美術館・博物館等での展示拡大
  • 「農泊」らしい農家民宿や古民家の整備、農業体験などのコンテンツの充実
  • リビングヒストリー(文化財について、歴史的な出来事や当時の生活を再現する新たなコンテンツを開発)
  • 城泊、寺泊、グランピング(規制緩和、好事例の横展開)
  • スノーリゾート活性化・旅館再生
  • クルーズ客の満足度向上に向けた体験プログラムの開発や 地元商店街への誘導など
  • ナイトタイム(夜間に楽しめるイベント等)
  • 観光列車、サイクルトレイン等の導入促進
  • 医療ツーリズムの推進  等

 

3. 日本政府観光局と地域の適切な役割分担と連携強化
  • 自治体・観光地域づくり法人の役割の明確化
  • 日本政府観光局が各地域の情報・魅力を海外に向けて一元的に発信するための体制強化
  • 日本政府観光局が各地域に提供するデジタルマーケティングの強化
  • 欧米豪を中心とするグローバルキャンペーンの東アジア(中・韓ほか)などへの強化
  • 更に幅広い地域からの誘客に向けた新市場開拓(中東、中南米) 等

 

4.出入国の円滑化等
  • 顔認証システムなどによる出入国の迅速化
  • ビザの戦略的緩和、免税店拡大(電子申請の支援)
  • 空港の発着回数増、那覇空港第2滑走路新設、海外からの地方空港への直行便の就航促進
  • 観光地の混雑対策

 

以上のようにインバウンド需要を拡大させ取り込むための施策が推進されるため、民間の事業者も施策に合わせた対応を図ることでビジネスチャンスが掴みやすくなるでしょう。

 

③JNTOの事業

JNTOでは、自治体や企業等のインバウンド事業を支援するための「受託コンサルティング事業」(有料)が実施されています。これからインバウンド事業で会社設立する方や同事業での改善・拡大を行いたい方などに役立つはずです。

 

JNTOの受託コンサルティング事業の内容(有料):

 

・助言

地方自治体やインバウンド事業者などを対象として、インバウンドに関する知識や認識の向上を目的に助言が受けられます。

 

地域のインバウンド政策や計画の策定にあたり、インバウンド分野に精通したJNTO職員との会議を持ったり助言をもらったりすることが可能です。また、ケースによっては職員を派遣した視察・助言なども受けられます。

 

・講演

自治体の観光担当者や地域のインバウンド事業者(ホテル、観光施設など)を対象とした会議やセミナーが開催される場合に、JNTOの役職員が派遣され国内インバウンド事情やJNTOの取り組みなどについて講演が受けられます。

 

・市場調査

地域の観光地、食事・飲物、宿泊施設、温泉や体験施設などが外国人旅行者に受け入れられるか、国(市場)ごとに各観光資源がどの程度の魅力度を有するかというような市場調査の依頼が可能です。

 

また、地域に来訪している外国人の現状、たとえば、どの国の外国人がどれだけ来訪し何日滞在しているか、当該地域の前後に利用した移動ルートはどれか、などの調査もしてもらえます。

 

・海外旅行会社に対する視察旅行への招請

海外の旅行会社を招請したい場合にJNTOから協力してもらえます(特定市場が確定しているケース)。JNTOの海外事務所では各国の旅行会社と関係構築ができているため、現地の訪日旅行を取り扱う主要旅行会社関係者の紹介・選定が可能です。

 

また、対象市場が確定していない場合は、JNTOから海外の旅行会社の視察旅行を実施するためのアドバイス、市場選定、 招請者選定、成果報告などが受けられます。

 

・海外メディアに対する取材旅行の招請

海外のメディアと太いパイプを有するJNTO海外事務所を通じて、現地の有力メディア関係者の紹介が得られ、効果的な事業実施と情報発信に協力してもらえるでしょう。

 

以上のほかにも

  • JNTOのウェブサイトを使った情報発信
  • JNTOの地図やパンフレットを使ったPR
  • 海外の旅行会社に対するアポイントの取得
  • 海外でのセミナー・商談会での集客に対する協力

 

などが受けられます。

 

 

 

4-3 インバウンド事業の主な種類

国内の大都市のみならず地方においても様々なインバウンド事業が展開されていますが、その主な業種・業態としては以下のものが挙げられます。

 

A レストランやカフェなど
B 居酒屋、バーや夜の観光(ナイトライフ)など
C ドラッグストア
D 百貨店・デパート
E コンビニ
F ファンション関係(アパレルや化粧品等)
G ディスカウントストア
H 食品(お菓子含む)
I 医薬品や日用品等
J 漫画やアニメ
K 伝統工芸品
L ホテル(ビジネスホテル、リゾートホテル等)
M 旅館、民宿、民泊等
N 温泉やスパリゾート
O 交通機関等(バス、タクシー、電車、飛行機、駅、空港等)
P ウィンタースポーツ(スキー、スノボ)
Q レンタカー
R テーマパークや観光施設
S 旅行会社やラウンドオペレーター(旅行先のホテル、ガイド、バス・鉄道などの手配・予約を行う会社)
T 自治体やDMO(地域と協同して観光地域作りを行う法人)
U 体験やアクティビティ
V 医療や美容
W 各業種の業務サポート(IT支援、コンサルティング等)

 

以上のように多様な業種等がインバウンド事業に存在しますが、大きく分類すると次のようになるでしょう。

 

  1. ①外国人旅行者を日本へ送る・繋ぐ事業者(旅行会社等)
  2. ②インバウンド客を受け入れる事業者(宿泊、飲食、体験、乗車、観光、販売等)
  3. ③受け入れ事業者を支援する事業者(通訳・翻訳、IT化、コンサルティング等)

 

各業種等の内容は異なってもインバウンド需要の創造や取り込みについて各々密接に関連し総合力となり得るため、地域や業者間等での協力・連携が重要になります。

 

また、同じ業種であってもコンセプト、立地や業態などの違いによりインバウンド需要を取り込むための方法や対策に相違が見られます。

 

 

5 インバウンド事業の会社設立や事業推進上のポイント

ここではインバウンド事業を始める際や開業後の事業上の重要ポイントを説明しましょう。なお、インバウンド事業の業種は多岐にわたるため、インバウンド客を受け入れる事業者を主な対象としてその方法等を取り上げます。

 

 

 

5-1 インバウンド客目線の事業構築

インバウンド事業では日本人客向けとは異なったインバウンド客目線のビジネスシステムの構築が必要です。つまり、国内向けと異なるマーケティング手段を訪日客に対して講じなければなりません。

 

従って、訪日客のニーズが何であるのか、何を求めて来訪しているのか、何を提供すれば満足してくれるのか、といった点を最初に明らかにすることが求められます。

 

そして、その上で自社が提供可能な商品・サービスの内容や提供手段を決め、訪日客へのアプローチや集客の方法を検討することになるのです。集客だけを重視した方法や対策がよく見られますが、順序を間違わないようにしましょう。

 

①インバウンド客のニーズや目的の把握

まず、どのような訪日客を対象としてビジネスを組み立てるのかを考える必要があり、ターゲットと彼らのニーズや目的を明確にしなければなりません。

 

自社の業種、立地や事業規模・経営資源量などによって変わってきますが、自社が対象とする訪日客の特徴を調べることから始める必要があります。

 

観光庁が公開している「2018年の訪日外国人消費動向調査 年次報告書」の内容から訪日客のニーズや目的の違いが読み取れるはずです。

 

たとえば、2018年の一般客1人当たり旅行支出額は下記のようになっており、国別・地域別によってその内容は異なってきます。つまり、国等により旅行のニーズや目的に違いがあり、それが消費行動として現れているのです。

 

(単位:円) 総額費用:153,029 宿泊費:45,787 飲食費:33,748 交通費:16,160 娯楽等:サービス費:6,011 買物代:51,256 その他:67

 

国籍・地域別の特徴としては、「飲食費」はスペインの 6.2 万円、「買物代」では中国の 11.2 万円が突出して高い点があげられます。

 

旅行消費額の費目別構成比の特徴としては、インド、英国、ドイツ、米国、カナダ、オーストラリアにおいて「宿泊費」の割合が4割超という高さです。中国では「買物代」が 49.9%という高い特徴が見られます。

 

観光・レジャー目的の訪日外国人の平均泊数は5.9泊で、国籍・地域別では欧州、カナダ、オーストラリアの平均泊数が長く10泊超となっている点も特徴といえるでしょう。

 

滞在日数でみると6日間以内が64.0%で、国籍・地域別では韓国の「3日間以内」が 29.9%と他の国等に比較して短く、「14日間以上」の割合ではドイツ、フランス、イタリアで 5割超と高いです。

 

以上のように旅行者によって、買物重視、長期滞在重視、宿泊重視、飲食重視など見られます。主要な観光客の目的としては、日本食、買物、自然や景勝地の観光、繁華街の街歩き、温泉などが人気です。

 

こうしたニーズや目的を自社の強みで捉えられる事業コンセプトの設定が事業の成功のために求められます。

 

②ビジネスコンセプトの確立

インバウンド事業としての事業コンセプトを設定しましょう。

 

マーケティングでは、自社、顧客(市場)、ライバルの3者から見た分析を行いビジネスの仕組みを組み立てます。つまり、外部環境である顧客のニーズや特徴、競争相手の強み・弱み・特徴を洗い出し、内部環境である自社の強みで顧客のニーズを捉えつつ競争相手に勝利するための事業コンセプトを考え出すのです。

 

インバウンド事業の場合は、顧客はインバウンド客で、ライバルは各社の業種・業態・立地などによって異なってくるでしょう。そのためインバウンド客の対象をどう設定するかによって自社の強み・弱みを利用する部分や、ライバルが異なってくる点を注意しなければなりません。

 

たとえば、ドン・キホーテは、食品、日用品、雑貨、衣料品、家電製品、ブランド品、パーティ・オモシログッズなどを扱う「コンビニエンス性、ディスカウント性、アミューズメント性」の3つの特徴を併せ持つディスカウントストアです。

 

日本人客にも支持が得られている豊富な品揃え、割安価格、24時間営業やテーマパークのように楽しめる外観・店内などが魅力となっています。これらの強みや特徴で月間40万人以上とも言われる多くの訪日客を呼び込んでいるのです。

 

同社のビジネスコンセプトは幅広い商品、一カ所で深夜でも割安に買い物ができる利便性、買い物やその時間を楽しめる空間の提供であり、買物目的のインバウンド客のニーズにマッチしています。

 

つまり、コンビニのような24時間営業による利便性、豊富な品揃えと魅力的な割安く価格、ショッピングを楽しめる区間や印象的な外観などで同社は他社との差別化を図り訪日客のニーズに応えているのです。

 

また、日本料理・寿司の「がんこ」では和食に期待する多くの訪日客を取り組むための仕組みを考案し実施しています。コンセプトとしては、日本食が初めて、馴染みの薄い外国人に安心して食事を楽しんでもらえることと言えるでしょう。

 

すし、麺類、天ぷらなど訪日客の人気の高い料理を組み合わせたセットメニューの提供、人気メニュー上位3位までの店頭におけるサンプル設置(外国語表記)およびディスプレイによる案内などがコンセプトに基づいて実施されているのです。

 

③マーケティングミックスの考案

事業コンセプトに沿って対象者のニーズを捉えるための具体的に要素や手段を組み立てるのがマーケティングミックスや仕組みの構築です。これが完成して一連のビジネスシステムは確立します。

 

マーケティングミックスとは、価格、商品・サービス、プロモーション、チャネル(販売経路)・物流 などのビジネスを構成する重要な要素を形成することです。これらをターゲットおよびビジネスコンセプトに合わせて内容を決めていくことになります。

 

たとえば、先ほどのドン・キホーテの場合、価格は割安で、商品は種類・品揃えが豊富で1店舗で欲しいものが揃い、24時間の営業で観光後に買物が楽しめほとんどの都道府県で利用できる、という内容で形成されるわけです。

 

ほかにもターゲットの利便性の向上と他社との差別化を図るため、旅行会社やホテルを通じて訪日客に配布される割引カードの提供、免税対応のための免税カウンターの設置、ドルや人民元などの外貨決済サービスの提供、カード情報からの商品開発 といった手段も講じられているのです。

 

マーケティングミックスの構築が事業の成否を分けますが、その要素は多様で、ほかにもコンテンツの開発、集客・誘客、リピーターの獲得・増加策、会社の受入態勢の整備なども重要になります。

 

 

 

5-2 インバウンド事業での重要なポイント

インバウンド事業を拡大・成長させるためには、基本のマーケティングミックスの要素の充実が不可欠ですが、とりわけ集客・誘客の手段の整備・強化が重要です。たとえば、以下のような項目について対応できたり、強化したりすることが求められます。

 

A 第三者との協力・協調:

旅行会社等や自治体との協調・協力により訪日旅行に興味のある国や国民に日本および自社の存在や魅力を伝える。異業種と連携して互いのビジネスを訪日旅行者に紹介する など

 

B 自社主体の集客・誘客手段の整備:

下記項目の手段等により自社の存在や特徴を知らしめ、日本および自社へ訪問したいと思わせる。自社の商品・サービスを利用したい、自社への訪問や旅行に興味を持たせる

 

SNSの活用
自社WEBサイトの充実・多言語対応・デザイン性の向上
モバイル対応
外国人ブロガーの活用
SEO対策
ECサイトの充実
WiFi環境の整備
スマホ決済等
提供する商品・サービスなどコンテンツの充実
「体験」の商品化(コト消費への対応)

 

 

 

5-3 具体的な集客・誘客の手段

上記で紹介したインバウンド客の集客や誘客に利用できる手段のいくつかを説明しましょう。

 

①SNSの活用

SNSのタイプとしては、Facebook、Twitter、Instagramが代表的で、これらについて紹介します。

 

・Facebook

世界最大のSNSとして有名なFacebookの月間アクティブユーザーは約23億人以上(2019年4月)と言われています。Facebookは全世界的に利用されていますが、とりわけ先進諸国での普及率が高いです。従って、先進諸国の訪日に興味のある方を誘導する手段として期待できます。

 

米国の利用者層をみると、20歳台が90%以上と最も高く年齢層が高くなるに従い利用者割合は落ちますが60歳台でも60%以上の利用者割合となっています。

 

なお、Facebookは中国国内では使用できないため中国人の大部分はアカウント登録をしていないと考えられ集客に向けた情報発信手段としては向いていません。しかし、中国を除けば世界的に最も普及しているSNSであるため、集客手段としての価値は高いと言えるでしょう。

 

また、Facebookの場合、投稿の対象者への情報はその友達にも伝達できるという拡散性があり、広告媒体としての有用性も低くありません。

 

Facebookを活用した集客方法としては、サービスや店舗単位で個別ページを作成しその内容を紹介したり、利用者とのコミュニケーションを取ったりすることができます。こうした活用により自社やサービス等の認知度や評判を高められるのです。

 

また、広告を出すのも有効で、ユーザー層、年齢層、自社と関連しそうな分野など対象を絞り込んだ広告が出せます。対象を狙い撃ちできるため自社および商品・サービスの魅力をより直接的に伝達しやすく潜在顧客を掘り起こすのに役立つでしょう。

 

・Twitter

TwitterはFacebookに次いで利用者数が多く拡散性の強いSNSです。リツイートされることで発信者が予想していない多くの利用者に投稿が伝わります。つまり、拡散性においてはFacebook以上に広告媒体としての有用性があるのです。

 

全世界での利用者数は約3億3千万人以上いるとみられており、若い世代が多く利用しています。米国でのユーザー数を見ると、20歳台と30歳台の利用者割合が各々60%以上と高くなっています。他方、50歳台は20%以上です。60歳台は15%前後となっています。

 

若い世代の訪日客からのツイートの拡散により彼らのフォロワーを訪日へと誘導してくれることもあるでしょう。

 

Twitterの利用上の特徴は、実名でなくても利用できる点や複数のアカウントを使い分けられる点などが挙げられます。また、公式認証を受けた著名な人が実名で発信する情報の影響力は強く、そうした方による商品・サービスの情報発信は反響が大きくなりPR効果は高くなると考えられます。

 

また、Twitterでもユーザー向けの広告を出すことが可能で、若い世代への広告効果も期待できるでしょう。

 

加えてTwitterは他のSNSよりも意思疎通や情報収集が図りやすい点も魅力です。Twitterで特定の言葉を検索すれば、その言葉のツイート情報が把握できます。たとえば、「○○観光地 食べ物」などで検索すると、その関連のツイート情報を入手でき、ニーズの分析等に役立てることも可能です。

 

インバウンドでの集客手段としては、ツイートと動画やPR記事などと連動した情報発信が有効で、動画およびPR記事を拡散させるのに役立つでしょう。

 

・Instagram

Instagramは写真や動画を中心として投稿・閲覧するSNSで、画像を送信する際にメッセージ(1~3行程度)をつけるというタイプです。Instagramの月間アクティブアカウント数は10億人以上(2018年6月)、デイリーアクティブユーザー数が5億人以上(2017年9月)あると言われています。

 

    米国での利用者層では、20歳台や30歳台の利用者割合が約60~70%と高く、50歳台や60歳台では10%未満と低くい

です。

 

Instagramはフォロワー(友達)へ伝達するためのもので拡散性が低いですが、投稿のすべてが画像にリンクされるという特徴があります。

 

ハッシュタグによりユーザーは他者の投稿を検索し情報を入手することが可能です。また、インスタグラムは拡散力が高くないですが、他のSNSとの連携が可能でインスタグラムでの投稿をツイッターやフェイスブック上でシェアできます。

 

Instagramは仲の良い友達同士、フォロワーとのコミュニケーション手段として極めて有効であり、画像という視覚的な伝達による影響力も高く集客手段として期待できます。

 

日本およびその各地域、お店およびその商品・サービスなどの魅力を視覚的に伝達できる手段は大きな誘客効果があるため、自社からの発信とともに来訪者の発信を促す仕組みを作ることが重要です。

 

②自社WEBサイトの充実・多言語対応・モバイル対応

SNSから自社の存在や商品・サービスを知った海外の人達に訪日してその店舗等に訪れたいと思わせるには自社WEBサイトの充実化が欠かせません。また、WEBサイトでの説明が日本語だけの場合外国人には理解できないため、サイトの多言語対応も必要です。

 

SNSで自社のお店や商品・サービスなどを知って興味を持ってくれても実際に来日して店舗等へ来てくれないとビジネスにはなりません。そのため、来訪したいと思わせる情報提供は不可欠であり、自社のWEBサイトがその大きな役割を果たします。

 

まず、WEBサイトは外国人に来訪したいと感じさせるアピール力が必要です。外国人が特に興味を持てそうな部分について詳しく説明したり、写真や動画で描写したりすることが求められます。

 

たとえば、日本の文化・伝統・歴史といった面で興味を膨らませたい場合は、他国にはない独自性や異質性などを物語のように丁寧に伝達できるページ作りが必要です。

 

単なるお店やサービスの説明ではなく、「日本だから」「この店だから」「このサービスだから」こそ味わえる感動があるという情報を分かりやすく伝えられるサイトにしなければなりません。

 

もちろん英語やターゲット国の言語に対応したサイトにすることが必要です。日本語のわからない外国人の場合、画像情報以外は理解できないため、上記のようなWEBサイトの充実化を図っても効果が得られません。そのため多言語対応が必要なのです。

 

もちろんWEBサイト全体で多言語対応を行うのは容易ではないですが、重要な部分に関しては少なくとも行うようにしましょう。ページ全体の内容を対象言語に翻訳できるなら言語切り替えができるようにして「中国語版」などの表示をナビゲーションバーに設定するのが良いです。

 

なお、インバウンド客の集客等だけでなく彼らの利便性の向上ためにもモバイル対応は必要になります。旅行者の情報収集手段はモバイル端末やスマホ等の利用となるため、自社のWEBサイトにはモバイル対応が不可欠です。

 

iOS(iPhone)やAndoroidなどを利用できる端末で問題なくかつ見やすいページにしておかねばなりません。閲覧するのにストレスを感じるようなページなってしまっては、インバウンド客の興味が失せてしまいかねないため準備しましょう。

 

③SEO対策

自社でWEBサイトを構築した際に検索エンジンで上位表示されるための何らかのSEO対策が不可欠ですが、多言語ページにおいても上位となるような対策が欠かせません。

 

海外におけるSEO対策の注意点は、海外の検索エンジンがすべてGoogle検索エンジンではないという点です。ターゲットの国・地域がGoogle検索エンジン以外をメインとして使用している場合Google検索エンジン向けのSEO対策は効果が低くなってしまいます。

 

従って、対象の国・地域の検索エンジンが何であるかを確認し、それに合わせたSEO対策を施す必要があるのです。また、1つの言語に対して1つのURLを設定することも重要で、検索エンジンから自社サイトの評価を高めやすくなります。また、国ごとにドメインを取得することも有効です。

 

対象国等の言語対応をする場合に日本語ページの機械翻訳を利用するのは避けたほうが良いでしょう。機械翻訳は直訳されるのが一般的ですが、誤訳や意味の通らない翻訳になることも少なくありません。もちろん魅力的な表現を期待するのは難しいため文章で外国人を惹きつけるのは困難です。

 

そのため専門の翻訳家やネイティブなどに依頼して翻訳してもらうほうがよいでしょう。

 

また、使用するサーバーについては対象の国・地域など多数のエリアで利用できるものを選ぶのが賢明です(海外からのアクセスに制限をかけるようなサーバー等は避ける)。

 

④利便性の向上

先進国を中心に社会生活でのIT化が進展しており、訪日客においても自国と同等のIT環境を求める傾向があり、その対応が集客等において欠かせません。

 

まず、インターネット環境が整った国の人達にとって情報収集は当然インターネット経由となるため、スマホが常時利用できるWiFi環境の整備が特に重要です。

 

自社の店舗だけでなく地域の一定エリアで利用できると便利になるため、自治体等と協力したWiFi環境の整備が求められます。この対応により旅行者は情報収集だけでなく体験した内容を即座にSNSへ流せるため、地域や自社にとってもメリットが小さくありません。

 

つまり、来訪してくれた旅行者による地域、自社およびその商品・サービスのPR、すなわち口コミが期待できるのです。

 

また、旅行者が気軽に商品を買ったり、サービスを利用したりできるようにスマホ決済等ができる環境も整えましょう。特にスマホ決済に慣れている国の人達にとって現金決済は購入・利用の妨げになりかねません。

 

スマホ決済アプリを使用できるようにしておけば利用者の利便性が高まるだけでなく自社の経理処理の負担も軽減されるでしょう。

 

⑤体験化・コト消費への対応

観光や商品販売などにおいて、旅行者がその地域の名産・名物を味わうだけでなく、演芸・演奏などを鑑賞するだけでなく、彼らが自分で作ったり、演じてみたりするという「体験」を提供する仕組みが集客に役立ちます。

 

たとえば、国内でもいちご狩りや漁業体験などは一般的ですが、こうした商品・サービスの提供と体験をセットにしたプランは訪日客にとって魅力となるのです。

 

日本酒、豆腐、お味噌、寿司といった日本の伝統食材・飲料を味わうとともに実際に自分の手で作るという機会は外国人にとって非常に魅力的に映ることもあるでしょう。

 

また、日本の伝統芸能の三味線、琴や太鼓などの演奏体験、温泉街や祭りの際での浴衣・和服の体験、舞子・芸者への変身体験、茶道や書道の体験などが行われています。

 

自社の商品・サービスにおいて旅行者が体験できるコト消費を提案しそれを誘引材料として集客に結び付ける取り組みが重要になるでしょう。

 

 

6 インバウンド需要を取り込む事業者の具体例

インバウンド客を対象とした事業で会社設立を行う場合に集客等に役立つ具体的な事例を紹介します。

 

①「浅草 つる次郎

お好み焼き・もんじゃ焼き・鉄板料理のお店である「浅草 つる次郎」は、お好み焼き等を訪日客が味わい楽しんでもらうため、WEBサイトや接客サービスを充実させています。

 

同店のWEBサイトでは多言語対応、こだわりの英語メニューブックのダウンロード、焼き方動画の配信などが行われており、日本語やお好み等が分からない外国人でも同店やその食事を楽しめるように工夫されているのです。

 

また、同店では無料写真サービスを実施しておりお客が帰る前には写真がプリントされ手渡しされます。思い出をデジタルではない手に取れる写真としてお土産としているのです。

 

ほかには指差し英会話表を作り、英語が苦手な店員でも外国人とのコミュニケーションが図れる工夫をして、外国人客にストレスを感じさせない接客サービスが提供されています。店内はFreeWiFiが設置されお客の情報収集や発信に役立っているのです。

 

②「祇園 畑中

京都祇園の料亭旅館の「畑中」は、外国人も喜ぶ様々なサービスを提供しインバウンド需要の取り込みに努めています。

 

たとえば、京都に訪れる訪日客の多くは外食を好む傾向があり、畑中では自店に宿泊しない訪日客への食事需要の獲得に成功しているのです。また、食事とエンターテインメントを組み合わせたサービスも提供されています。

 

京料理と舞子との一時や京料理と侍剣舞を楽しめるプランが用意されており、和食と伝統芸能の両方を一緒に体験できるため訪日客の人気を集めているのです。畑中に宿泊しない訪日客の利用も多く、他の旅館等の代わりに訪日客の食事ニーズを獲得しているといえるでしょう。

 

なお、畑中ではFacebookで情報発信するなどSNSを通じたPRも熱心ですが、英語と中国語によるブログ配信もしています。

 

③「マツモトキヨシ

ドラッグストアチェーンのマツモトキヨシは従来から訪日客が多かったですが、彼らが好む化粧品や医薬品を品揃えの強化、店内の利便性の向上、WEBを使った集客などによりインバウンド需要の取り込みに成功しています。

 

同社では従来からの強みのヘルス&ビューティーケア分野で訪日中国人等のニーズを捉えるとともに、プライベートブランドの高品質化粧品等のラインナップで他社との差別化も図っているのです。

 

また、同社では免税カウンターを設置した店舗を増やすとともに、薬品・化粧品・食品・飲料を免税品目に加え訪日客の購買意欲に応えています。店内では訪日客が母国の家族等と相談しながら買物できるようにFreeWiFiが整備され、中国のデビットカードである「銀聯カード」の利用も可能で訪日客の利便性が高められているのです。

 

同社はWEBでの集客にも積極的で「訪日台湾人向けメディア樂吃購(ラーチーゴー)!日本」(台湾・香港の観光情報メディア)を活用したPRを行っています。同サイトで人気商品をカテゴリー別に紹介したり、免税手続の仕方などを説明したりしているのです。

 

また、マツモトキヨシのWEBサイトでは英語・中国語・韓国語の多言語対応が施されており、東アジア圏をターゲットとした集客に力が注がれています。ほかにも中国の天猫国際に出店して越境ECサイトの対応を進め、帰国後の売上に結び付ける仕組みも作っているのです。

 

④「サムライレンタカー」(EXCIA)

株式会社エクシアは、自動車の販売、輸出入、リース・レンタル、旅行・レジャーの提供などを営む会社ですが、外国人向けの「サムライレンタカー」事業を行っています。訪日客等の移動や宿泊における利便性の向上を高めインバウンド需要の取り込みに努めているのです。

 

同社は訪日客等に英語、中国語、台湾語が利用できるWEBサイトを用意し利用価値の高いサービスの内容を分かりやすく説明しています。

 

サービス内容は、外国人向けのパック料金設定(オールインワンの価格設定)、全車両GPS付き、ETCカード、ポケットWiFiのレンタル、返却時の燃料補充不要、車いすの無料レンタル、移動距離制限なし、などでその分かりやすい内容が人気となっているのです。

 

ほかにも無料のスノータイヤのレンタル、防寒着レンタル(有償)などがあり、スキーやスノボを目的とした旅行にも対応しています。また、軽バンなども豊富で車中泊で移動したい旅行客のニーズにも応えているのです。

 

同社の新千歳空港店と成田空港店では、テレビ電話を使ったリアルタイムの通訳サービスである「スマイルコール」が導入され、レンタカーの利用に不安のある訪日客を安心させています。

 

同サービスはビデオ通話で相手の顔を見ながら通話できるもので、英語・中国語・韓国語・スペイン語・ポルトガル語の5言語の通訳が24時間365日受けられるサービスです。貸出時の説明はもちろん、事故等のトラブルのあった際の説明や相談等の対応に役立っています。

 

 

7 インバウンド事業の会社設立や事業推進での注意点

最後にまとめとして、インバウンド需要を目的した事業での会社設立や事業推進をする場合の特に注意しておきたい点を3つ挙げておきしましょう。

 

 

 

7-1 地域等との協力・連携

インバウンド需要の取り込みは各地域の自治体も力を入れており、地域一体となった活動も多く見られます。経営資源に余裕がない新設会社などにおいては、そうした活動の波に乗って需要の取り込みを進めていくのが良いでしょう。

 

訪日客の観光ルートにある大都市などでは地域や観光資源等の知名度も高く集客力が高いです。しかし、知名度の低い地域などでは海外の人達に地域とそのコンテンツを知らせる活動が必要ですが、国内外の旅行関係者との協力関係の構築などもあり簡単な活動ではありません。

 

特に地方の会社が単独で外国人を呼び込むには経営資源の面から困難であり、地域の自治体の協力等も必要となるのです。地域の観光協会などをはじめとして各店舗や会社などが協力して、認知度を高めるための方策の実行も求められます。

 

また、魅力のあるコンテンツ作り、食事・買物・交通・宿泊での利便性の向上が不可欠であり、WiFi環境、スマホやクレジットカードでの決済、多言語対応 などの整備を地域・他者と協力して進めることも重要です。

 

 

 

7-2 魅力的なコンテンツ作り

ターゲットを満足させる魅力的なコンテンツ作りが不可欠です。食事や観光等において日本を楽しむという「体験」が訪日客において重視され、旅行者自身が実際にやってみる、目の当たりにするといったエンターテイメント性が求められています。

 

食事の提供では、旅行者自身が料理に加わるような要素を持たせる、食事しながら伝統芸能に触れられる、といったサービスです。たとえば、旅館やホテルなどでは夕食時の太鼓の演舞が披露されることもありますが、その際にお客に実演してもらうこともあります。

 

食品の販売などでは、その食品の作り方の実演や作り方教室を行い集客するのも有効です。和菓子やお味噌などの日本の伝統食材は外国人にも魅力が高いため集客できる立派なコンテンツとなるでしょう。

 

 

 

7-3 マーケティングミックスの構築

魅力的なコンテンツ等の提供に加えターゲットに適したマーケティングミックスの構築がインバウンド需要の取り込みには欠かせません。

 

自社のビジネスの内容からどの国・地域の外国人をターゲットにするべきかを明らかにし、その上で彼らにマッチしたマーケティング手段を講じる必要があります。

 

もちろん新設会社などでは経営資源が限られるため、対応できる範囲を明確にして費用対効果を考えた方法を実施しなければなりません。自社のWEBサイトではターゲットがアクセスしやすくなるように専用のURLを開設することも必要です。もちろんターゲット国の言語のほか多言語対応も欠かせません。

 

加えて海外の旅行情報サイトの利用や越境ECサイトへの進出なども重要であり、FacebookやTwitterなどのSNSの活用やブロガー・インフルエンサーの利用なども検討するべきです。

 

訪日客が来訪してくれた際に買物・食事・体験等を堪能してもらえるための環境を整備することも忘れてはいけません。簡単な英語などで接客サービスができる体制、外国語のメニュー、食べ方・使い方の動画説明、各種決済サービス、WiFi環境 などの整備を進めていきましょう。

 

 

8 まとめ

今回の記事では、中小企業の事業承継における「後継者不足の問題」を取り上げました。事業承継は、先代経営者から後継者となる人物に会社の経営権を引き継ぐ行為です。事業承継の種類は、大きく分けて「親族内承継」、「親族外承継」、「M&A」の三つに大別されます。

 

一昔前までは家業を継ぐ形で子供が事業承継を行うパターンが多かったものの、近年は親族外承継やM&Aにより第三者に事業を売却するパターンが増えてきました。経営者としての資質がない後継者に引き継がせてしまうと業績がかえって悪化する恐れがあります。そのため、誰に事業を引き継がせるにせよ、事業承継後の展望も踏まえた上で後継者を選ぶのが大事です。

 

昨今の中小企業では、経営者の高齢化や少子化の影響により、後継者不足の問題が深刻化しています。後継者不足を理由に、止むを得ず廃業してしまう企業も少なくありません。後継者にリスクを負わせずに済むメリットこそあるものの、廃業するとこれまで積み重ねてきたものを失うデメリットがあるので、極力は後継者を見つけて事業承継を果たすのがベストと言えます。

 

中小企業の後継者不足に効果的な対策として、最終手段である廃業を含めて今回は7つの方法をご紹介しました。

 

一つ目の方法は、「従業員や役員に引き継ぐ」ことです。後継者として周囲に受け入れられやすい一方で、株式の購入資金を後継者が賄えないなどのデメリットがあります。二つ目の方法は「外部から優秀な経営者を招へいする」ことです。新しい価値観を社内に取り込める点は大きなメリットであるものの、良い側面まで変わってしまうリスクがあります。三つ目の方法は、「事業引き継ぎ支援センターを利用する」ことです。無料で豊富なサポートを受けられる一方で、買い手の数が少ないことが難点です。

 

四つ目は、「M&Aにより会社を売却する」方法です。売却利益を得られる点などメリットは多くありますが、手続きに時間やコストがかかるので注意しなくてはいけません。五つ目は「M&Aのマッチングサイトを利用する」対策法です。幅広く買い手を探せる点は魅力的であるものの、情報漏洩などのリスクがあります。そして六つ目の対策法は「会社の強みとなる部分を磨き上げる・アピールする」方法です。M&Aにしろ親族内承継にしろ、後継者に引き継いでもらえるだけの魅力がある会社作りは重要です。事業承継を考え出したら、少しでも早い段階から強みの磨き上げに着手することがオススメです。

 

自社の状況や経営者自身の考えを踏まえて、自社に適した対策法を実践してみましょう。そうすれば、後継者不足を解決できる可能性が高くなります。

 

 


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