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【クルマを直す人がいなくなる?】自動車整備士の人手不足問題を考える

人口減少、少子高齢化により噴出している人材不足問題。配達ドライバーの不足や介護士不足、保育士不足に続いて自動車整備士の不足が深刻化しています。

 

日本自動車整備振興会連合会が発表した平成28年度版「自動車整備白書」によると、約半数の整備事業所で整備士が不足しており、そのうち約1割が経営に支障をきたしていることがわかりました。

 

アベノミクス以降、輸出増により元気を取り戻したかのように見える自動車業界。しかし足元ではクルマを直す人が不足しており、現状が続けば、クルマ社会の根幹を揺るがしかねない事態に発展する可能性が出てきました。

 

 

目次

  1. 1 なぜ整備士数は毎年減少しているのか
  2. 1-1 約半数の整備場で整備士が不足
  3. 1-2 原因は若者のクルマ離れ?
  4. 2 整備士増加に向けた取り組み
  5. 2-1 仕事のやりがいを感じ取れる仕事に
  6. 2-2 ハイブリッド、電気自動車に対応できる整備士を!

 

1 なぜ整備士数は毎年減少しているのか

現在、自動車整備の関係に従事する従業員の数は55万人ほどと言われており、そのうち整備士は40万人とされます。
事業所を規模別に見ると、2〜5人が55%と半数を超え、6〜12人では22%となり、約8割が10人以下の中小零細企業であることがわかります。

 

・整備業界の現状

整備関係従業員数 約55万人(うち整備要員数:約40万人)
事業者数等 自動車分解整備事業者数 約7.4 万
認証工場数 約9.2 万
指定工場数 約3.0 万
従業員規模別事業者数 2〜5人 55%
6〜12 22%
13〜 23%
年間整備売上高 約5.5兆円

(参照:国土交通省「自動車整備士不足の現状と行政の取組」)

 

・グラフで見る従業員の規模別事業所割合

規模

(参照:国土交通省自動車局整備課 平成27年6月18日付)

 

 

1-1 約半数の整備場で整備士が不足

日本自動車整備振興会連合会がまとめた自動車整備白書によれば、整備士不足の現状のアンケート調査を実施した結果、約5割の整備事業場で整備士が不足していることがわかりました。さらに、約1割の事業場ですでに運営に支障が出ていることも明らかになっています。

 

・ 事業所別整備士不足の現状

  不足で支障あり 不足だが影響なし 不足なし 不明
専兼業 8.7% 31.2% 54.3% 5.8%
ディーラー 14.9% 48.3% 28.3% 8.5%
自家 14.8% 41.2% 31.0% 13.0%
全体 10.9% 37.0% 45.2% 6.9%

 

とくにディーラーでは「(整備士が)不足で支障あり」「不足だが影響なし」を合計すると、63.2%不足しており、ほかと比較しても最も高い不足率となります。

 

一方、専兼業では、54.3%が不足なしと応えていますが、1割近くがすでに不足で支障が出ていること応えました。

 

・求人活動状況

  採用できなかった 一部採用できたが不足 予定通り採用できた
専兼業 39.6% 17.4% 34.4%
ディーラー 8.9% 44.3% 43.4%
自家 26.2% 39.3% 31.0%
全体 23.5% 31.8% 38.8%

 

整備事業場における求人活動の調査結果では、半数以上が「一部採用できたが不足している」「そもそも採用できなかった」状態にあることがわかります。
とくに専兼業では、「採用できなかった」割合が39.6%と最も高く、「一部採用できたが不足している」と合わせると57%が人材を満足に確保できていません。

 

 

1-2 原因は若者のクルマ離れ?

整備士の数が全国的に足りていない背景には、人口減少、少子高齢化のほか、若者のクルマに対する関心が薄くなっていることも原因として指摘されます。

 

人口減少や高齢化は都市部よりも地方で進行しており、整備業界でも整備士の高齢化が問題となっていました。就職する人よりも定年退職で辞める人の数が多いため、整備士が不足。そのため、後継者が育たず、事業継承問題も顕著になってきました。

 

国交省によれば、特に、零細な認証専業者(整備要員数2~3人規 模)の内、約3割が後継者不足の状態にあるといいます。

 

さらに若者のクルマ離れ問題も深刻です。
全国自動車大学校・整備専門学校協会(JAMCA)によれば、自動車整備関連の大学校や専門学校への入学者数は、10年前と比較して半分以下に減少しています。

 

推移

(参照:国土交通省「自動車整備業を取り巻く現状と課題」 平成26年10月)

 

専門学校の入学者数は、平成15年の24万人から右肩下がりに減少しはじめ、平成21年にははじめて16万人を切りました。以降は、上昇し、平成24年には17.7万まで回復しました。

 

一方、JAMC入学者数は平成15年以降はずっと減少傾向にあり、平成24年時点で5.9万人にまで落ち込みました。

 

整備士を志す若者、またはクルマに興味を抱く若者が少なくなっていることを示す結果となっています。

 

と指摘します。

 

 

2 整備士増加に向けた取り組み

整備士の減少が続けば、クルマ社会である日本にとっては根幹を揺るがず事態に発展しかねず、問題解決に向けた早急な取り組みが必要とされます。そこで国土交通省は、自動車整備要員人材不足対策に関する勉強会を立ち上げ、整備士確保に向けた取り組みに着手しました。

 

 

2-1 仕事のやりがいを感じ取れる仕事に

平成26年に立ち上げられた勉強会で、現職整備士を対象に仕事のやりがいや、給与手当の満足度、休暇の満足度などのアンケート調査を行ったところ、以下のような結果になりました。

 

・仕事のやりがいについて(事業場規模別)

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仕事のやりがいについては、6〜10人規模の事業所で一番感じることができるようです。また、11人以上では「特に感じない」とする割合が最も多くなりました。

 

・給与、手当への満足度(事業場規模別)

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事業規模が大きくなるにつれて、給与への満足度が上昇しています。一方、不満を持つ人も増加しています。

 

・労働時間、休暇への満足度(事業場規模別)

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(参照:国土交通省 自動車局 整備課 平成27年6月18日付)

 

労働時間と休暇では、6〜10人規模の事業所で「不満がある」と回答する人の割合が最も多くなっています。5人以下では、「非常に満足している」と応えた人がもっとも少なくなりました。

 

整備士・メカニック専門の転職サイトを運営する株式会社ダイバージェンスは、整備士の現状について

 

「自動車整備士になる人が減少していますが、人手が減るに連れて一人あたりの業務量というのは増えてしまいます。 仕事は増えて忙しくなり、残業時間も増加しているというのに、給料は据え置きという会社がほとんどです。 また、車の修理は急を要することが多いため、休日も返上して遅くまで仕事しなければならないといった点もあります。そのような原因からも自動車整備士は待遇が悪いといわれるのです」(参照:ダイバージェンス「自動車整備士が不足している原因」

 

と語り、整備士の待遇改善を求めました。

 

国土交通省は、アンケート調査結果を受けて、高校生(両親を含む)に対する整備士PR活動、小中学生や親が自動車を身近に感じる環境の構築や、自動車整備士の魅力向上、女性整備士が活躍できる仕事の分業化、転職者、離職者、再雇用、大学中退者等の人材活用などを強化していく方針を掲げました。

 

 

2-2 ハイブリッド、電気自動車に対応できる整備士を!

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自動車のハイブリッド化、電気自動車化の流れを受けて自動車の安全を確保するため、今後の整備士にも新技術への対応が必要不可欠であると指摘されています。

 

現在、自動車業界では、EV※(電気自動車)開発競争が繰り広げられており、トヨタのプリウスPHVや日産リーフ、三菱自動車i-Mievなど多くの電気自動車が誕生してきました。一方、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンといった海外メーカーも電気自動車用の新ブランドの立ち上げを予定しているなど本格参入を予定しています。

 

国交省によれば電気自動車では、普通車よりも電子制御装置が多用化されており、専用のスキャンツールを使わなければ車両の状態を正確に把握することが困難とされています。つまり、今後の自動車整備ではスキャンツールは点検・整備の際には必須のアイテムとなり、その活用には高度な知識や技術が必要とされます。そこで自動車整備業界を挙げてスキャンツールの普及促進に取り組んでおり、今現在、普及率は約40%となっています。

 

このほか人工知能(AI)を使用した自動運転自動車や二酸化炭素を排出しない燃料電池自動車、電気自動車など自動車産業は新たな段階を迎えつつあります。整備士業界もこの目覚ましい技術発展に対応していくことが求められています。

 

また約300万人いると言われる未就労女性や60歳以上のシルバー人材の活用、男性整備士の雇用環境改善など、人材確保に向けた問題は山積しています。若者のクルマ離れが進んでいると嘆くだけでは問題は解決しません。

 

※ 電気自動車が電動モーターで車を駆動させるのに対して、ガソリン自動車はガソリンをエンジンで燃焼させ、車を駆動させるという違いがある。EVではアクセルペダルと連動し、電池から供給される電気エネルギーを調整してモーターの出力をコントロールする装置が備えられている。経産省によれば現在販売されている電気自動車の最高速度は、約100km以上で、航続距離は約90km~200kmとされている。EVは、Electric Vehicleの略。(参照:経済産業省「EVとは」)

 

 


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