全国で雇用や所得環境の改善が続く一方、消費や生産の動向は首都圏と地方でばらつきがあり、「稼ぐ力」に差が開いています。そこで政府は地域経済格差を縮小するため地方の平均所得向上の実現を盛り込んだ2016年版「まち・ひと・しごと創生総合戦略」※を策定しました。
目次
1 地域間の所得格差はどのくらい拡大している?
東京・大阪・名古屋などの大都市圏と地方ではどのくらいの格差あるのでしょうか。大和総研が公表している県民所得と地域間所得格差のデータによると、全体的にみれば地域間格差は戦前戦後を通じて縮小傾向であり、世間が抱く所得格差拡大のイメージとは異なるとしています。
ただし、全ての地域に当てまるわけではなく、例えば、東京都民の所得と比較すると、愛知県との格差は大幅に縮小した一方で、大阪府とは格差を拡大させています。また沖縄県については東京とほぼ一定の格差を維持しているとしました。
(▲変動係数はその数字が小さいほど地域間の所得格差が小さいことを意味する。参照:大和総研「経済構造分析レポート」)
レポートでは所得格差は拡大している地域と縮小している地域でばらつきがあり、格差解消に向けた取り組みは今後も必要だと指摘されています。
また、全体的に見た所得格差が縮小している原因については、企業所得の改善によるところが大きいが、家計所得は改善が進んでいないと分析しました。
※まち・ひと・しごと創生総合戦略とは、人口減少や地方衰退を食い止めるべく政府が策定した長期的な政策計画。
2 地方の所得を向上させるには
地方に仕事をつくり、若者が安心して働くことができるようにするため、政府は次のような施策を打ち出しました。
・地方対策
施策 | 現状 | 目標 |
---|---|---|
地方における若者雇用創出数の増加 | 9.8万人 | 2020年までの5年間で30万人 |
若い世代の正規雇用労働者等の割合の増加 | ・15~34歳の割合: 93.6 %(2015年) ・全ての世代の割合: 94.0%(2015年) |
2020年までに全ての世代と同水準 |
女性の就業率の改善 | 71.6%(2015年) | 2020年までに77% |
・若い世代の出産・育児対策
施策 | 現状 | 目標 |
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安心して結婚・妊娠・出産・子育てできる社会を達成していると考える人の割合の増加 | 19.4%(2013年度) | 40%以上 |
第1子出産前後の女性継続就業率の改善 | 53.1%(2015年) | 55%以上 |
夫婦子ども数予定(2.12)実績指標の改善 | 93%(2015年) | 95% |
男性の育児休業取得率の改善 | 2.65%(2015年) | 13 % |
3 男性の育休取得を増やすには
政府は男性の育児休業取得について、2020年までに13%に引き上げることを目標としました。男性の育児休業取得率は民間企業2.3%、国家公務員3.1%、地方公務員が1.5%で、ほとんど育児休業を取得できていない状況です。
一方、女性の育児休業取得率は民間企業86.6%、国家公務員98.7%、地方公務員93.2%(いずれも2014年度)となっています。(参照:内閣府男女共同参画局)
また、1週間に60時間以上働いている従業員は、男性で12.9%、女性では2.8%ほどといわれています。とくに子育て期にある30歳代及び40歳代の男性は、60時間以上の割合が、他に比べて高くなります。
政府は長時間労働をする従業員の割合を2020年までに男女平均で5%とする目標を掲げていますが、長時間化しやすい男性の労働環境に対する具体的な改善策は示されていません。
女性が活躍しやすい社会にするためにも、男性と女性の双方の労働環境に配慮した法整備や施策が求められます。