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行政によるスタートアップ支援の活用は会社設立や事業推進にどう影響するのか?

起業・会社設立後に事業を軌道に乗せ成長させていくまでには様々な問題が発生しますが、経営者や自社組織だけでは解決できないことも多いため、第3者による支援は重要です。特に行政によるスタートアップの支援はそれらの経営者等にとって頼もしい救いの手になり得ます。

 

今回の記事では、行政によるスタートアップ支援の活用が会社設立やその経営にどう影響するかについて解説します。国・自治体のスタートアップ支援の概要、活用するメリットのほか、経産省の出向起業、自治体のスタートアップ支援の特徴と支援事例、支援策を活用する際の注意点などを説明していきます。

 

起業・会社設立を考えている方、スタートアップとして行政の支援を望んでいる方、スタートアップ支援の有効な活用方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

1 行政のスタートアップ支援の概要と活用メリット

行政のスタートアップ支援の概要と活用メリット

 

最初にスタートアップの概念を確認し、これに関する国や地方自治体の支援制度の概要と利用するメリットについて説明しましょう。

 

 

1-1 スタートアップとは

ここでは起業やスタートアップの内容を確認していきます。

 

①起業とスタートアップの違い

個人が会社などの組織から独立して事業を開始する場合、一般的に「起業」、「開業」や「創業」という言葉が使用されます。また、日本では「スタートアップ」も起業や創業を意味する言葉として使用されることも少なくありません。

 

しかし、スタートアップは、通常「比較的新しいや革新性のあるビジネスで急成長を目指して市場開拓に取組んでいる企業」という意味で使用されます。スタートアップ(企業)は、元々米国のシリコンバレーで起業した企業に対して使われたもので、Google・Facebook・Appleなどがその代表格です。

 

彼らのようにイノベーションを起こしてビジネスモデルを確立し、急激な成長で莫大な利益を得られるような企業がスタートアップに該当します。しかし、スタートアップの定義については、上記のような認識があるものの、確固たる定義は存在しません。

 

そのため個人、企業、組織や行政などが以下のように定義して利用しているケースが多く見られます。

 

●経済産業省中国経済局の「平成30年度地方創生に向けたスタートアップ・エコシステム整備促進に関する調査事業報告」での定義(P3)

 

⇒「新しいビジネスモデルを考えて、新たな市場を開拓し、社会に新しい価値を提供したり、社会に貢献することによって事業の価値を短期間で飛躍的に高め、株式上場や事業売却を目指す企業や組織」

 

●愛知県

 

「新たなビジネスモデルを開発し起業した、創業から2、3年程度の企業」

 

●愛知県経済産業局スタートアップ推進課

 

「スタートアップとは、IoT、AIなどの最先端の技術を活用し、新しい革新的なビジネスモデルを用いて急成長を目指す起業」
*創業後5年未満又は創業年数によらず当該事業を開始してから5年未満の企業

 

以上のように革新性の高いビジネスモデルを考案して急成長を目指す企業で、起業してから日の浅い企業を指すことが多いですが、そうしたスタートアップを目指す起業家なども含まれることもあります。また、スタートアップの成長段階も以下のように区分されるケースが多いです。

 

「シードステージ」:創業前後の段階
「アーリーステージ」:アーリーアダプター等の初期の顧客を獲得し始めている段階
「ミドルステージ」:一定規模の顧客を獲得し成長軌道に乗り始めている段階
「レイターステージ」:事業モデルが確立し持続的な収益を確保している段階
*この後はIPO(証券市場への上場・株式公開)へと進む段階

 

民間や行政のスタートアップへの支援も起業前や各成長段階に合わせた様々なサービスが用意されいるため、スタートアップはその状況に合わせた支援サービスを選び受けることが重要になります。

 

なお、起業については、スタートアップを目指す起業とそれら以外とで区別されることがあります。たとえば、創業後事業の急成長を図り近い将来にIPOなどを目指す場合は「スタートアップを目指す起業」です。

 

個人が自分のやりたい仕事を自分の事業として行うが、大きな成長を直ぐに望まずにじっくり進めたい、というような創業は、スタートアップ起業と異なる起業ということになります。

 

こうした起業のタイプに合わせた行政の支援もあるため、目的や内容を確かめて活用することが重要です。

 

②起業やスタートアップの現状

行政による起業やスタートアップへの支援に関する取組は、起業等の状況によって変わってくるため、その現状を確認します。

 

1)起業の現状

 

2020年度版中小企業白書では「多様な起業の実態」が取上げられました。下図の第1-3-35図は、起業の希望者や起業の準備者、起業家の推移が示された資料です。この図によると、「起業希望者」、「起業準備者」、「起業家」の数は全て減少傾向であることが確認できます。

 

しかし、「起業家」の減少割合は、「起業希望者」と「起業準備者」の割合に比較して緩やかです。また、「起業準備者に対する起業家の割合」は、2007年から2017年にかけて、上昇傾向になっています。つまり、以下のような状況になっているのです。

 

・起業しようとする者の減少傾向より、実際の起業者の減少は緩い

 

・起業を志す者の減少が大きくても、準備にかかろうとした者が実際に起業するケースが増えている

 

従って、起業準備に入った者が何らかの影響により実際に起業へ結びつけられている可能性が考えられます。

 

2020年度版中小企業白書 第1-3-35図

 

第1-3-43図は、GEM調査*に基づいて「今後3年以内に、一人または複数で、自営業・個人事業を含む新しいビジネスを計画している」成人人口の割合(起業計画率)の推移が示された資料です。この図によると、足元で日本の起業計画率は上昇傾向が見られますが、海外の主要な国に比べ低い水準であることが確認できます。

 

*GEM(グローバル・アントレプレナーシップ・モニター)調査は、米国バブソン大学と英国ロンドン大学ビジネススクールの起業研究者達による「正確な起業活動の実態把握」「各国比較の追求」「起業の国家経済に及ぼす影響把握」を目指すプロジェクトチームが行う調査のことです。

 

また、開業率を国際比較しても日本のそれは他の先進諸国と比べ水準が低くなっています。従って、国としては起業を促進する政策に注力しなければならないことが理解できるはずです。

 

2020年度版中小企業白書 第1-3-43図

 

2)スタートアップの現状

 

Startup Rankingのサイト情報によると日本のスタートアップ数は584社で、世界で22位となっています。1位は米国の99,818社、2位がインドの10,881社、3位が英国の5,845です。スタートアップの定義により該当社数に差が生じますが、日本が決して高い水準にないことは理解できます。

 

こうしたことからも起業やスタートアップの育成のための支援が不可欠であると言えるはずです。

 

米国の調査会社による国際比較によると、2021年3月1日現在におけるユニコーン企業(時価総額10億ドル超の未公開企業)は、米国274社、中国123社、欧州67社で、わずかに日本は4社という状況です。つまり、国際的にみて日本は、近い将来に大規模なIPOを実現できそうな有望な企業が育ちにくい環境であることが窺えます。

 

これらの点からも行政によるスタートアップへの支援強化が求められていることが理解できるはずです。

 

 

1-2 国・自治体のスタートアップ支援の概要

行政のスタートアップ支援の主な特徴を紹介しましょう。

 

①国

これまでの国の一般的なスタートアップ支援は、起業の支援、起業後の企業の各成長段階に対する支援(創業、資金調達、人材確保、ビジネスマッチング等)が中心で、個別的・独立的に提供されるケースが多かったです。

 

なお、現在は新型コロナウイルス感染症に対応して、従来の中小企業等の定義では支援が受けられなかったスタートアップにも配慮し支援が実施されるケースが増えました。

 

一方、これまでと異なる以下のようなスタートアップ支援が始まっています。

 

●「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」

 

企業、都市や大学などの協力を得て、起業家教育やアクセラレータ機能の抜本的強化などを進め、起業家が直面する各種の制約を超越し、日本の潜在能力を開放する、スタートアップ・エコシステムの拠点を形成することを目的として、「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」が令和元年6月に国から発表されました。

 

エコシステムとは、ベンチャー企業や大企業、投資家、研究機関など、産学官の様々なプレイヤーが集積または連携することにより共存・共栄を図りつつ、先端産業の育成や経済成長の好循環を創出するようなビジネス環境のことです。

 

国の役割は、主に「スタートアップ・エコシステム拠点都市の形成」で、拠点都市を選定し支援することになります。各都市の自治体、大学、民間組織で形成されるコンソーシアム(協議会等)を中心として、公募でグローバル拠点都市3箇所程度、推進拠点都市数カ所を選定の上、集中支援することを計画したのです。

 

拠点都市への支援には、「スタートアップ支援パッケージ」「内閣府によるアクセラレーションプログラムの実施」「世界への情報発信、規制緩和の推進、民間サポーター支援の繋ぎ等支援」が用意されています。

 

●J-Startup

 

J-Startupはスタートアップ企業の育成支援プログラムの1つで、グローバルに活躍できるスタートアップの創出を目的とした国家プロジェクトです(2018年6月に立ち上げ)。

 

実績のあるベンチャーキャピタリストやアクセラレータ、大企業の新事業担当者等の外部有識者からの推薦に基づき、J-Startup企業が選定され、大企業やアクセラレータなどの「J-Startup Supporters」を含めて官民で集中支援が提供されます。

 

運営機関(事務局)は、経済産業省、日本貿易振興機構(JETRO)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)です。つまり、国を挙げてユニコーン企業となれるようなスタートアップ企業を育成しようとするのがJ-Startupということになります。

 

しかし、この制度は外部審査委員会による推薦に基づいてJ-Startupが選定されるため、一般的なスタートアップ支援よりも活用するのが難しいです。

 

②自治体

自治体のスタートアップ支援は、「今までの創業支援・中小企業等への支援」と、上記で紹介した「国のスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略等に基づく支援」とに大きく分かれます。

 

後者に関しては、グローバル拠点都市が4地域(東京、名古屋、大阪、福岡の各都市の近隣自治体のコンソーシアム)、推進拠点都市が4地域(札幌市等、仙台市等、広島県等、北九州市等)が決定されています。

 

これらの拠点都市では、国の支援を受けながらその地域の各種の課題やニーズなどを踏またスタートアップ支援が展開されることになるのです。こうした国の施策により地方自治体は、スタートアップの創出からビジネスモデルの確立、事業化・事業の成長促進、IPOへという成長ステージ全体に渡って一体的な支援が実施しやすくなります。

 

起業家やスタートアップにとっては、一般的な創業支援よりも一体的・継続的な支援が一定期間受けられるため、様々な課題をクリアし生存確率を高めIPOへと成長しやすくなるのです。

 

また、国家レベルのスタートアップ支援策とは関係なく、自治体独自の創業支援等も実施されています。各地域には中小企業やスタートアップなどを支援する「中小企業支援センター」や「創業支援センター」などが設置されており、様々な支援が提供されているのです。

 

ただし、地域独自の支援策の場合、補助金等や貸付金の資金調達、展示会やビジネスマッチング等での販売促進、製品や技術等の研究開発、などへの支援規模は相対的に小さくなっています。起業家やスタートアップにとっては活用しやすい反面、効果が限られる可能性は小さくないです。

 

 

1-3 行政のスタートアップ支援を受ける利点

行政のスタートアップ支援を活用すると、起業家やスタートアップにどのようなメリットが得られるか説明しましょう。

 

行政のスタートアップ支援を受ける利点

 

①国の場合

1)創業からIPOまでの一体的な支援

 

これまでのスタートアップ支援では、企業の各成長ステージで必要なサービスが一貫性や効率性の考慮なしに提供されるケースが多かったです。たとえば、複数の支援機関ごとに様々な支援メニューが提供されていたため、スタートアップにとっては効率が悪く利用しにくいケースもありました。

 

しかし、エコシスムのように周辺地域の支援関係者が集まり協力して体制を整えて、起業からIPOに至る各成長段階での支援を提供すれば、スタートアップは効率的・効果的な支援が受けられます。

 

彼らは相談先や支援メニュー等で迷わず、必要な時期に必要な支援を適切な支援者から受けられるようになるのです。

 

2)地域のニーズに合わせた支援

 

エコシステムでは各地域での支援テーマも重視されているため、起業家やスタートアップのニーズと各地域の支援テーマが一致すれば、自分の目的に合った幅広く手厚い支援が受けられるようになります。

 

たとえば、愛知県のコンソーシアムでは、地域の主力産業である自動車やロボット、航空宇宙などの産業構造の変革への対応を目的に、「Aichi-Startup戦略」(2018年)を策定しています。

 

つまり、愛知県はものづくりの強みをイノベーションに結び付けるエコシステムの形成を目指しているため、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)などに関連した事業を進めるスタートアップにとって有効な支援サービス(資金提供のみならず、技術支援・共同開発等)が受けられやすいのです。

 

3)ユニコーン企業への促進

 

エコシステムなどはユニコーン企業の輩出を目的の1つとしており、それに適した支援体制の整備と支援サービスが用意されているため、従来の施策よりも格段にスタートアップの成長が期待できます。

 

ユニコーン企業は短期間で急成長を遂げ、時価総額10億ドル以上という企業価値にまで発展するスタートアップです。このように短期間で大きく成長するには、自社の経営資源だけでは困難であり外部の支援が重要になります。

 

エコシステムなどはユニコーン企業を育成するプログラムとして機能するため、ユニコーン企業を目指すスタートアップとしては最適な支援サービスが受けられるのです。

 

②自治体の場合

1)利用のしやすさ

 

自治体独自の支援は内容的に国より見劣りするものの、利用要件が比較的低いため多くの起業家やスタートアップが受けやすい点が魅力です。

 

たとえば、多くの自治体では、低金利・無担保・無保証などの融資制度、融資に伴う利子負担の補助などの制度が設けられています。ほかにも創業塾・創業セミナーや個別相談など、起業家を育成するための支援策も豊富です。

 

税制優遇、ビジネスコンテスト、ビジネスマッチング、海外展開支援、人材確保支援、研究開発支援、など規模が小さいものの様々な支援サービスが用意されており、かつ利用しやすくなっています。

 

気軽に相談できて必要な情報提供なども受けられ、開業に向けた一定の資金調達が比較的容易であるため、創業がスムーズに進められます。大規模な事業を創業当初から展開するには支援の規模や程度は不十分ですが、小規模から始めるスタートアップには自治体独自の支援サービスは有効です。

 

2)地域課題に関連した起業の促進

 

自治体はその地域の現状や抱えている問題などを把握して、それらを解決するための創業や事業育成に力を入れています。そのため地域課題を解決する起業や事業展開などに対する支援が多く用意されており、それらの分野で活躍したいスタートアップには最適な事業環境となるのです。

 

地方自治体では、人口減少・高齢化、過疎地化、インフラ整備、地域産業の活性化、などの課題を抱えており、その解決に向けてスタートアップを活用する動きが見られるようになりました。

 

地方自治体は地域課題の解決を目的に、それらのスタートアップを支援するためのサービスを用意しているため、そのスタートアップは最適な環境で事業を推進できるのです。

 

3)地方でスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略の利用が可能

 

国のスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略では全国の8地域にグローバル拠点都市と推進拠点都市が設置されたため、その地域ならユニコーン企業を目指すスタートアップ起業も容易になります。

 

この戦略が推進されるまで、日本のスタートアップ・エコシステムは東京に一極集中していました。独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)のサイト情報によると、日本全体のスタートアップの資金調達額は2018年に3,878億円で、そのうち東京都所在のスタートアップの資金調達額が3,003億円で全体の77%を占めています。

 

また、経済産業省とジェトロ、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によるスタートアップ支援育成プログラム「J-Startup」に選定された141社のうち、本社所在地が東京都であるスタートアップが101社で全体の71.6%を占めているのです。

 

つまり、手厚いスタートアップ支援を受けるには東京都に会社設立して事業を行う必要がありました。しかし、スタートアップ・エコシステム拠点形成戦略により東京以外の地方においてもエコシステムが整備されつつあるため、地方にいながらユニコーン企業を目指せるようになっているのです。

 

 

2 国のスタートアップ支援の特徴

国のスタートアップ支援の特徴

 

ここでは国のタートアップ支援の内容を詳しく確認していきましょう。

 

 

2-1 スタートアップ・エコシステム形成に向けた支援パッケージ

令和2年8月にコロナ禍の影響を踏まえたスタートアップ・エコシステム形成に向けた支援パッケージが公表されました。

 

「世界に伍するスタートアップを支える支援体制の構築」を目的として、事業規模約1,200億円の「政府系スタートアップ支援機関の支援プラットフォーム」の構築や「官民ファンドによるリスクマネー供給の強化」などが目標とされています。

 

具体的な支援分野は、スタートアップの「創出」、「育成」、世界との「繋ぎ」の3つです。

 

具体的な支援分野

 

①スタートアップの創出

この分野では「アントレプレナーシップ(起業家精神)教育」と「スタートアップ創出支援」が主な目的になります。「我が国全体での裾野拡大に資するアントレ教育・支援のネットワーク・コミュニティ形成」と「成長性の高い有望な大学発ベンチャーを創出」を目的として支援が実施されるのです。

 

ウイズコロナやアフターコロナの時期に、「自ら社会の課題を発見し、周囲のリソースや環境の制限を越えて行動を起こし新たな価値を生み出していくアントレプレナーシップの醸成は社会全体で必須であり、そのために必要な学習や実践の機会を提供するアントレプレナーシップ教育を強力に推進」するとされています。

 

また、大学発ベンチャーの創出・成長に対応できる支援体制・環境整備も含めて一体的・重点的に支援できるように計画されました。具体的には以下のような支援事業があります。

 

1)EDGE-NEXT(次世代アントレプレナー育成事業)等による支援

 

アントレプレナーシップ教育は、「実践的な教育プログラム」や「知識・思考法の取得」などで、希望する全学生が起業家精神を習得できる環境が拠点都市の関連大学で整備されます。

 

2)START(大学発新産業創出プログラム)、SCORE(社会還元加速プログラム)等による支援

 

スタートアップ創出に向けた研究開発として、「先進的な研究開発」や「試作品開発」が支援対象となりました。

 

3)SCORE大学推進型等による支援

 

起業活動や人材育成のための環境整備として、「大学の支援体制」や「ITインフラ等」などの整備が進められます。

 

②スタートアップの「育成」

主要な支援策は、「政府による一気通貫した集中支援」「大企業とのオープンイノベーション促進」「大規模な成長資金の供給」の3つです。

 

1)「政府による一気通貫した集中支援」

 

この分野では下記のような支援策が各省庁で実施もしくは予定されています。

 

・厚生労働省の「医療系ベンチャー・トータルサポート事業「MEDISO」(医療系ベンチャー起業等からのあらゆる相談に対し、多様な専門家によりワンストップで支援)

 

・農林水産省の「林業イノベーション推進総合対策」(産学官や異分野領域がチームを組んで、林業の新技術の開発から普及に至る一体的な取組を推進)

 

・経済産業省の「ヘルスケア関連分野におけるワンストップ相談窓口(Healthcare Innovation Hub)」(ファンドや民間企業等に繋ぐワンストップ窓口)

 

・国土交通省の「建設技術研究開発助成制度」(大学や企業等の建設分野における先駆的研究開発を助成する競争的資金制度) など

 

今後の予定として、
・内閣府や関係省庁での「日本版SBIR制度 指定補助金等」(ICT、農林水産、環境等を始めとする各分野において、PoC(実証実験)/FS(事業可能性の検証)の初期段階から事業化までの連続的な支援を検討)

 

などが検討されています。

 

2)大企業とのオープンイノベーション促進

 

この分野では下記のような支援策が各省庁で実施されています。

 

・内閣府の「宇宙ビジネスアイデアコンテスト(S-Booster)」(国内外から幅広く斬新なアイデアを発掘し、資金調達に向けた事業化初期支援を実施)

 

・農林水産省の「知の集積と活用の場推進事業」(産学官が連携し、革新的な研究成果を生み出すオープンイノベーションの場の推進)

 

などです。

 

3)大規模な成長資金の供給

 

この分野では下記のような支援策が各省庁で実施されています。

 

・財務省の「日本政策投資銀行の特定投資業務」(新事業開拓や異分野連携等に取組む企業へ資本性資金を供給)

 

・文部科学省の「出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)(JSTの研究開発成果に基づく事業活動への出資、人的・技術的支援)

 

・経済産業省の「産業革新投資機構ベンチャーファンド」(長期・大規模投資を必要とするグロースステージおよび民間だけでは難しい分野への投資を実施)

 

などです。

 

③グローバルへ「繋がる」エコシステムを形成

主要な支援策は以下の1)~3)の3つになります。

 

1)グローバル連携の促進

 

この分野の主な支援策は以下の通りです。

 

・総務省の「異能vation」(ICT分野において奇想天外でアンビシャスな技術課題への挑戦を支援)

 

・経済産業省のグローバル起業家等育成プログラム(起業家候補等をシリコンバレー等に派遣し関係者との意見交換、事業プラン発表等を行うプログラムを実施)

 

などです。

 

2)ローカルなイノベーションネットワークの形成

 

この分野では以下のような支援策が実施されています。

 

・総務省の「起業家甲子園・起業家万博」(地域発ICTスタートアップの創出による地域課題の解決や我が国経済の活性化等を目的に、ビジネスプランコンテストを実施)

 

・経済産業省の「産学融合拠点創出事業」(広域な地域ブロックにおいて、複数大学と公的研究機関、企業、金融機関、地方自治体等によるネットワークを創設)

 

・農林水産省の「林業イノベーション推進総合対策」(ICT等の先進技術を活用した革新的技術の開発・導入に向けたマッチミーティングの開催やネットワークづくりを実施)

 

などです。

 

3)規制改革等による事業環境整備

 

この分野では以下のような支援策が実施されています。

 

・内閣府と経済産業省の「規制のサンドボックス制度」(革新的な技術やビジネスモデルの実用化の可能性を検証し、実証により得られたデータを用いて規制の見直しにつなげる制度)

 

・経済産業省の「グレーゾーン解消制度」(事業者が安心して新事業活動を行えるよう、具体的な事業計画に則して規制の解釈や適用の有無を確認できる制度)

 

などです。

 

 

2-2 J-Startupの支援策

同制度では、ベンチャーキャピタリスト、アクセラレータ、大企業のイノベーション担当などが推薦したスタートアップの中から外部審査員による審査を経てJ-Startup企業として選定されると以下のような支援が受けられます。

 

①政府からの支援

  • ・J-Startupロゴの使用(選定企業としてのブランド化)
  • ・ビジネスマッチングサイト「J-GoodTech」におけるマッチング支援
  • ・政府の海外ミッションへの参加(海外展開支援)
  • ・海外や国内の大規模イベントへの出展支援
  • ・開発助成などのファイナンス支援
  • ・大企業幹部、省庁等へのビジネスマッチング支援

 

などです。

 

②民間からの支援

  • ・オフィス・工場空きスペース・研修施設・ショールームなどの事業スペースの提供や料金の優遇
  • ・ロボット、製品・部品やインフラネットワークなどを使用する実証実験への協力(参加)
  • ・検証するための環境や解析機器の提供
  • ・アクセラレーションプログラム、モノづくり支援プログラムでの優遇
  • ・専門家やノウハウを有する人材による相談・助言
  • ・支援会社(自社)の顧客や関係会社等の紹介

 

などです。

 

 

2-3 一般的な国の支援策

中小企業等に対する支援策の中には、起業家やスタートアップが利用できる以下のような施策が多く用意されています。

 

●新事業支援施設(ビジネス・インキュベータ)による創業・ベンチャー支援

 

・概要
これは、対象者が創業や新製品・新技術の研究開発を行う場合に、中小企業基盤整備機構等が運営する新事業支援施設(ビジネス・インキュベータ)を低めの賃料で借りられるという支援です。

 

・対象者
オフィス・工場・研究室等を借りて、創業や新製品・新技術の研究開発等を予定している中小企業者や創業予定の個人など

 

●小規模事業者持続化補助金(一般型)

 

・概要
小規模事業者が経営計画を作成し、その計画に沿って行う販路開拓の取組等に対して補助が行われます。補助率:3分の2、補助上限額:50万円(単独申請)

 

・対象者
常時使用する従業員が20人(商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)の場合は5人)以下の法人や個人事業主

 

●創業支援貸付利率特例制度

 

・概要
これは、創業予定者等が借りる融資金の利率の引き下げによって(各貸付制度に規定する貸付利率から0.3%を控除した利率)その創業を支援する融資制度です。

 

・対象者
新規開業予定者又は新規開業後税務申告を2期終えていない者

 

●よろず支援拠点(中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業)

 

・概要
各地域の中小企業等への支援機関と連携しつつ中小企業・小規模事業者が有する経営課題に対して相談・助言・支援等を行うワンストップ相談窓口として、各都道府県に「よろず支援拠点」が設置されています。

 

・対象者
経営に関する様々な悩みを持つ中小企業・小規模事業者、NPO法人等の中小企業・小規模事業者に類する者や創業予定者

 

●中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)

 

・概要
(1)雇用創出措置助成分
中高年齢者(40歳以上)の者が、起業して事業運営のために必要となる従業員(中高年齢者等)の雇入れを行う場合に要した、雇用創出措置(募集・採用や教育訓練の実施)にかかる費用の一部が助成されます。

 

(2)生産性向上助成分
雇用創出措置助成分の助成金の支給を受けた後、一定期間経過後に生産性が向上できていると、生産性向上にかかる助成金が支給されます。

 

 

3 自治体のスタートアップ支援の特徴

自治体のスタートアップ支援の特徴

 

国のスタートアップ・エコシステムの拠点形成戦略の拠点都市としての支援策や自治体独自の支援策などを説明しましょう。

 

 

3-1 「拠点都市」の支援策

拠点都市の支援策を2つ簡単に紹介します。

 

①スタートアップ・エコシステム 東京コンソーシアム

東京コンソーシアムは、川崎市、横浜市、和光市、つくば市、茨城県などと連携してスタートアップ・エコシステムを形成し、グローバル拠点都市として選定されました。

 

スタートアップや支援者のVC・大企業等が集中して集積する東京都心部(渋谷、六本木・虎ノ門、大手町・丸の内、日本橋)をコアとして、ハブ&スポークの連携で研究開発拠点を有する各都市(川崎、横浜、和光、つくば)と連結した活動が推進されています。

 

また、東京大、慶応大、早稲田大など有力大学との連携による研究開発成果に基づく事業化促進、各自治体や事業者の連携に基づいたスタートアップの新技術・新サービスの実証フィールドへのコーディネート、「新しい日常」に対応できるDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進、などが進められているのです。

 

②大阪スタートアップ・エコシステムコンソーシアム

同コンソーシアムは、京都、ひょうご・神戸の各コンソーシアムと連携して「グローバル拠点都市」として選定されました。その取組内容を紹介します。

 

●京阪神の連携した取組

 

京阪神のバイオ・ヘルスケア・ライフサイエンス・ものづくりや情報通信の分野を中心として、都市の枠に囚われず各々の共通点と強み等の資源や支援メニューの相互利用、情報発信を進め、優れた製品・サービスをスピーディーかつ継続的に生み出せるエコシステムの構築が進められているのです。

 

また、スマートシティへの対応や大阪・関西万博の機会の活用に関しても京阪神が一体となって取組が進められています。たとえば、国際イノベーション会議「Hack Osaka」へ、京都・大阪・兵庫の民間企業や大学が参画し、成功事例の創出に取組んでいます。

 

●大阪の取組

 

同コンソーシアムは、人材、技術やアイデア、資金など、イノベーションを創出する資源が集積するうめきたエリアを深化させ、大企業、大学、行政などの連携を通じてグローバルに活躍できるスタートアップの輩出に注力しているのです。

 

たとえば、各種アクセラレーションプログラム、グローバルピッチイベント、人材育成・流動化、海外スタートアップの誘致、万博で活躍するスタートアップの創出支援、などが実施されます。

 

他の拠点都市に選定された都市や連携都市などのコンソーシアムにおいてもその地域のテーマに即した支援策が進められているのです。

 

 

3-2 自治体の支援策

自治体の支援策

 

国の法律に基づく支援策や自治体独自の支援策を紹介しましょう。

 

①改正産業競争力強化法に基づく支援策

平成30年7月9日に改正産業競争力強化法が施行され、従来から実施されてきた創業支援のほか、創業に対する普及啓発に関する取組への支援も行われるようになってきました。

 

ここでは産業競争力強化法に基づく創業支援の内容を簡単に説明します。

 

1)主な創業支援の取組

●知識習得
・創業支援事業への支援
⇒産業競争力強化法に基づき市区町村が創業支援等事業者と連携して策定する創業支援等事業計画を策定し国が認定する場合、その特定創業支援等事業の支援サービスを利用した創業者等は税制措置(登録免許税の減免)や日本政策金融公庫の融資制度での優遇措置(自己資本要件の撤廃)が受けられます。

 

●意識改革
・起業家教育など意識向上に向けた取組
⇒講師派遣事業、プログラム実施支援事業、ビジネスプランコンテストなどが実施されるほか、JVA(Japan Venture Awards)などの表彰制度もあります。

 

●資金調達
・中小機構ファンドの出資
⇒創業間もない企業への投資を目的としたファンドに対する中小機構からの出資です。スタートアップはそうしたファンドからの投資を受けやすくなります。

 

・日本政策金融公庫による創業者への融資制度
⇒創業者への3,000万円を限度とした無担保・無保証の貸付です。

 

・事業者向け補助金
⇒ものづくり補助金:中小企業・小規模事業者等が取組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等に対して補助が受けられます(上限1,000万円)

 

⇒小規模事業者持続化補助金:小規模事業者等が取組む販路開拓等の取組経費の一部の補助です。(上限50万円)※特定創業支援等事業による支援を受けた小規模事業者は上限100万円

 

・エンジェル税制
⇒創業間もない企業に個人が出資した場合の所得減税措置になります。また、令和2年度税制改正では、対象ベンチャー企業の要件緩和などが行われました。

 

・オープンイノベーション促進税制
⇒国内の事業会社または国内CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が、スタートアップとのオープンイノベーションを目的に、スタートアップの新規発行株式を一定額以上取得する場合に、その株式の取得価額の25%が所得控除される制度です。

 

②東京都の支援策

各自治体では上記の産業競争力強化法の創業支援のほか、その地域の実情に合わせた支援事業も展開していますが、ここでは東京都の創業・成長支援の内容を簡単に紹介しましょう。

 

●創業・起業に関する相談
以下のような機関で創業等の相談が受けられます。
・TOKYO創業ステーション/TOKYO創業ステーションTAMA
・東京開業ワンストップセンター
・東京圏雇用労働相談センター
・東京都企業立地相談センター

 

また、他の支援機関による相談も下記の場所で実施されています。
・東京ビジネスサポートプラザ(日本政策金融公庫)
・創業アシストプラザ(東京信用保証協会)

 

さらに起業相談チャットボットの「起業ライダーマモル」も提供されており便利です。

 

●ビジネスコンテスト
・TOKYO STARTUP GATEWAY
⇒このコンテストは、他のビジネスコンテストのように最初から精緻な事業計画を必要としない、参加しやすいスタートアップコンテストになります。15歳~39歳までの起業を目指す事業構想段階にある個人が対象で、創業資金、各種支援メニューの提供のほかメンターによるプランのブラッシュアップを受けることも可能です。

 

●インキュベーションオフィス
・東京コンテンツインキュベーションセンター(コンテンツ産業分野の創業予定者・創業から3年未満の法人・個人向)

 

・東京農工大学連携型起業家施設(中小企業基盤整備機構が東京農工大学と連携し、同大学の小金井キャンパ内に整備・運営する大学連携型インキュベーション施設)

 

・東京都中小企業振興公社インキュベーション施設(創業前または創業間もない中小企業向け)

 

などの施設があります。

 

●融資・助成制度
・クラウドファンディングを活用した資金調達支援
・女性・若者・シニア創業サポート事業
・東京都中小企業制度融資「創業」
・「新規開業資金」などの各種開業資金融資(日本政策金融公庫)
・創業助成金

 

●創業・成長支援プログラム
・青山スタートアップアクセラレーションセンター
⇒創業予定者や創業間もないスタートアップ企業を対象として、アクセラレータによる毎週のメンタリング、メンターからの支援、サポーターによるツール提供、などが行われています。

 

・インキュベーションHUB推進プロジェクト
⇒これは、起業者等への支援能力・ノウハウを有する複数のインキュベータで構成される連携体(=インキュベーションHUB)が、創業予定者の発掘・育成から成長促進までの支援を一体的に推進するための創業・成長支援施策です。

 

・東京都スタートアップ実証実験促進事業「PoC Ground Tokyo」
⇒同事業は、スタートアップ企業の実証実験に関する費用(1社あたり1,000万円程度が上限)や、実証の場所や機会の提供に協力してくれる企業とのマッチング等の支援です。スタートアップが同事業で採択されれば、実証実験を通じたて新事業の実現に加え、急速、かつ大きく成長することが期待できます。

 

③支援事例

自治体がどのような支援策を実際に提供しているか、中小企業庁創業・新事業促進課の「創業支援等事業計画施策事例集」(平成31年3月に公表)から紹介しましょう。

 

1)青森市の「産学金官連携による起業・創業支援」

 

●創業支援/創業機運醸成事業メニュー
・これまでの各支援機関による相談窓口や創業セミナー等のほかに、平成30年度から、
A 起業マインドの醸成のための「あおもりスタートアップ支援セミナー」を毎月開催する
B 金融機関との共催で「地域クラウド交流会」を開催する

 

●取組のポイント
・青森商工会議所と「スタートアップの推進に関する連携協定」を結び、同所によって設置されたスタートアップの促進に向けた交流の場「AOMORI STARTUP CENTER」へ市の起業・創業に関する相談窓口(あおもり地域ビジネス交流センター)を移転させ、創業希望者等を支援する

 

・市内の6大学等と連携し、学生又は学生グループが独自技術、アイデア、こだわり等に基づくビジネスアイデアを発表し、市として表彰する「学生ビジネスアイデアコンテスト」を開催する

 

・市で独自の助成金制度を創設し、市内の金融機関と連携して中小企業の新事業展開、起業・創業にかかる初期投資などの経費を支援する。また、同助成金の交付決定者を「青森市新ビジネスチャレンジャー」として認定する

 

2)石川県七尾市の「地域の創業支援事業者と一体的に連携した『ななお創業応援カルテット*』」

 

*七尾商工会議所、能登鹿北商工会、のと共栄信用金庫、日本政策金融公庫、七尾市の5機関が業務連携して、創業を目指す人を一体的となって応援

 

●創業支援/創業機運醸成事業メニュー
・機運醸成から事業のフォローアップまで、ワンストップで対応
・企画展示・創業セミナー(機運を醸成)
・相談窓口設置(5機関に設置)(七尾市産業振興課、七尾商工会議所等)
・創業塾・移住者向け創業塾(経営の基礎から事業計画作成までを10回で習得)
・専門家派遣(創業計画のブラッシュアップ、創業後のフォローアップ)
・創業者と創業希望者の交流会(異業種との連携・創業者同士の連携)

 

●取組のポイント
・毎月1回、5機関の担当者が集まる連絡会を開き創業者や相談者の状況について情報共有する。5機関の視点から課題解決に向けた支援策を立案して実行する

 

・石川県よろず支援拠点など外部支援機関とも連携し、より専門的な支援策も用意する

 

・移住者向け支援パッケージも提供

 

・補助金支援、資金調達支援(創業に関する国・県・市の補助金や金融機関での資金調達に関する相談対応)

 

3)大分県の「創業から発展に至るまでの継続支援」

 

●創業支援/創業機運醸成事業メニュー
・女性起業家創出促進事業
⇒県全体での女性起業家ネットワークを作り女性起業家同士や創業希望者との交流を促進する

 

⇒女性目線のビジネス創出を促すビジネスアイデアコンテストを開催する

 

・留学生スタートアップ支援事業
⇒外国人留学生を対象としたビジネスプランのブラッシュアップやマッチングイベントを通じ、出資が受けられる機会を提供するほか、「経営・管理ビザ」の取得要件である資金調達の実現をサポートする

 

・おおいたアクセラレーションプログラム(湯けむりアクセラレーションプログラム)
⇒高い目標を掲げる起業家を対象として総合的かつ集中的なハンズオン支援(専門家派遣による支援)を6カ月程度実施する。また、県内外の先輩経営者(メンター)等により販路開拓や資金調達を支援する

 

●取組のポイント
・ハードルを低くし、気軽な参加を促進
⇒孤独感、キャリア不足、家事・育児と事業の両立などの課題に向けて「想いをカタチに」をスローガンに、支援を行う。事業に賛同する県内のサポーター企業の協力等により実現を図る

 

・おおいたの宝(人口あたりの留学生数全国上位)を活かす創業支援
⇒マッチングイベントに、大分に縁のある投資家等を集めて投資を促すほか創業の実現に向けての助言をもらう

 

・マンツーマンによる的確な支援で成長を促進
⇒ノウハウ・経験のある外部の専門家による集中的なハンズオン支援を中心として、外部メンターも有効に活用し成長を加速させるほか、成長支援のエコシステム形成も目指す

 

 

4 出向起業と国の支援

出向起業と国の支援

 

出向(出向元企業との雇用契約が維持された状態で従業員が別の企業へ異動すること)の制度を活用して所属企業以外の企業で新規事業を開始するという「出向起業」が、新しい起業の形態として注目されています。ここでは出向起業の特徴やそれに対する国の支援を紹介しましょう。

 

 

4-1 出向起業とは

 

①出向起業の概要

一般社団法人環境共創イニシアチブが作成した「出向起業の手引き」によると、出向起業は以下のように定義されています。

 

出向起業とは、大企業等の人材が、所属企業を辞職することなく外部VCらの資金調達や個人資産の投下によって起業し、起業したスタートアップに自ら出向・研修派遣等を通じてフルタイムで新規事業を開発すること

 

また、以上の内容に加えて、以下のような特徴も見られます。

 

・出向者は出向元企業での通常業務と切り離された新規事業の創造にかかる業務に従事する

 

・新たに設立された会社へ出向等により従事する出向者(経営者)には、一定期間後の措置として、そのまま独立する、所属企業へ戻る(出向元企業に買い戻してもらう)、などの選択肢が設定されている

 

②出向起業のメリット

出向起業には出向社員と出向元企業の両方にメリットがあります。

 

1)出向社員

 

・リスクを抑えて新規事業の創出にフルタイムで挑戦できる
⇒出向起業の場合、会社を退職して独立する起業と異なり、所属企業での収入や福利厚生等が確保されるため、起業による失敗というリスクを伴わずにやりたい新事業開発などに挑戦できます。

 

⇒出向元企業の通常業務から離れて制約を受けずに新事業創造に従事できるため、やりたい方法でスピード感をもって取組むことが可能です。

 

・出向起業社員の能力向上に繋がる
⇒出向元企業での従来の事業と異なる業務に従事できるため、新しい知識・スキル・ノウハウ・思考などが習得しやすくなります。対人能力や経営能力の習得・向上などにも繋がるでしょう。

 

2)所属元企業

 

・リスクなしに新規事業を創出できる
⇒自社としてはリスクが高く進めにくい新規事業案件でも、外部資本を活用して事業化できるため、リスクを大幅に低減してその新規事業に挑戦できます。

 

⇒有能でやる気のある社員の離職やその彼らのナレッジ(知財・ビジネスモデル等)の流出を防止しつつ新規事業の創出が可能です。

 

・人材育成
⇒出向起業を通じて、社員はスタートアップの起業や経営に従事することになります。その結果、彼らは経営や新規事業開発のノウハウなどを習得できるため、自社の幹部育成にも役立ちます。

 

・会社のPR
⇒出向起業は社員にとっての新しい働き方の1つとして注目されつつあるため、この制度の導入が人材採用において自社の価値を高めます。つまり、出向起業は新卒者等への訴求に有効です。

 

・社員モチベーションの向上
⇒新規事業開発や独立に興味を抱く社員にとって、出向起業の制度は彼らのやる気を高めるほか、他の社員には起業家意識やチャレンジ精神などの高揚が期待できます。出向起業は組織の活性化に有効です。

 

 

4-2 出向起業への国の支援

経済産業省は、新規事業の創出を促すための支援として、大企業等の人材の起業を支援する「出向起業等創出支援事業」を行っています。

 

①出向起業等創出支援事業

本事業は、経済産業省の「大企業人材等新規事業創造支援事業費補助金」に基づいて、出向起業により新規事業開発を行う場合に、その出向起業者に事業開発活動費用(プロトタイプ開発、実証実験等)の一部を補助する支援策です。

 

●支援事業を受ける流れ
1)出向元大企業等が新規事業開発等の事業化案を決定
2)事業化案の提案者が外部資金を活用して事業化に向けたスタートアップを設立の上、出向(社長等に就任)
3)出向起業等創出支援事業の公募に当該スタートアップが応募
4)審査により採択

 

●出向起業の条件
条件は以下の3つになります。

 

1)所属元の企業以外の資本(外部VCや個人等)を80%以上活用して会社を設立する(起業するスタートアップの株式のうち、当該出向者の出向元企業の株式保有率が20%未満であること)

 

2)会社を設立した社員が自ら出向(出向、研修派遣、一時的辞職)してフルタイムで経営者として従事する

 

3)一定期間経過後の出口プランとして、独立、帰任(買い戻し)、などの選択肢がある

 

●補助の内容
・補助率等:補助対象経費の1/2、上限500万円~1,000万円
*出向者の人件費は、原則出向元企業の負担

 

・補助対象:試作、PoC(アイデアの実用化)にかかる外注費・委託費・材料費等

 

 

4-3 出向起業等創出支援事業の採択案件

令和3年度予算「大企業人材等新規事業創造支援事業費補助金」(出向起業スタートアップ補助金)の一次公募による採択事業者が決定されました(うち新規案件は下表の9事業)。

 

・新規に採択された事業

 

採択事業 出向元企業名
株式会社EMOSHARE 南海電気鉄道株式会社
株式会社Every Buddy 南海電気鉄道株式会社
サイトロニクス株式会社 株式会社東芝
ターンザタイド株式会社 静岡銀行
Blue Farm株式会社 コムシスホールディングス株式会社
Life Ship株式会社 パーソルイノベーション株式会社
株式会社リアコネ 某日用品メーカー
株式会社LAWN 南海電気鉄道株式会社
株式会社リバース 神姫バス株式会

 

 

5 行政のスタートアップ支援を活用する際の注意点

行政のスタートアップ支援を活用する際の注意点

 

最後に国等のスタートアップ支援を活用する際の特に注意しておきたい点を示しておきます。

 

 

5-1 支援策利用の可能性と利用までの時間

行政のスタートアップ支援は、申請・応募すれば必ず受けられるというものではありません。また、申請等が採択されても給付金などの支援が実際に受けられるまでに一定の時間が必要となる点も注意しておきましょう。

 

国や自治体の各スタートアップ支援は対象者や利用要件などが異なり、実際に支援を受けるのが難しいケースもあります。また、支援内容の良い人気の高い支援策などは申請・応募が多く、採択される可能性がかなり低くなることも珍しくないです。

 

加えて支援策の多くは、募集期間、募集回数、予算などが決まっていて、それらの制限を超えれば募集は終了となるため、早めに申請・応募することが重要になります。

 

また、お金に関する支援の場合などでは、給付が後払いの形式になることが多いため、スタートアップが必要とする時期に給付を受けるのは簡単ではありません。つまり、お金の支援策については欲しいタイミングで給付が受けられない可能性が大きいため、その点を踏まえた申請の準備を進めていく必要があります。

 

 

5-2 一般の創業支援等とスタートアップ支援を区別した利用

スタートアップが比較的新しいビジネスモデルで急成長を目指す企業とされる場合、スタートアップ支援は従来の創業支援等と区別され提供されるケースも多いです。しかし、各自治体の支援策によってその点が明確になっていないこともあるため内容を事前に確認して利用しましょう。

 

たとえば、スタートアップ支援という名称がつく支援策であっても、一般的な事業を行う個人事業主や中小企業などが対象となっていて、従来の創業支援や中小企業支援とあまり変わらない内容の支援も見られます。

 

こうした従来型の支援策も役に立ちますが、創業からIPOへと急成長を遂げるためにはそれらの全過程で切り目のない継続性・一貫性のある支援が重要です。そのため場当たり的な従来型の支援策の場合、スタートアップへの支援として不十分になりかねないのです。

 

創業相談、アクセラレータプログラムの提供、インキュベーション施設等の提供・紹介、審査員・来場者にVC、大企業や業務提携の候補先等がいるビジネスコンテストの開催、規模が大きくスタートアップに適した展示会やマッチングイベントの開催、などがスタートアップには必要ですが、自治体によってその内容や規模が異なります。

 

自治体の支援策が、スタートアップの求めるレベルのメニューとなっているか、十分な量や規模が提供されているか、などを確認の上その利用を検討するべきです。

 

 

5-3 スタートアップ・エコシステムの活用

国や地方自治体では、スタートアップが創業からIPOまで短期間で急成長できるための支援環境を構築することに注力しているため、スタートアップとして成長したい起業家や事業者はその仕組みを積極的に活用するべきです。

 

個人が会社設立して創業し短期間で急成長を遂げてIPOが可能な状態にまで発展するためには、様々な経営課題を解決していかねばなりません。人・モノ・金・情報(技術・ノウハウ等)などの経営資源を確保してビジネスモデルを確立した上でライバルに勝ち、顧客や販路を拡大させていく必要があります。

 

こうした課題には各成長ステージで違った内容やレベルのものが存在し、自社の成長を阻む要因となりますが、外部からの適切な支援をタイムリーに受けられるほどその障害を乗り越えることが可能となるのです。

 

スタートアップ・エコシステムは、国や自治体だけでなく、関係する公的支援機関、地域の金融機関、大学等の教育機関、研究機関や大企業などが連携して一体的にスタートアップを支援するため、スタートアップが各ステージで抱える課題の解決に役立ちます。

 

そのためエコシステムが地域に整備されていると、スタートアップは創業の相談、創業資金の助成、事業計画の策定支援、販売先や仕入先等の紹介、人材確保支援、IPO対策支援、などを成長段階に応じた適切な支援が適時に受けやすくなります。

 

つまり、エコシステムの活用がスタートアップを成功に導いてくれるため、それを使わない手はないはずです。

 

 

5-4 地域の支援テーマに合わせた活用

各地域のエコシステムや各自治体ではその地域の強みや特徴に関連した、また地域の課題解決に関連したテーマを設けてスタートアップを支援するケースが見られます。そのためスタートアップの事業が、支援側のテーマ・目的と合致しているとより自社にマッチした支援が受けられるのです。

 

各地域の抱える課題は異なりますが、地方においては下記のような点が課題として挙げられます。

 

  • 高齢者や障害者等への支援
  • 定住・移住者の創出
  • 観光振興
  • 地域雇用の創出
  • 空き家・遊休地の活用
  • 環境対策
  • 特定の鉱工業・農林水産業の振興

 

たとえば、愛知県の地域課題は、「生活の安心・安全、生活の利便性向上、子育て支援、観光・まちづくり推進、そのほか地域の魅力向上、環境・エネルギー、健康・医療」です。

 

そして、愛知県はこれらの課題をITや新しい技術等を活用して新市場の開拓や高成長を目指すスタートアップで解決しようと考え彼らを支援しています。事業場所の地域における行政のスタートアップ支援のテーマ・目的がスタートアップの事業とマッチしていれば、自社に適した支援メニューが活用しやすくなるのです。

 

加えて、自分のやりたい仕事で地域社会の課題解決にも貢献できるため、自己実現の高い創業や経営が可能となるでしょう。


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