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将来の農業を救うのは人工知能だ

(出典:Robohub)
(出典:Robohub)

日本全体で高齢化が進行する中、もっとも進行が早いと言われる農業界。農業関係者の平均年齢は67歳を超え、後継者を探す余裕もないほど労働力不足に悩んでいるといいます。
そこで注目されているのがAI(人工知能)やIT技術を活用した農業改革、通称「AI農業」です。AIを駆使することで人手を減らし、農作業を可能な限りオートメーション化(自動化)しようとする取り組みです。果たして日本農業は明るい未来を切り開くことができるのでしょうか。

 

 

目次

  1. 1 農業の現状をみる
  2. 1-1 農業所得は半分以下に
  3. 1-2 日本の農業は技術は高いが、経験則が多い
  4. 2 AIの進化に農業の未来が託された
  5. 2-1 困難と言われていた経験則のマニュアル化に成功
  6. 2-2 AI農業のメリットは生産の効率化・省力化
  7. 3 スマートアグリの活用事例
  8. 3-1 富士通が提供するクラウド農業
  9. 3-2 AIが自動でキュウリを等級別に仕分け
  10. 3-3 新人でもプロの技を短期で取得

 

1 農業の現状を見る

全国の農業生産額はピーク時の1990年頃から年々減少しています。1戸当たりでみても、農業所得は大きく減少しており、農業経営は非常に厳しい状況となっています。

 

 

1-1 農業所得は半分以下に

1992年に4兆9,309億円だった農業所得は、2013年では2兆9,412億円となりおよそ40%も減少しました。

 

また、自営農業で主として農業に従事する農業従事者の平均年齢は2015年に67.1歳となり、高齢化が進展している状況がうかがえます。

 

年齢

(参照:平成27年 農林水産省「食料産業局知的財産課」)

 

 

1-2 日本の農業は技術は高いが、経験則が多い

農林水産省によれば日本の農業は、世界的に見ても相当に高いレベルの技術が広く普及しているとされます。高品質の農産物が比較的低廉な価格で供給されており、それが日本農業の強みのひとつであると指摘します。

 

しかし、そうした「匠」と呼ばれるような熟練技術は長年に渡る経験則から体得できるものがほとんど。農業は毎年異なる気象条件の中で、播種(はしゅ)、施肥(せひ)、防除(ぼうじょ)、収穫※をベストのタイミングで行う必要があり、マニュアル通りに生産しても、農家によって収量・品質に大きな差があります。

 

さらに豪雪の翌年は豊作、雷が多いと豊作などの経験則も地域ごとに異なるケースも多く、未経験で農業を始める若者に熟練者の経験則を継承するのは簡単なことではありません。

 

※ 播種=種まきすること。施肥=栽培する植物に肥料を与えること、防除=病害虫など駆除・予防すること。

 

 

2 AIの進化に農業の未来が託された

近年の情報科学等の発達により、これまでマニュアル化が困難だった先人の「経験」や「勘」に基づく様々なノウハウなどの経験則をデータなどの「形式知」に置き換え、技術の継承に役立てようとする取り組みがさまざまな産業で進められています。

 

農業でもこの取り組みは進められており、AI(アグリ・インフォマティクス)農業が注目されています。

 

2-1 困難と言われていた経験則のマニュアル化に成功

AI農業におけるAIは人工知能のArtificial Intelligence(アーティフィカル・インテリジェンス)ではなく、農業情報科学のAgri Informatics(=アグリ・インフォマティクス)を意味します。急速に失われつつある篤農家※(とくのうか)の経験則、暗黙知を、ICT技術や人工知能を用いて形式知化し、他の農業者や新規参入者等に継承していく新しい農業になります。

 

近年、情報デバイスやストレージが著しく発達したことで多数の農業者が作物の状態や栽培環境などさまざまな条件下で行った農作業とその結果の因果関係をリアルタイムで記録しデータ化することが可能となりました。

 

AI農業

 

さらにAIが原因と結果の因果関係を説明できなくても、結果として最適な行動を選択することが可能となりました。こうした技術は、小売店における商品レイアウトの最適化、クレジットカードの不正利用の検出など、すでにさまざまな分野での産業応用がすでに始まっています。(参照:農林水産省「AI農業の展開について」)

 

※ 篤農家とは一般農家よりも農業に関する研究に長け、専門的な知識を有する農業化のこと。

 

 

2-2 AI農業のメリットは生産の効率化・省力化

AI農業には農業を営むうえで次のようなメリットがあります。

 

生産面 ・ 生産の効率化、省力化、低コスト化 作業のより合理化されることで生産性が向上し、正確な栽培管理による品質の向上が期待できる。また作業の自動化、資材の効率的な利用による低コスト化が可能となり、農業所得の改善につながる 。
経営面 ・ 経営や業務運営の効率化、高度化 一般農家が不得意とする経営内容の把握、有利な条件での取引・販売をAIに任せることができる。さらに受発注をはじめとする事務処理、労務管理、顧客・販売管理の合理化等により、農業経営の効率化、高度化も可能。農業経営者は本来の業務に集中できるようになる。
・ トレーサビリティの確保 生産履歴情報を記録することでトレーサビリティ※の導入やGAPへの対応が可能となり、食中毒など健康に影響を与える事故等が発生したさいに、問題のある食品がどこから来たのかを調べることができる。商品の信頼性向上につながる。
育成面 ・ ノウハウのマニュアル化・収益化 農家の匠の技をマニュアル化して誰でも利用可能なものに変える。さらにノウハウの提供で利益を得ることをより容易にする 。
・ 人材の育成 後継者、新規就農者、雇用者に効率よく技術や経営のノウハウを伝えることが可能となり、人材育成が容易となる。

(参照:平成27年 農林水産省「食料産業局知的財産課」)

 

 

3 スマートアグリの活用事例

スマートアグリとも呼ばれるAI農業を実際に導入している会社や農家をご紹介します。

 

 

3-1 富士通が提供するクラウド農業

コンピュータやIT分野で有名な富士通株式会社が提供するサービスは、クラウドを利用した農業経営の効率化です。

 

富士通は自社の沼津工場内にて、露地栽培とハウス栽培からなる「Akisai農場」を実践開始。「Akisai農場」は、ハウス内に設置されたセンサーが情報収集し、機器の制御を行うハードウェアにより温室とクラウドを連携されます。そしてクラウドに蓄積されたさまざまなハウス栽培向けデータを利活用することで栽培技術の向上を図ります。

 

また、生産現場でのICT活用を起点として生産者・流通・地域・消費者をバリューチェーン※でつなぐサービスも展開。露地栽培、施設栽培、畜産をカバーし、生産から経営・販売まで企業的農業経営を支援しています。

 

img_agri01

(参照:FUJITSU「食・農クラウド Akisai(秋彩)」)

 

※ バリューチェーンとは、製品が消費者に届くまでの業務活動をプロセスごとに分類し、価値(バリュー)を付与し、事業戦略の効率化や改善策を探ること。

 

 

3-2 AIが自動でキュウリを等級別に仕分け

グーグル

(出典:Google Cloud Platform Japan 公式ブログ

 

静岡県でキュウリ栽培を営む一般の農家が、グーグルの機械学習ソフト「TensorFlow」を利用してキュウリを等級ごとに自動で仕分ける装置を開発したと話題になっています。

 

開発を手がけたのは静岡県でキュウリ栽培農家を営む小池誠さん。もともと自動車部品のメーカーで働いていたものの、実家の農業を手伝うために退職。キュウリを仕分ける手間が思った以上に煩雑だったため、自動で仕分ける方法はないかと思い、開発に至ったそうです。

 

機械学習ソフト「TensorFlow」は人の目では識別できないレベルの画像認識をすることが可能で、これをキュウリの仕分けに応用。Web カメラによって撮影したキュウリ画像を「TensorFlow」で動作する認識エンジンに送り、オリジナルで開発したネートワークが画像を認識して識別します。

 

仕分け

(参照:グーグル・クラウド・プラットフォーム

 

 

3-3 新人でもプロの技を短期で取得

カンキツ産地として有名な福岡県八女市のJAふくおか八女では、被覆資材(マルチ)と点滴灌水(ドリップ)を組み合わせた栽培法を2012年から導入しています。

 

熟練農家の視点を記録するアイカメラや、動きを捕捉する位置情報・動作センサー等のICTを活用して、長年の経験則からでしか身につけられないノウハウをデータ化して蓄積。それをタブレットなどの端末で参照して学習することで、未経験者でも短期間で熟練農家並みの高レベルの栽培技術を身につけることができます。(参照:平成27年 農林水産省「食料産業局知的財産課」)

 

福岡

(▲タブレットを使用して新規就農者が栽培技術のポイントを学習)

 

今後10年以内の大幅な世代交代が避けられない日本の農業は、熟練技術の次世代への伝承が円滑に進まないと「高品質」「安全」をはじめとする日本の「強み」が失われるおそれがあります。このためAI農業の技術は、日本農業の将来の発展にとってのキーテクノロジーになると期待されると農林水産省は指摘します。

 

 


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