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決算期はいつするのがベスト?正しい決算月の決め方とは

決算期をいつにするか?という決定は、単にいつから始まりいつに終わるという期間だけの問題ではなく、企業の意思決定プロセスや資金繰り等に大きく影響するため、企業にとって重要な経営上の課題となります。そのため、いつにしても大して変わらないというものではなく、それぞれの企業のビジネス形態を考慮しながら、決算期の違いによるメリットデメリットを慎重に検討していく必要があります。

 

そこで本記事では、これから新規に会社を立ち上げる方や既に会社を経営されている方など、決算期をいつにすればよいか?について興味を持たれている方に向け、実務上の様々な事例を交えながら説明していきます。

 

 

1 そもそも決算期とは?

決算期をいつにすればよいか?という説明に入る前に、そもそも決算期とは何かについて規則や事例を交えながら説明します。

 

決算期と聞くと、4月1日から始まり、3月31日で終わるというイメージを持たれるかもしれません。このような期間の決算期を一般に3月期決算といいます。確かに日本の一般的な企業の決算期は、4月1日に始まり3月31日に終わる期である3月期決算を採用している企業が多数を占めています。例えばトヨタやソニーといった日本を代表する大企業も3月期決算ですし、中小企業を含めても日本においては3月期決算が多数を占めています。

 

 

 

1-1 決算月は自由に決めることができる

 

そのため、企業の決算期は4月1日~3月31日にしなくてはいけないと思われている方も多いのですが、日本においては決算期をいつにするか法令による規制はなく、各企業が好きな月日を選択して構いません。ただし1年を超える決算期にすることはできず、1年を超えない範囲であれば各企業が自由に決算期を決定できます。例えば2年間をひとつの期とすることはできません。

 

なお、日本においては3月期決算を採用する会社が多数と述べましたが、実際には3月期決算以外を採用している企業もたくさんあります。例えばユニクロを展開するファーストリテイリングは、9月1日から始まり、8月31日に終わる8月期決算です。セブンイレブンを展開するセブン&アイ・ホールディングスは3月1日から始まり、2月28日に終わる2月期決算です。また月だけではなく、4月15日から始まり、4月14日に終わるような、好きな日を決算日に決定することもできます。珍しい事例では、家具のニトリを展開するニトリホールディングスは、2月21日から始まり、2月20日に終わる2月期決算です。

 

このように、3月期決算を採用する企業が多数派ではあるものの、日本では決算期をいつにするか法令による規制はなく、1年を超えない範囲であれば、企業の好きな月日に決定することができます。なお、企業の決算期について知りたい場合は、市販されている会社四季報や、各企業のホームページに掲載されている有価証券報告書などで簡単に調べることができます。企業の業種により様々な決算期があるため、自社の類似起業など興味のある企業の決算期について調べてみるのも面白いかもしれません。

 

 

 

1-2 決めるうえでの注意点

注意したいのは、前述したように日本では決算期の規制はないものの、決算期についての規制は国により異なりますので、海外法人の場合は現地の規則に従う必要があるという点です。例えば中国では、法定決算書については決算期を自由に決定することはできず、1月1日から始まり12月31日に終わる12月決算が法令で規定されています。このように国により規制は異なるため、海外法人の決算期の決定については、現地法令に詳しい公認会計士や税理士など専門家への相談をお勧めします。


では、日本において各企業が好きな月日で決算期タイミングを決定できるのであれば、決算期をいつにすればよいのでしょうか?以下で詳細を説明します。

 

 

2 決算期をいつにすればよいか?

では日本において企業が自由に決算期を決定できるのであれば、決算期をいつにするのがよいでしょうか?結論から申しますと、一概に何月何日がよいと言えず、その企業のビジネス形態により、最適な決算期は異なります。どのようなビジネスをしているのか?繁忙期はいつなのか?企業の財務状態はどうなっているか?日本だけでのビジネスか、それとも海外にも子会社を作り、グローバルにビジネスを展開していきたいのか?等、それぞれの企業の置かれた状況により異なります。

 

そこで代表的なケース別に、決算期をいつにすればよいかポイントを以下で説明していきます。


・決算月を決めるポイント

1 繁忙期を避け、閑散期に合わせる
2 資金繰りを考慮する
3 海外企業の決算月に合わせる
4 無難に3月期決算にする

 

 

 

2-1 繁忙期を避け、閑散期の月を決算期にする

 

決算期を決定するにあたっての重要な観点の1つが、繁忙期を避け閑散期の月を決算期とすることです。繁忙期を避ける観点には、主にビジネス上の観点と、税務戦略の観点の2つがあります。まずビジネス上の観点から説明します。

 

・ビジネス上の観点

 

最適な決算期を決定するにあたっての大原則は、ビジネスが暇で落ち着いている月、つまり閑散期を決算期とすることです。なぜなら決算作業というものは企業にとって大きな負荷となり、ただでさえ忙しい繁忙期を決算月とすると、コスト面や業務負荷の面でのデメリットとなります。

 

そのため、スーパーや百貨店などの小売業のような売上額に季節変動がある業種の場合、売り上げが増える年末や3月末を決算期とせず、比較的売り上げが落ち込みやすい閑散期の2月や8月を決算期に選ぶケースが多くみられます。

 

繁忙期を決算月とすることによるさまざまなデメリットについて、もう少し詳しく説明します。ただでさえ忙しい繁忙期に、通常月よりも工数がかかる決算対応をしてしまうと、追加の残業代や場合によってはアルバイト等の人員確保、繁忙からくる決算作業の品質低下などが発生する可能性があります。上述したように決算期は各企業が自由に決定できるので、敢えて繁忙期を決算期としなくてもよいわけです。

 

決算期特有の対応としてさまざまなものがありますが、特に企業にとって負担となるものに商品棚卸があります。決算期においては、在庫を持つビジネス形態の企業であれば通常は棚卸を実施します。補足ですが、なぜ棚卸を実施するかというと、帳簿と実在庫との間にズレがないか調べるためです。帳簿では100万円分の在庫が記載されていても、実際には払い出しミスや窃盗などにより、必ずしも帳簿金額通りの在庫が現場にあるとは限りません。

 

そこで棚卸を行い、帳簿の記載金額の正当性を確認し、帳簿の金額と実在庫に差異がある場合は、帳簿金額を修正します。棚卸は基本的に帳簿と在庫の品目ごとに一転一葉で確認するため、非常に大きな作業工数となりますし、棚卸時間中は店舗を閉めて行うことが多いためビジネスチャンスの喪失にもつながります。

 

小売業の場合、繁忙期には多くの在庫を抱え、なるべく大量の在庫を販売しようとしますが、その時に棚卸をしてしまうと大量の在庫を数えることとなり大きな負担となってしまいます。そこで、小売業など在庫を持つビジネス形態の企業であれば、2月、8月など在庫が少ないビジネスの閑散期を決算期とし、棚卸など一連の決算対応の負荷を減らしている会社が多いわけです。

 

・税務戦略の観点

 

次に、決算期の決定にあたって繁忙期を避ける理由として、税務上の観点から説明します。

 

税務上からの観点でも、決算期は繁忙期を避けるほうにメリットがあります。なぜなら期末に向けて売上が上昇する企業の場合ですと、納税予測や節税対策を立てるのが難しく、繁忙期の対応に時間を取られてしまい、節税のための検討に十分な時間を確保できない可能性があるためです。税務対策を検討する時間が十分にあれば、税法上の観点から許容される費用の支出などを検討し、税額を抑えることも可能になるかもしれません。例えば、税務上損金算入できる資産・備品の購入や逆に不要となった資産の廃却の検討、翌期に行う修繕や広告などの前倒しの検討、社員旅行や交際費の使用検討などが挙げられます。

 

以上のように、棚卸などの決算対応工数や税務上の観点から、繁忙期を避け閑散期の月を決算期に選択するほうが、一般的には企業にとってメリットがあります。例えば繁忙月の前後数か月を決算期とするなど、自社の繁忙期を踏まえて決算月を検討するとよいでしょう。

 

 

 

2-2 資金繰りの観点(キャッシュフロー)を考慮し、決算期を決定する

 

決算期を決定するにあたり、もう一つ重要な観点として資金繰りの観点(キャッシュフロー)を考慮することが挙げられます。決算期をいつにするかという決定が、場合によっては企業の資金繰りにも大きな影響を与えることもあるのでご注意ください。

 

 

 

決算期の決定が最も資金繰りに影響するケースの一つが、法人税の申告納付のタイミングです。法人税の納付期限は決算月以後2カ月以内と定められています。 そのため、納付期限までに法人税額の金額を納付できるキャッシュが手元にあるか、法人税の支払いタイミングを見据えた資金管理が必要になります。もし手元キャッシュが不足する月と法人税の納付期限が重なってしまうと、最悪の場合税金を払えない事態に陥る可能性があります。

 

 

 

そのため、手元キャッシュが不足する月と法人税の納付タイミングが重ならないよう、決算月を決定する必要があります。年間を通して売上が一定でキャッシュフローが安定しており、収入と支出のバランスが取れている企業であれば問題はありませんが、実際には季節変動要因などで売上に段差がある企業のほうが多いと思いますので、決算期の決定を慎重に検討する必要があります。

 

例えば1年のうち季節的な影響で4月~5月の売上や現金収入が少なく、逆に賞与などの支払いなど現金支出が多い企業があるとします。このような企業は3月末を決算期とすることは避けるべきでしょう。なぜなら3月期決算を選択してしまうと、法人税の納付期限は5月末までとなるため、手元キャッシュが少ない時期に法人税の支払いが重なってしまうという事態になります。

 

法人税の支払いは企業が儲けているほど大きくなりますので、場合によっては企業の資金繰りに大きな影響を与えます。そのため、自社のビジネスの季節変動要因を考慮しながら、最適な法人税納付時期を決定する=決算期を決定する必要があります。

 

このように決算上は企業が黒字であったとしても、法人税納付や賞与の支払いといった大物の支払いがあると、一時的にキャッシュが不足してしまうこともあるため、キャッシュフロー計画を考慮しながら決算期を決定することが大切なポイントになります。ここでキャッシュフロー計画の重要性について補足します。

 

・キャッシュフローの重要性とは

 

一般的に企業の経営状況を表す財務諸表は、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つがあります。どの財務諸表もそれぞれ異なる情報を提供しており、一概にどれが良いというわけではありませんが、資金管理という観点では特にキャッシュフロー計算書が重要です。

 

 

 

2-3 貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書

ここで財務諸表の貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書のそれぞれについて簡単に補足します。

 

  

貸借対照表は、企業のある「時点」の経営状態を表すものです。時点というのは、例えば3月31日時点というように、期間ではなく時点を指しています。貸借対照表はその時点における企業の資産、負債、資本を表しており、その企業がいくらキャッシュや固定資産などの資産を有しているのか、買掛金や借入などの負債がいくらあるのか、資本金や過去からの剰余金の積み上げがいくらあるのか、といった情報を表しています。

 

 

 

損益計算書は、企業のある「期間」の経営成績を表しています。期間というのは、たとえば4月1日~3月31日までの期間を指しています。損益計算書はその期間における企業の経営成績、つまりその期間において、その企業がどれだけ売上げたか、どれだけ費用を使ったか、結果いくら利益がでたのか、といった情報を表しています。

 

 

 

キャッシュフロー計算書は、企業のある「期間」におけるキャッシュの動きを表しています。上記損益計算書と期間の動きを把握するという点では似ていますが、キャッシュフロー計算書はキャッシュの増減に着目し、決算期間において、営業活動(売上や仕入れに関するもの)、投資活動(固定資産の購入などに関するもの)、財務活動(借入や返済に関するもの)に分類し、それぞれの活動での現金の増減を表しています。

 

 

 

企業はいくら収益面では利益が出ていても、キャッシュが枯渇するといわゆる黒字倒産となってしまいます。例えばいくら数字上は収益面でプラスになっていたとしても、売掛金の入金が1年後であったり、収益以上の大きな設備投資を行ったりすると、キャッシュが枯渇してしまう可能性があります。そのため、一般的には損益計算書が特に注目を浴びますが、損益だけでなくキャッシュフローの観点も経営に取り入れることが大切です。実務上は、キャッシュフロー計算書をさらに日々のベースで管理するようにした資金計画表のようなものを作成し、日々のキャッシュの動きを把握するとよいでしょう。

 

資金計画表は各企業が自由に作成するものですが、たとえば、キャッシュの入りと出について、少なくとも数か月先までの日々の計画を策定しておくとよいと思います。たとえば収入であれば、売掛金の入金日などが挙げられます。支出であれば買掛金の支払日、給与や賞与支払日、社会保険関係の支払日、そして上述した法人税の支払日などがあります。決算期を決める場合の参考として、ざっくりとしたものでもよいので年間の資金管理計画を作成し、最もキャッシュの余裕がある月を法人税の納付時期とするのがよいでしょう。資金計画表があれば、例えば数か月後にキャッシュが一時的に不足しそうな状況を予見できるので、前もって銀行と短期資金の借り入れの交渉をするといったような先手を打てるようになります。

 

 

 

2-4 海外でのビジネスが中心の場合は、12月期決算が良い

今までの観点は主に日本国内企業や日本でのビジネスの事例を説明しましたが、ここでは海外でビジネスを展開し海外子会社の設立を検討されている等、海外でのビジネスが中心の場合について、決算期をいつにすればよいか説明します。

 

 

 

結論からいいますと、海外子会社の数が多い等、海外でのビジネスが中心の企業は、上述したような繁忙期の問題や資金繰りの問題が特に無いのであれば、1月1日~12月31日の12月期決算を選択するのが無難です。

・海外の暦の観点

 

海外における一般的な暦は1月1日~12月31日であるため、企業の決算期も暦に合わせておいたほうが、暦と企業の年間スケジュールがマッチしやすく、ビジネス上も効率的です。

 

また上述したように、中国のような法令により法定決算書が12月決算期である場合もあります。このような決算期の規制がある国においては、内部報告用に使う内部管理目的の財務諸表を12月期決算にする必要はありませんが、法定決算書を12月期決算で作成する必要があります。そのため内部管理目的の決算書と法定決算書の期間に差異があると、場合によっては決算を2回行うことが必要となり、実務上は様々な調整作業が発生してしまいます。

 

・IFRSの観点

 

また近年注目を集めているIFRS(国際財務会計報告基準)、いわゆる国際会計基準)の観点からも、海外でのビジネスが中心の企業にとっては12月期決算を採用するほうにメリットがあると考えられます。なぜなら近年、各国がIFRSを採用しておりIFRSが多数派となっていることから、このIFRSが決算期に大きな影響を与えるためです。

 

IFRSの特徴の一つに、グループ会社間における会計方針の統一というものがあります。これは例えば減価償却の方針(定額法や定率法などグループ内でどちらかの方法に統一が必要)や決算期など、主要な会計方針について、グループ会社間で方針を統一しなければならないというものです。IFRSを適用している企業は、連結決算を行うにあたり海外子会社が12月決算、親会社が3月決算というバラバラの状態で連結決算を行うことは認められません(例外として、金額的重要性が小さい場合などは、監査法人などの判断により、実務上許容される場合もあります)。

 

具体的には、海外企業では12月決算が一般的なため、例えば海外子会社が12月期決算、日本の親会社が3月決算だとすると、親会社の3月に合わせるために海外子会社は一度12月期決算で作成した財務諸表を再度3月期決算で作り直す必要があります。逆に親会社が12月に一度決算をし、海外子会社の12月期決算と合わせるやり方もありますが、いずれにせよ調整に膨大な工数がかかってしまいます。基本的にこうした決算の調整工数というのは、企業の収益増加のための活動ではなく、いわば内向けの活動であるため、純粋なコスト増といえます。そのため、こうした調整工数を出来るだけ減らしておくに越したことはありません。これらの理由から海外での活動が中心となる企業、特に海外で子会社を複数展開している企業は、グループ会社の決算期の最大公約数である12月期決算で最初から統一しておくほうが、のちに楽になります。

 

このように海外でのビジネスが中心の企業は、上述した繁忙期や資金繰りの問題が特に無いのであれば、海外での暦と合わせるという点や、IFRSの会計方針統一という観点から12月期決算を選択するほうにメリットがあります。

 

 

 

2-5 繁忙期や海外展開など特段の状況が当てはまらない企業は、3月期決算が良い

特に繁忙期や資金繰りの問題がなく、海外でのビジネスも関係がない日本企業については、とりあえず3月期決算を選んでおいたほうが無難です。4月1日から始まり3月31日に終わるという、日本の一般的な暦とマッチするので、中途半端な月を決算期とするよりも効率的な決算ができるというメリットがあります。また日本においては3月期決算が多数を占めるので、同業他社と自社の経営状況について比較分析を行う場合でも、決算期が同じであれば前提条件が揃うので彼我比較がしやすいというメリットがあります。

 

特に、建設・土木業等については、市区町村などの公的機関や地方公共団体との関係上、公的機関の予算スケジュールと合うような3月期決算を選択しておくほうが無難でしょう。公的機関の予算編成は原則4月1日~3月31日なので、企業側も3月期決算に合わせておくことで、公的機関側の支払いサイトや予算枠などとマッチしやすくなります。

 

また労務管理の観点からも3月期決算のほうにメリットがあります。一般的に日本の教育機関の年度の区切りは3月に卒業であるため、新入社員の入社は4月であることがほとんどです。採用計画と会社の決算期のスタートが一緒であると労務上管理しやすくなるというメリットがあります。また年度の区切りで営業成績などが評価されるので、入社何年という区切りと、決算期の区切りを合わせておくほうが効率的です。

 

・法律改正の観点

 

法令の改正などの適用日が一般に4月1日からであることが多いことも、3月期決算を選択するメリットの一つです。例えば税法の改正などがあり、その効力が4月1日から発生する場合、3月期決算の会社は決算期が終わった後の新年度から法令の適用日となるため、特に調整作業は必要ありません。しかし、例えば12月期決算の会社だと、1月~3月までは旧法令で対応し、4月1日からは新法令で対応しなくてはならなくなるため、実務上の処理が煩雑になってしまいます。また税制改正などによる恩典が受けられるようなケースがあった場合、期の途中からの適用ですと恩典をフルに享受できなくなる可能性もあります。

 

・総会屋対策の観点

 

今ではあまり聞かなくなりましたが、総会屋対策のため、決算期の最大公約数である3月期決算を選択することも観点の一つです。総会屋とは簡単にいうと株主として株主総会に入り込み、株主総会の場を乱すことを背景に企業を脅したりして利益を得ようとする集団のことです。昔はこのような総会屋が蔓延っていたので、総会屋対策として3月期決算を選択し、株主総会のシーズンが他企業と被るようにして総会屋の動きを分散させようとしていました。

 

  

このように決算期の決定にあたり、特段考慮すべき点がなく何月にしたらよいか迷っている場合であれば、暦や法律改正や総会屋対策などの観点から、日本においてはとりあえず3月期決算を選択しておくのが無難でしょう。3月決算期を選択するデメリットとしては、3月期決算の企業が多数を占めているため、会計士事務所が税理士事務所の繁忙期と重なることから、そうした関係者へ支払う費用が繁忙期料金となってしまう可能性があります。

 

 

2-6 決算期はあとになって変更可能

 

なお、決算期は変更することが可能です。例えば当初3月期決算を選択していた企業が、後になって12月期決算に変更することも可能です。ただし、決算期の変更は経営者が宣言すればすぐに出来るというものではなく、所定の手続きが必要になります。具体的には、決算期の変更にあたり、企業の定款を変更する必要があります。定款において一般的に企業の決算期を記載していますが、定款を変更するには株主総会の特別決議が必要です(株式会社では臨時株主総会を開催し、議決権の3分の2以上の賛成が必要。なお有限会社の場合には、議決権の4分の3以上の賛成が必要)。こうした総会の決議により決算期を変更することができるので、当初決定した決算期では不都合が多い場合は、決算期の変更を検討してもよいでしょう。

 

 

 

ただ企業の規模が大きければ大きいほど、決算期変更手続きに関する手番が多くなります。特に海外展開もしているIFRSを適用している大企業になるとグループ間で決算期の統一が必要になるので、株主総会の決議だけでなく、決算期変更に伴う会計処理手続き、金額的影響の把握、監査法人との整合など、グループ全体で大変煩雑な手続きが必要になります。そのため決算期の変更をする場合は、できるだけ企業が小さなうちに行っておくほうがよいでしょう。

 

 

3 まとめ

 

このように、決算期をいつにするか?という問題は、単にいつから始まりいつ終わるという期間だけの問題ではなく、企業の意思決定や資金繰り等に大きく影響する重要な経営上の課題である、ということがお分かり頂けたかと思います。そのため決算期をいつにするか実際に検討する際には、専門家である公認会計士や税理士、コンサルタント等に相談しながら慎重に検討されることをお勧めします。本記事の重要なポイント6つをまとめると以下になります。

 

1 日本において決算期は法令で定められているわけではなく、各企業が好きな月日を選択できます。日本においては3月期決算が多数を占めますが、ビジネス形態により各企業は様々な決算月を採用しています(小売業などは2月期決算が多い)。
2 決算期の決定にあたり、繁忙期を避けることが重要なポイントです。ビジネス上、繁忙期と決算期が重なると棚卸などの決算作業の負荷が大きくなり、追加コストの発生や売上の機会のロスに繋がります。また税務上の観点からも、様々な節税の検討に十分な時間を割けなくなるため、決算期は繁忙期を避け閑散期を選択するほうにメリットがあります。
3 資金繰りの観点も、決算期の決定にあたり考慮すべき重要なポイントです。法人税の納付が企業のキャッシュの少ない月と重ならないよう、企業の年間の資金管理計画を考慮しながら、決算期を検討する必要があります。実務上は資金計画表のようなものを作成し、日々のキャッシュの動きを把握するとよいでしょう。
4 海外でのビジネスが中心の会社は、12月期決算にメリットがあります。一般に海外の暦は1月1日~12月31日であり、国によっては中国などのように12月期決算が法定決算となっているケースもあります。またIFRSの観点からも、海外では一般的な12月決算を選択するほうにメリットがあります。
5 繁忙期や海外展開など特段の状況が当てはまらない企業は、3月期決算を選択するほうにメリットがあります。日本の一般的な暦である4月1日~3月31日とマッチし、労務管理や法律改正のタイミング等の観点から3月決算にメリットがあります。
6 決算期は株主総会の決議により変更することが可能です。ただし、企業規模が大きくなればなるほど実務上様々な工数が生じるため、できる限り企業が小さいうちに実施するほうが良いでしょう。

 

 


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