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決算発表で株価は動く!決算の発表内容から発表時期、発表資料、発表で見える企業の特徴などをご紹介

ゴールデンウイークの前後になると、企業の決算発表ニュースがよく報道されますが、決算発表を誰が、いつ行っているかなどを正確に把握している方は少ないでしょう。しかし、決算発表の内容や時間は投資家のみならずビジネスマンへも影響を及ぼすことも少なくからずあります。

 

ここでは決算発表のほか、その実施されるルールやその時間・時期に関する内容等を取り上げます。決算発表およびその時間の内容、その社会への影響、決算発表のタイミングでわかる企業の特徴などを説明していきましょう。

 

 

1 決算発表やそのタイミングにかかわるさまざまな影響

決算発表やそのタイミングにかかわるコトが社会にどう影響するかを簡単に紹介しましょう。

 

 

 

1-1 投資や融資での影響

企業の株式へ投資する人や、企業へ資金を提供する金融機関等は多いですが、その企業の決算発表の内容により彼らの行動が大きく変わることがあります。

 

決算情報は改正金融商品取引法のフェア・ディスクロージャー・ルールの中で「重要情報」と位置付けられています。もし株式を保有している企業の決算発表の内容が悪ければ株価が大幅に下がる恐れもあるので、リスクの回避や低減に向けた行動も必要になります。そのため投資家には決算発表の前後での適切な対応が求められるわけです。

 

その企業の債券を購入している投資家においてはその売却を検討することも考えなくてはならないでしょう。また、決算発表の内容が悪い企業に融資している金融機関等は今後の資金提供ついて慎重な姿勢へと変更することも考えなくてはなりません。

 

このように決算発表の内容によってお金にかかわる個人や事業者の行動は少なからぬ影響を受けるため、決算発表前後での適切な対応が求められるのです。

 

 

 

1-2 商品・サービス等の利用での影響

企業の決算発表の内容で影響を受けるのは資金提供者等だけでなく、その企業の商品・サービスを利用する個人や事業者にも影響がおよびます。

 

決算発表の結果を受けて金融機関等が資金の提供を控えるようになると、その企業は資金繰りが悪化し事業の継続に支障が出ることもあります。その結果、その企業が提供している商品・サービス等の供給が困難となり、ユーザーは利用できなくなることもあるわけです。

 

資金提供が完全に受けられない場合などでは、最悪その企業は倒産に追い込まれ、ユーザーは代替の商品・サービスを急遽探さなければならいといった事態に陥ることもあるでしょう。

 

 

 

1-3 生活での影響

好決算を発表した企業の株価が上昇すれば、売却によるキャピタルゲインや増配によるインカムゲインなどで、投資家は大きなリターンが得られ生活をより豊かにできるでしょう。

 

逆に決算内容が悪ければ、株価は下がり含み損や売却損を被ったり、配当を得られなかったりするというリスクに陥ることもあるのです。その結果、投資家には資金的な余裕が減少し、生活に余裕を持たすことが難しくなるかもしれません。

 

また、消費者への決算の影響としては企業の期末セールが挙げられます。消費者向けだけではないですが、企業のなかには決算を迎えるにあたり良好な業績の達成や節税を目的に「在庫一掃セール」などの大売り出しを実施する企業が少なくありません。

 

つまり、消費者などの販売対象は通常よりも低い価格で商品を購入できたり、より有利なサービスを割安な価格で利用できたりするわけです。消費者等にとってはこうした企業の決算にまつわるイベントは日々の暮らしのプラスになります。そのため、企業の決算時期を事前に把握して「大売り出し」などを最大限に活用するのもスマートな消費行動といえるでしょう。

 

 

2 決算発表と決算発表の時間

ここでは決算発表とは何か、決算発表の時間に関するものにどんなものがあるのか、といった点について説明していきます。

 

 

2-1 決算発表

企業の年間の営業活動による収支や財産状態を計算してまとめる行為が決算であり、それを証券取引所の要請により上場企業がその情報を開示するという行為が決算発表です。決算発表は投資を判断するうえで重要な情報となる決算内容の情報開示であるため、「適時開示制度」の一環として実施されています。

 

適時開示制度は金融商品取引法に基づく法定開示制度と、証券取引所が有価証券上場企業に要請している適時開示制度の2つがあります。前者の場合は有価証券届出書、有価証券報告書、四半期報告書などの開示が必要です。後者の場合は、証券取引所の規則に基づき、決算短信等を用意の上報道機関等を通じて投資家に伝達することが要請されています。

 

決算発表は、その上場企業の役員が証券取引所の記者クラブ等においてその決算の内容を大まかに公表する行為であり、慣例的に行われているのです。発表内容は、本決算、中間決算、連結決算ともに「決算短信(決算発表の内容をまとめたもの)」を利用して説明され、その内容や記者会見の様子などが翌日の新聞等のニュースで紹介されます。

 

決算の内容は、金融庁が運営するEDINET「金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム」により閲覧することが可能です。EDINETでは有価証券報告書、有価証券届出書、大量保有報告書等の書類が開示されています。

 

また、東京証券取引所が構築・運営している適時開示情報閲覧サービスでも決算の内容が閲覧できますが、各上場企業も自社のホームページのIR(Investor Relations)コーナー等で決算の内容を開示しています。

 

なお、上場企業以外ではこの決算発表は実施されることはありません。ただし、未上場の企業でも決算内容を自社のホームページに掲載することはあります。

 

 

2-2 決算発表の時期

決算日は企業の判断で自由に設定することが可能ですが、上場企業の場合は3月31日とするケースが多く決算発表の時期はそれに対応する形で設定されています。もちろん2月末日を決算日にするような上場企業もあり、その決算発表はそれに対応する形で実施されるわけです。

 

決算は年度末の本決算と年度の中間時点で行う中間決算に大きく分かれます。しかし、金融商品取引法では四半期ごとの決算内容の開示義務があり、証券取引所は四半期ごとに決算短信の開示を要請しているため、上場企業は四半期ごとに決算発表を実施しています。

 

つまり、上場企業の多くは、3月末は本決算(第4四半期決算)、6月末は第1四半期決算、9月末は中間決算(第2四半期決算)、12月末は第3四半期決算という形で決算発表を実施しているわけです。

 

なお、四半期ごとの決算発表の時期は各上場企業により異なります。決算短信の作成・開示については、証券取引所から遅くとも決算期末後45日以内(45日目が休日の場合は翌営業日)、決算期末後30日以内が望ましいと要請されているのです。そのためこれらの期間を目途に各上場企業は四半期ごとの決算発表を実施しています。

 

例えば、東京証券取引所に上場している企業の平成28年3月期の決算発表をみると、決算日後45日以内での決算発表は全体の約95%に達していました。なお、30日以内の決算発表は約16%です。

 

 

2-3 決算発表のスケジュール

3月末日を決算日としている上場企業の場合、四半期を含む決算発表はおもに以下のような日程で実施されています。

 

6月の第1四半期決算→7~8月に決算発表
4月~9月の中間決算→10~11月に発表決算
4月~12月の第3四半期決算→1~2月に決算発表
4月~翌年3月での本決算→4~5月に決算発表

 

つまり、決算発表は四半期ごとの決算日のおもに2カ月の期間で実施されており、特に45日以内でその大部分が実施されているのです。

 

なお、3月以外を決算月にしている上場企業の場合もその四半期ごとの決算日の2カ月で実施されています。

 

 

2-4 決算発表の時間・スケジュールを知る方法

各上場企業等の決算発表の予定日・時間等のスケジュールを知る方法はいくつも存在します。

 

東京証券取引所では「○月に四半期・期末を迎えた決算発表予定会社の一覧」などの「決算の発表予定会社一覧」を提供しており、対象期間にある企業の発表予定日が確認できます。

 

また、各証券会社のWEBサイトや株式等の金融・投資情報サイトでも決算発表の予定日等が掲載されています。ほかにも東洋経済新報社の「会社四季報」等の金融経済情報誌などで決算発表の時間・スケジュールを確認することも可能です。

 

例えば、投資情報サイトのトレーダーズ・ウェブ(株式会社DZH フィナンシャルリサーチ 運営)では発表日や発表時刻(報告されている銘柄)が確認できます。

 

証券会社等は、一般的に証券取引所から発表されている決算発表の予定日をもとに決算発表の予定情報を毎日提供しています。閲覧できる対象期間等は各証券会社によって異なりますが、当日から2~3カ月程度が対象です。つまり、2~3カ月程度の決算発表の予定が確認できます。

 

なお、発表日の予定時刻を掲載しているサイトもありますが、前年の同時期の決算短信の開示時刻等を利用してそれを予定時刻としているケースも見られます。そのため実際の発表時刻とその予定時刻とが異なる可能性も少なくないので注意しましょう。

 

 

3 決算発表や決算発表時間で注意しておくべき点とその対応

 

 

3-1 株価の動向

上場企業の発表する決算内容は株価を大きく動かすことがあるので、注意しなければなりません。そのため決算発表前後では株価の変動に備えた適切な行動が求められます。

 

①決算発表後の株価の大幅変動

株価はその企業の決算発表後から大きく変動する可能性があるため、適切な対応が必要です。

 

株価の変動要因は、経済、政治、地政学リスク、市場動向などの市場全体にかかわる要因と個別企業の業績、事業方針・政策、株式・配当の政策などの個別要因に分かれます。

 

決算発表ではこれらの変動要因に関わる情報が示されますが、企業業績については財務諸表等で報告されます。つまり、株価への影響の大きい営業利益や経常利益の金額が明らかとなるわけです。業績が大幅にアップし、市場の予測を超えるような利益が計上されていれば、発表後の株式取引では株価が急騰するケースも珍しくありません。

 

逆に予想外の利益の減少や赤字転落などになれば、株価は急落して大きく値を下げるケースも多いです。

 

また、業績以外の新規事業への参入方針、M&A、株式分割、自社株買い、自己株式の処分、増配・減配なども株価変動の大きな要因となります。こうした情報が決算発表で報告されれば、その内容次第で株価が急騰・急落するので注意しましょう。

 

②決算発表前後の適切な行動

決算発表からの影響を上手く利用するための対応の仕方は、発表前と発表後で多少異なります。

 

・発表後の迅速な対応

企業業績の内容は上記のように株価を大きく動かすことがあるため、決算発表後は特に適切かつ迅速な対応が必要です。

 

決算発表で業績の大幅な悪化、自己株式の処分や無配などが開示されれば、その時点以降の株式取引では株価の急落が予想されます。発表時刻が取引時間後の場合、そのような銘柄は翌営業日の取引開始から大きく下げて始まるでしょう。その銘柄を保有している場合、売却するなら一刻も早く売り注文を出さなくてはなりません。

 

もちろん中長期的に保有して、株価の回復が見込めると判断できれば急いで売却する必要はないでしょう。しかし、そうでない場合は売りのタイミングを遅らすほど短期的には損失の傷口を広げることになるので迅速な判断が求められます。

 

逆に業績が大幅アップ、株式分割、増配、自社株買いなどの情報が開示されるとそうした銘柄の株価は、翌営業日の取引開始から大きく上げて始まるでしょう(取引時間後の発表の場合)。そうした銘柄を保有していない場合、上昇を見込んで購入したい場合は発表後早めに証券会社へ買い注文を出さなくてはいけません。

 

買い注文のタイミングが遅くなるとストップ高でその日の取得ができないこともあります。株価が上昇しているのを確認してから発注すると購入できる確率が下がることも多いので、決算発表後での早めの注文が重要となるのです。

 

もちろん上昇する要因の発表があってもその内容の程度次第では大幅な上昇に繋がらないケースやあまり変動がないケースも珍しくありません。保有している銘柄については発表までにさまざまな情報を収集しておき、その内容と実際の決算発表の内容を合わせて今後の対応を速やかに考えることも必要でしょう。

 

・発表前の適切な対応

決算発表後の市場の反応は極めて敏感であり、上記のような対応を個人投資家がとるのは容易ではありません。そのため発表の前にリスク回避やリターン確保に向けた適切な行動をとらなければなりません。

 

業績については特に本決算の発表による株価への影響は大きいため、第3四半期から本決算までの期間の業績動向が注目されます。つまり、その期間での売上高や利益額などの営業成績や販売状況が株価に影響するため、その動向の確認が重要となるわけです。

 

企業によっては月次の売上高や販売実績などを公表しているところもあるので、第3四半期から本決算までの期間などの実績を確認すれば本決算での業績予測も不可能ではありません。その期間の営業成績が第3四半期までのペースを上回れば、株価の上昇も期待できるでしょう。逆に大きく下回るような結果になりそうな場合は株価の下落が予想されます。

 

このような予測をもとに保有している銘柄については、決算前および決算発表前に保有し続けるか、売却するかの判断も必要となります。特に短期的な投資を行っている場合は迅速な判断が必要になるでしょう。

 

逆に第3四半期から本決算までの期間の営業成績が上振れしそうな企業を探し当てその銘柄を購入すれば、大きなキャピタルゲインを得られるかもしれません。つまり、本決算および決算発表までに目ぼしい銘柄を探し出し購入するという仕込みをすることで大きなリターンを手にすることが期待できるのです。

 

期末に向けた決算セールを実施すると第3四半期までの期間以上に売上や利益が伸び好決算に繋がるケースもあります。決算セールを通常よりも大々的に実施している場合や、普段はしないのに今期だけで決算セールをやっている場合などの企業は注目しておいたほうがよいかもしれません。

 

③自社株買いの発表への対応

決算発表の際に自社株買いが発表されるとその後の株価が動きやすくなるので注意が必要です。

 

一般的に自社株買いが表明されると株価は上昇の傾向を示し、自社株買いがの規模が大きいほどその上昇の程度も大きくなります。

 

・決算発表後の自社株買いへの対応

自社株買いの発表は決算発表の時に実施されるとは限りませんが、仮に決算発表後にその情報が伝わるとそれ以降の株式取引では株価は上昇することが期待されます。なお、株価への影響の大きな要因となり得る自社株買い等の発表は証券取引所の取引終了後に実施されるケースが多いです。

 

そのため自社株買いの規模によっては翌営業日の取引開始からストップ高になる可能性もあることから保有していない場合は一刻も早い買い注文が重要になるでしょう。上手くいけばストップ高で当日の取引が終了したとしても比例配分で多少なりとも購入できることも有ります。

 

業績発表と同様に上昇の様子を見てから発注すれば購入できなくなる可能性もあるので、自社株買いの規模等を考慮のうえ、迅速に買い付けを判断しなくてはなりなせん。

 

・決算発表前の対応

決算発表時を含め自社株買いの発表前に実施しそうな銘柄を購入しておけば、発表後の株価の上昇で大きなリターンが期待できます。しかし、現実的にはそう都合よくそのような銘柄を予測して購入することは困難です。

 

ただし、その予測はまったく不可能というわけではなく、ある程度期待できる銘柄を絞り込む方法もあります。自社株買いを行う企業には、一定の特徴がみられるので、インターネット上の株式情報や証券会社からの情報などをもとに予測することも可能です。

 

自社株買いで株価の上昇が期待できそうな企業の特徴としては、次のような点が挙げられます。

 

  1. 資金が潤沢で借金が比較的少ない企業
  2. 浮動株の比率が低く、株価の変動が大きくなりそうな企業
  3. ROEが低い企業(「自社株買い→その消却」でROEの上昇を過去に実施している企業)
  4. 利益の株主還元の意識が強い企業(配当などを含め株主重視の経営で、利益を株おもに還元するという意欲の強い企業)
  5. 既に一定期間を対象とした自社株買いを発表していて、そろそろ次の自社株買いのタイミングとなりそうな場合

 

以上のような点から目ぼしい企業を予測することは可能ですが、それでも実際に自社株買いする確率は高いとはいえないでしょう。そのため自社株買い目当てを予想しての株式取得はリスクが低いとはいえません。たとえ自社株買い目当てであっても業績の向上が期待できるなどの他の要素も考えて購入を考えることが重要になるでしょう。

 

 

3-2 決算発表が「早い・遅い」でわかる企業の特徴

2-2で紹介したとおり、証券取引所は決算日後45日以内での決算発表を要請しているので大部分の上場企業はそれを実行していますが、発表が早い企業もあれば遅い企業もあります。

 

平成28年3月期の東京証券取引所に上場している企業の場合、決算日後45日以内での決算発表は全体の約95%となっており、残りの約5%は45日超の発表です。また、45日以内で発表している場合でも45日目に発表している企業はその全体の約25%(20%程度の年度が多い)にとなっています。

 

早いケースでは決算日後10日以内で発表している企業が約0.4%で、決算日後30日以内で発表している企業は約16%です。最も多いケースは決算日後11日~44日で発表している企業で約53%(40日~44日が最も多い)となっています。

 

このように決算発表の時期にはバラツキが少なからず見られることから、その「早い・遅い」には何らかの特徴があると予想されます。

 

①決算発表の「早い・遅い」の直接的な要因

決算作業は企業の1年間の活動の結果を締める重要かつ作業量の多い業務となりますが、その内容は単体決算業務、連結決算業務、開示業務と会計監査に大きく分かれます。

 

つまり、業務ベースでみた場合、この4つの業務のうちどれか1つでも大幅に長引けば決算発表の時期は遅くなるわけです。したがって、決算の締めを早期化し決算発表を早めるためには上記の各業務を円滑に進めることが不可欠となります。とくに上記の業務中でボトルネックとなる業務は各企業で異なるので、各企業での現状分析が重要となるでしょう。

 

もちろん決算業務の土台は日々の経理業務と月次の経理業務になるので、この部分の業務でも問題がないかどうかも確認しなければなりません。

 

②決算業務が早い企業の特徴

①で挙げた決算業務が適切に実行されれば、結果的に決算の早期化が実現されます。つまり、毎日、毎月および決算での経理・会計業務が適切に実施されている企業が早い決算を実現し、早い決算発表が行えるわけです。

 

会計業務を適切に実施するためには、各業務での作業が効率的に処理できるように標準化や簡素化され、そのルール通りに実施できるようにマネジメントされている必要があります。日々の経理処理から決算期での決算処理に至るまで自動コンベアに乗せられ処理されていくように正確かつ決められたスピードで作業は完了しなければなりません。

 

つまり、決算の早期化を実現している企業は、会計業務を分析して効率的な作業を考案しルール通りに実行できるマネジメント力の高い企業といえるでしょう。逆に決算が遅い企業は会計業務の効率化や標準化などができておらず、会計業務に関するマネジメント力が弱い企業であるかもしれません。

 

こうした特徴が会計業務だけでなく企業全体の特徴となっているケースもあり得るため、決算が遅いタイプの企業は業務全体で無駄が多くないかチェックする必要もあるでしょう。

 

③決算が早い、決算発表が早い場合のメリット

決算発表が早いということは決算が早いということと等しいので、両者でのメリットを紹介します。

 

・決算が早い場合のメリット

A 業績や財務状況が早く認識できるため、トップマネジメント層は投資などの判断が早くできたり、リスク回避のための行動を早めにとったりできます。つまり、彼らの重要な意識決定が早まるわけです。

 

B 早い月次決算が導入されれば、売上や経費の実績が毎月早めに把握でき修正の対策も打ちやすくなるため月次計画および年間計画の目標が達成しやすくなります。また、業務上の各種の問題点の早期発見にも繋がります。

 

C 決算業務の繁忙時期を早めに終わらせられるので、経理部門の担当者の業務負荷を早めに軽減でき、余力を別の業務に活用できるでしょう。

 

D 決算業務の早期化に伴う改善や効率化により決算工数や監査工数が減少し、コストダウンが実現できます。

 

・決算発表が早い場合のメリット

E 投資家に投資判断に重要な情報を早めに提供できるので、投資家からの評価が高まることが期待できます。その結果、安定株主の増加などに繋がるかもしれません。

 

F 投資家から「決算業務を早くできる社内体制が整っている企業」として信頼が得られ、今後の取引や資金調達の面で有利になることが期待できます。

 

 

3-3 決算発表の変更・延期

各上場企業の決算発表の予定は証券取引所から発表されますが、変更・延期されることも珍しくありません。ここではどうして変更等されるのか、変更等でどのような影響がもたらされるのか、などを説明します。

 

①変更等の事例と理由

決算発表の変更・延期については下記のような事例がみられます。

 

・株式会社メタップス

変更の内容:平成29年8月期決算発表日の変更
変更の理由・目的:決算の内容に正確性を期すため
変更前:平成29年10月16日
変更後:平成29年10月20日

 

・株式会社SRAホールディングス

変更の内容:平成28年3月期決算発表の日程変更
変更の理由・目的:決算作業の遅れ
変更前:平成28年5月12日
変更後:平成28年5月16日

 

・昭和電工株式会社

変更の内容:平成28年12月期決算発表の延期
変更の理由・目的:子会社の売上計上の問題、販売内容の精査が必要
変更前:平成29年3月7日まで
変更後(再延期):有価証券報告書の提出期限の延長申請を行う予定(実際は4月25日に発表)

 

・株式会社UKCホールディングス

変更の内容:平成29年3月期決算発表の延期
変更の理由:子会社の前渡金等の資産の評価の精査が必要
変更前:平成29年5月10日
変更後:平成29年5月30日まで(実際は再延期等があり7月31日に発表)

 

以上のほかにも変更等の事例は少なからずありますが、その理由は企業によってさまざまです。ただし、理由を含め状況、問題点や原因などについては抽象的な表現にとどまるケースもあり、業績にどの程度影響が出るか予想できないケースも少なくありません。

 

なお、理由を大きく分けると、比較的単純な理由と複雑な理由に分けられるかもしれません。前者は特定の要因があり決算作業が遅れているといったケースで、後者は子会社を含めあってはならない取引・計上などがある特殊なケースです。

 

決算発表の変更等は株価への影響が少なからず生じますが、その理由によっては暴落といった大きな影響がみられることもあります。

 

②決算発表の変更等による株価への影響

上場企業が決算発表の変更等を発表すると、一般的にその企業の株価は下降する傾向がみられます。ただし、下降の幅は変更される期日の長さ、期日の表現(「○月□日まで」等)や理由の内容によって変わってくるでしょう。

 

・変更理由が明確で大した問題がない、業績への影響が過少の場合

例えば、株式会社スカパーJSATホールディングスは平成29年5月9日に平成29年3月期の連結決算発表の延期を発表していますが、株価への影響がほとんど見られませんでした。

 

5月8日の同社株価の終値は536円、9日は523円、10日は521円、11日は524円と発表後の株価は比較的安定しているといえるでしょう。

 

5月9日の変更発表での変更理由は、子会社が実施したイベントでの仕入取引に関して、事実の確認とその支出内容の適正性を確認するためであり、延期の理由が明確でした。また、連結決算に与える影響金額が過少であり業績予想の変更もないという変更内容であったため、投資家には不安要因とは映らなかったかもしれません。

 

・業績への影響が読みにくい場合

上記①の昭和電工の変更は、平成29年2月13日に発表されたもので、その理由は子会社の売上計上に問題があるとの内容でした。発表前の2月10日の同社株価の終値は1,951円、13日は1,978円、14日は1,949円と安定しています。

 

しかし、同社は平成29年3月1日に再延期を発表しました。再延期の理由は前と同じですが、3月31日の有価証券報告書の提出期限までに調査を完了できない見込みと発表しています。業績の公表については確定後速やかに開示するというよう内容でしたが、損失が拡大するのではないかという不安からか株価は大きく下落したのです。

 

発表日の3月1日の同社株価の終値は2,024円、2日は1,880円、3日は1,845円と大きく下げています。このように再延期となり、業績への影響が計りかねるような場合などは株価にとっては大きなマイナス要因になりかねません。

 

なお、平成29年4月25日にようやく同社は平成28年12月期の決算発表を行いました。売上高は前年度比でマイナス13.5%でしたが、営業利益と経常利益ともに前年度比20%以上の増益です。その結果、1,700円台にまで落ち込んでいた株価は4月25日の終値では1,905円となり、26日に2,000円台へ、5月10日には2,300円台にまで高騰しています。

 

業績への不安により株価は下げ幅を拡大させましたが、その不安が払拭されたため、株価が一気に持ち直した例といえるでしょう。

 

このように決算発表の変更・延期やその延期等の発表の内容次第で株価は大きく左右されるので、発表内容を十分に検討し市場の様子を確認しながらの慎重な対応が求められます。

 

・業績への影響がある程度読める場合

上記①のUKCホールディングスの場合、平成29年5月10日に平成29 年3月期の決算発表の延期を発表していますが、その際に子会社での前渡金約40億円の回収懸念が公表されました。その結果、同社の株価は2,200円台から2,000円台に大きく下げ、その後株価は2,100円近くまで持ち直していましたが、5月31日の再延期の発表で2,000円台を割り込むまでなっています。

 

7月18日に子会社のトラブルで約190億円の損失計上が報告され、株価は1,900円前後から1,600円台へと下げ幅を拡大させました。

 

このように延期の理由が明確である程度業績への影響が判断できる場合、その内容で株価が敏感に動きます。このケースでは最初の延期や再延期の発表時での予測以上に損失額が拡大したため、株価への影響も大きかったといえそうです。

 

延期等での発表でどの程度の損失になるかなどは調査結果を待たないと投資家には判断できないですが、悪い情報に株価は敏感なので早めのリスク対応が求められます。

 

 

3-4 決算発表前の沈黙期間

上場企業が投資家等からの決算に関する質問等への回答をしない決算期末(各四半期を含む)から決算発表までの一定期間のことを決算発表前の「(IR活動)沈黙期間」といいます。なお、すべての上場企業が沈黙期間を設定しているわけではありません。

 

①沈黙期間の目的と実施企業の割合

沈黙期間は企業の公平・公正な情報開示を実現するための施策の一つであり、株価への影響の大きい決算情報がその発表前に漏洩することを防止するために設定されています。

 

そのため株主やアナリストなどであっても決算に関連した質問への回答は得られないので、投資家にとっては株価の動きを読むための情報の一部が得られなくなるわけです。また、質問への回答のほか、決算に関するコメントなども企業からは発信されないので、質問等がある場合は沈黙期間までに行う必要があります。

 

なお、沈黙期間を設けている企業の割合については次の調査結果が参考になります。

 

一般社団法人日本IR協議会の2015年度「IR活動の実態調査」では、調査対象の67.8%が沈黙期間を設定し、18.7%が設定しておらず、「どちらともいえない」が12.6%となっていました。この結果では、調査対象の7割弱が沈黙期間を設定しているといえそうです。

 

②沈黙期間の期間

沈黙期間の実際の長さは各企業によって異なり、決算発表前の約2週間、1カ月間や「決算期末(四半期を含む)の翌日から決算発表前まで」などのように設定されています。なお、沈黙期間をいつから始めるかなどは各企業から随時発表され、IRカレンダー等に掲載されるでしょう。

 

その両ケースの実際の日数をみると、「決算期日から決算発表日まで」の場合は「31~45日」が45.7%と最多で、次いで「22~30日」が40.2%となっていました。また、「決算発表日前の一定期間」の場合は、「22~30日」が46.7%と最多で、次いで 「8~14日」が22.6%、「15~21日」が18.7%となっています。

 

③例外対応

沈黙期間であっても決算での業績予想から大きな変更の必要性が生じる場合には、開示規則に従って適宜情報が開示されることとなります。

 

また、沈黙期間であっても既に公表されている範囲の情報への質問には回答してもらえることもあるので、その場合は問い合わせるとよいでしょう。

 

④沈黙期間と株価への影響

沈黙期間の有無による株価への影響を測ることは困難ですが、影響が大きくなるケースも予想されます。

 

沈黙期間ではアナリストやファンドマネージャーなどが上場企業に取材を求めても断られるので、その間は企業から公表される情報以外の内容を入手することができません。そのため沈黙期間が長いとアナリストからの情報もないため、決算発表の内容によっては発表前後の株価に大きな差が生じることもあり得るのです。

 

普段の時期ではアナリスト等からの情報で株価が少しずつ変動することもあります。しかし、沈黙期間ではその情報も遮断されることになり、沈黙期間の長さと発表の内容により株価は大きく変動しやすくなるので、投資家としては多少注意が必要です。

 

⑤沈黙期間の通知例

沈黙期間のお知らせは各企業によって異なりますが、以下のような通知が多くみられます。

 

・ 住友金属鉱山株式会社の例(2017年4月20日付)

 

「投資家のみなさまへ 当社では、各四半期の決算発表の概ね2週間前に「沈黙期間」を設けて、決算発表の準備期間中に株価に影響を与える情報が漏れることを防ぐために、決算に関するコメントや質問への回答を控えています。
今回、2017年4月21日(金)から決算発表までの間を沈黙期間とさせていただきますので、ご了承くださいますようお願いたします。」

 

 

4 決算発表時に公表される決算短信

上場会社の決算情報は、投資家の投資判断の基礎となる重要な情報であるため、証券取引所が決算短信による情報開示を企業に要請しています。

 

ここでは決算発表時の発表資料の一つである決算短信について簡単に紹介します。

 

 

4-1 決算短信とは

決算短信とは、上場企業の決算期発表および四半期決算発表を実施するときにその内容をコンパクトにまとめた資料のことです。

 

投資をおこなう場合の重要な判断材料となる有価証券報告書は、決算後3カ月以上の期間を経て発表されることになります。重要な情報を得るのにそのような長期間がかかるのは好ましいとは言えないので、証券取引所が各上場企業に決算短信の作成および公表を要請しているのです。

 

決算短信は決算期末から1~2カ月後に証券取引所や各報道機関へ発表され、各企業においてはIR活動として、自社のホームページでその内容が掲載されます。

 

有価証券報告書も決算短信も決算内容の情報をまとめたものですが、前者は決算内容の全容を確定したものとして報告するための資料です。一方、後者は決算内容を端的にまとめた速報版的資料といえるでしょう。

 

また、有価証券報告書は法律によって義務付けられた法的開示書であるのに対して、決算短信は証券取引所から要請されている適時開示書です。つまり、決算短信の作成および開示には法的な義務がないですが、上場企業は一般的に作成・開示しています。

 

なお、決算短信は証券取引所の「適時開示情報閲覧サービス(TDNet)」、有価証券報告書は金融庁の「EDINET」のほか、各企業のIRコーナーでも閲覧できます。

 

 

4-2 決算短信の内容

決算短信では、本決算および四半期決算の業績(売上高、営業利益、経常利益、当期純利益)、財政状態、キャッシュフロー状況、配当の状況、業績予想などの情報がまとめられています。

 

業績については前年度実績も示されており、また前年同期比の増減率が示されているため、業績の改善もしくは悪化などの状況が容易に把握できます。そのため有価証券報告書よりも早く開示される決算短信の情報は投資家の有益な判断材料となり株価への影響も大きいのです。

 

また、添付資料として、経営成績や財政状況に関する情報も提供され、貸借対照表と損益計算書も添付されます(前期と当期)。また、財務諸表以外には経営成績と財政状況に関する定性的情報として簡単な説明もあり、現状の課題や将来への方針などを読み取ることも可能です。

 

こうした定性的な情報はその企業の今後の株価を予想する根拠にもなるので、業績の数値とともにしっかり確認して利用することが求められます。

 

 

4-3 株価へ影響する決算短信の内容

株価への影響の大きい決算短信ですが、とくにどの情報を注視しておくべきかを簡単に説明します。

 

①(連結)業績

決算短信で第一に提供されている情報は業績情報で、2期の売上高、営業利益、経常利益、当期純利益が表示されています。前年同期比の増減率が示されているため、その改善・悪化が一目瞭然です。そのためこの情報が最も直接的に株価に影響すると考えられます。

 

増収増益で、その増加率が高いほど株価は上昇しやすくなるでしょう。逆に減収減益でその減少率が大きいほど株価は下落しやすくなるのです。

 

ただし、株価の変動はさまざまで、同じ増収増益でも増加率が低下していれば、株価の上昇が限定的或は下落することもあります。また、減収減益でもその減少率が低下していれば下落の程度が限定的或は上昇することもあり得るのです。

 

つまり、業績の数値の高低とともにその内容から改善・悪化が読み取れるかどうかという点も株価に影響するため、注意する必要があります。

 

②(連結)財政状態

財政状態に関する情報は、総資産、純資産、自己資本比率等ですが、この内容が大きく変化しない限り株価への影響は少ないでしょう。

 

ただし、自己資本比率が大きく減少して10%台やそれ以下になるような場合は注意が必要です。

 

③キャッシュフロー状況

キャッシュフロー状況も②と同様に安全性に関わる情報なので、株価への影響は大きいとは言えません。

 

ただし、営業キャッシュフローの数値が減少傾向にある、マイナスとなっている場合は、業績の悪化や安全性への影響が危惧されるため、今後の業績動向は注視されるべきです。

 

④配当の状況

増配・減配は株価への影響も少なくないので、チェックポイントになります。

 

増配が続いている場合は次期での業績も期待できるため、株価は上昇しやすくなります。また、次期も増配される余地があればなおさら上昇が期待されるでしょう。

 

逆に減配が続く、無配となるような場合は、株価は大きく下落する可能性が高まります。

 

⑤業績予想

業績予想の数値は株価へ大きく影響します。①の業績の数値と比較して次期の予想数値が大きく上回れば株価は上昇しやすくなるでしょう。

 

逆に次期の予想数値が下回る場合は、例え①の結果が良好でも株価は下降するケースもあります。

 

また、①の結果が芳しくなくても②の予想数値が良ければ株価の下落は限定的で、決算発表後に徐々に上昇していくことも珍しくありません。

 

このように決算短信は企業の過去の情報だけでなく未来に関する情報も含まれるので、その内容を吟味することでより適切な投資判断が可能となります。

 

 


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