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サプライズ決算と株価変動の関係 〜銀行が融資したくなる決算書も〜

サプライズ決算とは何でしょうか?サプライズ決算のサプライズとは、ある会社の決算発表を受けたときの市場の驚きや衝撃を示す表現のことです。
今回はサプライズ決算の説明と、サプライズ決算が与える株価への影響、株価の変動に関する基本的な要因について説明します。
このほか、銀行が融資判断する際の決算書で見るべきポイントなどもご紹介します。是非最後まで読んでください。

 

 

1 サプライズ決算とは

 

1-1 サプライズ決算の概要

株価は、決算発表の内容や、決算とは直接関わることではなくとも、様々な要因(次章にて詳しく説明します)によって変動します。

 

決算発表前には、どのような決算内容となるか様々な立場から様々な予想が出されます。そして、決算発表を迎えた後には、決算内容が予想通りであった場合には株価の動きは落ち着いたものとなりやすいですが、もし予想外の決算内容となった場合には、株価に与える影響も大きくなりがちです。

 

予想外の度合いが大きければ大きいほど市場に与える「サプライズ」も大きいことになります。ここから、サプライズという語句を使用するほどに予想外であった決算発表を「サプライズ決算」と呼ぶようになりました。

 

 

 

1-2 ネガティブサプライズとポジティブサプライズ

株価は、決算内容が好調のときには上がり、決算内容が不調であれば下がる、とは一概に言えません。中には業績が好調に見えるのに株価が下がり、業績不調のように思えるのに株価が上がるときもあります。これは決算前の業績予想に関係して起こる事象です。

 

例として、会社Aの業績を市場による決算前予想では前年比2割増益としている場合を取り上げましょう。会社Aの発表した決算内容が、市場の予想に反して、前年比1割増であった場合には、業績アップではあるものの予想以下であったことから市場に失望感が広がり、株の売りにつながります。

 

このケースのように、決算内容が好調(前年比増)であるにも関わらず株価が下落することをネガティブサプライズと呼ぶことがあります。

 

逆のケースを考えてみます。市場では会社Bの業績予想を前年より大幅減益と予想していましたが、会社Bの発表した決算内容は前年比から微減程度に留まりました。この場合には、予想に反して良い決算であったということになり、悪材料は出尽くしたとして株の買いにつながります。

 

これをポジティブサプライズといいます。上記のケースは前年より減益となる場合ですが、決算発表前の予想が大赤字であったのに対して発表された決算の赤字額が少額である場合には、こちらも予想に反して決算内容が良かったとして、ポジティブサプライズとなる可能性があります。

 

 

 

1-3 市場予想と会社予想

サプライズが起こる仕組みはどのようになっているのでしょうか。

 

会社の業績予想には、当該会社が発表する「会社予想」と、投資家を初めとした市場による「市場予想」とがあります。

 

会社予想は、大会社の場合は保守的な金額を打ち出す傾向にありますが、新興会社の場合には強気の高目の金額を持ってくる傾向にあります。しかし、同じ会社でも年度が違えば予想基準も異なり、年度によって希望的観測や株価への影響への思いが入り混じったものとなります。

 

対する市場予想ですが、「市場」とは証券会社やアナリスト、及び調査機関のことを意味します。アナリストは会社のホームページなどにあるIR情報や為替相場、市場状況を織り込みながら予想を行うため、一般的に会社予想よりも市場予想の方が現実的な予想額であるとされます。

 

決算の予想には他にも季刊誌である会社四季報によるものがあります。会社予想よりも会社四季報の予想が良ければ株の買いが進み、会社予想よりも会社四季報の予想が悪ければ売りが進む傾向にあります。

 

市場予想の与える株価への影響力は会社予想のそれよりも大きく、株価の動向を定める大きな要因となります。決算発表は、市場予想を元に迎えることになり、市場予想を大きく超えた場合にサプライズ決算が起こることになります。

 

 

2 決算発表前後と期中における株価変動の要因とは

この章では決算発表の前後の時期の、そして決算を要因としない場合の株価の動きを見ていきます。決算発表の前後の時期には株価が大きく動きますが、どのようにして株の値動きが生じるのでしょうか。

 

 

 

2-1 決算発表前の株価の動き

市場予想で業績不調とされた会社の株は、売りが進んで株価が下がる傾向となりますが、サプライズ決算とはならなかった場合には、悪材料は出尽くしたとして下がりにくくなったり買い戻しによって短期的に上昇したりすることもあります。

 

決算発表前の株価の動きには為替相場も絡みます。通常、海外に展開している会社では想定為替レートを設定しており、想定為替レートに対して決算間近の実レートの方が円安であれば、業績は差益分上向くことになり、売りは進まず株価は下がりにくくなります。

 

対して、想定為替レートに対して実レートの方が円高であれば、業績は差損分下がることになり、売りが進み株価も下がる傾向にあります。

 

市場予想では四半期決算や中間決算も参考とされ、その中でも第1四半期決算や中間決算における会社予想は重要視されます。第1四半期決算や中間決算の業績が好調である場合には、通年の業績も好調である場合が多いとされています。

 

また、第1四半期決算や中間決算の会社予想を不調とする場合には、通常上がることはないとされ、市場予想も業績不調と予想されます。

 

ただし、中間決算を境とする上期と下期では業績に偏りがある業種もあります。建設業などは下期に業績が偏る傾向にあり、そのため上期の業績が芳しくなくても、下期で挽回する可能性があります。

 

時期総額が大きい主力株や人気銘柄である大型株の決算内容は、市場予想から大きく外れることは通常ありません。市場予想には決算発表前から業績の増益・減益要素を織り込み、決算内容をかなりの正確さで反映することになるため、サプライズは起こりにくくなります。

 

したがって、決算発表が行われて業績が好調であっても既に株の買いは進んでいるため上がりにくく、逆に業績不調であってもそのとき既に株の売りが進んでいるため下がりにくい傾向にあります。

 

決算発表前に市場予想が活発に行われて精度の高い予想となる主力株に対して、時価総額の少ない株や注目度の低い会社は、市場予想も活発ではなくアナリストの注目度が低いためサプライズを起こしやすい銘柄であると言えます。

 

会社予想と株価の動きが反対になることがありますが、この現象にも市場予想が絡んでいます。このときの市場予想は「(市場)コンセンサス」とも呼ばれます。

 

コンセンサスとは、アナリスト達が行う予想の平均値のことであり、例えばある会社の業績予想をアナリストAは営業利益1,000億円、アナリストBは1,100億円としたときには、コンセンサスは2人の平均値である1,050億円となります。

 

会社予想と株価の動きが反対になる仕組みの例を上げましょう。アナリスト達は会社Aの営業利益予想を、新商品Bが当初考えられていたよりも大幅に売れていることから、前年比より大幅増と予想しました。その結果、コンセンサスによる当期営業利益の予想額は800億円となりました。

 

ところが、会社Aによる当期の会社予想の営業利益額は、前年比増ではあるものの市場コンセンサスよりも控えめの700億円と公表しました。

 

こうしたコンセンサスと会社予想のギャップはしばしば起こることであり、こうした状況のときには、会社予想が公表される前のコンセンサスにより株価が上昇するものの、会社予想が公表されるとコンセンサスとのギャップによって株価が下落することになります。

 

なお、コンセンサスはインターネットを通して証券会社のホームページから参照することができます。決算発表前には、コンセンサスと会社予想による株の動きがあり、そして迎える決算発表によって株価が変動することになります。

 

 

 

2-2 決算発表後の株価の動き

決算発表時には様々な要因により売りと買いが発生しますので、株価の動向を見極めることは困難です。決算発表後の株価の動く要因を幾つか見ていきましょう。

 

主力株や注目度の高い銘柄は、決算発表時には既に決算内容を取り込んだ株価となっているため、サプライズは起こりにくくなります。対して、主力株や注目度が低い銘柄は、市場予想が活発ではないため決算発表前に決算の内容が織り込まれておらず、そのため決算発表の内容が分かりやすく株価に現れやすい傾向にあります。

 

発表された決算内容が市場予想に比べても好調なのに、決算発表時に株価が下がるということがあります。この現象が期待の高さ故に生じるもので、決算発表前にその期待の高さから買いが進むものの、決算発表時にはその反動で売りに転じることになります。

 

決算内容が悪かった場合には売りに繋がりやすくなり、売りが殺到して株価の大幅下落となることもあります。決算発表時から来期の見通しが業績悪化と予想されるのならば、その時から株価が下落することがあります。

 

決算発表後には、1日の内に何度も売り買いをする「日計り取引」を行うデイトレーダーによって、決算内容を株価に織り込む「決算プレイ」と呼ばれる動きが発生することがあります。この決算プレイによって、決算発表の翌日に株価が乱高下することもあります。

 

この乱高下を狙って積極的に取引を行う投資家もいますが、株初心者が目の前の動きに左右されて売買を行うと痛い目に会いがちです。

 

具体的には、業績好調な決算発表の後には買い注文が多くなり、翌日の株式取引時の朝一番には株価が高くなります。しかし、多くの場合その後株価は期待先行後の売りが始まることから下落しやすくなり、特に主力株や大型株以外の注目度の低い株はその下落幅も大きくなりやすい傾向にあります。

 

決算内容が好調であっても油断は禁物です。決算発表の数日後に会社から悪材料が出てくることがありますので、業績好調という理由で株を買うとリスクが高い時期といえます。

 

決算発表は同時期に行われますので、決算が出揃ってくると市場にも材料出尽くし感が漂い、決算内容の株価への織り込みは落ち着いてくることになります。

 

 

 

2-3 期中の株価変動の要因

決算発表後は、決算という大きな材料の無い時期となり、決算、すなわち業績が株価の変動の要因ではなくなります。決算や業績に関すること以外にも株価の変動要因は幾つか上げることができます。その要因にはどのようなものがあるのでしょうか。

 

株価が変動する根源的な理由は売りと買いが存在することにあります。売る側が買う側より多い場合には株価は下がることになり、買う側が売る側よりも多い場合には株価は上がることになります。このことを、買う側を需要、売る側を供給と見立てて、株式における「需給」と呼んでいます。

 

需給という振り子は様々な要因によって揺れ動き、需給によって株価は変動します。同じ事象でも、捉える側によって「売りたい」と考える人と「買いたい」と考える人がいるのが株の難しいところです。

 

株価は「経済指標」と呼ばれる景気動向を表す指標にも影響を受けます。経済指標には、地域の景気を観察できる人からの協力を得た「景気ウォッチャー調査」や、機械類の受注状況を元にして設備投資状況を指標化した「機械受注統計調査報告」などがあります。

 

指標は「改善傾向にある」や「低い水準で推移している」という風に表現され、ここから読み取れる景況感によって株の需給が生じる場合があります。

 

為替相場も株価に影響する重要な要素です。円高と円安は業種によってプラス要因となる場合もあればマイナス要因となる場合もあります。

 

円安がプラスに働く業種は、自動車メーカーなど輸出が大きなウェイトを占める会社です。反対に、円高がプラスとなる業種は、円安とは逆に輸入が大きなウェイトを占める会社となる、石油や電力そしてガスなどの資源関係の会社になります。

 

更に、為替相場は外国人投資家の日本市場への大きな算入要因となります。円安の場合には外国人投資家からすると、日経平均株価が上がっていたとしても円安による相殺により日本市場は魅力的には見えないことになります。

 

反対に、円高が進んでおりかつ日経平均株価の上昇している場合には、外国人投資家には日本市場は非常に魅力的な市場と捉えられます。

 

株価は社会情勢にも影響を受けます。2011年の東日本大震災によって株価は大幅下落をしました。2018年7月の豪雨災害後には、復興に関連する銘柄である建設業やコンクリート会社の株価が上昇しています。

 

この記事ではサプライズ決算と株価の動きを見てきました。サプライズ決算は予想外であるがゆえにサプライズとなるため、事前に見込むことはできません。一方、株価は景気要因だけではなく社会情勢にも影響を受けます。投資は様々な情報を収集し、経験を積み、見込みのない期待をしないことが重要であると言えそうです。

 

 

3 銀行が融資したくなる会社とは?

会社経営において、最も重要と言っても過言ではないのが、資金調達です。新規プロジェクトへの投資であったり、日々の運転資金であったりと、資金調達にも様々な場面がありますが、いずれにせよ資金調達の巧拙は、会社の成長や、場合によっては存否をも左右することがあるでしょう。そこで、資金調達を行っていく上で考慮しなければならないのが、金融機関との関係です。

 

特に中小企業では、銀行からの借り入れを資金調達の主な手段として考えることでしょう。そのため、銀行からスムースに融資を受けられるかどうか、ということが大変重要なことになります。別の言い方をすると、そのためには銀行が融資したくなるような会社になる、ということが必要になります。

 

銀行の立場で考えると、融資したくなるような会社とは確実に利息を支払い、元本を返済してもらえる会社です。さらに、今後の成長が見込める会社です。銀行は決算書などを確認しながら、これらのことを判断しています。

 

本稿では、まず銀行が融資の可否を判断する上で何を見ているのか、について確認し、銀行がつい融資をしたくなる決算書とはどういうものなのか、具体的に決算書の項目に沿って整理します。

 

 

 

3-1 銀行は何を見ているのか

当たり前のことですが銀行も企業です。企業である以上は、利益を得なければなりません。また、融資担当者は組織人です。組織人である以上は上司を説得しなければなりません。

 

銀行にとっての利益とは利息です。利息をきちんと払ってくれる会社は良い顧客と考えて、積極的に融資をします。逆に、利息を払えない、あるいは最悪の場合、元本の回収ができないような会社には、できる限り融資を避けたいと考えるでしょう。

 

このように銀行の立場に立って考えてみると、どうすれば融資を受けやすくなるのか、という感覚を少し感じ取れるのではないでしょうか。

 

まずは、銀行の立場から、融資の可否を判断するにあたって何を基準にしているのかについて理解する必要があります。

 

銀行の担当者は、融資の可否を判定するにあたり、必ず面談を求めるはずです。そして面談の際には、決算書や事業計画の提出を求め、説明を受けながら内容を確認していることでしょう。

 

つまりこれらが、銀行が融資判断の基準として見ているものです。すなわち、決算書や事業計画等から見る定量的情報と、経営者自身から見る定性的情報です。

 

担当者は定量的情報や定性的情報を見て、評価します。その上で、上司や本店に対して稟議を上げます。つまり、結局は担当者の良い評価を得ることが、融資を引き出しやすくする唯一の方法であるといえます。

 

それでは、定性的評価や定量的評価とは具体的にどういうものなのか、確認していきましょう。

 

 

 

3-2 定性的評価とは?

定性的評価は、経営者との面談を通じて、蓄積されていく数値にできない情報をもとに行われます。具体的に言えば、経営者の姿勢やモラル、さらには経営者個人の資産なども含まれます。

 

銀行担当者との面談の際には、決算や経営状況、あるいは将来のビジョンなどについて説明することになります。ここで、経営者自身が財務や経営計画に対してどれだけ真摯に取り組んでいるのかを、銀行担当者はよく見ています。

 

こうした情報は、その企業を信頼できるか、という指標になるでしょう。経営者自身に対する信頼感は、その企業への信頼に直結するからです。また、経営者個人の資産は万が一の際に債権を回収するための担保となり得ます。

 

このようにして、定性的情報は融資判断をする上で評価の対象となっています。

 

定性的評価は客観的に測定することは難しいので、実際には、担当者の心証として少しずつ蓄積されていくという性質があります。

 

その意味では、すぐに対策できるようなものではないのですが、やはり一つ一つ誠実に対応していくということが最も重要なことだと言えます。

 

 

 

3-3 定量的評価とは?

他方で、定量的評価とは単純に決算書等から見る財務情報にもとづく評価です。こちらは定性的評価に比べて客観的に評価することが可能です。

 

このため、銀行が融資したくなるような決算書になるよう、少しでも近づける努力が必要です。決算書の作成は税理士に任せっぱなしの経営者も多いと思いますが、基本的に税理士は税金対策を最優先に考えます。

 

税金対策という面で最適な決算書が、融資判断にも最善であるとは限りません。逆に融資判断では不利に働くケースもあります。税理士に丸投げせずに、日頃から融資に有利になる決算書になることを意識して、経営活動や会計処理を実践しておくことが重要です。

 

 

4 融資したくなる決算書とは?

それでは、銀行が融資したくなるような決算書とはどのようなものでしょうか。決算書の具体的な勘定科目に沿って、重要なポイントについて整理していきます。

 

 

 

4-1 流動資産と流動負債

流動資産には現金や売掛金、在庫(棚卸資産)などがあります。流動負債には買掛金や短期借入金などがあります。

 

流動資産と流動負債は、いずれも当座の支払いに関連する資産と負債です。つまり、比較的早期に支払期限が到来する債務と、比較的速やかに現金化できる資産です。これらは資金繰りや支払い能力を端的に示すものなので、銀行の注目度も高いと言えます。

 

1 現金や売掛金

現金や売掛金は、支払い能力を如実に表します。つまり、即座に支払いに充てられる財産がどれだけあるか、ということを示しますから、銀行が融資をした際にきちんと返せるかどうか、を判断するにはうってつけです。

 

売掛金はまた別の観点からも銀行のチェック対象になり得ます。それは、粉飾が疑われるような場合です。

 

利益を増やそうと架空の売上を計上するような場合、実際に現金は入ってきませんから、とりあえず売掛金として処理する傾向があります。そのため、前期と比べて売掛金の額が大きく増えている場合などは、きちんとした説明ができなければ銀行の信頼を失ってしまうことにつながりかねません。

 

2 在庫

在庫資産は、基本的には売上となってすぐに現金化されます。そのため、支払能力として考慮することができます。

 

ただし、在庫も粉飾に利用されることがあります。売掛金の事例とは逆に、費用を少なく見せるために、在庫を水増しするという手口です。このようなことがあるので、やはり銀行はチェックの目を光らせます。在庫の評価額については気を払っておく必要があるでしょう。

 

3 買掛金・短期借入金

買掛金や短期借入金は、近いうちに支払い期限が到来する債務です。これから融資をしようとする銀行にとっては、自身の債権を回収する際のライバルになると考えられます。

 

特に借入金残高は、融資可否判断に重要な影響を及ぼすものです。

 

4 流動比率

流動資産と流動負債に関連する指標として、資金繰りや支払能力を表す流動比率と呼ばれるものがあります。

 

流動比率は、流動資産を流動負債で割って求めます。非常に簡便的に支払能力を把握することができますので、古くから使用され、「銀行家比率」という別名があるくらいです。

 

流動比率の良し悪しを判断する基準として経験的に言われているのが、100%以上が必須で150%以上で優良、200%以上が理想となります。

 

つまり、近い将来に支払いが予定されている額の2倍以上の資金を準備できている状態が、支払い能力に余裕がある状態ということです。

 

実態として、流動比率が200%以上となるような企業は現実的にはあまり無いのですが、それでも銀行はこの比率を必ずチェックしています。

 

自社の流動比率を意識して、売上や仕入れの決済条件の改善を、日常から心がけておくことが重要であると言えます。

 

 

 

4-2 純資産の状況

純資産についても、銀行は必ずチェックします。ここでは純資産の額そのもの、そして自己資本比率が重要です。

 

1 純資産

純資産は、全ての資産から全ての負債を差し引いた正味の財産の額を表しています。

 

もし仮に今、会社を清算することになったとすると、全ての資産を売却して現金化し、そこから債務を返済することになります。正味の財産というのは、全ての債務を返済し終えたあと、手元にどれだけ残るのか、ということを意味しています。

 

もちろん、土地や建物などは決算書で時価評価していませんから、実際に売却した場合の金額と乖離があります。それでも純資産の額は、一つの情報として参照され評価されることになるのです。

 

仮に、この数値がマイナスとなっていようものなら、全ての資産を処分しても債務を完済できない状態に既に陥っている、ということになります。こうなると、新たな融資を引き出すのはかなり困難になるというのは想像に難くありません。

 

2 自己資本比率

純資産のもう一つの重要な意味合いとして、自己資本としての側面があります。

 

前述のとおり、純資産は資産から負債の額を控除して計算できますが、その内容に着目すると、株主から出資された資本金がその中心です。

 

資本金以外にも、獲得した利益の蓄積など、その他の純資産の構成要素はありますが、基本的にはそれらは全て株主に帰属するものと考えられており、株主資本と呼ばれるものです。

 

ここで、銀行にとって重要なことは、株主資本は返済の必要が無いということです。

 

負債と純資産をあわせて総資本と呼びますが、これは資金調達の総額を意味します。逆に言えば、調達した資金は返済の必要がある負債(他人資本とも呼びます)と純資産(自己資本と呼びます)に分けることができるのです。

 

このように考えると、資金調達総額のうち、返済の必要がないものの割合がどれくらいか、という指標は、融資可否判断をするにあたって財政基盤の安定性を測る上で重要な意味合いを持っています。

 

数式で表すと(純資産額÷総資本)となります。これが自己資本比率です。

 

自己資本比率が0.5(50%)を超えていれば、一般に優良と判断されています。

 

 

 

4-3 利益の状況

損益計算書で計算される利益の額は何種類かあります。それぞれ目的と特徴が異なっているため、それぞれが評価の対象になり得ます。

 

損益計算書の構造を確認しながら、一つ一つとらえていきましょう。

 

1 売上総利益

損益計算書では、まずはじめに、売上高から売上原価を控除します。これは、1年間に達成した収益と、それを獲得するために直接的に必要となった費用を対応させるものです。

 

簡単に言えば、売り上げた商品の売価と仕入原価の差額です。「粗利(あらり)」とも呼ばれ、最も簡便的な利益の指標となります。

 

ある意味、企業活動の根幹部分から生み出されている利益と言えますから、売上総利益が高いということは、それだけ安定的な利益獲得が可能なビジネスモデルであると評価することができます。

 

2 営業利益

営業利益は、売上総利益から「販売費及び一般管理費」を控除して求めます。販売費及び一般管理費は、商品の配送や広報など販売にかかるコストや、経営企画や総務など、企業経営の全般にかかる管理活動のためのコストを意味します。

 

販売費や一般管理費も商品を販売するために必要不可欠なコストですから、これらを控除することで、営業活動によってどれだけの利益が得られたのかを表すことになります。

 

ここで注意しなければならないのが、販売費及び一般管理費の中で大きな割合を占めるであろう減価償却費です。

 

減価償却費は、過去に取得した固定資産を今年一年間でどれだけ消費したかを表したものです。つまり、設備投資のボリュームがここに表れます。

 

設備投資は既に行ってしまっているので、減価償却費が高すぎるという状況に陥っていたとしても、簡単には解消できません。

 

設備投資が適正規模かどうかについても、銀行はチェックします。その結果は減価償却費に表れてきますから、事前のシミュレーションを綿密に行っておくことが重要です。

 

3 経常利益

営業利益に、営業外収益を加算し、営業外費用を控除して経常利益を求めます。

 

営業外収益・費用とは、営業活動以外の活動から発生した利益や費用のことです。具体的には、主に資金調達や余剰資金の運用などの金融活動が含まれます。

 

企業は、営業活動を通じて資金を獲得しますが、そこから新たな事業に資金を再投下しても、まだ資金が残る場合があります。これを放っておいても1円の得にもなりませんから、株式や債券、あるいは長期性預金などに投資して少しでも利益を得ることを目指します。

 

そこで、このような余剰資金の運用の結果、利息や配当金といった利益を得ることができます。これが営業外収益の主なものです。

 

また、資金調達活動として資金の借り入れを行っている場合には、利息の支払いも必要となります。これが営業外費用の主なものです。

 

このような金融活動から発生した収益や費用は、本業にもとづくものではありませんが、毎期継続的に反復して発生するものです。このような収益・費用も含めた利益額は、通常であれば毎期獲得できるであろう利益の水準を示すものとして考えることができるのです。

 

「経常利益」の「経常」とは、常に一定的に継続すること、という意味ですから、企業の本来の実力を示す数値として評価されます。企業の業績を測定する上では最も重要な指標となります。

 

そのため、金融活動でも安定的に利益を確保できるように留意する必要があるでしょう。特に、支払利息をカバーできるくらいの金融収益は確保できるように資産運用を考えていく必要があるでしょう。

 

4 当期純利益

経常利益に特別利益を加算し、特別損失を控除すると税引前当期純利益となります。そこから法人税等の額を控除したものが、最終利益である当期純利益となります。

 

特別利益や特別損失とは、臨時的な要因によって発生した利益や損失のことです。例えば、固定資産を売却した際に、簿価よりも高く、あるいは安く売れた場合に発生する売却損益があります。また、予期せぬ盗難や災害などによって、資産が滅失することも特別損失の一つです。

 

このように、予見できない原因から発生した損益も、当然最終的な利益計算には含めなければなりません。こうして特別利益と特別損失を加減することで、税引前当期純利益を計算します。

 

そして、法人税等の額は、この税引前当期純利益をもとに計算されます。もちろん、そのままの額ではなく、税法上の調整を加味して税額を計算することになります。

 

このようにして計算した税額を控除したものが、最終利益である当期純利益となります。これが、最終的に株主に帰属する利益ということになります。

 

現実にいくらもうけたのか、という数値が当期純利益ですから、銀行も当然この数値を確認することになるでしょう。

 

しかしながら、当期純利益は経常利益ほど企業の実力を反映しません。特別利益や損失は、臨時的な要因によって発生したものですが、銀行にとって、より重要なことは、企業が経常的に利益を出し続けて利息を払ってもらうことです。

 

その意味で、融資を引き出すにはやはり、経常利益を意識したほうが良いと言えます。とは言え、毎期連続して特別損失が出ているような場合には、経常的に稼ぐ力に疑念が生じます。当期純利益の推移にも、一応、気を払う必要はあるでしょう。

 

 

 

4-4 その他の項目

決算書の中で銀行が関心を寄せる主な項目について説明しました。しかし、これ以外にも決して忘れてはいけない項目もあります。

 

最後に、その他留意すべき事項についてまとめます。

 

1 固定資産の評価

固定資産は、長期間にわたって使用することを前提として保有している資産です。このため、決算書上は資金繰りの基準となる流動資産には含まれていません。

 

しかしながら、一部の固定資産は、市場での流通性が高かったり、優れた技術が評価されて、価値が上がっているような場合があります。

 

このような場合は、固定資産であっても担保としての価値を持つことになりますので、融資判断においてプラスに働く可能性があります。

 

他方、既に保有している土地の価値が下がっている場合もあります。土地の評価額は、決算書上では取得した金額のまま変わりません。もし時価が著しく下落していた場合には、含み損を抱えていることになります。

 

含み損は、すぐには損失につながりませんが、財政上のリスクになります。当然、銀行はリスクを避けようとしますから、査定にはマイナスに影響する可能性があるということです。

 

2 フリーキャッシュフロー

決算書としてキャッシュフロー計算書を作成する中小企業は少ないですが、作成している場合に、これがアピールポイントになる場合があります。

 

フリーキャッシュフローとは、営業活動にかかるキャッシュフローと投資活動にかかるキャッシュフローを合算したものです。つまり、本業で獲得したキャッシュから、本業を維持するために必要な設備投資にかかる支出を除いた金額なので、企業が自由に扱うことができるキャッシュを表します。

 

つまり、フリーキャッシュフローがプラスであるということは、借り入れの返済に充てるための十分な原資がある、ということを直接的に示しますから、銀行にとってこれほどの好条件はありません。

 

フリーキャッシュフローが継続的にプラスであれば、きわめて強い魅力になるでしょう。

 

 


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