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経営者のための労働基準法 〜有給休暇編〜

正社員でもパートでも有給休暇の取得は法律で義務付けられています。与えられる有給日数は勤続期間により異なりますが、経営者は、パート従業員など労働日数が正社員よりも少ない雇用形態でも年次有給休暇を与えなければなりません。この規定に違反すると、労働基準法第119条の定めにより「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」が会社に課せられることになります。

 

 

 

目次

  1. 1 有給休暇制度の概要
  2. 1-1 正社員に与える有給日数
  3. 1-2 パート社員に与える有給日数
  4. 1-3 計画年休制度
  5. 2 有給休暇には時効がある
  6. 3 不利益取扱いの禁止

 

1 有給休暇制度の概要

厚生労働省によれば、有給休暇とは一定期間働いた労働者に対して休みをとっても賃金が減額されない休暇であり、心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために与えられる休暇と定義されます。

 

 

1-1 正社員※に与える有給日数

経営者は、従業員を雇い入れの日から起算して6ヶ月以上雇い、かつ、従業員が全労働日の8割以上出勤した場合、10日の有給休暇を与えなければなりません。労働日とは就業規則で定めた休日以外の労働義務がある日のことです。

 

なお、従業員が有給休暇を請求した時季のとおりに経営者は与える必要があります。ただし、従業員が指定した時季が繁忙期など、正常な経営を妨げる可能性がある場合は、他の時季に移すことができます。

 

・正社員の有給休暇日数

勤務期間 休暇日数
6か月 10労働日
1年6か月 11労働日
2年6か月 12労働日
3年6か月 14労働日
4年6か月 16労働日
5年6か月 18労働日
6年6か月以上 20労働日

※ ここでいう正社員とは、週所定労働時間が30時間以上、所定労働日数が週5日以上、または1年間の所定労働日数が217日以上の労働者を指します。

 

また、有給休暇を取っている従業員を、会社の都合で呼び出すことはできません。労働者本人が同意している場合には、呼び出すこともできますが、その場合は年休を取り消して改めて与えることが推奨されます。

 

 

1-2 パート社員に与える有給日数

労働日数が正社員よりも少ないパート社員にも有給休暇を与えなければなりません。付与する日数は次のように定められています。

 

・ パート社員の有給休暇日数

週間労働日数 年間労働日数 勤務期間
半年 1年半 2年半 3年半 4年半 5年半 6年半
1日 48日~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日
2日 73日~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
3日 121日~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
4日 169日~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日

 

 

1-3 計画年休制度

会社の労使協定に基づいて、年休の計画的な取得を可能にする制度を計画年休といいます。昭和62年の労働基準法の改正で認められるようになった制度です。あらかじめ労使協定により年休の時季を定めておく必要がありますが、計画的に付与する有給休暇の日数は、各従業員がもつ年休のうち5日を超える部分とされています。

 

付与方法として、例えば事業場全体を休業とする一斉付与、交代制で班別の交替制付与、個人別に年休計画表をもとに付与する個人別付与方式があります。

 

・計画年休の方式

一斉付与方式 事業場全体を休業とし全員に年休を与えるもの。労使協定では具体的な日にち(8月1日~8月7日のように)を定める
班別付与方式 交替制で班別に年休を与えるもの。労使協定では班別に具体的な日にちを定める
個人別付与方式 計画表により個人別に年休を与えるもの。労使協定では計画年休の日数、計画表を作成する時期、スケジュール調整の方法を定める

(参照:J-Net21

 

 

2 有給休暇には時効がある

有給休暇は、労働基準法第115条の規定により、与えた日から2年で時効となります。1年間で使い切れなかった有給休暇は翌年に繰り越され、新たに与えられた有給休暇に加算されますが、さらに1年使わなかった場合、時効により消滅となります。

 

たとえば、年度の初日に発生した休暇は、翌年度末で時効により消滅します。

 

時効

(参照:東京労働局)

 

 

3 不利益取扱いの禁止

年次有給休暇取得による不利益な取扱いは禁止されています(労働基準法第136条)。つまり、有給休暇を取得したからといって、降格、減給、配置換えなど従業員にとって不利益な処遇を施すことはできません。

 

年休を取得した日は、出勤したものとみなし、通常の賃金の支払いが必要というのが有給休暇制度の趣旨ですので、たとえば、賞与の計算に際して、従業員の年休取得日を欠勤扱いとすることはできません。

 

また、年次有給休暇を取得したことで、「皆勤手当」がもらえなくなったという事例がありますが、原則皆勤手当は支給されなければなりません。

 

労働基準法第136条では「精皆勤手当及び賞与の額の算定等に際して、年次有給休暇を取得した日を欠勤として、又は欠勤に準じて取り扱うことその他労働基準法上労働者の権利として認められている年次有給休暇の取得を抑制するすべての不利益な取扱いはしないようにしなければならないものであること。」と定めています。

 

 


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