世界的に見ても過酷な労働環境で知られる日本。始業時刻には厳しく終業時刻には緩いといった批判も多く、社会人は日々ストレスと戦っています。
厚生労働省は9月、最新版の「労働安全衛生調査」の調査結果を発表。現在の自分の仕事や職業生活に関することで「強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄がある」と回答した労働者が昨年より増加し、約6割におよんだことが明らかとなりました。
このほか、職場における喫煙行為に関して、「職場で他の人のたばこの煙を吸引すること(=受動喫煙)がある」労働者は約3.5割、このうち、「不快に感じること、体調が悪くなることがある」労働者は37.1%だったこと分かりました。
メンタルヘルス対策としてストレスチェックに取り組む企業が増えてきた昨今。過労自殺など最悪のケースが起こらないよう、企業には社員に対する適切なストレスケアが求められています。
1 現代人のストレスマネジメント
厚労省は正規労働者および非正規労働者1万8000人を対象に、仕事や職業生活における不安やストレスに関する事項、喫煙に関する事項についてアンケート調査を毎年行っています。今回の労働者調査では1万8025人のうち、1万109人(有効回答率56.1%)の回答を得ることができました。
1-1 約6割が仕事に強いストレスを感じている
多種多様なストレスに晒されている現代人。今回調査では、「現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある」とする労働者の割合は前年比3.5ポイント上昇の59.5%だったことが明らかとなりました。
過去4年間を見てみると、2012年の60.9%が最も高く、翌年には52.3%まで下がったものの、2015年には55.7%に上昇したことで、昨年は2年連続の上昇となりました。
(厚生労働省より)
年齢別にみると、30〜39歳で64.1%と最も高く、次いで50〜59歳(61.3%)、20〜29歳(59.8%)、40〜49歳(59.2%)、20歳未満(46.9%)、60歳以上(43.2%)と続きました。
・ 年齢層別「強いストレスを感じている」割合
年齢 | 割合 |
---|---|
20歳未満 | 46.9% |
20〜29歳 | 59.8% |
30〜39歳 | 64.1% |
40〜49歳 | 59.2% |
50〜59歳 | 61.3% |
60歳以上 | 43.2% |
(厚生労働省「労働安全衛生調査」より作成)
1-2 内容は「仕事の質・量」が最多53.8%
ストレスの内容では、「仕事の質・量」が53.8%で最も多くなりました。次いで、「仕事の失敗、責任の発生など」38.5%、「対人関係(パワハラ・セクハラなど)」30.8%、「役割・地位の変化等(昇進、昇格、配置転換)」26.8%、「会社の将来性」22.2%、「雇用の安定性」14.0%、「その他」11.6%、「事故や災害の体験」2.0%となりました。
・ 強いストレスと感じている内容
内容 | 割合 |
---|---|
仕事の質・量 | 53.8% |
仕事の失敗、責任の発生など | 38.5% |
対人関係(パワハラ・セクハラなど) | 30.8% |
役割・地位の変化等(昇進、昇格、配置転換) | 26.8% |
会社の将来性 | 22.2% |
雇用の安定性 | 14.0% |
その他 | 11.6% |
事故や災害の体験 | 2.0% |
(厚生労働省「労働安全衛生調査」より作成)
2 企業によるメンタルヘルス対策
調査によれば、過去1年間にメンタルヘルスの不調により連続1か月以上休業した労働者の割合は、昨年と同じで0.4%、退職した労働者の割合も昨年と同じで0.2%となっています。
2-1 IT企業が体調を崩しやすい?
産業別に見ると、連続1か月以上休業した労働者は「情報通信業」が1.2%と最も高くなります。
次いで、「金融業、保険業」1.0%、「電気・ガス・熱供給・水道業」0.8%、「複合サービス業」0.6%、「学術研究、専門・技術サービス業」0.5%、「製造業」「不動産業、物品賃貸業」0.4%、「建設業」「運輸業、郵便業」「卸売業、小売業」「教育、学習支援業」「医療、福祉」「サービス業」0.3%、「農業、林業」「鉱業、採石業、砂利採取業」0.2%、「生活関連サービス業、娯楽業」0.1%、「宿泊業、飲食サービス業」0.0%と続きました。
・ 産業別 連続1ヶ月以上休業した労働者の割合
区分 | 割合 |
---|---|
農業、林業 | 0.2% |
鉱業、採石業、砂利採取業 | 0.2% |
製造業 | 0.3% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 0.4% |
情報通信業 | 0.8% |
運輸業、郵便業 | 1.2% |
卸売業、小売業 | 0.3% |
金融業、保険業 | 0.3% |
不動産業、物品賃貸業 | 1.0% |
学術研究、専門・技術サービス業 | 0.4% |
宿泊業、飲食サービス業 | 0.0% |
生活関連サービス業、娯楽業 | 0.5% |
教育、学習支援業 | 0.3% |
医療、福祉 | 0.3% |
複合サービス業 | 0.6% |
サービス業(他に分類されないもの) | 0.3% |
(厚生労働省「労働安全衛生調査」より作成)
2-2 退職するのは「医療、福祉」業が最多
一方、退職した労働者は「医療、福祉」が0.4%と最も高くなりました。
次いで「情報通信業」「金融業、保険業」「宿泊業、飲食サービス業」0.3%、「鉱業、採石業、砂利採取業」「製造業」「学術研究、専門・技術サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」「教育、学習支援業」「サービス業」0.2%、「農業、林業」「建設業」「電気・ガス・熱供給・水道業」「運輸業、郵便業」「卸売業、小売業」「複合サービス業」0.1%と続きました。
・ 産業別 退職した労働者の割合
区分 | 割合 |
---|---|
農業、林業 | 0.1% |
鉱業、採石業、砂利採取業 | 0.2% |
製造業 | 0.1% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 0.2% |
情報通信業 | 0.1% |
運輸業、郵便業 | 0.3% |
卸売業、小売業 | 0.1% |
金融業、保険業 | 0.1% |
不動産業、物品賃貸業 | 0.3% |
学術研究、専門・技術サービス業 | 0.2% |
宿泊業、飲食サービス業 | 0.3% |
生活関連サービス業、娯楽業 | 0.2% |
教育、学習支援業 | 0.2% |
医療、福祉 | 0.4% |
複合サービス業 | 0.1% |
サービス業(他に分類されないもの) | 0.2% |
2-3 メンタルヘルス対策の取り組み内容
メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は前回調査時より3.1ポイント下がり56.6%となりました。取組内容をみると、「ストレスチェック(労働者のストレスの状況などについて調査票を用いて調査)」が62.3%と最も多くなります。
次いで「メンタルヘルス対策に関する労働者への教育研修・情報提供」38.2%、「メンタルヘルス対策に関する事業所内での相談体制の整備」35.5%、「メンタルヘルス対策に関する管理監督者への教育研修・情報提供」29.2%、「メンタルヘルス対策について、安全衛生委員会等での調査審議」26.9%、「職場環境等の評価及び改善(ストレスチェック後の集団(部、課など)ごとの分析を含む)」26.6%、「メンタルヘルス対策の実務を行う担当者の選任」25.8%、「職場復帰における支援(職場復帰支援プログラムの策定を含む)」17.9%、「メンタルヘルス対策に関する問題点を解決するための計画の策定と実施」16.3%、「他の外部機関を活用したメンタルヘルス対策の実施」15.1%と続きました。
・ 企業によるメンタルヘルス対策
区分 | 割合 |
---|---|
メンタルヘルス対策について、安全衛生委員会等での調査審議 | 26.9% |
メンタルヘルス対策に関する問題点を解決するための計画の策定と実施 | 16.3% |
メンタルヘルス対策の実務を行う担当者の選任 | 25.8% |
メンタルヘルス対策に関する労働者への教育研修・情報提供 | 38.2% |
メンタルヘルス対策に関する管理監督者への教育研修·情報提供 | 29.2% |
メンタルヘルス対策に関する事業所内の産業保健スタッフへの教育研修・情報提供 | 11.6% |
職場環境等の評価及び改善(ストレスチェック後の集団(部、課など)ごとの分析を含む) | 26.6% |
健康診断後の保健指導におけるメンタルヘルス対策の実施 | 31.2% |
労働者のストレスの状況などについて調査票を用いて調査(ストレスチェック) | 62.3% |
職場復帰における支援(職場復帰支援プログラムの策定を含む) | 17.9% |
メンタルヘルス対策に関する事業所内での相談体制の整備 | 35.5% |
地域産業保健センター(地域窓口)を活用したメンタルヘルス対策の実施 | 4.0% |
産業保健総合支援センターを活用したメンタルヘルス対策の実施 | 2.8% |
医療機関を活用したメンタルヘルス対策の実施 | 12.3% |
他の外部機関を活用したメンタルヘルス対策の実施 | 15.1% |
その他 | 7.5% |
(厚生労働省「労働安全衛生調査」より作成)
3 職場での喫煙行為は迷惑?
職場で喫煙する労働者の割合は前年比0.2ポイント上昇となる25.3%でした。年齢別では30〜39歳が29.5%の喫煙率が最も高くなります。
一方、最も低かったのは20歳未満で3.0%でした。このほか、20〜29歳(20.3%)、40〜49歳(26.7%)、50〜59歳(23.6%)、60歳以上(22.8)となりました。
・ 年齢階層別 喫煙率割合
年齢 | 割合 |
---|---|
20歳未満 | 3.0% |
20〜29歳 | 20.3% |
30〜39歳 | 29.5% |
40〜49歳 | 26.7% |
50〜59歳 | 23.6% |
60歳以上 | 22.8% |
(厚生労働省「労働安全衛生調査」より作成)
3-1 「受動喫煙ある」34.7%
職場で受動喫煙(他の人のたばこの煙を吸引すること)があると回答した労働者の割合は、「ほとんど毎日ある」13.4%、「ときどきある」21.3%で、合計34.7%(前年比1.9ポイント増)となりました。
3-2 受動喫煙で「不快に感じる、体調が悪くなる」37.1%
職場での喫煙に関して不快に感じること、体調が悪くなることの有無についての調査では、「不快に感じること、体調が悪くなることがある」と回答する労働者の割合は18.8%となります。
このうち、「職場で受動喫煙がある」と回答する労働者でみると、「不快に感じること、体調が悪くなることがある」とする労働者の割合は37.1%におよびました。
「受動喫煙防止対策として望むこと」に関するアンケートでは、禁煙場所の設定として職場に望むことがある労働者の割合は、前年より約5ポイント増え、62.5%となりました。
また、どの場所を喫煙場所として設定するのが適切かのアンケートでは、「事業所の内部に空間的に隔離された喫煙場所(喫煙室)を設け、それ以外の場所は禁煙にすること」が39.2%と最も多くなりました。
次いで「屋外を含めた事業所敷地内全体を禁煙にすること」26.2%、「事業所の建物内全体(執務室、会議室、食堂、休憩室、商談室等含む)を禁煙とし、屋外のみ喫煙可能とすること」24.3%と続きます。
受動喫煙防止対策 | 割合 |
---|---|
事業所の内部に空間的に隔離された喫煙場所(喫煙室)を設け、それ以外の場所は禁煙にすること | 26.2% |
屋外を含めた事業所敷地内全体を禁煙にすること | 24.3% |
事業所の建物内全体(執務室、会議室、食堂、休憩室、商談室等含む)を禁煙とし、屋外のみ喫煙可能とすること | 39.2% |
事業所の内部に空間的に隔離されていない喫煙場所(喫煙コーナー)を設け、それ以外の場所は禁煙にすること | 5.1% |
上記以外の方法で、事業所内の喫煙可能場所と喫煙場所を区分すること | 5.2% |
(厚生労働省「労働安全衛生調査」より作成)