例年より桜の開花が一週間ほど遅れた2017年、全国各地で入社式が続々と開かれました。今年は約89万人の新人が社会人として新たなスタートを切りました。東京都庁では入庁式が開かれ、約2000人の新人職員を前に小池知事がスピーチを行い、エールを送りました。
今年度入社の有効求人倍率は1.40倍と売り手市場が続き、大卒予定者の就職内定率は90%(2月時点)でした。来年度もこの傾向は続くと予測されます。
目次
- 1 2017年入社組の就職内定状況
- 1-1 男子は国公立大学、女子は私立大学のほうが高い
- 1-2 理系の内定率が文系を上回る
- 2 今年の新入社員は「キャラクター捕獲ゲーム型」
- 2-1 キャラクター捕獲ゲーム型って?
- 2-2 2017年の就活の特徴
- 3 2018年度の採用活動予測
- 3-1 18卒採用はますます早期化!?
- 3-2 優秀な人材は土俵ずらしで獲得せよ
1 2017年入社組の就職内定率は過去最高
平成29年3月卒業の大学生就職内定率(10月1日現在)を調査した厚生労働省によれば、就職内定率は、大学で前年比2.8%の増加となる90.6%、短期大学で前年比2.5%の増加となる88.5%、全体では2.7%増加して90.9%となりました。
また専修学校を含めると前年比2.3%増加の90.2%でした。昨年10月時点での調査のため、2017年4月より数値は低くなりますが、大学・短期大学ともに前年同期比の就職内定率を上回り、過去最高を記録しました。企業の採用意欲は年々高まっているといえます。
・ 大学生の就職内定率
大学等 | 内定率 | 前年同期比 |
---|---|---|
大学(4年制) | 90.6% | +2.8% |
短期大学 | 88.5% | +2.5% |
全体 | 90.9% | +2.7% |
1-1 男子は国公立大学、女子は私立大学のほうが高い
就職内定率を男女別にみると、男子は前年より2.3%増えて88.8%、女子は3.5%増えて92.8%でした。
・ 男子の就職内定率(大学)
・ 女子の就職内定率(大学)
また、国公立大学では、男子91.5%、女子90.3%、私立大学では、男子88.0%、女子93.6%となりました。
男子では国公立大学出身のほうが内定率は高く、女子では私立大学出身のほうが高くなったのが特徴的です。
・ 男女別の就職内定率
国公立大学 | 私立大学 | 全体 | |
---|---|---|---|
男子 | 91.5% | 88.0% | 88.8% |
女子 | 90.3% | 93.6% | 92.8% |
1-2 理系の内定率が文系を上回る
文系・理系別にみると、文系の就職内定率は前年より3.0%増えて90.3%、理系は前年より1.9%増えて92.1%となりました。
近年、日本人によるノーベル賞受賞が続いたことから、第一生命による小学生を対象とした「大人になったらなりたいもの」のアンケート調査で学者・博士が2位になるなど、理系人気が高まっていると言われます。
(参照:厚生労働省及び文部科学省 平成28年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査(2月1日現在))
2 今年の新入社員は「キャラクター捕獲ゲーム型」
公益財団法人の日本生産本部が毎年行っている新入社員の特徴に関する調査研究で、平成29年度入社組の特徴を「キャラクター捕獲ゲーム型」と表現しました。調査研究では、就業や教育の専門家で構成されたメンバーが、多くの企業・学校の協力を得て、新入社員の特徴や就職状況などに関するレポートが作成されます。
2-1 キャラクター捕獲ゲーム型って?
日本生産性本部は、「キャラクター捕獲ゲーム型」について次のように説明します。
「キャラクター(就職先)は数多くあり、比較的容易に捕獲(内定)出来たようだ。一方で、レアキャラ(優良企業)を捕まえるのはやはり難しい。すばやく(採用活動の前倒し)捕獲するためにはネット・SNSを駆使して情報収集し、スマホを片手に東奔西走しなければならない。必死になりすぎてうっかり危険地帯(ブラック企業)に入らぬように注意が必要だ。はじめは熱中して取り組むが、飽きやすい傾向(早期離職など)も。モチベーションを維持するためにも新しいイベントを準備して、飽きさせぬような注意(やりがい、目標の提供)が必要」(参照:公益財団法人日本生産性本部)
今年の新入社員の特徴を、2016年に話題となったスマートフォン向けゲームアプリのポケモンGOなどのゲームシステムになぞらえました。
・近年の新入社員のタイプ名
入社年度 | タイプ | 特徴 |
---|---|---|
2016年度 | ドローン型 | 追い風(めまぐるしい就職活動日程や経済状況など)に煽られながらも自律飛行を保ち、目標地点(希望する就職先)に着地した |
2015年度 | 消せるボールペン型 | 不用意に熱を入れる(指導する)と、色(個性)が消えてしまったり、インクが切れてしまう(離職する) |
2014年度 | 自動ブレーキ型 | 知識豊富で敏感。就職活動も手堅く進め、そこそこの内定を得ると、壁にぶつかる前に活動を終了 |
2013年度 | ロボット掃除機型 | 一見どれも均一的で区別がつきにくいが、部屋の隅々まで効率的に動き回り家事など時間の短縮に役立つ |
2012年度 | 奇跡の一本松型 | 今のところは未知数だが、先輩の胸を借りながら(接木)、その個性や能力(種子や穂)を育て、他の仲間とつながって大きく育つ(松原)だろう。 |
2-2 2017年の就活の特徴
また、日本生産性本部は、企業の積極的な採用が目立った2017年の就職活動について
「中堅、中小企業を中心に採用予定数を達成できない企業もあり、採用活動に工夫が求められる状況もあった」
としつつ
「就職先の条件として異常な長時間勤務やパワハラのないことを重視する傾向が見られた」
と分析。就職活動生による慎重な企業選びが行われたと評価しました。
3 2018年度の採用活動予測
2017卒から2ヶ月前倒しとなった就活スケジュール。エントリーシートや履歴書の締め切りを3月までとする企業が増えたことで、学生が準備活動に費やす期間が短くなりました。
・ 一般的な就職活動スケジュール(2017卒の例)
(参照:リクナビ)
3-1 18卒採用はますます早期化!?
調査会社OfferBoxの新卒採用市場レポートによれば、2018年卒も企業の採用活動の早期化を影響受けるとみられ、3月以降の企業の選考活動の計画について、2割の企業が「面接開始時期を早める」、1,000名以上の企業の5割以上が「3月4月での面接開始予定」答えていることが明らかとなりました。
3-2 優秀な人材は土俵ずらしで獲得せよ
2018年から18歳人口はさらに減少することから、調査会社OfferBoxは、ますます日本人学生の採用競争は厳しくなると予測します。その結果、各企業に採用戦略の転換が必要だと訴えました。
「いかに土俵をずらし、競争優位性を高めるか。自社が採用したいターゲットの学生を具体的にすればするほど、その学生がどこにいけば会えるのかが明確になる。関東エリアでも少し郊外の大学になると企業も足を運ばなくなるし、旧帝大であっても不人気学部には人事もリクルーターもこない」
(参照:OfferBox【最新版・市場レポート】どうなる?2018年新卒採用)
そこで、企業自身が積極的に人材を探し出して直接アプローチを行う「ダイレクトリクルーティング」の手法が重要になるとされます。