3月3日に発売が決まっている任天堂の新型ゲーム機「Nintendo Switch」。
世界中の子ども達から愛される待望の最新ゲーム機に投資家からも注目されていました。
ところが、今年に入って行われたプレゼンテーションで、ニンテンドー・スイッチの価格を発表した直後、任天堂株が急落。一体何があったのでしょうか。
目次
- 1 満を持して発表したはずだったが……
- 1-1 任天堂史上、もっとも売れなかったWii U
- 1-2 Nintendo Switchの特徴
- 2 株価急落の理由は本体価格の高さ?
- 2-1 「ポケモンGO!」景気で一時は3万超え
- 2-2 本体価格が高く、リリースタイトルも少なめ
- 3 任天堂はゲームの王様に返り咲くことはできるか
- 3-1 ゲーム市場の未来はどうなる?
- 3-2 任天堂の今後の戦略
1 満を持して発表したはずだったが……
出典:任天堂
ニンテンドー・スイッチは、2016年11月に生産終了を発表されたWii U(ウィー ユー)の後継機となる据え置き型のゲーム機です。
「NX」と呼ばれるコードネームでひそかに開発が進められ、正式発表前にもかかわらず海外メディアで本体写真がリークされるほど注目を集めていました。
1-1 任天堂史上、もっとも売れなかったWii U
出典:Attack of the Fanboy
任天堂の君島達己社長が昨年4月の決算説明会の場で、新型ゲーム機を明らかにした際、「『Wii U』の大幅な減少は、『NX』(開発当時のコードネーム)でかなりの部分をカバーできる−−」とコメントし、発売に自信をのぞかせていました。(参照:東洋経済ONLINE)
ウィー ユーは「集まればWii U。ひとりでも、みんなでWii U。」というコンセプトのもと、2012年11月に発売。「スプラトゥーン」「スーパーマリオメーカー」などの人気タイトルを揃えつつも販売台数は1336万台にとどまり、任天堂が発売してきたゲーム機のなかでもっとも売れなかったハードとなりました。
・任天堂ハード売上台数(2016年9月末時点)
順位 | ハード名 | 売上数 |
---|---|---|
1位 | ニンテンドーDS | 1億5402万台 |
2位 | ゲームボーイ | 1億1869万台 |
3位 | Wii | 1億163万台 |
4位 | ゲームボーイアドバンス | 8151万台 |
5位 | ファミリーコンピュータ | 6191万台 |
6位 | ニンテンドー3DS | 6157万台 |
7位 | スーパーファミコン | 4910万台 |
8位 | ニンテンドウ64 | 3293万台 |
9位 | ニンテンドーゲームキューブ | 2174万台 |
10位 | Wii U | 1336万台 |
(参照:Nintendo「ハードソフト販売実績」)
Wii Uでの失敗を生かすため、ニンテンドー・スイッチの発売時期は年末商戦からズラした3月に設定。ソフトが出揃ったのちハードを売るという戦略を採用しました。
1-2 Nintendo Switchの特徴
出典:intheGame
ニンテンドー・スイッチの最大の特徴は、持ち運びに不便という据え置き機の弱点を克服した点にあるといえます。
ニンテンドー・スイッチは、「ドック」と呼ばれる筐体と、持ち運び可能な本体の2つから構成され、ドックに本体を接続することでテレビ画面に映像を映し出し、据え置き機として遊ぶことができます。
出典:任天堂
また、本体をドックから取り外して外出先に持ち運ぶことも可能で、付属のコントローラーを使用すれば携帯ゲーム機のように遊ぶことができます。
さらに、本体を友達同士で持ち合うことで、最大8台まで通信することが可能です。
2 株価急落の理由は本体価格の高さ?
任天堂史上最高のハードになると噂されたものの、発売時期と本体価格の発表後に株価は下落。発表会直前に約2万5000円をつけていた任天堂の株価は、発表会が進むにつれて下落し2万3000円を割りました。
2-1 「ポケモンGO!」景気で一時は3万超え
昨年7月にリリースされたスマートフォン向けのゲームアプリ「ポケモンGO!」以降、関連銘柄が大きく上昇。任天堂の株価も急騰し、同月19日には3万2700円の6年3カ月ぶりとなる高値を記録。
「ポケモンGO!」がもたらした経済効果はポケノミクスとも呼ばれ、今後も株価好調の動きが続くだろうとの見方がされていました。
2-2 本体価格が高く、リリースタイトルも少なめ
午後1時に始まった任天堂のプレゼンテーションでニンテンドー・スイッチの本体価格が2万9980円と伝えられると株価は急速に下落。その後、ソフトラインアップの発表で一時戻したものの再び下がり、その日の終値は2万3750円となりました。
株価が急落した要因について、投資運用会社ドルトン・キャピタル・ジャパンのシニアファンドマネージャーは
「価格が2万5000円程度なら好感されただろうが、値付けのところは高めということになるのだろう」と分析。
発表されたタイトル数は35個でしたが、同マネージャーは
「スタート段階ではちょっと少ない」とコメント。
任天堂は50社を超えるメーカーが対応する80タイトル以上を開発中としていますが、消費者や投資家が期待していたソフト数には及ばず、満足させる発表にはならなかったようです。(参照:ロイター)
・ 発表されたゲームタイトルの一部
タイトル名 | 発売時期 |
---|---|
ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド | 3月3日 |
1-2-Switch | 3月3日 |
ARMS | 2017年春 |
Splatoon2 | 2017年夏 |
スーパーマリオ オデッセイ | 2017年冬 |
ゼノブレイド2 | 2017年 |
EA SPORTS FIFA | 未定 |
ファイアーエムブレム無双 | 未定 |
ドラゴンクエストX | 未定 |
ドラゴンクエストXI | 未定 |
ドラゴンクエストヒーローズ 1・1 for Nintendo Switch | 未定 |
真・女神転生 | 未定 |
Project OCTOPATH TRAVELER | 未定 |
セガゲームス 新タイトル | 未定 |
Skyrim | 未定 |
グラスホッパー・マニファクチュア 新タイトル | 未定 |
3 任天堂はゲームの王様に返り咲くことはできるか
ニンテンドー・スイッチは任天堂にとって約4年ぶりとなる新型据え置き機の発売ですが、ソニーの最新型ゲーム機PS4(プレイステーション4)やマイクロソフトのXbox One(エックスボックスワン)と比べると、発売競争に出遅れた形です。
3-1 ゲーム市場の未来はどうなる?
近年の家庭用ゲーム機は高画質化・高性能化がさらに進み、市場はソニーとマイクロソフトの2社が牽引してきました。しかし、スマートフォンやタブレットの台頭するにつれ家庭用ゲーム機市場は縮小しています。
リサーチ会社SuperDataが発表したデータによれば、スマートフォン向けゲームは、ゲーム市場全体の6割程度を占めており、2018年ごろには8割程度まで比率が伸びるといわれています。
3-2 任天堂の今後の戦略
出典:Mendoza Post
任天堂は2017年3月期の売上高予想を4700億円としました。ゲームアプリ「ポケモンGO!」が純利益を押し上げましたが、8期連続の減少となる見通しです。
任天堂は今後スマートフォンゲームにも積極的に進出をつづける予定で、昨年12月にiOS向けに配信をはじめた「スーパーマリオラン」以降も年に2、3本のペースでスマートフォンゲームアプリを公開する予定であることをインタビューで語りました。(参照:京都新聞)
また、任天堂はスマートフォンゲームを重要な収益源としつつ、新たな顧客を獲得したい考えで、3月に発売を控える「ニンテンドー・スイッチ」との相乗効果にも期待を寄せ、収益の立て直しを図ります。