総務省は6月、国内の個人や企業における情報通信サービスの利用状況に関するデータ「平成28年通信利用動向調査」の発表を行いました。
発表によると、インターネットを利用している個人の割合は前年比2.5ポイントの上昇となる83.5%でした。世帯年収別では400万円以上の世帯でインターネットを利用しているのが約9割におよび、年齢別では20歳以上の3分の2以上がSNSもしくは動向投稿サービスを利用していることがわかりました。
このほか、企業によるソーシャルメディアサービスの活用状況など、ビジネスにおけるSNSの普及度合いや、有用性、労働生産性などが明らかになりました。
目次
- 1 インターネットを利用している日本人83.5%
- 1-1 10〜40代は100%に近い利用率
- 1-2 インターネットの低年齢化も顕著
- 1-3 スマートフォンとパソコンを保有する世帯の差、わずか1ポイントに
- 2 ICT活用企業は労働生産性が高い!?
- 2-1 ICT教育実施企業は非実施企業の1.3倍
- 2-2 大企業ほどクラウドサービスを利用している
- 3 セキュリティ対策を施していない企業、1%台に
1 インターネットを利用している日本人83.5%
通信利用動向調査は、世帯および企業を対象とし、平成2年から毎年実施(企業調査は、平成5年に追加し平成6年を除き毎年実施。世帯構成員調査は、平成13年から実施。)されており、2010年からは世帯調査を都道府県別に実施しています。
調査では、昨年9月末までに、過去1年間でインターネットを利用したことのある人は1億84万人におよび、利用率は過去最高となる83.5%を記録しました。
(参照:総務省「平成28年通信利用動向調査」)
1-1 10〜40代は100%に近い利用率
利用状況を年齢階層別に見たデータでは、6〜12歳で82.6%、13〜19歳で98.4%、20〜29歳で99.2%、30〜39歳で97.5%となりました。一方、もっとも低いのは80歳以上で23.4%でした。
・インターネットの利用率(年齢階層別)
年齢階層別 | 利用率 |
---|---|
6〜12歳 | 82.6% |
13〜19歳 | 98.4% |
20〜29歳 | 99.2% |
30〜39歳 | 97.5% |
40〜49歳 | 96.7% |
50〜59歳 | 93.0% |
60〜69歳 | 75.7% |
70〜79歳 | 53.6% |
80歳以上 | 23.4% |
20〜29歳では2014年から利用率が99%に達し、全体で最も高い年齢層となります。
また60歳〜79歳の高齢者のインターネット利用率は、5年前と比較すると60〜69歳で7.7ポイント増加、70〜79歳で4.9ポイント増加するなど年々上昇傾向にあります。
1-2 インターネットの低年齢化が顕著
6〜12歳の低年齢層でインターネットを利用する割合が5年前と比較して約20%増加していることがわかりました。
2012年に61.6%だった利用率は2016年には82.6%まで上昇し、全年齢層のなかでも最も高い伸び率を記録しています。
・6〜12歳におけるインターネット利用率の推移
年 | 利用率 |
---|---|
2011年 | 61.6% |
2012年 | 69.0% |
2013年 | 73.3% |
2014年 | 71.6% |
2015年 | 74.8% |
2016年 | 82.6% |
低年齢層における利用率の増加は、後述のスマートフォンの普及と大きく関係します。スマートフォンを保有している世帯は2010年以降、右肩上がりに上昇し、2015年に70%を突破しました。親が子にスマートフォンを持たせるケースが多く、子どもの利用率増加につながったとみられます。
1-3 スマートフォンとパソコンを保有する世帯の差、わずか1ポイントに
インターネットを利用している端末に関する調査では、スマートフォンを利用している人の割合が前年より3.6ポイント増加し、57.9%となりました。
また、スマートフォンを保有する世帯は71.8%で、パソコンを保有する世帯は73.0%となり、その差は1.2ポイントまで縮まりました。
・個人別の情報端末保有状況
2016年 | 2015年 | |
---|---|---|
パソコン | 73.0% | 76.8% |
スマートフォン | 71.8% | 72.0% |
タブレット | 34.4% | 33.3% |
携帯電話・PHS | 22.9% | 23.8% |
・世帯別の情報端末保有状況
2016年 | 2015年 | |
---|---|---|
パソコン | 73.0% | 76.8% |
スマートフォン | 71.8% | 72.0% |
タブレット | 34.4% | 33.3% |
携帯電話・PHS | 22.9% | 23.8% |
スマートフォン使用率は、世帯調査を都道府県別に取り始めた2010年時点では9.7%だったものの、以降急速に普及し、2013年には62.6%に達しました。2014年からは各世帯に行き渡った結果、急激だった伸びは落ち着きを見せています。
2 ICT活用企業は労働生産性が高い!?
総務省は、企業におけるICTの利用状況を分析した結果、ICTを活用している企業は、活用していない企業よりも1社当たりの労働生産性が高いことがわかったと発表しました。
2-1 ICT教育実施企業は非実施企業の1.3倍
たとえば、ICT教育を実施している企業は実施していない企業よりに比べて1.3倍労働生産性が高くなりました。
このほか、クラウドサービスを利用している企業は利用していない企業よりも1.3倍、無線通信技術を利用したシステムやツールを導入している企業は導入していない企業よりも約1.2倍となり、テレワークを実施している企業は実施していない企業より約1.6倍、それぞれ労働生産性が高い結果となりました。
・ ICT導入企業と非導入企業の労働生産性比較
労働生産性 | |||
---|---|---|---|
導入企業 | 非導入企業 | 差比 | |
テレワーク | 957万円 | 599万円 | 1.6倍 |
ICT教育 | 751万円 | 593万円 | 1.3倍 |
クラウドサービス | 752万円 | 567万円 | 1.3倍 |
無線システム・ツール※ | 707万円 | 584万円 | 1.2倍 |
※ ICTとはInformation and Communication Technologyの略で、情報通信技術を活用したコミュニケーションのこと。
※ 無線システム・ツールとは、電子タグ(RFIDタグ)、非接触型ICカード及び新たにネットワーク機能が加わったカメラやセンサーなどのこと。
2-2 大企業ほどクラウドサービスを利用している
クラウドサービスを積極的に利用している企業の数は年々増加傾向にあります。また「サービスについてよく知らない」とする割合は減少傾向にあり、クラウドサービスの認知度が高まっていることがわかりました。
クラウドサービスを「全社的に利用している」企業の割合は全体の24.4%で、前年よりも1.6%増加しました。また、「一部の事業所または部門で利用している」割合は22.5%で、前年よりも0.8%増加しました。
一方、「利用していないし、今後も利用する予定もない」とする企業は29.3%で、前年よりも0.7%減少し、「クラウドサービスについてよく知らない」との企業は9.3%で前年よりも0.9%の減少となりました。
クラウドサービスの利用状況 | 割合 | 前年比 |
---|---|---|
全社的に利用している | 24.4% | 1.6%増加 |
一部の事業所または部門で利用している | 22.5% | 0.8%増加 |
利用していないが、今後利用する予定がある | 14.5% | 0.5%減少 |
利用していないし、今後も利用する予定もない | 29.3% | 0.7%減少 |
クラウドサービスについてよく知らない | 9.3% | 0.9%減少 |
このほか、クラウドサービスを利用している企業は、利用していない企業に比べ、一社当たり労働生産性が約3割高いことがわかりました。
・クラウドサービスの利用と一社当たりの労働生産性の推移
3 セキュリティ対策を施していない企業、1%台に
また、調査では、インターネットの利用に関して9.9割の企業が何らかのセキュリティ対策を施していることがわかりました。
セキュリティへの対応状況として「何らかの対策をしている」企業のうち、「パソコンなどの端末にウイルス対策プログラムを導入」している企業は88%、「サーバにウイルス対策プログラムを導入」している企業は66.8%でした。
・セキュリティ対策内容
対策事項 | 割合 |
---|---|
パソコンなどの端末(OS、ソフト等)にウイルス対策プログラムを導入している | 98.4% |
サーバにウイルス対策プログラムを導入している | 66.8% |
ID、パスワードによるアクセス制御をしている | 55.3% |
社員教育をしている | 50.5% |
ファイアウォールの設置・導入をしている | 46.1% |
OSへのセキュリティパッチの導入している | 39.9% |
セキュリティポリシーの策定している | 37.0% |
アクセスログの記録している | 34.0% |
外部接続の際にウイルスウォールを構築している | 23.4% |
プロキシ(代理サーバ)等の利用している | 19.6% |
データやネットワークの暗号化している | 18.5% |
セキュリティ監査をしている | 17.1% |
認証技術の導入による利用者確認をしている | 15.1% |
回線監視している | 14.9% |
不正侵入検知システム(IDS)・不正侵入防御システム(IPS)の設置・導入をしている | 14.1% |
ウイルス対策対応マニュアルを策定している | 13.2% |
セキュリティ管理のアウトソーシングしている | 12.2% |
Webアプリケーションファイアウォールの設置・導入をしている | 10.5% |
一方、「特に対策を実施していない」という企業は、わずか1.6%にとどまりました。
最近では旧ウインドウズOSを狙ったランサムウェアウイルス“WannaCry”が話題となったばかりで、今回の調査では各企業のセキュリティ対策に対する意識の高さをうかがい知ることができました。
※ WannaCryはランサムウェアウイルス(身代金要求型ウイルス)の一種で、感染すると、フォルダーを暗号化技術によりロックされ、アクセスできなくなり、ロック解除のための修復料金(身代金)を騙し取ろうとするもの。また、お金を支払っても、修復用プログラムが送られてくることはない。