群雄割拠のスマートフォン市場に、下克上が起きています。
スマートフォン市場は、アップル社のiPhoneとサムスン電子のギャラクシーが長らく世界をリードしてきました。
しかし、2016年以降は中国の新興メーカーが飛ぶ鳥を落とす勢いでシェアを拡大しつつあります。
世界最大と言われる中国の携帯電話市場でいま何が起きているのでしょうか。
目次
- 1 ファーウェイ、スマートフォンシェアで世界2位に
- 1-1 ファーウェイとは
- 1-2 目標は世界市場1位
- 2 続々と登場する中華系新興メーカー
- 2-1 中国市場でフェーウェイを抜いたオッポ
- 2-2 世界シェアを伸ばしているビボ
- 2-3 没落した米アップルのiPhone
- 3 中華系スマートフォンが台頭してきた背景
- 3-1 誰でもスマートフォンがつくれる時代
- 3-2 日本のスマートフォンメーカーの今後
1 ファーウェイ、スマートフォンシェアで世界2位に
米調査会社Strategy Analyticsによると、ファーウェイは2016年の7~9月の世界スマートフォン市場のシェアで、サムスンを抜いて2位に躍り出たと発表しました。
中国国内でもiPhoneからHUAWEI(=ファーウェイ)製のスマートフォンに乗り換える人が急増しており、今後の利用者は拡大するだろうと見られています。
1-1 ファーウェイとは
ファーウェイは、1987年に中国・深センに設立されたスマートフォンメーカー。17万人以上の従業員を抱え、通信事業者向けネットワーク事業や法人向けICTソリューション事業などを展開する中国の大企業です。
1-2 目標は世界市場1位
ファーウェイのCEOリチャード・ユー氏は、昨年6月のカンファレンスの席上で「米アップルや韓国サムスンを追い抜き、世界トップのスマートフォンメーカーになる」と宣言しました。(参照:Forbes JAPAN)
2016年第1四半期(1−3月)の世界のスマートフォンシェアは、韓国サムスンの24.5%、米アップルの15.3%に次いで、ファーウェイ8.2%となっています(IDC調査結果)
中国系アメリカ人ジャーナリストのBen氏によれば、この度のファーウェイの躍進は、サムスン新機種「ギャラクシー・ノート・セブン」の発火問題の影響もあると分析しています。
「ファーウェイの躍進はサムスンがGalaxy Note 7 の発火問題に続くリコールで、直近の四半期の業績を大きく落としたことによるものだ。同社の2位の座は一時的なもので終わる可能性も高い。」
また、今後ファーウェイが成長するためのカギは新端末「Mate 9」になるだろうとコメント。
「次の四半期発表の際にはサムスンが再び2位の座に返り咲くことも予測される。しかし、当面の間ファーウェイは同社が掲げるゴールに向かって突き進んでいくのみだ。現在、高い評価を得ている高級端末「Mate 9」がファーウェイの成長を牽引する役割を果たすだろう。」(参照:Forbes JAPAN)
2 続々と登場する中華系新興メーカー
躍進している中国スマートフォンメーカーはファーウェイだけではありません。
OPPO(オッポ)やVivo(ビボ)など新興企業が大手メーカーを相手に快進撃をつづけています。
2-1 中国市場でファーウェイを抜いたオッポ
2004年に設立されたオッポはおもにDVDプレイヤーなどの電気機器を製造・販売していたメーカーです。
2011年からスマートフォン市場に参入。そして2016年7月、ファーウェイを抑えて初めて売上トップとなりました。(香港「Counterpoint Technology Market Research」社発表データ)
また、中国市場に限ればオッポのシェアは22.9%で、ファーウェイやアップルらを突き放しました。
2-2 世界シェアを伸ばしているビボ
中国広東省に本部を置くビボは、2012年に本格的にスマートフォン市場に参入。以来、わずか4年で急成長を遂げ中国市場でオッポに次ぐ第2位のシェアを誇ります。
2016年7〜9月での中国国内でのシェアは16.2%。フェーウェイと合計すると、2社だけで中国市場の3分の1を占める割合になります。
2-3 没落した米アップルのiPhone
オッポやビボなどの新興企業の台頭により、iPhoneは中国市場で存在感を失いつつあります。
2016年7〜9月の第3四半期における中国国内でのアップルのシェは前年同期比で4.3ポイント下落し、第5位でした。
・中国国内のスマートフォンメーカーのシェア
(参照:iPhone Mania)
中国市場の8割を中国製スマートフォンが支配している状況で、アップル社には新たなビジネス戦略や商品展開が求められています。
一方、世界市場では、1位サムスン、2位アップルとなっていますが3位から5位まではすべて前述に挙げた中国企業です。
さらにアップルの出荷台数は前年比で16.3%も減少しているのに対し、ファーウェイは58.4%、オッポは153.2%、ビボは123.8%増加しました。
・世界のスマートフォンメーカーのシェア
(参照:IDC)
3 中華系スマートフォンが台頭してきた背景
中国国内でスマートフォンメーカーが乱立している背景には、スマートフォン向け半導体チップ(CPU)を製造・販売する米クアルコム※の存在が挙げられます。
3-1 誰でもスマートフォンがつくれる時代
米クアルコムは2012年頃よりCPUの販売とともにQRD(Qualcomm Reference Design)と呼ばれるスマートフォンの設計図の提供を開始。QRDを使えば誰でもスマートフォンが製造できるようになりました。
前述の中国系企業たちは、クアルコムから部品を調達しQRDの設計通りに開発・製造したことで、一夜にしてスマートフォンメーカーに変身。
QRDが発売されはじめた当初、スマートフォンは近い将来、新興国を中心にアップルから市場を奪う可能性があると専門家の間で指摘されていましたが、結果的に中国の企業が現実のものとしました。
※クアルコムは、スマートフォンなどに向けて半導体チップを提供する企業。1985年創業で、ファブレス(工場を持たない)メーカーで、QRDの販売開始以降は急成長を遂げている。
3-2 日本のスマートフォンメーカーの今後
中国企業の台頭で気になるのは、今後の日系スマートフォンメーカーの戦略です。
日本は2015年に携帯電話端末のSIMロックがようやく解除されるなど、世界のスマートフォン競争に出遅れています。SIMフリー端末市場では日本メーカーは日が浅く、中国企業に大きく水をあけられている状況です。
技術大国として世界の家電製品をリードしてきた日本。2020年には東京オリンピックが待ち構えているだけに、日本企業に期待が集まります。