英調査会社イプソスモリは6月、国際社会に好影響を及ぼす国ランキングを公表した結果、アメリカが好影響を与えていると考える人の数が急激に減少していることがわかりました。
世界25カ国の16〜64歳の18000人以上を対象に行われた本調査。最も好影響を与えているとされたのはカナダで、8割以上の人が「positive influence(好影響)」と応えました。一方、アメリカについては、世界の6割の人が「negative influence(悪影響)」を与えていると判断しました。
本記事ではイプソスモリの調査結果をもとに、世界に好影響・悪影響を与えている国ランキングの詳細をみていきます。
目次
- 1 ランキング1位はカナダ、米は評価を大きく落とす
- 2 EU内で評判を落としたイギリス
- 2-1 スペインでは3割以下
- 2-2 世界各国の自国評価はかなり高め
- 2-3 アメリカ、ロシア、インドは自己評価高すぎ?
1 ランキング1位はカナダ、米は評価を大きく落とす
調査は今年の4月〜5月の1ヶ月に渡って、世界25カ国の16〜64歳の18055人を対象に行われました。
「どの国・地域が国際社会に好影響もしくは悪影響を与えているか」の質問を行ったところ、「好影響を与えている国」として81%の人がカナダを選び、首位となりました。つづいて、オーストラリア79%、ドイツ67%、フランス59%、イギリス57%、EU57%、インド53%、中国49%、米国40%、ロシア35%、イスラエル32%、イラン21%となりました。
アメリカは、前回調査時より24ポイントも評価を落とし、ランキングでロシアを上回るものの、中国を下回りました。
調査を行ったイプソスモリは、米国のグローバルイメージがトランプ大統領の下で苦しんでいることを反映していると分析。トランプ大統領が掲げる「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」により国際社会でのアメリカの地位が揺らいでいると指摘しました。
・国際社会に好影響を与えている国・地域ランキング
順位 | 国・地域 | 好影響 | 悪影響 |
---|---|---|---|
1 | カナダ | 81% | 19% |
2 | オーストラリア | 79% | 21% |
3 | ドイツ | 67% | 33% |
4 | フランス | 59% | 41% |
5 | イギリス | 57% | 43% |
6 | EU(欧州連合) | 57% | 43% |
7 | インド | 53% | 47% |
8 | 中国 | 49% | 51% |
9 | 米国 | 40% | 60% |
10 | ロシア | 35% | 65% |
11 | イスラエル | 32% | 68% |
12 | イラン | 21% | 79% |
(イプソスモリ公表資料より作成)
(参照:イプソスモリ)
2 EU内で評判を落としたイギリス
EUからの離脱を表明しているイギリスついては、世界の57%が世界情勢への影響がプラスだと考えていることがわかり、奇しくもEUの順位と同じ結果になりました。
しかし、EU諸国内のイギリスに対する評価は、「好影響を与えている」48%となっており、世界平均よりも肯定的に評価していないことが明らかになりました。
・ イギリスに対して「好影響を与えている」と答えた25カ国各国の割合(多い順)
インド | 76% |
---|---|
アメリカ | 75% |
南アフリカ | 73% |
ペルー | 72% |
オーストラリア | 71% |
ブラジル | 70% |
ニュージーランド | 69% |
カナダ | 68% |
イギリス(自己評価) | 68% |
メキシコ | 66% |
イタリア | 66% |
スウェーデン | 62% |
ハンガリー | 57% |
韓国 | 57% |
ポーランド | 56% |
アルゼンチン | 55% |
フランス | 52% |
日本 | 49% |
ロシア | 44% |
トルコ | 40% |
ドイツ | 35% |
ベルギー | 35% |
セルビア | 31% |
スペイン | 29% |
EU内平均 | 48% |
世界平均 | 57% |
(イプソスモリ公表資料より作成)
2-1 スペインでは3割以下
一部のEU諸国では、イギリスの影響力をプラスに見ているのは市民の半分以下となります。たとえばスペインではわずか29%、ドイツ、ベルギーでは35%が、イギリスの現在の世界情勢への影響はポジティブと評価しました。
また、イギリス人の3分の2(66%)は自国が世界に好影響を及ぼしていると考えていることがわかりました。
調査会社のイプソスモリは、イギリスの評価について、
「イギリスに対する格付けはインドの76%からスペインの29%まで広範囲にわたります。これは、EU諸国のイギリスに対する一般的な見方を反映しており、他国よりも好意的ではないと考えています。しかし、イギリスに対するイメージの問題をこれ以上広げる必要はありません。なぜならイギリス人はアメリカ、ロシア、インドと比較して自身の影響力についてかなり現実的に見ることができるからです」
と分析しました。
(参照:イプソスモリ)
2-2 世界各国の自国評価はかなり高め
「自国が世界情勢に好影響を与えていると思うか」の調査では、ほとんどの国の多くの市民が、「好影響を与えていると思う」と答えました。
自国評価が最も高かったのはカナダ89%で、次いでニュージーランド86%、インド85%、ロシア82%、オーストタリア82%、ドイツ75%、スウェーデン73%、ペルー73%、セルビア70%、アメリカ67%となります。
・自分の国が世界情勢に「好影響を与えている」と思う割合(上位10カ国)
順位 | 国・地域 | 割合 |
---|---|---|
1 | カナダ | 89% |
2 | ニュージーランド | 86% |
3 | インド | 85% |
4 | ロシア | 82% |
5 | オーストラリア | 82% |
6 | ドイツ | 75% |
7 | スウェーデン | 73% |
8 | ペルー | 73% |
9 | セルビア | 70% |
10 | アメリカ | 67% |
(イプソスモリ公表資料より作成)
(参照:イプソスモリ)
2-3 アメリカ、ロシア、インドは自己評価高すぎ?
オーストラリアやカナダで自己評価が正しく行えている一方、アメリカ、ロシア、インドでは他国からの評価と自己評価にかなりのギャップがあるとイプソスモリは指摘します。
(参照:イプソスモリ)
たとえば、ロシア国民の82%は自国が世界情勢にプラスの影響を与えていると考えていますが、世界のロシアに対する好評価の割合は35%にすぎず、47%の差(ギャップ)がありました。
また、インドでは同様のギャップが32%ありました。国民の85%がインドの影響力がプラスになっていると見ています(世界から見たインドの評価は53%)。
そしてアメリカでは、アメリカの影響力は3分の2(67%)がプラスだと回答していますが、同様の世界の対アメリカ評価は40%にすぎず、27%のギャップがあります。
・ 「好影響を与えている」と思う世界評価と自己評価のギャップ
世界評価 | 自己評価 | ギャップ度 | |
---|---|---|---|
ロシア | 35% | 82% | 47ppt |
インド | 53% | 85% | 32ppt |
アメリカ | 40% | 67% | 27ppt |
イギリス | 57% | 66% | 9ppt |
ドイツ | 67% | 75% | 8ppt |
カナダ | 81% | 89% | 8ppt |
フランス | 59% | 63% | 4ppt |
オーストラリア | 79% | 82% | 3ppt |
(イプソスモリ公表資料より作成)
(参照:イプソスモリ)
米国の「アメリカファースト」政策や、英国のEU離脱など、グローバリズムに反する動きが活発化している国際社会。しかし、世界の人々は、自国第一主義に走る国々に対して、決して好意的ではないことが明らかとなりました。