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コロナ禍での事業再構築や再度の会社設立(再起業)の進め方のコツとは

ウィズコロナが長引く中、新型コロナの企業経営に対する影響は当初よりは小さくなってきているものの、依然として倒産廃業に追い込まれている企業も少なくありません。しかし、こうした中で事業を再構築したり、倒産後に再起業したりする事業者や個人なども少なからず見られます。

 

今回の記事では、再起を目指す方などの参考となるように、事業再構築の成功要因や事例などを紹介し、事業再構築や再度の会社設立を果たす場合の進め方やそのポイントなど解説します。

 

コロナ禍の既存ビジネスへの影響、事業再構築に取り組む意義、事業再構築や再起業の成功のポイントなどを知りたい方は、参考にしてみてください。

 

 

1 コロナ禍のビジネスへの影響

コロナ禍のビジネスへの影響

 

コロナ禍にある現状がビジネスにどのような影響をもたらしているのかを、倒産・廃業並びに創業の状態から確認していきましょう。

 

 

1-1 現在の倒産・廃業の状況

まず、現在の倒産廃業の状況について見ていきます。

 

1)近年の倒産の推移

株式会社東京商工リサーチのデータ(「全国起業倒産状況」)によると、近年の倒産件数は下表の通りです。

 

年(1月~12月 2018年 2019年 2020年 2021年
倒産件数(件) 8,235 8,383 7,773 6,030
負債総額(円) 1兆4,854億6,900万 1兆4,232億3,800万 1兆2,200億4,600万 1兆1,507億300万

 

直近の倒産件数およびその負債総額は減少傾向にあります。2019年までは米中貿易摩擦といった問題が表面化していたものの、経済状況は比較的安定した推移が見られ、倒産件数も減少傾向にありました。

 

しかし、2020年以降は新型コロナの感染拡大の影響を受けて、飲食・宿伯・サービス業などが大きな打撃を受け倒産廃業する企業が見られ始めたため、その件数が大きく増加するものと見る方も多かったですが、実際には減少しているのです。

 

その理由は、国や自治体からの様々な支援策が倒産等を防いだと見られています。資金繰り、販路開拓、設備投資や雇用維持など多方面の問題解決に利用できる支援制度が支えとなって倒産廃業の増大を押しとどめたと考えれているのです。

 

2020年の7月以降、6カ月連続で前年同月を下回るといった状況が見られ、この傾向は2021年においても同様の結果となりました。2021年は1990年(6,468件)以来の6,000件台となり、2年連続で前年を下回っています。

 

ただし、新型コロナの影響で倒産した件数(新型コロナ関連倒産)を見ると、2020年は累計で792件、2021年までの累計は2467件、2022年8月までの累計は3851件となっており、倒産件数は増加傾向です。

 

以上の内容をまとめると、国等の支援策の効果により全体の倒産件数は減少しているものの、新型コロナ関連倒産の件数は増加しています。つまり、支援策がなければ倒産件数は相当増加したものの推察され、新型コロナのビジネスへの影響(事業存続への影響)は今なお大きいと言えるでしょう。

 

つまり、コロナが収束しない現在の状況は、ビジネスにとって脅威に晒され続けている危険な状況なのです。

 

2)直近のコロナの倒産廃業への影響

東京商工リサーチ社のコーポレートサイトで第23回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査の結果が2022年8月18日に公表されています。その主な内容は以下の通りです。

 

  • 新型コロナの第7波が高止まりして企業への影響が再び悪化。企業活動への「影響が継続している」と回答した企業は71.9%で、6月から3.2ポイント悪化
    ⇒第7波では行動制限が取られず、人々の外出が大幅に増加したため、感染者数が10万人台を超える事態に至り、それがビジネスに影響したと考えられます。
  •  

  • 在宅勤務を「現在、実施している」と回答した企業は33.0%で、6月から3.9ポイント増。「廃業検討率」は5.3%と、6月から0.2ポイント悪化。第7波は行動制限が行われていないが、感染防止への取り組みの再強化の影響が尾を引き、企業活動は業種により感染動向に強く左右される状況が続く
  •  

  • 今年7月の単月売上高が、コロナ前の2019年7月に届かない企業は約6割(59.1%)。感染防止と社会経済活動の両立を目指した取組が進められるが、売上高は目標からほど遠い
    ⇒感染拡大は在宅勤務を増加させる要因となるほか、結果として客足が離れる業種なども増えるため、結果的に廃業に直面する企業を増加させる要因になります。
  •  

  • 旅行や宿泊、飲食では少人数の消費行動(少人数予約等)に変わった可能性があり、行動制限の有無に関係なくコロナ前のビジネスモデルは転換を迫られる状況
  •  

  • 廃業検討の可能性が「ある」と回答した企業は、「飲食店」や旅行、葬祭、結婚式場などを含む「その他の生活関連サービス業」、タクシーなどの「道路旅客運送業」などで2割を超える。ポストコロナの事業継続が難しい企業への対応が必要
    ⇒ワクチンを接種していても状況により感染するリスクは決して低くないため、人々の消費行動が変容するのは当然であり、企業としてはそれに合わせたビジネスモデルの修正や再構築も必要です。

 

 

1-2 新設法人の状況

東京商工リサーチ社は、同社のサイトで2021年「全国新設法人動向」調査の内容を以下のように公表しています。

 

  • 2021年(1-12月)の新設法人は14万4,622社(前年比10.1%増、前年13万1,238社)で、2019年以来、2年ぶりに前年を上回る。2007年以降で初めて前年比の増加率が10%を超え、件数は2017年を抜いて過去最多を記録
    ⇒コロナ禍にあって経営環境は全般的には良い状況ではないもの、新設法人数は大幅に増加しました。
  • *本調査の公表内容は、同社の企業データベース(対象400万社)から、2021年(1-12月)に全国で新しく設立された全法人を抽出し、分析した結果によるもの

     

  • 産業別では、10ある全産業のすべてが増加。増加率が最も高かったのは、農・林・漁・鉱業の17.4%(2,469社→2,900社)で、コロナ禍の三密回避や地方回帰の動きが新設法人の動向にも影響
  •  

  • 増加率が最も低いのは不動産業の2.6%(1万3,919社→1万4,281社)で、金融緩和や海外の投資マネー流入で都市部を中心に不動産価格が高騰している影響で、新規参入が厳しい状況となっている
    ⇒コロナ禍であっても業種やビジネスモデルの内容によっては、影響をあまり受けないケースも少なくありません。逆に今の環境がチャンスになっているケースや、コロナとは直接関係ない業種などが別の要因で苦境にあるケースも見られます。

 

また、2022年度版中小企業白書の附属統計資料の12表「有雇用事業所数による開廃業率の推移」によると、2018年から2020年までの開廃業率は以下の通りです。

 

2018年 2019年 2020年
開業率(%) 4.4 4.2 5.1
廃業率(%) 3.5 3.4 3.3

 

廃業率は一貫して下がっており、コロナ禍に突入した2020年でもその傾向は変わっていません。この状況は先に確認した倒産件数の傾向と合致します。一方、開業率は近年減少傾向にありましたが、2020年に大幅に回復しました。

 

この結果も先の新設法人数の傾向と同じです。このように新型コロナという近年直面したことのパンデミックが発生しましたが、起業や会社設立による開業にはあまり影響していないことが確認できます。

 

 

2 事業再構築の取組状況とその意義

事業再構築の取組状況とその意義

 

企業としての再起を図るための参考として、事業再構築に取り組む企業の状況を示すとともに、その取組内容や意義などを説明しましょう。

 

 

2-1 事業再構築に挑む企業

コロナ禍で影響を受けている事業者は多いですが、そうした企業の中には事業の再構築に挑む事業者も少なくありません。事業再構築に取り組む企業の正確な数を把握するのは困難ですが、その一部を「事業再構築補助金」の応募実績(令和3年度)から垣間見ることができます。

 

  • 第一回公募 緊急事態宣言特別枠(応募期限:5月7日)
    5,181者の応募、2,866者の採択
    同通常枠•卒業枠•グローバルV字回復枠(応募期限:5月7日)
    17,050者の応募、5,150者の採択
  •  

  • 第二回公募 通常枠・卒業枠・グローバルV字回復枠・緊急事態宣言特別枠(応募期限:令和3年7月2日)
    20,800者の応募、9,336者の採択
  •  

  • 第三回公募(応募期限:令和3年9月21日)
    20,307者の応募、9,021者の採択
  •  

  • 第四回公募(応募期限:令和3年12月21日)
    19,673者の応募、8,810者の採択
  •  

  • 第五回公募(応募期限:令和4年3月24日)
    21,035者の応募、9,707者の採択

 

以上の通り令和3年度は5回の公募が実施されており、合計の応募件数は10万件、採択者数は4万4千社に上ります。

 

この補助金事業は、「ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編またはこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する」ことを目的するものです。

 

つまり、この事業再構築補助金に応募しようとする者は、事業再構築に挑もうとする事業者であり、その数は年間でみて10社程度存在していることになります。

 

もちろんこうした国等の支援策を利用しないで独自に取り組む企業も存在していると考えられ、相当な数の企業が厳しい経営環境の中で事業再構築に取り組んでいるのではないでしょうか。

 

 

2-2 事業再構築の主な内容

2022年3月28日に中小企業庁が発行している「事業再構築指針の手引き(2.0版)」から事業再構築の内容を確認してみましょう。事業再構築と言っても様々な捉え方があるため、ここでは事業再構築補助金の支援の対象を明確化するために定義された「事業再構築」の内容を紹介します。

 

なお、この施策での「事業再構築」の対象分野は、「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」「事業再編」の5つのタイプに分けられ、補助金の申請にあたっては、これらのいずれかのタイプに該当し、その事業計画を認定支援機関と策定しなければなりません(申請する場合は注意)。

 

1)新分野展開

「新分野展開」とは主たる業種または主たる事業を変更しないで、新たな製品等を製造等し、新市場に進出することです。施策上の「新分野展開」に該当するためには、「製品等の新規性要件」「市場の新規性要件」「売上高10%要件」の3つを満足しなければなりません(=事業計画で示す)。

 

●製品等の新規性要件

以下の3点が要件です。申請しない場合でも、要件とされる重要点であるため参考にしてください。

 

ⅰ 過去に製造等した実績がないこと

過去に製造等していた製品等を再製造等する場合は、この事業再構築での要件に該当しません。過去に製造等した実績がないもので、市場での新規性や将来性などを見込める新製品の製造にチャレンジすることが重要です。

 

ⅱ 製造等に用いる主要な設備を変更すること

この施策では既存の設備で製造等可能な製品等を製造等することは、事業再構築における、新たな製品等を製造等していることに該当しません。例えば、同じ設備で異なる商品ラインアップを増やすといったケースです。

この理由は、既存設備の場合、設備に特殊性等がなければ新製品を開発しても、他社が容易に模倣できる可能性が高いからです(競争優位な製品の製造に繋がりにくいため)。

しかし、施策とは関係なく、既存の主要設備で独自の生産方法や生産工程などを取入れ、他社が模倣困難な新製品を生産できるなら、もちろん事業の再構築に有効です。

 

ⅲ 定量的に性能または効能が異なること(製品等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る)

性能や効能の違いを定量的に説明できるような新たな製品等の生産であることが求められます。例えば、既存製品と比較して、新製品の強度、耐久性、軽さ、加工性、精度、速度容量等が、○○%向上する、といった性能等の違いを示せるような新たな製品であることが重要です。

感覚や印象等での違いなどは受け手によって異なるため、性能・効能等の客観的なデータで示せることは優位性をもたらします。ただし、感覚や印象等もターゲットのニーズとして重視される場合もあるため、開発前後ではターゲットの支持が得られるかどうかの確認が必要です(市場テスト等)。

 

●市場の新規性要件

市場の新規性要件については、既存製品等と新製品等との代替性が低いことを事業計画で示すことが求められています。この「既存製品等と新製品等の代替性が低い」とは、新製品等を販売した場合に、「既存製品等の需要が単純に置き換わるのではなく、売上が販売前と比べて大きく減少しないことや、むしろ相乗効果により増大する」といった状態のことです。

 

代替性が強い場合、既存製品等が新製品等に置き換わってしまうことになり、価格が同一なら売上高は変化しません。しかし、違うターゲット、違う市場のニーズに対応する新製品等なら既存の市場への影響は限定的で、既存製品等は代替されなくなります。

 

事業を再構築する場合、新市場を対象として事業展開を模索する「新分野展開」は特に重要となるため、上記のポイントなどを参考に新事業を検討してみましょう。

 

2)事業転換

「事業転換」とは新たな製品等の製造等を通じて、主たる業種を変更しないで、主たる事業を変更することを意味します。なお、同補助金を申請する場合はその「事業転換」に該当する必要があり、先の新分野展開と同様に「製品等の新規性要件」「市場の新規性要件」「売上高構成比要件」の3要件を満足しなければなりません(=事業計画で示す)。

 

●事業転換の例

この同補助金の対象となる事業転換として、以下のようなケースが該当すると例示されています。

 

【例1】飲食サービス業

「日本料理店が、換気の徹底によりコロナの感染リスクが低いとされ、足元業績が好調な焼肉店を新たに開業し、3年間の事業計画期間終了時点において、焼肉事業の売上高構成比が、標準産業分類の細分類ベースで最も高い事業となる計画を策定している場合」

⇒この例は、これまで日本料理店を主たる業種としていた事業者が、コロナの影響により、現在比較的な業績が良いと見られている焼き肉店という新たな事業を始める事例です。

 

飲食業という業種が同じであり、調理、仕入、接客や店舗オペレーションなどでの経験が活用できるというシナジー(相乗効果)によるメリットが期待できるため、この事例は比較的取組みやすい事業再構築と言えるでしょう。

なお、同補助金の利用に関係なく事業転換を成功させるためには以下のような点を重視することが求められます。

 

・コンセプトとビジネスシステムの確立

既存の競争相手の焼き肉店との差別化を図り、顧客の支持を得るためのコンセプトを作り、それに合致した店舗の設置(設備や内装・外装等)、飲食サービス(食材や接客サービス等)、価格設定、店舗オペレーション、などを展開しなければなりません。

焼肉店の事業が全般的に好調であっても、顧客ニーズや他店との競合等を踏まえた事業を行わなければ、顧客からの支持を失い競争に敗れる可能性を高めてしまいます。

 

・新たなプロモーションの展開

まず、日本料理店と焼き肉店との相乗効果を狙った取組が重要です。焼き肉店を開業することで、既存の日本料理店の客足が取られるような可能性は低いですが、その日本料理店の客を焼き肉店に誘導するとともに、彼らを通じてその友人・知人などに紹介してもらいましょう。

また、プロモーション政策を見直すことも必要です。これまでどのようなプロモーション活動をしてきたかにもよりますが、現在ではWEB上でのプロモーションが重要になってきています。

飲食店の場合、顧客との関係構築が業績に大きく影響するため、メールやSNSなどによる交流は必要です。顧客を不特定多数の誰かとして捉えるのではなく、個として認識した個別の対応も求められます。

 

3)業種転換

「業種転換」とは新たな製品等の製造等を通じて、主たる業種を変更することです。補助金申請においては、「業種転換」も先の3要件を満足しなければなりません。

 

【例1】賃貸業

 

「レンタカー事業を経営する事業者が、新たにファミリー向けのコロナ対策に配慮した貸切ペンションの運営を行い、レンタカー事業と組み合わせた宿泊プランを提供するなどの事業を開始する」

⇒これまでの主たる業種は、自動車を賃貸しするという物品賃貸業の「レンタカー事業」で、新たに開始する事業は宿泊業に該当する「貸切ペンション」です。そのため、補助金の申請上は要件を満足します。

 

もちろん大事なことは業種転換に成功して事業の再構築が図れることです。そのためには、貸切ペンション事業が有望な事業でって、既存のレンタカー事業の低迷をカバーできる、相乗効果が得られる、などの効果が期待できるものでなければなりません。

 

具体的には、その貸切ペンションに対する顧客ニーズが十分にあり、同業者との競合に勝利し得る戦略が実行できること、また、レンタカー事業の業績を向上させるような取組を新事業で実施できることなどが重要です。

 

例の場合では、「レンタカー事業と組み合わせた宿泊プランを提供する」ことで両者のシナジー効果を発現させようとしています。

 

4)業態転換

この「業態転換」とは製品等の製造方法等を相当程度変更することです。なお、補助金の申請上、「業態転換」に該当するためには、先の3要件を満足しなければなりません。

 

一般的に業態の変更とは、主に営業形態(売り方)の変更を指す場合が多いですが、製造業の場合では根本的な製造方法の変更などを指すこともあります。顧客ニーズを捉え、他社との差別化を図るために、従来の売り方や作り方を抜本的に変更することは有効であり、事業の再構築に役立つでしょう。

 

なお、補助金の申請上では、「製品の製造方法を変更する場合」と「商品またはサービスの提供方法を変更する場合」においての業態転換が含まれます。

 

【例1】サービス業

 

「ヨガ教室を経営していたところ、コロナの影響で顧客が激減し、売上が低迷していることを受け、サービスの提供方法を変更すべく、店舗での営業を縮小し、オンラインサービスを新たに開始した」

⇒この例は、業種・事業としてのヨガ教室に変更はないですが、実店舗でのサービス提供を縮小し、オンラインによるサービス提供に軸足を移すという内容です。つまり、営業形態を変更した事例と言えます。

 

ヨガを学びたいという方がターゲットである点は同じですが、オンラインによるサービス提供を好む、受けることに支障がないといった層を対象にしなければなりません。

 

そのため、以前よりもターゲットに制限を加えるようなことになりかねないので、オンラインサービスに合わせた特有のサービス提供やターゲットを誘導するためのプロモーションなどが必要になってきます。

 

オンラインでのサービス提供は実店舗とのそれと異なる点も少なくないため、オンラインでの魅力や他社との違いなどをアピールすることが重要です。

 

【例2】製造業

 

「健康器具を製造している製造業者が、コロナの感染リスクを抑えつつ、生産性を向上させることを目的として、AI・IoT技術などのデジタル技術を活用して、製造プロセスの省人化を進めるとともに、削減が見込まれるコストを投じてより付加価値の高い健康器具を製造する」

⇒例2は製造業での作り方を変えるという業態転換の例です。健康器具という製品を作ることは同じですが、このケースは「デジタル技術の活用→製造プロセスの省人化→コスト削減→高付加価値品の製造」を狙う製造方法に変更するという業態転換になります。

 

生産性を高めコストを削減することで、高付加価値品を作る原資や余力を得ることができるため有望な取組ですが、コロナ禍の現状を把握し顧客ニーズやライバルの動向を踏まえての業態転換でなければなりません。

 

5)事業再編

この「事業再編」とは、「会社法上の組織再編行為等を補助事業開始後に行い、新たな事業形態のもとに、新分野展開、事業転換、業種転換または業態転換のいずれかを行うこと」を意味します。

 

「組織再編行為」とは、合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡、などのことです。こうした組織変更を伴って「新分野展開、事業転換、業種転換または業態転換」の事業再構築を実施する場合に事業再構築補助金の支給対象になるというのが、この「事業再編」の内容になります。

 

従って、補助金を申請しない場合にはあまり気にする必要はありません。なお、事業再構築を進める際に上記のような組織再編を行う場合、新分野展開などの方向性の選定とともに適切な組織形態の選定と移行が重要になるため注意しましょう。

 

ここでは以下のような例が示されています。

 

・飲食業での活用例(業態転換)

コロナ前:居酒屋を経営していたが、コロナの影響で売上が減少

コロナ後:店舗営業を廃止。オンライン専用の弁当の宅配事業を新たに開始

 

・サービス業での活用例(業種転換)

コロナ前:高齢者向けデイサービス事業等の介護サービスを営んでいたが、コロナの影響で利用が減少

コロナ後:デイサービス事業を他社に譲渡。別の企業を買収し、病院向けの給食、事務等の受託サービス事業を開始

 

・製造業での活用例(新分野展開)

コロナ前:フライ菓子などの製造販売業者。コロナの影響、原材料の小麦粉・油などの価格の高騰、商品単価の値下げの激化などで、売上・利益率が減少

コロナ後:現存の加工技術の活用が可能な、新たにドライフルーツ製品を製造する機器を導入。原油価格・物価高騰の影響を受けにくい生産体制へ移行し、新市場開拓へ

 

事業再編を伴う事業再構築の場合、適切な組織に変えて、新分野展開、事業転換、業種転換または業態転換を的確に実行できるかどうかを慎重に検討しましょう。

 

 

2-3 事業再構築の意義

事業再構築の意義は説明するまでもなく、既存の事業を修正・変更するなどして企業としての事業活動を継続させることにあります。

 

企業およびその経営者や従業員は時代の流れの中で様々な環境変化に見舞われ大きな影響を受けることが少なくありません。景気循環といった景況の変化だけでなく、戦争・紛争、自然災害、疫病、といった企業(人)の力では抗いにくい現象に晒されることも多いです。

 

また、科学技術の発展に伴い社会が大きく変わり消費者や企業などでの購買行動の変化も激しくなってきて、売手の企業としては対応が容易ではありません。そのため既存の事業がそうした変化に直面すると、急速に事業が低迷し経営リスクが高まることも多いです。

 

こうしたリスクに対応するためには、既存事業を見直し修正・変更という事業の再構築がしばしば必要になります。経営の最重要事項の一つが「環境への対応」であることを考えれば、事業再構築は経営者として常に向き合う必要のある課題と言えるはずです。

 

つまり、経営者は自社を倒産に追い込まないため、再起を図るために常に事業再構築の視点を踏まえた経営が求められています。

 

 

3 事業再構築の事例とその成功ポイント

事業再構築の事例とその成功ポイント

 

ここでは事業再構築補助金の第2回採択事例集から、4つの事例を紹介し事業再構築の成功に繋がるポイントを確認していきましょう。再度の会社設立を進める場合にも参考になるはずです。

 

 

3-1 地域主導型観光プラットフォームに業態転換

●企業概要

事業者名:沖繩ツーリスト株式会社

所在地:沖縄県那覇市

主な業種:旅行業(生活関連サービス業、娯楽業)

事業概要:旅行事業、レンタカー事業、保険販売事業

 

●事業再構築の経緯や理由

旅行業の主流の事業モデルは、「代理店が宿泊・交通・観光事業者から提案された企画を万人受けするプランにして、マス・マーケティングで販売する形態」です。

 

同社は、このモデルが、需要や客層のばらつき、オーバーツーリズムといった、沖縄の地域・観光事業者が抱える問題の原因の一つなっているという認識を持っていました。

 

こうした状況下でコロナの影響を受け、同社の売上は8割も減少し、事業の縮小に直面していたため、この機会に事業のあり方を見直して地域主導型観光ビジネスモデルの構築を決断するに至ったのです。

 

●事業再構築の内容

 

・「利用者にも観光事業者にも価値を提供するツーリストDX戦略」

 

同社の取組は、「航空券(変動型運賃)や宿泊、レンタカー、各種観光コンテンツ等を、利用者が自由に組み合わせて予約できるプラットフォーム」の開発です。

 

このプラットフォームに各事業者が企画や情報を登録し、各事業者の公式サイトに入口を設置することで、各社の独自性を活かしたプランの発信・販売が可能になります。つまり、旅行関連会社の強みを活かしたワンストップのサービス提供が可能となるのです。

 

具体的には、同社が企画・運営する「地域主導型観光プラットフォーム」に、宿泊事業者、観光事業者、2次交通事業者、行政・DMO(観光地域づくり法人)・観光協会などが上記のような企画や情報を登録します。

 

顧客はこのプラットフォームを通じて情報を入手できるほか(AIリコメンドが受けられ)、予約ができるため、同社および各事業者にとっては販売チャネルにもなるわけです。

 

従前のビジネスモデルは旅行会社に頼る企画販売が主でしたが、この取組により顧客を受入れる側の事業者が能動的かつ的確に顧客へアプローチすることができ、各事業の高付加価値サービス等の提供が可能となるため、地域と同社の収益向上に結び付きます。

 

●事業再構築のポイントと効果

 

・業態の転換

 

この事例は営業形態を変えるという事業再構築のケースです。旅行業界のビジネスの仕組みは、旅行会社が「旅行プランのパッケージ」などを企画し各地の旅行代理店などがそれを販売するという形態になります。

 

この形態は旅行会社が企画した旅行プラン等の販売であるため、対象地域の観光資源や宿泊・交通等の事業者をどう利用するかは旅行会社の判断に委ねられます。従って、観光地の地域すべての魅力的な観光資源や事業者の強みなどを活用することは困難です。

 

そのため顧客ニーズを十分に捉えられない、事業者のサービス機能を活かしきない、などにより顧客の支持が得られなくなることもあります。こうした従来のビジネスモデルから地域の事業者が積極的に参加して、利用者が希望する観光プランを作れるモデルへと変更しようとしているのが、この「地域主導型観光プラットフォーム」です。

 

・地域を巻き込んだ取組

 

このプラットフォームを通じて、観光地としての沖縄の魅力を地域の事業者から発信・PRすることが可能となり、今まで取りこぼされていた地域イベントなどを魅力的な観光資源として活用できるようになります。

 

また、地域の旅行・観光関連や交通関連の事業者なども自ら顧客にアプローチできるチャネルとなって収益向上に繋がるため、彼らからの協力も得やすいはずです。

 

つまり、この取組は地域を巻き込んで地域の発展に寄与する事業再構築と言えるでしょう。

 

 

3-2 ブルワリーを持つ自然派食品店に事業転換

●企業概要

事業者名:有限会社ベアーズ

所在地:千葉県木更津市

主な業種:卸売業、小売業

事業概要:飲食店向けの酒類卸売、オーガニック食品と酒類の小売店運営

 

●事業再構築の経緯や理由

同社は、飲食店向けの酒類卸売を主体として、お酒とオーガニック食品の小売店も運営する会社です。同社は、健康に配慮した焼酎や雑穀の量り売り、無農薬・無添加食品の取扱を特徴とするほか、味噌づくりなど健康に関するイベントも開催してきました。

 

また、健康意識が高い女性向けに、砂糖を使用せず米の糖度だけで甘みを出すリキュールの開発を進めるほか、オリジナル梅酒は全国大会でグランプリを獲得しています。

 

しかし、コロナの影響で飲食店向けの売上が大きく減少し、経営が厳しい状況に陥ったことで、卸売事業を譲渡し利益率の高い自社製造の酒類とオーガニック食品販売の小売業へ事業転換する決断に至ったのです。

 

●事業再構築の内容

 

・店舗を、ブルワリーを持つ自然派食品店にリニューアル

店内にクラフトビールの醸造設備を設置して、無農薬大麦を原料とした自然派ビール、リキュール製造後の再活用フルーツを開発・販売することが計画されました。

 

・主要ターゲットの30~40代の女性に適するお店に変身

主な取組内容は、彼女らが入りやすい外観、雑穀をはじめ酒類・調味料など様々な商品の量り売りが可能な県内随一の品揃え、など特徴とする店舗づくりです。また、店内でのワークショップエリアの設置、マイビールづくり等のイベントの開催など、ファンを獲得する取組も推進されます。

 

●事業再構築のポイントと効果

 

・コロナ禍に対応するための事業売却の判断

健康意識の高まりが定着する現代社会においって、体に優しいお酒やオーガニック食品の小売業は有望と考えられますが、ウイズコロナが長引く現状とはいえ、卸売事業の売却には勇気が必要だったと推察されます。

 

事業再構築を進めるということは、既存の事業を止める、主力から外すというリスクを伴うため、その影響・リスクと新たな取組での将来性などを適切に分析・評価の上、勇気ある決断が必要です。

 

・明確な事業再構築のコンセプト

同社のある木更津市は「オーガニックシティ宣言」をしており、人々の健康意識は高いです。同社は食と健康に関するイベントや地域マーケットの運営等の活動に参加して、そうした意識の高まりを同社は肌で感じており、それがお酒の開発にも繋がっています。

 

そうした環境の中で、特に30~40代の女性を主要なターゲットとして店舗コンセプトを確立し、それに合わせた店づくりからサービスの提供などの店舗運営まで計画しました。

 

市場・顧客のニーズや特徴を分析・評価の上ターゲットを設定し、それに基づいた店舗コンセプトの構想、それに合わせた仕組みの展開が進められようとしています。

 

 

3-3 ネット体験型定置網販売サービスに新分野展開

●企業概要

事業者名:与力水産株式会社

所在地:高知県宿毛市

主な業種:水産物卸売業

事業概要:鮮魚の加工、卸売、海外輸出、築地場外市場の販売所運営

 

●事業再構築の経緯や理由

同社は、鮮魚と加工商品の飲食店等への卸販売および海外輸出の事業を営んでいます。事業の特徴は、宿毛湾周辺の良質な魚を、要望に応じて加工し、最新の冷凍技術で高品質・高鮮度の状態で全国のホテルや料亭等へ提供できることです。

 

また、ホテル・飲食店の料理長やトップシェフを招き、実際の定置網漁を見て魚の特徴や品質の良さを認識の上購入してもらう取組が実施されてきました。

 

しかし、コロナの影響で飲食店向けの卸売は約半分まで減少する事態に陥ったため、シェフ向けの取組を一般消費者向けとして、ICT技術を駆使したネット体験型定置網販売サービスの新事業を開始する決断に至ったのです。

 

●事業再構築の内容

 

・新事業のターゲットは消費者

同社は新事業のターゲットとして、飲食店などの事業者ではなく、消費者を選びました。コロナ禍で外出および外食が控えられ飲食店向けの需要が大きく減少する一方、お家時間の増加に伴う家庭での食材購入量・購入金額は増加傾向にあるからです。

2020年年間の飲食料品販売額は11兆6,252億円で、前年比+6.7%の大幅な上昇

 

・定置網漁のネット見学サービスの提供

これまでシェフなどを現地に招いて、実際の定置網漁や魚を確認してもらっていましたが、同社は消費者にネット経由で定置網漁を体験してもらう、魚を見てもらうというサービスを考案し実施に向けた計画を立案しました。

 

魚の種類・数を確認できる定置網モニタリングシステムと漁船カメラが導入され、水揚げ等がライブ配信されます。消費者はそうした漁や料理の様子をスマホやパソコンで閲覧でき、欲しい魚と食べ方(刺身・焼く・煮る等)をネット上で指定・注文できるのです(船上のスタッフがその場で注文を受け、当日中に加工・発送)。

 

●事業再構築のポイントと効果

 

・市場動向に合わせた対応

同社の取組の特徴は、ターゲットとしてコロナ禍で食材購入量が増える消費者を選び、その中でも「体験したい」というコト消費に積極的な層を取り込もうしている点です。

 

コロナ禍で観光やレジャーなどが控えられる中、ネットでの「体験を楽しむ」サービスの提供は注目を集めるようになっています。同社はこの点に着目して定置網漁をネットで体験し、魚の調理などを見学できるサービスを提供することにしました。

 

事業を再構築する、新事業を行うには、市場を的確に分析してアクセスできる有望なターゲットを選びだし、そのニーズを抽出してそれを取込む仕組み・システムを考案することがやはり重要です。

 

・地域との連携や協力

この取組は魚の卸売業・加工業を営む同社と、実際に魚を取る漁業組合や地域の関係者等の協力があって考案されています。こうした協力関係が新事業の経営資源の補完に繋がるため、普段から様々な事業者や機関などと良好な関係を持つことが重要です。

 

 

3-4 市場の鮮魚店と連携した回転寿司に業種転換

●企業概要

事業者名:株式会社千成屋

所在地:大阪府大阪市

主な業種:不動産賃貸業

事業概要:飲食店テナントと中心とした賃貸、小売業、農作物の生産加工

 

●事業再構築の経緯や理由

同社は大阪市内の黒門市場の中心に3階建てのビルを所有して、主に飲食店をテナントとする不動産賃貸業を行ってきました。そのビルには、小さな飲食店が多く入居していて、立地の良さとインバウンド客対応の成果から、外国人などの観光客でテナントは溢れ、同社は安定した賃貸収入を得ていたのです。

 

しかし、コロナの影響でインバウンド客が激減したため、1階の飲食店はすべて撤退し、売上が半減する事態に陥りました。この危機を打開するため、地元の人が利用する市場の原点に立ち返り、市場内の専門鮮魚店と連携した回転寿司事業に進出する決断に至ったのです。

 

●事業再構築の内容

 

・地域の特性を活かした飲食業への事業再構築

同社は、空いたビルの1階を、高単価・高付加価値の回転寿司店にするという業種転換を構想しました。黒門市場には、ミシュランの星付き料理店や高級料亭にも卸している老舗鮮魚店があり、彼らと連携した高級回転寿司店を同社は目指したのです。

 

同社には寿司店としての仕入、加工・調理や保管といった作業のノウハウがないですが、その老舗鮮魚店が仕入れ・加工・保管の業務を担ってくれています。

 

●事業再構築のポイントと効果

 

・事業再構築への決断

同社の主要ターゲットである飲食店がコロナの影響により撤退が続けば、倒産リスクが高まるのは自明の理であるため、その前の対応として新事業への転換は賢明な判断と言えるでしょう。コロナの収束を待ち続けたために、経営の体力を失い倒産するという事態は避けねばなりません。

 

・地域の特性を踏まえた市場分析と資源の活用

回転寿司市場ではテイクアウト需要もあって拡大しており、黒門市場でも回転寿司を求める声や、価格が高くても利用したい人が多いことを同社は掴んでいました。

 

また、同社には飲食業としての経営ノウハウや資源はないですが、地域にはそれらを補完してくれる飲食関連業者が存在し、回転寿司店の運営方法を助言してくれる協力者(他の地域の回転寿司店)もいたため、同社は黒門市場の名物飲食店となるグルメ回転寿司を目指したのです。

 

必要な経営ノウハウや経営資源がない異業種に進出する場合、対象市場が魅力的で将来性があっても事業リスクが大きく進出は適切とは言えません。しかし、他者の力を借りてそれらを補完できるなら話は別であり、良質な外部資源を確保できるなら事業を成功させることは十分可能です。

 

・地域の繁栄と本業の回復

この事業再構築の取組は同社の業績改善に結び付くほか、黒門市場全体での集客効果をもたらし、地域発展の起爆剤として期待されます。従って、地域の飲食店の業績回復に繋がり、同社の不動産賃貸事業の回復にも貢献するのです。

 

 

4 事業再構築と再度の会社設立を進める際のポイント

事業再構築と再度の会社設立を進める際のポイント

 

会社を存続しながら事業を再構築する場合と、会社を一旦畳んでその後に会社設立し事業を行う場合の両方において、共通する経営上の重要なポイントがあります。ここではその点を確認していきましょう。

 

 

4-1 再起を図るための現状分析

事業再構築や再度の会社設立の場合も、新たな事業を取り組むには適切な現状分析が欠かせません。この現状分析とは、現在からこれから一定期間における外部環境と内部環境について分析し評価することを指します。

 

起業する時と同様に、事業再構築等の場合でも環境分析をする必要があり、その用いる手法は同じです。例えば、PEST分析、3C分析やSWOT分析などが挙げられます。

 

PEST分析は、政治・法律関連要因、経済的要因、社会・文化的要因、技術的要因、の主に4つの点から企業を取り巻く環境を分析する手法です。3C分析は、競合、自社と顧客の3つの点で市場環境を分析する方法で、SWOT分析は、強み・弱みの内部環境と機会・脅威の外部環境から分析する方法になります。

 

さらに市場環境をもっと詳しく分析するには「5フォース分析」などの利用も有効です。

 

なお、分析に際しては、これまでの事業経験で得た知識や能力などを活用しながら丁寧に分析することが重要になります。起業時とは比べものにならない情報(量・質ともに)を持っている可能性があるため、活用しない手はありません。

 

また、情報とともに経営資源も起業時より大幅に増えている可能性が高いため、丁寧に確認・分析・評価して新事業の構想などに繋げましょう。

 

 

4-2 新たな事業の方向性の決定

事業再構築や再起業を行う場合、特に「新分野展開」、「事業転換」、「業種転換」、「業態転換」などの新事業の方向性を適切に決定することがポイントになります。

 

新分野展開は「業種または主たる事業を変更しないで、新たな製品等を製造等し、新市場に進出する」といったことで、基本的な事業内容は変えないで売る相手を新しく設定するということになります。例えば、自動車部品の加工メーカーが航空機部品の製造に進出するケースなどです。

 

事業転換は「新たな製品等の製造等を通じて、主たる業種を変更しないで、主たる事業を変更する」ことで、日本料理店が焼肉店などへ事業内容を変更するとことなどが該当します。

 

業態転換は、製造業では作り方、販売・サービス業では売り方を相当程度変更する」ことで、実店舗の英会話教室からオンラインでの英会話教室などへ変更することが挙げられます。

 

業種転換は「新たな製品等の製造等を通じて、主たる業種を変更する」といった内容で、スポーツ用品店がキャンプ場運営に業種を変更するといったケースです。

 

これらの方向性を決定するためには、先の環境分析を適切に行った上で、自社の資金、人材、経営ノウハウなどの経営資源との兼ね合いで最も有効(将来性が高い等)かつ実現可能性の高い方向性を選ぶことが求められます。

 

選んだ方向性がいかに有望であっても、それを実現していくための経営資源がなくては成功するのは困難です。そのため現在の自社の経営資源の状況およびこれから確保できるかどうかなどを見極め、その状況に応じた決定と進め方が必要になります。

 

進め方については、最初は限られた資源でも推進できる小規模な事業で始め、経営資源の確保に合わせて徐々に事業を拡大していくという方法も重要です。

 

なお、再度の会社設立の場合でも上記のような方向性の検討が求められます。前の事業内容を変えずに再度挑戦するのか、業種、事業、業態を変えて挑戦するのかを熟慮しなければなりません。前の事業で失敗した原因を踏まえつつ、分析した事業機会と経営資源とのマッチング等により今後の方向性を検討しましょう。

 

 

4-3 重要な経営資源の確保

決定した事業を推進していくために必要となる経営資源を計画に沿って確保できることが成功には欠かせません。なお、必要な経営資源のすべてを自前で獲得していくのは容易でないため、外部の力を上手く利用して入手することも重要です。

 

例えば、経営資源の中でも資金の確保は最も重要ですが、外部からの出資、融資のほか行政等からの補助金等の活用も必要になります。

 

融資は金融機関への依頼になりますが実現性は高いとは言えません。ただし、日本政策金融公庫(事業再生支援資金等)などの公的機関の場合は、銀行などよりも事業者融資に積極的であるため、事業再構築や再起業などでも利用できるケースは多いです。

 

なお、銀行等に融資を依頼する場合、借手が適正な環境分析に基づいて事業を計画していれば、融資に応じてもらえる可能性はあります。

 

出資については、事業の内容により大企業やベンチャーキャピタル(VC)などから協力を得られるケースは少なくありません。また、クラウドファンディング(WEB上での資金調達等)を活用した資金調達も当たり前に利用される時代になっています。

 

補助金等では事業再構築補助金などの利用が可能です。コロナ禍という脅威の中で生き残っていくためにはこうした補助金等を積極的に利用しましょう。

 

再起業に関しては、起業家支援や創業支援などの施策の中で、「再挑戦ワク」といった名目で融資や補助金などが用意されているケースが見られます。国や各自治体での関連施策を随時チェックしてください。

 

他に注意したい点は「経営ノウハウ」です。これまでに説明したとおり、他の業種や事業に転換する、進出する場合、その分野での経営・事業ノウハウが当然必要です。

 

この経営ノウハウ(販売や生産等のノウハウを含む)をいかに的確かつ迅速に獲得できるかが新たな事業の成否に直結するため、どう獲得するかを事前に検討して取り組まねばなりません。

 

経営ノウハウを有する人材を獲得する、協力してくれる同業者に指導してもらう、そうした企業に社員を派遣して教育を受けるなどの取組が必要です。

 

 

4-4 ビジネスモデルの評価と事業計画

事業の方向性を決め、経営資源の確保の目途がつくようなら、始める事業の内容をビジネスモデル(ビジネスの仕組み)としてまとめて、それを具現化できるように事業計画を策定しましょう。

 

ビジネスモデルとは、誰のどのようなニーズを、何でどのように充足していくか、を端的にまとめたビジネスの仕組みのことです。創業する場合と同様に、事業再構築や再起業の際にもビジネスモデルは策定しなければなりません。

 

どのようなビジネスでも、まずターゲットとそのニーズを特定して、そのニーズを捉える行為(活動)を事業の核とします。ニーズを捉えるには、ターゲットの欲するモノやコトを、望まれる方法でかつライバルに勝てる方法で提供しなければなりません。

 

そのため先の3C分析や5フォース分析などを行い顧客に選ばれる製品・サービスの内容(仕様)、価格、品質、納期等を設定の上、ライバルに勝てるための販売促進(広告等)やチャネル構築等が必要になります。

 

なお、事業再構築や再起業では、特に新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換などの方向性を踏まえて、ビジネスモデルを検討することが重要です。今までの事業から別の業種・事業・業態などへ転換したり、新分野へ進出したりするため、その新たな分野でのニーズやライバル等の特徴を踏まえたモデルの構築が求められます。

 

ビジネスモデルの策定後は事業計画書にまとめることが重要です。計画立案はこれから行う事業を実際に進めるため、無駄を省いて効率的に事業を行うため、結果として失敗を防ぐための作業です。また、資金調達や協力者の確保にも効果を発揮する資料となるため、適正な事業計画の策定が求められます。

 

 

4-5 事業開始後の改善

計画した新事業等を開始した場合、何がしかの問題が発生したり、売上が伸び悩んだりすることも多いため、事業が軌道に乗るまでは問題になりそうな点を早めに掴み改善していく取組が必要です。

 

事業再構築等の取組内容にもよりますが、以前の事業と大きく異なる製品・サービスを扱い、業務内容が大幅に変わる場合、業務で問題が生じる可能性は低くありません。

 

事前に従業員に研修・訓練の機会を提供することは当然ですが、事業開始後においても顧客の声や従業員の声を聞きながら業務方法や作業等の改善に取り組むことが求められます。

 

改善した内容は業務標準やマニュアルの修正という形で反映させ、顧客対応で変更する点はホームページやSNSなどを通じて顧客等にも連絡・案内しましょう。

 

また、経済動向、新型コロナの感染状況、事業に関係する法律・規制等の制定、新製品・サービスの登場、技術革新などのほか、業界全体やライバル会社などの動きなどに注意を払い、影響の大きな要因が発生していないかを確認するほか、迅速に対応できる体制を徐々にでも整備していきましょう。

 

 

5 事業再構築や再起業する場合の注意点

事業再構築や再起業する場合の注意点

 

最後に事業再構築や再起業する際に特に注意しておきたい点を説明します。

 

 

5-1 事業内容の再チェック

決定した事業再構築等の内容を再度見直し、それから事業に着手するのが重要です。例えば、三重県のWEBサイトの「事業再構築・業態転換の具体的なプロセスは?」のページでは、「方向性と取り組む内容の実現性評価」の資料が掲載されてあり、参考にすれば再チェックに役立ちます。

 

具体的には、以下のようなチェック項目を確認するとよいでしょう。

 

Q1とQ2:

その方向性や事業案はプロダクト・ライフサイクル(製品周期)による分析やPEST分析の結果、今後の市場成長やプラス要因が予測できる内容ですか?

既に衰退期を迎えている、もしくはマイナス要因が多い予測の傾向ではないですか?

⇒これは「環境分析⇒事業の方向性」の決定に対して、適正な評価が行われているかの確認になります。

 

Q3:

自社の貸借対照表を分析の結果、その方向性や事業案に取り組むための一定の投資資金を自己資金、もしくは金融機関等からの借入で賄えると確認できましたか?

⇒これは新事業等のための資金確保が妥当であるか、の確認です。

 

Q6:

その方向性や事業案は既存の商品サービスやノウハウ、顧客や人脈ネットワーク等を活かして取り組めそうな内容ですか?

⇒これは、既存の経営資源をどの程度活用して新事業等を実現できるか、の確認になります。

 

こうした問いに答えることで、新たな取組(事業内容)に問題がないか、確認することが重要です。また、経済・経営の知識・経験等を有する専門家(機関等)に依頼して、新業等の妥当性をチェックしてもらうのもよいでしょう。

 

 

5-2 内部資源の的確な把握と取組の修正

さらに自社の強み・弱みなどを十分に把握して、新事業等を考案・計画できているかを再点検し追加・修正などを行うことが必要です。再起を図るためには現状分析の中でも、自社の状況を自己分析する作業は重要で、その善し悪しが事業構想や計画に反映され事業の成否を分けます。

 

外部環境をいかに適切に分析できたとしても、事業機会を捉えるための「強み」や新事業等の足かせとなるような「弱み」を的確に把握してビジネスモデル等に反映できなければ、成功確率の低いモデルになってしまうのです。

 

貸借対照表、損益計算書やキャッシュフロー計算書などの財務関連の資料、社員の自社事業に対する評価、関係会社・取引先・顧客・金融機関等の自社に対する評価、などの多様は情報・データを集め、その分析のもとに事業を構想することが重要です。

 

どの強みでどのような機会を掴むのか、その強みが十分でない場合はどう強化して進めるのか、その機会を捉えるためにどのような弱みを克服してすすめるのか・どのように弱みを補強して進めるのか、というように内部資源の特徴を踏まえた検討が事業構想の骨格になります。

 

事業を開始する前にこれらの点を再度確認し、問題や不足等があれば必ず修正・追加を行い納得できる事業システムとして進めていきましょう。

 

 

5-3 外部資源の徹底的活用

自社の経営資源には限りがあるため、新業展開には外部資源の有効活用が欠かせません。過度に外部資源に依存するのはよくないですが、上手く活用すれば新事業等の成功確率を高めることができます。

 

資金調達においては、先の説明の通り、融資・出資・補助金等を行政、VC、大企業、金融機関やクラウドファンディングなどから資金を入手することが可能です。

 

また、資金以外の、技術の確保、機械・部品等の物資や商材の調達、製造・サービスの外注(作業工程の委託)、人材の確保、経営ノウハウの取得、顧客の紹介や情報提供、など多方面の資源を外部から調達できます。

 

従って、外部に自社の味方や協力者を多く確保できるほど、自社の発展およびその事業の成長の可能性が向上するのです。そのため経営者は様々な方面で多様な組織や人と交流を持ち協力関係を構築できるように取り組むことが求められます。

 

 

5-4 想定される事業リスクと対応

新事業等を成功させるためには事前に事業リスクへの対応策を用意しておくことが重要です。詳細な対策を事前に準備するのは困難ですが、可能性の高い事業リスクをいくつか挙げて、大まかな対策の設定は必要になります。

 

例えば、競合先が自社の新事業等の脅威となる新たな製品・サービスを投入してくる、大企業等が自社と同様の製品・サービスで市場参入してくる、技術革新により自社の製品・サービスが代替される、自社の製品に予想外の欠陥がみつかるといったケースを想定し、その大まかな対応策を考え実行の目途がつくようようにしておくことが重要です。

 

例えば、「こういうケースにはこう応じる!」といった対応策を予め用意しておくように努めてください。

 

 

6 まとめ

コロナ禍での事業再構築や再度の会社設立の進め方のコツ

 

事業再構築と再起業を進める取組は共通する点が多く、創業する場合とも大きな違いはありません。適正に外部と内部の環境を把握して分析し、自社の強み等でビジネスチャンスを掴む方法を主体に新事業等を構想するという点は同じなのです。

 

ただし、事業再構築等の場合、創業時以上に情報量や経営資源を多く保有しているため、それらを十分に活用した新事業等の構想が重要になります。コロナ禍やウクライナ問題などで経済状況が厳しくなっている今、環境変化を的確に分析し、資源を最大限に活用して再起を図れるように努めてみてください。


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