2015年6月、大手電力会社の発電部門と送配電部門を切り離す「発送電分離」を実施するための改正電気事業法が成立しました。
目次
- 1 発送電分離は2022年から開始
- 2 電力小売りの完全自由化で電気は安くなるか
- 2-1 期待されるサービスの向上
- 2-2 ガスの小売りも自由化
1 発送電分離は2020年から開始
従来、発送部門と送配電部門を大手電力会社が一手に担っていたため、新規事業者の参入は困難と言われていました。
この度の改正法では、送配電部門を発電部門から切り離すことで、大手電力会社が独占する送配電網を資金力の弱い中小の新規事業者も利用できるようになります。2020年4月から法的分離※による発送電分離が行われる予定です。
これにより、事業者間同士の活発な価格競争が予想され、料金の引き下げやサービス向上に期待が集まります。
また改正に伴い、一般送配電事業者が、小売電気事業や発電事業を行うことが禁止されました。発電事業と送電事業※を分離し、適正な競争関係を確保するため、送配電事業者と発電事業者や小売電気事業者で取締役を兼任することはできません。
※発電事業とは自らが維持し、及び運用する発電用の電気工作物を用いて小売電気事業、一般送配電事業又は特定送配電事業の用に供するための電気を発電する事業のこと。送電事業とは自らが維持し、及び運用する送電用の電気工作物により一般送配電事業者に振替供給を行う事業のこと。(参照:資源エネルギー庁)
※日本で有力とされている発送電分離の方法が「法的分離」で、フランスなどで実際に採用されている。これは送配電部門を既存の電力会社から分社化し、グループ会社にして法的に経営を分離することで送配電部門の中立性を可能な限り担保するというもの。他の方法と比べ、効率的な送配電設備を維持しながらも、インバランス調整等に要するコストの透明性が高いというメリットがある。(参照:新電力ネット)
2 電力小売りの完全自由化で電気は安くなるか
すでに全面自由化となっている電力の小売り制度。皆さんはどの電力会社から電気を購入しているでしょうか。
2-1 期待されるサービスの向上
2016年4月に「低圧」区分※の一般家庭や商店向けの電力の販売は始まっており、地域ごとに決められた電力会社から購入する必要はなく、任意で選ぶことができます。
一般消費者にとっては電気とガス、電気と携帯電話などの組み合わせによるセット割引や、ポイントサービス、さらには家庭の省エネ診断サービスなどの登場が期待されています。(参照:資源エネルギー庁)
・全国に対応している電力の小売り業者の例
会社名 | 住所 | 事業開始年月 |
---|---|---|
株式会社F-Power | 東京都港区六本木1-8-7 | 平成28年4月1日 |
株式会社エネット | 東京都港区芝公園2-6-3 | 平成28年4月1日 |
日本アルファ電力株式会社 | 東京都文京区本郷4-1-4 | 平成28年4月1日 |
日本テクノ株式会社 | 東京都新宿区西新宿1-25-1 新宿センタービル51階 | 平成28年4月1日 |
株式会社Looop | 東京都文京区本郷4-1-4 | 平成28年4月1日 |
全農エネルギー株式会社 | 東京都千代田区猿楽町1-5-18 | 平成28年8月1日 |
株式会社リケン工業 | 兵庫県神戸市東灘区魚崎南町3-2-20 | 平成28年10月1日 |
福岡電力株式会社 | 福岡県福岡市中央区天神3-11-1天神武藤ビル2F | 平成28年9月1日 |
日本ファシリティ・ソリューション株式会社 | 東京都品川区大崎1-6-4新大崎勧業ビルディング17階 | 平成29年2月1日 |
(参照:資源エネルギー庁)
※おもに学校、病院、ビルや一般家庭やなどの使用場所の設備に使われる電圧で600v以下のものを指す。高圧は配電線に使われる電圧 、 特別高圧は送電線に使われる電圧である。
2-1 ガスの小売りも自由化
電気事業法の改正にあわせて、家庭向けの都市ガス小売りを全面自由化することを盛り込んだ改正ガス事業法も成立。
すでに工場向けなどの都市ガスは自由化されており、改正法の成立をもって、都市ガスの全面自由化が整備されました。
地域ごとに決められた都市ガス会社としか契約できなかった一般の家庭でも、2017年4月より自由にガス会社を選ぶことができます。