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心理職初の国家資格「公認心理師法」をおさらい〜独立・開業は可能?

2015年に成立した心理職として初となる国家資格の公認心理師法。公布の日から起算して2年を超えない範囲内に施行されることとなっており、今年の9月15日までに施行される予定です。

 

臨床心理士を筆頭に心理職のニーズは年々高まり、学校や会社では欠かせない存在となっています。公認心理師の資格はこのような背景を受けて誕生。さまざまな現場での活躍が期待されています。

 

 

目次

  1. 1 公認心理師とは
  2. 1-1 公認心理師の業務
  3. 1-2 臨床心理士との違い
  4. 1-3 メリットは雇用の安定
  5. 2 資格を取得するにはどうすればいいの?
  6. 3 心理職の今後の課題

 

1 公認心理師とは

心理業務に従事する人たちは心理士と呼ばれ、教育や医療、司法などの現場で活躍しています。心理職には新設された公認心理師のほか、臨床心理士、学校心理士、臨床発達心理士などあわせて数十種類の資格があります。

 

多岐にわたるジャンルで活躍できる職種ですが、これまで民間資格しかなかったため、国家資格化の準備が進められ、2015年に公認心理師法が成立・公布されました。

 

 

1-1 公認心理師の業務

公認心理師は、公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもつ者と定義されます。公認心理師が行う業務は次のようなものになります。

 

・公認心理師が行う業務

  • 心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析
  • 心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助
  • 心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助
  • 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供

(参照:厚生労働省)

 

 

1-2 臨床心理士との違い

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多数ある民間心理資格のなかで、取得者数がもっとも多いのは臨床心理士です。現在およそ3万1000人(2015年度末)の資格取得者がおり、社会的認知度・信用度では群を抜いています。

 

臨床心理士には次の4つの専門業務が認められています。すなわち「①:臨床心理査定」「②:臨床心理面接」「③:臨床心理的地域援助」「④:①~③に関する調査・研究」です。

 

・臨床心理士の専門業務

臨床心理査定 種々の心理テストや観察面接を通じて、個々人の独自性、個別性の固有な特徴や問題点の所在を明らかにする。また、心の問題で悩む人々をどのような方法で援助するのが望ましいか明らかにする
臨床心理面接 臨床心理士のもっとも中心的な専門行為で、臨床心理学的技法(精神分析、夢分析、遊戯療法、クライエント中心療法、集団心理療法、行動療法、箱庭療法、臨床動作法、家族療法、芸術療法、認知療法、ゲシュタルト療法、イメージ療法など)を用いて、クライエントの心の支援に資する
臨床心理的地域援助 臨床心理的地域援助専門的に特定の個人を対象とするだけでなく、地域住民や学校、職場に所属する人々(コミュニティ)の心の健康や地域住民の被害の支援活動を行う
上記に関する調査・研究 上記①~③に関する調査・研究心の問題への援助を行っていくうえで、技術的な手法や知識を確実なものにするために、基礎となる臨床心理的調査や研究活動を実施する

(参照:日本臨床心理士資格認定協会

 

公認心理師の業務は、臨床心理士の専門業務と共通している部分が多く、大きな違いはないとされています。また公認心理師は名称独占資格であるため、公認心理師以外の者がその名称又は心理師という文字を用いた場合、違反者には罰則が与えられます。

 

 

1-3 メリットは雇用の安定

たとえば医療分野での現場では、心理職は診療報酬の対象職種ではないため、病院で雇用しにくい状況となっています。そのため、臨床心理士の就業形態は常勤が5割に満たないという調査結果もあります。

 

一方、学校などの教育機関のスクールカウンセラーもほとんどは臨床心理士が担っていますが、民間資格のままでは労働環境が不安定といった声も多いようです。心理職が初めて国家資格となったことで、関係団体や学会から雇用の安定化が期待されています。

 

 

2 資格を取得するにはどうすればいいの?

公認心理師の資格を取得するためには原則、公認心理師試験を受験し、合格しなければなりません。また受験資格の要件は次のようになります。

 

・ 公認心理師試験 受験資格

大学において文部科学大臣及び厚生労働大臣指定の心理学等に関する科目を修め、かつ、大学院において主務大臣指定の心理学等の科目を修めてその課程を修了した者
大学で文部科学大臣及び厚生労働大臣指定の心理学等に関する科目を修め、卒業後一定期間の実務経験を積んだ者
文部科学大臣及び厚生労働大臣指定が①及び②に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認めた者

 

資格取得のためには原則、大学における指定のカリキュラムを履修し、卒業しなければなりません。
③「①及び②に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認めた者」とは、保健医療・福祉・教育関係で心理の仕事を5年以上していた場合や、保健医療・福祉・教育関係で心理の仕事に従事していて文部科学大臣及び厚生労働大臣が指定した講習会の課程を修了した場合などが該当します。

 

なお、公認心理師法は今年の9月15日までに施行される予定ですが、試験科目や大学及び大学院における必要な科目などの詳細は検討中とのことです(2017年2月14日時点)。また、公認心理師の第1回国家試験は、2018年までに実施される予定です(参照:厚生労働省)。

 

 

・施行までのスケジュール

スケジュール

 

 

3 心理職の今後の課題

公認心理師の普及に向けた課題は多く残されていると東京大学大学院教育学研究科教授の下山晴彦氏は次のように語ります。

 

「欧米では、心理職に科学者(サイエンティスト)としての研究能力と、実践者としての臨床能力の両方が求められるのに対し、これまでの日本の心理職養成教育は単に実践者(臨床家)であれば良いという考えが主流でした。

 

心理職が科学的視点を持ち,メンタルヘルス問題の分析や介入効果の研究を進めることに、医療者側から期待もあると聞いています。公認心理師の養成に当たっては、科学的態度や研究能力を高める取り組みも進めていく必要があると考えています」(参照:医学書院

 

また、日本臨床心理士協会は公認心理師の誕生について

 

「新しい国家資格である公認心理師は、臨床心理士資格とは異なりますが、臨床心理士に関係する団体、大学の関係者、有資格者、志望者そして利用者にとって、大きな影響を受ける」

 

と何かしらの影響があることを懸念しました。しかし、

 

「国家資格との共存共栄を図りつつ発展的な未来像の創造もできる、という本法律の正しい理解に基づく自由な認識に立って考えることが重要」

 

と述べ、心理職業界の発展に意欲をのぞかせました。(参照:日本編入学院)

 

 


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