ビジネスネームの使用にはメリットもデメリットもあるため、会社設立などの公的手続きを行えるかどうか知りたい方もいるのではないでしょうか。ビジネスネームを使用する場合はそれらのことを良く知っておかないと、思わぬ事態に発展する可能性があります。そこで今回の記事では、ビジネスネームの特徴や付け方、使用するメリット・デメリット、ビジネスネームによる会社設立は可能なのかについて解説するので、参考にしてみてください。
1 ビジネスネームとは
ビジネスネームとは、直訳したままの意味の通りに、ビジネスの際に用いる名前のことです。女性が結婚後にビジネス上では旧姓のままでいることもビジネスネームの一種といえます。戸籍や住民票上の氏名とは異なる名前をビジネスにおいて名乗ることが、ビジネスネームを用いるということになります。
個人事業主や副業におけるライティングの仕事を行う際のペンネームもビジネスネームの一種となります。なお、個人事業主ではビジネスネームを屋号として用いることができます。
会社の中には、役員や従業員の全員がビジネスネームを名乗るというところもあります。全員がビジネスネームを用いることで会社の結束感を高める、意思を統一する、それぞれのビジネスネームが持つ役割(キャラ)になりきるという効果を狙ってのことです。
ビジネスネームは、契約書上において法的な使用の制限はないため、契約書の署名にもビジネスネームを用いることができます。しかし、もしビジネスネームで署名する場合は先に相手方の了承を得ておき、署名時にはビジネスネームに本名を併記しておくことがトラブル回避の元となります。
なお、公的文書におけるビジネスネームの使用は認められていないため、本名を用いなければいけません。ただし、個人事業主は先に述べたようにビジネスネームを屋号として用いることができますので、公的書類上も「(屋号)こと(本名)」のように記載することでビジネスネームを用いることができます。
2 ビジネスネームの付け方
ビジネスネームは「もう一人の自分」といえる存在です。ビジネスネームを付けるのであれば、せっかくならばこだわりのある、意味のあるビジネスネームとしたいものです。この章ではビジネスネームの付け方を見ていきましょう。
ビジネスネームを付ける上で最初に明らかにしておくことは「何故ビジネスネームを付けるのか」ということです。ビジネスネームを名乗る動機を明確にしておくことで、自分の求めるビジネスネームが見えてきます。
本名で活動したくない、本名を晒したくないということも、ビジネスネームを付ける動機の一つとなります。他にも、覚えやすい、インパクトのある名前にすることでビジネスにプラスに働く効果を期待するということも動機となるでしょう。
動機(目的)によって、ビジネスネームの付け方の方向性は異なります。本名を晒したくない場合は、本人(本名)を連想させるような名前は避けるのが良いでしょう。例えば、本名の並び替えをしただけのものだったり、本名から数文字取ったりした場合は、本人であることが分かる可能性があります。
本名を明かすことへの抵抗はないもののビジネスを行う上で意識や気分に変化を付けたいという場合は、例えば「昇(のぼる)」という漢字を「登」とするのも良いでしょう。
または、「昇」を「ショウ」と読み替えて、漢字を「翔」と当てるのも一つの方法です。このとき変える漢字(または言葉)は、画数占いにより求めるのも一案となります。
インパクトのある、または読みやすい名前にすることで覚えやすさを狙う場合は、カタカナや平仮名を用いるのが一つの方法です。ただし、外来語を用いてビジネスネームを付ける場合(例えば「インパクト鈴木」)は、業種によっては場違い感が強く出ることがあります。
エンタメやメディア関係では馴染むような名前でも、大企業を取引先とする場合や、冠婚葬祭のような業種の場合は、TPOを弁えていないとして端から相手にされない恐れがあります。
インパクトを重視するとしても、難読漢字を頻用していたり読み辛かったりすると、心証を悪くしたり一歩引かれたりする恐れがあります。インパクトに関しては主観やこだわりが強く出るところですが、使い始める前にあらかじめ第三者に感想を聞いておくのが良いでしょう。
またビジネスネームは、本名に普段読まないような読み方をするものが含まれていたり、または良く読み間違えられたりする場合にも有用です。読みにくい、または読み間違えられる部分に読みやすい漢字をあてたり、平仮名にしたりすることで相手から覚えて貰いやすくなります。
逆に、良くある本名でありそれが理由で印象に残りにくくなっている場合は、敢えて難しい漢字をあてたり、読めるけれども当て字のような漢字にしたりすることによって印象付けを狙う、ということもビジネスネームを使う動機となります。
また、もしビジネスネームを用いてSNSによる発信に力を入れてビジネスを行う場合は、念のため同じ名前の人がいないかリサーチしておくのが良いでしょう。
せっかくインパクトのあるビジネスネームを付けたとして、同じ名前の人がいたとすると、インパクトのある名前であり希少であるが故に双方の顧客を混乱させてしまい、お互いにとってネガティブな結果となる恐れがあります。
さて、ビジネスネームを付ける際に忘れてはならないのは、ビジネスネームにストーリーや由来を持たせることです。ビジネスネームに物語を用意しておくことで、ビジネスネームがビジネスに繋がったりビジネスへの足がかりとなったりすることがあります。
せっかくのビジネスネームで、相手がビジネスネームの話題を振ってくれたとしても、「特に理由はない」「思いつき」という返事だと、相手としては肩透かしを食らったり興醒めしたりする恐れがあります。
3 ビジネスネームを使うメリットとデメリット
ビジネスネームにはメリットとデメリットがあります。それらの代表例を見ていきましょう。
3-1 ビジネスネームによるメリット
メリットの一つは、人は名前によって印象が異なる場合があり、それを活かすことができる、ということです。例えば名前の一部または全部が平仮名の場合は、柔らかい印象を相手に与えることが期待できます。
他にもビジネスネームには、キャラ付けをすることによってオンとオフの切り替えができたり、普段の自分とは違う自分を演出することができたりするメリットがあります。
また、ビジネスネームには、個人情報を守ることができるというメリットもあります。過去の自分を知っている人に今の活動を知られたくない場合や、過去の自分と決別したいという場合にもビジネスネームは有用です。
3-2 ビジネスネームによるデメリット
デメリットの一つには、インパクトのあり過ぎる(あるいは奇抜な)名前にしたり、業種に相応しくない語句を選んだりした場合には信用が得にくい、ビジネスに繋がらないというものがあります。
信用面の話しを続けると、ビジネスネームとすることで自分は自分の個人情報を守ったとしても、他人の個人情報を扱うようなビジネスである場合には、自分がビジネスネームであることが顧客に分かった場合に信用を得ることができるのか(取引が継続できるのか)という恐れがあります。
本名を晒すのは怖いことではありますが、逆に言えばそれだけ自分の情報を公にしている、自分は信用に値するような人間である、ということを示すということでもあります。
既にビジネスネームが定着している場合は、信用を得るためにある段階でそれ以降は自分の本名を公にして本名で活動することを検討するのも良いでしょう。
またビジネスネームが定着してしまったために、すなわち本名では活動できなくなったために不便さやビジネス上の不具合が明るみに出ることもあります。
この不便さや不具合については次章にて取り上げますが、本名を出さない、あるいは顔出しをしないことは活動を狭めたり自分で制限を設けたりすることに繋がるデメリットがある、ということです。
デメリットには他にも、ビジネスネームにキャラ設定をしている場合、本名の時のキャラと混在することで恥をかく状況が有り得るということがあります。
また、本名(本人)ばれしないことを目的にビジネスネームで活動している場合、もし本人であることが分かった場合にはより深刻なダメージを負う恐れがあります。
以上がビジネスネームのメリットとデメリットとなります。個人事業主ではビジネスネームを屋号とできるとからメリットの方が多いといえます。一方、個人事業主から法人成りをする場合は、ビジネスネームを用いるにあたっては注意点やデメリットの方が多いといえます。その理由を次の章で詳しく見ていきます。
4 ビジネスネームで会社設立は可能?どこまで使える?
会社を設立するということは、法人設立登記を行うということです。個人事業主が会社設立をする法人成りという状況では、通常は自身が会社設立者であり社長ということになります。
会社設立登記では初めに定款を作成するという処理を行うことになりますが、その定款には会社設立者(発起人)を記載する項目があります。この発起人の項目には本名を記載しなければいけません。
また、会社設立登記の際にも会社設立者の情報が必要となりますが、こちらも会社設立者の名前は本名でなければいけません。そのため、会社設立登記という公的な手続き上、ビジネスネームでは行えないため必ず本名を用いることになります。なお、外国人が日本国内で活動しやすいように通称名を役所に届け出ている場合には(住民票や印鑑証明書において)、その通称名で会社設立を行っても良いことになっています。
なお、会社を設立した後の名乗りに関する制限はありませんので、ビジネス上はビジネスネームを用いることは可能です。会社設立までは本名で行い、設立後のビジネスはビジネスネームで行うという切り分けは可能、ということです。
しかし、会社設立後もビジネスネームのままでは支障をきたす状況があります。その状況の一つは、会社の預金口座の開設時です。会社の預金口座の開設は代表者の本名(会社の登記簿上の代表者の名前)でないとできません。
また、クレジットカードの作成もビジネスネームでは作ることができないため、本名で申込みを行うことになります。
そしてもう一点、会社においてビジネスネームを用いる際に気を付けないといけない業種があります。それは特定商取引の場合です。
特定商取引とは、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引、訪問購入のことを指します。
・特定商取引法「第2章 訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売 第3節 通信販売」
『「氏名又は名称」については、個人事業者の場合は戸籍上の氏名又は商業登記簿に記載された商号を、法人にあっては、登記簿上の名称を記載することを要し、通称や屋号、サイト名は認められない。』
すなわち、会社の事業として特定商取引を行う場合は、特定商取引法に基づく表記は登記簿上の本名としなければいけません。特定商取引で行うビジネスはトラブルになりやすいことから、消費者保護のために取引を行うものの表記を本名とすることになっています。
なお、あくまでも「特定商取引法に基づく表記を本名とする必要がある」ということで、ビジネス上の名乗りはビジネスネームでも構いません。
ただし、ビジネスネームを表に出しておいて、特定商取引法に基づく表記には別人の名前が記載されているとすると、先に触れた信用問題という点が浮上します。特に特定商取引はトラブルになりやすいビジネスのため、本名で活動していないことに不信感を持つ人がいるかもしれません。
そして、これは特定商取引に限りませんが、取引が成立した後の振込先の口座名義(本名)が今まで聞いていた名前(ビジネスネーム)と違うという状況も、信用面で問題となる場合があるでしょう。
あらかじめビジネスネームであることを説明していたり、明らかにビジネスネームであったりする場合は別として、いざお金の振込みの段になって別人の名前が出てきたら振込をためらう人が出てくる可能性もあるので留意することも大切です。
5 会社設立前のやることリスト
会社を設立するためには、必要書類の準備や多くの工程を経なければなりません。そこで、まずはどのような手順で会社設立をするのかを確認しましょう。会社を設立する手順を確認すれば、なぜこの書類や工程が必要なのかを理解することができ準備も捗ります。
【会社設立の手順】
(1)会社の基本情報の決定
どのようなビジネスを営むのかといった事業内容、商号(会社名)、事業所の所在地等といった会社を運営する上で必要な事項を決めます。具体的に決める事項は後述します。
(2)定款の作成
定款(会社のルール)を決めます。定款には必ず記載しなければならない絶対的記載事項があります。また、株式会社を設立する場合は、公証役場で認証手続を行う必要があります。
【絶対的記載事項】
- ・事業の目的
- ・商号(会社名)
- ・本社の所在地
- ・資本金額
- ・発起人の氏名
(3)資本金準備
資本金は会社を設立する人(発起人)の個人口座に振り込みます。
※会社の銀行口座は登記が終わらないと作成できないため、設立する人の口座に振り込みます。
(4)登記申請
法務局で会社の登記申請を行います。登記申請が終われば、会社を設立したことになります。上記が会社設立の手順となり、この手順に必要なものが会社設立前にやることとなります。
・事業目的の決定
事業目的は定款の作成の際にも必要な事項となります。事業目的は定款に複数記載することが可能です。しかし、定款に記載していない事業を営む場合は定款の変更手続きをする必要がありますので、事業を営む可能性があるものは記載していきましょう。
・商号の決定
定款の作成に必要な事項です。商号とは会社名のことで、公序良俗に反しないことや商標登録されているもの以外であれば、基本的にどのような名称でも可能です。また銀行・信託銀行・保険会社等の業種は、その業種を商号に含める必要があります。(例:○○銀行)
また、商号の中には会社の形態(株式会社、合同会社等)を含める必要があります。(例:○○株式会社)
会社形態については、株式会社や合同会社、合名会社、合資会社の4種類の中から、会社形態を決める必要があります。株式会社と合同会社は有限責任です。有限責任とは、事業の責任を出資額の範囲内において負うことです。
一方、合名会社と合資会社は、無限責任となり、出資額の範囲を越えても責任を負わなければならず、個人の資産にまで責任が及ぶ可能性があります。合同会社や株式会社は出資金の範囲が上限となるので、リスク回避という意味で大きな利点となります。
なお、合同会社は所有者と経営者が同じで、株式会社は所有者(株主)と経営者が異なることが、合同会社と株式会社の大きな違いです。合同会社は株主総会などをしなくても意思決定が可能です。また、設立費用も株式会社より安価です。
一方、株式会社は株式の発行をすることで、資金調達が可能です。また、合同会社よりも社会的信用度が高いです。そのため、大きな事業をするのであれば、株式会社の方が合同会社よりも優位です。
・所在地の決定
定款の作成に必要な事項です。会社の本店を記載する必要がありますが、本店の所在地の制限は特にありません。自宅の住所を本店の所在地に定めることもできます。注意点としてはアパートやマンションを本店所在地にする場合、大家さんが会社の事務所としての利用を認めていないケースがあります。アパートやマンションの場合は賃貸借契約書を事前に確認しておきましょう。
・資本金の準備
事業をするにあたっての元手となる資本金を事前に準備する必要があります。資本金も定款の作成に必要な事項です。資本金は1円以上であれば会社の設立は可能です。(※2006年5月以前は、株式会社は1,000万円以上、有限会社は300万円以上の資本金が必要でした。)
しかしながら、資本金は運営の元手となります。設立当初は信用もないため、金融機関からの融資も難しいです。そのような理由もあり、資本金は3ヶ月から6ヶ月くらいの運転資金を準備することが1つの基準となります。
また、資本金が大きい場合の弊害としては、定款の認証手数料や登録免許税、法人税などの負担が大きくなる可能性もあります。ご自身の会社にあった資本金額を決めましょう。
・発起人の決定
発起人とは、会社設立を行う人のことです。発起人は定款に記載する必要があるほか、定款に署名をする必要もあります。人数には制限がなく、1人でも2人でも発起人になることができます。発起人は、会社設立の準備をするほか、出資金も支払う必要があります。また、発起人が必ずしも取締役(会社運営を行う人)になる必要もありません。あくまで発起人は会社設立を行う人になります。発起人は15歳以上であれば誰でもなることができます。
・会社設立日の決定
法務局へ登記申請をした日が会社の設立日となります。なお、法務局は土日祝日が休みであるため、土日祝日は会社設立日にすることができません。また、設立日を○月1日ではなく、○月2日以降にすると住民税を節税することができます。これは事業年が12ヶ月という前提ではありますが、2日以降にすることによって、初月が切り捨てで計算され11ヶ月分の住民税となります。つまり1ヶ月分の節税をすることができます。大きな会社で大きな事業をする場合は少額ですが、小規模の会社で設立日にこだわりがなければ、このような考え方で設立日を決めることもできます。
・事業年度の決定
会社の期首や期末といった1年間を決めます。学校でもそうですが、日本の会社では4月に始まり3月に終わるところが多いです。事業年度については、自身で決めることができますが、決算期は多忙になることが予想できますので、自身の会社の繁忙期と重ならないように事業年度を決定しましょう。また、設立日から期末が近いと設立してすぐに決算となってしまい、多忙を極めてしまいます。設立日から期末はなるべく離すようにしましょう。
・定款の作成
定款には、前述した絶対的記載事項のほか、相対的記載事項や任意的記載事項があります。相対的記載事項は、定款に必ず記載する必要はありません。しかしながら、定款に記載しなければ効力を発揮しない事項です。
相対的記載事項 | 現物出資 |
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財産引渡 | |
発起人の報酬 | |
設立費用 | |
株式の譲渡制限に関する規定 | |
株主総会の招集通知を出す期間の短縮 | |
役員の任期の伸長 | |
株券発行の定め | |
任意的記載事項 | 事業年度 |
取締役を始めとした役員の人数 | |
役員報酬の決定方法 | |
株主総会に関する事項 | |
株券発行の手続き方法 | |
議決権の代理代行者 |
株式の譲渡制限に関する規定とは、株式を譲渡する際の制限事項を定めるものです。この規定を定めることで取締役会や株主総会での承諾を得なければ、株式を譲渡することができなくなります。この規定を定めることで会社経営の権利を第3者に渡ることを防ぐことができます。
また、株主総会の招集通知を出す期間の短縮では、招集通知は株主総会の通常2週間前までにしなければなりません。招集通知をしなければ、株主総会も開けません。株主が1人の場合は2週間という期間が不便な場合もあるため、短縮する規定を設けましょう。
「任意的記載事項」は、定款に記載しなくても良いですが、記載をすることで会社の規則をより明確にできるという事項です。記載する必要はありませんが、すでに決まっているものであれば、他の規則を新たに定める必要もなくなりますので、記載できるのであれば記載しましょう。
・印鑑の作成
会社印は登記の際に必要となります。登記前に作成しておきましょう。設立には会社実印だけでも問題はありませんが、会社実印の代表者印の他、役職印、銀行印、ゴム印等も作成しておきましょう。
・登記書類の作成
登記書類は添付資料が多いため、しっかりと確認して事前準備をしておきましょう。これらの手順を省略したい場合は、司法書士に申請代行を依頼することもできます。
登記書類の添付資料 | 登記申請書 |
---|---|
登録免許税納付用台紙 | |
定款 | |
代表社員、本店所在地及び資本金を決定したことを証する書面(※株式会社の場合、株式発行事項も必要) →定款にこれらの事項が記載されている場合は不要 | |
代表社員の就任承諾書 | |
印鑑証明書 | |
払込みがあったことを証する書面 | |
資本金の額の計上に関する代表社員の証明書 →設立時に出資される財産が金銭のみの場合は不要 | |
印鑑届書(オンライン申請の場合は不要) | |
「登記すべき事項」を記載した書面又は保存したCD-R | |
本人確認証明書(運転免許証など) |
株式会社の場合は、取締役の設置や発起設立なのか募集設立なのかで必要書類が大きく異なります。定款の内容や会社の構造によっては上記以外にも追加書類が求められる場合もあります。実際に登記申請をする際は、法務局の登記相談窓口や司法書士に事前に相談しましょう。
・会社設立に必要な費用の準備
登録免許税や定款の認証手数料等、様々な費用が発生します。会社設立において人気の高い株式会社と合同会社の設立費用は下記のとおりです。資本金の額等で変動があります。あくまで目安として参考にして下さい。
○合同会社(合計約113,000円)
登録免許税:約60,000円
定款(収入印紙):40,000円
実印、印鑑証明書等:約13,000円
○株式会社(合計約235,000円)
登録免許税:約150,000円
定款(収入印紙):40,000円
定款(認証手数料):最低30,000円
実印、印鑑証明書等:約13,000円
6 会社設立後にやること
登記を行った後、税や保険等の手続きをすることができるようになります。これらの手続きは登記を行う前にすることができません。会社設立後の手順も前もっておさえておきましょう。
6-1 税関係の手続き
会社には、法人税や法人住民税等の税金が発生します。税務署や都道府県税事務所、市町村役場(税務関係部署)に提出する必要があります。
届出先 | 必要書類 |
---|---|
税務署 | ・法人設立届出書 ・青色申告の承認申請書 ・給与支払事務所等の開設届出書 ・源泉所得税の納付の特例に関する申請書 (従業員数10名未満の場合。※必ず申請する必要はない。) ・定款の写し |
都道府県税事務所 | ・法人設立届出書 ・定款の写し ・登記事項証明書の写し |
市町村役場 | ・法人設立届出書 ・定款の写し ・登記事項証明書の写し |
6-2 社会保険関係の手続き
会社には、社会保険(健康保険や厚生年金)の加入義務が発生します。これは社長が1人の会社でも同様です。手続きは年金事務所で行うことができます。
【必要書類】
- ・健康保険・厚生年金保険新規適用届
- ・登記事項証明書の原本
- ・被保険者資格取得届
- ・被扶養者(異動)届 ※扶養者がいる場合に必要
6-3 労働保険関係の手続き
こちらは従業員を雇用する場合に必要となります。労災保険は労働基準監督署。雇用保険はハローワークで手続きが必要となります。
届出先 | 必要書類 |
---|---|
労働基準監督署 | ・労働保険保険関係成立届 ・労働保険概算保険料申告書 ・適用事業報告書 |
ハローワーク | ・雇用保険被保険者資格届 ・雇用保険適用事業者設置届 |
6-4 会社の口座開設の手続き
個人の銀行口座と違い、開設までの時間を要します。必要書類としては、登記簿謄本や定款等が必要となりますが金融機関によって異なります。作成しようと考えている金融機関のホームページを確認して口座開設の事前準備をしておきましょう。
7 まとめ
今回はビジネスネームを使用した会社の可否や設立会社設立をする際の事前準備について解説しました。会社設立には事業を構築するだけでなく、多くの書類作成や工程を経る必要があり、労力と時間がかかります。しかしながら、1つ1つをじっくり作成していけば、難解なものはありません。労力を割きたくない場合は司法書士に依頼することも可能です。今回の記事を参考に、会社設立の事前リストを作成して設立に備えることが大切です。