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決算で株価がストップ高、ストップ安!決算発表で得する株式投資法とは

株式の投資家は日々の株価の動きを注視されていますが、決算発表後にはストップ安・ストップ高のような急激な動きもあるため株価から目が離せないのではないでしょうか。

 

急激な動きはハイリスク・ハイリターンのどちらにもなるため投資家にとっては適切な対応が欠かせません。ここでは決算発表がおよぼす株価への影響・問題を実際の事例から取り上げ、ストップ安・ストップ高になる要因や株価の変動に備える方法を説明しましょう。

 

 

1 決算発表がおよぼす株価への影響とは

ここでは決算発表が株価にどう影響をおよぼすのか、問題になるのかを説明しましょう。

 

 

 

1-1 決算発表による株価への影響と変化

決算発表のどのような内容が株価に影響を与えるのかを確認していきます。

 

 

①業績の発表で株価が大きく動く

決算発表では当該事業年度の業績の結果や次期の業績見通しなどが発表されるため、決算発表後では株価に大きな変動が見られるケースが少なくありません。その変動に上手く対応しないとリターンを得る機会を失ったり、損失を被ったりするので注意が必要です。

 

株価の変動要因はいくつもありますが、大きく分けると市場全体に関する要因と各企業の個別要因になります。個別要因には業績、事業方針・政策、株式・配当の政策などがあり、決算発表ではそれらに関する重大な情報が発表されるため、発表後に株価が大きく動くわけです。

 

例えば、「今期の営業利益が前期と比べ30%アップした」、「来季の経常利益が過去最高となる見通しだ」、といった情報があると株価は大きく上昇するケースが見られます。

 

逆に「今期の営業利益が前期と比べ50%ダウンした」、「来季は当期純損失となる見込みだ」、といった情報があると株価は大きく下がることもあるのです。

 

決算発表では株価が上下に動く要因となる内容のほか、その動きの大きさに影響を与える具体的な数値が発表されるため、それらの内容次第でストップ高にもストップ安にもなってしまいます。

 

 

②株式の需給にする情報の発表で株価が大きく動く

株式の需給に関わる情報も株価への影響が大きいので、その内容への対応次第でハイリターンにもハイリスクにもなり得るので注意しましょう。

 

個別企業に関する株価の変動要因の中で業績とともに影響が大きいものとして、株式の需給と株主利益に関わる情報が挙げられます。その株式の需給に関する情報とは、株式の新規発行(増資)、自社株買い、自己株式の消却と処分などです。

 

増資のために株式が新規に大量に発行される場合、配当総額が前期と同じであれば1株当たりの配当額は下がることになります。つまり、その場合は既存の株主にとっては不利益につながるためその株式の魅力が低下して売却されやすくなり株価は下落するわけです。

 

自社株買いとは、株式市場に流通している自社の株式を買い戻すことを言います。買い戻された株式は、株式自体が消滅させられる「消却」と売却させられる「処分」のどちらかで処理されるケースが一般的です。

 

配当総額が前期同じ場合に消却が実施されると発行株式数が減少することとなり、1株当たりの配当額は増加し株主の利益となることから株価は上昇しやすくなります。自社株買いが実施されると一般的に消却につながるケースが多いため株価は上昇する傾向があるのです。

 

一方、処分の場合は、買い戻されていた株式が再び市場へ売却されることになるので売れた数量だけ流通する株式数が増加します。配当総額が前期と同じなら1株当たりの配当額は減少することになるので株価は下落しやすくなるわけです。

 

このように自社株買い、消却と処分について、その内容が決算発表で公表されるとその実施予定の規模によっては大きく動くことになり、ハイリターンにもハイリスク(処分の場合)にもなっていきます。

 

 

③株主利益に直結する情報の発表で株価が大きく動く

株主利益に直結する情報としては主に配当金の内容が挙げられます。株式を保有することで得られる配当金や株主優待は直接的でわかりやすい株主利益といえるものでしょう。そのため株主にとっては評価のしやすい対象なので、その内容次第で株価が大きく変動するのです。

 

例えば、「配当額を1株100円から120円に増配する」といった情報が決算発表で報告されると株価は一般的に上昇する傾向があります。逆に「配当を1株100円から50円に減配する」といった情報が決算発表で報告されると株価は一般的に下降する傾向があるのです。

 

さらに「今期は多額の損失を計上したことにより無配とする」といった情報が報告されると株価が大幅な下落を見せるケースも少なくありません。

 

こうした配当額の動向を踏まえて、決算発表前に購入或は売却するとハイリターンを得たり、ハイリスクを被ったりすることもあるわけです。

 

なお、株主優待は配当金ほど株価への影響は小さいと考えられますが、商品券や優待券・割引券といった換金可能なモノの株主優待は人気があるため、その内容次第では株価を動かすこともあるでしょう。

 

 

④企業の成長・発展に関する情報で株価が大きく動く

企業の事業が拡大する、すなわち企業が成長・発展していけば利益は増加し1株当たりの配当額の増加かも期待できることから株価は上昇しやすくなります。業績の結果だけでなく、これからの業績の見通しとともに成長・発展につながる情報が決算発表で報告されれば株価の上昇につながるので、投資しておくと大きなリターンが得られることもあるのです。

 

業績の見通しに関しては、四半期決算では次の四半期の業績予想および通期の業績予想、期末決算では来期の業績予想などが報告され、その内容次第で株価は変動します。数値で発表されるため、数値の変動が大きければ株価も大きく変動しやすいです。

 

「成長につながる情報」とは、例えば、「来期にはX社を買収しAI事業に本格参入する」といった内容になります。特に成長分野の事業へ新規参入するといった情報は高く評価され株価の大幅な上昇をもたらすことも少なくありません。

 

逆に「○○分野の事業から撤退する」「△△事業を他社に売却する」といった内容で企業の成長を阻むものとして評価されると、株価は下落する可能性が高まります。ただし、リストラ局面で不採算事業を売却し収益の改善を図るとともに成長分野への投資に注力するといった方針の場合にはむしろ株価は上昇することも珍しくないです。

 

そうした「新規事業への進出」といった情報を分析・評価して業績が拡大すると予想できる場合は、その株式を購入するという投資行動に結び付きます。そして、実際にその新規事業が順調に進展していき業績が伸びれば株価は上昇し大きなリターンを得ることもできるのです。もちろん予想通りにいかないケースも少なくないですが、そうした決算発表の内容が一つの投資機会になり大きなリターンを得る機会となり得ることは否定できないでしょう。

 

 

1-2 決算発表後のストップ高・ストップ安の具体的な影響

決算発表後にストップ高やストップ安になった場合、具体的にどれほどの影響があるかを紹介します。

 

①ストップ高の場合

決算発表前に特定の銘柄を100万円分保有していた場合の影響について、実際起こった事例から予想してみましょう。

 

・GameWith<6552>

決算発表前の株価:終値3,900円
翌営業日の株価:始値4,600円、高値4,600円、安値4,575円、終値4,600円

 

この銘柄は決算発表後の翌日午前9時35分にはストップ高(値幅制限の上限)の4,600円に達しています。もし決算発表前に256株保有していたら翌営業日の取引終了時点では256株×(4,600円-3,900円)=179,000円の含み益を得たことになるわけです。

 

・市光工業<7244>

決算発表前の株価:終値874円
翌営業日の株価:始値1,009円、高値1,024円、安値997円、終1,024値円

 

この銘柄は決算発表後の翌日の取引開始後から急騰しストップ高の1,024円に達しています。もし決算発表前に1,144株保有していたら翌営業日の取引終了時点では1,144株×(1,024円-874円)=171,600円ほどの含み益を得たことになるわけです。

 

急騰した株価がストップ高で取引が終了するとは限りませんが、上記の例の銘柄では1日で約2割近い含み益が得られたことになります。

 

②ストップ安の場合

ここでは①と同様の条件でのストップ安の影響について、実際起こった事例から予想してみます。

 

・レントラックス<6045>

決算発表前の株価:終値905円
翌営業日の株価:始値755円、高値787円、安値755円、終値755円

 

この銘柄は決算発表後の翌日中にストップ安の755円に達しています。もし決算発表前に1,105株保有していたら翌営業日の取引終了時点では1,105株×(755円-905円)=-165,750円ほどの含み損(約17%の損失)を被ったことになるわけです。

 

・ソルガム・ジャパン・ホールディングス(ソルガムHD)<6636>

決算発表前の株価:終値179円
翌営業日の株価:始値129円、高値141円、安値129円、終値138円

 

この銘柄は決算発表後の翌日中にストップ安の129円に達しています。もし決算発表前に5,587株保有していたら翌営業日のストップ安記録時点では5,587株×(129円-179円)=-279,350円ほどの含み損益を被ったことになるわけです。なお、終値ベースでは-229,067円の含み損(約23%の損失)となってしまいます。

 

上記の2例からわかるように決算発表前に保有していた銘柄が発表後にストップ安といった大幅な下落に直面すると大きな損失を被る可能性が生じるのです。

 

 

 

1-3 決算発表の内容と市場予想の相違から生じる株価への影響

上記のとおり決算発表の内容には株価を動かす要因が多くありますが、その要因に対する市場予想(コンセンサス)と実際の発表内容との違いにより株価は大きく左右されます。ここではその関係で株価がどう影響されるのかを説明します。

 

①決算発表の内容と市場予想が一致すると大きな変動は少ない

株式や企業を分析するアナリストが所属する証券会社や金融機関等が予想する特定企業の業績と、実際の決算発表の業績とが内容的に同程度の場合株価の大きな変動が少なくなります。

 

証券会社等のアナリスト達は決算発表する企業の業績を予測して株主等に公表しており、公表された企業の株価はその内容に基づいて変動するケースが少なくありません。例えば、売上高や営業利益についての市場予想が、その企業が発表している予想よりも上回る場合株価は上昇する傾向が見られます。

 

その場合の銘柄は決算発表前の市場予想の業績に基づいて上昇している状態、つまり市場予想を織り込んだ株価といえるでしょう。そして、決算発表で実際の業績と市場予想の内容とがほぼ同じである場合、その株価はすでに上昇分を織り込んでいるため大きく変化を見せないことが多いのです。

 

このように株価は決算発表の内容に素直に反応しないケースも少なくないので注意しない失敗する可能性が高くなります。市場予想の業績がよいので決算発表前に株式を購入したものの、実際の業績が予想通りであったために上昇せず、逆に下がったということもあるのです。

 

なお、この市場予想は上記のとおり証券会社等のアナリスト達が予想した結果ですが、その情報は金融情報会社(QUICK等)で集計され公表されます。その公表される予想中央値は「コンセンサス」と呼ばれ、市場予想の平均的な値として認識されています。

 

②決算発表の内容と市場予想が大きく異なると株価は大きく変動する

決算発表での業績内容とコンセンサスの内容とに大きな差異があると株価は大きく動く傾向があります。コンセンサス以上に業績が良い場合株価は上昇へ、コンセンサス以上に業績が悪い場合株価は下落へと大きく変動しやすくなるのです。

 

例えば、コンセンサスの内容が「売上高が前年同期比10%、営業利益が8%アップ」に対して実際の決算発表の内容が「売上高が前年同期比17%、営業利益が24%アップ」といった場合です。

 

この結果はコンセンサスの内容よりも実際の業績のほうが大きく上回り、業績がかなり良い、業績が伸びていると読み取れます。つまり、すでに織り込まれた業績以上の結果となっているので、その株価は大きく上昇する余地が生まれるのです。

 

もちろんコンセンサス以上に業績が悪ければその株価は大きく下落する余地が生まれ実際に大きく下落するケースは少なくありません。

 

 

2 決算発表で株価が大きく動いた事例

株価で大きく変動する代表的な例はストップ高とストップ安ですが、ここではこれらと決算発表の関係を実際の事例で確認していきましょう。

 

 

2-1 ストップ高の事例

まず、決算発表のどういった内容が株式のストップ高につながっているのか、事例から確認していきましょう。

 

①GameWith<6552>

東証マザーズのGameWith が2018年1月10日に決算発表し、翌日の午前9時35分にはストップ高(値幅制限の上限)となる4600円へ急騰しています(前日比700円高)。

 

決算発表の内容は、2018年5月期第2四半期(17年6~11月)の売上高が前年同期比2.0倍の12億8600万円、営業利益が同2.7倍の6億2400万円、純利益が同2.8倍の4億4400万円というものでした。また、2018年5月期第2四半期累計(6~11月)の経常利益(非連結)は6.2億円で、通期計画の7.8億円に対して79.2%という進捗率になっています。

 

また、「普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行う」という株式分割と、「100株以上を保有する株主に対し、1,000円分のQUOカードを送付する」という株式優待の報告もありました。

 

営業成績は前年同期比で2倍以上という大きな伸びとなり、中長期的には株価の上昇につながりやすい株式分割、株主利益に直結する株主優待の発表によりストップ高になったと推察されます。

 

②市光工業<7244>

東証1部の市光工業は2018年2月14日に決算発表し、翌15日の取引開始後から株価は急騰し値幅制限上限の前日比150円(17.2%)高の1,024円、ストップ高へと上昇しています。

 

決算発表の内容は、前2017年12月期連結決算の予想から上振れする結果となり、また、2018年12月期の業績予想が2期ぶりの最高益の見込み、というものでした。

 

最高益を更新するという好調な業績見通しが市場で好感されて買い注文が増え、加えて空売りの買い戻しも増えたことで大きな上昇につながったと推察されます。

 

*空売りは株価が下がることで利益を得る投資方法であり、株価が上昇する局面では損失が拡大するので早めに買い戻して決済されることが多いです。
*2月9日での東証の個別信用残動向において同社株の売り残高は40万2,100株、買い残高が42万6,700株と拮抗していました。

 

③日本電子<6951>

東証1部の日本電子は2018年2月7日に決算発表し、翌8日の午前9時過ぎには100円高、ストップ高の668円の買気配となっています。

 

決算発表の内容で好感された点は、「18年3月期の連結業績予想を上方修正する」、というものです。具体的には、18年3月期業績予想において売上高が133億円から141億円(前期比12.9%増)、営業利益が2億3000万円から5億1000万円(同4.5倍)へと上方修正される内容でした。

 

また、同時に発表された第3四半期(17年4-12月)決算は、売上高が105億9,700万円(前年同期比23.2%増)、営業損益は3億6,700万円の黒字(前年同期は1,200万円の赤字)という内容です。つまり、営業損益が赤字から黒字に転換しており、18年3月期業績予想では上振れするという回復・好調が確認できるものであり、株価上昇につながったと推察されます。

 

④アイティフォー<4743> 

東証1部のアイティフォーは2018年3月期の業績を5月2日に発表し、連休明けの7日10時38分に1,046円のストップ高となりました。

 

決算発表の内容は、18年3月期の連結経常利益が前年同期比20.6%増の16億円となり、19年3月期は同27.7%増の20.5億円の予想で5期ぶりの過去最高益更新を見込むというものでした。

 

また、以前未定とされていた前期の期末一括配当が19円への増配で決定されています(2017年3月期分は17円)。

 

このように利益が大幅に伸び、来期も今期以上の伸びを予想するという好調な業績に加え増配の情報も報告されていることからストップ高へ至ったと推察されます。

 

 

2-2 ストップ安の事例

次に決算発表のどういった内容が株式のストップ安につながっているのかを、事例から確認します。

 

①レントラックス<6045>

東証マザーズのレントラックスは2018年2月9日に決算発表し、連休明けの13日には前日比150円安、755円のストップ安となっています。

 

決算発表の内容は、第3四半期累計の営業利益が前年同期比20.1%減という結果です。また、通期営業利益の予想が6.25億円から4.13億円(前期は5.57億円)に下方修正され増益から減益予想へ修正されるものでした。

 

下方修正の理由は、主力の成果報酬型広告サービス事業に影響する銀行カードローン業界での自主規制の強化、Appleが実施したトラッキング制限対応の影響によるとされています。こうした事業環境の変化により実際に前年度期比で減益、通期の利益予想も減益と発表したため、今後しばらくの間は同社の株価が上昇しにくいと評価されたものと推察されます。

 

②ソルガム・ジャパン・ホールディングス(ソルガムHD)<6636>

東証ジャスダックのソルガムHDは2018年、2月9日に「平成30年3月期第3四半期報告書の提出遅延および平成30年3月期第3四半期決算短信の公表見込みに関するお知らせ」を発表しました。その結果、13日の寄り付きから大量の売り注文が入り41円安、138円のストップ安となっています。

 

発表内容は、会計監査人と会計処理や債権回収の可能性等について見解の相違が生じたため、一時会計監査人の選任により3月14日までに第3四半期報告書の提出および決算短信の公表を予定するというものでした。

 

同社は2016年、17年と営業損失、純損失を計上しており、この第3四半期報告書の提出および決算短信の公表の遅れが投資家の信用不安をまねきストップ安につながったと推測されます。

 

③省電舎ホールディングス<1711>

東証2部の省電舎ホールディングスは2018年5月2日の取引終了後に14日予定の18年3月期の決算発表を1カ月程度延期すると発表しました。また、その折に過去の会計処理の一部で不適切な会計処理があった可能性を認め第三者委員会の設置を合わせて発表しています。

 

その結果、5月7日の取引開始後から売りが殺到し、300円安の808円ストップ安売り気配で終了しました。

 

18年3月期決算の業績に関する情報はなかったですが、決算発表の延期と不適切な会計処理に対する懸念からストップ安売り気配に至った推察されます。

 

④ベクトル<6058>

東証1部のベクトルは2018年4月13日の取引終了後に18年2月期の決算発表を行い、週明けの16日には500円安の2,026円ストップ安を付けました。

 

決算発表の内容は、18年2月期の連結経常利益が前期比43.8%増の29.5億円と8期連続での過去最高益の更新、19年2月期も前年同期比35.6%増の40億円の増益予想で9期連続更新の予想というものです。つまり、良好な業績を達成し、来期も好調が継続できそうという良好な内容だったといえるでしょう。

 

以上のように特に株価が大幅に下がる理由は見当たらないにもかかわらず16日にはストップ安という意外な状況になったわけです。上場している銘柄の中にはこうした好決算であっても予想外の動きをするケースもあるので注意しなければなりません。

 

なお、ストップ安となった理由としては、2018年1月頃より上昇が進んできたという状況の中、一旦利益を確定させようとする売りの勢いが拡大したことが一因と推察されます。

 

 

3  決算発表でストップ安とストップ高となる要因とは

ここでは今までに確認してきた点を踏まえ、株式投資の成果に大きな影響をおよぼすストップ安とストップ高となり得る決算発表での要因をまとめることにします。

 

 

 

3-1 ストップ高の要因

ストップ高に至る決算発表の内容を確認していきましょう。

 

①各種要因

ストップ高につながる要因には以下のような内容が挙げられます。

 

・業績の好調さ

売上高、営業利益、経常利益、純利益といった収益が「前年同期比20%以上」、「○年連続過去最高益を更新」といった内容が公表されるとストップ高になるケースが多いです。ただし、その好調さが市場予想から上振れしていることがポイントとなります。

 

つまり、決算発表での業績結果が証券会社等のアナリスト達の業績予想の平均値的な水準以上となっている場合にストップ高になる可能性が高くなるのです。

 

・今後の業績拡大や急激な業績の回復

業績の好調さとともにその良好な業績の維持・拡大の継続が予想される場合にストップ高になる可能性が生じやすくなります。決算発表では次期の業績予想も報告されますが、その業績の内容が拡大する場合株価は上昇しやすくなるのです。

 

また、減収から増収、減益から増収への回復やその回復の度合いが大きい場合、ストップ高になるケースも少なくありません。減収減益が数年継続していた場合に黒字転換したり、減収減益の幅が大きく改善したりするとストップ高になることもあるのです。

 

・増配の実施

業績の好調さを背景に増配が発表されると株価は大きく上昇しストップ高に至るケースも多いです。

 

増配は株主への利益の還元であり、良好な業績を裏付けるものともいえるので、株価上昇の大きな要因となります。特に増配の度合いが大きい場合は単に配当額が多くなるというだけでなく、今後の業績の好調さや拡大を期待させるためストップ高をもたらす大きな原動力になるのです。

 

・自社株買い、自己株式の消却、株式分割

1株当たりの配当額に直結する自社株買いおよび自己株式の消却が発表されるとストップ高につながりやすいです。

 

ただし、それらの規模が大きい、実施期間が長期間でない、業績が比較的好調である、といった条件が整う必要があります。株主利益重視の姿勢を示すために一定の自社株買いを実施してもその規模が小さいものであれば、ストップ高になるほどの上昇は望みにくいでしょう。

 

株式分割は1株当たりの投資資金を引き下げ株式が購入されやすくなるので、株価の上昇要因となりますが、これ自体だけでストップ高になる可能性は高いとは言えません。他の株価上昇の要因と株式分割の実施が発表される場合などにストップ高になるケースが見られます。

 

・空売りの買い戻し

空売りの多い銘柄の企業が好業績の決算内容を発表すると、空売りの買い戻しという現象が生じやすくなり、株価はいっそう上昇しやすくなるのです。

 

現物買い、信用買い、空売りの買い戻しが多くなれば、当然株価の上昇の勢いが急激に増しストップ高になる可能性が高くなります。

 

②ストップ高の可能性を高める条件

ストップ高の可能性を高める条件として、以下のような内容が挙げられます。

 

・市場予想以上の好業績

市場予想以上の好業績であることがストップ高をもたらす条件の一つになるでしょう。

 

いくら好業績の発表があったとしても市場予想の範囲を大きく超える内容でなければ、株価は一定の上昇分を織り込み済みなのでストップ高になる可能性はあまり高くないのです。

 

しかし、業績が市場予想以上の好業績である場合には市場は大きく反応し株価は大きく上昇しやすくなります。つまり、市場のサプライズがストップ高として具現化するわけです。

 

・新規事業のへの進出、アライアンスの実施

成長分野への新規進出やそれに向けた関係企業との資本提携・業務提携などの発表はその企業の今後の成長が期待され、株価の大きな上昇に結び付きます。

 

特に創業して比較的時期の浅い企業や規模の小さい企業の場合、そうした進出や提携等は大きな成長につながるため市場の反応も大きく、ストップ高になることも珍しくありません。

 

・複数の要因の発表

好調な業績、業績の急回復、期待できる事業方針、増配、自社株買い・消却・株式分割、などの要因が複数発表されることでストップ高は生じやすくなります。加えて空売りの買い戻しといった現象が上昇の勢いを後押しすることもあるでしょう。

 

業績の内容が予想の範囲内であっても他の要因と合わせて複数発表されると、市場は大きく好感しストップ高になるケースも少なくありません。

 

 

 

3-2 ストップ安の要因

ストップ安に至る決算発表の内容を確認していきます。

 

①各種要因

ストップ安につながる要因には以下のような内容が挙げられます。

 

・業績の悪化

減収・減益となった結果や減収・減益にとなる予想などが発表されるとストップ安になるケースは少なくないです。

 

例えば、「営業利益が6億円から4億円に減益となった、減益となる見込みだ」といったケースが該当します。減収・減益は事業の成長の鈍化や停滞のイメージにつながりやすいので株式は売られ株価は下降しやすくなるのです。

 

その減収・減益の程度が市場予想以上に大きければ投げ売りなどが起こりストップ安になることもあります。

 

・決算発表の延期

予定されていた決算発表の時期を直前などで延期が発表される場合、ストップ安に至るケースも少なからず見られます。

 

延期となる理由はさまざまですが、不適切な会計処理など粉飾決算をイメージさせるような場合や信用不安を感じさせてしまう場合などは株価を大きく押し下げる可能性が低くありません。

 

また、決算発表の延期の理由が明確かつ具体的に示されていないケースではストップ安につながる可能性も十分にあります。そのため粉飾決算や信用不安などとほとんど関係しない内容であっても明確に示されなければ、市場の勝手な憶測により株価は大きく下降することもあるのです。

 

・減配や無配

配当額を前期より減配する、今期は無配とするといった内容の発表があるとストップ安に結び付くケースもあります。

 

減配や無配は直接的に株主利益を損ねるため株価は押し下げられますが、それらは業績の悪化を端的に示すものであるため将来の業績も期待しにくいと評価されるのです。

 

つまり、それらは株主にとってわかりやすい不利益の象徴として映るため、その発表があると投げ売りになりストップ安も起こりやすくなります。

 

・自己株式の処分

自社株買いで保有していた自己株式を市場で売却する「処分」が発表されるとストップ安をまねくこともあります。

 

処分する株式の量にもよりますが、1株当たりの配当額の減額につながるようなケースでは株価を大きく押し下げてしまうでしょう。決算発表時に自己株式の処分が発表されるケースは多くないでしょうが、実際に発表され他の悪材料などもあればストップ安になる可能性は決して低くはありません。

 

・業績予想の反転

増収・増益予想が結果として減収・減益 となったり、黒字から赤字に転換したりするとストップ安になることは珍しくありません。

 

また、その悪い内容の結果がその四半期や当期だけでなく次の四半期や次期においても悪化が継続・拡大すると予想される場合も株価は大きな下げ圧力に直面します。

 

特に市場の予想を裏切る「ネガティブサプライズ」である場合、好感のサプライズ以上に反応が大きいのでストップ安になる可能性は高いといえるでしょう。

 

・成長の鈍化や停滞

著しく成長を遂げてきた企業の決算内容において、その成長の鈍化や停滞が感じられる場合はストップ安になることもあります。

 

例えば、8年連続で増収増益を続け、何年も過去最高益を更新してきたような成長著しい企業の場合、その株価は理論株価をはるかに超える水準に達していることも珍しくありません。つまり、業績の拡大、さらなる成長が期待されてきた結果、その株式は買われ過ぎているケースがあるわけです。

 

しかし、行き過ぎた買いにより上昇した株価は、その成長に陰りが見えると方向転換して一気に下降していくことがあります。信用買いが膨らんでいるケースでは売りによる決済も加速され、売りが売りを呼びストップ安になりやすいのです。

 

②ストップ安の可能性を高める条件

ストップ安の可能性を高める条件として、以下のような内容が挙げられます。

 

・個々の要因でもストップ安になり得る

ストップ高と異なりストップ安は単独の要因だけでも十分にストップ安になり得ます。

 

一般的に投資家はリスク回避の行動をとるタイプが多いため、市場全体としては悪材料に対する反応が敏感で大きいです。例えば、一時的に業績が悪化した場合でも将来の業績を不安視してその株式を投げ売りするというケースも少なくありません。

 

ただし、そのようなケースでストップ安になっても業績の悪化が一時的で中長期的には回復する、と市場が予想すれば株価も比較的早めにもとの水準に回復するケースも少なくないです。

 

そのような回復が期待されるケースもありますが、一時的には株価は大きく下げることもあるので、悪化の兆候があれば決算発表前に売却などの対策を講じるべきでしょう。

 

・ネガティブサプライズ

すでに説明してきたとおりネガティブサプライズはストップ安に直結するケースが少なくないので注意が必要です。

 

市場でのコンセンサス以上の悪い結果が発表されると売りが売りを呼ぶといった現象になりかねません。特に企業の予想とコンセンサス以上に悪い結果となった場合にはそうした売りが発生しやすくなります。

 

ネガティブサプライズの対象は業績の悪化だけでなく、減配・無配、特定の事業からの撤退、有力企業との提携の解消なども含まれます。市場が予想しなかった、予想以上の悪材料はストップ安に結び付くのです。

 

 

4 決算発表に伴う株価のストップ高・ストップ安への対策

決算発表後の株価の変動は大きくなるケースが少なくないことから発表前の購入にはリスクが伴います。一方、保有していた株式を発表前に売却して、それが発表後にストップ高になれば大な利益を得るチャンスを逃したといえるでしょう。

 

つまり、決算発表でのストップ高とストップ安は大きなリターンを得る機会でもあり、大きな損失を被る脅威にもなるため、株式の投資家はその対応策を講じる必要があります。ここではその内容を紹介していきます。

 

 

4-1 決算発表に伴う株式投資でのリスクを回避する方法

ここでは決算発表により株式投資で被るおそれのあるリスクをどう回避していくかについて説明していきます。

 

・ リスク回避法

決算発表後に有望な銘柄に投資する
決算発表前に保有している株式は売却する
次期に持ち越す株式は分散保有する

 

①決算発表後に有望な銘柄に投資する

決算発表後の大きな変動の影響を避けるため発表前には投資せず、発表後に上昇が予想される有望な銘柄を選定し投資するという方法が賢明です。

 

決算発表前の企業や市場の業績予想が良好な銘柄はすでにその結果が株価に織り込まれて高めの価格水準にあることは珍しくありません。そのような株式は発表での結果が多少予想を上回っても大きく上昇せず、ある程度日数が立つと発表前の水準に戻るケースも少なくないのです。

 

逆に予想とほぼ同じや少しでも下回る場合は、期待が裏切られ材料が出尽くされたと評価されると株価は下がることもあります。

 

決算発表前の株式投資にはこうしたリスクがあるため、いつも以上に入念に分析・調査しないと大きな後悔をする羽目になってしまうので注意しましょう。

 

特に決算発表前の価格変動の大きな銘柄は要注意です。一般的に機関投資家などは発表前に大きな投資をすることを避ける傾向があり、株価は大きく動きにくいものですが、それでも大きく動く銘柄には何らかの思惑が働いている可能性があります。うっかりその思惑にはまって株価の勢いに押されて投資してしまうと大きな含み損を抱えることになりかねないので気をつけるべきです。

 

以上のことから決算発表後に株価の上昇傾向を示す銘柄の中から選んで投資する方法がリスクの低い無難な投資方法といえるでしょう。ただし、その上昇トレンドがどれだけ続くかの見極めが重要です。そして、次の決算発表前には持ち越さないで利益を確定させる、までがこの投資方法になります。

 

②決算発表前に保有している株式は売却する

すでに決算発表前に保有している短期保有目的の株式があれば売却し、次期に持ち越さないという投資方法です。もちろん長期保有目的の株式は大きな下降リスクの心配がなければ次の期でも保有すべく持ち越すとよいでしょう。

 

スイングトレードをしている投資家などでは保有している銘柄を次期に持ち越すか売却するか悩むこともあるでしょうが、決算発表後の変動リスクを回避するには発表前に売却するのが無難です。

 

中長期に渡って上昇してきた銘柄などは投資家の大きな期待感が株価に織り込まれているため、予想に少し届かない程度の業績内容でも大きく下がることもあります。こうしたリスクを回避するためにはチャート等での分析やコンセンサスの確認などが欠かせないですが、それに基づく判断が正解となるとは限りません。そのため発表前に売却してしまうのが最も安心な方法なのです。

 

もちろん発表後に大きく上昇するケースも少なくないですが、大きく下がるよう要素があれば発表前に売却して利益を確定させることが優先されるでしょう。

 

③次期に持ち越す株式は分散保有する

十分に分析して下落リスクが低いと判断した銘柄でも発表後に大きく下がることもあるので、次期に持ち越す場合は複数の銘柄保有でリスクを低減するべきです。

 

株価の下落要因は業績以外にも会計や取引の問題等による決算発表の延期や自己株式の処分などもあり、それが発表前や発表時に報告されると株価はストップ安になることもあります。これらの問題に関しては事前に調査して把握することは困難であるため、その銘柄を保有していると大きな損失を被りかねません。

 

そのため決算前に保有している株式を次期に持ち越す場合、リスクを低くするために複数の銘柄を保有するという分散投資が有効になるわけです。どれか1銘柄が大きく株価を下げても他の銘柄でその含み損をカバーすることもできるでしょう。

 

 

4-2 決算発表によるストップ高を儲ける機会とする投資法

リスクは低くないですが、決算発表前にストップ高になりそうな銘柄を選出して購入しストップ高など大幅な上昇後に売却して大きく儲けるという方法があります。

 

①市場予想以上に好業績が期待できそうな銘柄へ投資

業績についてその企業の予想並びに市場予想以上の業績が期待できそうな銘柄を探して投資するという方法が挙げられます。リスクは伴いますが、ストップ高になり得る銘柄を見つけて大きなリターンを狙うことも不可能ではありません。

 

・自分で調査分析して候補を選定

企業の予想および市場の予想より実際の決算発表の業績内容が良ければ株価は上昇しやすくなります。そのため、そうした銘柄を発表前に自分なりに分析・予想して購入すれば大きなリターンを得られることもあるでしょう。

 

企業によっては毎月の営業成績や営業状況などをホームページに掲載することがあります。決算月の前後2~3カ月の業績が確認できれば、前の四半期での予想とどの程度乖離するかを掴むことも可能です。特に決算月からの3カ月の業績が大きく上昇している場合には業績の上振れが期待できます。

 

自身で調べたデータと市場予想のデータを比較・分析し、市場予想よりも上振れ余地の大きな銘柄を候補とするのも有効な方法の一つといえるでしょう。

 

・コンセンサス情報などを活用した分析で選定

ほかにも証券会社や投資情報機関などの多くの分析情報を確認することで、市場全体の予想以上の結果が期待できるかどうか判断できることもあります。

 

コンセンサス情報の動向と株価の動きを確認して判断するという方法も有効です。例えば、コンセンサス情報の中には経常利益の予想増益率が、4週間前、1週間前、直近日、といった期日でデータが公表されることがあります。そうしたデータと株価の動きの関係性から決算発表後に上振れ・下振れしそうかを予想することは可能です。

 

例えば、決算発表に近づくにつれて予想の業績内容が向上している場合、株価も多少その動きに吊られやすくなります。しかし、株価に上昇が見られない、やや下落傾向がある場合は直近の市場予想は株価に反映されていないといえるでしょう。

 

もし決算発表で直近の市場予想と同等かやや上回る業績となった場合には、その予想は株価に織り込まれていないので大きく上昇する可能性があるわけです。

 

もちろんその市場予想と株価の関係性からの分析だけではリスクが低いとは言えないので、①での自分の分析なども踏まえて総合的に評価して選定してみるとよいでしょう。

 

②増配や自社株買いの発表のありそうな銘柄へ投資

業績が良好と予想される企業の中で増配や自社株買いを実施しそうな銘柄に投資するという方法もあります。

 

増配や自社株買いを実施するかしないかは発表時にならないとわからないですが、事前にその可能性をある程度判断することは可能です。

 

自社株買いを実施する企業には、実施するだけの理由や特徴が少なからず見られるので、それに合致するかどうかで判断できることもあります。例えば、次のような特徴です。

 

1. 資金にゆとりがあり借入金の少ない企業(自己資本比率が高い)
2. 浮動株比率が低く、少しまとまった売買があると株価が大きく変動しやすい企業
3. ROEの低い企業で、過去に自社株買いによりROEを上昇させたことがある企業
4. 株主利益を重視する企業
5. 自社株買いを発表しており、もうそろそろ次の自社株買いの時期になりそうな企業
6. 業績が好調で過去の増配のペースからそろそろ次の増配の時期になりそうな企業

 

以上のような点から増配や自社株買いの実施をある程度予測することは可能ですが、確実とは言えずリスクは低いとはいえません。そのためこの予測だけに頼らず、業績の動向も踏まえて投資を判断することが求められます。

 

 


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