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24時間営業を見直す動き〜低賃金、長時間労働の問題解決へ〜

(出典:Heather Christie)
(出典:Heather Christie)

大手ファストフードチェーンのモスバーガーが営業時間を短縮すると報じた朝日新聞デジタルの記事が大きな話題となりました。記事によると、モスバーガーを提供する株式会社モスフードサービスは5月にかけて開店時間を1~2時間遅らせる模様です。

 

現在、飲食店や小売店を中心に営業時間を見直す動きが強まっています。これまで24時間営業をウリにしてきたファミリーレストランやコンビニは、長時間労働や深夜営業における安全性に配慮。24時間営業の停止や営業時間短縮に取り組み始めました。

 

 

目次

  1. 1 モスバーガーの営業時間短縮
  2. 1-1 営業時間短縮を決めた理由
  3. 1-2 消費者の反応は?
  4. 2 24時間営業を見直す動きが広まっている
  5. 2-1 リンガーハットの例
  6. 2-2 ロイヤルホストの例
  7. 3 原点回帰? 変容する日本の働き方
  8. 3-1 「便利さ」が求められていた時代
  9. 3-2 良質なサービスには正当な対価を

 

1 モスバーガーの営業時間短縮

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宅配業界の人手不足の波が、飲食業界にも押し寄せているようです。モスバーガーでは、通常営業時間は午前7時~午後11時(店舗によって異なる)ですが、人手不足の深刻化で早朝に対応できるスタッフが集まらず、各オーナーの判断により営業時間を遅らせる店舗が続出しているようです。

 

モスバーガーはこれまでサラリーマンや高齢者の需要に応えるため、朝食サービスを充実させてきましたが、記事によれば売り上げは全体の1割程度のため、開店時間を遅くしても支障はないと判断しました。

 

 

1-1 営業時間短縮を決めた理由

モスフードサービスは1972年創業のハンバーガー専門店です。2017年3月時点で全国に1362店舗、海外では336店舗、計1740店舗を展開しています。

 

主幹事業であるモスバーガーの製造・販売のほか、近年は売り手市場を背景に、子会社である株式会社モスストアカンパニーが人材確保のため、人材紹介アプリ「リファモス」を開発するなど、外食業界での人材の定着率向上を目指しています。

 

朝日新聞デジタルによれば、2015年以降は、オーナーや店長の長時間労働を見直す観点から、個別交渉で営業時間の短縮を認めてきました。これまで営業時間を短くした店舗は国内1400店のうち400店にのぼるといいます。(参照:朝日新聞デジタル)

 

モスフードサービスの広報は「顧客のライフスタイルの変化などにより、朝限定メニュー『朝モス』の利用が減っている店舗が存在する。人手不足だけでなく、顧客の減少もオーナーの負担になっている」と話します。(参照:ITmedia ビジネスオンライン)

 

※ 1990年代からは積極的に海外進出に乗り出します。1991年には台湾台北市に1号店をオープン、93年にシンガポール、2006年には香港、07にタイ、08年にインドネシア、10年に中国、11年にオーストラリア、12年には韓国とアジアを中心に展開。

 

 

1-2 消費者の反応は?

モスバーガーの営業時間短縮のニュースに対して、ツイッターなどのSNSではおおむね好意的な意見が見受けられました。「無理をしなくていい」「閉店じゃなくてよかった」「サービスの質の維持のためには仕方ない」「業界全体で取り組んでほしい」など、飲食業の事情に配慮したコメントが多数寄せられました。

 

しかし、一方で、夜間に働く人は利用できなくなってしまうため、「残念」「悲しい」といった意見も聞かれました。

 

 

2 24時間営業を見直す動きが広まっている

営業時間の短縮を検討する企業は近年増えつつあるようです。

 

 

2-1 リンガーハットの例

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(出典:bento.com)

 

長崎ちゃんぽんの専門店として知られるリンガーハットは、3月末、首都圏を中心とした53店舗で営業時間を短縮すると発表しました。

 

株式会社リンガーハットのニュースリリースによると、昨年から一部店舗で営業時間の短縮、閉店時間30分前のオーダーストップに取り組んでいましたが、4月より53店舗で最長5時間の営業時間短縮を実施しています。閉店時間は各店舗で異なり、最短30分から短縮しており平均2時間短縮されています。さらに現場の従業員の負担軽減に向け、店舗へ自動釣銭機※などの機械導入も進めています。

 

リンガーハットは従業員の安定的な雇用確保やモチベーション向上を目指すとしており、今後はランチタイムやディナータイム時の利用客に対して質の高いサービスを提供するとしています。

 

また、働き方改革の一環として、正社員の定年年齢を60歳から65歳に延長する「65歳定年延長」を3月より導入。さらに定年延長後も賃金・賞与、昇給・昇格は60歳以前と同様とする制度を開始しました。

 

制度では希望者を対象に、60~64歳の間でも定年することを選択できることになり、選択定年後、希望者については、再雇用契約社員および時給制のアルバイトに雇用形態を変更して、本人の状況や人生設計にあわせて働き続けることを可能としました。

 

同社は、今回の制度導入により、経験豊富なシニア社員の能力を活かす場を広げ、より働きやすい企業を目指すとしました。(参照:株式会社リンガーハット

 

※ リンガーハットでは長崎ちゃんぽん専門店「リンガーハット」、とんかつ専門店「濵かつ」において、生産性向上と従業員の働きやすさ向上の為、一部店舗において業務の機械化を推進。オーダー時の「タブレット注文」をはじめ、精算時の「自動釣銭機」、ご飯のおかわりをセルフ化し自動でご飯を提供する「自動ごはんおかわり機」を設置。業務の機械化により、従業員の作業負担の軽減につながっている。(参照:株式会社リンガーハット)

 

 

2-2 ロイヤルホストの例

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(出典:ロイヤルホスト)

 

ファミリーレストランのロイヤルホストは、今年の1月31日をもって全220店舗で24時間営業を廃止しました。
さらに、従業員の負担軽減のため、全国155店舗で営業時間を短縮することを明らかにしています。

 

また、持株会社のロイヤルホールディングス※の黒須康宏社長は3月末の記者会見にて、働き方改革の一環として社内に定休日を設けることを検討しているとの考えを示しました。

 

多くのファミリーレストランが年中無休で営業するなか、ロイヤルホストは今後の環境変化を見据え、地域ごとに定休日を設けるやり方を模索しています。11月までに次期中期経営計画に具体的な内容を盛り込む方針です。

 

このほか、「ガスト」「ジョナサン」「バーミヤン」を経営する株式会社すかいらーくも全国1000店のうち750店で深夜営業および24時間営業の見直しを実施。深夜客の減少や従業員の健康を配慮し、朝7時開店、深夜2時閉店などの営業時間に変更しています。

 

・ 24時間営業の見直し営業時間の短縮を検討している企業一覧

外食 マクドナルド 直近2年半で24時間営業店舗を4割強削減
吉野家 全店舗の約5割に当たる581店舗で、すでに24時間営業を廃止
百貨店 三越伊勢丹 2016年は首都圏の伊勢丹、三越の計8店舗で1月2日の初売りをやめて休業。17年はさらに拡大
高島屋 16年4月から日本橋店で営業時間を1時間短縮。ほかにも2店舗で30分短縮
  イオン 16年3月から、首都圏1都2県の綜合スーパーの約7割の店舗の営業時間を1時間短縮
  いなげや 15年度、夜間の売り上げの少ない15店舗で平定ん時間を30~45分早めた
  東武ストア 14年から15年にかけて、全60店舗のうち26店で24時間営業を廃止
  日本郵便 17年から1月2日の年賀状配達を休止

(参照:dot. AERA記事 2016年11月28日付

 

※ ロイヤルホールディングスは1950年創業で、「ロイヤルホスト」「てんや」「カウボーイ家族」などの外食チェーンを運営している。このほか、「リッチモンドホテル」などのホテル事業、航空会社へ機内食を提供する機内食事業、病院など福祉施設にレストランを提供する給食事業などを行っている。

 

 

3 原点回帰? 変容する日本の働き方

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(▲創業初期のアメリカのセブンイレブン / 出典:セブン‐イレブン・ジャパン)

 

日本で初めて24時間営業を始めた小売店はセブンイレブン※と言われます。セブンイレブンはもともと、朝7時から夜11時までの16時間営業でしたが1975年、福島県郡山市の虎丸店で24時間営業が開始されました。

 

 

3-1 「便利さ」が求められていた時代

コンビニエンスストアが誕生した約30年前、ほとんどの小売店は朝10時頃から夜7時頃までの営業でした。その中でセブンイレブンは商品を24時間いつでも買える“時間の便利さ”を追求した結果、現在では約99%の店舗が年中無休、24時間営業を実施しています。

 

東京、大阪、名古屋など都心部ではさまざまな時間帯で働くサラリーマンが多く、24時間営業のコンビニは重宝されています。

 

ところがコンビニの深夜営業は強盗の対象とされることも多く、また若者のたまり場ともなっていたため、深夜営業が若者の非行や犯罪を助長しているのではないかといった批判も少なくありませんでした。

 

近年は深夜の利用客が減少するのに加えて、深夜営業時の防犯対策に費用がかさむ一方で、費用対効果を考えれば深夜営業は廃止したほうが一目瞭然といった状況です。

 

 

3-2 良質なサービスには正当な対価を

しかし、営業時間を減らせば、売り上げへの影響は避けられません。
吉野家ホールディングスの河村泰貴社長は

 

「(対策としては)やはり生産性を上げるしかない。数年前から夜の時間帯にお酒がゆっくり飲める『吉呑(の)み』というサービスを始めたのは売上高確保のためだ。朝食メニューの充実も、手薄な時間帯での集客を狙っている。人による作業手順も見直しを行い、無駄な部分は排除していく」(参照:日本経済新聞 2016年12月25日付

 

と語ります。

 

サービス至上主義により便利さを追求し発展してきた日本経済。その変わり過労自殺や人口減少、出生率の低下など多くの社会問題を抱えることになりました。宅配便の配達無料や年中無休といった過剰なサービスを当たり前と捉えず、正当な対価を支払うという本来あるべき消費者感覚が今もっとも求められているのかもしれません。

 

※ セブンイレブンは米国発祥のコンビニエンスストア。創業初期は「トーテム・ストア」と呼ばれ、店舗の庭に建てたトーテム・ポールや店舗の側面に描かれたトーテム・ポールの絵が今でいうコンビニエンスストアのシンボルとなりました。1946年には、朝7時から夜11時まで毎日営業するチェーンとして、営業時間にちなんで店名を「7-ELEVEN」と変更。その後1971年には、多くの7-ELEVENが実質的に24時間営業となり、1974年には、日本に第1号の「セブン-イレブン」(東京都江東区豊洲)がオープンした。(参照:セブンイレブンジャパン

 

 


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