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有効求人倍率、バブル期の最高値を超えて1.48倍に

(出展:Bloomberg Quint)
(出展:Bloomberg Quint)

厚生労働省によると、2017年4月の有効求人倍率が1.48倍となり、これまで最高だった1990年のバブル期での1.46倍を超えたことが明らかになりました。

 

有効求人倍率は、求職者1人当たりに対していくつの企業から求人があるかを示す数値で、「月間有効求人数」を「月間有効求職者数」で除して求めることができます。

 

有効求人倍率が伸びていることについて厚生労働省は「製造業や建設業で新規求人数が増え続けている。雇用環境か着実に回復が進んでいる」と評価しました。
このほか正規の職員・従業員数が前年同月より14万人増え、3400万人に達し、29ヶ月連続の増加となりました。果たして現状の雇用環境はどこまで改善しているのでしょうか。

 

 

 

目次

  1. 1 有効求人倍率、43年ぶりの高水準に
  2. 1-1 最高は東京都2.07倍、北海道1.09倍
  3. 1-2 建設、運輸・郵便で求人件数が増えるが…
  4. 2 正社員の増加と完全失業率の減少
  5. 2-1 女性の雇用者の増加率、男性の3倍~10倍超に
  6. 2-2 完全失業者は83ヶ月連続の減少

 

1 有効求人倍率、43年ぶりの高水準に

厚生労働省は、5月30日、先月の有効求人倍率が前月を0.03ポイント上回り、1.48倍だったこと発表しました。また、新規求人倍率※(季節調整値)は2.13倍となり、前月と同水準となりました。

 

・有効求人倍率の推移

kyuujin

 

・ 職業紹介状況

  2017年4月 2016年4月
月間有効求職者数 1,939,779人 2,033,640人
新規求職申込件数 555,596件 581,809件
月間有効求人数 2,676,726人 2,524,448人
新規求人数 923,450人 894,530人
就職件数 164,258件 172,096件
有効求人倍率(季節調整値) 1.48倍 1.33倍
新規求人倍率(季節調整値) 2.13倍 2.04倍

(参照:厚生労働省「一般職業紹介状況」5月30日付

 

4月の新規求人(原数値)は前年同月と比較すると3.2%増となりました。産業別にみると、運輸業、郵便業(8.3%増)、製造業(7.9%増)、建設業(6.9%増)、生活関連サービス業、娯楽業(6.1%増)、サービス業(5.7%増)などで増加となり、卸売業、小売業(3.8%減)では減少となりました。

 

・ 新規求人が増加した業種

業種 増加した割合
運輸業 ↑ 8.3%
郵便業 ↑ 8.3%
製造業 ↑ 7.9%
建設業 ↑ 6.9%
生活関連サービス業 ↑ 6.1%
娯楽業 ↑ 6.1%
サービス業 ↑ 5.7%

 

・ 新規求人が減少した業種

業種 増加した割合
卸売業 ↑ 3.8%
小売業 ↑ 8.8%

※ 前月から繰越された有効求職者数と、新たに受け付けた求職申込みの件数である当月の「新規求職申込件数」の合計数を月間有効求職者数という。「新規求人数」に占める「新規求職申込件数」の割合を「新規求人倍率」といい、「月間有効求人数」に占める「月間有効求職者数」の割合を「有効求人倍率」という。

 

 

1-1 最高は福井県2.06倍、最低は北海道1.13倍

有効求人倍率を都道府県別にみると、最も高かったのは東京都2.07倍で、最も低かったのは北海道1.13倍で、7ヶ月連続で全都道府県で1倍を超えました。

 

・ 都道府県別の有効求人倍率トップ10(受理地別)

順位 都道府県名 有効求人倍率
1 東京都 2.07倍
2 福井県 2.07倍
3 石川県 2.07倍
4 愛知県 1.82倍
5 岐阜県 1.80倍
6 広島県 1.78倍
7 富山県 1.76倍
8 岡山県 1.72倍
9 香川県 1.72倍
10 熊本県 1.63倍

 

東京都に次いで高かったのは、福井県2.00倍、石川県1.86倍となりました。名古屋のある愛知県がランクインしているものの、大阪、福岡といった大都市はランクインせず、福井、石川、富山といった北陸地方や広島、岡山などの中国地方が多く上位に入りました。

 

・ 都道府県別の有効求人倍率ワースト10(受理地別)

順位 都道府県名 有効求人倍率
1 北海道 1.09倍
2 神奈川県 1.11倍
3 沖縄県 1.12倍
4 長崎県 1.15倍
5 鹿児島 1.15倍
6 高知県 1.17倍
7 青森県 1.17倍
8 埼玉県 1.18倍
9 佐賀県 1.22倍
10 千葉県 1.23倍
10 滋賀県 1.23倍

 

北海道に次いで低かったのは、神奈川県1.11倍、沖縄県1.12倍となりました。このほか埼玉県1.18倍、千葉県1.23倍など関東地方からのランクインが目立ちました。また、沖縄県、長崎県、鹿児島県、佐賀県と九州地方からも多く入りました。

 

 

1-2 建設、運輸・郵便で求人件数が増えるが…

産業別に求人件数をみると、前年同月比で、運輸・郵便業8.3%、製造業7.9%、建設業6.9%、増加しました。
一方、卸売業、小売業は、主要産業のなかで唯一求人件数を減らし、3.8%の減少となりました。

 

・業種別求人件数の増減比較

業種 増減幅
建設業 +6.9%
製造業 +7.9%
情報通信業 +2.6%
運輸業、郵便業 +8.3%
卸売業、小売業 −3.8%
学術研究、専門・技術サービス業 +1.8%
宿泊業,飲食サービス業 +2.2%
生活関連サービス業,娯楽業 +6.2%
教育,学習支援業 +2.4%
医療,福祉 +3.2%
サービス業 +5.7%

 

しかし、人手不足が深刻化している運輸業や建設業、介護業などでの求人件数の増加は素直に歓迎できるものではありません。

 

たとえば運輸業界でのドライバー不足問題は有名です。27年ぶりに最大180円の宅配運賃の値上げを発表したヤマト運輸ではドライバーが慢性的に不足しており、その苛酷な労働環境は各メディアでたびたび取り上げられるほどでした。現在、ヤマトが抱える1年間の宅急便の取り扱い総数は17億3126万件におよびます(2015年時点)。

 

また建設業界では建設経済研究所による調査によれば、2020年の建設就業者数は、05年と比較して約20%減少し、539万人から295万人ほどになると予測されます。さらに減少率は5年間で拡大しており、今後もこの傾向が続けば現在の人口では対応できなくなる可能性も指摘されています。

 

一方、介護業界では、政府は人材確保に向けて補助金・事業支援金の拡充に取り組むものの、求職者が集まらない状況が続いています。2025年度には団塊世代の全てが75歳に達し、約38万人の人材不足に陥ると厚生労働省は試算します。また、離職率も大卒者で38.4%と依然高く、人材をいかに引き留めるかも問題となっています。

 

 

2 正社員の増加と完全失業率の減少

雇用状況の改善は、総務省統計局のデータからも分析することができます。

 

統計局の労働力調査(平成29年4月速報値)によれば、全体の就業者数は前年同月に比べ80万人増加で、52か月連続の増加となりました。
雇用者数は前年同月に比べ57万人増加し、52か月連続の増加となりました。
正規の職員・従業員数は前年同月比で14万人の増加し、29か月連続の増加です。
一方、非正規の職員・従業員数は前年同月に比べ33万人の増加、2か月連続の増加となりました。

 

 

2-1 女性の雇用者の増加率、男性の3倍〜10倍超に

就業者数は前年同月に比べ80万人(1.2%)増加し、6500万人となりました。
男女別では、男性20万人、女性60万人が増加しました。

 

一方、就業率※では、前年同月比で0.9ポイント上昇し、74.9%となりました。
男女別では、男性で0.3ポイント上昇し82.8%、女性で1.5ポイント上昇し66.8%となりました。

 

・就業者と就業率の前年度比較

就業者数 80万人増加 男20万人
女60万人
就業率 0.3ポイント上昇 男82.8%
1.5ポイント上昇 女66.8%

※ 就業率とは、15歳以上人口に占める就業者の割合のこと。

 

このほか、雇用者数では前年同月に比べ57万人増加し、5757万人となりました。男女別に見ると、男性は3199万人で4万人の増加、女性は2558万人で54万人の増加となりました。

 

全体的に見ると、女性の雇用者の増加が男性の3〜14倍で進んでいることがわかります。政府が掲げる女性活躍社会実現のため、官庁と民間の両方で積極的に女性の採用に取り組んでいるようです。

 

 

2-2 完全失業者は83ヶ月連続の減少

完全失業者数は前年同月比で28万人(12.4%)減少し、197万人となりました。83か月連続の減少となり、男女別では、男性は前年同月に比べ19万人の減少、女性は前年同月に比べ9万人減少しました。

 

・ 完全失業率の推移

  年平均 月次
  2014年 2015年 2016年 2017年1月 2月 3月 4月
完全失業率 3.6% 3.4% 3.1% 3.0% 2.8% 2.8% 2.8%

 

完全失業者の離職理由を調査した結果では、「会社など勤め先の都合による離職」は前年同月に比べ9万人減少して約30万人となりました。一方、「自己都合による離職」は前年同月に比べ5万人減少して約83万人でした。

 

雇用改善が進んでいることは喜ばしいことですが、人手不足の裏返しととることもできます。バブル崩壊後の長期不況期において若年労働力を十分に採用してこなかったこと等により、今後も、技能の継承や人材確保のための対応を迫られる企業が増加することが予想されると厚生労働省は警鐘を鳴らします。

 

 


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