厚生労働省は、2月、勤務終了時から次の勤務開始時刻まで一定時間のインターバル(休息時間)を設ける勤務間インターバル制度の導入企業に対し、最大50万円を助成する制度を始めました。
政府は当初、勤務間インターバル制度の義務付けを検討していましたが、結果的に見送り、新たな助成制度として「勤務間インターバル導入コース」を設けました。
目次
- 1 助成制度の概要
- 1-1 勤務間インターバルとは
- 1-2 EUにおけるインターバル規制
- 1-3 対象となる企業の条件
- 2 助成額はいくら?
1 助成制度の概要
安倍内閣は働き方改革の一環として、安心・安全な労働環境を構築するための施策として、職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース)を新設しました。
1-1 勤務間インターバルとは
「勤務間インターバル」とは、休息時間を問わず、就業規則において「終業から次の始業までの休息時間を確保することを定めているもの」をいいます。
なお、就業規則において、「22時以降の残業を禁止」または「8時以前の始業を禁止」などの規定のみの場合は、勤務間インターバルを導入していないものと判断されます。
1-2 EUにおけるインターバル規制
EU加盟国の間では、1993年、「24時間につき最低連続11時間の休息時間をとらなければならない」という勤務間インターバル制度が制定されました。
さらに2000年改正のEU労働時間指令では、7日ごとに最低連続24時間の休息日を付与するとの規定が盛り込まれています。
EU加盟国はEU指令の内容を国内法に規定する義務を負っているため、離脱が決まっているイギリスを除く全27カ国共通の労働基準となっています。
このほか、EUは1週間の労働時間について「4週間以内の平均で48時間以内の労働時間」との上限規制を設けています
日本でも行政官庁に届け出ない場合、労働時間の延長または休日に労働させることができないという36協定がありますが、特別条項を結べば月45時間以上の労働が可能となるため、実質的に労働時間に上限がない状態になってしまっています。
すなわち、特別条項を結ぶ場合、延長できる時間についての上限時間は定められておらず、できる限り延長時間を短くするよう努めるという努力義務が定められているにとどまります。実際統計でも、日本で週49時間以上働く人は約22%で、欧米の10~15%と比べて多いとされています。(参照:ノースブルー総合法律事務所)
1-3 対象となる企業の条件
助成金の支給対象となるためには、次のいずれの条件にも該当する必要があります。
・ 労働者災害補償保険の適用企業である
・ 次のいずれかに該当する企業である
業種 | 資本金(出資額) | 従業員数(常時) |
---|---|---|
小売業(飲食店含む | 5000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
・ 次の1.〜3.のいずれかに該当する事業場である
1. | 勤務間インターバルを導入していない企業 |
---|---|
2. | すでに休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場で、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場 |
3. | すでに休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場 |
・ 労働時間の改善を目的とした労働時間の上限設定に積極的に取り組み、かつ成果が期待できる企業である
なお、助成金の支給は1つの企業につき1回に限定されます。
2 助成額はいくら?
助成金は、「勤務間インターバル制度」の導入の取り組みに必要となった経費の一部を、成果目標の達成状況に応じて支給されます。
・ 対象となる取り組み
①労務管理担当者に対する研修
②労働者に対する研修、周知・啓発
③外部専門家によるコンサルティング
④就業規則、労使協定等の作成・変更
⑤労務管理用ソフトウェアの導入・更新
⑥労務管理用機器の導入・更新
⑦その他の勤務間インターバル導入のための機器等の導入・更新
経費のうち、謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、備品費、機械装置等購入費、委託費などが助成対象の経費となります、その合計額に補助率75%を乗じた額が助成されます。
・上限額表
休息時間数 | 「新規導入」に該当する取り組みがある場合 | 「新規導入」に該当する取組がなく、「適用範囲の拡大」または「時間延長」に該当する取り組みがある場合 |
---|---|---|
9時間以上11時間未満 | 40万円 | 20万円 |
11時間以上 | 50万円 | 25万円 |
(参照:厚生労働省HP)
※ 表の上限額を超える場合は、上限額となる。
過労死対策の一環として勤務間インターバルの促進に乗り出した政府。EUのように法律による義務付けとはなりませんでしたが、働き方改革として大きな一歩を踏み出したといえます。